ミ ン ナ ノ 蓉 子 サ マ 一 日 目 。 藤 花 ノ 。 …。 …。 ……。 …うん。 ………。 蓉子ちゃん。 あ、はい。 先刻からやけにあっつーい視線を感じるのだけど。 私に何ぞ、御用でもあるのかしら? …。 蓉子ちゃん? あの、藤花さま。 なぁに? あの、ですね。 うん。 ……。 …やっぱり、良いです。 やっぱり、て。 そんな事言われると余計気になっちゃうじゃない、の。 にゃッ ふふ、猫みたい。 あ、いや、藤花さま…。 あーやっぱり可愛いわぁ、蓉子ちゃん。 く、苦し… こんな可愛い蓉子ちゃんに見つめられちゃって、本当、困っちゃうわねぇ。 は、離して、離して下さ、い…。 じゃ、言う? い、言います…。 はーい。 で、何? …えと、ですね。 うん。 …触ってみたいな、と。 触って? 何を? 肌? あ、いえ、其の…耳の脇の羽、を あー、これ? 何、触りたいの? はい。 あ、失礼なのは重々承知しているんです…。 だけど、触ってみたいのね。 …はい。 ふぅん。 え、えと…駄目、ですよね…。 良いわよ。 え。 良いわよ、思う存分に触って頂戴な。 良いのですか? だって触りたいんでしょ? コレに。 は、はい。 うん。 じゃ、はい、どうぞ。 あの、本当に宜しいのですか…? 良いわよ。 別に減るもんじゃ無し、蓉子ちゃんに触られるのなら聖の姉冥利につくってもんだし。 そ、それじゃ…失礼、します。 はい、どうぞ。 ……わ、ぁ。 ……どう? 思っていた以上にふわふわしてます。 面白い? と言うより、手触りが良くて気持ち良いです。 然う? 其れは良かった。 矢張り、お手入れとかなさっているのですか? うん、まぁ、一応ね。 一応? 然う、一応。 …? で。 もう、良い? あ、はい。 有難う御座いました。 いえいえ、どういたしまして、 ひゃッ と。 ふ、藤、 お礼は蓉子ちゃんを抱っこ、で良いから。 藤花さま…ッ うふふ、蓉子ちゃんってば柔らかくてあったかいわ〜。 く、くすぐった… 然うだ。 今夜は私と寝ない? そうすりゃ羽も触り放題よ? で、でも、お姉さまが… 良いから良いから。 椿には私から言っておくから。 はい、決まり! 二 日 目 。 菊 乃 ノ。 …。 …。 ……。 ……。 …あ、あの 蓉ちゃん…! は、はい…?! 私に何か言いたいコト、無い? え? 例えば、どっか触りたいとか! あ、あの、菊乃さま? 仰っている事が 此の、とんがっちゃってる耳とか! 触りたくない? い、いえ、別、に… じゃあ、このでこは? 思い余ってペシってやっても良いよ!? 合言葉はでこぴったん! け、結構です…。 と言うか、でこぴったんって何ですか…。 えーー!? なんでーーーーーー??!! な、なんでーと言われましても…。 だってさ、藤の耳羽は触りたかったんでしょ? つか触ったんでしょ? は、はぁ…。 じゃ、私にも触ってみようよー。 屹度面白いよーー? お、面白いって… さぁさぁ、触ってみよー! き、菊乃さま、お顔が、お顔が近い… …あ、良いコト思いついた! …は? てか、私が蓉ちゃんに触れば良いんじゃーん! じゃ、じゃーん、て。 てなわけでー。 え、あ…きゃ はーい、蓉ちゃーん! たかいたかーーい!! あぁぁ…ッ もういっちょー! き、菊乃さまぁ…ッ あー、蓉ちゃんってば相変わらずちっちゃくて可愛いなー! にゃんこみたいー! わ、私はにゃんこ、で、は……ッ 覚えてるかなー? 蓉ちゃんが未だ赤子だった頃はね、良くこうして遊んだんだよー。 い、今はもう、赤子、で…は…… もう、ころころと笑ってねー。 あーほんと、かわいかったなぁ! お、下ろし、て…。 えい、おまけのでこぐりぐり! あ、あう……。 あはははー! お、お姉さ、ま…。 あ、そーうだ! 蓉ちゃん、今日は一緒に寝よう! はーい、決まり!! 三 日 目 。 椿 ノ 。 …。 …。 蓉子。 はい、お姉さま。 一族にかけられた呪いについては以前、話したわね。 はい。 短命と断絶の、です。 然う。 いつか必ず、朱点を討ち倒しかけられた呪いを解くが為、一族はこれまで神と交わってきたんですよね。 ええ。 …時に蓉子。 はい。 私達にはもう一つあるの。 …はい? 呪い、と言うより、宿命とでも言うのかしら。 けれど運命と呼ぶにはあまりにも滑稽で莫迦莫迦しい。 あの、お姉さま…? 初代様の第一子である紅〈コウ〉さまが私達の始まりなのも、話したわね。 はい。 それから第二子に黄沙〈キサ〉さま、第三子に白〈ハク〉さま。 其の血は今は菊乃さま、藤花さまに受け継がれているんですよね。 ええ、然う。 其れでお姉さま。 もう一つあるとはどういう事なのですか? 紅さまは…其れはもう、良く出来たお方だったらしいわ。 え…。 明後日の、あらぬ方向に走ろうとする母を止め、自分の歩調でどっかの世界に行っては戻ってこない妹を呼び戻し、 一つの事にのめりこんでは回りが見えなくなる弟を時には張り倒してまで目を覚まさせ… え、えと、大変な話ですね。 そして、其れが。 私達の宿命とも言える事なの。 然う、時には血を同じにした者さえも。 ……? 蓉子。 はい。 莫迦と阿呆は。 調子づかせる前に手を打たなければ、駄目。 …え、と。 其れが私から貴女に伝えるたった一つのこと。 あの、お姉さま? 莫迦と阿呆って一体、何のこ まぁ、此度については私から喰らわしておいたけれど。 大体、 あ、あの、 毎度毎度、事あるごとに人の妹に手を出し…いや、これだと言い方に品が無いわね。 お姉さま…? 蓉子。 …あ。 良い? 莫迦と阿呆は、一旦、調子に乗り出すと本当に手に負えないわ。 お、お姉さま、 だから、手加減は無用。 手段は選ばない事。 と言うより、隙を与えては駄目。 か、肩が痛いです、 貴女は何処か甘いところが…いや、 お姉さ 四 日 目 。 親 父 の 。 …。 …。 …え。 ……。 …うえ。 ………。 ちちうえ…! おわぉ! ちちうえ、おきてください。 お、何だ、蓉子か。 どうしたぃ? どうしたぃ、じゃありません。 おねえさまが んぁ?椿がどうしたって? とっととしたくをしろ、とおっしゃってました。 支度? あー…。 しゅつじんの、です。ちちうえ。 しゅつじん…? こんげつはとりいしぇんまんぐうにむかう、と。 おお、そういやそうだったなぁ。 こいつはうっかりだ。 そんなことおっしゃっていたらまた、おねえさまにしかられますよ。 おお、椿はおっかないからなぁ。 ちちうえ。 ははは。 しかしだな蓉子、鳥居しぇん満宮じゃないぞ。 え? 鳥居千満宮だ。 だが然う言うところもまた、可愛いところだがなぁ。 あ…。 うん、また重たくなった。 日に日にでかくなっていくな、我が娘は。 ちょい前までは歩けもしなかったと言うのに。 今じゃ、言葉も話せるようになった。 ち、ちちうえ、ふざけていないではやくしたくを… ……。 …? ……すまない。 ちちうえ…? あ、いや、然うだな。 おっかない椿の雷が落ちる前にさっさとせにゃいかんな。 …ちちうえ。 はっは。 もう、わらいごとではありませんよ。 おろしてください。 どーれ。 いっちょ、親父の仕事をしてくるかな。 娘の明日のおまんまの為に。 ちちうえってば。 しっかし。 帰ってくる頃にはまた、でかくなっているんだろうなぁ。 そしてあっという間に嫁にやる位に…あー、駄目だ駄目だ! そこらのやわな神〈ヤツ〉には呉れてやらん、断じてやらんぞ…! 余 談 。 椿 ト 勇 魚 。 なぁ、椿。 何でしょうか、兄上。 いずれ蓉子も交神するようになるんだよなぁ。 当たり前です。 けれどするもしないも其の時になってみないと分かりませんが。 然うだよなぁ。 蓉子が交神を、だなぁ。 今から心配ですか。 蓉子は未だ、一ヶ月にもみたない子供だと言うのに。 あれだなぁ。 間違っても牛だとか餅だとか猿だとか鯰だとか髑髏野郎だとかにはやりたくないなぁ。 いや、間違ってもやらん。絶対、やらん。 と言うより、誰にもやりたくないだけでしょうが。 うう、やりたくないなぁ。 だが、なぁ。 案外、一族の中から現れるかも知れません。 あ?何が。 蓉子の相手、です。 な、何だとぉ…! そいつぁ何処の誰だ!!蓉子を誑かそうとするヤツは! ンなこと、断じて許さんぞ…! 例えば、の話ですよ。 と言うか其の頃には兄上はとっくに此の世からいなさそうですけれど。 …お前な? 流石の俺でもきついぞ、其れは。 うっかり泣くぞ? どうぞご勝手に。 しかし本当に兄上は親莫迦ですね。 絵に描いたようです。 …姉莫迦に言われる筋合いはねぇがなぁ。 は、何か仰いましたか? 今、莫迦と聞こえたような気がしたんですが。 あ、いや、其の…き、気のせいです。 ですよね。 次 |