……。
……せ、い。
…!
…せい。
……。
まって…。
……。
…いかないで。
…。
おねがい…。
…。
…ひとりに、しないで。
……。
おねがい、だから…。
……。
せい…せい…。
……。
……ぅ。
……。
あぁぁ……。
…蓉子。
……江利子。
昼間から呆けて。
…そうだった?
はたから見れば。
…そう。
ごめんなさいね…。
……。
なに…?
…いいえ。
そう…。
で、どうするの。
…なにが?
…これから。
……ああ。
当主、使い物にはならないでしょう。
アレじゃあ。
…。
……もう、喪は明けているのよ。
……。
蓉子。
…分かってるわ。
…。
……分かって、いるの。
…。
……。
…静かになったわね。
え…。
この家も。
……。
新しい家族がこの家に来るまで。
この静けさのままなのね、屹度。
……。
…お姉さま方の存在はやっぱり大きいものだったわね。
いつも騒がしくて。
…ええ、本当に。
…。
だから、思うの。
私達にお姉さまたちの代わりが…。
ならない。
と言うより、なれない。
……。
それで、良いのよ。
…。
今はそんな事より。
…?
当主、アレをどうするつもり?
……。
このまま、甘やかす?
それとも?
……。
…まぁ、良いわ。
けれど私達にはうだうだと悩んでる時間は無いの。
分かってるでしょう?
…ええ。
家の事は…まぁ、どうとでもなるけれど。
己の問題は他人ではどうしようもないわ。
殊…。
…。
……色恋については。
……。
…ひどい顔ね。
私は……。
…。
……家族、なのよ。
然う、ただの…。
…ええ、そうね。
……なのに。
…。
こんな、感情……。
…。
…。
…でもね、蓉子。
…。
所詮、人は人にしかなれない。
…。
…仮令、家族であろうとも。
……。
…間違いだなんて、どうして言えるの。
ましてや私達は…。
……。
蓉子。
……。
……欲しいものは。
…。
ただ、黙っていては手に入らない。
……。
…本当に、欲しいのならば。
…。
……然う、欲しいのなら。
……。
…静か、ね。
……。
夜がこんなに静かだなんて…。
…。
…いつも。
何かしらの音が、していたから。
…。
…。
…それで、何。
……。
……。
…江利子に言われたの。
…。
これからの事…。
……関係無い。
そんな事言わないで。
…。
…ねぇ、聖。
貴女は…。
……。
あ…。
……私は、やらない。
…。
やるつもりなど、毛頭無い。
聖……。
…。
…あ。
……。
いや…。
……いや、ね。
聖…。
…躰の方が正直だね、蓉子は。
だめ…ぁ。
……感度、良くなった。
…ッ。
……。
…せ、い。
……。
あ…ぁ。
……こうなる事、分かってて来たんでしょう?
…ちが、う。
違わない。
……。
……蓉子も、同じだ。
おな、じ…?
喪、明けたばかりだって言うのに。
こんな事、されに来て。
そんなつもりじゃ…。
…いや、しに来るの方が正しいわね。
ん、んん…ッ!
ほら…。
や…だ。
……良いくせに。
や…あ、…っ。
……。
やめて…おねがい、だから…。
…。
せ…んん。
……。
……。
……言いなよ。
…。
言いなさいよ、蓉子。
……。
……我慢、出来ないんでしょう?
ねぇ…。
…やだ、…いや……いやぁぁ。
……。
……み、ないで。
……。
や、みないで…ぇ。
……。
は…あ、…ぁ。
…待ち望んでいるんでしょう?
……。
ねぇ…
あ……ッ!!
……。
…あ、…あぁ。
蜩 ノ 声
やらなくて、良いから。
…はい?
諸々の事。
……?
そんな金と時が、もっと言えば労力があるのならば。
生きてる人間の為に使え、と言うのが私の考え。
…あ。
分かった?
ですが当主様、
だって無駄じゃない。
無駄って…。
十年のうちの一週間。
二年弱のうちの一週間。
貴重なのはどちらの時間?
…。
まぁ、時間は等しいのだけれどね。
けどやっぱり違うのよ、私達にとっては。
…。
だから、一切無用。
…当主様。
一応、ね。
…。
聖に言っても、ね。
だから蓉子ちゃんに。
…当主様。
うん?
…。
ねぇ、蓉子ちゃん。
…はい。
貴女はあまり、椿には似てないわね。
…え。
椿ね、蓉子ちゃんが来てからなのよ。
ああなったの。
…。
いい加減、では無かったけれど。
堅物なのも変わって無いけど、もっと頑なだった。
…。
貴族の屋敷一つ、吹っ飛ばした時は大騒ぎだったわね。
お姉さまが…?
幸い、死人は出なかったけど。
……。
生き辛そうだった。
もっと適当にすれば良いのに、それが出来なくて。
…。
でも蓉子ちゃんが来てから…あの人は少し、柔らかくなった。
…。
…て、ああ。
こう言うと、似てなくもないのかしら。
……。
けど、椿は蓉子ちゃんと違って口が悪かった。
口が?
ええ。
それも結構、ね。
お姉さまが…。
信じられない?
……はい。
ま、今だから言える事だけれど。
……。
あとは然う、貴女の方が優しい。
そんな事…。
…椿はそれを心配していた。
……。
あの椿が他人を心配するなんて、ね…。
……。
…。
…当主様。
名前で良いわよ。
…。
良いの。
…藤花さま。
はい。
……。
ふふ。
……お姉さまも同じような事を仰ってました。
椿が?
…生きてる人間に使え、と。
……。
時間もお金も。
生きてる人間の為にある、と。
…。
流れていく時は誰にも止められない。
ならば過ぎ去った人間の為に使うべきではない。
ましてや、この家にはそんな時間は無い。
そんな時間があるのならば…一匹でも多く鬼を斬れ、と。
……椿らしいわね。
過ぎ去った人間は……ただ、覚えていてくれればそれだけで十分だと。
…。
……。
…ねぇ、蓉子ちゃん。
…はい。
人はね、二度死ぬのよ。
…二度?
文字通りの躰の死と。
それから、忘れ去られた時の死。
…。
……然う、椿が。
……。
まぁ、いつかは忘れられる時が来るだろうけれど。
…。
とりあえず、蓉子ちゃんなら忘れないでいてくれるでしょう?
私だけでは…。
然うかしらね。
江利子も…。
…。
……聖、も。
だと、良いけれど。
……。
冗談よ。
…。
貴女は本当に可愛い子。
…わ。
本当に…ね。
ふ、藤花さま。
……だから。
…?
恋文。
…え?
だったら、嬉しいかしらね?
あ、あの…。
私からじゃ、嬉しくないか。
……。
ふふ、冗談よ。
…藤花さま。
貴女には聖が居るものね?
…ッ!
宜しくね?
わ、私は…ッ。
それ、私が死んでから見てね。
…え?
約束。
あ。
指切り。
……。
はい、切った。
……あの。
蓉子ちゃんは約束を守る子だから。
…。
ね…?
…。
…聖。
…。
聖、藤花さまに…。
違う。
え…。
…それは。
…?
もう、お姉さまじゃない。
…何を言っているの。
…。
待って、聖。
これで最後なのよ。
…。
明日になったら、もう…。
…。
聖。
…。
聖、ちゃんと…。
…それはもう、お姉さまじゃないと言ってるでしょう。
……。
なのに何をしろと言うの。
聖…。
…もう、お姉さまは居ない。
何処にも。
…。
それは…もう、ただのお姉さまの器。
だからもう、お姉さまなんかじゃないわ。
……。
……蓉子。
…聖、お願い。
…。
お願いよ、聖…。
…どうして蓉子が。
…。
……。
…貴女が言うように。
もう、藤花さまは居ないかも知れない。
ここにあるのは…その、骸だけかも知れない。
…。
でも藤花さまだったの。
間違いなく、貴女のお姉さまだった人なの。
…。
…だから、お願い。
そんな淋しいこと、言わないで。
…。
…お願い、藤花さまを忘れな
蓉子。
あ…。
…。
……聖。
…誰も。
……。
忘れるなんて、言ってない。
…。
……。
…ごめんなさい。
…。
……。
…。
…私、行くね。
…。
…聖?
…居て。
…。
居て。
此処に。
……。
……。
……私が居ても良いの。
私が居ろと言ったの。
…。
だから、居て。
……うん。
…。
…。
……冷たい。
…ええ。
……もう。
…。
お姉さまは…居ない。
…。
もう…。
…。
……居ないのね。
聖…。
……。
…。
……。
…まるで、作り物みたいだわ。
…。
まるで……。
……聖。
……。
…?
……。
……。
…あたたかい。
…。
…。
…貴女も。
……。
……。
……お姉さま。
…。
…蓉子、聖。
一寸、良いかしら。
…どういう、こと。
然う言う事よ。
……。
江利子…。
蓉子も然う言う事だから。
そんな事、一言も…。
それは重要な事かしら?
…。
…。
私は預かっていただけ。
ただ、それだけの事。
…何かの間違いよ。
いいえ、間違いでは無いわよ。
だって、お姉さまが…!
そのお姉さまの意志なのよ。
…!
…聖。
……そんな、はず。
確かに渡したわよ。
そんな筈、無い!
いいえ、然うなの。
残念ながら。
江利子…!
聖、落ち着いて。
だって蓉子…!
聖。
……。
江利子、当主様は
それは今の?
それとも?
…本当にそれが藤花さまのご意志なの?
ええ、然うなんでしょうね。
…。
…。
蓉子、貴女も知っていたのでしょう?
え…?
良く呼ばれてはお話していたじゃないの。
それは…然う、だけれど。
でもお話をしていただけで…。
例えば。
何かを渡されたなんて事は無かった?
何か…。
例えば…然う、恋文とか。
…………あ。
あるみたいね?
で、でも、私読んで無いわ。
だって
死ぬまで読むなって?
……。
で、未だ読んでなかったと。
蓉子は本当に言い付けを守る良い子ね。
…私は
聖の心配でそれどころじゃなかった?
…!
…蓉子。
聖、私は
……。
聖、本当に私は…!
ともあれ。
聖、これからは貴女が此の家の
冗談じゃない!
…。
私はやらない。
絶対、に。
貴女のお姉さまの意志だとしても?
そもそもどうして私が。
蓉子の方がずっと適任でしょう。
ええ、然うね。
私も然う思うわ。
だったら!
先代が決定した事柄は覆せない。
これまでも、これからも。
……。
貴女が今日からこの家の当主よ、聖。
……。
聖…。
……。
あ。
……。
聖、何処に…。
……絶対に私はやらない。
あ、然う。
けど其れはもう、あんたのものだから。
返さないでね、要らないから。
……蓉子。
せ…い、た。
来て。
せ、聖…。
…。
蓉子を連れて何処に行くつもり?
お前には関係ない。
一応、喪に服さないといけないのだけれど。
黙れ。
蓉子、貴女はそれでも良いのかしら。
わ、私は…つっ。
貴女は黙ってくれば良いの。
ま、待って、聖。
私、私は…。
来い。
う……。
……あらあら。
…。
…聖。
…。
聖。
…どうして。
…。
どうして…!!
……。
蓉子は知っていたのね。
知ってたのに
ううん、私は
嘘吐き。
本当よ。
本当に知らなかったの。
…恋文。
…!
持ってるんでしょ。
……。
なんて書いてあったの。
知らないわ。
惚けないで。
惚けてない。
だって、見てないんだもの。
嘘。
嘘じゃないわ。
信じられない。
約束したんだもの。
約束?
藤花さまと。
…。
然う、藤花さまが…。
…だったら尚更、見てないわけないわ。
見てない、見てないわ。
……。
聖。
…蓉子も。
お願い、信じて…。
…。
…。
……出して。
え…。
お姉さまからの手紙。
……。
持ってるんでしょ。
…今は持ってない。
何処にあるの。
私の部屋に…あ。
……。
せ、聖…。
…本当に持ってないの。
も、持ってないわ…だから。
……。
や、止めて、今はだめ…。
……確かめるのよ。
だめ、やめて…。
……。
……せ、い。
…。
…。
…。
…っく。
……蓉子。
…。
…あの莫迦は?
……。
…。
……わた、し。
…。
ほんとうに、しらなかった…。
…。
しらなかったの…。
……。
…。
…何にせよ。
…。
覆せないわ。
…。
……蓉子。
…どうして、藤花さまは。
さぁね。
…。
……それより、起きたら?
…。
そのまま眠って…より淋しい思いをするのは貴女よ。
……。
…居間に、居るから。
落ち着いたら来なさいな。
……。
…。
……江利子。
…何。
ごめんなさい…。
…私は貴女に謝られるような事、されてないわよ。
…。
…じゃあ、後で。
…あなた、は。
…。
…。
……空気、換えておいた方が良いわよ。
え…。
中に入らずとも分かるくらいだから。
……。
…それから。
…。
顔、洗った方が良いわね。
…。
見なくても、分かるわ。
……う、ん。
…。
…。
……人は弱い生き物ね、蓉子。
…。
……また、後で。
……ええ。
…。
………せ、い。
…。
…。
……あの、腐れ莫迦が。
どうして私なんですか。
ん?
私でなくても良い筈です。
それが駄目なのよねぇ。
蓉子に
あの子はだめ。
何故ですか。
あの子は正直過ぎる。
良い子だから。
…。
そういうわけだから宜しくね。
嫌です。
あらら。
子供の事だけで十分です。
ついで、じゃ、駄目かしら?
…。
適材適所って言葉、知ってるでしょう?
心外です。
怒った?
怒ってはいません。
然う?
然うです。
蓉子ちゃんの事は?
蓉子は関係ありません。
…。
…。
…蓉子ちゃんに。
だから
これ以上背負わすのは、酷でしょう?
本当に然う思っているのなら。
あの莫迦を止めるべきです。
何を止めるのかしら?
…惚けるのですか。
犬も喰わない、よ。
所詮、ね。
……。
はい、お手。
私は犬ではありません。
命令。
……。
ごめんなさいね?
…。
うん。
それじゃ、お願いね。
…こんなもの。
然う、こんなもの、よ。
……。
私ね。
…。
三人で、良かったと思っているのよ。
…?
貴女のお姉さまの事。
……。
まぁ、三人ほど難しいものは無いけれど?
…。
…江利子ちゃん。
……何でしょうか。
明日は、晴れるわよ。
…は?
けど、脆いから。
…仰っている意味が分かりません。
繋がってないもの。
…。
ふふ。
…。
…来た、わね。
……江利子。
まぁ、座りなさいな。
お茶でも飲む?
…ありがとう。
でも…
頼んであるの。
…然う。
お茶請けもあるけれど。
要る?
…うん。
……。
…?
…うん、ね。
江利子…?
御手洗と、鶯。
どっちが良い?
え…?
お団子。
生憎、餡子は無いの。
…鶯で。
然う。
なら、座って。
…子供達は?
もう寝た。
…寝た?
早寝、早起き。
とは言え、今日は少し早いけれど。
……。
早く座ったら?
…ええ。
…。
…。
…聖なら、居ないわよ。
…!
そもそも家の中にすら居ないみたいだから。
それくらい、蓉子になら分かると思うけど。
…そう、ね。
…。
…。
…調子は?
…。
体調。
最近、あまり良く無さそうだから。
……大丈夫よ。
ありがとう。
…。
…。
…明日は。
…。
送り出さないといけないのだけれど。
出来るかしら。
…やるわよ。
いえ、やらないと。
一応、聞くけど。
子供達は?
…勿論、一緒に。
然う。
…。
…。
江利子さま、お待たせし…て、ああ本当だ。
イツ花…?
待ってたわよ、イツ花。
蓉子さま、お加減はもう宜しいのですか?
…お加減?
体調が悪くて寝てるって言っておいたの。
…。
大丈夫なんですか?
…大丈夫よ、ありがとう。
然うですか、良かったです。
ところで、イツ花。
お茶は?
あ、はい、こちらに。
でも本当に二つ必要だったんですね。
だから言ったでしょう?
はい。
流石江利子さまですね。
別に大した事じゃないわ。
…。
あ、蓉子さま。
…うん?
熱いのでお気をつけ下さいね。
…ん。
……。
…なに?
い、いえ…。
そう?
は、はい。
……まぁ、当然の反応よね。
江利子?
こっちの事。
…。
あ、ああ、そう言えば。
聖さまはどちらに行かれたのでしょう?
…!
知らないわ。
またそこら辺でもほっつき歩いてるんじゃないの。
そこら辺、ですか。
あれには放浪癖があるようだから。
…止めて、江利子。
…。
…。
…え、えと。
それじゃ私は戻りますネ。
ありがとう、イツ花。
…。
…。
…美味しい?
え…。
それ。
…うん。
…。
…。
…嘘、ね。
…え。
味なんて、感じてないくせに。
そんなこと…。
いっぱいなのね。
…。
聖の事で。
……そんな、こと。
嘘が下手。
顔に出るから、直ぐに分かる。
……。
心配しなくても帰ってくるわよ。
…分かってる。
本当に?
…。
本当は心配でしょうがないくせに。
どうせまた、あの頃の事を思い出してるんでしょう?
…。
大丈夫よ。
…。
もう、あの頃とは違う。
だって、貴女が此処に居るから。
…え。
此処に貴女が居る限り、あれは帰ってくるわ。
そんなこと、ない。
…。
…私が居たって。
寧ろ、私なんか居るから…。
蓉子。
…私なんかが、居るから。
聖は…。
何を勘違いしてるのか、知らないけど。
…。
今、あれが執着してるのは間違いなく、貴女よ。
然う、危ういくらいに。
…。
それは貴女も同じ。
…わたしは。
しっかりしろ、とは今は言わない。
所詮、一年やそこらしか生きてない私達の強さなんてたかが知れてるもの。
…。
でも。
もう、一年も生きている。
色んなものを見て、聞いて、そして、知って。
…。
…大丈夫よ、蓉子。
…。
貴女が居るから、どんなに憎んでいようともあれは帰ってくる。
…でも、こわいの。
…。
藤花さままで、いなくなってしまって。
どうしていいか、わからないの…。
…。
…もう、誰もおしえてくれない。
だれも…。
それでも、誰も居なくなったわけでは無いわ。
…。
…貴女は、一人になったわけでは無いのよ。
…江利子。
現にあれが…聖が、居る。
貴女の…。
……。
…それは聖も、同じ。
……。
気付けば何事も無かったように…とはいかなくても、貴女の隣に居るわよ。
あれはそういう奴だわ、昔から。
反省なんてしないの。
…いいずぎよ。
でも然うでしょう?
…ふふ、そうね。
…。
…。
…貴女があれの、小さな手を。
幾度も振り払われようとも、それでも引いて来たのは…私が一番知っているわ。
…。
…。
……聖。
…。
…。
それまで…ここで少し、眠る?
ここで…?
一人で眠るのは…淋しいでしょうから。
私には祥子が…。
…。
…だから、大丈夫。
然う、なら良いけれど。
あなたにも令がいるでしょう…?
ええ、然うね。
…。
…それ、飲んだら寝る?
うん…。
ま、急がなくても良いわよ。
…ありがとう、江利子。
どういたしまして。
…。
…かような処で何をなさっているのですか?
…。
貴女様は山百合家の方ですね。
…。
お初にお目にかかります。
私は
どうでも良い。
…然うですね。
…。
それで何をなさっておいでですか?
何でも良いだろう。
…。
…。
…家にお戻りになられなくても良いのですか?
…。
それとも戻れないのでしょうか?
…!
然うなのですね。
うるさいな。
殺されたいの?
…。
人が。
鬼と関わるな。
…本当に鬼なのでしょうか。
…。
山百合家の方々は鬼の呪いを受けているそうですが。
私には鬼のようには見えませぬ。
……。
その姿は人そのもの。
異形には変わりない。
構うな。
…。
…。
…どちらへ?
……。
…赫い瞳。
…。
……若しも。
…。
帰りたくないのであらば、私の部屋においで下さい。
…。
歓迎致しますわ。
…鬼と関わろうと言うの。
私の目には今の貴女様の姿はただの迷い子のようにしか映っておりませぬ故。
…。
如何されますか?
…。
…。
……行かない。
然様ですか。
ならば。
…。
来たくなったら、いつでもお越し下さいませ。
私は…
……!
……に、居ります故。
私に触るな…!
…。
触るな。
…これはとんだご無礼を。
……。
…それでは。
…。
ごきげんよう、聖さま。
…。
…。
…。
…せい。
…。
せい、なの…?
……。
かえって、きたのね…。
…。
…よかった。
…。
ほんとうに、よかった…。
…。
あ…。
……蓉子。
…だめ。
…。
おねがい、こよいはもう…。
…。
…さちこ、が。
…。
あなたのおねえさまが…。
…。
や、ぁ…。
……声、殺さないと起きるよ。
…ぅ。
見られるの、嫌なんでしょう…?
…。
……私は、構わないけれど。
…、……っ。
…。
せ、ぃ…。
…。
ふ……ぅ…、…ぅ。
…きかないの。
…?
…別に、良いけど。
……。
…。
…きいても、いいの。
…。
こたえて、くれるの…。
……さぁ。
…。
…。
…どこに、いたの。
…。
どこに、いっていたの…。
…。
わたし、を……。
…。
…せい…せい。
……。
…あ、ん。
……どっか。
ん、んぅ…ぅ…。
…。
………ぁ、ぁ。
…。
…。
……其処に、居るんだろう。
…。
…。
…あんたはどうしたいのかしらね。
…。
…。
…お前に言う必要は無い。
然うね、全くその通りだわ。
私も聞きたくもない。
…。
これがあんただけの事だったら、本当に、どうでも良かった。
この家から出ていようが、何処かで野垂れ死のうが、鬼に成り果てようが。
私はどうでも良いのよ。
…。
…でも。
蓉子は必ず、あんたの後を追う。
どんな事になろうとも、屹度。
…。
誰が止めても、聞かない。
正真正銘の莫迦。
……。
覚えているでしょう?
…何を?
忘れたなんて言ったら…。
…言ったら、どうするの?
…。
…。
…あんたが。
あんたの存在が、蓉子を然うしてしまった。
…。
然う、あんたがこの家に来た日から。
…だから?
…。
蓉子は、私のものだ。
…言った、わね。
だから?
なんなら、殺してみる?
…。
でも私を殺したら。
蓉子はどうすると思う?
……。
ねぇ、江利子。
……。
だんまり?
へぇ、珍しいなぁ。
…聖。
……。
蓉子をどうするつもり?
さぁ。
お前になんか教えない。
…。
私はお前が嫌いだ。
奇遇ね。
私もあんたなんか嫌いよ。
ふん。
…。
……。
聖。
もう、寝る。
邪魔をするな。
何故、蓉子の傍に居ないの。
…。
…。
…ふぅん。
……。
江利子、さぁ。
…。
お前には絶対に、やらないよ。
…。
蓉子は私のもの。
誰にもやらない。
仮令神だろうとも奪うと言うのならば、殺してやる。
…どうかしてるわ。
然うだよ。
知らなかった?
それを何故、蓉子に言わないの。
…。
歪な形であろうとも…そもそも正しい形の定義なんて初めから無いのだわ。
…。
…このままだと蓉子は、病んでしまう。
いえ…。
…。
…。
……病めば、良い。
…。
そうすればこんな家から、呪いの連鎖から開放される。
…。
お仕舞いだ。
何もかも。
……。
ははは…。
………蓉子。
二
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