江利子、本当に良いの?



   ええ。


   でも。


   ま、でこが良いって言ってるんだから良いんじゃない。


   聖。


   私らが兎や角言ったところで変わりゃしないんだから、このでこは。


   …其れは然うなんだけど。
   けど、流石にこれは…。


   思うに。
   遅かれ早かれ、いつかはこういう事になった。
   そして其れが今だった。ただ其れだけの事。


   他人事みたいに。


   他人事だもの。
   勿論、蓉子にとっても。


   他人事じゃないわ。
   家族の事よ。


   家族でも。
   個人として見れば、他人。
   違う?


   …。


   其れに。
   仮令、血が濃くたって他人。
   然う言ってたのは誰だっけね。


   …私、だけど。


   ま、遅かろうが早かろうが。
   私はこういう選択をしたかも知れないから。
   気にしなくても良いわよ、蓉子。


   だってさ、蓉子。
   ある意味、業ってやつだと思う。
   其れか単なる一風変わった性癖。


   噛み癖のある人には言われたくないわ。


   ほっとけ。


   けれど。


   どんな事になろうとも、私は後悔なんてしないわよ。
   自分で選んだ事だから。勿論、この後の事も。
   其れに対して、私は私の遣れる事を遣るだけ。


   …分かったわ。もう何も言わない。
   でも私達は家族だから。其れだけはちゃんと覚えておいて。


   何を今更。
   忘れたくても忘れられないわよ。
   別に忘れたいわけでも無いけれど。


   え、と。
   其れじゃ最後に当主として江利子に問うけれど。
   本当に此の交神をする。
   他に何か言いたい事は?


   無いわ。


   蓉子。
   異存は?


   …無いわ。


   あい、分かった。
   其れでは当主として其れを認める。
   と言うわけだから、イツ花。
   支度、宜しく。


   待って、イツ花。
   私も手伝うわ。


   え、蓉子行っちゃうの?
   此処に居れば良いじゃん。


   少しでも出来る事をしたいのよ。


   えー…。


   何だったら聖は江利子の禊にでも付き合ったら?


   『絶対、嫌』


   然ういう時だけ、呼吸が合うんだから。
   イツ花、行きましょう。


   あー蓉子ぉー。


   ねぇ、聖。


   うん?


   若しも。
   此れが蓉子の


   勿論、認め無いけど。
   其れが?


   でしょうね。








   陣・二