え、と……。


   Хуришикиру аме но нака,
   Когое нагара 「аишитеру」 то цубуяита...


   …あ。


   Соно кое wо wасуренаи кара....
   Соно кое wо wасуренаи кара.......


   …。


   ……。


   …。


   …ふふ。


   …。


   榛名?


   …ぁ。


   そんな所に居ないで、こっちにいらっしゃい?


   あ、あの。


   Come here, Haruna.


   …。


   Please, my sweet little sister.


   は、はい、こんごうおねえさま…。


   ……前にもこんな事がありましたネ。


   …ごきげんよう、こんごうおねえさま。


   ふふ。
   ごきげんよう、榛名。


   わ…。


   私の可愛い、榛名。


   お、おねえさま…く、くるしい、です…。


   Oh...Sorry.
   嬉しくてついまた、力が入ってしまいマシタ。
   どうにも、慣れませんネ…。


   あ、い、いえ、だいじょうぶです…。


   …。


   はるなは、だいじょうぶです…。


   …ふふ、榛名は健気な娘(こ)デスネ。
   思っていた通りデス。


   あ、ありがとうございます…。


   ふふ。


   こんごうおねえさまは、きょう、おやすみなんですか…?


   Yes!
   今日は一日、お休みデース!


   …。


   言っておきマスガ、私だって疲れるんデスヨ?
   だから、休まないと駄目なんデース。


   え、そうなんですか…?


   …。


   …あ、いえ、その。


   はーるーなー?


   ご、ごめんなさい、おねえさま…。


   全く、姉妹揃って。
   …霧島は言わなかったケド。


   …?
   きりしま…?


   と、言うわけで。
   榛名には、こうしてやりマース。


   え…え…きゃあ!


   ふふふ。


   ね、ねえさま、くすぐった、い……。


   ……ふふ。


   ご、ごめん、なさい、おねえさま…ゆるして、くださ…。


   …。


   ……うぅぅぅ。


   榛名。


   …ごめんなさい、おねえさま。


   躰を休ませる事も艦娘がするべき仕事の一つ。
   疲れを残していてはBestな戦いは出来マセン。
   良いデスカ?


   …はい。


   ふふ、貴女は比叡に似てマスネ。


   …ひえいねえさまに?


   素直なところが、とても。


   …。


   榛名。


   …はい。


   比叡を、探しているノ?


   …え。


   ふふ…当たり、デスカ?


   は、はるなは、その…。


   榛名は比叡の事が大好きなんデスネ?
   比叡が前に来ると恥ずかしくて思わず、隠れてしまうくらいニ。


   …ッ!


   今は大分、慣れてきたようだケレド。
   でも未だ少し、恥ずかしいみたいネ。


   ………。


   ふふ、顔が真っ赤デス。


   あ、あぅ…。


   でも残念だけど、比叡は此処に居ないノ。


   ……。


   今頃の時間だと…然うネ、何処かでお昼寝でもしているカモ。


   おひるね…。


   あの子は眠る事が好きダカラ。


   …。


   でも部屋には居なかった。
   デショ?


   ……はい。


   今日の陽気だと…外に居るかも知れないワ。


   おそと…。


   Yes.


   …。


   丁度、良いデス。
   榛名、比叡を探して呼んできて貰っても良いデスカ?


   よんで…?


   今日は珍しく、四姉妹が揃ってマス。
   となれば。


   …?


   Tea partyを、やるネー!


   てぃーぱーてぃー…こうちゃ、ぱーてぃー…。


   榛名は初めてでしたネ。


   は、はい。


   やっと、やっと、金剛型四姉妹が揃いマシタ。
   この時をずっと、私は待ってたんデス。


   ……。


   榛名、比叡を探して呉れマスカ?


   は、はい、はるな、ひえいねえさまをさがしてまいります…。


   OK.
   では私は霧島を呼んできまショウ。


   でははるな、いってまいります。


   ん、お願いネ。


   はい、こんごうおねえさま。


   …榛名も良い子ネ、とても。


   ……。


   榛名。


   …?
   はい、こんごうおねえさま。


   Do you love your sister?


   …?
   え、と…。


   比叡の事、好きデスカ?


   …!


   大好き、ですか?


   あの、あの………。


   …。


   ……はい、だいすき、です。


   もっと一緒に居たい。
   然う、思っていますか?


   ……は、い。


   …。


   はるなは……もっとひえいねえさまの、おそばに。


   …それはあの頃、一緒に居る事が出来なかったからですか?


   あのころ…。


   ……榛名は私と。
   比叡は霧島と…。


   ……。


   …。


   …それも、あると、おもいます。


   も…?


   ……はるなはただ、ひえいねえさまと、もっと。


   …。


   はるなは……ねえさま、が。


   …榛名。


   あ……。


   …比叡も屹度、然う思ってます。


   こ、こんごうおねえさま…あの…。


   …貴女を待っていたのは、比叡だけではないのだけれど。


   あの、あの…このままだとはるな、うごけません…。


   …全く、仕方の無い妹達デスネ。
















   .....Аматте иреба какеру моно га ару,
   Соба ни ареба миенаку нару,
   Кидуканаи соузянаи итаи ходо wакаттеру,
   Аа муне wо хатте омойккири,
   Суикому даке коно сюнкан wо,
   Ааната га коко ни иру риюу ха,
   Коно юусора га шиттеру............





   …あら?


   あ。


   こんばんは、榛名。


   …こんばんは、伊勢。


   私が居て、吃驚した?


   …ううん。


   たまには、ね。


   …。


   相変わらず、綺麗な声してる。


   …聞こえた?


   そりゃあ、ねぇ?


   …然う。


   透き通る歌声って言うの?
   姉妹だけど、やっぱり違うものなのねぇ。
   声は似てるけど。


   それ…結局、どっちなの?


   違うけど、似てるって事。
   榛名は然うね、やっぱり比叡の声に似てるかな。


   比叡姉さまと…。


   ん?んん?
   なんだか嬉しそう?


   …もぅ、伊勢。


   ふふ。


   …多分、日向も然うだと思うわ。


   ん?


   …姉妹、だもの。


   然うかなぁ。


   …屹度。


   早く来やがれ、日向。
   早く顔を見せろ、声を聞かせろー。
   こんだけお姉ちゃんが探してやってるってのにー。


   …ふふ。


   榛名の方が上手かな。


   …え?


   歌。
   比叡のも嫌いじゃないけど。
   イキオイがあって。


   …そんな事。


   それで。
   お迎え?


   え。


   比叡の。


   あ、違うの。


   比叡、比叡、お迎えが来たわよ。


   あ、伊勢…。





   榛名?





   …あ。


   お迎えだって。


   榛名。


   …比叡、姉さま。


   良いわねぇ比叡、お迎えがあって。


   ん…。


   なんだか妹と言うより新妻さんみたいねぇ、榛名。


   …!
   い、伊勢…!


   ふふ。
   じゃ、今夜はここまでって事で。
   私は部屋に戻るわ〜。


   ……もう。


   有難う御座いました、伊勢。
   こんな夜更けに付き合って呉れて。


   まぁ、たまには。
   ひとりより、相手が居る方が良いしね。
   じゃ、おやすみなさい。ふたりとも。


   …おやすみなさい、伊勢。


   はい、おやすみなさい。


   そうそう、夜更かしは駄目よ。
   明日も予定、あるんだから。


   …伊勢。


   …もう少しと思っていたんですけど。


   榛名が迎えに来て呉れたんだから、一緒に戻るが吉よ。


   …。


   んー…。


   眠れないのなら、一緒に寝たら良いんじゃない?
   ねぇ、榛名?


   …ッ。


   …。


   ふふ、じゃあね。
   また、明日。


   ………伊勢のばか。


   …え、と。
   榛名。


   は、はい。
   榛名は、大丈夫です。


   あ、うん。


   …あ。


   その、迎えに来て呉れて有難う。


   い、いえ…。


   戻る支度をするから、少し待っていて呉れますか。


   は、はい、待っています。


   うん。


   あ、あの、姉さま。


   …うん?


   榛名、本当は…。


   …。


   ……お夜食にと、思って。


   若しかしてその包みの中、おにぎり?


   …はい。


   …。


   ……。


   …まぁ、良いか。


   …。


   榛名、早速ですけどご馳走になっても良いですか?


   あ、は、はい。


   じゃあ、榛名も中に入って。


   …え。


   一緒に。


   …良いのでしょうか、榛名が入っても。


   勿論、榛名だって此処の艦娘なんだから。
   それとも道場はあまり好きではないですか?


   い、いえ…そんな事は。


   じゃあ、一緒に居て下さい。
   ひとりで食べるより、榛名が居て呉れた方が良いから。


   …。


   榛名。


   ……はい、榛名で宜しければ。








   それでは、頂きます。


   …はい、どうぞ召し上がれ。


   ……。


   ……。


   ……んん。


   …。


   …。


   …あの、姉さま。


   …。


   その……お口に、合わなかったでしょうか。


   …榛名。


   は、はい。


   とても美味しいです。


   …!


   これ、味噌ですか?


   は、はい。
   あの、肉味噌です…。


   ああ、肉味噌ですか。
   なるほど。


   鳳翔さんに教えて頂いたんです。
   その、姉さまはお肉よりもお魚の方が好きだと仰っていたんですけど…これも具としてお勧めだと。


   いや、お肉も好きなので。
   うん…本当に美味しい。


   ……。


   でもお肉だけじゃないですね。


   …実は。


   ん…なんだろう。
   野菜、かな。


   ……ピーマンが、入ってるんです。


   え?


   …刻んでお肉と一緒に炒めたんです。


   ……。


   他にも玉葱と椎茸が。


   ……。


   …姉さま。


   全然、分からなかった。


   …あ。


   本当に入っているんですか?


   は、はい、入っています。
   細かく刻んでしまったので、食感はあまり感じないかも知れません。


   苦みも感じない。


   …細かくして炒めるだけでなく、お味噌と絡めてあるので。
   榛名も…その、味見した時に分からなかったので、これだったら…と、思って。


   …。


   ……。


   榛名。


   …はい。


   有難う、とても美味しい。
   とても、美味しかった。


   ……ああ。


   じゃあ、二つめを…。


   ……。


   …これは。
   ごまと昆布、ですね。


   …はい、然うです。


   うーん……。


   …。


   ……これも、美味しい。


   ああ、良かった…。


   先程の肉味噌のも然うですけど、出来れば、もう少し大きなおにぎりで食べたかったな…。


   夜なので…あまり食べ過ぎるとお腹に負担が掛かってしまいますから。


   うん…でも少し、物足りない。


   姉さま。


   うん?


   朝やお昼だったら、これよりももっと大きなものを作ります。
   だから…どうか、今はこれで我慢して下さい。


   …。


   …。


   …はーい、榛名。


   …ッ。


   三つめ、頂きますね。


   ……は、い。


   ……。


   …。


   …んん、これは鮭だ。


   …はい、鮭です。


   定番の梅干しかなぁ、って思ったんですけど。


   …姉さま、酸っぱいのも苦手ですよね?


   はい…苦手です。
   あの酸っぱさは…どうにも慣れません。


   …ふふ。


   ……鮭以外も、入ってる?


   はい…若布が。


   ああ。


   …余計、だったでしょうか。


   いや…鮭ととても合ってる。
   美味しい。


   ……良かった。


   …。


   …。


   榛名は、凄いね。


   え?


   料理、どんどん上手になってる。
   鳳翔さんの教えの通りだけじゃなくて、自分なりに工夫もするようになって。
   此処に来て未だ、三ヶ月も経っていないのに。


   そ、そんな事は…。


   …。


   …榛名は、ただ。
   食べて欲しいひとが、居るから…だから。


   榛名が、若しも、ひとのこの女の子だったら。


   …?


   良いお嫁さんになるんだろうね。


   ……およめ、さん。


   …いや、今は艦娘でも。
   ああ、でも……。


   …。


   ……榛名が誰かに嫁ぐ事になったら。
   多分、私は…。


   榛名は。


   …。


   榛名は、何処にも行きません。
   榛名は…他の誰かの元になんて、行きません。


   …。


   …榛名は、比叡姉さまのお傍にずっと居ます。
   ずっと、ずっと、姉さまの…隣に、居ます。
   だから…。


   …。


   …だからどうか、そんな事を言わないで下さい。


   ……榛名。


   どうか、榛名をお傍に置いて下さい。
   …どうか。


   ……。


   ……。


   …。


   …ごめんなさい、姉さま。


   …どうして?


   榛名…分からない事を。


   …。


   ……ごめんなさい。


   …私には、勿体無いよ。


   …。


   ……だけど、榛名が私の傍に居て呉れたら嬉しい。


   比叡姉さま……。


   ……。


   ……榛名は、ずっと、比叡姉さまのお傍に。


   …うん。


   ……。


   ……え、と。


   …。


   …ご馳走様でした、榛名。


   …はい、お粗末様でした。


   ……さて。


   …あ、姉さま。


   ん…?


   ご飯粒が…。


   …え、本当に?


   はい…本当です。


   うわ、そんな、幼子みたいな…。


   口の、此処に…あの、動かないでいて下さいますか。


   いや、自分で…。


   …。


   ……。


   ……はい、取れました。


   う、うん…。


   …ふふ、姉さま可愛い。


   ……。


   あ…ごめんなさい。


   …榛名、手、そのまま。


   え……あ。


   ………。


   …え……え?


   ……ごちそうさま、でした。


   …ッ!


   …戻る支度、します。
   えと、待ってて呉れますか。


   ……。


   …。


   ……。


   ……えと、ごめん。


   …あ、あの。


   …。


   ……おそまつさま、でした。


   …。


   …。


   …直ぐ、支度するから。


   ……はい、お待ちしています。








   ...Дон'т бе афраид тхе даыбреак хас цоме оут,
   Тхерэс но цуртаин цалл,


   …。


   Но регрет аре неедед амонг тхе wорлд оф ёу анд И
   Ёу кноw....


   …。


   …。


   …Sorry、霧島。
   邪魔をしてしまいマシタネ。


   …金剛お姉さま。


   Knockはしたけど、聞こえなかったみたいネ。


   …すみません。


   比叡は道場から未だ戻ってナイ?


   …はい。


   榛名も未だナンデス。
   行き先の見当はついてるから、心配は要らないとは思いマスガ。


   いつもの事ですから。


   …然うネ。


   姉さんに何か御用時でもあるのですか?


   No、用事があるのは霧島の方ヨ。


   私…ですか。


   Yes。
   今、一寸良いデスカ?


   はい…大丈夫ですが。


   Thanks、霧島。


   いえ…。


   …。


   …。


   美味しそうですネ、そのおにぎり。
   霧島が作ったノ?


   …少し、小腹が減ってしまったので。
   鳳翔さんに言って、分けて頂きました。


   …然う。


   お姉さま、宜しければ…


   本当に?


   …え?


   そのおにぎり、本当に霧島が自分で食べる為に作ったノ?


   …然うですが。


   三つも?


   …今まさに、作り過ぎてしまったと思っていたところです。
   この時間に三つも食べたら流石に食べ過ぎだと…。


   然うネ、流石に食べ過ぎヨ。


   …なので、宜しければお姉さま。


   私もこの後はもう、眠るだけダカラ。


   …ですよね、すみません。


   だから、一つだけ貰いマス。


   あ。


   ……うん、美味しいネ。


   えと…有難う御座います。


   このおにぎりの中身は昆布デスネ。
   比叡が好きなものデース。


   …私も好きなので。


   …。


   ……。


   霧島。


   …何でしょうか。


   本当に良いノ?


   …はい、勿論。
   ひとりでは食べきれな


   比叡に作ってあげたのではなかったノ?
   小腹を空かして戻ってくるであろう比叡の為に。


   …お言葉ですが、お姉さま。
   それは、違います。
   あくまでもこのおにぎりは私が食べる為に作ったものです。


   見ているだけでは、待っているだけでは、何も、起こらない。
   何も、起こせない。


   …。


   榛名も、貴女も。
   私の可愛い妹デス。
   出来れば、悲しむ顔は見たくアリマセン。


   …私は別に悲しいとは思っていません。
   思った事もありません。


   …。


   …金剛お姉さま。


   Sing a song。


   …。


   比叡はいつも、歌ってマス。
   榛名も、そんな比叡を見て、比叡と一緒に。


   …比叡姉さんの歌好きは、金剛お姉さまの影響だと思います。
   お姉さまの歌はとても綺麗ですから。
   だから姉さんはお姉さまのように…


   始まりは然うだったとしても。


   …。


   今の比叡を見ていると、とても楽しそうに歌ってマス。
   私の影響ではなく、自分で歌の素晴らしさを見つけたかのように。


   …。


   それは間違いなく、榛名が来てから…No、榛名が来たから。
   私には然う、見えるのデス。


   ……榛名。


   霧島、貴女はこのままで良いノ?


   …。


   …。


   …私は、見てしまったんです。
   榛名が来た時、比叡姉さんが…それまでに一度も見た事が無い表情をしたのを。


   …。


   ……そして私には到底、あの間には入れそうにないと言う事も。


   …霧島。


   …。


   …。


   …本当に遅いですね、ふたりとも。
   何をしているんでしょうかね。


   ……ええ、然うネ。
   夜更かしはNoって、教えてあげないと駄目カシラネ?


   ふふ…かも知れません。
   私が言うよりも金剛お姉さまに言われた方が効くと思うので、是非とも、きつく宜しくお願いします。


   私は好きヨ。


   …?
   お姉さま?


   霧島、貴女の歌も。


   ……。


   だからもう少し、聞かせて下さいネ?


   …はい、お姉さま。
   霧島の歌で、良ければ。


   Thanks…霧島。








   …はぁ。


   ……息が。


   もう、冬ですから。


   …寒いと息が白くなるのですね。


   もっと寒くなれば、凍りそうになりますよ。


   凍る……。


   榛名にとっては、初めての冬ですね。


   …はい。


   幌筵(ここ)の冬は兎に角長いんです。
   天候によっては出陣も出来なくなる…。


   …。


   …寒くはないですか。


   はい…大丈夫です。
   姉さまが…。


   …。


   姉さまが、手を繋いでいて下さるから。


   それでも寒いでしょう。
   何しろ、初めての冬なのですから。


   …。


   ふねの頃には無かった感覚で…慣れるには、時間が必要だと思います。
   …これを。


   あ…。


   …少しはましになれば良い、と。


   で、でも、これは姉さまの…。


   …私なら、大丈夫ですから。
   使って下さい。


   ……。


   …あ、若しかして汗臭いですか。


   ……いえ。


   外套ならば、と思ったのですが…。


   …姉さまの匂いが、します。


   …。


   ……榛名、この匂いが大好きです。


   …榛名は私の匂いが好きなの?


   …。


   …。


   ………はい。


   …そっか。


   …。


   ね、姉さま。


   …ん?


   ………。


   …榛名。


   ……。


   ……榛名。


   …ごめんなさい。


   いや…その、腕を組むのは構わないのですが、汗臭くはないですか。


   ……大丈夫です。


   …。


   …。


   …榛名が大丈夫なら、そのままで。


   ……はい、姉さま。


   …寒くはないですか。


   はい…姉さまの温度を感じているので。


   …。


   …榛名、安心します。


   温度じゃ、ないよ。


   …え?


   体温…って、言うんだよ。


   たいおん…。


   …体の温もりって書くの。


   からだの、ぬくもり…。


   …私も、今。


   姉さま…。


   …榛名の体温を、感じてるよ。


   ……。


   …。


   ……姉さま。


   星、降ってきそうだね。


   ……。


   え、と。
   ねぇ、榛名。


   …はい、姉さま。


   榛名が良ければ…だけど。
   たまにこうやって夜の散歩をしませんか。


   …。


   …いつもじゃ、ないですけど。
   寧ろ、いつもは無理ですけど…気が向いたらふたり、こうやって。


   ……。


   …。


   ……榛名、したいです。
   姉さまと、ふたりで…ふたりだけで。


   …じゃあ、しましょう。


   はい…喜んで。


   …。


   …姉さま。


   なに…?


   ……榛名、しあわせです。


   …。


   ……比叡姉さま。


   ……。


   …?
   姉さま……?


   …榛名、今誰かが海の方に行った。


   え…。


   …こんな時間に海に行くなんて。
   哨戒の交代…いや、だったらひとりなわけがない。
   そもそも、艤装も付けてなかった。


   艤装も付けずにひとりでなんて…。


   …海を見に行った?
   いや、でも…違う気がする。


   姉さま。


   …なんだろう、嫌なにおいがする。
   夜の闇に飲まれてしまう、そんな感じの。


   追いかけましょう、姉さま。


   榛名。


   行きましょう、早く。








   …居た!


   あれは…。


   …赤城さん?
   でも、どうして…蒼龍さんが付いている筈なのに。


   おひとりで何をしているのでしょうか…。


   …分からない。
   でも嫌なにおいが…寧ろ、強まっている。


   声を掛けた方が…あ。


   …!
   なんて事を…!


   姉さま…!


   榛名は、其処に!
   いや、誰かを呼んできて…!
   早く!!


   は、はい…!


   艤装が無ければ、私達は浮かぶ事が出来ない!
   泳ぐ事すら、出来ない!
   赤城さんが知らない筈、ないのに…ッ!


   …!


   …はぁッ。


   駄目です、姉さま…!!


   …気合、入れて、行きますッ!


   艤装が、無かったら…ッ!
   榛名達は…ッ!


   …。


   姉さま、駄目……ッ!!!


   ……。


   駄目ぇぇ…ッ!!!


   ……。


   姉さま…比叡姉さま…ッ!


   ……。


   あ……あ……。


   …。


   ……だれか、よばないと。
   よんで、こないと……。


   …。


   だれか…だれか……たすけて。


   …。


   ねえさまを…たすけて……だれか…だれか…。


   ……。


   ……ねえさま。


   …。


   …はるなも、すぐに。





   榛名、駄目ッ!





   ……。


   駄目よ、榛名。
   貴女まで沈んでどうするの。


   い、せ……。


   …蒼龍さんが赤城さんが居なくなったって探してたから。


   ああ、伊勢…ねえさまが…ひえい、ねえさまが…。


   もう、ほんと無茶して呉れちゃって!
   ゴーヤちゃん!





   任せろ!でち!!





   ……。


   ゴーヤちゃん、ふたりを見つけたら縄をふたりの躰に!
   出来るだけ、きつく!


   ……。


   榛名、貴女はこの笛を吹いて皆に知らせて。
   私ひとりでは空母と戦艦を同時に引き上げる事は出来ないから。


   …。


   榛名…ッ!!
   腑抜けてる場合じゃあ、ないでしょう…ッ!!


   あ…はい。
   はるなは、だいじょうぶです…。


   比叡を助けるの!
   絶対、助けるの!
   分かった!?


   …は、い。


   はい、笛!
   金剛と霧島に聞こえるよう、思い切り!!


   ……はぁ。





   ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ……ッ!





   良し!良い音!


   ……。


   後は私達に任せて。
   比叡も赤城さんも私達が必ず、引き上げるから。
   助けるから。


   ………伊勢。


   大丈夫、大丈夫よ。
   榛名。


   ………。


   たく、こんな時に日向が居たらなぁ!!
   あーーーもう!!!








   ……。


   …沈む…沈む……沈んで、ゆく…。


   ……。


   …赤城さん。


   ……。


   ……どうして、こんな事を。


   …。


   ……赤城さん。


   ……。


   …あぁ。


   ……、…。


   ……寂しいのですね。
   悲しいのですね…。


   …か……が…。


   …だから、傍に逝こうと。


   ………。


   …だけど、赤城さん。


   …。


   ……此処に、貴女が必要としているひとは屹度、居ません。


   …、……。


   ……それでも、貴女は。


   …。


   ……彼(か)のふねの傍に、逝きたいのですか。
   …それが、生まれ変わった貴女の、叶えたい事なのですか。


   …。


   …それでも、赤城さん。
   貴女が必要としているひと、は………。


   …。


   …沈む……沈ム………シズンデ、ユク……。


   …。


   ……あぁ、海面が、遠い。


   ………。


   …やっぱり、浮かばないんだなぁ。
   躰も…指一本すら、動かせない。


   …。


   ……金剛お姉さま、不甲斐無い妹で、まことに申し訳ありません。
   しかしながらこの比叡…貴女を誰よりも、お慕いしておりました。
   いつかまた、貴女のお傍に…。


   ……、……が…。


   …霧島、ごめん。
   書類整理、いつも手伝って貰ってばかりで……結局、駄目な姉のままだった。
   今度こそは、と思っていたのに……また貴女を残してゆく、いってしまう。


   ……ぁ…。


   ……。


   …、………。


   ………榛名。


   …。


   この姿に生まれ変わって、初めて、思った事。
   貴女に会って、話がしたい、と。
   あの頃に出来なかった事を…貴女と、してみたい、と。


   …。


   どうしてでしょう…他の比叡は、お姉さまの事ばかりだと言うのに。
   私は…私の中は、貴女の事ばかり、だった。


   …。


   …ふねの頃の、未練なのでしょうか。
   後悔、なのでしょうか……それとも希望、なのでしょうか。


   …。


   …榛名、若しかしたら私は一つの、小さな欠片なのかも知れません。
   「比叡」が遺した想い…貴女への、想い。


   …。


   榛名。


   …。


   榛名、榛名、榛名、はるな、ハルナ、ハルナ、ハルナ……。


   ………ぁ、…。


   …嫌だ、榛名。
   折角、逢えたのに……ずっと、待ってて、やっと、叶ったのに。
   未だ、やりたい事が、たくさん、あるのに………あるん、だ。


   …。


   ……艦長。


   …。


   …私はあの時未だ、生きていました。
   生きて、いたんです。


   ……か…。


   私は…生きて、いたかったんです。
   生きて、いたいんです…。


   ………。


   榛名……貴女と、今を。


   …が……。


   …。


   ……。


   ……わたし、がんばるから。


   …。


   ……みすて…、ない、で。








   気合…ッ!


   入れてぇ…ッ!!


   行くネェェーーーー…ッッ!!








   …。


   …。


   …。


   …少し、休んだら?


   …。


   …酷い顔、してるわよ。


   …。


   …貴女のそんな顔を見たら、どう思うか。
   容易に想像出来るでしょう。


   …。


   …。


   …。


   ……そんなにこのひとのことが、好き?


   …。


   この姿で再会…出逢って未だ、三ヶ月も経っていないと言うのに。
   そんなにも、想えるものなの。


   ……。


   漸くこっちを見たわね。


   ……然うよ。


   …。


   …私はこのひとが好き。
   どうしようもなく。


   …実の姉よ、このひとは。


   知ってるわ。
   でも、それが何。


   …。


   ……貴女はあの戦の時、このひととずっと一緒だった、一緒に居られた。
   でも私は…ほんのひと時しか、一緒に居られなかった。


   戦前は…いえ、感情があったわけではないでしょう。
   それなのに


   いいえ、あったのよ。


   …。


   …屹度、誰しもが。


   それは、この姿になったから言える事。


   …。


   ただ、それだけの事。


   …私、貴女のそういう所が好きじゃないわ。


   …。


   どうして、貴女だったの。


   …一つ言えば、速力の問題。


   …。


   もっと言えば。
   私が望んだわけではないし、然う決めたわけでもないわ。


   じゃあ、今は?


   …今ですって。


   私よりも先に此処に来て。
   私よりもこのひとと一緒に居た。


   …。


   このひとと、どんな時間を過ごしてきたの。
   このひとと、どんなお話をしてきたの。
   このひとと一緒に、苺のアイスを食べて。
   このひとと、笑い合って。
   このひとと…。


   …それを聞いて、どうするの。
   それを私が言うと、思っているの。


   ……。


   …。


   …どうもしないし、思ってもいないわ。


   ……そんなにも、このひとのことが好きなの。


   その言葉、そのまま貴女に返すわ。


   ……。


   …でも、もう。
   ここは、譲らない。
   何が、あっても。


   ……実の姉に恋い焦がれて。


   …。


   …どうか、しているわ。


   ……実の姉だとしても。


   …。


   …どうしようも、ないの。


   ……難儀ね。


   …貴女には言われたくない。


   言って、おくけれど。


   …。


   …私は貴女が思っているような感情を、このひとに抱いた事はないわ。
   ただの一度も。


   うそつき。


   …。


   ……でも、譲れない。
   このひとが…仮令、私を望んでいないとしても。


   …。


   …私はもう、離れない。
   離れたくないの。
   一緒に居たいの。


   ……それは、無いわ。


   …。


   このひとがどれだけ、貴女を…あんたを待っていたか。
   あんたには分からないでしょうね。


   …。


   …どうして、かしらね。


   …。


   …どうしてそこまで、想えるのかしら。


   ……何処かの「私」は。


   …。


   「このひと」にこんな感情を抱いていないかも知れない。
   恋い焦がれていないかも知れない。
   然う、他の誰かを想って……或いは、誰も想っていないかも知れない。


   …。


   屹度、「私」の数だけ…それは、在るの。


   …。


   ……そして、私は。


   …。


   …初めて、逢った時。
   私はこのひとに逢う為に…生まれてきたのだと。


   …陳腐ね。


   …。


   もっと簡単に言えば良いのよ。
   一目惚れした、と。


   ……。


   …最期の時に、一緒に居られなかったから。
   居られなかったから、こそ。


   …。


   ……どうしようもなく、惹かれ合ってしまうのかも知れないわね。


   …私は。


   ……。


   …誰よりも、このひとの事が好きなの。


   ……。


   どうしようもなく…好きになってしまったの。
   このひとが…このひとだけが、恋しいの。


   …。


   ……このひとに、ずっと、ずっと、あいたかったの。
   あって……わたしを、わたしだけを、みてほしかったの。


   …。


   ……わたしといっしょに、ずっと、いてほしかったの。
   ずっと、いっしょに、いて、ほしいの…。


   …。


   ………比叡姉さま。


   …心配しなくても、起きるわよ。


   …。


   知ってるでしょ…姉さんは寝る事が好きだと言う事を。


   …。


   もっと言えば…寝坊助だと言う事も。


   …知ってる。


   ……たった三ヶ月で。


   …。


   ……時には叩き起こしてやらないと駄目なのよ。


   …。


   …そうじゃないと、幾らでも寝てるから。


   ……。


   …甘やかせば良いってものじゃ、ないわ。








   …。


   …榛名。


   …。


   榛名、どうしたの…?


   ……。


   どうして、泣いているの…?


   ……ひえい、ねえさまが。


   私…?


   ねぇさまが、かえってこないの…。


   …私なら、此処に居るよ。


   かえってこないって…こんごう、おねえさまが。


   ううん、此処に居るよ。
   さぁ、榛名…。


   もう、かえって、こないの…。
   うみのそこに、しずんで、しまったの…。


   …海の?
   いや、そんな事は…だって、私は此処に。


   もう、あえないの…もう、だっこしてもらえないの…もう、あのおおきなてで、なでてもらえないの…。


   榛名、榛名、私は此処に、此処に居るよ。


   ……ぅ。


   榛名、はるな、榛名、はるな………。


   …………。


   泣かないで、榛名…。
   泣かないで……。









   …。


   ………は、…る…な。


   …。


   ……は…る、な。


   ねえ、さま……。


   …はる、な……。


   ひえい、ねえさま……。


   ……はるな。


   …あぁ。


   …はるな、わたしは、ここに。


   あぁ、あぁ、あぁぁぁぁ……。


   ここに、いる、よ……。


   …。


   ……なかないで、はるな。


   …。


   はるな……なかないで。
   わたしは、ここに…。


   …。


   ……榛名。





   泣かせたのは比叡姉さん、貴女です。





   ………え。


   ……。


   きり、しま…。


   いつまで寝ているおつもりなのですか。


   …。


   大概にして呉れませんか、比叡姉さん。


   …ごめん、なさい。
   それで…きりしま。


   何ですか。


   …わたしが、はるなを、なかせたって。


   それを私に聞くんですか。


   …………。


   ご自分が何を仕出かしたのか、まさか、夢を見てましたの一言で片付けるおつもりではないでしょうね。


   ……。


   …まさか、本当に。


   ……ちゃんと、おぼえてる。
   いや……思い、出した。


   なら、良いですが。
   …と、私が言うと思いますか。


   …思わない。


   ひとのこだったら。
   今頃、指の何本か、若しくは手足のどれかを、或いは命そのものを、失っていたかも知れません。


   ……。


   初冬とは言え、冬の海に何も考え無しに飛び込むなんて。
   阿呆を通り越して、ただの莫迦です。


   …うん。


   艤装が無ければ、私達の躰は沈んでゆくだけ。
   それは、艦娘であれば、誰でも当たり前に知っているものだと言うのに。
   それなのに、姉さんは。


   …だけど、躰が動いたんだ。


   ええ、ええ、でしょうね。
   それこそ、気合で何とかしようと思ったんでしょうね。
   頭よりも躰が先に動いてしまうような、そんなひとですものね。


   …。


   だけど現実はどうですか。
   現実は…助けるどころか、ただ、ただ、一緒に沈んでいって。
   妹を…あんなに待ち望んでいた榛名を、泣かせて。


   ……。


   …本当に。
   本当に、





   もう、止めて。





   …。


   止めて、霧島。


   …言うべき時に言わなければ意味が無いのよ。
   でなければ…何も変わらない、変えられない。


   然うだとしても。
   今の比叡姉さまに言うべきじゃない。
   目を覚ましたばかりの姉さまには。


   榛名。


   霧島。


   貴女は


   甘やかして、何が悪いの。


   悪いわ。


   少なくとも、今の姉さまに必要なのはお説教でもましてや小言でもないわ。


   また、繰り返すわ。
   繰り返すのよ。
   貴女はそれでも良いと言うの。


   だとしても、それが姉さまならば、私は


   震えながら、泣いていたのは誰。


   …っ。


   榛名、口ではなんとでも言えるわ。
   でも躰は?心は?
   若しもあんな事で「姉さま」を失くしていたら…今頃、貴女はどうなっていたの?


   ……。


   だんまり?


   …そうなったら。
   榛名は、私は…


   そして、私達は金剛型をふたり、失くすの?
   貴女達はそれでも良いかも知れないでしょう。
   でもそれで良いのは貴女達だけなのよ。


   ……それでも、私は。


   そんなの、ただの自己満足じゃない。
   世界は貴女達ふたりで





   榛名、霧島。





   …比叡姉さま。


   泣かせてごめん、榛名。


   榛名は…榛名は…。


   …心配させてごめん、榛名。
   心配して呉れて有難う、榛名。


   姉さま…。


   傍に居て呉れて…有難う。


   ……。


   それから。
   ごめん、霧島。
   そして、有難う。


   …いえ。


   霧島。


   …姉さんが目を覚ました事を鳳翔さんに伝えてきます。
   金剛お姉さまも其処に居らっしゃる筈ですから。


   うん…分かった。
   じゃあ、また。


   ……ええ。








   ……。


   ……。


   …はる


   …ひえ


   …。


   …。


   …何ですか、榛名。


   あ…いえ、榛名は何でもありません。


   ですが、今…。


   ……。


   …赤城さんは無事ですか。


   ……はい。


   然うですか…良かった。


   …姉さまが。


   私は結局、何も出来ませんでした。
   それどころか…


   …いいえ、そんな事はありません。


   ……榛名にこんな顔をさせてしまって。


   …榛名は、大丈夫です。
   姉さまが…目を、覚まして呉れたから。


   …。


   …姉さまは何も出来なかったわけではありません。


   え…。


   赤城さんの方が軽傷だったんです。


   …。


   ……姉さまの方が、酷かったんです。


   …私の方が。


   …凍傷の程度は、姉さまの方がずっと、酷かった。


   凍傷…ああ、だから霧島は。


   …姉さまに抱かれていた赤城さんは、姉さまの体温で。


   ……。


   それから…赤城さんの方が先に、気付かれたそうです。


   ……然うですか。


   …。


   …榛名、赤城さんを悪く思わないで下さい。


   ……思っては、いません。


   赤城さんは…多分、寂しいのです。


   …。


   流石にあの行動には驚きましたけど…。
   でも…それだけ、赤城さんの心は傷付いているのかも知れません。


   …。


   …誰しもが屹度、傷付いた心を抱えていて。
   そして…それを癒せるのは、その心が望んだものだけなのかも知れません。


   ……赤城さんは。


   一航戦。


   …。


   …彼女達は常に一緒だった。
   ふたりで支え合って、あの時代を生きていた。
   それは…榛名も知っているでしょう。


   …。


   …だから赤城さんは生きて、彼のひとが来るのを待っていなければいけないんです。
   今の生を、終わらせてはいけない。


   …姉さま。


   私は、榛名。


   …。


   …貴女をずっと、待っていました。
   だから…分からないわけでは、ないんです。
   ただ、私には金剛お姉さまが居て…そして、霧島も来て呉れた。
   私は独りではなかった。


   …。


   けれど、赤城さんは。
   蒼龍さんや…鳳翔さんにさえ、心を閉ざしたままで。
   誰にも心を開かない、開こうとしない。
   だからと言って無理に開こうとすれば…赤城さんは本当に、壊れてしまう。
   然う、思うのです。


   …。


   聞いた話によると…赤城さんは向こうに居た頃、良い扱いを受けていなかったそうなんです。
   いつまでも心を開こうとしないから、壊れたふねとされて。
   「兵器」としても…「人形」としても役に立たないとして、解体まで、考えられて……結局、幌筵(ここ)に「押し付けられた」。


   ……。


   …然うさせたのは、ひとのこ、だとしても。


   ……。


   ……。


   …。


   …沈んでゆく時、貴女を想いました。


   …。


   榛名、貴女の事を。


   …。


   …ただひたすら、貴女の名前を呼んで。
   このまま終わりたくないと…強く、思ったんです。


   …。


   榛名……。


   ……。


   …私の名を、呼んで呉れませんか。


   …。


   私の名を…。


   ……比叡、姉さま。


   …名だけを。


   …。


   出来れば…貴女の姉としてではなく。


   姉としてでは、なく…。


   ……私の名、を。


   ……比叡、


   …。


   …比叡、さん。


   ……はい、榛名。


   比叡さん…。


   …はい。


   ……怖かった。


   …。


   怖かった、です……。


   …うん。


   大丈夫なんか、じゃ……。


   榛名。


   …大丈夫なんかじゃ、なかった。


   ……。


   榛名は、何も、出来ませんでした…。
   霧島の言う通り、震えて、泣いている事しか…出来なかった。


   …然うでしょうか。


   …。


   ずっと傍に居て呉れたんじゃないのですか…?


   …それは。


   それは…?


   …それしか、榛名には出来なかったから。
   いいえ、違います…然うして、いたかったら。
   少しでも、姉さまの傍に居たくて…触れていたくて……。


   …十分だよ、榛名。


   …。


   貴女が傍に居て呉れた…私はそれが、嬉しくて仕方無いのです。


   …。


   …心の底から然う、思ってしまえるくらいに。


   比叡さん、榛名は…私は貴女を、失くしてしまったら。


   …手を、榛名。


   え…。


   …繋いで呉れませんか。


   手を…。


   …貴女の熱を、私に呉れませんか。


   私の…。


   ……呉れませんか。


   …でも、未だ指が。


   だから、手の平に。


   …。


   貴女の熱が欲しいんです。
   どうしても…どうしても。


   …。


   …子供染みた我儘かも知れません。
   呆れられるかも知れません…それでも。


   ……。


   榛名…どうか。


   …私の熱で、良いのですか。


   榛名の熱でなければ…欲しいと思わない。
   欲しく、ないのです。


   …。


   榛名…私に、貴女の熱を分けて下さい。


   ……幾らでも。


   …。


   私の熱で良ければ…幾らでも、差し上げます。


   …。


   比叡さん、貴女が望むのなら……この命さえ。


   …駄目ですよ、榛名。


   ……。


   命は…どうか、大事にして下さい。
   言ったでしょう…?
   今の生を、終わらせてはいけない…と。


   …でも、私は。
   貴女が居ない世界で生きてゆく事は…出来ない。


   …。


   …出来ないんです、比叡さん。


   榛名……。


   …貴女が全てになってしまった、その時から。


   ……。


   …貴女は私の全てなんです。


   ……。


   ………貴女を、愛しています。


   …。


   ……初めて逢った、その時から。


   …。


   …愛して、います。


   …。


   …。


   ……私はまた、貴女を泣かせてしまうかも知れません。


   …。


   …私達は艦娘です。
   人に使われる、兵器です。


   ……。


   …明日の約束すら、出来ない存在で。


   ……明日の約束なんて、要らない。


   …。


   今…今、この時に。
   貴女に…愛されて、いれば。
   私を、私だけを、愛して呉れるならば。


   …。


   ……それだけで、私は。


   …欲がありませんね、榛名は。


   …。


   ……それでも、私は貴女との約束が欲しい。
   明日、一週間後、一ヶ月後…一年後、十年後…ずっと、ずっと、その先も。


   …。


   ……駄々っ子みたいでしょう、私は。


   …だだっこ。


   なかなか性質が悪いと思いますよ、躰は戦艦、けれどその心は駄々っ子みたいだなんて。


   …ふふ。


   …。


   あ……ごめんなさい。


   いいえ…良いですよ。
   本当の事ですから。


   …けれど、榛名は。


   ……。


   …そんな貴女が愛おしいです。


   ……。


   ……比叡さん。


   …はい。


   望んでも良いでしょうか…?


   …。


   …約束を。
   貴女との約束を…。


   ……寧ろ、望んで欲しいと。


   …。


   …泣かせてしまうかも、知れませんが。


   …。


   でも、その…出来るだけ、然うならないように頑張りますから。
   いえ、凄く、頑張りますから…だから。


   比叡さん。


   は、はい。


   思ったのですけど、それはお互いさまではないでしょうか。


   え…?


   …私も艦娘なのですから。


   …。


   …それとも比叡さんは泣かないと言う事なのでしょうか。


   ……いや、それは無いです。


   …。


   …。


   ……比叡さん、私を。


   愛しています。


   …。


   榛名…貴女を、心から、愛しています。
   初めて逢った、その時から。


   ……。


   …貴女さえ傍に居て呉れれば。
   他に何も要らない…と、思ってしまうくらいに。


   ……金剛お姉さまや霧島さえもですか?


   え…。


   …。


   ………。


   …。


   …………。


   …比叡さん、考え過ぎです。


   ……内緒にして呉れませんか。


   …どうしましょうか。


   ……。


   ……ふたりだけの秘密にしても、良いのなら。


   …寧ろ、して下さい。


   ……じゃあ、然うしますね。


   …榛名って、意外に。


   ふふ…。


   ……。


   …。


   ……榛名。


   …はい。


   私と。


   …。


   私と…。


   …。


   ……生きて、下さい。


   …。


   …。


   …榛名はずっと、貴女と共に。


   私の傍に…居て、呉れますか。


   …はい、榛名はどんな事があっても貴女のお傍に居ます。
   明日も、一週間後も、一年後も、十年後も……その先も。
   ずっと、ずっと、ずっと、貴女のお傍に…。


   ……。


   …ずっと、貴女だけを愛して。


   榛名……。


   ……比叡さん。


   好きです……愛してる。


   …比叡さん。


   もう、ただの姉妹には…。


   …戻れなくても良い、と。


   …。


   …戻りたく、ない。


   ずっと…一緒に。


   ……はい。


   …離さない。


   ……離さないで、どうか。


   ……。


   ……。


   …榛名。


   比叡さん…。


   ……。


   ……。








   ………。


   …。


   ……。


   Hey、霧島。


   …。


   中に入らないノ?


   …金剛お姉さま。


   お寝坊さんの様子はどうデスカ?
   そろそろ起きても良い頃だと思いマスガ。


   …。


   …?
   霧島?


   …比叡姉さんは目を覚ましました。
   それを今、伝えに行こう、と…。


   …。


   …すみません、お姉さま。


   Why?
   何故、謝るノ?


   …。


   謝らなくて良い時に謝るのは、No、ヨ?


   ……直ぐに行くべきでしたのに、私は。


   …。


   …。


   …榛名は?


   …中に居ます。
   比叡姉さんと、一緒に。


   然うデスカ。
   結局ずっと、離れなかったのデスネ。


   …凍傷の修復状態も問題ありません。
   スペアの指も要らないでしょう。


   然う。
   それは何よりネ。
   馴染むのに時間が掛かるから。


   …。


   霧島。


   はい、お姉さま。


   ふたりは今、一緒に居るのネ?


   …はい、一緒に。


   良いノ?


   …何がでしょうか。


   あの子が来るまで、傍に居たのは貴女だった。
   それを簡単に譲ってしまって。


   …。


   本当に、良いノ?


   …私は妹として。


   …。


   妹として、傍に居ました。
   あの頃も、今も、そしてこれからもそれは変わる事はないでしょう。


   あの子も妹に変わりないワ。


   いえ。


   …


   …もう、違います。


   …。


   もう、ふたりは…。


   ……貴女は随分と損な性分をしてマスネ。


   …。


   諦めたら、そこでお仕舞い。
   分かってマスカ?


   最初から。


   …。


   そんなつもりは、ありませんでしたから。


   ……恋に震えるたびに。


   …?
   お姉さま…?


   初めての気が、するから。


   …。


   …霧島。


   ……はい。


   私達に心がある限り。
   誰かに恋をするのは、恐らく、一度きりではないでしょう。
   けれど…。


   ……。


   …それが破れる時の痛みは、いつだって、辛いものです。


   お姉さま…。


   …。


   お姉さまは…。


   と、読んだ本には書いてありマシタ。


   ……。


   霧島…どうか、貴女に幸多からん事を。


   ……。


   たまには飲みまショウカ。
   比叡は修復中、榛名は付き添い…ならば、ふたりで。


   …はい、お姉さま。
   ですが、その前に…。


   ん?


   鳳翔さん、そして司令に報告しに行かないと。


   Oh…。


   今回の件、どう処分されるでしょうか。
   姉さんは兎も角として…。


   …。


   …金剛お姉さま?
   何方に…。


   霧島は先に行ってて下サイ。


   ですが、其方は…。


   霧島、宜しくネ。


   ……。


   …。


   ……霧島、了解致しました。








   ……。


   …。


   …はぁ。


   …。


   Hey chick, how is the condition of the body?


   …。


   My dear sister woke up a while ago.
   Her damage was more terrible than you.


   …。


   Why did you do something like that?
   What meaning does it have?


   …。


   …。


   …。


   ...It is not only you.


   …。


   It is not only you to be lonely, to be hurt.


   …。


   You are.....you are not alone.


   ....What do you understand.


   …。


   What of me do you understand...?


   I understand nothing.
   Because you tell nothing to us.


   …。


   …。


   ...Don't.


   …。


   Do not get away by living.


   ……。


   …。


   …。


   …赤城さん。


   …。


   今はゆっくり、休んで下さい。
   妹程ではないにしろ、それなりの損傷はしているのだから。


   ……私の処分は。


   雷撃処分の命令は出ていません。


   …して呉れれば、良いのに。
   こんな出来損ない、生かしておいても仕方無いのだから。


   それは貴女が決める事ではないから。


   …。


   私達は所詮、使われる身だと言う事。
   分かっているでしょう。


   ……くだらない。


   然うですね、けれど、それが現実なのですよ。
   今も、そして、あの頃も。


   ……。


   ...But.


   …。


   Even if I am a weapon, now, my life is mine, only for me.
   Human forces their own convenience upon me, and I won't die for it.


   …。


   …生きていれば。


   …。


   生きていれば…いつか屹度、逢える。
   けど、終わらせてしまったら……何も、出来ない。
   何も、叶わない。


   …叶いますよ。


   …。


   …眠る事が出来る。
   あのひとの傍で、ずっと。


   それは所詮、夢想でしかないわ。
   少なくとも、あんな場所に貴女が求めているひとは居ない。


   …。


   …。


   …貴女の妹。


   妹が、何。


   ……本当にお節介ですね。


   お人好しなだけ。
   阿呆が付く程の。


   …。


   …。


   ……莫迦みたいだわ。


   …。


   …本当、に。


   私の妹を愚弄する事は、赦さないわ。


   ……。


   …。


   …莫迦みたい。








   …ねぇ、榛名。
   聞きたい事があるんですが…良いでしょうか。


   はい、榛名で答えられる事ならば…なんでも。


   …。


   …。


   …榛名はどうして、私を好きになって呉れたのですか。


   どうして……?


   …。


   ……好きになったから、です。


   好きになったから…?


   …それ以上の答えを、私は多分、持っていません。


   ……好きになったから。


   比叡さん。


   …はい。


   比叡さんは、どうして…私の事を、好きになって呉れたのですか。


   …。


   …どうして、待っていて呉れたのですか。


   ……どうしようもなく、好きになってしまったから。


   …。


   …ああ、本当だ。
   これ以上の答えなんて見つからない……見つかりそうも、ない。


   比叡さん……。


   …。


   …。


   …私がこの世界に、生まれ落ちた時。
   私の中に、穴が、開いてた。


   穴……。


   その穴は、何を見ても、知っても、食べても、埋まる事は無かった。


   …。


   金剛お姉さまを慕っても、霧島を大事に想っても。
   その穴は、塞がらなかった。
   でも、一つだけ………然う、たった、一つだけ。


   …。


   ふねの頃の貴女の写真を見つけた時。
   ふねの頃の貴女について書かれた本を読んだ時。


   …。


   何度も何度も、読み返した、少しでも、貴女の事を知る為に。
   貴女が生まれた時の事、初めて逢った時の事、共に遠征に行った時の事、貴女が事故を起こした時の事、
   あの戦では別々に行動していた事、貴女が最後まで生き残った事、そして、それからの貴女の事。


   …。


   辿るように、なぞる様に、私は、貴女の姿を追いかけた。
   然うする事で、少しずつだけど、その穴は塞がっていった。


   …。


   私がこの姿でこの世界に生まれてきたように、いつか、貴女が生まれてくる事を。
   生まれてきて呉れる事を、いつも、いつも、願っていた。


   …。


   …逢いたかった。
   ただ、逢いたかった…榛名に、貴女に、逢いたかった。
   だから、待ってた、ずっと、待ってた…。


   ……。


   私は、榛名が好きだったんだ。
   恋を、していたんだ、生まれてきた時には、もう。
   あの穴は…貴女を求めている証拠に他ならなかったんだ。
   だから、一目惚れのようにして、貴女に恋をしたんだ。


   ……。


   …榛名が、好きだ。
   大好きだ…愛してるんだ、どうしようもなく。
   理解が追い付かないくらいに、求めてるんだ。
   理屈とか、理由とか、そんなの、分からないんだ。
   ただ、ただ、好きなんだ…愛してるんだ、どうしようもないんだ。


   ……あぁ。


   榛名が、愛しい…欲しくて、欲しくて、堪らない。
   心を、抑えられない、抑え切れない…。
   だってこの穴を塞げるのは、榛名だけなんだ…。


   …比叡さん。


   榛名、どうしたら、全部、伝えられる…?
   どうしたら、良い…?


   ……好きにすれば良いと思います。


   好きにする…?


   貴女の、心が思うままに……榛名を、愛して下さい。
   私を、求めて下さい。


   ……。


   ……私も、貴女が好きですから。
   大好きですから…愛してますから、どうしようもなく。
   私は、榛名は、貴女に愛されたい…どうしようもなく、求められたい。
   貴女を、求めたい…その気持ちを、抑える事なんて、出来ない。


   あぁ、榛名…。


   …屹度、私は貴女の声に呼ばれて此処に来たんです。
   待たせてしまいましたけれど…それでも、貴女の想いに応じる為に…貴女の心を満たす為だけに。
   私は最初から…貴女の榛名として、貴女を愛する為だけに、生まれてきたんです。
   だから、私も…生まれる前から、貴女の事を、貴女の事だけを、求めていたんです。


   ……。


   …いいえ、ふねの頃から、私は貴女を愛してた。


   …榛名。


   私が欲しいと思うのは…比叡さん、貴女だけです。
   私は、比叡さん…貴女だけのものです。


   榛名………。


   だから…私を、愛して下さい。
   そうして…全部は無理かも知れません、無理かも知れないけれど…貴女の愛を私に教えて下さい、与えて下さい。
   貴女の想いを、伝えて下さい。


   …。


   …私も、伝えますから。
   私の全てを使って、伝えますから…。


   …約束を、しよう。


   …。


   時間が掛かっても…必ず、伝えると。


   …。


   この生のすべてを、懸けて。
   榛名、私は貴女を愛するから。


   …約束を、しても良いですか。
   期待をしても、良いですか…。


   ……榛名。


   …。


   …きれいだ、榛名。


   そんな事…。


   …こんなにきれいな涙を、私は見た事がない。
   だけど…また、泣かせてしまった。
   ごめん、榛名……ごめんなさい。


   いいえ…いいえ……。


   …。


   …。


   ……ねぇ、榛名。


   はい……。


   …これからはふたり、一つの布団で眠りませんか。
   躰を、寄せ合って……眠りませんか。


   …。


   …離れてる夜も、あるだろう。
   一緒に居られない夜も、あるだろう。
   でも、一緒に居られる時は……ふたりで。


   …あなたのぬくもりに、だかれて、ねむれたら。
   ねむれるのなら…。


   …。


   ……はい、よろこんで。








   ん〜〜。


   …。


   良いねぇ、良いねぇ、若いねぇ。
   て、言うのかな。ふたりとも、私よりも上だけど。


   伊勢。


   お、金剛。


   何をしているのデスカ?


   や、まぁ、様子を見にね。
   でも、大丈夫そうだったから。
   金剛は?


   私も様子を見に。


   因みにあの甘ったるい中には入れた?
   あの砂糖菓子に更に砂糖を塗しまくったようなさ。


   No.


   あはは、だよねぇ。
   入れないわよね、あれは。


   心配要らないみたいネ。


   うん、あれは要らないね。
   そっちはどうだった?


   …まだまだ、時間が必要デスネ。
   もう暫く、目が離せそうにはないデス。


   うーん、そっか。
   ま、仕方無いかなぁ。


   あの子はまだまだ幼い女の子なので、仕方がアリマセン。


   あはは。
   で、霧島はどう?大丈夫そうかな?


   あの子なら、大丈夫デスヨ。


   然う?


   私の妹はそんなに軟ではないワ。


   なら、良いけど。
   結構、きっついらしいからさ。


   暫くは駄目かも知れないケド。


   て、駄目なんじゃん。


   でもいつまでも引き摺ったりはしませんヨ。


   とりあえず今度、飲みに誘ってみようかな〜。


   然うして呉れると嬉しいデスネ。


   はい、じゃあ然うします。


   …。


   んー、いつが良いかな。


   伊勢。


   ん?


   有難う、伊勢。


   お…


   妹達を助けて呉れて。


   英語じゃない。
   しかも訛ってない。


   そういう時もアリマース。


   お、元に戻った。


   この方が話し易いネ。


   あはは、こっちもその方が良いかな。
   あまりにも綺麗な日本語過ぎて、戸惑っちゃう。


   失礼デスネー。


   でも、助けたのは私だけじゃないわよ。
   海に飛び込んで呉れたのはゴーヤちゃんだし、金剛と霧島を呼ぶ為の笛を吹いたのは榛名。
   引っ張り上げたのは、私と金剛と霧島の三人。
   私はまぁ、自分がやんなきゃいけない事をしただけ。


   貴女が居なければ私は妹をふたり、失っていたかも知れないのデス。
   だから…貴女には感謝をしても、しきれマセン。


   んー…じゃあ、素直に受け取っておこうかな。


   Yes、是非然うして下サイ。


   でさ、金剛。


   ...What?


   共依存、って言うの?
   なんとなーくそんな感じがするから、少し、気を付けた方が良いかも知れない。


   ……。


   私もね、ふたりが好きだから。
   出来ればね、しあわせにはなって欲しいのよ。
   叶うなら、今生で。


   …伊勢。


   こんな姿に生まれて心を持った事、正直、どうしてか分かんないけど。
   意味が無いわけじゃ、ないだろうから。


   …意味とは、恐らく。


   んー?


   自分で見つけ出す、自分で作り出す、或いは。


   或いは?


   誰かと、生み出すか。


   誰かと、ね。
   んじゃあ、あのふたりはまさに、だわね。


   Yes、まさに、デス。


   でも、あれねぇ。
   あれじゃ人の子と変わらないわね。
   なれは、しないけど。


   ならなくても、良いのデス。
   なれなくても、良いのデス。
   そんな必要は、何処にも、無いのデスカラ。


   うん、そうさね。
   それにしても、さ。


   日向、デスカ?


   イエース、然うよー。


   生きていれば、いつか、逢えますヨ。


   然うだけど、遅いのよー。
   流石に待ちくたびれたっての。


   私も待ちましたカラ。


   でもそっちの方が早かった。
   たく、日向のヤツは。


   …。


   仕方無いから、待っててやるけど。
   ここまで待ったんだもの、簡単に諦められるか。
   そもそもお姉ちゃんは諦めが悪いんだから。


   だからこそ、生きてゆこうと思える。


   …お。


   そういうもん、デス。


   …そういうもん、ね。


   Yes.


   …たく。
   どいつもこいつも、待たせてー。


   待って待って、漸く揃ったと思ったら、甘ったるい事になってる妹達も居るケドネ。


   あはは、妹が何人も居ると大変だねぇ。


   お姉ちゃんは気苦労が絶えないのデース。


   ははは。


   …。


   にしても、あんなにちっこかったのにね。
   今じゃ…妹を口説き落としてまんまと番艦にしようとか、ね。


   …私達は伊勢、貴女よりも年上デスヨ?


   然う、なんだけど。
   生まれて此処に来たのは私の方が先だしね。


   私よりは後デース。


   はーい、然うでしたねー。


   もっと言えば貴女も小さかったネー。


   その節は大変お世話になりましたー。


   お姉ちゃんが下の子の面倒を見るのは当たり前の事ネー。


   あはははは。


   日向の面倒は貴女が見るのヨ、伊勢?


   はい、分かってます。
   金剛お姉さま。


   …。


   …なーんて。


   ふ。


   はは。


   どの子もまだまだ、目が離せそうにはないデスネ。


   ま、良いんじゃない?
   ちびっこはそういうもん、だから。
   でしょ?


   貴女もデス、伊勢。


   え、私も?


   やれやれ、デース。


   むむ。


   …ふふ。


   ところで金剛、式とかどうするの?
   妹ふたりの。


   それはふたりが決める事デスヨ。


   とか言って。
   ドレスとか着る事になったら、


   その時は勿論、








   ...the third