…あたしを求めてはくれませんか。 え…? あたしを求めてくれるのならば、あたしはあげるわあなたに。 …。 この美情、あなたにあげるわ。 あたしだけ、求めてくれるなら。 …。 この美情、どうぞ受け止めて。 あたしだけ、求めてくれるなら。 …なんか、すごいな。 …そ? うん。 なんか、すごい。 ……この慕情、あなたにつのるわ。 …。 あたしだけ、求めてくれぬから。 …。 この慕情、どうぞ受け止めて。 あたしだけ、求めてくれぬから。 ……。 …慕情って言葉、結構好きなんだ。 日本語って感じがして。 …日本語だろ、どう聞いても。 だよねぇ…。 ……。 …あたしだけ、求めてくれるなら。 ……。 …処女なんて、その気になればいつだって捨てられる。 …? さやか…? でも初めては、初めてだけは、好きな人としたい。 …。 …昔、どっかで読んだの。 どこで読んだんだよ、そんなの…。 …多分、CDのライナーノーツかなんかかなぁ。 そんなの、あんたが聞くようなCDに書いてあるもんなのか。 …クラシックのじゃないのは、確か。 だろうなぁ。 …日本語って、きれいだよね。 なんだよ、突然。 …ふと、ね。 国語、そんなに好きだったか? それは…また、別問題。 でもま、きれいだよな。 …杏子の英語もきれいだけどね。 あたしのは…文法とか、滅茶苦茶だからな。 でも、きれいだよ。 杏子の声に乗せられて紡がれる言葉は。 …。 …? なに…? …いや。 なに? はっきり言って? …今日のさやか、なんか変な感じがする。 変って…ひどくない? だから、言わないようにしたんだよ。 それなのに。 …あたしが、言わせた? …。 …。 …なんか、首の辺りがぞわぞわして落ち着かない。 …あたしのせい? かもしれない。 …。 …さっきの歌。 そんなCD、持ってたか…? …聞いてみる? ……。 どうする…? …いや、遠慮しとく。 …そう。 ……。 …ねぇ、杏子。 明日はなんの日か知ってる? 明日? 明日、なんかあったか? …ああ、やっぱり。 なんだよ。 それでも聖職者の娘? 元、がつくだろ。 今となっちゃ。 …でも、そうだった事実は消えないよ。 ……。 …ごめんね。 あまり触れられたくないよね。 …そうだよ。 …。 事実は、消えない。 消せない。まるで、傷痕のように。 …うん。 さやか。 …うん? もう、寝る。 え、もう? でもまだ… …。 怒ってるの? あたしが、触れたから そんなんじゃないよ。 ただ、眠くなっただけさ。 …。 …さやかは? あたしは…。 …。 …。 …じゃあ、またあし バレンタイン。 あん? …明日は。 バレンタイン、だよ。 …ああ。 そう、だったな…。 …杏子、結構貰えるんじゃないかな。 なんであたしが? …言いたくない。 …。 おやすみ…杏子。 あたしはもう少し、起きてるから。 …ああ、分かった。 おやすみ、さやか。 佐倉さん、ちょっといいかな? …。 (…また、か。) ちょっとこっちに来てもらっていい? ここでじゃ、だめなのか? (……にぶちん。) え、と……。 …。 …杏子、行ってあげれば? あ、美樹さん。 (…あって何よ。) …さやか。 その方が多分、いいと思うから。 でも ほら、早く。 あたしはここで待ってるからさ。 ……。 あ、ありがとう、美樹さん。 (…お礼なんて、いらない。欲しくない。) じゃあ美樹さん、佐倉さんちょっとだけ借りるね。 …さやか、ちょっと行ってくる。 ん…行ってらっしゃい。 ……。 (…あたし、何してるんだろう。) ……。 …佐倉さん? どうし さやか。 …なに。 大丈夫か。 …なにが? 朝からずっと、なんか…。 …。 いや…大丈夫なら、いいんだ。 じゃあ、行ってくるな。 ……うん。 で、どこへ行けばいいんだ。 あ、えと、こっち…。 (…行かないでって、言えばいいだけのことなのに。) O c t a v e 手作りチョコレート? …はい。 良いわよ。 ほ、本当ですか。 ええ、勿論。 それで、どんなのを作りたいのかしら? …え、と。 うん? ……。 考えてないの? その…どんなのがいいかなぁって。 実はその事もマミさんに相談したくて…。 そうねぇ…。 …。 はっきり聞いてもいい? は、はい。 あげる人って、佐倉さんよね? …。 違う? …違いません。 そう。 ……そんなに分かりやすいですか、あたし。 分からないのは多分、佐倉さんだけだと思うくらいにはね。 …。 一緒に暮らそうって言われてる時点で普通は気付くと思うのだけど。 …あくまでも女の子同士ですから。 確かに、そうなのだけどね。 …。 …美樹さん? ……一緒にいれば、いつかきっと。 …。 …なんて。 そんなこと、ないのに…。 ……。 …だから。 告白、するのね。 ……。 そうね。 佐倉さんは多分、はっきりと言葉にしてあげないと分からないわね。 あの子、鈍感なところがあるから。 …。 …美樹さん、辛くない? ……すこし。 毎日のごはん、作ってあげてるのよね? お弁当も。 …一応。 そこまでされてるのに、ねぇ。 あの子は、全く。 ……料理、そんなに上手じゃないですから。 でも、残さず食べてるんでしょ? …食べ物を粗末にするの、相変わらず嫌いですから。 それだけじゃないと思うけど。 …。 でもまぁ、胃袋は掴んでるようだから。 …杏子はどんな料理でも食べます。 …。 …。 美樹さん。 ……はい。 トリュフチョコなんて、どうかしら? 手作りチョコの定番なの。 トリュフチョコ…。 初心者でも作れるレシピ、あるから。 作ってみない? …。 駄目、かしら? い、いえ。 大丈夫。 …。 大切なのは気持ち。 どんなチョコでも、それが無ければ意味は無いわ。 …。 ねぇ、美樹さん。 佐倉さんね、美樹さんが作ったお弁当、いつもとても美味しそうに食べてるなぁって。 私、見るたび思うのよ。 …そう、ですか。 ええ。 たまにお弁当じゃなくて、パン、買ってくる事があるでしょう? ……。 その時の佐倉さん、ただ黙々と食べてるだけなの。 そう、ただ食べてるだけ。 …。 いつも一緒にいると分からないかもしれないけど。 …マミさんの料理食べてる時のあいつは、あたしの作ったのを食べてる時と全然違います。 本当に、おいしそうに食べて…おかわりだって、あたしのごはんの時とは違って…。 …。 ……。 ふぅ。 美樹さん。 …。 流石に、佐倉さんに一言言ってやりたくなるわね。 …え。 たまには何もしないであげなさい。 そうしなければ、分からないの。 で、でも 美樹さんはやってあげ過ぎる。 佐倉さんの中で、それが当たり前になってきているんだわ。 ……でも。 不安なのは分かるけれど。 でもね、それでは駄目なのよ。 そう、躾は大事なの。 し、躾…。 ええ、そうよ。 ……。 ずっと一緒にいたいのなら、ね。 ……やって、みます。 うん、やってみて。 …。 それで、バレンタインのチョコよね。 えと…トリュフチョコでお願いします。 うん、分かったわ。 それじゃあ、頑張りましょうね。 はい、宜しくお願いします。 …さやかちゃん。 ……。 …大丈夫? ……まどか。 …。 …あいつ、もてるんだよね。 男子にも、女子にもさ…。 うん…。 …あれで何個目だろう。 朝からずっと、だよ。 …杏子ちゃん、かっこいいから。 それに、優しいし…。 ……。 さやかちゃん…。 …あたし、ばかだからさ。 …。 ……ばか、だから。 ねぇ、さやかちゃん。 …。 …杏子ちゃんに、あげるんでしょう? ……。 その為に、マミさんに教えてもらってたんでしょう…? …あたしの、なんか。 だめだよ。 …だって。 さやかちゃん。 …朝からずっと、緊張してるの。 … …手が、ふるえるの。 手だけじゃない…。 …。 きっと、貰ってくれる…それは、分かってる。 けど……。 …。 …けど、それはあたしがあいつの友達だから。 ただの、同居人だから…。 …。 …あいつは、優しい。 口は悪いけど、面倒見がよくて…。 …。 ……ふるえる、の。 とまらない、の…。 …。 …あいつが、だれかのところにいっちゃう。 はやくしないと、だれかに…とられちゃうかもしれない、のに。 そんなのはもう、いやなのに…。 …。 …どうしよう、まどか。 いま、もしも…。 …。 …いや…いやだよ、まどかぁ。 ほんの少しだけの、勇気。 …。 …がんばって、さやかちゃん。 ……。 …ごめんね。 さやかちゃんはもう、がんばってるのにね…。 ……おねがい、まどか。 …。 手、にぎっててくれないかな…。 あいつが戻ってくるまでで、いいから…。 …うん、分かった。 ありがとう…まどか。 …よぉ、さやか。 …。 まどかも。 …おかえりなさい、杏子ちゃん。 えと、二人で何話してたんだい? そういや、ほむらは? いないなんて、珍しいな。 …じゃあわたし、行くね。 …うん。 ? まどか? ほむらちゃん、一人にしちゃってるから。 ああ、うん。 そうか。 杏子ちゃん。 ん? やっぱり、なんでもない。 何だよ。 変なまどかだな。 さやかちゃん。 …。 がんばって。 ……まどか。 何を頑張るんだ? テスト勉強か? ……。 さやか。 …おかえり。 おう。 …それで、貰ったの? まぁ、な。 …何個目だっけ。 数えてない。 …どうするの。 食うだろ? …あたしが? なんでよ。 チョコ、好きじゃないか。 …ばかじゃないの。 あん? それは杏子が貰ったんでしょ。 だったら、杏子が食べないと駄目なの。 なんでだよ。 二人で ……。 …さやか? ばか、杏子のばか。 はぁ? ……。 お、おい、さやか。 どこ行くんだよ。 …別にどこだっていいじゃない。 待てよ。 いやよ。 なんでだよ。 …離してよ。 でも次の授業、始まるぞ。 いいのか。 …さぼる。 は? お腹痛いから、さぼる。 腹が? 大丈夫か、さやか。 ……。 …もしかして、嘘か。 ……。 …分かった。 だったら、止めない。 ……。 行こうぜ、さやか。 …え。 屋上か? それとも、どっか違うとこがいいか? ああ、腹が痛いんだから保健室だな。 な、なにを…。 さぼるんだろ? だったら一緒にさぼってやるよ。 いや、付き添いってヤツでもいいな。 保健係じゃねーけど。 あ、あたしは一人で 一人は、さびしいだろ? …! 行こう、さやか。 あ、杏子…。 おい、まどか。 まどか。 …ふえ? ……。 あたしとさやか、腹が痛いから。 ちょっと保健室で休んでくる。 …ああ、うん、分かった。 先生には言っておくね。 おう。 仮病、かしら? だったらなんだよ、ほむら。 いいえ。 どうぞ、ごゆっくり。 ……。 よし。 さやか、行くぞ。 …。 さやか、ほら。 (………うれしい、なんて。) ……。 (……杏子と、ふたり。) ……。 (…家にいる時だって、ふたりだけど。) ……。 (…でも。) ……。 (…もしも、そっちに行きたいって言ったら。) ……。 (……言える、くらいなら。) …先生、いなくて良かったな。 …。 鍵も、かかってなかったし。 何と言うか、無用心だよなー。 ……。 ま、寝放題だからいいけどさ。 …。 …静か、だな。 …歌が、聞こえる。 …。 …音楽室、から。 ああ、そうだな。 でもなんか、とても遠くに聞こえるんだ。 ……。 腹、大丈夫か? …分かってるんでしょ。 …。 …嘘だよ、そんなの。 病は気からって、言うだろ。 …。 だから もう、いいよ。 …。 …もう、いいよ。 あたしなんか、ほっといてよ。 …。 今からなら授業、間に合うから。 なんで、チョコなんだろうな。 …。 バレンタイン なぁ、なんでだ? …お菓子業界のなんちゃら。 そうなのか。 …そう、聞いたことがあるだけ。 ふぅん。 …。 だけど、なんであたしなんだろうな。 …は? あたしは代わりになんて、ならない。 なれないし、なるつもりもねぇ。 …なに、言ってんの。 好きなヤツに、あげるんだろ。 本当は。 …だから、好きなんでしょ。 杏子のことが。 そうは、思えない。 …なによ、それ。 あたしは、女だよ。 …だから? だからって。 そんなの、関係ないじゃない。 好きになったら、なっちゃったら。 …。 …なんて、言われたの。 …なにが。 さっき。 チョコ、貰ったんでしょ。 ああ。 別に何も。 …嘘つかないでよ。 うそなんか、ついてねーよ。 …ほんとのこと、言ってよ。 だから ……。 …一年、だったよ。 …。 いつも見てますって、言われた。 ……。 それだけだよ。 (…十分だよ。) さや うそつき。 …。 何もなんて、言っておいて。 チョコ、受け取っておいて。 何もない、なんて。 ……さやかは。 …。 あたしがチョコ貰うのは…その、イヤなのか。 …っ。 だったら…もう、貰わない。 そんなこと、誰も頼んでない…! …。 ……。 …ああ、そうだよな。 あたしが誰から貰おうと、あんたには関係ないよな。 (……ああ。) …。 (…もらわないで。だれからも、もらわないで。) …。 (……わらって、うけとらないで。うれしそうに、しないで。) …。 (……あたしの、あたしのだけをうけとって。あたしだけを、うけいれて。) ……。 (……あたしだけのものでいて…だれのものにもならないで。) ……あたし、行くよ。 ……。 さやかは…休んでなよ。 後で、迎えに来るから。 ……。 じゃあ…後でな。 (……いかないで。) ……。 (…いかないで、ここにいて。あたしを、ひとりにしないで。) ……。 …、や。 ……。 (……きょう、こ。) ……おい。 ……。 …そっち、詰めろよ。 ……。 早くしろよ。 …あ。 ……。 や、やだ…。 …うるせぇ、黙れ。 きょ、杏子…。 ……。 ……なに、かんがえて。 …あんた、さ。 一人で思い詰めるの、やめろよ。 …おもいつめてなんか、ないわよ。 うそつくな。 あんたな、何かある時はいつも以上に変な面になるんだよ。 …。 言ってくれなきゃ、何も分かんねーよ。 …。 こっち見ろ、さやか。 ……なに、かんがえてるのよ。 ベッドなら、そっちの…。 あんたこそ、何考えてるんだよ。 朝から不機嫌でさ、意味分からねーよ。 (…それは…だって。) また、だんまりか。 だから、言えって言ってるだろ。 心の声なんか、聞こえやしないんだ。 …。 さやか。 ……いって、どうなるの。 は? ……。 さや… ……。 …か。 ……。 …。 ……。 …チョコ。 …。 …あんたも、誰かにやるんだろ。 …どうして。 …。 …。 …あの坊やにか。 (……ちがう。) それとも…他に惚れたヤツでも出来たか。 (…あたしは、最初から。) …。 …恭介には、仁美がいる。 あたしなんかが、あげていいわけない…し、あげるつもりももう、ないよ。 …じゃあ。 ……ききたくない。 …。 もう、ききたくない…。 ……。 …チョコなんて、だれにもあげない。 さやか…。 (……ひとこと…たった、ひとこと。) …。 (……ほしいって、いってくれたら。) ……。 (…そう、したら。) …だれにも、あげないんだったら。 あたしに、くれよ。 ……。 勿体ないだろ。 …じぶんで、たべるから。 だれが、あんたなんかに。 それに、あんたにはもらったのがあるでしょ。 だから、なんだよ。 …どうするのよ。 くれた子の気持ちは そんなの、知らねーよ! …。 …あたしに、期待なんかするな。 あたしは、何も出来ないんだ。 重たいんだよ、そういうの。 ……おも、たい。 …誰かの、代わりなんか。 ……だったら、あげられない。 …。 …なおさら、あげられるわけない。 ……どうしてだよ。 ……。 …黙ってたら、分からねーよ。 (……あなたが、すきだから。) …。 (……あなたを、あいしてるから。) …全然、分からないんだよ。 (…あたしには、あなたしかいないから。) ……。 (…だけど、それは。) …さやか。 (…あなたには、重荷にしかならないから。) 美樹さやかも大概に鈍感だわ。 …鈍感と言うより、上条君の事があったから臆病になってるところもあるんだと思う。 それもあるでしょうけど。 でも、佐倉杏子の気持ちに気付いているとは到底思えない。 …それは杏子ちゃん自身もだから、しょうがないんじゃないかな。 あれ程分かりやすい行動を取っていると言うのに。 あの子はどんな時でも美樹さやかの隣に居るわ、居たわ。 さっきだってわざわざ、保健室にまで寄り添って。 そもそも好意を持っていないのならば、一緒に暮らすなんて有り得ないでしょう? …それでも、言葉にして貰わないと分からないから。 気持ちを伝えたい、確かめたい…でも、それはとても不安で怖くて仕方のない事だから。 美樹さやかは大概に、面倒だわ。 …ほむらちゃんはさやかちゃんには厳しいよね。 そもそもあの子は一度好きになるとそれしか見えなくなる。 上条恭介の時も然う。 …それ、ほむらちゃんが言っちゃう? …。 それに上条君には…最近は正直、さやかちゃんは勿体ないと思うんだ。 あそこまでして貰って…だから、良かったんだって思うの。 …。 だって、さやかちゃんは…ううん、誰も上条君の一番にはなれない。 上条君の一番は…女の子じゃない。 …。 …時間が変わって、何度も何度も繰り返して。 最期に、杏子ちゃんがさやかちゃんと一緒にいてくれる選択をしてしてくれなかったら…さやかちゃんは多分、今でも。 ……。 …杏子ちゃんは、さやかちゃんを見ていてくれる。大事にしてくれる。 躊躇いなく、さやかちゃんと一緒にいる選択をしてくれる。 さやかちゃんを、独りぼっちにしない。 …そう、どんなに世界が生まれ変わっても。 …兎も角。 もう少し、距離を取る事も必要だと思うわ。 だからそれを暁美さんが言うの? …。 ごめんなさい、黙って聞いているつもりだったのだけど。 つい。 …。 マミさん、さやかちゃんは杏子ちゃんに告白出来ると思いますか…? そうねぇ…私が見たところ、かなり思い詰めてるようだったから。 だって、そうでしょう?あんなに一緒にいるのに…あの二人が一緒に暮らし始めて何ヶ月になると思っているの? それなのに全く、進展しないだなんて。 佐倉さんも佐倉さんだわ。あんなに甲斐甲斐しくしてくれているのに。 とは言え、美樹さんももう少し……ああ、もう。 …さやかちゃん、心配ですよね。 そうなのよ…。 ……美樹さやかは ほむらちゃん。 …。 それで、どうなの?佐倉さんの様子は。 様子、ですか? あの子の事だから…他の子のチョコをほいほい受け取ってるんじゃないかと思って。 実はね、三年生にもいるのよ。あの子を気に入っている子が。 どうも、食べてるところが可愛いみたいで。 …当たりです。 ほいほい、じゃないですけど…朝からいくつか、もらってるみたいで。 ああもう、やっぱり。 それで、美樹さんは? …多分、マミさんが考えている通りだと思います。 ……二人は今、どこに? 保健室に。 お腹が痛いという事になってます。 保健室、ね…。 …はい。 ……さっさと、告白してしまえば良いのに。 暁美さん、それが出来ていたら今頃こんな事になっていないわ。 …やっぱり、恐いですよね。 それまでの関係が壊れると思ったら…わたしだったら、言えないです。 だけど、言わないと。 何も変わらない どころか、他の誰かに取られてしまう可能性すら出てくるわ。 …暁美さん。 …ほむらちゃん。 まぁ、佐倉杏子に限ってはそれは無いでしょうけど。 いつの時間でもあの子はさやかさやかだったから。 …。 …。 さっさとくっついてしまえば良いんだわ。 …鹿目さん。 …はい、マミさん。 とりあえず、もうちょっと様子を見ましょう。 …はい、分かりました。 ……。 ……。 …そろそろ、戻るか。 いい加減、先生も戻ってくるかもしれない。 …だから? さやか。 ……ひとりで、いって。 お前、まだ…。 ……。 …分かったよ。 勝手にしろ。 …っ。 …あたしは、戻る。 ……。 …。 ……、て。 …。 ……まっ、て。 …行けって言ったのは、お前だろ。 …。 …今日は、帰らない。 …。 …お前もその方がいいだろ。 ……どう、するの。 …。 マミさんのところに、いくの…? …あいつのところにはなぎさがいる。 じゃあ、どこ…? ほむらのところ…?それとも、まどか…? ねぇ…。 …いいだろ、どこだって。 …! あたしは元々… …よく、ない。 あ…? よくない…よくない…よくない…ッ! …。 よくない、よくない、よくない、よくない、よくない…。 ……さやか。 どこにいくの、だれとすごすの、どんなごはんをたべたいの、あたしいがいのだれとねむるの。 お、おい…。 チョコ、くれたこ…? もしかしたら、とめてくれるかもしれないもんね…? そうだよね、あたしなんかより、ずっと、めんどうじゃないもんね…。 何言ってんだよ、さやか。 …そうだよ、あたしなんか、だめだよ。 わかってるよ、わかってたよ、あたしはきょうこにふさわしくないってことぐらい。 さや あたしは、めんどうで、おもたくて。 いまだって、きょうこをいらだたせて。たぶん、このさきも。 だから、きょうこはいやになって、あのいえからでていくんだ。 あたしから、はなれていくんだ。 …。 ねぇ、もういやになったでしょ…? だから、かえらないんでしょ…ほんとうはもう、かえりたくないんでしょ? ねぇ…。 …誰が、そんなこと言った。 いのちをかけてくれるほどのかちなんて、あたしにはなかった…。 なかったんだ…!! …いい加減にしろ、てめぇ!! う…。 …さっきからわけの分からねぇ事ばかり、言いやがって。 ……。 …相応しいとか、価値がねぇ、とか。 そんなの、自分で言ってんじゃねぇ…決めつけんじゃねぇよ。 ……。 …帰りたくないなんて、あたしは一言も言ってない。 言ってないだろう…?! ……だって。 だって、じゃ、ねぇ! だって、だって、だって、だって、だって…!! …さやかぁッ! …。 …頼むから、ちゃんと聞いてくれ。 ちゃんと、言ってくれ。 ……。 …ちゃんと、聞くから。 ちゃんと、話すから。 だから。 ……、いで。 …聞こえない。 …わ、ないで。 …。 もらわない、で…。 …なにを。 ほかのこから、もらわないで…うれしそうに、もらわないで…そんなもの、たべないで…。 ……。 わかってる、あんたがたべものをそまつにできないこと…でも、それでも、あたしはたべてほしくない。 ほかのこのきもちがつまってるチョコなんて、あんたにたべてほしくないの…。 たとえ、だれかのかわりだったとしても…。 …粗末には、出来ない。 でも、いやなの…いやなのぉ…。 …。 ……。 ……みんなで、食う。 …。 まどか、ほむら、それから、マミ。あと、なぎさ。 みんなで食おう。 …みんな、で。 やっぱり、粗末にすることは出来ない。 でもさやかは…あたしに食うなって言う。 だったら…みんなに、食べてもらう。 くれたヤツの気持ちなんか、もう、どうでもいい。 …。 ひどいと思うか。思うだろ。 だけどな、さやか。 ……。 …あたしはお前のそんな顔、見たくないんだよ。 きょう、こ…。 そ、それにさ。 お前がそんな調子だと…夕飯、どんな事になるか。 散々だったら、困るんだ。 (…それでもきっと、たべてくれる。) それから…もう、貰わない。 これからは、もう。 ……。 もう、二度と。 …あたしの、は。 え? …あたしのも、いらないの。 それはその…お前がくれるってなら、もらってやってもいい。 ……おもたいんでしょ。 …。 …そういうの、は。 知らないヤツの代わりになるのはな。 …。 …大して知らないヤツにいつも見てますって言われてもこっちはさっぱりなんだ。 だけど、お前は…。 …あたし、は。 …。 …きょうこ。 ずかずかと人ん中、入ってきやがって! 今だってそうだ!わけ分かんないこと言いだしたと思ったら、いきなり泣くんじゃねぇ! …。 ……だから、チョコよこせ。 …だから? 食ってやる。 残さず、全部。 ……。 …よこせ、さやか。 ……かえったら。 …。 ……あんたに、言いたいことがあるの。 聞いてくれるって、約束、してくれるなら…。 まだあんのかよ…。 …じゃなきゃ、あげない。 ……。 …。 …分かった。 ちゃんと、聞くよ。 …やくそく、だから。 ああ、約束だ。 ……もどる? …。 でも…あたしはもうすこし、こうしてたいな。 え…。 ……。 あ、や、これは…。 ……。 さ、さやか…。 …。 …寝たふり、してんじゃねぇよ。 ……してないもん。 …とりあえず、今回はこれで収まったのかしら。 …多分、ですけど。 似たような事を何度も繰り返してばかりで、一向に、進まない。 どうかしてるとしか、思えないわ。 …でも、今回は。 進む、かしらね…? 美樹さやかが土壇場で怖気つかなければ良いけれど。 …ほむらちゃん、もう少しさやかちゃんに優しくしてくれたらうれしいな。 ……。 …鹿目さん、その言葉はかえって逆効果よ。 えぇ…。 ……。 と、ところで。 貴女達はどうなのかしら? チョコは 愚かな問いね、巴マミ。 そんなもの、私達には必要無いわ。 そんなものをわざわざ贈らなくても え、そうなの? え? …その、わたしね? 一応、その、作って持ってきてみたんだけ…ど。 ……。 …ちなみに作り方を教えたのは私だけど。 それは今、関係ないわね。 ほむらちゃんは、いらない…かな。 莫迦ね、まどか。 ふぇ。 まどかが私の為に用意してくれたものを、私が無下に出来ると思う? いいえ、出来ないわ。出来るわけが、無いわ。 じゃあ、貰ってくれるかな? 勿論よ、まどか。 じゃあ、後で渡すね。 ええ、その時を待ってるわ…! …素直に欲しいと言えば良いのに。 どの子も素直じゃないのよねぇ。 ところで、暁美さん。 二回目よ、巴マミ。 貴女は必要無いって言い放ったくらいなのだから、準備してないのでしょうね? …。 あ、わたしは別に気にしないよ。 と、鹿目さんは言っているけれど。 どうかしら、貴女さえ良ければ… …必ず。 え、なに? 暁美さん? 必ず、お返しはするわ…! 倍返しで…! あ、うん。 ありがとう、ほむらちゃん。 でも普通でいいから、ね。 ね? 後編 |