はーい、私も行くー!
ねー椿、良いでしょー?
菊はうるさいから来なくても良いわ。
つか藤には聞いてないと言うか、藤だって行く気満々じゃんかー。
当たり前。
白ちびが行くから?
これでも私、お姉さまだし?
形ばっかりじゃん。
あんたに言われる筋合いじゃないと思うけど?
いつもいっつも、蓉ちゃんに任せっきりでさー。
ぜんっぜん、お姉さまやってないじゃんかー。
良いのよ、でことんがり。
あんだとー!
この耳毛ふさふさめー!
生憎。
これは耳毛じゃなくて羽なのよ、でことんがり。
どう見たって、耳毛じゃん!
それに耳から生えてるわけでは無いし。
目の玉大丈夫かしら、でことんがり。
むきー!
連呼すんなー!
でことんがりでことんがりでことんがりへっぽこでことんがり。
うっさい!
てか、一言余計なもんが混じってるしー!!
まぁ、そういうわけだから。
私は確定なわけ。
どういうわけだ、この耳毛!
刺すわよ。
望むどこ、へぶ。
やかましい。
………ご、ごめんなさい。
…椿、顔が怖いわよ。
じゃあ、暫しの間、大人しくしててくれないかしら。
と言うかしてろ。
でもー!
面子は私が決めます。
何か異存でも?
…ないでーす、はい。
宜しい。
さて、蓉子。
はい。
此度は貴女にも行ってもらうわ。
了解致しました、当主様。
それから、聖。
……。
返事は?
……はい。
貴女にも出陣して貰います。
……。
聖。
……どうしてですか。
どうして、とは?
此の間、私は行きました。
ええ、初陣だったわね。
だから、何かしら。
……。
続けて戦なんて、この家じゃ当たり前の事よ。
ましてやこれからは貴女達の世代になるのだから。
……。
聖、返事。
……。
納得なんてする必要は無いわ。
此の家の子として生まれた以上、当主である私に従って貰うだけ。
…。
それはまた。
随分と横暴だわねー、椿。
こうでもしないと。
貴女の妹は行かないからよ。
ま、其れは然うなのだけれど。
其れでも従わない時は従わないわよ、此の子は。
その時の為に貴女が居るのよ、藤花。
矢っ張り然うなのかしらね。
て、コトはー…?
藤花、貴女も此度の討伐に加わりなさい。
仰せのままに、椿さま。
じゃあ私も行くー!
行きたいー!!
菊乃は残ってもらいます。
えーー?!
江利子も残すから、色々と面倒を見てあげて頂戴。
江利ちゃんは優秀すぎて見るもんないんだよー。
江利子ちゃんは本当に優秀だものねぇ。
どこぞの菊とは大違い。
つか、どこぞもへたくそも無いじゃんかー!
あら、ついうっかり?
あー、むかつくー!
大体藤だってむぎゃ。
や、か、ま、し、い。
……あい、すみません。
…藤花。
はいはい、ごめんなさいね。
で、残りの一人は?
当然、私が出陣〈デ〉るわ。
然う。
…うぅ。
蓉子、聖。
はい。
…。
出陣まで、体調管理を決して怠らない事。
良いわね。
はい、当主様。
……。
聖、返事をなさい。
………はい。
姉 ノ 心 、 妹 知 ラ ズ 。
聖。
…。
聖。
…。
聖。
…なに。
ご飯、ちゃんと食べないと駄目よ。
…。
ちゃんと食べないと、大きくなれないわ。
…。
何より、体力がつかないのよ。
…あ、そ。
聖。
…。
聖。
…。
聖。
…うるさいな。
初めて、ね。
…。
一緒に討伐に行くの。
…だから?
別に深い意味は無いの。
ただ初めてだな、て。
…だから、何なのよ。
これからは増えるのかしら。
…。
聖と、江利子と。
これからは行くのね。
…ごちそうさま。
あ。
…。
聖。
…。
聖ってば。
……何。
ちゃんと食べなきゃだめよ。
…食べた。
こんなに残ってるじゃない。
後でお腹を空かせてしまうわ。
…。
聖。
…。
聖。
…そんなに言うならあんたが食べれば良い。
これは聖の分。
私の分はちゃんとあるもの。
……。
あ、せ
聖。
…。
返事。
……何でしょうか、当主様。
せめて。
味噌汁だけでも飲みなさい。
……。
命令。
………はい。
……聖。
……ふん。
……。
…ふむ。
藤ー。
んー?
白ちびは相変わらず、だねー。
ええ、然うね。
今日のご飯、こんなに美味しいのに。
大体、あのままだとずっとちびのまんまなのになー。
それともずっとちびのままが良いのかなー?
ま、問題はそこじゃないけど。
蓉子ちゃん?
あ、藤花さま。
ごきげんよう。
はい、ごきげんよう。
で。
はい?
こんな時分に厨で何をしているの?
此れ、です。
…へぇ?
梅干は嫌いだから…。
それ、聖の?
はい。
椿は知っているのかしら?
…。
ま、姉としてはありがたいけど。
ありがとね?
い、いえ…。
しか、し。
蓉子ちゃんのお手製とは、我が妹はなかなかに仕合わせ者ね。
……。
…ん?
…でも、食べてくれないかも知れません。
あら、どうして?
美味しそうなのに。
…形、崩れてしまいました。
それに…
見てくれは良くて、中身が最悪って。
タチが悪いと思わない?
…。
ともあれ、聖が食べないのなら私が頂こうかしらね。
まだまだ現役だから、直ぐに腹が空くのよ。
あ、だから…。
椿には内緒ね?
は、はい。
お漬物も?
はい。
聖は何気に茄子のお漬物が好きなんですよね。
へぇ、然うなの。
…え?
知らなかったわ。
…ご存知無い、のですか?
ええ、ご存知無いわ。
……。
あ。
今、お姉さまなのに、て思った?
い、いえ。
ま、そんなものよ。
私は。
…はぁ。
だけど。
それでも“お姉さま”なのよねぇ、私。
……。
そろそろ持っていく?
ソレ。
あ、はい。
それにしたって。
美味しそうね、おにぎり。
…有難う御座います。
……。
…聖。
…。
やっぱり眠れないのでしょう…?
…また来たの。
本当、しつこいのね。
でも…。
要らないと言ったら、要らない。
……。
…本当に作ってくるなんて。
ばかじゃないの。
だって…。
もう来るな。
……聖。
私に構わないで。
…。
…。
……そんな事。
…。
出来ないわ。
…。
全部食べてなんて、言わないから。
一口だけで良いから。
…。
聖。
しつこいよ。
……。
腹が空いてようが、空いてなかろうが。
眠れようが眠れなかろうが、あんたには関係無い。
それとも何、母親ぶっているつもり?
そういうつもりでは…
鬱陶しいのよ。
……。
何かと世話を焼いて。
あんたは何なの。
私は貴女の家族だわ。
は。
笑わせるな。
笑わせてなんか無い。
私とあんたは他人よ。
ただの、ね。
……。
家族だなんて。
虫唾が走る。
…どうしてそんな事を言うの。
こんな呪われた家、さっさと終わらせてしまえば良かったのよ。
…!
そうすれば。
私なんか、生まれてこなかったのに。
そんな事、言わないで。
あんただって然うだ。
今頃、こんな風に私なんかの世話を焼かずに済んでいただろうに。
…。
何が仇討ちだ。
何が呪いを解く為だ。
その為に呪いの種を己らで蒔いて増やしているくせに。
…!
私もあんたも。
呪いの種の一粒に過ぎないのよ。
……そんな、こと。
其れなのに家族だなんて言って。
滑稽も良い所だわ。
言わないで…言わないで、聖。
……。
お願い…。
……ふん。
……。
もう、良いでしょう。
さっさと戻りなさいよ。
……いや。
……。
お腹、空いているのでしょう…?
だから、眠れないのでしょう…?
……また。
聖…。
…っ
触るな…っ
ほら、こんなに体が冷えているわ…。
触るなと言っているだろう…!
…体に良くないわ。
だから…。
……討伐に行けなくなるって?
…違う。
代わりなんて幾らでも居るわ。
違うわ、聖。
私なんか、居なくても。
聖。
数が足りなくなったら、増やせば良い。
今まで然うしてきたように。
聖。
然う、神と交わって。
あんたもいつか、そうやって呪いの種を増やすんだわ。
何でもない顔をして。
聖!
……。
聖の代わりなんて。
貴女の代わりなんて、何処にも居ない。
此処に居る貴女しか有りえない。
……。
代わりだなんて、自分を呪いの種だなんて…。
……どこまでもおめでたいのね、あんたは。
……。
……離して。
………聖。
もう、寝るわ。
……今よりもっと幼い時、から。
…。
貴女は眠れないと決まって、空を見るの。
……。
小さな体を冷たくさせて。
…だから?
私はもうあんたが思っている程幼くないわ。
呪いのおかげで。
…。
…もう良いでしょう。
放っておいて。
……。
約束どおり、貰っても良いかしら。
…藤花さま。
食べ物を粗末にするなんて。
そんな罰当たりなコト、出来ないものね。
……宜しければ、どうぞ。
はい、有難う。
…。
だけど。
三度は、無いのね。
珍しい。
…もう夜も更けていますし。
其れに屹度、駄目だと思います…。
あらあら、弱気ねぇ。
……聖、は。
私の事…
蓉子ちゃん。
…。
私、貴女の事を結構買っているのよね。
……。
とりあえず、一個は頂くわね。
夜食に丁度良いから。
……はい。
んー…冷めてしまってはいるけれど、美味しいわ。
……ありがとうございます。
お世辞だと思ってる?
……いいえ、そのような事は。
本当に美味しいわよ。
知ってる?
料理は愛情、と言うのよ。
……。
あら?
……私ももう、休みます。
あら、然う。
じゃ、おやすみ。
おやすみなさいませ。
藤花さまもあまり、夜更かしなさりませぬよう…。
然うね、出陣するのは明日だし。
こんな事で風邪でもひいたら、椿が怖いものねぇ。
…。
しかし。
こんなに美味しいのに、勿体無いわねぇ。
……。
ああ、然うだ。
蓉子ちゃん。
……はい?
もう一つも、置いていって貰えるかしら。
……良いですけど。
うん。
…それでは。
はい、ごきげんよう。
また明日。
……。
あら、聖。
……。
未だ、寝てないの?
…今、寝ようと思っていたところです。
ああ、然う。
じゃ、さっさと寝た方が良いわよ。
明日は早いから。
…。
若しも寝坊なんてしたら、椿が怖いわよ?
……。
それとも、何?
眠れな
お姉さま。
ん?
おやすみなさいませ。
はいはい、おやすみ。
……。
……。
……。
…明日の朝餉を食べたら。
……。
また暫くは、ほかほかご飯が食べられなくなるわねぇ。
……。
熱い味噌汁も。
……。
討伐の何が嫌かって落ち着いてご飯が食べられない事よね。
……。
おまけにあまり美味しいものでは無いし。
……。
然う考えると。
うちで食べるご飯って凄く贅沢よね。
……何が言いたいのですか。
あら、未だ起きてた?
其れはごめんなさいね。
……。
ま。
腹が減っては戦は出来ぬ、よ。
……。
だから美味しくなくても、仮令不味くても、食べられる時は幾らかでも良い、腹にちゃんと収めておかないと、て。
自分に言い聞かせているのよ。
………然うですか。
ええ、然うよ。
……。
何より。
腹を空かせてふらふらになって、それこそ、足元も覚束ず、頭の中は真っ白なんて事になったら。
鬼どもに引導を渡される前に、椿に渡されるわ。
……お姉さま。
なに。
……頭の上、の。
ああ、此れ?
ただの夜食。
……。
気にしないで。
………気になど、してません。
そ?
………おやすみなさいませ。
はい、おやすみ。
……。
……。
……。
……。
……。
……なかなか、に。
……。
強情な妹、ね。
・
乱レ咲ケ、花乱火〈カランカ〉。
あー、相変わらずあっついわねぇ。
此処は。
藤花。
あー、暑い熱い。
はしたない。
だって暑いんだもの。
はしたない。
大体、薙刀士〈ツバキ〉の格好は暑苦しいのよねぇ。
一枚脱いだら良いと思うわ。
……ところで。
あー。
何を食べているの。
ん?
現地調達?
……。
蓉子ちゃん、蓉子ちゃんも食べる?
……え。
焼き鳥。
味付けも何も無いけれど、腹の足しにはなるわよ?
あ、あの…。
美味しくは無いけれど、不味くも無いから。
其れって、まさかさっきの…。
オンモラキ?
………。
要る?
……ありがとうございます。
じゃあ、はい。
で、でも今はあまりお腹は空いていないのでお気持ちだけで。
お気遣い、ありがとうございます。
あら、残念ねぇ。
噛みごたえがあって良いのに。
…あの。
ん、やっぱり要る?
あ、いえ…。
大丈夫大丈夫。
はい、あーん。
あ、ふ、藤花さ…。
首、飛ばすわよ。
…なんて。
やだもう、ただの冗談だって。
と言うか薙刀は人に向けては駄目よ?
蓉子も要らないのなら要らないとはっきりと言いなさい。
は、はい、当主様。
怖いお姉さまだわねー。
…。
あーだから。
薙刀は人に向けたら駄目だと思うのよ、私。
……あの、藤花さま。
なぁに?
おいしいのですか…?
知りたいのならやっぱり、自分の口に入れた方がてっとり早いわよ。
……。
大丈夫大丈夫。
腹は壊さないわ。
…初めてでは無いのですか?
ええ、初めてじゃないわ。
ねぇ、椿。
え…。
……。
お姉さ、あ、いえ、当主様も食べたことがあるのですか?
……無いわよ。
……。
あの時は菊と三人で
私は食べ無かったわ。
あら、然うだったかしら。
然うよ。
はて。
あんたらが勝手に、人の制止を振り切って、食べてたのよ。
ま、仕方が無いわね。
腹が減っては戦は出来ぬもの。
だからって
味は鳥よ?
……莫迦は死ななきゃ治らないわ。
やぁね、菊ほどじゃないわよ。
で、分かった?蓉子ちゃん。
え、何がですか…?
味は鳥。
了解?
は、はい。
食べたくなった?
……いいえ。
そ?
其れは残念。
……。
あら、聖。
然う言えば貴女も居たわね。
……出来れば居たくは無かったんですが。
ふふ。
然うだ、食べる?
…結構です。
結構、て事は食べるのね。
食べません。
あらあら。
……。
腹が減っては戦は出来ぬ、わよ。
……減ってはいませんから。
あ、そ。
……藤花。
ん?
……。
ま、大丈夫でしょ。
…貴女。
まさか、
分かってる、から。
一応。
……。
さて、どんどこ行きましょうか。
はぁ…はぁ…。
聖、そっちに行ったわ…!
…。
聖!
…く。
其れは動きが素早いから!
気をつけて!
……。
聖…!
……うるさい、な。
蓉子!
前を見なさい!
はい!
……。
やぁぁ…!!
……はぁ。
いあぁぁ…っ!
…うん。
なかなかに頼もしい、わねぇ。
藤花…!
はいはい。
ちゃんとやってるわよ、と。
…次!
……。
よし…!
……はぁ、はぁ。
…あ。
……。
聖、もう一匹そっちに…!
……。
……?
……。
聖…?
…あ!
……。
聖…っ!!
………はぁ。
あ、まず。
……。
せいぃぃ……ッ!!!
聖。
…。
なんであまり食べないの?
ここのところずっと…。
…。
討伐に行ったら、暫くは家のご飯食べられないから。
…だから?
食べすぎは駄目だけれど。
全然、食べないのも駄目よ。
…。
お腹が空いたら戦えないわ。
…あ、そ。
大事な事なのよ。
…。
せめてご飯だけでももう少し食べて。
お願い。
…。
そうだわ。
……。
私、おにぎりを作ってくるね。
…は?
おにぎりってお茶碗のより何故か食べやすいの。
だから…ね?
…。
少しだけ、待ってて。
要らない。
聖。
お節介。
余計なコトばかりしてないで、自分の腹でも満たしたら?
…余計な、事。
違うのかしら。
だって、聖が…。
それが鬱陶しいのよ。
…。
いい加減、気が付いたらどうなのかしら。
…待ってて。
…。
作ってくるから…。
うまくは出来ないけど…作ってくるから。
……。
・
聖。
……なに。
これ…。
……。
その…おにぎり、なんだけど…。
…そのようね。
うちから持ってきたの。
……。
余計なコトかも知れないけど…でも、
……はぁ。
これからの事を考えたら今のうちに、少しでも、お腹の中に入れておいた方が良いから。
じゃあ、自分で食べれば?
私は…もう、食べたから。
…そう、当主様も藤花さまも。
……あとは私だけ、ね。
聖、お願い。
私は十分に食べてるわ。
だけど、足りてないでしょう?
貴女の体は今、成長期になろうとしてるから、
…。
ちゃんと食べておかないと直ぐに
鈍る。
…。
重くなる。
要らない。
で、でも、それでなくても聖は
小さい、とでも?
……。
それで?
そのせいであんたに迷惑をかけてるの?
迷惑なんて…。
じゃあ、良いでしょう。
放っておいて。
聖…。
………
………。
…あ。
……。
聖、気が付いた?
……。
良かった…。
……。
どこか痛むところ、ある?
……ッ!
聖…?
……。
まさか、頭を打って…。
……蓉子。
え、何?
……。
なぁに、聖。
……血。
ち…?
……ああ。
……。
え、と。
これは…ね。
返り血、よ。
……。
此処にはお風呂なんてもの、無いから。
仮令頭から被ってたとしても、どうしようも無いのよね。
拭うにも限度があるし。
…藤花さま。
ごきげんよう、聖。
気分は、どう?
……さいあく、です。
あら、然うなの?
…。
折角、蓉子ちゃんが怪我を治してくれて、おまけに膝枕までしてくれてるのに?
……。
あ、聖。
未だ…
……ぅ。
あ。
……。
ま、急には動けないわね。
くらくらするだろうし。
……別に
聖。
……。
返事をなさい、白ちび。
……はい。
動けそうかしら。
………。
正直に言いなさい。
………。
力尽くで吐かせてやっても良いのよ。
と、当主様。
聖はたった今、目が覚めたばかりですから…
だから?
何、蓉子。
だ、だから…その、
まぁまぁ、椿。
怒りはごもっともだけれど、今は勘弁してあげて頂戴。
と言うか怖いから、ね?
だから。
いつまで経ってもこのちびは返事すら出来ないのよ。
それはちゃんと謝るわ、ごめんなさい。
だから…ね?
……全く。
何はともあれ。
気がついて良かったわね、聖。
じゃなきゃ、鬼どもの餌食になってたかも知れないわよ?
……別に其れでも構いません。
あら。
私が此処で鬼に食われたところで。
どうせ代わりは居ますから。
聖…!
………。
どうして、そんな事ばかり…。
あらあら。
……。
聖ったら。
駄目じゃないの、蓉子ちゃんを泣かせちゃ。
……知りませんよ。
とか言いながらも、膝枕してもらってる。
ちゃっかりしてるわよね。
…。
ああ、良いわよ。
無理に起きないでも。
……。
と言うより、起きられないでしょうから。
未だ。
……。
椿。
…何よ。
と言うわけだから。
もう少し、休息時間を貰っても良いかしら。
……。
もう少し稼いでいくつもりなら、ね。
こんなんじゃ、役に立たないわよ。
それとも、帰る?
……。
然う言うわけだから。
見張り、お願いね。
……貴女は?
ん?
ちょっくら、現地調達?
……。
蓉子ちゃん。
…はい。
もう暫く、その子の事お願いね。
……。
あら、お返事は?
……はい。
聖も良い子にしてるのよ。
……。
ああ、そうそう。
聖。
……。
鬼の餌食になるのね、あれは結構えらいコトよ。
……。
ただ喰われれば未だマシ。
奴らね、五体を引き千切って、だけど生かしたまま、“弄ぶ”から。
……。
それこそ。
女とか、男とか、関係無くね。
その絵は流石に胸糞悪いわよ。
……。
幾ら孕めないとは言え。
喰われながら腹に種を植え付けられるのは
藤花。
ん?
元服前の子供達。
でも己の身を守るのは所詮、己。
……。
ま、其れだけ。
じゃ、一寸行って来るわね。
・
…あー。
…。
あーー。
…。
あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー。
…うるさいですよ、お姉さま。
つまんない。
…そうですか。
あー、つまんないよーぅ。
……。
私も一緒に行きたかったよーぉ。
……。
あーあ…。
満足しましたか?
しないよー。
全っ然。
でしょうね。
江利ちゃん。
はい。
うー…。
何ですか、お姉さま。
教えること、何にもない。
そうですか?
弓についても何にも、ない。
そうでもありませんよ。
お姉さまにはまだまだ敵いません。
けど、然う遠くは無いよー。
お姉さまの弓は面白いですから。
褒められてる?
ええ、褒めてます。
えへへー。
……。
でもさ、でもさ。
何でも適当に覚えちゃうのってつまんないよね。
ラクと言えばラクなんだけどさー。
私もそう思います。
つまんないね。
はい、つまりません。
椿達、どうしてるかなー。
さぁ。
あ、そうだ。
…。
まだ、あった。
何でしょう。
江利ちゃんは未だちっさいから、力が弱い。
ねー?
そうですね。
じゃ、お団子食べよー。
お団子、ですか。
そー、お団子ー。
イツ花ー、お小遣いちょーだい!
お姉さまが食べたいだけなんですね。
違うよー。
全ては江利ちゃんがおっきくなる為、だよー。
じゃあ、そういうことにしておきます。
みたらしー、みたらしー。
…でも屹度、当主様にはばれてしまうと思いますけど。
・
はい。
…。
…。
現地調達。
……あ、あぁ。
……。
さぁ、お食べなさい。
…え、と。
…。
私も…ですか?
左手のは蓉子ちゃんの分。
……やっぱり、そうですよね。
はい、聖。
右手のは貴女の分。
……。
食は全ての基本よ。
ねぇ、椿。
…否定はしないわ。
じゃ、肯定してるのね。
否定をしていないだけ、よ。
はい、そんな顰め面椿にも。
…。
なに、一寸した間食だから。
差支えが出る程、腹には溜まらないわ。
……。
当主様…?
…はぁ。
貰うわ。
え。
はい、毎度あり。
蓉子、聖。
は、はい。
…。
さっさと食べてしまいなさい。
ゆっくりしてる時間はもう、無いわよ。
…。
…。
何、蓉子。
…あ、いえ。
……。
聖。
……。
気分は、どう?
……最悪です。
あら、折角蓉子ちゃんが膝ま
其れはもう良いです。
…聖、もう大丈夫なの?
……おかげさまで。
…そう。
良かった…。
……お人好し。
……。
ふふ。
じゃあ改めて、はい。
……あ、ありがとうございます。
……。
せーい?
拒否権は無し、よ?
……分かりました。
うむ、宜しい。
……。
……。
蓉子。
……え。
食べる前に言う事は?
……え、えと。
いただき、ます…?
聖も、ね?
……いただきます。
はい、召し上がれ。
……。
……かたい。
顎が丈夫になって一石二鳥。
……その前に飲み込ませんが。
噛めば柔らかくなるから。
味も噛めば噛むほど、ってヤツよ。
……。
それに。
咀嚼する回数が多ければ多いほど、腹が勘違いしてくれるしね。
…?
蓉子、聖、食べたら出発よ。
良いわね。
あ、はい…。
…。
聖。
…はい。
あら、椿。
もう食べちゃったの?
…悪い?
いいえ?
…。
…。
………かたい。
………うん。
はい、お仕舞い。
…。
で、どう?
今度こそは
…無いわ。
あら。
…茶碗なんぞ。
其れ、珍しいものなんじゃないの。
飯代の足しにはなるわよ。
…。
で。
折角此処まで来たんだから猫でも狩ってく?
蓉子ちゃんの初陣以来でしょ。
蓉子の初陣は今年に入ってからだから、無理。
あー、然う言えば。
どこぞのちびが愚図ったから。
んー、然うだったかしら。
…もう少し、潰すわ。
虱潰し?
戦勝点稼ぎにもなるでしょう。
戦勝点が欲しいなら墓に行った方が良かったんじゃない?
あっちの方が椿の好きな、能率の良さ、があるわよ。
そもそも、戦勝点が主な目的では無いわ。
然うねぇ。
まさか此度の討伐が椿の欲しいもの探しだとは
選択の幅が広がるわ。
同じ方がラクじゃない。
どうせ、継がせるのならば。
此処まで来たら、勝手に復活するわ。
教える必要も無い。
あら、冷たい。
これしきの技、己で生み出せなければ朱点など到底打ち倒せる筈が無い。
相変わらず、ね。
蓉子。
…はい。
もう少し、よ。
……はい、当主様。
……。
…何、藤花。
いいえ?
せーい。
……。
と、言う事だから。
……。
お腹は空いてない?
…お陰さまで大丈夫です。
そ。
じゃ、もう一分張りしましょう。
『ギィ…ギィ…』
椿、椿。
何。
見て。
命乞いなんて、してるわよ。
だから?
だわね。
『……ギィィ』
ごきげんよう。
……。
はい、お仕舞い。
で?
……駄目ね。
然うだと思ったわ。
……。
紅こべあたりじゃ、ね。
戦勝点も大した事、無いし。
矢張り天魔大将…。
とは言え、大物は大方掃除し尽くしちゃったから。
残ってるとしたら雑魚しか居ないわねぇ。
……。
雑魚なんて相手にしたって、無駄に疲れるだけだわ。
出来る事なら、やりたかないわね。
……。
然うは思わないかしら、椿。
貴女に言われるまでもないわ。
じゃ、さっさと帰りましょう。
ま、当面の食い扶持くらいはそこそこに稼げたでしょ。
けれど家の修繕及び改築費には全く持ってならないわ。
とりあえず、食うに困らなければ良いじゃない。
我が家には予定を含めて食い盛りのちびが三人、居るのだから。
三人、なら良いのだけど。
椿が居ない事を良い事に“無駄に”食ってるわね、また。
説教。
局地的な雷で家が壊れなければ良いけど。
さて、聖、蓉子ちゃん。
……。
……。
聖はいつもどおりだから良いとして。
蓉子ちゃん。
……え。
聞こえてる、かしら?
あ、はい…何でしょうか、藤花さま。
そろそろ引き上げ、だから。
……。
帰るわよ、蓉子。
……はい。
蓉子ちゃん、若しかして疲れた?
…いいえ、大丈夫です。
然う。
聖は?
……。
ま、わざと返事しないくらいなら未だ戦えるわね。
じゃ、殿〈シンガリ〉は聖。
……。
それじゃ、帰りましょうか。
椿。
ええ。
……。
蓉子。
…あ、はい。
…。
え……。
……。
あ、あの、当主様…?
…はぁ。
藤花。
やっぱり、だった?
…。
ま、らしいわね。
然う言う問題では済まされない。
まぁ、然うね。
蓉子ちゃん。
は、はい。
“戦利品(オミヤゲ)”、貸して。
はい…?
持つから。
この子が。
…。
だ、大丈夫です。
良いから。
あ。
はい、聖。
宜しくね。
………。
と、当主様…。
家に帰るわよ。
は、はい。
でも…。
でも、何。
……いえ。
言いたい事があるのならば、はっきりと言いなさい。
…手、が。
“子供”の手を引くのは年長者の務めだわ。
……。
…務め、ね。
それではこれより帰京します。
藤花、聖、貴女達も良いわね。
はいはい。
……。
後
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