由乃、振り回すだけでは駄目よ。
   何度も言わせないで。


   …はい、すみません。


   由乃さん。
   手、見せてもらっても良いかな。
   一寸、血が滲んでるみたいだから。


   有難う、祐巳さん。
   けど単なるかすり傷だし、此れぐらい自分で治せるから。


   令。


   …何。


   本来ならばこういった注意は貴女がすべき事なのよ。


   …分かってるわよ。


   ならば。
   ちゃんと果たしなさい。
   隊長である貴女がそんな事でどうするの。


   …。


   聞いているの、令。


   …由乃。


   …何、令ちゃん。


   傷、は?


   …此れぐらい、大丈夫よ。
   心配しないで。


   …祐巳ちゃんは?


   私は平気です。
   ずっと後衛でしたから。


   然う。
   じゃ、行こうか。


   一寸、令。


   …。


   令!


   …崇良親王はこの更に奥、だから。
   皆、今一度、気を引き締めるように。

   
   私が言いたい事は其れでは無いわ。


   …。


   ちゃんと言葉にしなさい。
   じゃないと、伝わる事も伝わらない。


   …祥子、何だか蓉子さまみたいだね。


   茶化さないで。


   茶化してなんか無いよ。
   そういや祥子も良く蓉子さまに…


   で?
   其れと今問題にしている事と何か関係があって?


   いや、無いけど。
   ただ似てきたな、て思っただけ。


   然う言うのであらば。
   今、私が言いたい事もちゃんと分かってるのよね。


   …。


   令。


   …何となく。
   聖さまの気持ちが分かるような気がするよ、今。


   されど、私はお姉さまにように甘くは無いわよ。


   分かってるわよ。
   祥子が甘いのは祐巳ちゃ…


   …祐巳が、何?


   いや、何でも無い。


   さっさとなさい、令。
   無駄な時間は無いのよ。


   …だからさっさと先に進もうと、


   嫌な事を先延ばしにするのは悪い癖。


   ……由乃。


   …。


   昔、私が言った事覚えてる?


   …昔って?


   由乃が扱う得物は剣とは違う。
   だけど剣と似ているところもある。


   そんなの、今更言われなくても知ってるわよ。
   大振りするな、と言いたいのでしょう?


   知ってるだけでは駄目。
   現に由乃は隙が多すぎる。


   …。


   だから。
   今のままでは大将戦はおろか、雑魚戦の前にも立たせるわけにはいかない。
   奥に行けば行くほど、鬼の力は増していくから。


   其れって。
   後に下がってろって事?


   祐巳ちゃんと共に私達の援護に務める事。
   良いわね。



   でも其れじゃ私は…!


   初陣なんだって事。
   ゆめゆめ、忘れてくれるな。


   …ッ


   …行こう、祥子。


   ええ。


   祐巳ちゃんも。


   …令ちゃん。


   …。


   其れは隊長としての指示なのね。


   ええ、然うよ。


   …分かった。
   けど。


   …。


   ちゃんとこっちを見て話して。
   じゃないと、納得出来ない、


   納得なんてしなくても良い。


   な…。


   生きて帰る。
   其の事だけを考えていれば、其れで良いわ。










   幕間二