ねぇ、加賀さん。
   聞いても良い?


   …何かしら。


   加賀さんって赤城さんのどこら辺が好きなんですか?


   …何故、そんな事を聞くの。


   後学の為、かなぁ。


   後学?


   うん、後学です。


   …はぁ。
   飛龍。


   はい。


   ならないと思うわ。
   だから、答えなくても良いかしら。


   じゃあ、赤城さんに聞きます。


   …はい?


   赤城さん。


   …赤城さんに何を聞くつもりなの。


   勿論、加賀さんのどこら辺が好きなのか、です。


   ……。


   加賀さん、頭でも痛いの?


   止めて、頂戴。


   ?


   赤城さんにそんな事を聞くのは。


   なんか疚しい事でもあるから、ですか?


   は?


   あるのかなぁって。


   …あるわけないでしょう。


   じゃあ、恥ずかしいんですか?


   …貴女ね。


   一足飛びで夫婦になったら、それはそれで色々ありそうですよね。


   ……。


   それで、どこら辺が好きなんですか?
   やっぱり胸ですか?
   ふかふかそうですもんね。


   ……。


   加賀さん、目が怖い。
   あと握り拳を作るのも勘弁して下さい。


   …飛龍。


   冗談ですよ、勿論。


   …冗談は好きでは無いわ。
   特に悪質なものは。


   加賀さんは真面目ですもんねぇ。


   …。


   ところで、加賀さん。
   今度お祭りがあるの、知ってます?


   …お祭り?


   はい。
   夏祭りってやつですね。


   …知らないわ。


   聞いたところによると、細やかながらも久しぶりに開かれるそうですよ。
   以前は毎年やってたそうなんですけど、深海棲艦が出るようになってからはそれどころじゃなくなってたらしいです。
   ま、食うものもろくに足りてなかったですし…と言っても、それは今もですけど、当然と言えば当然かも知れませんね。


   …然う。


   赤城さんと行くんですよね、勿論。


   ……。


   提督に聞いたんです。
   その日は討伐はお休みだって。


   …あの提督は何を考えているの。


   息抜きは大事。
   私も然う思います。
   と言っても、全員は無理らしいですけど。


   だったら、私達は


   加賀さん。


   …何。


   赤城さん、喜びますよ。
   屹度。


   ……。


   赤城さんと逢引、しました?
   ここ最近。


   …。


   だったら。
   ね?


   …何が、ね?なの。


   大事ですよ、夫婦の時間も。
   幾ら契りを交わしているからって、すれ違いばかりだと…赤城さん、加賀さんの事。


   …何が言いたいの。


   兎に角。
   お祭り、赤城さんは喜ぶと思いますよ。
   加賀さんと行く事が出来れば。


   ……。


   よぉく、考えて下さい。
   伴侶を喜ばすのだって、お仕事の一つだって事。


   ……飛龍。


   はい。


   …とりあえず、考えておくわ。


   はい、是非然うして下さい。


   ……。








   どうしてうちの提督は討伐って言うのか、赤城さんは知ってます?


   …はい?


   討伐なんて言うの、多分、うちだけだと思うんですよね。


   …然うなんでしょうか。


   まぁ、他の鎮守府事情なんて知らないですけど。
   多分、然うじゃないかなと。


   …蒼龍さん、は。


   未だ、慣れそうに無いですか?


   …え?


   私の事、呼び捨てにするのは。
   加賀さんは思いの外早く、慣れて呉れましたけど。


   …。


   赤城さんと加賀さんは栄えある一航戦。
   私と飛龍は、二航戦。
   だから。


   …然うだとしても。
   蒼龍さんは私よりも早く、この場所に


   偶々、ですよ。
   ただ、それだけです。


   …。


   屹度、そんなもんだと思いますよ、どこも。


   …はぁ。


   何と言うか、落ち着かないんですよね、赤城さんにさん付けされるの。
   この辺がムズムズすると言いますか。


   …。


   なので、これからは呼び捨てでお願いします。
   勿論、飛龍の事も。


   …善処はします。


   はい、お願いします。


   ……。


   正直な事を言いますけど、加賀さんが羨ましいんです、私達。


   …加賀さんが?
   何故…。


   だって、来た早々赤城さんの心を開いちゃったじゃないですか。
   私が、と言うか私達が幾らやっても駄目だったのに。


   …。


   二人は鍵と鍵穴みたいだーって飛龍が言ってたんですけどね。
   それにしたってなぁ、て。


   …鍵と鍵穴。


   合わなければ、扉は開かない。
   まぁ、そんな感じです。


   ……。


   ところで、赤城さん。
   加賀さんに対して不満なんて、抱いてないですか?


   …不満、ですか?


   はい、不満です。
   例えば最近、相手にして呉れないとか、夜寂しいのに構って呉れないとか。


   ……。


   ありません?


   ……無い、ですけど。
   でも、どうして…?


   ここのところずっと、擦れ違いばかりしてるように見えて。


   …それは仕方の無い事です。


   と言う事は、してるんですね?


   …だからと言って、不満を抱いてるわけでは無いですから。


   然う、言葉にしている時点で。


   蒼龍、


   はい。


   ……蒼龍。


   幾ばくかの不満を抱いている、と、私は思いますよ。


   …私達は、艦娘です。
   幾ら二人の時間が欲しいと望んでも、


   はい、赤城さん。


   …え。


   今度、夏祭りがあります。
   加賀さんと二人で、どうぞ、行ってきて下さい。


   夏祭り、ですか…?


   今年の夏から再開するらしいですよ。


   …加賀さんと、私で。


   提督曰く、その日は討伐お休みだそうです。
   と言っても全員は無理ですけどね。


   …だったら、私達は


   赤城さん。


   …。


   加賀さんと二人だけの時間、欲しくないですか?


   ……それ、は。


   もう少し、我儘言っても良いと思いますよ。
   そもそも加賀さんの方からでしょう、求婚してきたのは。
   世の中、惚れさせたもん勝ち、です。


   …。


   ああ、お二人の場合は契りの方がしっくり来ますかね。
   まぁ、それは置いておいて。


   …。


   加賀さんはもう少し、分からないと。
   赤城さんが寂しがっていると言う事を。
   伴侶、なんですから。


   …私は。


   そもそも加賀さんが赤城さんとの二人の時間を望んでない、なんて。
   そんな筈


   蒼龍、さん。


   …はい。


   …とりあえず、考えさせて下さい。


   はい、考えてみて下さい。
   でもって是非、行動してみて下さいね。
   なんだかんで加賀さん、赤城さんには甘いんですから。


   ………。















  
 立 ツ















   あ。


   …。


   え、と、その。
   討伐お疲れ様です、加賀さん。


   …貴女も。


   いえ、私は…。


   …鍛錬をしていたのでしょう。
   今日は、誰に?


   鳳翔さんです。


   …然う。
   なら、良かったわ。
   鳳翔さんは赤城さんの師でもあるから。


   ……。


   翔鶴。


   は、はい。


   …。


   …?
   加賀さん?


   …いえ、何でも無いわ。


   赤城さん、でしょうか…?


   ……。


   赤城さんなら未だ、演習から戻ってきていません。
   終了予定時間は疾うに、過ぎているんですが…。


   …然う。


   心配、ですか…。


   …翔鶴。


   あ、す、すみません。
   過ぎた事を…。


   夏祭り。


   …はい?


   …。


   夏祭りって…今年から再開されると言う夏祭りの事、ですか?


   …やっぱり、知っているのね。


   恐らく、知らない人はあまり……あ。


   ……。


   え、えと。
   加賀さん、夏祭りに行くのですか?
   だったら赤城さんとですよね、やっぱり。


   ……。


   あ、あの…すみません。


   …謝る事なんて、言ってないでしょう。


   ……。


   翔鶴は、行くの。


   夏祭り、ですか。


   …ええ。


   私は…お留守番、してようと思います。


   それは、何故。


   …。


   …。


   …一緒に行きたいと思ってる人が、未だ、此処には居ないからです。


   …。


   誰と行っても…今の私は屹度、心から楽しめません。


   …然う。
   ごめんなさいね。


   …どうして、です?


   さぁ…どうしてかしらね。


   …。


   …それじゃあ、また。


   だから、加賀さん。


   …。


   その、赤城さんと二人で。
   どうか、二人で行って来て下さい。
   そして、二人だけの想い出を。


   …。


   私とあの子の分まで、なんて、そんな烏滸がましい事を言いたいわけでは無いんです。
   ただ、私は。


   …。


   加賀さん。


   …。


   …一瞬を、どうか、逃さないで下さい。


   一瞬…。


   …全ての時は、一瞬だと。
   そして二度とその一瞬は、戻ってこないのだと…。


   ……。


   …すみません。
   何を言ってるんでしょうね…私。


   ……。


   赤城さん、屹度喜ぶと思います。
   加賀さんと夏祭りに行けたなら。


   …然うだと、良いけれど。


   加賀さんは赤城さんにとって唯一の人、ですから。


   …翔鶴、一つ良いかしら。


   あ、はい。


   …赤城さんは。


   はい。


   …いえ、やっぱり良いわ。
   時間を取らせてしまって、悪かったわね。


   いえ…そんな事は。


   それじゃあ。


   はい…また。


   ……。








   お帰りなさい、赤城さん。


   鳳翔さん?


   演習、お疲れ様です。
   お怪我はありませんか?


   はい、大丈夫です。
   有難う御座います。


   然うですか…良かったです。


   あの、鳳翔さん…。


   加賀さんなら一足先に帰還して、今はお部屋に戻っているようですよ。


   部屋に…。


   ふふ、嬉しそうですね。


   …。


   良いんですよ、嬉しい時は笑うものです。
   私達はもう、鉄の塊では無いのだから。


   …鳳翔さん。


   加賀さんは傷は負ったようですが、小破とも言えないくらいの微かなものだそうです。
   ですが、ちゃんとした手当は必要ですよね。
   化膿でもしたら、大変ですから。


   …。


   頼めますね、赤城さん?


   …はい、鳳翔さん。


   はい、それでは加賀さんの事は赤城さんにお任せしましょう。
   ところで、赤城さん。


   …夏祭りの事でしょうか。


   夏祭り、ですか?
   いいえ、違いますよ。


   …然う、ですか。


   後で私の部屋に来て呉れませんか。
   加賀さんと一緒に。


   それは、良いですけど…あ、でも、加賀さんの予定が。


   それは大丈夫です。
   提督に確認済みですから。


   …それは


   休む事も大事です。
   よって今日はもう鍛錬する事も禁止です。
   ゆっくりと躰を休めて下さい。


   …。


   当然、赤城さんもですよ。


   …それは提督が。


   進言、しちゃいました。


   え。


   なんて、提督も同じお考えだったようですけど。


   ……。


   では、赤城さん。
   また、後で。


   はい、分かりました。


   そうそう、赤城さん。


   はい?


   夏祭り、楽しみですね。


   …鳳翔さんも、行くのですか?


   私は、どうしましょうか。
   一人で行くより、誰かと一緒の方が屹度、楽しいですよね。


   …。


   然うね…提督でも、誘ってみましょうか。


   …提督と行くのですか?


   冗談ですよ、勿論。
   私は残るつもりです。


   行かないの、ですか。


   興味は、ありますが。
   翔鶴さんを一人、残しておくわけにはいきません。


   …。


   聞いたわけではありませんが。
   あの子は恐らく、行かないでしょう。
   待ち人が来ぬ限り。


   …ああ。


   ごめんなさいね、呼び止めてしまって。


   いえ…。


   でも一刻も早く、加賀さんのところに行きたいでしょう?
   一緒に過ごせる時間が少しでも長くなるように。


   ……。


   ふふ。
   赤城さんは加賀さんの事となると可憐な少女のようになりますね。


   …からかわないで、下さい。


   ふふ。


   …。


   それでは、また後で。
   屹度、加賀さんと来て下さいね。


   …はい。








   …加賀、さん。


   ……。


   赤城、ただいま戻りました…加賀さん。


   ……。


   …?
   加賀さん…?


   …ん、う。


   ……眠って、る?


   …。


   討伐、演習、遠征、それから開発…ずっと、ずぅっと、忙しくしていましたものね。
   お疲れさまです、加賀さん…。


   …。


   …でも今日は船渠に居なくて良いんですね。
   大きな怪我をしなくて良かった…。


   ……。


   …今夜は一緒に眠れますよね。
   ねぇ…加賀さん。


   …あか、ぎ…。


   え。


   ……。


   …気のせい、かしら。
   ううん、でも…。


   ……。


   …貴女の夢の中に、私は居るのですか。


   …。


   だったら、嬉しい……けど、加賀さん。


   …。


   …私は、此処に居ます。
   夢で無く、此処に居る私に……。


   …。


   ……触れて、欲しい。


   ……。


   加賀さん……。


   …。


   ……すこし、だけ。


   …。


   いい、ですよね……かがさん。


   ……あかぎ。


   ……。


   ……赤城さん。


   …は、い。


   赤城さん。


   ……え。


   戻ったのね。
   お帰りなさい、赤城さん。


   か、加賀さん…。


   はい、赤城さん。


   あ、あ、あ…。


   …?
   赤城さん、大丈夫ですか?


   い、いつから…。


   …いつから?


   あ、いえ、なんでも…ありません…。


   赤城さん、声が上擦っているわ。
   本当になんでも無いの?


   な、ないです、ほんとに、ないです…。


   然う…。


   あ、あの、加賀さん。


   はい。


   えと、お疲れさまです…。


   …赤城さんも。
   お怪我はありませんか?


   は、はい、大丈夫です。


   …然うですか。
   良かった。


   そ、それで鳳翔さんから聞いたんですけど……え。


   ……。


   か、加賀さん…。


   ……良いですか?


   え、で、でも……。


   …違いましたか?


   え……え。


   ……赤城さん。


   加賀さ……ん。


   ……。


   ……いつ、から。


   …。


   …いつから、起きていたんですか。


   ……触れて欲しい、ぐらいには。


   …ッ!


   赤城さ


   ひ、ひどいです…!


   …ひどい?


   お、起きていたなら…いたな、ら。


   ……。


   …あ。


   ……赤城さん。


   か、加賀さん、だ、だめです…。


   …いや、ですか。


   私、汗…汗、かいてるから、だから…。


   …。


   ……だから、今は。


   ……。


   きれいにして、から……してから、その。


   ……。


   …その、して…ください。


   ……分かりました。


   …。


   …。


   …まって、加賀さん。


   …赤城さん?


   その…口付けだけ、なら。


   ……。


   ……。


   …はい、赤城さん。


   ん、加賀さん……。


   ……。


   ……。


   …今宵は。


   ……かがさん。


   …一緒に、眠れますね。


   は、い…。








   ……。


   …。


   …〜♪


   …。


   〜〜♪


   …何か良い事でもありましたか?


   ……え。


   唄を、口遊んでいました。


   …私が、ですか?


   はい。


   ……え、と。


   無意識でしたか?


   …はい。


   然う。


   …喧しかったですか?


   まさか。


   …。


   宜しければまた、口遊んで欲しいと思いますが。


   …もう、しません。


   然うですか。
   残念です。


   …。


   …。


   …加賀さん、そちらの腕も。


   こちらは大丈夫です、赤城さん。


   駄目です。
   かすり傷だとしても、ちゃんと手当はしておかなければ。
   人の子の躰は少しの傷でも時に化膿して大変な事になるのですから。


   仮に然うなったとしても、私達は


   兎に角、駄目です。


   …分かりました。


   ……。


   …う。


   ……。


   …赤城さん?


   ……加賀さんの、ばか。


   …どうして?


   ……何か良い事がありましたか、なんて。


   …。


   …そんな事、聞かないで下さい。


   ……だめですか、聞いては。


   だめです。


   …分かりました。


   分からないで下さい。


   …?


   ……。


   赤城さんは時々、難しい事を言いますね。


   …あと敬語も止めて。


   ……。


   …。


   …赤城さん。


   ……何ですか。


   …。


   …なに、加賀さん。


   夏祭りに、行きませんか。


   …。


   今年、久方ぶりに開かれるそうです。


   …行きません。


   ……然うですか。


   …。


   …。


   …本当に良いんですか。


   何がですか?


   このままだと私、本当に行かないですよ。
   然うしたら加賀さん、どうするんですか。


   私も行かないだけよ。


   ……。


   ……。


   ……夏祭り、私と一緒に行きたいと。
   本当に、思って呉れてますか…?


   …。


   ……だったら、もっと。


   私は赤城さんと行きたい。
   だから、一緒に行きませんか。


   ……。


   …。


   ……私、だって。


   …。


   …加賀さんと行きたい、です。


   然う…。


   ……。


   …赤城さん。


   ……誘って呉れて、有難う御座います。


   こちらこそ、受けて貰えて嬉しいわ。


   だったらもっと、嬉しそうにして下さい。


   …してる、つもりだけれど。


   つもりじゃ、だめです。


   ……。


   …。


   …赤城さん。


   ……私、本当に。
   本当に、嬉しいんですから……。


   …私も、なのだけれど。


   だから、分かり辛いんです。


   …ごめんなさいね。


   謝らなくても、良いんです。


   ……赤城さん。


   …。


   …?
   赤城さん…?


   ……私、嫌な女でしたか。


   はい?


   …嫌な女、でしたよね。


   嫌な女…?
   赤城さんが…?


   …ごめんなさい、加賀さん。
   だから…誘い、無しにしないで下さい。


   …。


   ……私、嬉しくて。
   加賀さんから誘って呉れたのが…とても、とても、嬉しくて。


   私も、とても嬉しいわ。


   …。


   赤城さん。


   …。


   …伝わった、かしら?


   ……は、い。


   ふふ…良かった。


   ……かがさん。


   ……。


   …嬉しい。
   本当に、嬉しい…。


   …赤城さん。


   ……ここのところ、ずっと。
   二人の時間が、持てなくて……でも。


   …。


   ……なんて、言えなくて。


   …何が言えなかったの。


   ……。


   …。


   ……寂しい、なんて。


   …。


   もっと、一緒に居た……んぅ。


   ……。


   ……かが、さん。


   …私も貴女と。


   かがさん……かがさん…。


   …一緒に居たいわ、赤城さん。


   ……。


   ……。


   ……なつ、まつり。


   …はい。


   ……楽しみ、ね。


   ええ…とても。








   ……はい、良いですよ。


   ありがとう、赤城さん…。


   どう致しまして。


   ……。


   …?
   加賀さん…?


   …。


   …どうか、しましたか。


   ……どうも、しないわ。


   ……。


   …ごはんの時間までもう少し、あるわね。
   どうしましょうか…。


   あの、加賀さん…。


   …はい?


   疲れて、ますか…?


   …いえ、大丈夫よ。


   でも、私が帰ってくるまで眠っていたようだし…。


   ……。


   …ごはんの時間まで少し、横になりますか?


   ……。


   加賀さ……あ。


   …あかぎさん。


   は、はい…。


   ……。


   …かがさん。


   ……あなたのどこがすきなのか、きかれました。


   え…?


   …ひりゅう、に。


   ……それ、で。
   なんと答えたのですか…?


   …なにも。


   何も…?


   ……ええ。


   …どうして、ですか。


   ……。


   …加賀さん。


   わたしは、あかぎさん…あなたが、すきです。


   …。


   すきです…あかぎさん。


   ……ねぇ、加賀さん。


   …ん。


   ごはんの時間まで…私と少し、眠りませんか。


   …あかぎさん、と。


   はい…私、と。
   それとも他の娘の方が良いですか…?


   …。


   …良い、ですか?


   あかぎさん。


   …あ。


   ……。


   かがさん…。


   わたしは…あなたに。


   …はい。


   さびしいおもいを、させていますか…。


   …え。


   もしも、そうならば……わたし、は。


   ……。


   ん…。


   …あなたは、寂しいと思って呉れていますか。
   思って、呉れていましたか…。


   ……。


   …少しでも、思っていて呉れたなら。
   私は…大丈夫ですから。


   ……。


   …ねぇ、加賀さん。


   ……あなたが、すきです。


   …。


   だから…あなたとすごすじかんが、ほしい。


   …加賀さん。


   ……。


   …寂しかった、です。


   …。


   寂しかった…。


   ……あかぎさん。


   …はい。


   すこし、ねむってもいいですか……あなた、と。


   …はい、勿論です。
   加賀さん…。


   ……ああ。


   …。


   …あかぎさんのにおいが、するわ。


   ……汗臭く、ありませんか。


   すき、だもの…。


   …。


   ……あせの、においも。


   …複雑です、それ。


   そう…?


   ……ああ、でも。


   …。


   …私も好きでした、加賀さんの汗のにおい。


   ……。


   ね…複雑、でしょう?


   …ふふ。


   おかしい、ですか…?


   …はい、とても。


   ……私も、です。


   あかぎさん…。


   …はい、加賀さん。


   ……あかぎ、さん。


   はい…加賀さん。


   ん……。


   然うだ……眠る前に、一つだけ。


   な、に…。


   …鳳翔さんに後で二人で来るよう、言われているんです。
   だから、起きたら……ね。


   ……ん。








   ただいまー、お疲れー。


   お帰りー、お疲れー。


   早かったねー?


   そっちが遅いの。
   ほんとならこっちの方が帰ってくるの、遅かったんだから。


   うん、知ってる。


   どっか、寄り道してたんでしょ。
   どうせ。


   あはは。
   で、首尾はどう?


   うーん、まぁ良いんじゃないかな。
   そっちは?


   多分、良いと思うよ。


   多分?


   後は本人達次第だから。


   まぁ、然うなんだけど。


   これ、貰っても良い?


   だめ。


   けち。


   けちで結構。


   むー。


   飛龍。


   もらい。


   …。


   あ、痛い。


   新婚って呼んでも良いわけよ、あの二人の事は。


   と言うかさ、私がここに来た時にはとっくに二人は夫婦でしたってさ。
   いやぁ、ほんとに驚いた驚いた。


   それなのに、すれ違いばかり。
   しょうがないとは言え、ちょっと、ねぇ。


   でもさ、今頃は二人きりの時間を満喫してんじゃないの?
   これからの時間はお二人とも予定無しって鳳翔さんから聞いたから。


   聞いたの?
   わざわざ?


   おーよ。


   …ああ、然う。


   んでさ、蒼龍。


   なに。


   夏祭り、どうする?
   行く?と言うか、行く?


   行く気満々みたいじゃない、それ。


   違うの?


   行くけど。


   んじゃあ、行こう。


   飛龍と行くとは言ってないけどー?


   言ってなくても行くでしょー?


   何でよ。


   だって、さ。


   だって、何。


   つまんないじゃない?
   二人じゃなきゃ。


   は?


   は?


   …飛龍、あんたね。


   私はつまんないなぁ。
   蒼龍と一緒じゃないと。


   さんざ待たせておいて、そういう事、言うかな。


   加賀さんより遅くなるとはねー。


   ほんとよ、全く。


   赤城さんの方が強かったんだね、蒼龍より。


   どういう意味?


   だって夫婦だよ?
   加賀さんが来た日のうちにちゃっちゃとやる事やっちゃってさ?


   ……。


   赤城さんの気持ちがそれだけ強かったって事でしょう?


   …だけど求婚したのは加賀さんでしょう。


   そうさせたのは赤城さんだって事だよ。
   ま、加賀さんも凄いけどね。
   他所ではヘタレとかって言われてるんでしょ?
   全然じゃん、うちの加賀さん。


   鍵と鍵穴。


   ん?


   良く言ったもんよね。


   でしょう?


   加賀さんが来る前の赤城さん、加賀さんが来た後の赤城さん。
   本当に違うもの。


   まさに。
   加賀さんが鍵で、赤城さんが鍵穴。


   …。


   なに?


   …なんでもない。


   ちょっといやらしいとか思った?


   はっきり言うな、ばか飛龍。


   でもさ。
   逆でも同じ事が言えると思うよ。


   逆?


   赤城さんが加賀さんにとっての鍵って事。


   …。


   他の人じゃあ、駄目なんだ。
   ううん、他の人でも時と場合によっては代用にはなれるかも知れないけど…それはどこまて行っても代用で。
   誰とくっついても、特に加賀さんは、赤城さんの為にしかその命を使えない。
   私は然う、思ってる。


   ……飛龍。


   罪だねぇ、粋だねぇ。


   飛龍にとって。


   鍵?
   そりゃあ、蒼龍でしょ?


   ……はっきりと、まぁ。


   と言う事だから夏祭り、宜しくね。


   …はいはい。
   休み、貰えると良いわね。


   貰えるよ、屹度。








   あら、まるで午睡後の幼子のような顔をしてますね。
   若しかして二人で眠っていたのかしら?


   …。


   …。


   ふふ。
   ともあれ、ちゃんと二人で来て呉れて有難う。
   早速、なのだけれど。


   …。


   …はい、何でしょうか。


   これを、二人に。


   …。


   …?
   それ、は…。


   間に合って、良かったです。


   …。


   …浴衣、ですか。


   はい、その通りです。


   …。


   でも、どうしてですか。


   人の子にとって、夏祭りと言えば浴衣ですから。


   …。


   …それだけでわざわざ仕立てて呉れたのですか。


   いいえ、違いますよ。
   お二人の浴衣姿を、私が見てみたかったのです。


   ……。


   …ですが、私達は人の子では。


   艦娘だから着てはいけないなんて、私は思いません。


   …。


   …。


   すみません、全ては私の勝手な思いからです。
   なので、嫌だったら断って下さい。


   …。


   …いえ、そんな事は。
   え、と…本当に頂いて良いのですか?


   はい、勿論です。
   ああ、でも。


   …。


   …はい。


   寸法がちゃんと合っているかどうか確かめたいので。
   一度、此処で袖を通して貰っても良いですか?
   特に加賀さんのは…ごめんなさい、実は急拵えなんです。


   …。


   …。


   赤城さんのは…前から、仕立てておいたのですが。
   ですが加賀さんのは…寸法が、分からなかったので。


   …。


   …前から。


   然う言うわけなので。
   袖を通して貰っても良いですか、加賀さん。


   ……。


   それから、赤城さんも。


   …はい、分かりました。


   有難う御座います。


   ……。


   …?
   加賀さん、どうかされましたか?


   加賀さん…?


   …さ、ん。


   然う言えば先程から一言も…。


   加賀さん、大丈夫ですか…?
   若しかして未だ疲れが…


   ……あかぎ、さん。


   加賀さ…え。


   ………。


   …ッ!
   いけない…ッ!


   加賀さん……ッ!!!!








   疲労によるものだと思います。


   …疲労。


   人の子の躰はあまりにも疲労が蓄積すると、高熱を出す場合があるそうです。
   そして高熱を出すと、動けなくなってしまう。


   …。


   これ以上高い熱を出してしまうと…最悪、機能停止に成りかねません。
   絶対に安静にして下さい。言えるのは、それだけです。


   ……。


   氷嚢はまめに替えてあげて下さい。


   …分かりました。


   言うまでもないとは思いますが…赤城さん。
   加賀さんの事、頼みますね。


   …はい、明石さん。
   有難う御座いました。


   いいえ、お役に立てて良かったです。


   …。


   赤城さん。


   …はい。


   大丈夫ですから。
   ちゃんと休めば、大丈夫。


   …。


   それでは。
   何かあったら、いつでも、呼んで下さい。


   ……はい。








   ……。


   …あかぎ、さん。


   …!
   加賀さん…!


   ……。


   …あ。


   …。


   …すみません、大きな声を出して。
   うるさかった、ですよね…。


   …ここ、は。


   私達の部屋です。


   …へや。


   加賀さん、急に倒れたんです…。


   ……ああ。


   それで…。


   …ほうしょうさん、は。


   大事にして下さい、と。


   ……そう、ですか。


   ……。


   …あかぎさん。


   …。


   そんなかお、しないでください…。


   …でも。


   ……おもい、だしたんです。


   …え?


   かつて……うみわしの、やきとりせいぞうきと、よばれていたことを。


   ……。


   このみになって、そのいみを、おもいしるとは…ひにくな、ものです。


   ……。


   …だいじょうぶ、です。


   ……加賀さん。


   だいじょうぶ…だから。


   …。


   そんなかお…しないで。


   …。


   ……。


   …傍に、居ても良いですか。


   ……むしろ、いてください。


   …。


   …あかぎさん。


   何ですか…。


   …て、を。


   手……。


   …いい、ですか。


   ……はい。
   はい、加賀さん…。


   ……よかった。


   …。


   ……なつまつり。


   …。


   かならず、ふたりで……。








   赤城さん…!


   …。


   待って下さい、赤城さん!


   …何ですか。
   そんなに大きな声を出さなくても聞こえていますが。


   だったら、止まって下さいよ…。


   …それで。
   何か御用ですか、蒼龍さん。


   少し、休んで下さい。


   …。


   赤城さん、ここのところ全然休んでいませんよね。
   討伐、遠征、演習、開発……ずっと、忙しくしていて。
   このままでは、躰がもちません。


   大丈夫です。


   大丈夫じゃありませんよ。


   私の事は私が一番良く知っています。
   なので、余計な心配は無用です。


   余計って…!


   …お話は終わりでしょうか。
   これから演習なので失礼したいのですが。


   兎に角、休んで下さい。


   …しつこい方ですね。


   私達の躰は、人の子のそれなんですよ。
   無理をすれば、


   然うですね。
   ですが私達は艦娘です、壊れれば幾らでも修復出来る。
   それこそ高速修復剤を使えば、一瞬で。


   …!


   それは人の子では出来ません、違いますか。


   …私が言っているのは然ういう事ではありません。


   では、何が言いたいのですか。


   この鎮守府に居る空母は赤城さんだけではありません。


   ええ、然うですね。
   それが何か?


   赤城さん一人で背負う事は無いんです。
   私や鳳翔さん、祥鳳さん、それから龍驤さんだって…


   私はただ、艦娘としての責を果たしているだけです。
   兵器である私に休みなど、必要ありません。


   違います…!!


   何が違うのですか。
   蒼龍さん、貴女だってただの兵器でしょう?


   然うです、私もただの兵器です。
   だけど、今は心を持っているんです。
   人の子の躰を、柔い躰を、持っているんです。
   そしてこの躰は、鉄のそれと違って、とても脆いものなんです。


   いいえ、鉄の躰も脆かったですよ。
   あの時、あっさりと壊れてしまったのですから。


   …。


   …然う、あの人も。


   赤城さん。


   …。


   私は、貴女が壊れてしまわないか、心配なんです。


   …壊れたら代わりが来る。
   ただ、それだけの事です。


   代わりなど、居ません。


   居ますよ。
   私だけじゃない、貴女の代わりも、他の娘の代わりも。


   今、此処に居る私達は私達しか居ません…!


   …。


   赤城さん、加賀さんを待っているのでしょう?


   …私は誰も待ってなどいません。


   嘘です。
   赤城さんは加賀さんを待っているんです。


   …蒼龍さん。


   だって、私も待ってるから。
   飛龍を、待っているから。


   …私と貴女を一緒にしないで呉れませんか。
   私は一人でも


   赤城さん…!!


   …。


   …お願いですから、休んで下さい。
   加賀さんが此処に来た時、貴女が居なかったら…。


   ……いつ来るか、来て呉れるか。


   …。


   分からない人の為に、私は戦うのを止めるわけにはいきません。


   赤城さん…。


   ……。


   …疲労は、躰の機能全てを鈍らせます。
   然う、判断力も。


   …何が言いたいのですか。


   そんな貴女が居ても足手纏いにしかなりません。
   邪魔です。


   私は


   これは、命令です。


   …命令、ですって。


   これだけは言いたくなかった。
   けれど、仕方がありません。


   ……鳳翔さん、ね。


   提督の判断です。
   赤城、貴女に休みを命じます。


   ……。


   …どうか一日だけでも、休んで下さい。


   …嫌よ。


   赤城さ


   何も、考えたくない。
   考えたくないのよ。


   …何を考えると言うのですか。
   加賀さんの事、ですか。


   ……。


   然うですよね、赤城さん。


   …違う。
   私は…


   貴女は矢張り、待っているんです。
   唯一の僚艦である、加賀さんを。
   心から。


   ……私、は。


   通告はしました。
   命令に背けばどうなるか…貴女なら、分かっていますよね。


   …そんなもの。


   赤城さん。
   加賀さんは、必ず、来ます。


   …。


   …だから、お願いです。
   自分を、大事にして下さい。


   ……ただの兵器なのに。
   戦う事しか、出来ないのに…。


   …。


   …心など、要らなかった。
   要らなかったのに…どう、して。


   …誰かを求める為、ではいけませんか。


   ……。


   …あの頃も、私達は二人で一つだった。
   番(つがい)だった意味を…今なら、考える事が出来ます。


   ……。


   …部屋まで、送ります。
   行きましょう、赤城さん。


   …見張らずとも、行くわ。


   ……然うですか。


   ……。


   …それでは。
   どうぞ、ご自愛して下さい。









   ……。


   …う、ぅ。


   …!
   加賀さん…!


   ……。


   ……加賀さん。


   …おな、か。


   お腹がどうかしましたか?
   痛むのですか?


   ……い、え。
   あの…。


   何でも言って下さい。
   私に出来る事なら、何でも。


   ……ま、せんか。


   ごめんなさい、何ですか。


   …すいて、ませんか。


   …?
   すいて…?


   おなか…すいてませんか…。


   …。


   ごはんの、じかん…すぎてるでしょう…?


   …そんなの。


   わたしは、いいから…あかぎさん。
   どうぞ、たべてきて…


   そんなの…!


   …。


   …ごはん、なんて。
   加賀さんが、熱を出して寝ているのに…。


   …わたしは、だいじょうぶだから。
   だから…あかぎさん。


   …要りません。
   お腹なんか、空いてません。


   ……でも。


   加賀さんが、食べるなら。


   …。


   ……加賀さんと、食べられるなら。


   …あかぎさん。


   ……加賀さんと一緒じゃないなら。


   …。


   ……。


   …ごめんなさいね、あかぎさん。


   ……。


   でも、あかぎさん…ちゃんと、たべないとだめです。


   …嫌です、要りません。


   ……。


   …。


   ……こまり、ました。


   …。


   …はぁ。


   ……苦しいのですか。
   それとも、呆れたのですか…。


   いいえ…。


   …じゃあ、なんですか。


   ……。


   …言って下さい、加賀さん。


   ……のど、が。


   喉…ああ、乾いたのですね。


   …はい。


   分かりました。
   一寸待ってて。


   …。


   ……麦茶で、良いですよね。


   ええ…。


   ……。


   …?
   あか……んん。


   ………。


   …ん、……ん……。


   ……。


   ……は、ぁ。


   …加賀さん。


   ……あかぎ、さん。


   零したら、駄目ですよ。


   …。


   …なので、もう一回です。


   ……あかぎさん。


   言ったでしょう?
   何でもする、と。


   ……。


   ……然う、何でもするんです。


   あかぎさん…。


   ……。


   ……ん。


   ……。


   …ん、ぅ、………。


   ……。


   ……はぁ。


   …零しては駄目だと、言ったでしょう。


   ……。


   ……だから。


   …おいしい、ですね。


   え…。


   …すこし、ぬるいですが。


   …!


   ……ありがとう、あかぎさん。


   な、んで…。


   ……のませて、くれたわ。
   だから…。


   私は。


   …。


   …私は、嫌な女です。


   なにを、いっているの…。


   ……弱って、動けなくなっている貴女に。
   私は……卑怯な、事を…。


   …ひきょう?
   なんのこと…?


   ……。


   …あかぎさん。


   ……私は、貴女が来る前は。


   …。


   …いいえ、来た今だって。
   だって、貴女が…貴女だけが…。


   ねぇ、あかぎさん…。


   …。


   おねがいが、あるのだけれど…。


   …私に、出来る事なら。


   ええ…できることよ。


   …何でしょうか。


   その…もういちど、いいかしら。


   …もう、一度。


   いやで、なければ……だけど。


   ……。


   …ん。


   ……加賀さんの、ばか。


   …。


   …嫌なわけ、ないじゃないですか。


   ……そう。


   ……。


   …あかぎさん。


   ……かがさん。


   …。


   …。


   ん……。


   ………。


   …、……ん、………ん。


   ……。


   ……はぁ。


   …。


   ありがとう…あかぎさん。
   のどが、らくになったわ…。


   …かが、さん。


   …。


   かがさん…かがさん……。


   なに…あかぎさん。


   ……。


   …あかぎさん。





   すみません、お部屋に入っても良いでしょうか…?





   ……。


   ……あかぎさん、だれかが。


   どうぞ。





   し、失礼します…。





   ……しょう、かく?


   …何の御用でしょうか、翔鶴さん。


   あの、お食事を…持って、参りました。


   …ああ。


   誰に言われたのですか。
   それとも貴女の判断で、ですか。


   あ、あの…鳳翔さんが。
   赤城さんは加賀さんの傍から離れないでしょうから…と。


   …。


   …。


   え、えと…今夜は、肉じゃがです。
   加賀さんの分もあるのですが…。


   …にく、じゃが。


   翔鶴さん。


   は、はい。


   …あかぎさん?


   有難う御座います。
   御用はそれで以上ですか。
   それとも未だ何か?


   い、いえ…。


   ……。


   然うですか。
   では鳳翔さんにはどうぞ、宜しくお伝えください。
   有難う御座いました。


   は、はい、お邪魔しました…。


   しょうかく。


   …。


   は、はい、加賀さん。


   ありがとう。


   ……。


   い、いえ。
   あの、お大事にして下さいね。


   ええ…。


   ……。


   で、では。
   失礼します…。








   お疲れ、翔鶴。
   二人の様子、どうだった?


   …。


   ん?どしたの?


   …なんでもありません。
   大丈夫です。


   んー…。


   …え。


   それはどういう意味での大丈夫?
   加賀さんが?赤城さんが?それとも翔鶴、自分自身?


   ひ、飛龍さん…。


   ……。


   あ、あの…。


   …まぁ、間が悪かったかな。


   ……。


   加賀さんが来る前と、来てからの今。
   私が来た時にはもう、あの二人は契りを交わして夫婦になっててさ。


   …?
   はい。


   赤城さんは加賀さんと一緒だと良く笑ってるし、表情も良く変わってると思う。
   なんて言うかな、全体的にとても柔らかい顔をしてると思うんだよね。


   …はい。


   だから、蒼龍が言うあの人の怖さがどんなものか、私は知らないし分からない。
   でも時折、感じる事があるんだよ。


   …何を、でしょうか。


   人殺し長屋って、聞いた事はある?


   …いえ。


   あの人がふねだった頃の異名と言うか、綽名と言うか。
   物騒だよね。


   …赤城さんの?


   まぁ、それがあの人の人と為りを表してるってわけじゃあ、無いけれど。


   ……。


   翔鶴。


   はい。


   私達も貴女達も生まれながらに空母だった。
   けど、あの人達は違う。
   それなら、知ってるよね?


   …はい。


   色々、あるんだよ。
   艦娘となった今でも、色々、さ。


   …。


   だから…まぁ、なんだろ。
   気にしない気にしない。


   …え、と。


   仕方無い、こればかりは。
   そもそも加賀さんがぶっ倒れなければ、赤城さんも翔鶴にはあたらなかった。
   だから、仕方無い。


   ……。


   んー。





   と言うか、全然分からないんだけど。





   あ、蒼龍。


   翔鶴、ごめんね。
   私が持っていけば良かった。


   あ、いえ、私なら大丈夫ですので…。


   と言うか飛龍、あんたが持っていけば良かったのよ。
   最初に言われたの、あんたでしょうが。


   うん、然うだったね。


   なのに、翔鶴に押し付けて。


   あ、あの、私は決して押し付けられたわけでは…。


   けれど結果的には然うなった。
   飛龍、あんたがちゃっちゃと持っていってれば…て、飛龍。


   あはは。


   て、こら、逃げるな。


   翔鶴、大丈夫そう?


   あ、はい、大丈夫です。
   有難う御座います、飛龍さん。


   翔鶴、お礼なんて言わなくて良いから。
   飛龍、待ちなさい、飛龍。


   蒼龍さんも、有難う御座います。


   え、私?


   あの…心配、して呉れたんですよね。


   うん…まぁ、ね。


   蒼龍、照れてるー。


   うっさいわ。


   えー。


   と言うか待てこら、飛龍。


   やだ、待たない。


   なんだと、こらーー。


   ……ふふ。