当主さま、蓉子さま、お姉さま、それから祥子と志摩子。
わざわざ集まってくださって有難う御座います。
令さま!
イツ花、イツ花もいますよ!!
あ、イツ花もありがとう。
厨、大丈夫?
はい、今はお休みです!
そっか。
で?
由乃がどうしたのかしら、令。
はい、お姉さま。
実は
初めて喋った、なのではないの。
どうせ。
うん、然うなんだ。
…て、祥子ぉ!!
な、何よ。
吃驚するじゃないの。
それは私が言う事だよ!
前置きが無駄に長いのよ、貴女。
いらっとするわ。
わぁ、ひどい。
鬼、鬼祥子。
…何ですって。
そんなんだから、ゆみちゃんに泣かれるんだよ。
…もう一度言ってくれないかしら。
意味が良く分からないわ。
いっつも、小難しい顔してさ。
口開けば不機嫌っぽくてさ。
…。
そんなんじゃゆみちゃんのお姉さまになる前に、鬼になっちゃうよ。
……言わせておけば
言えって言ったのは祥子だよ。
……令。
ほら、怖い声。
祥子は普段から声が低いけど、怒ると更に低くなるんだ。
……!
もうね、今日と言う今日こそ、言わせて貰うけどね。
大体、祥子は
令…!!
止めなさい!!
…。
…。
んー。
令、言いすぎよ。
…すみません、お姉さま。
祥子も。
出来れば、水を差すような事を言わないであげてくれないかしら。
この子、由乃の事になると本当の莫迦になっちゃうから。
……。
それから、蓉子。
わざわざ大きな声を出して貰って悪いわね。
…それは良いのだけれど。
さて、令。
それで?
……あー、えと。
さっき、祥子が言ったとおり、由乃が初めて喋ったんです。
いつ?
ついさっきです。
何て?
それをみんなに聞いてもらおうと思って…それで。
まぁ、あれだね。
へたすりゃ、討伐行ってる間に、でかくなってたりするからねぇ。
貴重って言えば、貴重な一瞬だよね。
ね、蓉子。
ええ、然うね。
はい!
だから嬉しくて…!
良かったですね、令さま。
うん、ありがとう。
志摩子。
だけど、ねぇ。
…?
何ですか、お姉さま。
また喋ってくれるかしらね。
言って分かるもんじゃ無いだろうし。
大丈夫です!
あら、自信満々ね。
多分!!
……駄目じゃないの。
祥子、最初から決め付けちゃ駄目だよ。
為せば成る、だよ!
喋るのは令じゃないわ、由乃じゃないの。
それは…そう、だけど。
でも、大丈夫!
屹度!!
……あー。
…一寸、聖。
だらしが無い格好をしないの。
いや、気長に待とうと思って。
皆様、お茶を淹れてきましょうか。
ありがとう、志摩子。
んじゃ、お願いするわ。
はい、江利子さま。
あ、志摩子さま、私もお手伝い致しますー!
ありがとう、イツ花。
よし!
んじゃ由乃、さっきみたいにまた、喋ってごらん。
ね?
……すぅ。
……。
蓉子さま。
……ん。
…お茶のお代わり、淹れて参りましょうか?
……ああ、ありがとう。
それと何か掛ける物も持って参りましょう。
お体を冷やしてしまわぬよう…。
ありがとう、志摩子。
お言葉に甘えさせて貰うわね。
はい。
…お姉さまは完全に寝入ってしまってますね?
…ねぇ。
それでは…。
……。
…言葉と言えば。
……江利子。
白ちびが最初に喋った言葉、何だか知ってるかしら。
……聖が?
ええ、然う。
………何だったかしら。
蓉子が忘れてる?
冗談。
……本当に思い出せないのよ。
あの頃は忙しかったから?
…それもあるわね。
まぁ、追われてたものね。
育児に。
…ええ、然うだった。
……天狗面。
…。
起こさないでいてあげて。
気持ち良さそうに寝ているから。
本当、甘いわねぇ。
…もう半分、諦めたから。
足、良く痺れないわね。
…慣れてしまったのよ。
おかしいでしょう?
…ふ。
まぁ、ずっと前からだものね。
……ええ。
…思い出すわ。
白ちびが貴女の膝の上で丸くなって寝ていたのを。
…猫じゃないんだから。
似たようなものじゃない。
…あの頃は未だ体が小さかったから。
今じゃこんなよ。
でかくなったものね。
…あの頃は抜かされるなんて思ってなかったわ。
……。
然う言えば。
江利子が最初に喋った言葉って
蓉子。
……え。
お約束過ぎて嘘のようだわ。
違うわ。
江利子が喋ったのは
こいつよ。
……。
ま、蓉子、とは発音しなかったけれど。
……然うだったかしら。
藤花さまも言っていたわ。
…。
…本当は覚えてるくせに。
…江利子。
はいはい、ご馳走様。
………。
たく、白ちびのくせに。
ねぇ?
……あ、江利子。
……。
起きてるわよ。
狸寝入り。
……。
でも
じゃなきゃ、ばつが悪いか何か。
自分が覚えてないもの、特に子供の頃の事って、結構恥ずかしいものなのよね。
ねぇ、白ちび。
……。
蓉子。
…うん?
貴女の事、もう誰も知らないのよね。
……ええ。
あ、でも、イツ花が居るか。
…あ、然う言えば。
一年前にはこの場所に、お姉さまたちが居たのよね。
…祥子や令、志摩子、それから由乃ちゃんやゆみは居なかったけれど。
来年は、どうなってるのかしら。
…江利子?
珍しいでしょう?
…ええ、とても。
ま、そんな時もあるわよ。
私だって。
……鬼に盛大に笑われてしまえ。
……聖?
起きているの?
……。
ほら。
だから言ったでしょう?
…ふふ。
本当、ね…。
…。
令、しゃんとなさいな。
…お姉さま。
でも結局…
ま、思うようにはいかないわよ。
だから面白いのだし。
……。
それにあまり無理をさせても駄目よ。
由乃は体が弱いのだから、些細な事でも無理をさせたら熱を出してしまうわ。
それは令が一番知っているでしょう?
…はい、蓉子さま。
でもさ。
良いんじゃないの。
…当主さま?
令だけ、じゃん。
今のところ。
…私だけ?
聞けたのは、さ。
何て喋ったのかは知らんけど。
……私の名を。
…。
呼んだんです…れーって。
然う。
嬉しかった?
…はい、とても。
蓉子には令の気持ち、分かりそうね?
…江利子。
ふふ。
蓉子も何か言ってやりなよ。
こん中じゃ、でこがちびの頃の事は蓉子しか知らないだからさ。
……江利子は
私の事はどうでも良いじゃないの。
平等じゃないだろ。
然うかしら?
でも興味無いでしょ、私の事なんて。
無いね。
全然。
じゃ、良いじゃない。
ま、良いけど。
面白く無い。
あんたが後なんだから仕方無いわね。
でもま、安心なさい。
私はあんたのおしめの交換は一度もやった事、無いから。
…想像するだけでもさぶいぼが立ったわ。
私は江利子のおしめ交換、何度かしたわよ。
…。
へぇ、それでそれで?
本当に何度か、なのだけれど…。
…ま、仕方無いわね。
私の方が後なんだから。
ふふん、ざまーみろ。
別に良いわよ。
蓉子だから。
…なんか、むかつくな。
それに回数で言えばあんたの方が圧倒的に多いし。
ねぇ、蓉子。
然う言えば何度かおねしょもしたわよね、白ちびは。
………。
もう。
良いじゃない、そんな事は。
子供なのだもの、色々な事があるわよ。
…蓉子。
ん?
……。
聖?
……ああ、もう。
さまぁみろ。
……うるせぇ、でこちん。
あの、当主さま、蓉子さま、お姉さま。
うん?
すみませんでした。
良いのよ。
気にしないで。
……。
当主さま。
貴重なお時間を…
…別に良いよ。
…祥子、志摩子。
ごめんね。
…。
令さま、あまりお気を落とさずに…。
…うん、ありがとう。
令。
…なに、祥子。
近いうち、ゆみの言葉を聞かせてあげるわ。
……。
楽しみにしてなさい。
…その前に由乃の言葉を聞かせてあげるよ。
必ず。
ええ、楽しみにしてるわ。
…由乃、良く寝てるわね。
屹度、みんなに囲まれて疲れちゃったんだわ。
けれどこんなに寝ていられるのはこの時分だけよ。
ま、誰かは誰かさんの膝で良く寝てるけど。
蓉子の膝は私のだから、良いんだよ。
……聖。
本当じゃん。
……。
甘やかしたツケ。
……もう。
さて。
令、念の為に由乃の傍に居なさいな。
こんな陽気だし、熱が出るかも知れない。
はい、お姉さま。
それから討伐の事なのだけれど。
そろそろ、ねぇ。
……。
蓉子、どうするの。
…然うね。
そろそろ、行って貰わないと…。
…然う、ですよね。
だから、聖。
…後で話すのね、へぇへぇ。
いい加減は止めて。
へぇーい。
……全く。
次は…何処に行って貰おうかしらね。
…。
祥子と令と…たまには貴女も行ってみる?
蓉子が行くなら。
…私はもう、行かないわ。
次の代の事を考えたら行くべきじゃない。
見せるのも良い経験になると思う。
…。
…なに。
聖にしては的を射てるわね。
…でも、二人でおうちに居たい。
討伐に行くと満足に膝枕でお昼寝が出来ない。
……。
蓉子がもう行かないのなら。
私も行かない。
戦わない。
……聖。
痛いのはもう、いやだ。
…然う言うこと。
祥子たちの前では絶対に言わないで。
…。
言わないで。
……蓉子にしか言わない。
…。
…。
…ねぇ、聖。
ん…。
貴女、近頃…。
……声、聞こえる。
……。
あれはどっちだろ。
…ゆみ、ね。
どうして分かるの。
声が違う。
赤子の声なんてみんな同じに聞こえる。
違うわよ。
由乃の声には力強さが無いわ。
……。
あの子はどうなるかしら。
今のままでは…
蓉子。
…うん?
私の声はどうだった?
…聖の?
ガキの頃の。
……然うね。
…。
…元気、では無かったけれど。
…。
呼ぶように泣いてた。
いつも。
……誰を。
多分…母親の事を。
…そんなの居なかったよ、私には。
…。
居なかったんだ、最初から。
…聖。
……母親なんて。
……。
…蓉子。
……。
私が呼んでたのは…。
…言わないで。
……どうして。
…。
よーこ…。
……かわいい私の聖。
……。
おこがましいと思うでしょう…?
……思わない。
…。
思わないよ。
……。
私が呼んでいたのは蓉子だから。
私は、参りません。
…。
…だってさ、蓉子。
予想通り?
祥子。
私はゆみの面倒を見なければなりません。
討伐になど、行ってる暇は無いのです。
ゆみなら家に残る私達で見るわ。
私はゆみの姉です。
姉であろうと討伐に行くべき時は行く。
それがこの家の決まりでもあるわ。
決まりなど。
知った事ではありませんわ。
…祥子。
兎に角、私は参りません。
令。
あ、はい。
貴女は?
私、ですか?
貴女も行かないとでも?
…私は
由乃はどうするの。
…でもね、祥子。
貴女はそれで良いの。
…そりゃあ、私だって由乃の傍に居たいけど。
お姉さ…蓉子さま。
……。
聞いたとおりですわ。
貴女達が言いたい事は分かった。
でも、だから?
…!
だから…!
討伐はやるべき事、やらなければならぬ事。
個人の我侭で免れる事では無いわ。
我侭…ですって。
然うでしょう。
それでは蓉子さまはどうだったのですか。
…どういう事。
蓉子さまが当主様の母親代わりをなさったのでしょう?
……。
…うん、言うと思った。
そのお陰で初陣が遅れたそうですね?
……否定はしないわ。
そんな蓉子さまが私たちの事を言える義理なのでしょうか?
…。
祥子、蓉子さまと当主さまの場合は多分、私達とは
令は黙っていて。
けど
蓉子さま。
…確かに。
私は聖の傍に居たわ、初陣を迎える月を過ぎても。
でしょう?
ならば
それを棚に上げているのは承知の上で言うわ。
祥子と令、此度の討伐には貴女達に出陣〈デ〉てもらう。
…ッ
これからは貴女達が、ゆみたちを、養うの。
そしてそれはもう、私達の役目では無い。
…。
かつて私達が然うだったように。
……貴女は
呪いとか。
そんなものを解くのは最後の目的であって、生活が成り立たなければ到底叶わない。
……。
祥子、これは命令よ。
……。
聖。
んー?
当主様。
…んげぇ。
変な声を出さないで。
だって蓉子が
嫌ならばちゃんとして。
…へーい。
て、わけだから祥子、令。
…。
はい。
次の討伐は君達の番。
と言っても明日明後日が出発ってわけじゃないから。
…。
では、いつなのでしょうか?
そうさねぇ。
蓉子、どうしよっか。
…三日後。
だってさ。
分かった?
…。
…はい、了解致しました。
…。
祥子、何処へ行くの。
話は未だ…
…。
うん。
本当に予想を裏切らない子だねぇ。
ま、有体に言えば反抗期だわねー。
あれ、でこ。
居たの?
ええ、居たわよ。
ごきげんよう?
…お姉さま。
まぁ、ね。
一度くらいは古参に見てもらうのも良いかも知れないわよ。
思ってもいない事を覚えるかも知れないから。
…。
あらあら、浮かない顔ね?
と言うかお前が言うと洒落になってないんだよ。
そうそう、然う言えば貴女のお姉さまにはそれはもう、お世話になったわね。
ありがとう?
…は。
で、令。
離れるの、そんなに心配?
…否、と言えば嘘になります。
由乃は勿論、ゆみちゃんも未だ赤子ですし…。
ふむ。
蓉子。
…うん?
今回の討伐、長くなる予定?
……いいえ。
だ、そうだから。
気分転換だと思って行ってらっしゃいな。
気分転換、ですか…。
あまり根を詰めてもね。
ねぇ、蓉子?
…。
どう?
経験者、語ってみない?
…止めてよ、江利子。
あらら、残念。
…何がそんなにおかしいの。
別に?
おかしくなんか、無いわよ?
いや、その面は面白がってる。
まさか。
大事な親友が妹の事で困っていると言うのに。
……。
おい、でこ。
うーん?
お前なぁ、少しはだなぁ。
てっとり早いのはあんたが居なくなれば良いんじゃない?
…!
江利子…!
な、わけにもいかないそうだから。
ま、仕方無いわよ。
…お前なぁ。
令。
……。
祥子、暫くは拗ねてるから。
適当に宥めながら行ってらっしゃい。
…何だか近場にお散歩に行くみたいですね。
一寸、血生臭いのが難点かしら?
……。
お前、先刻からいちいち引っ掛かる物言いをしてるだろう?
意図したものでは無いから?
……蓉子、今日のコイツ、むかつくの通り越して気色悪い。
あらあら。
…江利子。
由乃は私が見るわよ。
一応、親だしね。
…然うね。
志摩子も居るし。
心配は要らないわよ、令。
とりあえず、当面の食い扶持を稼いで来てね。
…はい、お姉さま。
て、わけだから。
蓉子。
…。
ほらほら、そんな顔しない。
ちびが泣くわよ?
…そんなに酷い顔をしてるかしら?
いいえ、然うでもないわよ。
だって近頃の貴女がそんな顔をするのは多分、白ちびの前だけだろうから。
…。
白ちび…?
ああ、今は図体ばかり大きくなっているけれどね?
……本当、良い性格してるよな。
ありがとう?
……。
ねぇ、蓉子。
聖と二人で、見れば良いじゃない。
…?
て、おい。
良いじゃない。
ねぇ?
……。
でこ、お前は
ま、祥子は面白く無いだろうけど。
でもそんな時間、然う、長くは続かないだろうから。
…。
…。
あら?
……然う、ね。
……しれっと、お前は。
私は討伐期間の事を言っただけで、別に変な意図は無いのだけれど。
おかしいわね?
…全く。
江利子には敵わないわね。
ありがとう。
でも私が一生敵わないと思うのは貴女と…さて、後は誰かしら。
菊乃さまの名は言ってあげないの?
あの方はまぁ、別格、かしらね。
違う意味で敵う気がしないから。
…別格、ね。
お姉さま。
菊乃さまって、私の
おばあさま。
貴女は少し、似ているわ。
私が…。
…似てるかね。
…まぁ、家事が得意なところは似ていると思うけど。
さぁて。
…何?
喉が渇いたわね。
志摩子に頼もうかしら。
…と言うか私の妹はお前のお茶汲みじゃないての。
それでは当主さま、行って参ります。
いってらっさい。
お姉さま、行ってきます。
由乃を宜しくお願い致します。
はい、行ってらっしゃい。
…。
祥子。
…。
祥子、くれぐれも気をつけて。
…。
然う、ゆみの名の事なのだけれど…
今は聞きたくありません。
…然う。
じゃあ帰ってきてからにするわね。
折角、決めたのにねぇ。
聞いてきゃ良いのに。
当主様。
お、何?
やる?
くれぐれも、ゆみに変な事を教えませんように。
変なコト?
変なコトって例えば何?
変な事は変な事ですわ。
ふぅん。
ま、忘れないようにはするよ。
…。
由乃、行ってくるよ。
直ぐに帰ってくるからね。
あー。
うん…。
令。
そろそろ。
…はい。
それではお姉さ
…ぇ。
…?
れぇ。
…あら。
れぇちゃ…。
由乃…!
…あらあら。
絶対に直ぐに帰ってくるから。
そしたら…!
ふむ。
矢っ張り私よりも先、ね。
…あー。
ゆみ。
…。
暫くの辛抱よ。
私は直ぐに帰ってくるわ。
あー。
辛抱って。
何だかなぁ。
本当の事ですわ。
私は兎も角、蓉子が居れば万事大丈夫だと思うけどな。
…。
…。
…祥子。
くれぐれも、お願い致しますわ。
…ええ。
てかさ、蓉子取られるのはヤなんだけどねー。
…!
…聖。
だってさー。
貴女は、未だ…!
ん?
未だ、なに?
…聖、止めて。
…絶対に許さない。
おー、怖いねぇ。
聖、止めて。
祥子を挑発しないで。
ははは。
……。
ま、そんな怖い顔しないでよ。
祥子が思ってるような事はしないから、さ。
多分。
……然う、願いますわ。
心から。
信用、無いねぇ。
ま、良いけど。
…。
さて、と。
んじゃ、祥子、令。
ま、適当に頑張ってきてよ。
はい、当主さま。
行ってきます。
…。
蓉子さま、行ってきます。
…はい、行ってらっしゃい。
…。
祥子もちゃんと言わないと。
…。
…行ってらっしゃい、祥子。
……。
祥子ってば。
……行って参ります。
ねぇ、蓉子。
うん…?
祥子、仏頂面してたね。
…然うね。
眉間に皺なんか寄せちゃってさ。
…。
反抗期、ねぇ。
……私が至らないから。
またまた、何言っちゃてるのさ。
……。
…痛い?
……。
ここ。
痛い?苦しい?
……さぁ、どうかしらね。
私の前だけ、なんでしょ?
最近は。
…。
良く寝てるね。
祥子の妹。
…ゆみ。
然うとも言う。
…。
ま、私としては寝ててくれた方が良いんだけど。
直に起きるわ。
お腹を空かせて。
ふぅん。
…由乃が言葉を覚え始めたから。
この子も…祥子が居ない間に、屹度。
そだね。
聖。
うん?
…私は酷い姉ね。
……。
…ね、聖。
……なに。
起きたら、遊んであげて。
は…。
嫌?
……それよりも。
…。
蓉子の膝で昼寝したい。
…ゆみと同じね。
いや、違う。
蓉子の膝は私のだから。
……今は駄目よ。
ちぇー。
…。
…ねぇ、蓉子、さ。
…うん。
私としては甘えて欲しいんだけど。
……。
さっきの続き。
……あぁ。
私の前だけ、なんでしょ…?
……。
蓉子…。
……聖。
…うん。
……あっち向いて。
…へ。
お願いだから。
…あっち向いたら。
抱っこ、出来ない。
…。
抱っこ、したいのに。
……貴女の背に寄りかかりたいの。
…。
……お願い。
……まぁ、いっか。
でも後で抱っこするからね?
……うん。
それじゃ…。
……。
さぁ、どう
……。
ぞ…。
……。
…。
……本当、に。
…?
……。
…蓉子?
……。
え、と…。
……ありがとう。
え、もう、良いの?
ええ。
…。
なに?
いや…なんか、ね。
……嫌だった?
いや、全然嫌じゃない。
ただ一寸、思ってたのと違ったから…かな。
…然う。
…ね、蓉子。
ん…?
抱っこ、しても良い?
…。
……しても、良い?
…。
…。
…これじゃあ。
…。
抱っこ、されてると言うより…
…うん。
私が、してるみたい…。
…されるのも、大好き。
…。
…ねぇ。
ん…?
さっき、何て言ったの…?
……。
背中で…背中に。
……言ったら多分、不貞腐れるような気がするわ。
…。
私ばかり、て。
……なんか、さ。
…うん。
この頃は少し、諦めがついてきた。
…本当に?
……でもやっぱり悔しい、のかなぁ。
…ふふ。
叶うのならば。
一度だけで良いから、小さい蓉子を抱っこしてみたい。
…神様でも叶えられない願い、ね。
だからこそ、今の蓉子を抱っこしてるんだけど。
…されてるくせに?
……。
聖…?
…ちびの頃は良く、してもらった。
……良く、でも無いわよ。
いや…してもらったよ。
…。
私が言うんだから、然う言うことにしておいて欲しいな。
…ん。
……蓉子に触れてると安心するのは、多分…いや絶対、子供の頃の記憶が大きいんだろうなぁ。
…然うなのかしらね。
然うだって、絶対。
……収まったのに。
…。
この腕の中に。
……白ちび、だったからね。
…今では、もう。
蓉子は小さくなった。
…だから貴女が大きくなったのよ。
うん。
……背中だって、私よりもほんの少し広くて。
…少しは頼れるようになったかにゃ?
然うね……でも、より甘えたになった気がするわ。
あらら…。
……ああ、けど。
…。
貴女の熱は…変わらない。
…。
あの日、初めて抱いて感じた熱と…。
……安心する?
…。
私と一緒…?
……。
蓉子…。
…だめ。
……ほんの少しだけ。
だめよ、ゆみがいる…。
……だから少しだけ。
だ…
「あーー」
…わ、なに。
あ…。
あーうーー。
……起きちゃった、か。
ね、言ったでしょう?
…だったら。
駄目よ。
……。
聖。
…分かってるよ。
離して?
……ちゅーぐらいなら良いと思ったのになー。
ねぇ、聖。
…んー。
抱っこ、してみる?
…だっこ?
私の代わり…では無いけれど。
……。
…“祐巳”を。
あー。
…。
あーあー。
…。
あー…むぎゃ。
…。
……うー。
…ふむ。
むぎゃ、と来たか。
…一寸、聖。
んー?
何をしているの。
いや、何となく?
止めなさい。
いや、この顔を見ているとつい。
止めなさい。
…うー、うー。
蓉子だってやりたくならない?
ならない。
ほんと?
遠慮は要らないよ?
遠慮の問題じゃ無いから。
やらかい。
当たり前でしょう。
蓉子のむ
足の裏、抓るわよ。
……蓉子のほっぺたの感触が好き。
ああ、然う。
…うー。
聖、離してあげて。
嫌がってるわ。
あい。
あー。
そもそも私は抱っこしてみる、と言ったのよ?
うん、言ったね。
なのにどうして頬を引っ張るの。
や、何となく。
祐巳の頬を何だと思っているの。
何だろ?
あのねぇ。
だって私は別に抱っこしたくない。
…。
私がしたいのはあくまでも蓉子だけ。
…それはもう、分かったから。
十分すぎるくらい?
ええ、十分すぎるくらい。
じゃあ、好き?
…好き?
私に抱っこされるの。
……はいはい、好きよ。
大好き?
大好きよ。
…少し棒読み。
聖。
あーー。
わ…。
あーうー。
…蓉子、こっちに来たよ。
どうしよう。
素直に抱っこしてあげれば良いでしょ。
いや、でも、あー。
往生際が悪いわ
よ、蓉子。
え。
はい。
え、え…あ。
だぁ。
…ふぅ。
…一寸、聖。
ふむ、やっぱり蓉子さんだ。
いきなり何をするの。
危ないでしょう。
最善の策だと思って。
…。
だーだー。
……聖。
ああ、でも。
私の膝の上で落ち着かれるのは少し、と言うか、凄いやだな…。
……全く。
せー。
…。
せー、せー。
……蓉子さん。
うん?
赤子が…。
祐、巳。
いや、その子が。
何。
何やら私の名らしきものを口にしている節が見受けられるのですが、と言うか聞き受けられる?
聖。
せー。
………蓉子さん。
どうしてそんなに動揺しているのよ。
いや、だって、ついさっきまでは「あーあー」言ってたちびっこが、いきなり人の名を呼ぶなんぞ、しかも呼び捨て?
だから、言ったでしょう。
明日になればもっと覚えてるわよ。
…!
いや、だから、何其の顔。
だって蓉子さんの妹はそんな事、ひとっことも、言ってなかったではござらぬか。
いや、言葉使いがおかしいから。
どこの人?
ほれ、令んとこのちびが喋る喋らないって言っていたのは
まぁ、こんなものよ。
うちの子は。
……。
いや、だから何。
………私もこんなだった?
然うねぇ…。
…え、何、この間。
だって貴女はほっとんど喋らなかったもの。
……。
言葉覚えてないのかと思って心配したくらい。
…あー、なるほどー。
結構、菊乃さまが遊んでいたのよね。
…どうやって。
「ほれーほれー、菊乃さんだよー、言ってみー?」って言いながらほっぺたを突っついてた。
………何、それ。
藤花さまは抱っこしては、足をぶらんぶらんさせて、遊んでたし。
……お姉さま。
私のお姉さまは…
…蓉子のお姉さまは?
見た目はあまり関心が無さそうだったけど、なんだかんだ言いながらも、おしめ換えてくれたわね。
嘘…!
嘘。
…。
おしめ換えは私の仕事だったから。
……う、へ。
ん?
改めて、しかも真顔で言われると……凹む。
…どうして?
……あー、せめて私が蓉子と同い年だったならー。
そうしたら、双子みたいね?
この子達みたい。
……。
何?
いや、なんかそれはそれでアレな気分…。
…変な聖ね?
……。
よーこ。
…あ。
あら。
よぉこ。
よ、蓉子サン。
声、裏返ってるわよ。
だって、とうとう私の蓉子の名まで…
ちゃっかり自分のものにしないで頂戴。
え、だって、そうじゃん。
…真顔で言わないで。
照れた?
ばか。
えへへ。
せー、よーこ。
……ああ、しかしだね。
うん?
こうもあっさり、なもんなんですかね。
まぁ、こんなものよ。
この家の子たちは。
そりゃあさ、一瞬だもんだけれど、これじゃあっけないと言うかさ。
だから、一瞬、なんじゃない。
そうだけどさ。
本当にあっけないものだもの。
祥子と令も?
…。
蓉子さん?
…まぁ、然うね。
ふぅん。
…そういえば。
うん?
由乃ちゃんが令の名の次に覚えた言葉、何だと思う?
分かんない。
…少しは考えてよ。
素振りだけも良いから。
だって分かんないもんは分かんないもん。
…貴女が江利子を呼ぶ時、何て言う?
江利子。
は、あまり言わないでしょう?
…あ、分かった。
然う、それ。
何それ、大いに面白いんだけど!
貴女が言っているのを覚えちゃったのね。
あはは、ざまーみろー。
然う言う言葉も覚えちゃうから子供達の前では使わないで。
いや、だって、面白いじゃんか。
あははは。
笑いすぎよ。
だって面白く無い?
…誰のせいだと思ってるの?
日頃の行いだって。
…全く。
はははは。
…ふふ。
…ふぅ。
…ぶくぶくぶく。
聖、沈んでる、沈んでるから…!
あ、これは失礼?
ぷ、はぁ。
わざとでしょ、絶対にわざとなんでしょう?
うんにゃ、手違い?
……その顔は絶対に、わざとだわ。
遊んであげようと思って。
止めて。
ちゃんと抱っこしてあげないと足が届かないのよ。
泳げない子になるより良いじゃない?
海の子じゃないのだから、今は良いの。
蓉子って泳げなかったっけ?
一応は泳げるわよ、失礼ね。
でもあまり上手じゃなかったよね。
確か。
…溺れた事は無いわよ。
うん。
大体、そんなに泳ぐ機会も無いでしょ。
賀茂川?
…ああ。
ん?
…もう、言わないで。
なんで?
…一瞬、思い出しかけたから。
私が死にかけた事?
止めて、お願いだから。
…ごめんなさい。
…。
蓉子、ごめん。
……あの時は死んでしまうと思ったわ。
…。
…本当に。
…誰が、とは聞かない。
…。
せーさま?
よーこさま?
…ん。
…祐巳。
きもち、いいですね。
おふろ。
…気持ち良い?
蓉子。
……然うね、気持ち良いわね。
ねぇさまとはいったときもきもちよかったです。
へぇ、あの祥子が。
そりゃあ、こんな小さな子を一人で入れさせるわけ無いでしょ。
足、届かないのだし。
ま、そりゃそうだ。
わたし、さんにんではいるの、はじめてです。
たのしいです。
…だって。
ね、良かったでしょ?
……大体、聖が駄々を捏ねるから。
よーこさま。
…なぁに?
よーこさまはねぇさまとおんなじにおいがします。
…。
…へぇ。
でも。
…でも?
せーさまともおんなじです。
ふしぎです。
…。
…じゃ、私は祥子とも同じって事なのかね。
ちがいます。
ふしぎです。
…。
どーしてですか、よーこさま。
…どうして、て。
蓉子、どうして?
……聖。
気になるじゃん?
…分かってて。
でも祥子と同じなのは分からないもんね。
こんな時まで。
こんな時まで、何?
……幼子の言った事を真に受けないで。
けど幼子は素直なんでしょう?
蓉子は祥子と同じ匂いがするって、どうして?
…。
よーこさま?
祐巳。
あい。
私と祥子は“姉妹”だから。
だから同じ匂いがするのだと思うわ。
そうなんですか。
だからね、祐巳。
屹度、貴女も祥子と同じ匂いを纏っていると思うの。
ねぇさまと?
ええ。
だって“姉妹”ですもの。
わぁぁ。
じゃ、どうして蓉子は聖さんとも同じ匂いがするのかな。
私と祥子は違うのに。
……。
あ、そーです。
よーこさまはせーさまと
祐巳。
あい?
体、そろそろ洗いましょうね。
あ。
聖、祐巳を。
蓉子、ちゃんと聞きたいよ。
聖。
だって。
分かってるくせに。
蓉子の言葉で聞きたい。
…。
蓉子。
…後でにして。
今が良い。
困らせないで。
困るような事なの?
……。
よーこさま…?
祐巳。
…?
私は…聖と仲良しなの。
なかよし?
……。
だから、同じ匂いがするのかも知れないわ。
一緒に居るから。
ずっと、ですか?
…ええ、然うよ。
それこそ、聖が赤子の頃からね。
…然う、来たか。
あら、間違ってはいないでしょう?
…。
分かった?
あい、わかりました。
よーこさまはせーさまとなかよしさんです。
…ええ。
だからいっしょにおねんねしてるですか。
…!
然うだよ。
蓉子は私といつも一緒に寝てるんだ。
聖…ッ
間違ってない。
だからって…それにいつもでは
ちびに嘘を吐けと?
時と場合があるでしょう?
蓉子の事で嘘付くのは嫌だ。
聖。
祐巳ちゃん。
あい?
私と蓉子は好き合ってる。
だから同じ匂いがするんだ。
…ッ
なかよしさん?
然う、すっごくね。
すっごく…。
……聖。
分からないさ、どうせ。
でも
蓉子。
……。
よーこさまとせーさまはなかよしさん。
ゆみ、うれしいです。
…嬉しい?
…祐巳?
だってなかよしさんはいいです。
にこにこです。
……にこにこ、ねぇ。
……どこで覚えたの。
えりこさまがいってました。
……。
……。
…?
よーこさま?せーさま?
……でこめ。
……さぁ、体を洗いましょうね。
祥子、そっち終わったー?
…。
…よ、と。
祥子。
…。
祥子ってば。
…何、うるさいわね。
いや、うるさいって。
…。
て、祥子、返り血がひどい事になってるよ。
…然う。
や、然うって。
とりあえず、顔は拭いた方が良いと思うよ。
……。
えと、怪我は?
どこか痛いところは無い?
…無いわよ。
そっか。
良かった。
…。
見て、こんなの拾ったよ。
…。
形からすると茶碗かな。
お姉さまへのお土産になるかなぁ…?
…。
…。
……はぁ。
ねぇ、祥子。
……何。
大丈夫だよ。
…何が。
そんなに心配しなくても。
…別に心配などしていないわ。
由乃、今頃もっと言葉を覚えてるかな。
…。
なんてね。
だけど然う思うと、頑張れるんだ。
若しかしたら、おかえりなさい、て言ってくれるかも知れないし。
…能天気な人ね。
然うかな。
…。
まぁ、ね。
一緒に居られないのはすっごく残念だけど…でも、仕方が無いんだ。
由乃がご飯食べられなくなる方がもっと嫌だし。
…上の方達が討伐に出れば良いのだわ。
まだまだ、戦えるのだから…。
…。
……何よ。
祥子はさ。
わりと欲張りなんだよね。
…は?
ゆみちゃんは祥子の妹だけど、それだけじゃないよ。
…。
大丈夫。
だって蓉子さまじゃない。
…。
由乃の傍にお姉さまが居てくれるように、ゆみちゃんの傍には蓉子さまが居るよ。
……。
ゆみちゃんもさ?
屹度、おかえりなさいって迎えてくれるよ。
……。
ねぇ?
……人には偉そうに言うのよね、貴女。
ん?
自分だって由乃の事となるとあんなに莫迦になるくせに。
……。
言葉一つくらい覚えたくらいで大袈裟に…
あー、それは言わない約束じゃない。
してないわよ、そんな約束。
祥子だって、ねぇさま、って言われた時、顔が思い切りにやけてたくせにさー。
…。
しかも蓉子さま達に内緒にしてさ。
今頃、吃驚してるかも知れないよ。
…別に内緒にはしてないわ。
言う必要性を感じなかっただけ。
それを内緒にしてるって言うんだよ。
…いちいちうるさいわね。
祥子は本当に姉莫迦なんだから。
令には言われたくないわ。
然うだよ、私は莫迦だよ。
今更、だよ。
……。
さて、そろそろ行かないと。
祥子、顔についている返り血、早く拭かないと乾いて取れなくなっちゃうよ。
……。
あ。
さ、行くわよ。
祥子が装束で拭くなんて。
時間が無いのよ。
もたもたしないで。
あ、祥子。
…。
…全く、仕方が無いなぁ。
……ふん。
…。
せーさま。
…。
せーさま。
…。
せーむぎゃ。
…。
むぅぅ…。
…ふむ。
…聖。
んー?
面白い?
うん。
然う。
でもあまり引っ張らないであげて。
面白い。
む、にゃー。
あはは。
聖。
……は。
分かったから。
離しなさい、今直ぐに。
…あーい。
全く。
…よーこさま。
こちらにいらっしゃい、祐巳。
あい。
…。
うん。
あんよ、上手になったわね。
…あーあ。
逃げられちゃった。
よーこさまよーこさま、おひざに…
お座り、する?
…!
いいですか?
うん、いらっしゃい。
えへへ。
…ふーーーん。
何?
何か文句でもある?
うん、ある。
蓉子の膝は
皆まで言わなくても良いわ。
聞いたのは蓉子じゃん。
過多。
肩?
最近、くっつき過ぎ。
ああ、過多?
然う。
だって触りたいんだもん。
…。
だから、蓉子の膝は私のものです。
…はぁ。
…?
全く、貴女って人は
よーこたま?
…ぶ。
……。
今、よーこ“たま”って言ったよね?
…聞き間違いじゃないの。
いや、言った。
言ってない。
や、言ったよ。
言ってないわよ、ええ、言ってないわ。
ちび。
ぎゃ…。
もっかい、言ってみ?
…??
蓉子の事、もっぺん呼んでみ?
…よーこさま。
いやいや、然うじゃなくて。
…う。
聖、止めなさい。
間違いなく、言った。
だから
ちび、ちび。
ほら、言ってみ。
猫の子を呼ぶように言わないで。
…言ったのに。
どうでも良い事でしょう。
流しなさいよ。
いや、流せない。
蓉子たま、一寸良いかも知れない。
止めて。
蓉子たま、膝枕して下さい。
…怒るわよ?
怒らないで下さい、蓉子たま。
……。
蓉子たま蓉子たま。
膝枕、して。
…祐巳、一寸ごめんなさいね。
…?
ゴツン。
……蓉子、痛い。
調子に乗るからよ。
ちびが居るのに。
だから見せなかったわよ。
……うー。
祐巳。
あい。
そろそろ、祥子達が帰ってくるわよ。
ねぇさま?
然う、お姉さま。
!
いつですか?!
明日か、明後日か。
早ければ明日ね。
わぁぁ。
楽しみ?
あい!
お帰りなさい、ってちゃんと言える?
いえます!
おかえりさない!
…言えてないぞー。
祐巳、お帰りなさい、よ。
え、と…。
お、か、え、り、な、さ、い。
後
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