-Last Christmas(現世1) クリスマス、だねぇ。 然うね。 クリスマスソングに、イルミネーション。 チキンやケーキ、こじゃれたお店の予約に、クリスマスプレゼント用のあれこれ。 そして、スーパーにはお正月の食材。 ……。 相変わらず、雑多よね。 クリスマスソングも早いところでは11月から流れていたし。 1日から流れてたねー……。 ハロウィンが終わったと思ったら、次の日にはきれいに切り替わっているでしょう? 毎年のこととは言え、大変だと思うの。 ……うん、そーだね。 この国らしいと言えば、それまでだけれど。 だけど、それが良いところでもあると思うけどな。 盛り上がって、楽しいじゃないか。 まこちゃんはイベントが好きだものね。 クリスマスは、両親が亡くなってからはあんまり好きじゃなかった。 12月は自分の誕生日もあるから、余計に。 ……。 だけど、今は好きだ。 ……ハロウィンとクリスマス、もっと言えばバレンタイン。 うん。 元々、この国にはなかった行事だけれど、楽しく過ごせるのなら。 亜美ちゃんも、 仮令、冬の商戦の一環だったとしても。 ……。 ……。 ……クリスマスは、さ。 ……。 子どもたちが楽しみにしているあたりが特に良いと思うんだ。 ケーキやご馳走、何より、サンタさんがプレゼントを持ってやって来る。 ……ケーキやご馳走を食べられる家ばかりではないし、サンタさんだって必ずしも来て呉れるとは限らないわ。 ……。 関係ない家だって、あるもの。 ……亜美ちゃんちは、 サンタさんは、来なかった。 ケーキは母が予約して呉れたものを食べてはいたけど、大抵、ひとりだったから。 母はいつだって高級なものを用意して呉れたけれど、それが果たして美味しいのか、私には分からなかったわ。 ……。 ……なんて言ったら、贅沢よね。 今は、違うだろ? ……違うって? ケーキを食べる時はひとりじゃないし、サンタさんだって来るだろ? ……。 ね、亜美ちゃん。 今年は、どんなケーキが良い? ……。 なんでも言って、なんでも作るから。 ……なんでも? 高級なホテル、テレビや雑誌で紹介されているような有名店。 ……え? そんなケーキは、用意出来ないけど。 亜美ちゃんに美味しいって言ってもらえるよう、今年も一生懸命作るから。 ……。 ね、何が良い? どんなのが良い? ……ねぇ、まこちゃん。 なんだい? いつも、思うのだけれど。 うん。 私に出来ることって、何かしら。 うん? まこちゃんとクリスマスを過ごすようになってから……その、楽しみに思うようにはなったのだけれど。 え、本当? どうして驚くの? 楽しみに思って呉れていたんだなって。 ……まこちゃんと過ごせるのに、楽しみに思わない方がどうかしてるわ。 そ、そっか。 ……どうして照れているの? その、嬉しくて。 ……? 変なまこちゃんね? う、うん、そーだね。 はぁ。 あ、呆れた? ううん、照れてるあなたはかわいいなって。 ……。 まこちゃん? ……なんかもう、どきどきが止まらない。 ……。 はぁ……顔が、熱い。 ……動悸、かしら。 へ。 まこちゃん、息切れはしている? え? ……。 う、わ。 ……息切れは、してないみたい。 あ、亜美ちゃ ねぇ、胸は? 胸は苦しくない? だ、大丈夫だけど……と言うか、近い。すごく、近い。 まこちゃん、今から母の病院に行きましょう。 え、なんで? どきどきが止まらないのでしょう? お医者さんに診て貰った方が、 あ、あのね、亜美ちゃん。 何度も言ってると思うけど、これはそういうのじゃなくてね。 だけど、分からないじゃない。 今頃の季節は心疾患を引き起こす可能性が高いの。 だから、 でもあたし、まだ十代だし、 そんなの、関係ないわ。 大丈夫、大丈夫だから。 けど、 病気では、ないから。 亜美ちゃんと一緒にいるとこうなる時があるんだって、何度も言ってるだろ? ……。 あたし、何度も言ってるよね? ……聞いてる、けど。 考えるだけで、なったりもするんだよ。 ……でも、どきどきが止まらないのは、 亜美ちゃん。 ……だって。 あぁ、もう……しょうがないなぁ。 ……。 亜美ちゃん、あたしを見て? ……いや。 なんで? ……いやなものは、いや。 んー、そっか。 ……。 じゃ、こうしようかな。 ……あ。 ……。 ま、まこちゃ……ん。 ……。 ……。 ……ね、どきどきした? ……。 どきどき、してる……? ……そと、で。 ほんの少し、触れただけだよ。 ……それ、でも。 大丈夫、誰も見てない。 ……そういう、問題じゃ。 どきどき、とまらない? お医者さんに、行く? ……まこちゃんのばか。 はは。 ……もぅ。 そういうわけだから、お医者さんには行かない。 ……。 ね……顔、熱い? ……知らない。 えぇ。 心配、したのに。 ん、ごめん? 顔、笑ってる。 亜美ちゃんが可愛いから。 その顔、止めて。 笑ってるの、だめ? その顔は、だめ。 えぇ、難しいなぁ。 ばか。 はは、ごめんよ。 ごめんって顔じゃ、 ……。 ……まこ、ちゃん! ね、早く帰ろ。 ……は? 抱き締めたくなっちゃった。 ……。 ここで だめ。 だろ? だから、早く帰ろ。 あ。 これくらいなら、良いよね。 だ、だめ。 えぇ、良いじゃないか。 誰も見てないって。 み、見てなくても、 あたしと手を繋ぐの、いや? ……っ。 いやなら、離すけど。 ……。 ん? ……まこちゃんって、ずるいわ。 はは、そうかなぁ。 ……こんなに、ずるいだなんて。 こんなあたしは、嫌いかい? ……。 幻滅、した……? ……ほんと、ずるい。 ごめんね? ……。 亜美ちゃ……ん、 ……。 ……ええ、と。 おかえし。 ……。 ……やられっぱなしじゃ、癪だもの。 ……。 ……。 ……今すぐ、 絶対に、だめ。 どきどきが、止まらないんだ。 そんなの、知らない。 ちょっとだけ、一瞬で良いから。 だめなものは、だめ。 亜美ちゃ 帰ってからじゃなきゃ、だめ。 ……。 ……それまで、我慢して。 ……。 ……なに、よ。 あぁもう、ほんとかわいい……。 ……はやく。 うん……? ……帰りたいのでしょう。 ……! ……。 ……うん、そうなんだ。 だから、早く帰ろ……。 ……。 帰って……帰ったら。 ……結局。 え、なに? ……私に出来ることって、なんなのかしら。 うん……? ……もっと、他に。 うーん……。 ……クリスマス、だって。 ね、亜美ちゃん。 ……なに。 もう、たくさんして貰ってるよ。 ……。 だから、難しく考えないで。 ……難しく、なんて。 ほーら。 ……う。 考えない、考えない。 ……もぅ、まこちゃん? ははは。 ……。 だけどね、本当にして貰っているから。 ……何を? そうだなぁ、ここでは言えないなぁ。 ……。 帰ったら、ね……? ……。 さぁ帰ろ、亜美ちゃん。 ……もう、帰ってる。 ふ。 ……何? いや、ちょっと昔のことを思い出して。 昔のこと? あたし達が未だ、学生だった頃。 若かったと言うか、青かったと言うか。 だって、学生の頃だもの。 ま、然うだね。 ~~~♪ ……珍しいな。 ねぇ、まこちゃん。 ん、なんだい? ノンアルコールなのだけれど、シャンパンを用意してみたの。 あぁ、良いね。 ふふ、良かった。 ……。 ~~♪ その歌。 ……? 失恋の歌だよね。 ええ、然うよ。 珍しいね、そんな歌を口遊んでいるなんて。 だって、好きだったでしょう? クリスマスになると、よく口遊んでいたもの。 あの頃は、失恋の歌だなんて知らなかったから。 知った後も、口遊んでいたと思うけど。 メロディが好きだったんだよ、歌詞よりもね。 私も、好きだったの。 メロディが? ええ。 それは、知らなかったな。 あなたが、口遊んでいたから。 好きだったのよ、私。 そっか……嬉しいな。 だけど、いつの頃からか、歌わなくなってしまって。 然ういえば、然うかも。 なんでかな。 私には、分からないわ。 言って呉れれば、歌ってあげたのに。 言えないわ、そんなこと。 どうして? だって。 だって? ねだっているみたいじゃない。 あたしは、嬉しいけど。 亜美ちゃんにおねだりされたら、さ? ……。 嬉しいんだけどなぁ。 おねだり、されるの。 ……知ってるわよ。 もっとさ、して呉れても良いからね? と言うより、して欲しい。 ……。 はは。 然ういや、歌詞の意味を教えて呉れたのは亜美ちゃんだったよね。 ……然うだったわね。 知らない方がしあわせとは、よく言ったもんだ。 遅かれ早かれ、その意味を知ることにはなっていたと思うけど。 厳しかったもんなぁ、誰かさんのお勉強会は。 誰かしら、ね? ひとりしか居ないじゃないか。 だぁれ? あたしの恋人……今じゃ、伴侶なんだけど。 ……。 ……亜美ちゃん、だよ。 私……? ……然う。 そんなに厳しかったかしら……? それはもう……ね。 そして……今も、厳しい。 だって、大事なことでしょう……? 幾つになっても……ね。 ま、然うだけどさ……。 ふふ……ふふ……。 ……ふ。 なに……? ……亜美ちゃんは今も尚、可愛いな、と。 そんなこと、言って……昔から、然うなんだから。 然うだよ……あたしはずっと、こうなんだ。 ……手。 良いじゃないか、少しくらい……一年に一度、なんだからさ。 ……この手は、年中無休だわ。 然うかな……。 ……然うよ。 しょうがない……じゃ、また後でにしようかな。 ……後で、ね。 期待、してて。 期待してるのは、あなたでしょう? 亜美ちゃんも、だろう? さぁ、私はどうかしら。 してて欲しい。 ……また。 してて、欲しいんだ……。 ……もぅ。 うん……決まり、だ。 勝手に、決めて。 ははは。 ……がっかり、させないでね。 それは……もちろん。 ……ふふ。 亜美ちゃ、 未だ、よ。 それから、手。 ……ちぇ、残念。 ねぇ、まこちゃん。 ……なんだい? ……。 ん……。 ……今は、これで我慢して? んー……ちょっと、厳しいかな。 まこちゃん? はい、我慢します。 宜しい。 ……。 ……。 ……もう、口遊まないのかい? どうして……? ……聴いていたいから。 ……。 だめ、かな。 ……~~♪ ……。 ~~♪ うん……好きだな、やっぱり。 ……ね、まこちゃん。 なに? まこちゃんも、口遊んで。 あたしも? 言ったでしょう? 好きだったって。 ……。 ……ねだって欲しいと言ったのは、あなた。 ん……だから、すごく嬉しいよ。 じゃあ、 だけど、後でね。 ……後で? 然う、後で。 それは、どうして? ケーキの、最後の仕上げをしたいから。 ……。 良いかな? ……良いわ。 ありがと。 その代わり……ちゃんと、聴かせてね。 ……はい、喜んで。 ……。 ……。 ……ねぇ、まこちゃん。 うん……? ……私、今でも思うの。 何を……? ……私はあなたに、何をしてあげられるのかって。 ……。 あの頃から、ずっと、して貰ってばかりで……。 ……言ったろ、たくさんして貰ってるって。 言葉には、出来ないようなこと……? ……それだけじゃ、ないよ。 ……。 今だって、して貰ってる……。 ……何を。 亜美ちゃん。 ……。 お待たせ。 これが、今年のケーキです。 今年は……白いブッシュ・ド・ノエル? ホワイトチョコを使ってね、ホワイトクリスマスをイメージしてみたんだ。 ……だから、雪の結晶がのっているのね。 どうかな? ……可愛いわ。 うん、とりあえずは良かった。 それに……とても美味しそう。 早速、食べてみるかい? ううん、未だ良いわ。 まぁ、然う言わず。 本当に、 ここに、少しだけ残ったクリームがあるんだ。 ……。 これを……指に、こうして。 ……まこちゃん。 はい、亜美ちゃん。 ……。 ……口、開けて? ……。 さぁ……。 ……。 ……それじゃ。 ん……。 ……。 ……。 ……どうだい? あまい、わ……。 ……かなり? あの頃、も……。 ……。 ……食べた、ような。 だから、かもね……。 ……? あの頃を、思い出したのは。 ……あぁ。 長い時間を、過ごしていると……同じことを、ただ、繰り返しているようで。 ……。 ……ケーキ、だって。 私は、好き。 ……。 あなたが作って呉れたケーキ……あなたと過ごすクリスマス……仮令、繰り返しているだけだとしても。 ……。 叶うなら……百年先も、二百年先も、ずっとふたりで。 ……また。 ん……まこちゃん。 ……また、貰っちゃった。 え……。 ……亜美ちゃん。 まこ、ん、ぅ……。 ……。 ……もう、これは後でって言ったじゃない。 ん、ごめんね……だけど、もう一度だけ。 ……も、ぅ。 ……。 ……。 ……ありがと。 ……。 それじゃ、始めようか……。 ……ええ、始めましょう。 ……。 ……。 亜美ちゃん。 まこちゃん。 メリークリスマス。 -That's Christmas to Us(現世2) ありがとうございました。 素敵なクリスマスになりますように。 ……。 ふぅ。 ……。 あ、はい、クリスマスリースですか? でしたら……。 ……。 ……今、ご用意いたしますので、少々お時間を頂いても宜しいでしょうか。 はい、ありがとうございます。 ……。 ……では、お気をつけてお持ちください。 ありがとうございました。素敵なクリスマスになりますように。 ……。 んー……腰が、痛い。 ……。 ……? ……。 あれ、亜美ちゃん? ……! やっぱり、亜美ちゃんだ。 どうしたんだい? あ、いえ……その。 こんなところで……寒かったろ? う、ううん……平気よ。 もう、そんなわけないじゃないか。 ちょっと待ってて。 あ、まこちゃん……。 え、と……これが、良いかな。 まこちゃん、私……。 はい、どうぞ。 そ、そんな、悪いわ……。 良いんだって。 ほら。 ……きゃ。 あったかい、だろ? ……。 うん? なんだい? ……ありが、とう。 どういたしまして。 ……ごめんね、まこちゃん。 なんで? ……まだ、お仕事中なのに。 あぁ。 大丈夫、丁度誰もいないし。 ……部屋で、待っていようと思ったの。 若しかして、待ち切れなかった? ……塾が、終わって。 うん。 時間を、見たら……まこちゃんのバイトが終わる時間と重なっていたから、それで。 あぁ、それで来て呉れたんだ? ……迷惑だったら、ごめんなさい。 迷惑なわけ、ないだろ? すごく嬉しいよ。 ……。 いつもと逆だね? ……逆? いつもはあたしが亜美ちゃんを迎えに行くけど、今日は亜美ちゃんが迎えに来て呉れた。 ……。 ありがと、亜美ちゃん。 すごく、嬉しい。 ……まこちゃん。 もう少しで、あがるからさ。 待ってて呉れるかい? ……良いの? もちろん。 だけど、ここでは寒いからあそこの……あ、店長。 ……。 すみません、今戻り……え、もう、あがっても良いんですか? けど……あ、はい、分かりました。ありがとうございます。 ……。 と、いうわけで。 もう、あがっても良いって。 ……ごめんなさい。 亜美ちゃん? ……。 帰る支度をしてくるからさ、待ってて。 直ぐに、来るから。 ……うん。 はぁ……。 ……。 息が、真っ白だ。 ……日本海側では、大雪だから。 雪、かぁ。 ……。 ね、手を繋いでも良い? ……え? だめ? け、けど、外……よ。 良いじゃないか、今日はクリスマスなんだし。 ……あ。 もう、繋いじゃったし。 ……もぅ。 いやなら、離すよ。 ……。 いやかい? ……いやじゃない、わ。 ん、じゃあこのまま帰ろ。 ……店長さんに、怒られなかった? 大丈夫だよ。 寧ろ、あがってもらうのに丁度良かったって。 ……お店、今日はもうおしまいなの? そろそろ、閉めるみたいだ。 だけど、あたしがあがる時間はとっくに過ぎてるからさ。 お客さんも途切れたことだし、今だって思ったみたい。 ……お片付けは、良いの? そこまでしてしまうと、学生がバイト出来る時間を過ぎてしまうから。 店長、然ういうのはちゃんとしてるんだよ。まぁ、当たり前のことなんだけどね。 ……。 それよりも、はい。 ……え。 この花を、亜美ちゃんに。 ……これを、私に? 然う、亜美ちゃんに。 ……。 えと……いらない、かな。 ……ううん、ありがとう。 ……。 その……嬉しい、わ。 ……気に入って、貰えた? ん……とても。 そっか……良かった。 ……まこちゃんの、好きなお花。 タキシードのひとと、被るかなって思ったけど……それでも、良いかなって。 ……私にとっては。 ……。 このお花は、まこちゃんが好きなお花……だから、彼を思い浮かべることなんてないの。 うん……。 ……とても、きれいね。 予約、しておいたんだ。 ……予約? だ、だからさ、売れ残りというわけじゃないんだよ。 ちゃんと、お金も払ったし。 ……然う。 え、えと……。 ……本当にありがとう、まこちゃん。 う、うん……。 ……。 部屋まで、持とうか……手が、塞がってしまうだろ。 ううん……私が、持つわ。 けど……。 ……まこちゃんが、贈って呉れたんだもの。 ……。 ……。 ……その花だけじゃ、ないから。 え……? ……クリスマスプレゼント。 ……。 部屋に帰ってから……ね。 ……私も、あなたに。 ……。 受け取って、貰えたら……嬉しい。 ……受け取らないわけ、ない。 ん……。 ……。 ……あたたかいわ。 うん……? ……まこちゃんの、手。 手袋を、していても……分かるもの? ……うん、分かるわ。 体温が、高いからかなぁ……。 ……それも、あるけど。 けど……? ……まこちゃん、だから。 ……。 ……分かるのだと、思うの。 そっ、か……。 ……。 ね、亜美ちゃん……。 ……なぁに。 え、えと……やっぱり、なんでもない。 ……? 然う……? う、ん……。 ……本当に、なんでもないの? うん……なんでも、ない。 ……然う。 ……。 ……ねぇ、まこちゃん。 なに……。 ……あなたを、愛しています。 え……。 それから……あなたしか、いない。 ……っ。 ひとめぼれ……も、あるけれど。 ……。 ……的外れなことを言っていたら、ごめんなさい。 そ、そんなこと……ない、から。 ……野暮、だったわよね。 い、良いんだ。 ……。 ……良いんだ。 ……。 ……あの、さ。 ……。 ……バイト、明日は休みなんだ。 お昼も、一緒にいられる……? ……朝も、ゆっくり出来るよ。 ……。 その、塾は……? ……夕方、から。 そっか……じゃあ、迎えに行くよ。 ……うん、待ってる。 明日は、ケーキを焼いて……ごちそう、作るから。 ……私も、作りたいわ。 あぁ、もちろん……ふたりで、作ろう。 うん……まこちゃん。 ……。 ……。 ……帰ったら、あったかいミルクティーを淹れようかな。 ミルクティー? 缶のじゃ、なくてね。 ふふ……それは楽しみ、ね。 ……雪は、降らないよね。 雪は、降らないと思うけど……。 けど……? 見て、まこちゃん。 ん? 木星が、よく見えるわ。 ……。 ふふ、今夜もきれい。 ……そう、かな。 まこちゃん? ……空の木星よりも、こっちの木星を見て欲しいな。 ……。 ……見てよ。 ……うん。 ……。 ……ね、まこちゃん。 なに……。 ……あの、ね。 うん……。 ……たくさん、見たいわ。 うん……? ……。 たくさん、見たいって……。 ……みせて、くれる? え、えと……。 ……。 すきなだけ、みても、いいけど……。 ……あなたの、うでのなかで。 ……! ……。 ……あみちゃん。 ……。 みせて、あげる……たく、さん。 ……う、ん。 キッチンミトンと……わぁ、ブックカバーだ。 ……まこちゃん、本を読むのが好きだから。 デザインも色も、すごくかわいい。 キッチンミトンもだけど、使うのが勿体ないくらいだ。 そ、その……使って貰えたら、嬉しいわ。 だけど……ふたつも貰ってしまって、良いのかい? ……貰って、欲しい。 ありがとう、亜美ちゃん……大事に、使うよ。 ……うん。 今月は誕生日もあったのに……用意するの、大変だったろ? ……ううん、そんなことないわ。 選ぶのは、とても楽しかったし……。 そっか……ふふ、本当に嬉しいな。 ……良かった。 12月生まれってさ、クリスマスと一緒にされることが多いんだよね。 ……然うなの? うん、然うなんだ……だから、すごく嬉しいよ。 ……。 ね……亜美ちゃんも、開けてみて? う、うん……。 ……。 手袋と……ブックカバー。 見事に、被っちゃったね。 ……ふたつも、良いの? ふたつとも、受け取って貰えたら嬉しい。 ありがとう……すごく、嬉しい。 ね、つけてみてよ。 ……ん。 ……。 ……ぴったり、だわ。 あぁ、良かった。 ……然ういえば、一時期。 ん? ふとした瞬間に手を重ねられたり、指を絡められたり……そうかと思えば、真剣な表情でじっと手を見られたり。 そんなことが、何度かあったけれど……。 ……。 若しかして、この為だったの? ……手の大きさを掴むのに、繋ぐだけじゃ足りなくて。 ……。 ばれちゃうかなって、思ったけど……案外、ばれないものだなぁって。 ……それどころじゃ、なかったもの。 うん? ……不意に、触ってくるから。 不意を突かれてびっくりしてる亜美ちゃんは、いつだって可愛かったな……。 ……もぅ。 今も……すごく、可愛いよ。 ……あまり、言わないで。 やだ、もっと言うし……言いたい。 ……まこ、 耳、真っ赤で……とっても、おいしそうだ。 や……ぁ。 ……。 ……んっ。 ん、かわいい……。 ……も、う。 ごめん……? ……おもってない、くせに。 そんなこと、ない……。 ……目が、笑ってる。 だって、かわいいんだもの……。 ……もう、だめ。 今は……? ……。 ……あとでなら、いい? …………ばか。 ん……ごめん。 ……。 ……なみだめ? ……! まこちゃん……! はい……ごめんなさい。 ……。 ほんと、かわいい……。 ……ねぇ。 なんだい……? 手袋と、ブックカバー……両方、手作り……よね。 うん。 忙しいのに……。 ……だけど、楽しかったよ。 ……。 亜美ちゃんのことを想いながら、作るのは。 ……ありがとう、まこちゃん。 あ……。 ……大事に、使うわ。 う、ん……。 ……。 ……え、と。 お花、も。 ……え? ありがとう……。 ……亜美ちゃん。 まこ、ちゃ……ん。 ……。 ……。 ……メリークリスマス、亜美ちゃん。 メリー、クリスマス……まこちゃん。 ……亜美ちゃんとふたりで過ごすことが出来て、すごく嬉しい。 私も、嬉し……ん。 ……。 ……。 ……あなたを、愛しています。 ……。 これからも……あたしには、亜美ちゃんだけだよ。 ……わたし、も。 ……。 ……。 ね……明日の朝は、ゆっくり出来るから。 ……う、ん。 塾は、夕方からだったよね……? ……。 それじゃ……それまでにはある程度、終わらせておかないと。 ……終わらせて? ごちそうと、ケーキの……ね。 ……うん、然うね。 だけど、それでも、朝はゆっくりしようね……。 ……あまりゆっくりしてしまうと、終わらなくなってしまうわ。 大丈夫さ……。 ……買い物にも、行くのでしょう? 然う、なんだけど……買うものは、大体、決まっているから。 ね……何を、作るの? 然うだね……色々、考えたんだけど……。 ……私にも作れるもの、ある? もちろん……。 ……。 今年は、軽くつまめる前菜を色々用意しようかなって……それでね、亜美ちゃんには、その中の幾つかを作って欲しいと思ってるんだ。 オードブル……? そ……。 ……盛り合わせの要素も、あるのね。 然うなんだ……ね、楽しそうだろ? ふふ……とても。 レシピはもう、用意してあるんだ……明日、教えるね。 ……がんばるわ。 力は、抜いてね……? ……。 ね、思うんだけどさ……。 ……なに。 今の亜美ちゃんなら、メインディッシュも作れると思うんだ……。 ……まこちゃんのようには、作れないわ。 そんなこと、ない……。 ……私には、無理よ。 ううん、そんなことないよ……亜美ちゃんはあたしが教える前から、基礎がしっかりしてた。 それでいて手先が器用で、何をするにも丁寧、向上心もあるし、何よりとても素直だからさ。 ……それと、お料理が上手なのは同じではないわ。 最初から、上手なひとなんていないよ。 お勉強も、然うだろ? ……。 いつか、食べてみたいな……亜美ちゃんが作った、メインディッシュ。 ……私に、作れるかしら。 作れるさ……絶対に。 ……教えて、呉れる? うん……? ……これから、も。 あぁ、もちろん……あたしが教えられることなら、なんでも。 ……だったら、いつか。 ……。 いつか……ね。 ……うん、楽しみにしてる。 ……。 ん、亜美ちゃん……。 ……ねぇ、まこちゃん。 なんだい……? ……疲れて、ない? 疲れて……? ……ずっと、立ちっぱなしだったのでしょう? あぁ……。 ……腰が痛いって、言っていたわ。 聞いてた……? ……ごめんなさい、聞くつもりはなかったの。 腰は、大丈夫だよ……もう、なんでもない。 ……でも。 一時的なものだから……ね。 ……寒いと、特に痛めやすいって言うわ。 大丈夫、お風呂に入ったから。 ……お風呂? あったまったからね、もう平気なんだ。 ……。 本当に、大丈夫だから……。 ……ん、まこちゃん。 帰ってきて、亜美ちゃんと休んだし……今夜一晩くらいなら、夜更かし、出来るよ。 ……。 ね……? ……もぅ。 ははは。 ……。 ん……亜美ちゃん……。 ……ばか。 うん……ごめん。 ……。 ……ベッド、行く? 明日の、こと……。 ……朝になったら、また話そうよ。 ベッドの中で……ゆっくりと、さ……。 ……。 ね、行く……? ……ま、だ。 まだ……? ……あまり、急かさないで。 と……。 ……。 ……ごめん。 はぁ……。 ……何か、飲む? ううん、いいわ……ありがとう。 ……そっか。 ……。 あの、いやなら……無理には、しないから。 ……まこちゃん。 な、なんだい……? ……いやでは、ないから。 ……。 ない、から……もう少し、だけ。 ……わかった。 ……。 い、いくらでも、待ってるから……だけど、いやだったら言って。 ……。 そんな気が、ないのに……無理に、したくはないんだ。 ……すき。 ……? 亜美ちゃん……? ……はぁ。 ……。 まこちゃん。 ……なんだい。 つれて、いって。 ……。 ……つれていって。 もう、いいの……? ……。 まだ、だったら……。 ……みせ、て。 ……。 ……あなた、を。 あたしを……。 ……だめ? う、ううん……いくらでも。 ん……まこちゃん……。 すきなだけ、みて……。 ……みても、いい? うん、みてよ……。 ……ん、……。 あたし、だけを……。 ……まこ、ちゃん。 いい、かい……? ……。 それじゃ……。 ……。 ……相変わらず、軽いね。 これ、でも……。 ……ん? ふえた、の……たい、じゅう。 ……それでも、まだまだ、軽いよ。 ……。 おいしいの、もっと食べさせてあげるね……? ……もぅ、ばか。 はは……。 ……。 ……あみちゃん。 ……て。 ん……なに? ……けして、でんき。 いま、けすよ……だけど、その前に少しだけ。 ……やだ、みないで。 顔を、見ておきたいんだ……。 ……まこちゃんの、ばか。 ん、ごめんね……。 ……。 ……それじゃ、消すよ。 ……。 ……。 ……まこちゃん。 ん、なぁに……? ……あなたを、あいしています。 え……。 だから……あなたが、ほしいの。 ……。 ……たく、さん。 あみちゃん……。 ……。 ……すきな、だけ。 ……ん。 あげる、よ……。 ……ぁ。 だか、ら……あたし、も。 ……。 もらっても、いい……? ……。 あみちゃんが、ほしい……。 ……、て。 ……。 ……もら、って。 -Christmas Secrets(現世3・名字呼び) ……。 ……。 ……ふふ。 ……。 ……くすぐったいよ、水野さん。 いつ……。 ……完全に目が覚めたのは、ついさっき。 ふぅん……。 ……う。 口元が、ずっと、緩んでた。 ……。 ……へた、ね。 我慢、してたつもりなんだけどなぁ……。 ……すぐ緩むのよ、あなた。 素直、だからさ……。 ……もう少し、引き締めた方が良いと思うわ。 んー……ふふ。 ……木野さん。 無理、かなぁ……。 ……。 うん、無理だ……。 ……本当に、だらしがない。 嫌いに、なる……? ……なったら、どうするの? もしも、そうなったら……立ち直れない。 ……本当に? 本当に……ん。 ……あなたのことだから、それでも諦めないと思うけど。 そうだとしても、嫌われるのは堪えるよ……。 ……。 ……片想いから、両想いになって。 それで、嫌われたら……まさに、天国から地獄じゃないか。 ふふ……。 ……ん。 ……。 ……水野さん。 やっぱり、締まらない……。 ……いつだって、水野さんのせいだよ。 しょうがないひと、ね……。 ……もう、知ってるだろ。 ええ……知ってるわ……。 ……ぅ。 よぉく、ね……。 ……だって、好きなんだ。 ……。 水野さんのことが……どうしようも、なく。 ……知ってる。 ん、みずのさん……。 ……そんな、あなたが。 あなた、が……? ……。 みずのさん……。 ……やっぱり、やめた。 えぇ……。 ……おあずけ? そんな……ひどいや。 ……これもしつけのうち、だもの。 ……。 ね……? ……くぅん。 あ……。 ……わん。 も、ぅ……。 ……。 もう、だめよ……? ……ゆうべ、さんざしたから? そのせいで、起きられなくなったんだもの……。 ……いいじゃないか、寒いんだから。 寒くなくても……ん、……する、くせに……。 ……そうかも。 そうかも、じゃなくて……そう、でしょう? ……うん、そうなんだ。 そうなんだ、じゃ、ない……。 ……ねぇ、水野さん。 なに……。 ……気が付いていたのに、続けてくれたんだね。 ……。 すごく、こそばゆくてさ……そのまま、寝たふりを続けようと思ったんだけど。 ……そのまま、続ければ良かったのに。 しても、良かった……? ……ええ、良かったわよ。 じゃあ、そうすれば良かったな……。 ……でも、あなたには無理。 ん……どうして? 我慢、出来なくなるでしょう……? ……む。 例えば……この手。 ……。 動かしたくて、むずむずしていたんでしょう……? ……あぁ。 この手だけじゃないわ……。 ……ん。 この、唇だって……我慢なんて、出来るわけがないの……。 ……。 ん、木野さん……。 ……そこまで、分かっているのなら。 だめよ……もう。 ……無理だよ。 無理って……。 ……また、どこかに行っちゃったから。 なにが……? ……理性。 あ、ん……。 ……そうさせたのは、水野さんだよ。 そうかも、しれないけど……。 ……認めるんだ。 あおったじかくは、あるもの……。 ……だったら。 あなたの、理性なんて。 ……。 ……ゆうべから、どこかに行ってしまってるわ。 ……。 今朝になって、戻ってきているとは思えない……。 ……それでも、ね。 ん……きのさん……。 ……戻ってきてる途中、だったかも知れないよ。 そう、かしら……。 ……たぶん。 たぶん、ね……。 ……ね、いいだろう? だめと、言ったら……? ……さんざ、あおっておいて? そう……あおって、おいて。 ……理性に、急いで帰ってきてもらわないと。 どこかで、居眠りしていそう……。 ……そしたら、どうしよう? 知らないわよ……そんなの。 ……あ、ぅ。 ふふ……ふふ……。 ……。 それか、寄り道していそうね……? ……楽しんでる。 ええ、そうよ……だって、楽しいんだもの……。 ……うー。 ふふ、かわいい……。 ……あぁ、もぅ。 ねぇ……? ……続けたい。 まだ、聞いてない……。 ……。 ね、つづき、したい……? ……いますぐ、したい。 そ……。 ……なぞるの、やめて。 ぞくぞく、するから……? ……。 でも……いや。 ……みずのさんって。 なぁに……? ……そのかお、こころがぞくぞくするよ。 そう……? ……だから、ぞくぞくさせてやりたい。 ……。 やられっぱなしじゃあ、ね……。 ……へぇ。 あたしだって……やるときは、やるよ。 木野さんって……本当、好きよね。 水野さんのことが……ね。 ……。 本当に好きなんだ、水野さんのこと……。 ……ゆうべ、何度も聞いた。 ううん、ゆうべだけじゃない……。 何度だって、言うよ……呆れられたって、構わない。 ……ばか、ね。 分かってるよ……それでも、 あきれるわけ、ないじゃない。 ……。 ……そんなところも、すきなんだもの。 水野さん……。 ……そう、なんどもいっているのに。 ……。 ……いいって、まだ言ってないわ。 う、ん……。 ……ねぇ、きのさん。 な、に……。 ……ひさしぶり、なの。 なにがだい……? ……クリスマスに、ひとりじゃなかったのは。 ……。 だから、私……思っていた以上に、嬉しかったみたい。 ……そっか、嬉しいな。 たかが、クリスマスなのに……。 ……されど、クリスマスだから。 ……。 冬じゃなきゃね……まだ、マシなんだけれど。 ……信仰心なんて、一欠片もないでしょうに。 ……。 こんなお祭り騒ぎにしてくれて……本当に、迷惑な話だわ。 ……冬の商戦にする為に、ね。 そう、そうなの……。 はは……。 ……クリスマス、なんて。 ……。 ずっと、関係ないと思ってた……。 ……うん。 小さい頃から、ずっと、ひとりで……。 ……これからは、ひとりじゃない。 ……。 クリスマスも、誕生日も……さ。 ……そうだと、いいけれど。 ひとりになんて、させない……。 ……。 ……だから、あたしもしないでほしい。 そう、したいわ……。 ……すれば、いいんだよ。 ……。 かんたん、だろ……? ……かんたん、では。 愛してる。 ……。 誰よりも、愛してるんだ……。 ……そう、いわれて。 ん、みずのさん……。 ……いつも、ながされてしまうの。 いや……? ……こんなわたし、しらなかった。 ……。 ただ、それだけ……。 ……しりたく、なかった? いい、え……。 ……。 ……しれて、よかったわ。 そっか……。 ……あなたでよかった、と。 ……。 おもって、いるのよ……。 ……あぁ、みずのさん。 あ……ぁ……。 ……。 ね……きのさん……。 ……ごめん、もう。 いい、わ……。 ……。 ……いい、の。 うん……。 ……は、ぁ。 …………みずのさん。 なぁ、に……? ……メリー、クリスマス。 ……。 もう、すぎてしまったけど……。 ……もう、ばかね。 ……~~♪ ……。 ~~~♪ ……? ん~~♪ ……まこ、と。 ん~~ふ~~♪ ……。 よし……あとは、と。 ……木野さん。 うん? ……なに、してるの。 あ、起きたかい? ……。 着替えは、ベッドに。 ゆうべ着てたのは、洗濯機に放り込んじゃったからさ。 ……くちずさんでいた、うた。 ん? くちずさんで、いたでしょう……。 あ、ごめん。うるさかったかな。 しつれんの、うた。 へ。 失恋の歌よ……それ。 ……。 知らなかったの? ……歌詞は覚えてないし、ヒアリングもまだ苦手で。 サビは、聞き取りやすいと思うけど。 今度、ちゃんと聴いてみる。 ……そ。 来年まで、聴くことはないかもしれないけど。 去年のクリスマスに手痛くふられて、強がってはいるけれど未練を断ち切ることが出来ず、結局ひきずったままの歌。 因みに男性目線。 ……。 ね……失恋の歌、でしょう? ……そ、そうなんだ。 今度、教えてあげるわ。 え。 英語のお勉強も、兼ねて。 歌で学ぶのも、良いかもしれないから。 ……それは、良いかも。 うん? 歌は、好きだから。 ……そう。 歌えるようになりたいな。 ……歌えるようになるんじゃないかしら、あなたなら。 そうかな。 ……きっと、ね。 へへ。 ……それで。 ん? なに、してるの。 なにって。 ……。 水野さん……? ……どうして。 う、うん。 となりに、いないの。 ……。 ……。 えと……いなくて、寂しかった? ……そんなこと、言ってない。 言ってない、けど…… それで、何してるの。 準備、しておこうと思って。 なんの。 そろそろ、お腹がすくかなって。 ……。 今日はまだ、何も食べてないからさ。 ……おなかなんて、 ……。 ……。 ん……? ……何を、作っているの。 ふふ。 ……木野さん。 ポットパイだよ。 ……ポットパイ? そ、昨日のチキンのトマト煮とパイ生地を使ってね。 ……ふぅん。 同じのを食べるのは、いやかい? ……そんなこと、言うと思っているの。 思ってない、けど。 ……はぁ。 着替えは、 もう、聞いたわ。 ん、そうだった。 ……体力莫迦。 うん? なにか言った? 単純な上に体力莫迦って言った。 うん、真っ直ぐな悪口。 ……。 からだ、重い? ……おかげさまで。 水野さんさ、もう少し体力をつけた方が良いんじゃない? は? うん、ごめんなさい。 ……だけど、その通りだわ。 え? ……プールにでも、行こうかしら。 プール? 今、プールに行くって言った? ……言ったけど。 あたしも行く、行きたい。 ……は? 悪い虫がつかないように。 ……。 一緒に行く。 ……やっぱり、やめた。 えー。 ……。 ……残念だな。 ねぇ、木野さん。 なんだい? やっぱり、行く? 行かない。 ……はい。 ねぇ。 ……なに。 本音は? ……本音? 本音は、なに? ……なんの? ……。 え、と……水野さんに、悪い虫がたからないように。 それと? ……。 まさかとは、思うけど……私の水着姿が見たいからだなんて、思ってないわよね。 すごく、思ってた。 今も、思ってる。 ……。 ……素直に白状しておいた方が、身の為かと思って。 そのわりには、直ぐに白状しなかったけれど。 は、はは……。 ……見たことあるでしょう、学校の授業で。 そうだけど、授業とはまた違うから。 ……違わないわよ、大して。 そうだ、今年の夏は海に 行かない。 あ、うん、そっか。 ……嫌いなの。 ……。 だから……行かない。 そっか……じゃあ、夏は海じゃないところに行こう。 ……言って、おくけれど。 なに? 来年は、受験生。 ……。 夏休みは、重要でしょう? ……息抜きも、重要だと思います。 あなたの場合、ちゃんと言っておかないと息抜きばかりになりそうなんだもの。 ……勉強も、ちゃんとやるよ。 そうかしら。 そうだよ。 じゃあ、今日もするわよね。 ……え。 ね。 ……クリスマス、 は、もう、過ぎたわ。 ……次の日くらい、甘い空気のままでいたい。 お勉強する教科、木野さんに選ばせてあげる。 それでも、なぁ。 何が、良いかしら。 ……。 何が、良い? ……え、と。 家庭科と保健体育以外、で。 ……なんでそのふたつ? 学年末テストに含まれているから。 いや、そうだけど。 あなたなら、言いかねないと思って。 そんなこと、言わないよ。 それに保健体育って、どこから出てきたの。 家庭科は、分かるけど。 得意でしょう、保健体育。 ……得意というわけでは、ないけど。 なに? ……水野さんって、わりとむっ なぁに? なんでもないです。 大体、保健体育ってそういうことばかりじゃないでしょう。 ……。 何か、言いたいことでも? ……そうだよなぁって、思ってただけです。 そもそも、発想が中学生なのよ。 いや、中学生だし。 あたしも、水野さんも。 ただの知識よ、あんなものは。 ……そだね。 ……。 えと……そろそろ、出来るよ。 ……。 ポットパイ……食べる、だろ? ……食べる、けど。 ミートローフも、残っているよ。 ……少し、食べる。 飲みものは何が良い? ……ブラックコーヒー。 砂糖は? ……いらない。 ん、分かった。 ……。 サラダも食べる? レタスだけ、なんだけど。 ……食べるけど、あまり多くは食べられないわ。 ん。 ……。 ね、水野さん。 ……なに。 新婚みたいだね。 ……ハネムーンサラダとかけているつもり? うん。 ……。 ね。今日の晩ごはん、何が良いかな? ……まだ、考えられないわ。 あはは、それもそっか。 木野さん。 ん、なに? 来て。 ……。 こっちに、来て。 ……すぐに。 ……。 水野さん。 ……。 からだ、大丈夫……? ……とても、重いわ。 ごめん……やりすぎた、ね。 ……それは、いいの。 だけど……ごめんね。 ……しあわせ、だったから。 ……。 だから……いいの。 ……うん。 そんなこと、よりも。 わ……。 となりにいないほうが、いや。 ……。 ……いやなの。 うん……ごめん。 ……。 だきしめても、いいかな……。 ……どうして、そうなるの? そうしたいって、思ったから……。 ……。 ……あ。 ……。 おなか、すいたね……? ……もぅ。 はは……。 ……おなかが空いているのは、あなたじゃない。 いや、でも、水野さんだって……。 ……あんなに食べて、おなかいっぱいになったのに。 ……? おなかって、やっぱりすくものなのね。 ……そりゃあ、そうさ。 生きてる、から? うん、そうだよ。 だから、ね。 ……。 晩ごはんの頃になれば、また、すいてると思うよ……。 ……ふふ、そうかもね。 そうなんだって……。 ……ねぇ。 なんだい……? ……晩ごはんは、あまり重たくないものが良いわ。 となると、軽いもの……? ……ゆうべ、たくさん食べたから。 じゃ、今夜は軽めのものにしよう……。 ……そうして。 ……。 ……オーブンが、呼んでるわ。 ん、そうみたいだ……。 ……着替える、から。 手伝う……? ……いいわ、ひとりで出来るもの。 ……。 なに……? ……ううん、なんでもないよ。 ん……。 ……ね、来年のクリスマスも。 ……。 こんな風に、さ……。 ……来年の冬は、それどころじゃない。 ……。 だけど。 ……だけど? 一日くらい、なら。 ……いい? けれど、それがだめなのよね。 ……え。 油断大敵。 ……でも、少しくらい。 少しくらい、なに? ……なんでもない、です。 ふふ。 ……はは。 ……。 それじゃ、あたしはごはんの支度を……。 ……ねぇ、まこと。 ……。 ……。 なんだい……亜美。 ……ありがとう。 ……。 ……着替える、から。 亜美。 ……あ。 あたしこそ、ありがとう。 ……。 ……だから、来年のクリスマスも。 ……。 す、少しくらい……ね。 ……しょうがないひと、ね。 後 |