…。
…蓉子。
…うん? なぁに…?
…。
蓮? どうしたの? こちらにいらっしゃいな。
うん。
あら、葵は?
後から来る。
あらあら、先に来てしまったの?
買い物してくるって言ってた。
駄目よ。 ちゃんと付き合ってあげないと。
長いんだ。 疲れる。
もう、貴女って子は。
聖は?
お散歩に行ってる。 知ってるでしょう、あの人の散歩好きは。
知ってる。
直、帰ってくるわ。 多分、何かしらのお土産を持って。
…。
どうしたの?
智は? また?
…あの子も落ち着きの無い子だから。 本当、良く似てしまったわ。
でも色んなものに興味を持つのは蓉子に似てる。
あら、とうとう蓮にまで言われてしまったわ。
思っていたけど、口には出さなかっただけ。
もう。
…。
…。
…みんなが居ないと、静かね。
…うん。
ねぇ、蓮。
うん?
元気?
…うん、元気。
みんな?
うん。
…あの子も?
…季節の変わり目になると、体調を崩すけど。
それ以外は元気にしてる。
然う、良かったわ。 今日は?
葵と。
…然う。
ただいま。 お。
お帰りなさい、聖。
ただいま、蓉子。 なんだ蓮、来てたのかー。
…。
蓮は何も言ってくれないのかな?
おかえり。
おう、ただいま。 ほい、土産。
あらあら、今度は何を持って帰ってきたのかしら?
写真、撮ってきた。
写真?
うん。 夕焼けがすごく、綺麗だったから。 ほら、見て。
…。
ね?
本当、綺麗ね。
今度は一緒に見ようね。
ええ、然うね。
…。
蓮も見る?
私は良い。
ま、そんな遠慮するなって。 ほれ。
……。
なぁ、綺麗だろう?
腕がいまいち、だから。
お、言うな。
だから本物を見せてあげた方が良い。
…言うようになったねぇ。
…。
ところで、葵は?
聖、会わなかった?
と、言うと?
買い物してから来るそうよ。
…蓮。
…。
駄目だぞ、ちゃんと付き合ってあげないと。
蓉子にも言われた。
そりゃ、言うさ。 ねぇ、蓉子。
ふふ。
全く。 蓮は然う言うところはあまり、似なかったんだよなぁ。
ねぇ?
……ふん。
まだまだ、だな。 蓮。
…。
さて。 葵達も来るんじゃ、お茶の用意でもしておこうか。
ええ、私も然う思っていたところ。
でも丁度良かったなァ。
ん?
お土産、実はお団子もあるのだ。
あらまぁ。
今日は中秋の名月だから、と思って。 あまり数は無いけれど。
そしたら私は良いわ。 蓮と葵と
私達は良い。
ん?
葵が買って来る。 多分、全く同じものを。
…あぁ。
うん。 流石、葵。
お茶も自分で淹れるから。
まァ、然う言うなって。 たまに来る子供、持て成したいのが親心ってね。
…。
ほら、座って待ってろって。 昔みたいに。
…聖。
良いから。 たまには親のいうコト、素直に聞くもんだぞ?
…。
ねぇ、蓮。 聖は自分で淹れたお茶を貴女達に飲んでもらいたくて仕方が無いのよ。
…。
葵、そろそろ来るかね。
然うね、そろそろ来るかしら。 蓮が来てもう、20分は経ってるから。
お、そんなに?
ええ、そんなに。
じゃ、そろそろだ。
ええ、そろそろね。
…。
ほら、蓮君。 座ってろって。
いい歳した人間に君付けはどうかと思う。
はは、幾つになっても君らは私達の子だからなァ。 ねぇ、蓉子。
…ええ。
…。
R e − C O D A
蓮。
…。
こんなところで。 どうしたの?
まぁ、色々と。
それ。
ありがとう。 …あ、若しかして。
…。
聖さんに言われたのね?
蓉子にも。
ふふ、だから言ったのに。
ふん。
智は居た?
居ない。
まぁ、来ないわね。 あの子は。
どこに居るんだかな。
さぁ。 案外、地球の裏側かも知れないわよ。
裏側なら未だ良いだろう。 北極に居るよりも。
ああ。
…今夜、雨降らないと良いな。
うん、然うだね。 蓉子さん、がっかりしちゃうから。
お前もだろ。
私は平気。
嘘付け。
嘘じゃないわよ。
へぇへぇ、じゃあ然う言うコトで。
んもう。
…。
…どうしたの、蓮。
何が。
何かあったのかな、って。
別に何も無い。
そぉ?
ああ。
…ふぅん。
何だよ。
蓮が何でも無いっていう時って、大抵、何でもある時なのに、て。
……。
二人と、何かあった?
何も無い。
何も?
元気かって聞かれた。
それで?
元気だと答えた。
そのままね。
元気だろ。
そうね、元気。
…。
それから?
他には無い。
未だ何かあるでしょう?
無い。
意固地なんだから。
…ふん。
まぁ、良いけど。 後で蓉子さんに聞くから。
…。
別に良いでしょう?
勝手にしろ。
はい、勝手にします。
…。
蓮。
…なに。
手。
…好きにしたら良い。
うん、好きにする。
…。
お、帰ってきたな。
こんばんは、聖さん。
ただいま、で良いよ。 帰ってきたんだから。
じゃあ、ただいま帰りました。
おう、おかえり。
蓉子さん、ただいま。
うん、おかえりなさい。
“君”も。 元気そうだね。 ねぇ、蓉子。
ええ、本当に。 蓮から話は聞いていたけれど、でも今は季節の変わり目だから気をつけるのよ?
もう、蓉子ったら心配性なんだから。
あら、心配症なのは私の特性だもの。
あはは、違いない。
けど、聖も人の事言えない。
私のは完全に後天性、だけどね?
か、どうかは知らないけど。 聖が心配性だったのには意外だったわね。
むむ?
あんなにちゃらんぽらんだったクセに。
曰く、軽薄が制服を着て歩ってる、だっけね?
ふふ。
もう、昔の話だけどねぇ。 今じゃ
今も大して変わって無い。
然う、かも。
こらこら、子供達。
…ふ。
ふふふ。
たく。 そんじゃ、本格的にお茶、淹れますかね。
美味しく淹れてね、聖。
もっちろん。
蓉子。
ん?
同じ。
…あら、本当。
何の話ですか?
聖がね、お散歩のお土産にお団子を買ってきたのよ。
聖さんも?
ええ、然うなの。 それがね
これ。
…あら。
全く、同じなの。 やっぱり親子なのね。
普通、お月見って言ったら白くて丸いのだろう?
でもそれじゃ、味気ないじゃない。
と言うか、葵はただの餡子好き。
蓮も好きじゃないの。
ああ、好きだよ。
なら、
こらこら、二人とも。 いい歳をしてそんな言い争い、しないの。
…。
…はい、蓉子さん。
でもまぁ、二人の餡子好きについては私も何も言えないのだけれどね。
蓉子の餡子好きには年季が入ってるからなァ。
年季、は余計よ。 聖。
はは、すんまそん。
全く。 ねぇ、葵。
はい?
お店まで、一緒。
ふふ、本当ですね。
未だ、あるのね。
私達が子供の頃からありますね、あのお店。
でも作り手は替わったみたいだよ。
然うなの?
そりゃ、そーさぁ。 あの時作ってた親父さん、いい歳だったもん。
じゃあ、息子さんが?
いや、娘さんみたいよ。
へぇ、珍しいわね。
ま、良いじゃない。 和は心、美味しければ何でもOK。
もう、全然違うじゃない。
ははは。 よし、入った。
…。
お、気が利くなぁ。 でも座って待っててくれても良かったのにな?
躓いて零したら元も子も無い。
まぁ、蓮君ったら。 そんなに老いぼれていませんよ、聖さんは。 蓉子、熱いから気をつけて。
ありがとう。 けどこの間、敷物のでっぱりに躓いていたの、だぁれ?
あ、蓉子。
聖さん、然うなの?
大したコトじゃないんだよ。 ちょろっと油断していたと言うか。
…。
ああもう。 蓉子が余計なコト、言うから。
ふふ、ごめんなさい。
なら、葵の誤解を解いて。
葵、大丈夫よ。 躓いたといっても、大したコトにはならなかったから。
そうそう、然う言うこと。
…でも気を付けてくださいね。
はーい。
…運動神経だけが取り柄だからな、聖は。
その取り柄をしっかりと受け継いでくれたのは蓮だけどな。 感謝しろよ?
宝の持ち腐れにするか否かは、本人次第だから。
たく、幾つになっても口が減らないお子様だこと。
…お子様は止めてくれ。
相変わらず、ぶっきらぼうだしなァ。 葵も苦労するねぇ。
蓮のこれは、もう、治らないと思ってますから。
良く出来た子だなぁ、葵は。
蓮には勿体無い。
寧ろ、聖に蓉子は勿体無さすぎる。
んがどっこい、お互いベタ惚れなんだな。 どだ、悔しかろ?
全然。
たくもー、本当可愛げ無いんだからなぁ。
聖。
ん、なになに?
お茶、美味しいわ。
おお、そら良かった。 今日の日の為にお茶っ葉、買ってきた甲斐があった。
あら、お茶の葉だけじゃないわよ。
んー?
聖の腕が良いの。 だから。
…そんなコト言われるとちゅーしたくなっちゃうなぁ。
だーめ。
そー言わずに。
だめだってば。
へへ、しちゃうもんね。 覚悟しろー。
本当、ばかなんだから。
……。
……。
ん、なんだい?
どうしたの?
いや、幾つになっても、と言うか。
…蓉子さんが大分、聖さんのノリになってきたと言うか。
幾つになっても愛は不滅ですからね。
夫婦っていつの間にか似てくるのよね。 困ったものだわ。
…やれやれ。
…え、と。 然うだ、月。 月を見ながらお団子を食べましょう。
おお、然うだ。 丁度、お茶も入ったコトだし。
聖と葵が買ってきたお団子を食べながら、ね。
雲一つ無い天気。 絶好のお月見日和だね、蓉子。
ええ。 でも9時過ぎぐらいから雨が降ってくる予報なのよねぇ。
ほんとに降ってくるのかなァ。 雲、一つも無いのになぁ。
まぁ、予報は予報だから。
外れても予報、だしねぇ。
ええ。 月、綺麗ね。
うん、綺麗だね。 でも私としては蓉子の方が綺麗だと思う。
はいはい、いつもありがとう。
いつも愛してますから。
今は月を見て?
花より団子、だもん。
もう。
しし。
…。
…。
んあ? どーした、子供達?
今夜は涼しいって予報だったのに暑い。
“残暑”はもう良いのですけど。
まぁ、なんだ。 我が家は一年中、常夏だもんでな。
…。
…まぁ、仲が良い事は良い事だものね。
…子供の前でいちゃつくのはどうかと思うがな。
しかし。 良い月だねぇ。
ねぇ?
団子も美味しい。
然うね。
ほれ、ちび達も食べれ食べれ。
もう、ちびじゃない。
私たちも結構、いい歳ですから。
け
けれど、私達を越す事は無いもの。 ね、聖。
それ、言おうと思ったのにー。 蓉子が取ったー。
ふふ、ごめんなさい。
肩、抱かしてくれるなら許す。
寒くないから良いわよ。
…寒ければ良いのか。
私の心が寒いんです。
あらあら、大変ね。 毛布でも持ってくる?
…心が寒いって。 相変わらずだなぁ、聖さん…。
みんな、ちゃんと月見てるかな?
…その言葉、寧ろ返してやりたい。
今年の月も綺麗ですね。
うんうん、そーだねェ。
今年もまた、みんなと見られて。 良かったわ。
智が居ないけど。
たまには家に居てくれれば良いのだけど。
ああ、あいつにそれは無理な注文だなぁ。
あの子の辞書には落ち着くって言葉が無いのかも知れないわね。
かも知れない、じゃなくて。
無いんだと思う。
ああ、やっぱり。
はは、蓮に言われちゃうか。
と言うより、蓮の面倒くさがり、少しでも良いから分けてあげられたら良いのに。
…。
はは、やっぱ葵も苦労してるなァ。
言っておくけど。 あいつだって結構、面倒くさがりだ。
蓮の場合は“ぐうたら”って言葉にも置き換えられるから。
…。
ははは、返す言葉が無いでやんの。
うるさい、聖。
葵にはちびン頃から敵わない蓮君なのでしたー。
…。
ほらほら、聖。 蓮であまり遊ばないの。 貴女は昔から然うなんだから。
はっは。
…。
蓮、お団子食べる?
…ふん。
からかってごめんなさい。 ね?
…。
お、お。 なんだかんだでやっぱり尻に敷かれて
聖、止めなさいって。
はぁい。
…たく、いい歳して。
でも聖さんと蓉子さん、昔から仲が良くて。 羨ましいな。
蓉子、あーん。
自分で食べられるから。
じゃ、私にやって? あーー
ほんと、ばかなんだから。
…ん。 おーいしー。
はいはい、良かったわね。
…仲が良いの通り越してバカップルって言うんだろう、この二人は。
…でもそれでも良いじゃない?
…。
…だって、安心するもの。
蓮。
…あ? む…ぐ。
駄目だぞ〜ちゃんと食べないと。
……食べてるから。
そーかぁ? さっきから見てるけど、あまり食べてないぞぉ?
食べてるから。
葵、葵にも。 さぁ、どうぞ。
ありがとう、聖さん。
…たく。
貴女達が来てるからはしゃぎっぱなしね、聖は。
…。
…。
蓉子だって。 ずっと笑顔じゃん。
…。
…。
然うよ、だってみんなでお月見してるんだもの。
だよねぇ、やっぱり。
…お茶のお代わりを淹れてくる。
…あ、私も行くわ。 聖さん、蓉子さん、湯呑み貸してください。 淹れてきます。
おう、さんきゅぅ。
ありがとうね。
にゃ!
あ。
お。
あらあら、珍しい。
にゃ。
れん、ずるいよぅ。
満足げ?
ええ、とても満足げ。
だけどそうなってしまったらもう、動けそうにないわね。
へへ。
頼んで、良い?
ええ。
葵も宜しくね。
もっちろーん。
ほい、葵。
葵もおいでおいで。
うん!
…。
…不満げ?
…少し。
…。
お、お。
あらあら。
…にゃぁ。
なんか変なものでも食べさせたかな…?
少なくとも今日の夕ご飯は貴女が作ったのだけれど?
…。
木天蓼、とか?
入れたの?
あ、れん、やめてよぅ。
…入れてない。
然うでしょうね。
こら、蓮。
そんな事したら駄目よ?
…。
…ま、いっか?
まぁ、良いじゃない。
嬉しいでしょ?
へへ、嬉しい。
蓮くーん。
…にゃ?
君から進んで私んとこに座ってくれるなんて、嬉しいなぁ。
…?
もう、頭なでなでしちゃう。
にゃ…。
あー、かわいいかわいい。
…。
勿論、葵もね。
…えへへ。
かわいい、かわいいなぁ。
…。
お、おぉ?
見て見て、蓉子。
ん?
今度は何?
蓮が、顔を私の手にすりすりしてくるよ…!
あらあら、にゃんこみたいね。
あーもう、たまんないよぅ。
聖じゃないけど。
何か変なもの、食べたのかしら?
…よーこぉ。
ふふ、冗談よ。
はい、お待たせ。
わぁい、ありがとー。
どういたしまして。
熱いから気をつけてね。
うん。
あと、貴女達が買ってきたお団子も。
にゃぁ!
おだんご!
よしよし、お団子は逃げないから落ち着いて食べるように。
蓉子、蓉子も座んなよ
ええ、そうするわ。
…。
なぁに?
もちるん、聖さんの腕が届く距離に、だよ。
と、言うと。
肩を抱く為に、ね?
窮屈にならない?
窮屈、最高。
どうせならゆったりしたいじゃない。
どうせなら蓉子の肩を抱いて見たいじゃない。
…。
腰でも、可。
ばか、と言う言葉以外、思いつかないんだけど。
何度言われるかな?
何度?
私の生涯でね?
……。
蓉子のばか、は、好きって意味でもあるから。
……本当、しあわせな人なんだから。
蓉子は?
しあわせ?
おめでたい、って意味なんだけど?
えへへ。
さ、早く早く。
はいはい。
…にゃ?
ほら、それじゃ遠いよ。
…どうしても、なの?
当然。
我が家の決まりですから。
どんな決まりよ。
いつでもいっしょ、てね。
…貴女の場合はただの甘え過多。
だってしたいんだもん。
ね、ね。
全く。
仕方ないわねぇ。
やた!
お茶、零さないように気をつけてよね。
うんうん。
よいしょ、と。
…!
へへ、待ってましたぁ。
…もう、だらしない顔して。
よー
よーこ!
…こ。
よーこ、よーこ!
蓮、こっちに来るの?
にゃ!!
て、蓮くーん。
今の今まで聖さんの足に座って満足げな顔してたじゃないよー。
せー、や。
えぇぇー。
いつもどおり?
よーこ、よーこ。
…どうする、聖?
いや、今回はもうだめだもんねー。
に゛ゃ。
今年のお月見は聖さんトコでするのだ。
や。
然うは言っても、離さないもんねー。
にゃぁぁ、よーこよーこ。
葵も一緒だもんねー。
わ…。
葵は大抵聖のとこに居る、と言うより、居させるじゃない。
たまには
やだ。
この、我侭“小僧”め。
せーちゃん、せまいよぅ…。
蓮も葵も、そんでもって蓉子も!
みんなみーんな、私が抱っこするんだい!
…て。
抱っこ!
…大分、無理があるでしょう。
これは。
にゃ!
逃がすかー。
…にゅッ
今宵の聖さんはそう簡単には逃がさないぞー。
そうだ、逃がすものかー。
……。
うぅ、せまいよぉ。
ぬははははは。
…やれやれ。
これじゃもう、お月見どころじゃないわねぇ。
聖。
…んー?
にやにやしてる。
あら、本当?
ええ。 楽しそう。
楽しいよ。
何を思って?
蓉子さんを想って。
違うわ。
ん?
私の事、考えてる時と。
然う?
ええ、違うわ。 然うね、何か良い事を思いついた時の様な
それは蓉子さんを想ってる時とも、被るよ。
…。
ねぇ?
いやらしいにやにやとも違うの。
あと、意地悪そうなとか?
意地悪そうな、じゃなくて。 本当に意地悪じゃない、貴女。
だって、つい、いじめたくなっちゃうんだもん。
それで。 今回の良い事は、なぁに?
さて、何かな?
子供達の事でしょう?
なんだ、分かってるンじゃないですか。
大方、昔の事でも思い出したんじゃないかな、って。
不意に、なんだけどね。
どんな事?
あの二人が未だちびだった頃。 そうさな、蓮が未だにゃーにゃー言ってた頃に、ちび達を足に座らせてお月見した時のコト。
ああ。 仔猫みたいだったわね、あの頃の蓮。
葵もね。
本当に可愛かった。
今も可愛い子供達に変わり無いけど?
それ、本人達の前で言ったら。 歳を考えろって言われちゃうわね。
だってしょうがない。 どこまで行ってもあの子達は私達の愛の結晶だもの。
恥ずかしいわねぇ。
何なら…て、今はもう、無理か。 流石に。
それにもう、体がついていかないわよ。
そっかな?
貴女はついていけそうだけど。
うっかり、腰をやるかもしんない。 高い高いやって。
ふふ。
…もう、乗せられないなぁ。
どこに?
膝の上に、さ。
二人を? それは一人でも無理ね、もう。
いや、頑張れば。
じゃあ頑張る?
変かな。
変でしょうね。
つまり、無理?
ええ、無理。
あーあ。 思えば、早いもんだなァ。
あら、貴女らしくない。
私らしくない?
昔を懐かしく思うなんて。
こんな夜だから、かもね。
こんな夜、ね。
蓉子は何も?
夫婦は似るものなのよ。
…と、言うと。
思い出してた。 あの子達が未だ、小さかった頃を。
やっぱ蓉子もか。
ええ。
…。
…ん。
不思議だなぁ。
…不思議?
私達の前に、私達の親や、祖父母達が。 私達の後に、蓮や葵、智…そして。
…うん。
連綿と続くってのは、こういうコトなのかな。
…ええ、然うなんでしょう。
どうせだから、も一つ先のも見たいな。 蓉子と一緒に。
…然うね。 私も聖と一緒に見たいわ。
ほんとに?
当たり前でしょう?
そっか、当たり前か。
だから…先に行かないでね。
うん、いつも一緒に歩いて行くんだ。 手を繋いで。
……うん。
蓮。
…。
れーん。
…聞こえてるよ。
どうしたの、さっきから。
…何が。
なんか、落ち着かない。
そんな事は無い。
本当に?
嘘付いてどうする。
ふぅん。 …ね。
何だ。
私、少しだけ昔の事を思い出したの。
…。
小さい頃もお月見、したよね。
そもそも恒例行事だった。
蓉子さんが好きで。
葵もな。
聖さんも蓮も。 智が加わってからは更ににぎやかになって。
はしゃぎすぎて、お茶を零して団子をひっくり返して。 大惨事だったな。
そうそう、そんな事もあった。
…基本、うちは行事好きなんだ。
うん。
特に聖は蓉子を喜ばせる為に張り切ってたな。
蓉子さんだけじゃないよ。
…。
私達も喜ぶように、聖さんは準備してた。
…。
私、今でも良く覚えているの。
…何を。
聞きたい?
別に。
聞いて?
じゃあ、話せば良い。
…聖さんの足に、蓮と私、二人で座っていた時の事。 蓮なんて、凄くはしゃいでいて。
私は蓉子の膝の上の方が好きだった。
蓉子さんの膝も好き、でしょう?
…。
図星?
さぁ、どうだろうな。
ふふ。
…葵だって、好きだったろ。
あ、認めた。
…。
うん、好きだった。 聖さんの膝も、蓉子さんの膝も、蓮と同じように両方大好きだった。
…勝手に言ってろ。
うん、言ってる。
…。
…あの頃は未だ、私達はとても小さかったから。
子供だったからな。
しかも早生まれだから。 どうしても他の子より、小さくて。
今となっちゃあ、大した差じゃない。
ん、然うだね。
…。
あの頃は聖さん…蓉子さんも、大きく見えていたわ。
…。
本当に。
…感傷か?
かな。 ほら、もう秋だから。
……。
最近、聖さんと蓉子さんに会うと不意に思う時があるの。
…。
聖さんと蓉子さん、小さくなったな…て。
やぁ、遅かったねぇ。
…。
ごめんなさい、聖さん。
いや、良いってコトよ。 ねぇ、蓮。
…にやにやして、また、ろくでもない事考えてるな。
いや、蓮もやるなと思っただけサ。
一緒にしてくれるな。
おう、それは何と?
…。
…良好なのはよぉく分かったけど、続きは君らの巣に戻ってから、かな?
だから、一緒にしてくれるなって言ってるだろう。
あはは。 一人でも良いけど、二人も良いもんだぞ? と言っても、私らは最初から二人だったけどね。
大きなお世話だ。
まぁ、数じゃないもんね。 二人の絆を推し量るのは。
…蓉子、お茶。
ありがとう。 聖、また蓮で遊んでるわね?
うんにゃ、一寸したアドバイスをしただけさ。 なァ、蓮?
…ただの、下世話だ。
聖は蓮を見ると構わずにいられないのよね。 昔から。
……。
いつからか、にゃーにゃー言わなくなっちゃったんだよなァ。
いい歳して言ってたら寧ろ、引くだろが。
や、それはそれで面白いよ。
実際、そんな人が現実に居たら鬱陶しい。
そっかな?
そうだ、絶対にそうだ。
はは、かもなぁ。 でも蓮は私の子だから。
…。
けどま、やっぱ、恥ずかしいわな。
…蓉子。
うん?
団子、食べても良い?
ええ、勿論。 さぁ、座って。
うん。
蓮、蓮。
…何。
何ならここ、座っても良いぞ?
……阿呆か!
そ? じゃあ葵、おいで。
え、私ですか?
うん。 今なら空いてるから。 さ、カモン。
え、と、ありがとうございます。 けど私より、蓉子さんを乗せてあげた方が良いんじゃないですか?
お?
私?
だってその方が蓉子さんだけでなく、聖さんも嬉しいでしょう?
…ほーぅ。
ねぇ、蓉子さん?
…葵ったら何を言い出すのかしらね?
それに私が聖さんの膝の上に座ったら。 後で蓮に、何を言われるか、分からないですから。
…て、おい。
ははは、葵も言うようになったねぇ。 嬉しいよ。
……。
蓮、も少し頑張れ?
るさい。
…はぁ。
聖、疲れた?
…かなぁ。
はしゃいでいるから。
そんなにはしゃいでいたかなァ?
ええ、とても。
うーん、自分ではそこまででも無かったんだけどな。
はいはい。
…。
…。
ところで、子供達。
蓉子、風呂沸かしてくる。
あら然う? じゃあお願いね。
じゃあ私は片付けを。
ありがとう、葵。
て、待って待って。 君達、今夜はどうするんだい?
迷惑でなければ泊まっていくつもりです。
然う、蓉子には言っておいた。
然うなの、蓉子。
ええ、予め然う聞いてたわ。
そっかそっか。 んじゃ久しぶりに家族みんなで
空きの部屋で寝る。
リビングでも良いです。 お布団を貸して貰えれば…
じゃあ私たちも布団で寝よう、蓉子。
あらあら。
…。
…あらら。
数、あったよね?
あるにはあるけれど。
私と蓉子は一緒で良いし。 蓮と葵は
別で。
れ? 良いの。
良いに決まってるだろう。 いつでも蓉子べったりな聖と一緒にするな。
またまた蓮君ったら痩せ我慢しちゃって。
阿呆か。
葵は? 葵はそれでも良いの?
はい。 私達は基本、一緒じゃないので。
…あらぁ。
ほら、聖。 貴女が過多だって事、よぉく分かったでしょう?
でもさぁ、やっぱり一緒の方が良いじゃん。 安心するじゃん。
て、言って何年だ。
私達が生まれる前からなんですよね。
君達は冷めてるなぁ…。
聖が過多なだ
…けれど、気持ちは良く分かります。
うん?
…。
一緒だと、安心しますよね。
! ほら! 聞いた聞いた?
…葵。
…だって本当の事だもの。
蓉子、ね? 葵も言ってるよ。
はいはい、良かったわね。
……増長させてどうする。
…蓮がもう少し、蓉子さんのようだったら良かったのに。
…いや、だからだな。
だからさ、やっぱり一緒が良いよね。
然うね。 怖い夢を見たとしても、貴女が傍に居るから大丈夫だものね。
でっしょーう。
……良いなぁ、蓉子さん。
…本当に良いのか。
となると、だ。 たまのお布団でも一緒が良いわけだよ、蓉子。
はいはい。 もう耳にたこ、だから。
…大体、怖い夢なんか見なくても勝手に入ってくるだろう。
…良いじゃない。安心するんだもの。
だからさ、蓮、葵。
…あ?
…はい?
久しぶりに家族みんなで寝よう。 決まり。
…。
…。
昔から。 言い出すと聞かないから、ね。
…蓉子が甘いからだ。
…江利子さんも良く、言ってたものね。
そうと決まれば、要らんものどかさないと。
張り切りすぎて、腰、やらないでね。
……葵。
良いじゃない、たまにしか帰ってこないのだから。 ね?
……風呂、沸かしてく
「だんごーーーーーーーー!!!!」
…。
…。
おう、智。 おかえり。
お帰りなさい、智。 お団子ならもう、無いわよ。
たっだいま! つかお団子無いの? マジで?
おう、マジでマジで。 一寸、遅かったなぁ。
蓮と聖が食べちゃったわ。 もう少し早く帰ってくれば、あったのにね。
えーーー!
…智。
…相変わらず、唐突だね。
あ、蓮ちゃん、葵ちゃん、ごきげんよう。 そんでもって、
いや、ごきげんよう、じゃないだろう。
じゃあ、ご機嫌麗しゅう?
…あのな。 時間を考えろ、時間を。
元気なのは分かるのだけど。 もう少し、抑えて?
はーーーい。 あーあ、お団子、食べ損ねたなーーーー。
……絶対、分かってないな。
…まぁ、それもいつも通りだけどね。
智。
なに、おかーさん。
しぃ。 声が大きい。
む。
時間をもう少し意識して。 一戸建てとは言え、ご近所様に迷惑でしょう?
でもお団子が
智?
……はい、ごめんなさい。
…。
…流石?
蓉子さんは佐藤家の長、だからね。 誰も逆らえないのさ。
あら、聖。 この家の主は貴女よ?
頼りにされてる?
ええ。 とても、ね。
へへ。
…でもやっぱり蓉子だろ。 大黒柱とも言う。
それでもちゃんと聖さんを立てるから、うちは平和なんだと思うよ。
智、お団子は無いけれどお夜食ならあるわよ。 食べる?
わーい、食べるー。
おにぎりで良い?
うん! わぁい、おかーさんのおにぎりー!
智。
…わぁい、おかーさんのおにぎりー。
だけど蓉子さんのおにぎりはすごく美味しいから、智が喜ぶのは良く分かる。 私も貰っちゃおうかな。
ありがとう、聖。 でも貴女はもう駄目よ。
えー。
いっぱい食べたでしょう? 今日はもう、お仕舞い。
んじゃ、明日の朝にする。
はいはい、分かったわ。
…基本、“ばか”なんだよな。
…それもよく、江利子さんが言ってたね。
蓮、葵。
…。
は、はい。
ちゃんと、聞こえてるわよ?
『…ごめんなさい』
あはは、やっぱり私の蓉子さんが一番だ。
おにぎり、おにぎり、おかーさんのおにぎり…あ、そうだ、忘れてた。 オミヤゲ、いる? 今回はね…
ところで、智。
なに、蓮ちゃん。 蓮ちゃんもオミヤゲ、欲しい?
要らん。
じゃあ葵ちゃんにあげるね。 これはね、
あ、ありがとう。
智、お前はいつになったら落ち着くんだ。
落ち着いてるよ。 じゃないとまた、おかーさんに注意されちゃうもん。
然うじゃなくてだな。
智、もう出来るから。 さっさと手洗いうがいをしちゃいなさい。
はーーい。 じゃ、また後でねー。
…全く。 あれで本当に三十路近いのか…
まぁ、智はあの頃のまま歳を取ったようなものだから…ね。
蓮、ソファ退かすの手伝ってー。
…そしてやっぱり、私達は一緒に寝るのか。
まぁ、良いんじゃない?
たまには、なんだし…。
後
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