…ただいま。


   聖…!


   あ、蓉子。
   帰ってたの?


   祐巳ちゃんから連絡を貰って…ッ


   そっか。


   私も探しに行こうと思ったのだけど、帰ってきたら貴女、家に居なかったし、
   屹度探しに行ったのだと思って、だから若しも二人が家に帰ってきたらと思ったから、だから、私…!



   蓉子、落ち着いて。


   蓮と葵は…!?
   見つかったの?!


   …。


   答えて、聖…ッ


   大丈夫だよ、蓉子。
   …ほら、二人とも。


   ……よーこ。


   ……。


   蓮、葵…ッ


   ……。


   …おかぁ、さん。
   おかぁさん…!


   …良かった。
   本当に、良かった…。


   とりあえず、中に入ろう。
   雨に濡れた体を温めなきゃいけないし。
   話もしないといけないから。


   はな、し…?


   二人がどうして、幼稚舎から居なくなった…いや、抜け出したのか。
   ちゃんと話さないといけない。


   …。


   うん、先ずは体を温めるのが先だな。
   蓉子、二人をお風呂に入れよう。
   いや、シャワーの方が手っ取り早いか。
   でもって、あったかいミルクティーも淹れよう。


   …。


   蓉子、着替えの支度をお願いしても良いかな。
   あ、私のもね。
   正直、私も下着までグッショリだから、ちびたちと一緒にシャワーを浴びちゃうつもり。


   …分かったわ。


   うん。
   んじゃ二人はそのまま、風呂場にゴー。
   オーケイ?


   ……。


   ……。


   よしよし。
   もう、大丈夫だ。


   聖…。


   蓉子も着替えた方が良いよ。
   折角のスーツが濡れちゃってるから。


   ……。


   …蓉子、もっと濡れちゃうよ。


   ……。


   …よしよし。
   もう、大丈夫だから。
   ね…?


   ……うん…う、ん。
















   …。


   れん。


   …。


   やっぱり、だめだよ。


   …。


   かえろうよ。


   …。


   ねぇ、れんってば…。


   …じゃあひとりでいく。


   あ。


   …。


   まって、れん。


   あおいはかえれ。


   れんもいっしょにかえろ?
   せんせい、しんぱいしてるよ。


   かえらない。


   まって、まってよ。


   …。


   …れんといっしょじゃなきゃ


   ん。


   ……れん。


   いこ。


   ……でも。


   …。


   れん。


   にゃーんとこ、いく。
   ぜった…


   …れん?
   あ…。


   …あめ。


   そんな、さっきまでおてんきだったのに。


   …。


   どうしよう、かさ、もってない…。


   …。


   どうしよう、れん…。


   …。


   そうだ、どこか、あまやどり…。


   …あっち。


   え…。


   あおい、はやく。


   う、うん。










   …。


   …あめ、ぜんぜん、やまないね。


   …。
   …せんせい、しんぱいしてるかな。


   …。


   …。


   …。


   …れん。


   …。


   なにか、いって。


   …。


   れ…


   !


   ひぁ…ッ


   …ごろごろ。


   れん、れん…ッ


   …。


   どうしよぅ、れ…ひゃッ


   …ぴかぴか。


   …ッ


   …。


   れん、れん…れん…。


   …。


   こわ、い…ひッ


   …また。


   れん…れん…れんん……う。


   …。


   ひっく…。


   …。


   れん、っ…れ…ん…。


   …。


   こわい…、こわぃよぅ……。


   ……あおい。


   …れん…れん。


   て。


   れ、ん…。


   ん。


   ……う、ん。


   …。


   れん…。


   …。


   …れん。


   ……じょぶ。


   ………うん。


   …。


   …。





   …蓮、葵?





   …。


   やっぱり。
   蓮と葵だ。


   …せい、ちゃん?


   やぁ、ごきげんよう。
   こんなお天気模様だと言うのに君たちはこんなところで一体何をしているのかな?


   …。


   せいちゃん…ッ
















   祐巳ちゃんには連絡しておいたよ。
   早退、て形にさせてもらった。


   …そう。


   蓉子、落ち着いた?


   …ええ。
   ごめんなさい、聖。


   なんで謝るの?


   …取り乱してしまって。
   らしくないわよね。


   普通なんじゃない?
   親、なんだし。


   …聖、は


   今更思い出したんだけどさ。
   蓉子が言ってたとおりだった。


   …?


   予報ではところにより雷雨。
   頭の中に全く無かったよ。


   …。


   ミルクティー、蓉子さんに。


   …ありがとう。


   ちび達の分は…うん、また後でいっか。


   体が温まったら、疲れが出たみたいで。
   ソファに座ったら直ぐに…。


   と言うより、安心したんだろうね。
   蓉子が直ぐ傍に居るから。


   聖も。


   捨てられた子にゃんこみたいになってたよ。
   今みたいに体を寄せ合ってさ。


   …。


   ともあれ、雨宿りが出来るトコがあって本当に良かった。
   若しもずっと雨に打たれていたら熱を出しかねな…?


   …はぁ。


   蓉子。


   ん…。


   子供は凄いね。


   …。


   軽く範疇を越えていくよ。


   …分かってくれたと思ってたのに。


   元野良の、老いた飼い猫。
   もっと言うとこのマンションはペット禁止。
   だけど。


   …。


   純粋に猫だけを見てるんだね、子供達は。
   大人になると色んなコトを考えて、さ。


   …けれど。
   うちでは飼えないわ。


   そう。
   で、駄目と言うのは簡単でね。


   …。


   勝手に幼稚舎を抜け出して、皆に心配をかけた事に関しては叱らないといけない。


   …うん。


   でも動物を大事に思う気持ちを咎める事は出来ないなぁ、と思うんだ。


   …。


   ん、なに?


   聖は…ちゃんとあの子達の親なのね。


   ん、それどういう意味?


   …私よりもよっぽど。


   何言ってんの。
   蓉子の方がちゃんとお母さんしてるじゃない。


   …そうかしら。


   もう。


   …。


   良いかしら、蓉子さん。
   そもそも親ってのは二人でやるもんなんだよ。
   そりゃあさ、世の中諸々色んな事情で一人で頑張っている人も居るよ。
   でもさ、


   …。


   うちの場合は、蓉子と私で、一対なんだよ。


   …。


   蓉子が出来ないコト…そうは無いと思うけど、それでもあったら私が頑張る。
   その為に私は居るんだって思いたいから。
   だから良いんだよ。


   …甘えて、ばかり。


   …。


   私、貴女に…。


   …良いじゃん、たまには。
   私は嬉しいよ。


   たまに、じゃないわ…。


   そうかな。
   いつもは私ばかりだと思うけどな…?


   ん…。


   …ん、あまいミルクティー味。
   なんてね。


   …。


   ほら、笑って。
   若しくは、もう、って呆れてよ。


   …重たくない?


   ん?


   ……私、荷物に


   蓉子。
   本当に怒っちゃうよ?


   …。


   蓉子。


   …ごめんなさい。


   蓉子だけの問題じゃない。
   二人の子なんだから、二人で考えよう。
   いや、考えなきゃ、ね?


   ……うん。










   蓮。


   …。


   葵。


   …はい。


   どうして、幼稚舎を抜け出したりしたの?


   …。


   …。


   黙っていては分からないわ。


   …。


   蓉子、顔が怖い。
   もちっと力を抜こう。


   …貴女達が居なくなった事で。
   みんながとても心配したのは分かる?


   …。


   ……はい。


   祐巳ちゃ…先生も、とても心配して下さったのよ。


   …祐巳ちゃんに敬語を使うの、未だに慣れないなぁ。
   なんか可笑しい。


   聖。


   あい、どうか気になさらず。


   蓮、葵。
   どうしてそんな事をしたのか…怒らないから、貴女達の言葉で話して。


   …。


   …。


   …ふむ。


   蓮、あお


   蓉子。


   …。


   蓮、葵。
   新鮮、だったでしょ?


   …?


   あんな時間、普通だったら幼稚舎に居るのが当たり前なのにさ。


   …聖。


   で、だ。
   あの時間の外の世界はどうだった?


   ……。


   …あの、


   うん。
   何かな、葵。


   …しらないせかいみたい、で。


   知らない世界?


   すこし、こわかったの…。


   …葵。


   そっか。
   じゃあ、蓮は?


   ……。


   れん…。


   ……にゃい。


   何でもない、か。
   だけどさ、少しわくわくしなかった?


   …。


   私なんかはそうだったよ。
   なんか、違った世界に見えてさ。
   何て言うのかな、目に映るモノの輪郭がよりはっきりとしているとでも言うのかな。


   …。


   …と言うか。
   貴女、幼稚舎の頃からそうだったの?


   例えば、の話ですよ、蓉子さん。


   例えば…ね。


   蓮は違った?


   …しらにゃい。


   …途中、空が真っ暗になって。
   雨が物凄い勢いで降ってきて、雷まで鳴ったけれど。
   それでも何でも無かった?


   ……。


   蓮…。


   あ、あのね、せいちゃん。


   うん?


   れんがね、て、にぎってくれたの。


   手を?


   だからわたし、こわかったけど…あまり、こわくなかったの。


   葵は雷、苦手なのに?


   れんが…れんがいたから。


   …。


   れ、れんはわるくないの。


   だけど幼稚舎から黙って抜け出した事は悪い事だ。


   う…。


   さっき、蓉子も言ったけれど。
   蓉子も私も、幼稚舎の先生や友達も、蓮と葵の事を凄く心配した。
   それは分かるね?


   …。


   …うん。


   どうしてそんな事をしたのか。
   私と蓉子はそれが知りたいんだ。
   理由無く、だったら…


   ……。


   …蓮、ゆっくりで良いから。
   話してみて…?


   ……にゃー。


   …。


   にゃーのとこ、いく。


   …にゃーと言うと。
   あのにゃんこの所へ、かな?
   でも何で?


   ……。


   …それはどっちが先に言い出したの?


   …。


   …。


   蓮、葵。


   …わ、わたし


   あおい。


   れ、れん…。


   せー。


   ん?


   ……。


   …そっか。


   ち、ちがうの、わたしもいくっていったから


   けれど、蓮から先に言った。
   そうだね、蓮。


   …。


   で、でもせいちゃん、とめられなかったわたしもわるいの。


   …。


   だから、だから…ッ


   葵。


   れんを、おこらないで…。


   …怒らないよ。
   だけどね…蓉子。


   そう…これだけはちゃんと、話さないといけない事だから。


   う…く。


   葵、泣かないで。
   私も聖も怒ってなどいないわ。


   …おかぁ…さん。


   けど、いっぱい心配したのよ。
   貴女達が居なくなったと聞いた時、私は…。


   ごめん、な、さい…、ごめんな…さ、ぃ…。


   …うん。


   …。


   蓮。
   蓉子にいっぱい心配させた事、それについて蓮がしないといけない事をちゃんとしないと駄目だ。


   …よぉこ。


   蓮…。


   …ごめちゃ…い。


   ん…。


   …ちゃい。


   ん、良く出来ました。


   せいちゃん、ごめんなさい…。


   うん。


   …。


   蓮君蓮君、私には?


   ……。


   私も。
   心配、したんだけどなー?
   傘、うっかり忘れちゃうほどにさ?


   ………い。


   ん?


   …ちゃ。


   うん。
   二人とも良く出来ました。


   にゃ…ッ


   あ…。


   良い子にはご褒美。


   にゃー…ッ


   せ、せいちゃん、くすぐったい…。


   蓉子にも。


   え、なん…で。


   ちゅー。


   …もう、直ぐにふざけるんだから。


   ふざけてなんか、ないない。


   …もう。


   へへ。


   …兎に角。
   もう二度と、黙って抜け出すなんて事しては駄目よ。


   …よーこ。


   おかーさん、いいにおい…。


   あ、良いなぁ。
   私も混ぜて混ぜて。


   聖…。


   よいしょ、と。


   あ、こら、せ


   ふぎゃッ。


   お、怪獣?


   聖、一寸、


   じゃ、二人が反省したところで本題に移ろっかね。


   聖ってば。


   んー?


   狭いから、もう少しそっちに詰めて。


   気にしない気にしない。
   ただのスキンシップだから。


   気にするわよ。
   蓮が潰れてしまってるじゃないの。


   ……。


   潰れるだなんて。
   寧ろ、私と蓉子の間に居られて仕合わせじゃんね。


   …ふぅぅ。


   …とてもじゃないけれどそうは見えないわ。


   そ?
   んじゃ…


   ぅ、な?!


   こうしよー。
   こうすりゃ潰れないもんねー。


   や。


   あら?


   よーこ、よーこ。


   まぁまぁ、蓮君。
   たまには聖さんの膝を堪能したまえ。


   やーっ


   そんな事言うと。
   こうしちゃうぞ。


   う…?


   おでことおでこを、ぐりぐりぐりぐりー。


   にゃ、にゃーっ


   ははは!


   聖。


   あた。


   悪ふざけはそこまでにしておいて。


   へーい。
   だけど蓮はこのままで良いでしょ?


   だって。
   蓮、どうする?


   ……。


   嫌そうよ。
   それもすっごく。


   そんな、蓉子さんまで…!


   ふふ。


   ……あ、あの。


   んん?


   …。


   どうしたの、葵。


   …ううん。


   葵?


   …分かった!


   え、何が?


   蓉子、蓉子。


   だから何よ。


   あ、いや、蓉子じゃないか。


   は?


   葵、蓉子を乗り越えてこっちにおいで。


   はぁ?


   葵、葵。
   おいでおいで。


   え、えと…。


   一寸、聖。
   貴女さっきから何を言って


   あ、やっぱやめた。


   は??


   やっぱこうしよう。
   蓉子、葵を膝の上に乗せてあげて。


   え?


   そうすりゃ家族4人、もっとくっつけるでしょや。


   くっつける、て。


   いつも蓉子の膝は…本当は私のだけど、蓮が独り占めにしてるから。
   たまには葵に、さ。


   ……。


   そういうわけだから。
   葵、蓉子の膝の上に乗っかっちゃえ。


   ……。


   お、おかーさん…。


   …たまには、ね。


   え…きゃ。


   あっ!


   まぁ、良いでしょう。


   お、おかぁさん…。


   あおい、あおいー!


   はいはい、蓮君は今回はこっちだからねー。


   にゃぁ!


   でねでね、私達はこうするの。


   ……。


   ね?


   …最初からこれが目的だったわけじゃないわよね?


   うん、何にせよこうする気満々だったから!


   ……。


   良いなぁ、こういうの。
   蓉子の肩を抱いて…ああもう、仕合わせー。


   ところで。


   ん、にゃににゃに?


   本題に移る、のではなかったのかしらね?


   あい、そーでした。


   ……全く。


   さて、と。
   そんじゃ、本題に入るけど。


   …この姿勢で?


   ま、いーじゃない。
   ね、ね?


   ……もう。


   んだば、改めて。
   にゃんこ、うちでは飼えない事は前に話したよね?


   …。


   うちはね、無粋なコトにペット禁止だから。


   …うん。


   いっそ、お引越し。
   なんて手もあるけど、そんな簡単には出来ない。
   都合ってものがあるんだよね、大人には。


   …。


   それから。


   聖。


   なぁに?


   その軽い話し方、止めなさいよ。


   いや、この方が堅苦しくなくて分かりやすいでしょや?


   真面目な話をしているのよ。


   最終的にちび達が分かれば良いんだよ。


   だけど、


   にゃー、いつもひとい。


   ん、そうだね。


   あんよ、ない。


   うん。
   だけど、あのにゃんこにはちゃんと飼い主さんが居る事も話したよね?


   ……。


   だから一人じゃない。
   それから、あのにゃんこは結構なお年なんだ。
   飼い主さんの話によると腎不全…お腹の具合が良くないらしい。


   ……。


   目だってあまり見えてない。
   これから益々、手がかかるようになるだろう。
   そしてそれはただ可愛いと気持ちだけで何とかなる問題じゃないんだ。


   …。


   勿論、可愛いと想う気持ちは大切なコトだよ。
   けれど…現実はそこまで甘くない。


   …うー。


   じゃあ、聞くけど。
   蓮と葵は幼稚舎に行ってる時はどうする?
   私にだって一応仕事があって、家を空ける時だってある。
   そんな時、にゃんこに何かあったらどうする?


   ……。


   あのにゃんこにとって。
   あの場所に居るのが一番の仕合わせなんだ。
   あそこにいれば、いつも見守ってくれる飼い主さんが居る。
   お気に入りの場所で、天気が良ければ、日向ぼっこも出来る。
   それから…


   …。


   …。


   君達も遊びに来てくれる。


   …。


   …ねこさん、は。


   うん。


   あそこにいたほうが、いいの?


   と、私は思ってる。


   …よーこ。


   蓮と葵、二人があの猫さんを大好きな事、それは屹度猫さんにも伝わっていると思うの。
   その証拠にあの猫さんは二人に懐いてくれているから。
   …けど。


   …。


   私も聖と同じ。
   あの猫さんにとってあの場所に居る事が仕合わせだと思うの。


   …うぅ。


   …。


   二人はあのにゃんこのコト、大好きだよね?


   ……。


   ……う、ん。


   じゃあ、あのにゃんこの仕合わせを考えてあげられないかな?


   …。


   …。


   蓮と葵のおうちが、私と蓉子の居る、この場所のように。
   あのにゃんこのおうちはあそこなんだよ。


   …。


   …蓮。
   君は優しい子だ。


   …。


   葵、貴女も。


   ……。


   だから。
   にゃんこの仕合わせを考えてあげよう。


   …。


   蓮、葵…。


   ……。


   ……ま、た。


   うん。


   …にゃー、


   つれてって…。


   よし。
   じゃあ、次の休みの時でも行こう。
   4人で、さ。


   …聖、良いの?


   この子達はもう、にゃんこにとっての仕合わせを考えたから。
   屹度、大丈夫だと思うんだ。


   …。


   それに。
   突然会えなくなるのは、淋しい事でしょう?


   聖、貴女…。


   あ、深読み禁止ね?
   大分前からは蓉子と、今は蓉子とちび達と一緒に居るのが私の一番の仕合わせなんだから。


   ……聖。


   ありがとう、蓉子。
   愛してるよ。


   あ、聖…。


   …今なら見えてない。
   二人とも、お腹に顔、埋めてるから。


   …。


   とは言え一瞬だけ、だけど。
   続きはまた後で…ね?


   …本当に。


   ん?


   …ばか、なんだから。










   ・










   ひー!


   ……。


   帰るぞ。


   …や。


   ひー、帰ろう?


   …。


   ひー、智。


   …ごろんたといゆの。


   そのごろんた、何処にもいないようだけど。


   …。


   蓮。


   …へいへい。


   …よんえ、も。


   …。


   こない、の…。


   …帰ったな。


   蓮。


   ……。


   ごろんた、ごろんたぁー。


   …ひじ


   智。


   …ごろん、たと、かえゆ、の。


   ゴロンタは帰ったんだ。


   ひー、ごろ、ひっく…んた、と…。


   ゴロンタは自分のうちに帰ったんだ。


   ……。


   私達に帰る家があるように、ゴロンタにもちゃんとあるんだ。


   …どこに、あゆ、の。


   知らない。


   …。


   だけど多分、リリアンの中に、と言うより、リリアンがゴロンタにとっての家なんだ。
   だから屹度、ここを離れない。
   仮令、智がうちに連れて帰ろうとしても。


   ……。


   分かるか、ひー。


   ……う。


   …ねぇ、智。
   若しも聖さんや蓉子さん、蓮や私以外の人が迎えに来て、


   …。


   今日から智の帰るおうちが変わると言われたら。
   ひーは


   …そんなの、やだ。


   …。


   やだよぅ…。


   …それと一緒なんだ。
   少なくともゴロンタにとっては。


   …。


   それでも。
   智はゴロンタを連れて帰りたいと思うのか。


   …。


   智。
   ゴロンタにとってのおうちはここなんだよ。


   ……。


   葵、ティッシュ。
   ひどい顔になってる。


   うん。
   …ひー、ちーん?


   ……ごろん、た


   明後日になればまた、ひょっこり来るだろ。
   多分。


   …また、あそべゆ?


   と、思うけど。
   何しろ、アイツは気紛れだから。


   …蓮。


   ま、智はアイツの家であるリリアンに通っているんだから。
   大丈夫なんじゃないの。


   …もう。


   葵も。


   …え。


   と言うか、もう少し力を抜いた方が良い。
   あれじゃ逃げる。


   …。


   さ、家に帰るぞ。
   いいかげん、お腹が空き過ぎた。


   …。


   ひー、手。


   …。


   葵、逆。


   …ん。


   ……い。


   …?
   智?


   …ばいばい。
   また、ね…。