…ぁ、…あぁ。 …はぁ…。 …や、ぁ…そこじゃ、ない…。 ……く。 …もっと…あ、ちが……ひぁ。 ……。 …むね、より……。 ……。 ……も、ぅ。 そんなに、すき…なの…。 ……。 …あたし、の…あぁぁん。 ……だまってろ。 だっ、て………ぜんぜん、くれない…。 ……。 …ナカ、が……ほしい、の…。 ……。 ん……、だから…そこじゃ、ない…。 ……。 …ねぇ…もぅ、しってるでしょ…ねぇ…。 ……う。 いじわる、しないで……しないでよ…ぉ…。 だから……う。 ……イきた、い。 …く、ぁ。 …ねぇ…わかって……ねぇ…。 ……。 きょ、う……あぁッ。 ………はぁ。 きょうこ……あぁ……きょうこ……。 …さやか。 ……。 …おい、さやか。 …。 さやか。 …もう、したいの? …。 …。 …はぁ。 さやか。 …なに。 なに、じゃねぇ。 腹の上に乗ってるな、重い。 …。 下りろ、重い。 …さっきまでは杏子が上にいた。 杏子ばかり、ずるい。 …。 …杏子の重み、あたし好きだよ? ……。 …。 …何か着ろ。せめて、羽織れ。 躰、冷やすだろ。 …。 おい、聞いてるのか。 …やぁだ。 む……う。 ……。 ……ね、もっと食べてよ。 あの、な…。 …。 …どんだけ、食らわすつもりだよ。 据え膳食わぬは、女の恥。 …それを言うなら男の恥だ、ばか。 なんでもいいじゃない…。 …おい、こら。 ……。 …さやか。 花の匂い…。 …ん。 すごい、鼻につくの。 花、だけに。 …。 …。 …つまんねぇ。 あ、やっぱり…? ……。 …あたし、この匂い苦手でさ。 臭いってわけじゃ、ないんだけど…なんでだろ。 ねぇ、なんでだと思う? 知るか、ばか。 ……。 …何も着るつもりが無いなら、布団の中に入れ。 ……。 …躰冷やしたって、良い事は何もない。 碌な事にならない。 入ったら…食べてくれる? …それとこれとは話が別だ。 杏子は、優しい…。 …。 …口は、昔から、悪いけど。 うるせぇ…。 ……好き、だなぁ。 ……。 …なんでこんなヤツ、こんなに好きになっちゃったんだろ。 ……金木犀。 ん…? …だっけか、この甘ったるい匂い。 うん…。 …あたしもこの匂いは得意じゃないな。 そう…じゃあ、一緒だね。 ……。 …ねぇ、杏子。 夜の帳は未だ、下りたばかりだよ…。 …どこがだ。 もう、丑三つ時に近いだろ…。 …いいじゃない、細かい事は。 細かくねぇよ… …。 …終夜(よもすがら)、付き合えって言うのかよ。 据え膳食らわないのは だから、あたしは女だ。 じゃあ、杏子の恥。 …あのなぁ。 大体、お前があたしの据え膳なのかよ。 他の女はだめ。 男はもっとだめ。 …はぁ。 どうせなら、うまいもんの方が良いんだけど。 …あたし、まずい? ……。 ねぇ…。 …少し、眠った方が良い。 昨日もお前、あまり寝てないだろ…。 眠りたくないの。 …。 …ねぇ。 ねぇ…。 ……。 …ん、杏子。 お前は餓鬼の頃から、人の手を焼かせてばっかりだ。 ……。 …もう一杯だけだ。 う、ん…。 ……。 ……ぁ。 F L O W E R …ちゃん、……ちゃん。 …。 さやかちゃん、杏子ちゃん…起きてる? ……。 ……。 …起きてるよ、まどか。 あ…。 …いいよ、開けても。 え、え…。 …起きてるから。 あたしも…杏子も。 で、でも……。 …なに遠慮してるの? 変なまどか…。 ……。 …今更、じゃない。 あたし達の事は。 そ、そうかもしれない、けど…。 ……けど、なに? …。 …やっぱり、汚いかなぁ。 汚れてるかなぁ…。 そ、そんなこと…ッ! ……。 …そんなこと、思ってない。 なら…開けてよ。 ……。 まどか…。 ……うん。 …。 …はぁ。 じゃあ、開け…え。 ふふ……おはよ、まどか。 ……、……。 うん…どうしたの? さ、さや、さや、か、ちゃ…。 …? まどか…? ……。 なぁに、どうしたの? ………。 前、仕舞え。 まどかが困ってるだろう。 …うん? 前。 眼前に晒すものじゃない。 ……あぁ。 …。 でも…あたしの躰なんて、今更じゃない。 だって幼子の頃は一緒にお風呂だって… そういう問題じゃない。 し、そんなに長い期間じゃなかったろう。 …ふぅん。 さ、さやか、ちゃん…あの、その…。 そうなの…まどか? ぁ…。 ね、困ってるの…まどか? ……ッ!! ふふ、かーわい…。 ……。 ねぇ、見て杏子…まどかの顔、耳まで真っ赤だよ。 まどかで遊ぶな、さやか。 …だって、可愛いじゃない。 子供みたいで。 お前だって似たりよったりだろう。 …歳は、そうだけど。 中身はもう、違う…。 ……さやか。 だって、杏子が…。 …おい。 ……そう、してくれたんだよ。 ん……。 ……あなたが、おしえてくれたの。 …。 ……ねぇ? …まどか。 む……。 …まどか、それで何の用だ。 え…あ、えと…。 ちょっと、杏子…。 …まどかを困らせるな。 ……。 あ、あの…! 討伐に、行きます…!! …とうばつ? いつ発つんだ。 あ、明日にでも! ……。 面子は? わ、わたしと、ほむらちゃん、それから杏子ちゃんとさやかちゃんです…。 ……。 分かった。 さやか。 ……あたし、行きたくない。 さ、さやかちゃん…。 …やだ、行きたくない。 杏子と、こうしてたい…いつまでも、していたいの。 ……さやか。 ねぇ、杏子もそうでしょ…? ねぇ、そうだよね…? ねぇ、そうだと言ってよ…! ……。 杏子…、杏子…。 …まどか。 杏子、ちゃん…。 討伐には、行く。 けど、まどか。 ……うん。 飯、出来てるか…? …うん、出来てるよ。 じゃあ…もう少ししたら、行くよ。 さやかも連れて。 …うん、分かった。 悪かったな…まどか。 …ううん、二人は悪くないよ。 ……。 …また、後でね。 おう…後でな。 ……。 ……。 …いい加減、機嫌直せ。 ……。 ……背に爪を立てるな。 ……。 …さやか。 ……まどかに、優しくしないで。 …。 …杏子は優しい。 あたし以外にも。 …まどかは、あたし達の家族だろう。 …! そんなの分かってるわよ…! …つ。 ……。 ……さやか。 …頭、撫でて。 …。 背中でも良い……優しく、撫ぜて。 ……。 …きょうこ。 ……なぁ、さやか。 …。 …討伐、お前は行かなくて良いよ。 今のお前の躰では…恐らく、もたない。 ……きょうこは。 あたしは、行く。 …だめ。 そんなの、あたしがゆるさない。 …。 …杏子は、あたしといるの。 ずっと、こうしてるの…。 ……。 …杏子は、あたしだけを見てれば良いの。 あたしだけを、愛してくれれば良いの。 あたし以外、考えないで良いの。 …。 他を求めては、いけないの。 …求めてはいないよ。 うそ…。 …どうしてそう言える? ……。 さやか。 あたしは…お前が居れば良いよ。 お前と居られれば、良いよ。 …じゃあ、行かないで。 行かないでよ…あたしを置いて、行かないで。 ……。 …討伐になんて、行かないで。 ……。 …一人で眠るのは、いや。 いやなの…。 …じゃあ、何故。 あ…。 あたしが居るのに、お前は眠らない? 眠ろうとしない? …それ、は。 お前こそ、他の誰かを想っているんじゃないのか。 あたしではなく、他の誰かを。 …ちがう。 違わないだろう。 お前はあたしに抱かれている間も ちがう…! ……。 どうしてそんな事、言うの…。 ねぇ、どうしてよ…。 ……。 あたしは…杏子が好きなの。愛してるの。 ねぇ、あたしのこの想いが信じられないの…? …。 好きだから、愛してるから…あたしの一番脆い所に触れて欲しいって。 触れてくれた時は、気が触れてしまいそうなくらいに嬉しかったのに…。 …。 ねぇ、そうなの…ねぇ。 …お願いだから、さやか。 いや、聞きたくない。 さやか。 いや、いや、いや、いや…。 ……頼むから、聞いて。 何も聞きたくな、ん ……。 ……きょ、ぅ、……んぅぅ。 ……。 ……ぃや、はなれなぃで…。 …お願い、だ。 …もっと、…シて。 つよく…。 ……お願いだから、眠って。 …いっそ、そのてにかけて。 ……。 ……。 ……。 …ほむら、か。 …。 …やっと、眠ってくれたんだ。 起こすような真似は、ゆめゆめ、してくれるなよ。 …呪を掛けて仕舞えばもっと容易でしょうに。 容易な分、それで無ければ眠りが摂れなくなる。 …貴女は昔から甘い。 だからこその、その様。 …まどかから、聞いた。 …。 …討伐、行き先は。 大江山。 ……もう少し先だろう、開くのは。 見据えた上で。 太刀風と雷電を討ちに。 …九重楼か。 まぁ、悪くは無いな。 ……。 …話は分かった。 もう、下がれ。 …その子を置いていけるの。 置いていく。 足手纏いは要らない。 …。 …己を守れるのは所詮、己だけだ。 然う、言って。 …。 …その躰に幾つの、余計な傷を拵えたのかしらね、貴女。 ……そんなの、いちいち数えてねぇよ。 その子は数えているかも知れないけれど。 …。 …ともあれ、置いていくのには賛成だわ。 戦力低下の要素と為り得る存在は要らない。 …。 …本来ならば。 誰よりも治癒の力が強い子を置いていきたくは無いのだけれど。 得策では無いから。 …それ、本心か。 ええ、本心よ。 ……。 …ご飯の支度はとうに出来ているわ。 粗末にしたくなければ、とっとと始末してしまって頂戴。 ほむら。 …これ以上は起こしてしまうわ。 やっと眠ってくれたのでしょう? …いちいち含みを持たせたような言い方するよな。 私は本当の事を言っているだけよ。 それで? …大江山、行くんだな。 ……然うよ。 まどかが、決めたのか。 ……ええ。 然うか……。 ……。 …飯、あんたに言われなくても粗末にはしねぇよ。 ええ。 是非、そうして。 ……。 ……。 …マミ。 ……。 …あたし達は、大江山に行く。 弔い合戦でも無ければ、仇討ちでも無い。 ただ、ただ、自分達だけの為に。 ……。 …なぁ、マミ。 呪いが解けたら、あんたは、何がしたい。 普通の人間ってのは、真っ当にいったら、何十年も生きるもんなんだろう? ……。 あたし達の時は精々、長くて二年。 それが何十年になるんだ。 仮令可能性の話だとしても、想像なんて、出来やしない。 ……。 …気が遠くなる。 眩暈がする。 とてもじゃないけど、正気で居られるか分からない。 ……。 …何度も季節が移ろい。 緩やかに歳を重ねていく。 ……。 …は、やっぱ想像なんて出来ないな。 もし、も。 ……。 もしも、今日のように晴れたら。 その時は。 …。 祝言を、挙げましょう。 …祝言? 誰の。 ……。 まさか、あんたのか? ……。 ほむら、まどか…或いは、さやか。 あなたは…? …あたしは、ねぇな。 ばかねぇ…。 …は? 誰の、なんて…そんなの、初めから二人しかいないじゃない…。 ……誰だよ。 ねぇ…? …だから。 あなたは、あの子を、手放せるの…? …何の話だよ。 もしも、長い時を、生きるなら。 生きられるなら。 ……。 …手と手を、繋いで。 歩いて、いけるのなら。 ……。 …そうね、一人じゃ正気で居られないかも知れないけれど。 でも、一人じゃなければ…。 …。 ああ…今日は穏やかな日ね。 …生憎だけど、曇ってるよ。 今にも泣き出しそうだ。 ……。 ……。 …まだ、分からない? だから、何がだよ。 蒼く、晴れた、とても穏やかな日に。 二人の祝言を挙げるの。 だから、誰のだよ。 …ばかねぇ。 あぁ? 貴女とあの子のに、決まってるじゃない…。 ……。 今更、あの子を手放せる? 他所の誰かにあげられる? …出来ないでしょう?赦せないでしょう? ……。 …ささやかだけれど、皆でお祝いするの。 そう…家族、皆で。 ……。 …杏子。 それから…さやか。 屹度、とても幸せに笑ってくれるわ…。 ……。 ねぇ、杏子…。 …。 二人の祝言、今日みたいな天気だったら良いね…。 …。 ……。 …さやか。 起きて…ぐ。 ……。 …さ、やか。 どこ、行ってたのよ。 …。 どこに行ってたの。 ねぇ、あたしが寝ている間に何処に行ってたのよ! …ぅ。 あたしを独りにして、他所の女のところ?それとも男のところ? ……。 あたし以外のにおいを纏うなんて、許さない。 あたし以外の誰かに触れるなんて、赦さない。 ……。 ねぇ、答えて。 あたしを独り眠らせて、何処に行ってたの。 あたしから逃れて、誰と逢っていたの。 ねぇ、答えて。答えてよ!! ……。 答えてよ、杏子ぉ…!! ぅ…、ぁ…。 ……。 さ……、や…。 …あんたを他の誰かに奪われるくらいなら。 奪われるくらい、なら。 ……。 …殺してやる。 然う、あんたを殺して。 ……。 …あたしも、殺す。 あんたに捨てられる、捨てられて独りになるくらいなら。 …。 あんたはあたしのものなの。 あたしはあんたの、あんただけのものなの。 あんただけのものに、なりたいの…!! ……、……な…。 ねぇ、してくれたんでしょ、ねぇ…ッ? ……は、ぁ。 ねぇ、してよ…ちゃんと、してよ…ッ! あたしをひとりにしないって、ちかってよ…ッ!! …ば、……か。 …ッ! ……。 う…ぅぅぅぅぅっぅ…ッ。 …が、……ぁ。 誰も、誰も、誰も、誰もだれもだれもだれも…ッ! ……、……か、…。 だれも、あたしをあいしてくれない。 だれも、あたしだけをあいしてくれない。 あんただってけっきょくは、そうなんだ。 ねぇ、そうなんでしょ。ねぇ。 ……。 ……ねぇ。 ねぇ…。 ……。 ………ぁ。 ……。 あ……、あぁ……。 ……。 ちがう…ちがう…ちがう、の…。 ……。 杏子、杏子、きょうこ、きょうこ……。 ……。 やだ、やだよ、ねぇきょうこ、ねぇってば…。 ……。 いや……いやぁぁ。 ……ば、か。 あ…。 ……お前に首を絞められた程度で誰が死んでやるかよ、このぼんくら。 あ、あぁぁぁ…。 …ま、少しはやばかったけどな。 きょうこ、きょうこ…。 …さやか。 ごめん、ごめんなさい…だから、だから…。 あたしは他の誰かの処になんか行かない。思ってもいない。 然う何度も、お前に言っている積もりだったけど…どうやら、全然足りてないみたいだな。 杏子、杏子……。 ……独りにして、悪かった。 う、ぅぅぅ……。 ……。 ……。 …落ち着いたか? ……背中、撫ぜて。 ずっと、撫ぜてる。 …頭、撫でて。 頬も。 …手は二つしかないよ。 それでも。 …一番は、何処だい? …。 …そこを撫ぜてやる。 ……胸。 うん? 胸、心臓の上。 …分かった、背中だな。 ……。 ……。 ……討伐、行くの。 ああ、行くよ。 …どうしても。 …ああ。 まどかが、決めたから? 逆らえないから? …そんな事はどうでも良い。 杏子はどうして、鬼を討つの。 鬼だって、生きてるのに。 そうやって、生きてきたからだ。 そうやらないと、生きられないからだ。 …杏子が鬼を殺したところで。 誰にも感謝されない…見返りなんて、無い。 それどころか忌み嫌われて、鬼扱いされるのよ。 それなのに。 …。 …ねぇ、あたし達に価値なんてあるの。 生きてる必要なんて、あるの。 いっそ、あたし達で終わらせて仕舞えば良いじゃない。 だってそうすれば、呪いは終わるじゃない。終わらせる事がこの家の悲願なんでしょ? 望んでもいない神(ひと)と交わって、呪いの種を蒔いて、ずっと戦い続けて、血で身も心も穢し続けて。 そんな生に、意味なんてあるの。 …。 …ねぇ。 こんな京にしがみ付くだけの人間達に守る価値なんて、あるの。 あたし達が守ってあげる価値なんて、あるの。 …。 あたし達は何の為に、生きるの…。 生きたところで、何があるの…。 先なんて屹度、無いのに…。 …。 …だったら、いっそ。 …。 杏子…ねぇ、杏子…一緒に、来てくれるでしょ…? 杏子と一緒なら…杏子が一緒に居てくれるなら…あたし…。 一年。 …え。 お前、未だ一年も生きてないんだよな。 …。 覚えてるか。 …なにを。 肉刺、潰した時の事だよ。 手、血だらけになっただろ。 …。 お前は本当に言う事を聞かない餓鬼だった。 ほっとけば、躰がぶっ壊れるんじゃないかってくらい、滅茶苦茶に木剣を振り回して。 ただ振り回せば良いってもんじゃないって言っても、聞かなくて。 何度、ぶっ飛ばした事か。 …。 挙句、躰に見合わない剣を持ち出そうとして。 そりゃあね、あの剣はお前が生まれる前からお前のものだったよ。 あたし達では到底、扱えない。お前以外、扱えない。 だけど、見合わない力は躰をぶっ壊すだけだ。 …。 …強くなって、皆を守る。 莫迦みたいに、言ってた。 肉刺を何度潰しても、あたしに何度ぶっ飛ばされても。 …。 然う、あの日までは。 ……なにが、いいたいの。 …。 変わり果てたって、言いたいの。 醜くなったって、言いたいの。 …何も、変わってなどいない。 嘘よ。 嘘じゃないよ、さやか。 …そんな戯言、聞きたくない。 あたしが聞きたいのは ずっと、一緒に居てやるさ。 …。 …独りぼっちは、寂しいからな。 ……。 …なぁ、さやか。 若しも何十年も生きられるとしたら、お前は何がしたい? …なに、それ。 若しもの話だよ。 …気が狂う。 …。 何十年も。 何十年も、生きるなんて。 …あたしが一緒でもかい? …。 それでも。 …一緒に、狂ってくれる? …。 ねぇ…。 …しょうがねぇな。 ん、きょうこ…。 …とことん、付き合ってやるよ。 ……。 …な、さやか。 若しも何十年も生きられる事になったら… …大江山。 ……。 …行くんだね。 ……。 ……ねぇ、杏子。 なんだい…さやか。 …若しも、長い時を生きられる事になったら。 うん…。 …何処か、遠い処に行きたい。 行って…二人で生きたい。 …。 誰にも知られず…二人だけで。 …付いて来てくれるか? ばか…連れて行ってよ。 ちゃんと…。 ……。 …手、絶対に離さないで。 さやか。 ……あたしも、行く。 …。 …討伐。 杏子が行くなら。 …。 …あたしも、行くから。 ……分かった。 ん…。 ……。 …ね。 うん…? …胸に、触れて。 触れて…あたしの心、感じて。 …。 この熱を、どうか、忘れてしまわぬよう…。 ……。 …まどか。 ……。 …どうしたの。 ぼんやりとしているようだけれど。 来ないな…って。 …。 …杏子ちゃんとさやかちゃん。 …。 今朝の朝ごはんのおかず、杏子ちゃんが好きな焼き魚なのに…。 ……。 お味噌汁だって、さやかちゃんが好きなあおさとお豆腐ので…。 …両方とも、とっくに冷めてしまったわね。 イツ花に言って、あっためなおしてもらわないと。 だってやっぱり、あったかい方がおいしいから…。 まどか。 …。 …貴女がそこまで気にする必要は無いわ。 二人の問題なのだから、放っておけば良いのよ。 ううん……そんな事、出来ないよ。 …。 だって二人とも、わたしの大事な家族だもの…。 この世で唯一の家族なんだもの…。 …貴女は、優しすぎる。 ほむらちゃん…? …イツ花には私から言っておくわ。 うん…ありがとう、ほむらちゃん。 …お礼を言われる程の事では無いから。 ……。 ……。 …ねぇ、ほむらちゃん。 なに…。 さやかちゃんが外に出なくなって…もう、どれくらいになるんだろう。 …。 …あんな事にならなければ。 あんな事さえ、無ければ。 さやかちゃんは今でも…。 …然うね。 だけれど、今となってはもう、どうしようも出来ないから。 …そう、だけど。 …。 …確かにわたし達は普通の人間じゃないかもしれない。 だけど。 …。 笑って、泣いて、怒って、お腹がすいて、歌を歌って、花が咲けばきれいだって思うし、走れば疲れるし、 鬼と戦うのだって今でも怖いし、それから、人を好きになって、恋焦がれて、それが苦しくて、辛くて……。 …。 …わたし達だって、心を持っているの。 普通の人間と何も変わらないの。 何も、変わらないのに…。 だとしても。 …。 …人はどうしても、恐れるのよ。自分とは違う者達を。 それは…仕方の無い事だわ。 ……。 …私達はずっと、神と交わってきた。 それしか繋ぐ手段が無いから。 …。 …私達はもう、違うのよ。 違わないよ。 …。 …心が、あるもの。 痛む心が、あるんだもの…。 …まどか。 ……。 …泣かないで、まどか。 ……。 …さやかには、杏子が居るわ。 杏子が、居てくれる…だから。 じゃあ、杏子ちゃんは…? …。 …杏子ちゃんは、どうなるの。 それは…。 …杏子ちゃんはさやかちゃんの事、本当に大切にしてる。 でも、さやかちゃんは…。 …。 …このままじゃ、杏子ちゃんは。 それでも。 …。 …さやかが杏子を愛しているのには違いないと思うのよ。 それがどんなに歪な形だったとしても。 …。 …だからこそ、杏子はさやかを受け入れている。 だからこそ杏子は、さやかの傍に居られるのだと思う。 ……。 …まどか。 ……しあわせになって欲しいの。 …。 二人だけじゃない…マミさんも、ほむらちゃんも。 その為なら、わたしは…。 …貴女が全部、背負うべきじゃない。 必要も無い。 …ほむらちゃん。 討伐の支度をしないといけないわ。 行くのでしょう? …。 覆すのなら、今からでも遅くは無いわ。 …ううん、行くよ。 …。 呪いを、終わらす為に。 行かないと、いけないの。 ……まどか。 ごめんね、ほむらちゃん。 …どうして? いつも心配させちゃうから。 …でもそれが家族ってものでしょう? …。 違う…? …ううん、違わない。 …。 ありがとう、ほむらちゃん。 わたしは貴女がいるから…いて、くれるから。 …。 頑張れると、思うの。 まどか…。 …討伐の支度、ちゃんとしていかないと。 ねぇ、ほむらちゃん? ええ…まどか。 後編 |