……あの、金剛お姉さま。


   What、比叡?


   今、なんて…。


   Oh、聞いてなかったんデスネ?
   比叡は本当にうっかりさんデース。


   いや、聞いてなかったと言いますか、ちゃんと聞いていたつもりなんですけど…聞き間違えた、と言いますか。


   Engagement、Congratulations!
   比叡、榛名、私も嬉しいデース!


   Engagement……て。


   おめでとう、榛名。
   良かったわね。


   ま、待って、霧島。
   私達は未だ…


   世の中には済し崩しと言う言葉があるわ。


   な、済し崩しって…。


   この機会を逃したら、次はいつ訪れるか分からない。
   若しかしたら、訪れないかも知れない。
   榛名はそれでも良いのかしら?


   で、でも、


   善は急げと言いマース!!


   い、急がば回れとも言いますよ…!


   さっさと誑し込んでしまえば良いのよ。
   若しくは泣き落とすとか、比叡姉さんには効果的よ。
   優しさに付け込むのも手段の一つだから。


   そ、そんな事、出来るわけ…!


   これからはCouple水入らず、同じ部屋ネ!!


   ま、まだ、カップルじゃないです、金剛お姉さま…!!


   鳳翔さんには伝えておいたから。
   これからはずっと、替わる事無く、比叡姉さんと榛名は同室だと。


   き、霧島、なんでいつもそんなに行動が早いの…!?


   榛名、既成事実は大切ネーー!


   き、既成事実ってなんですかぁ、お姉さまぁ!!


   比叡姉さん、幾ら鈍感な上にヘタレだとは言え榛名に恥をかかせたら承知しませんよ。


   止めて、霧島…!
   お願いだから…!


   Hey、霧島!
   今夜はお祝いするネ!!
   Let’s party!!


   ええ、然うしましょう。
   今頃、青葉さんが良い記事にして呉れているでしょうから。


   あ、青葉さんに…?!


   あ、あぁ…。


   流石は霧島ネー!
   仕事が早いデース!


   有難う御座います。
   この場合、退路はさっさと断つべきなので。
   まぁ、勝手にあれだけ騒いで呉れたのでこちらとしては好都合でしたけど。


   恐い、霧島恐い…!!


   あぁぁぁ…。


   比叡。


   ど、どうしよう、榛名…ッ。


   榛名。


   ひ、比叡お姉さま…。


   思うように、しあわせに。


   青葉さんに記事にされたら…!


   末永く、しあわせに。


   お、お姉さま落ち着いて下さい…!


   私達はいつだって、然う、願ってマス。


   あ、赤城さんと加賀さんの気持ちが分かる、ような気がするよぉ…!!


   私達はいつだって、然う、祈っているわ。


   は、榛名も、ですから…!
   落ち着いて下さい、お姉さま…!


   さて、霧島。
   私はお茶の支度をするネ。


   はい、私もお手伝いします。








   今度は比叡と榛名、ねぇ。


   如何しますか?


   構わないよ。


   分かりました。
   では、その通りに伝えておきましょう。


   赤城さんと加賀さんに続き、これで二組目だね。


   然うですね。


   や、実に喜ばしい事だね。


   ですが。


   ん?


   部屋についてはあくまでも姉と妹からの申請です。
   本人達からではありません。


   つまり、本人達の意思では無いと?


   と、思いますよ。


   でもまぁ、良いでしょや。
   時には周りが退路を断ってやる事も必要だしね、こういう事は。


   面白がっていませんか?


   次誰あたりが来るか、ぐらいには。
   鳳翔さんはどう思います?


   本人達は真剣なのですよ。


   じゃなければ、いかんでしょや。
   こういうのは誠実さが必要。
   不穏なのは要らない、士気に関わったら事だから。


   ……。


   や、皆素直で良い子で。
   助かります。


   …提督。


   はい…お。


   これらの書類、今日中にお願いしますね。


   これらを、全部?


   はい、これらを全部です。
   資材についてもまとめておきましたので、目を通しておいて下さい。


   うん、仕方無いですね。


   お願いしますね。


   鳳翔さん。


   はい。


   漣、呼んできて下さい。
   手伝わせます。


   漣さん、ですか。


   私の最初の秘書艦だから。


   分かりました。
   提督。


   ん。


   艦娘同士が結ばれる事。
   提督としては


   他ではどうだか知らないけど。
   此処では喜ばしい事。
   死にたがりが減るから。


   ……。


   私は何と言うかな、然ういう願望があまり無くてね。
   だけど人の然ういうのを見ているのは嫌いじゃないんだ。寧ろ、とても好ましい。
   変わってるとは言われるけど、でも、仕方無い。
   それが私の性分の様だから。


   …。


   何より、好いた者同士結ばれるのが一番だよ。
   異性同士だとしても、同性同士だとしても、そして艦娘同士だとしても、ね。


   …然うですか。


   それが答えじゃ満足しませんか。


   いいえ。


   まぁ、士気に関わるなら問題だけど。
   だから出来るだけ、夫婦喧嘩はして欲しくないかな。


   犬も食わない、ですね。


   はは。


   それでは漣さんを呼んで参りますね。


   はい、お願いします。


   では、失礼します。


   それにしても。


   …はい?


   比叡と榛名、ね。


   …。


   赤城さんと加賀さんとはまた違った夫婦になりそうだ。


   …面白がってますね、提督。


   いやいや、そんな事は無いですよ。
   目出度いとは思ってますが。


   然うですか。


   はい、然うです。


   …青葉さんの記事、楽しみですね。


   うん、とても。


   …。


   まぁ、こういう事は面白がったもん勝ちとも言いま


   本人達にとってはとっても大切な事柄です。








   おっめでとうございまーーす!!


   これで二組目の夫婦誕生ですねぇ!


   めでたいにゃー!


   くまー!


   うんうん、良い事だねぇ、酒が美味いねぇ。


   あんたは飲み過ぎよ。








   ……。


   ……。


   ……あの、榛名。


   …はい、お姉さま。


   何と言うか…ちょっと居た堪れない、かも。


   ……。


   青葉さんの力ってすごいな…。
   あっと言う間に広がっちゃうんだもんな…。


   …。


   …榛名?


   ……ごめんなさい、お姉さま。


   え、なんで…。


   …榛名のせいでこんな事になってしまって。


   あ、いや、榛名のせいじゃないから。
   全然、榛名のせいじゃないから。


   …でも、こんな。
   榛名達は、未だ…。


   まぁ、ね…。


   ……。


   榛名、そんな顔しないで。


   …。


   ほら、ごはん食べよ?
   美味しそうだよ、と言うか、美味しいよ。


   …。


   ね、榛名?


   …比叡お姉さま。


   ん?


   ……あの、榛名。


   うん。


   …本当は凄く嬉しいって言ったら、困りますか。


   うん?


   ……榛名、嬉しいです。
   皆に、こんな風に、お祝いして貰って…。


   ……。


   …。


   …え、と。
   何と言うか…。


   ……困りますよね、ごめんなさい。


   いや、困りはしないよ?
   うん。


   …嘘が下手糞なお姉さまも榛名、大好きです。


   や、嘘じゃないんだけど……あ。


   …?
   お姉さま…?


   赤城さんと加賀さんだ。


   …。


   凄い、二人のとこだけなんか空気が違う…。


   …。


   でもって、もりもりとごはんが無くなってく…すごい。


   …赤城さん。


   ん?


   雰囲気、本当に変わりましたよね。


   うん、然うだね。


   随分と優しくなりました。


   ごはんも美味しそうに食べるようになったよね。


   はい、とても。


   加賀さんの力、かな。
   や、然うなんだよね。


   …。


   …。


   …あの、


   あの、


   …あ。


   何、榛名。


   あ、いえ、榛名は後で大丈夫です。
   お姉さまから…


   ううん、榛名からで良いよ。


   いえ、榛名は


   榛名から言ってよ。


   は、榛名は…。


   ……。


   ……やっぱり、赤城さんと加賀さんが羨ましいです。


   …うん。


   ……。


   え、と…さ?


   は、はい。


   指輪とか、欲しい?


   …え。


   あ、や、だから…その。
   ゆび、わ…?


   ………。


   ほ、ほら、そういうの、するもんじゃない…?
   だ、だから…。


   …。


   ま、まぁ、赤城さんと加賀さんはしてないようだけど…え、と。


   …。


   あ、あれ、榛名…?


   …榛名、嬉しいです。


   う、うん、そっか。
   じゃあ、今度の休みの時にでも…その、見に行く?


   …。


   はる、な…?


   …けど、未だ大丈夫です。


   え。


   …。


   だ、大丈夫って…それって、要らないってこと…?


   ち、違います…!


   …。


   …榛名、欲しいです。
   比叡お姉さまとの……。


   じゃ、じゃあ…。


   …本当に、なれたら。


   …?


   本当になる事が、出来たなら……その時は。


   …。


   …榛名の、左手の薬指に。
   その…比叡お姉さまの手で、嵌めて下さい。


   …!


   ………。


   …うん、分かった。


   ……比叡お姉さま。


   榛名。


   …はい。


   その…恥ずかしいけど、こういうの、良いものだね。


   …。


   皆がお祝いして呉れるのは、やっぱり、嬉しいかなぁ…て。


   …。


   ん…?


   ……。


   あ、あー…。


   …ごめんなさい。


   あ、榛名…。


   …。


   …。


   …あ。


   ……嫌じゃ、ないから。


   ……。


   困らないから、だから。


   …榛名、比叡お姉さまの手が大好きです。


   …。


   大好き、です……。








   Thousands of cherry blossoms…。


   ……。


   …千本桜、見てみたいものデスネ。


   金剛お姉さま。


   Oh、霧島。
   What's wrong?


   お姉さまこそ、こんな所でお一人で。


   酔い覚ましに少し、夜風に当たってるんデス。
   気持ち良いデスヨ。


   ではこの霧島、お付き合い致しましょう。


   …。


   お邪魔でしょうか?


   …No。
   そんな事は無いネ。


   有難う御座います。


   ……。


   ……。


   …うーん、良い風ネー。


   ええ…本当に。


   …。


   …榛名、嬉しそうでした。


   …。


   …比叡姉さんは少し、いえ大分、戸惑っているようですが。
   流石に強引でしたでしょうか…。


   比叡は。


   …。


   真っ直ぐで、素直で誰の為にも頑張れる、少し鈍いところもあるけれど。
   穏やかで、温かい心を持っている、私の自慢の妹デス。


   …はい。


   榛名は。


   …。


   柔らかくて、純粋で人の痛みが分かる、少し臆病なところもあるけれど。
   思いやりがあって、細やかな心を持っている、私の大切な妹デス。


   …はい。


   霧島は。


   …私、ですか?


   聞きたくはありませんカ?


   …いえ。


   霧島は………。


   …。


   …やっぱり、止めておきまショウ。


   ……。


   その時が来たら、言いマスネ?


   …その時は来るでしょうか。


   Of course。
   勿論デース。


   …わ。


   霧島も、私の、目の中に入れても痛くないくらいに可愛い妹デス。


   ……。


   Oh、言葉、間違ってマシタカ?


   いえ、間違ってはいません。


   では、照れてマスカ?


   ……。


   ふふ。
   比叡、榛名、霧島。
   みんな、みんな、私の大事な妹。
   みんな、みんな、しあわせになって欲しいデス。


   お姉さまも。


   …?


   比叡姉さんも、榛名も、そして私も。
   みんな、みんな、お姉さまの事をお慕いしてます。
   みんな、みんな、お姉さまのしあわせを願っています。


   …ん、知ってマスヨ。
   だから私は、頑張れるのデスカラ。


   ……。


   大丈夫デスヨ、霧島。


   …大丈夫、でしょうか。


   Yes、比叡は大丈夫デス。
   比叡なら、大丈夫デス。
   何故なら比叡は…榛名、を。


   …。


   んー…風が、気持ち良いデスネー。


   …金剛お姉さま。


   ん…。


   いつか金剛型姉妹四人で、千本桜を見に行きましょう。


   Wow!
   それはGood ideaネ!


   その時はこの霧島にお任せ下さい。
   完璧な計画を、必ず。


   霧島に任せれば安心ネー。


   問題は比叡姉さんが壊さないで呉れるか、ですが。


   ふふ、然うネ。


   …。


   …。


   …Honey moon。
   Let us only…。

   ……。


   比叡と榛名に、幸多からん事を。


   …。


   …そろそろ中に戻りまショウカ、霧島。


   はい…お姉さま。








   思い出しますね。


   …然うですか。


   何を、とは聞かないのですね。


   …。


   加賀さん、もう少し頂きますか?


   …?


   お酒…どうしますか?


   …いいえ、もう要りません。


   然う…では、私も。


   良いのですか…?


   ええ、もう十分です。


   …。


   …大丈夫ですか、加賀さん。


   はい…大丈夫です。


   ……。


   …ん。


   顔が火照っているようですね。


   …躰に熱が籠ってしまっているようです。


   ……。


   …赤城さん。


   比叡さんと榛名さんの祝宴は続いていますけど…私達は一足先に部屋に戻りましょうか。


   ……。


   …加賀さんは病み上がり、ですから。


   思い、出しますか…。


   …。


   ……私が来た日の夜、を。


   …ええ、少しだけ思い出しました。
   そんなに遠い記憶では無いのに…貴女とはもうずっと長い時間、居るようで。


   ……祝言、を。


   …え。


   いつか、挙げましょうか…。


   …しゅう、げん。


   あなたの白無垢姿を、見てみたいのです…。


   …。


   ……。


   …私も、見てみたいわ。
   貴女の、白無垢姿…。


   私は似合いません。


   …いいえ、似合います。
   だから、私に見せて下さい…。


   ……。


   …。


   ……部屋に、戻ります。


   …はい。
   では、然うしましょう…。


   …。


   …ねぇ、加賀さん?


   はい…赤城さん。


   …比叡さんと榛名さん、しあわせそうですね。


   ……。


   …行きましょう、加賀さん。


   赤城さん。


   …はい、加賀さん。


   あなたは、いま、しあわせですか…?


   …。


   ……もしも、そうだったなら。
   わたしは、しあわせなのだけれど…。


   ……加賀さん。


   …何。


   酔って、いますね…?


   ……いいえ。


   顔が赤くなっています…。


   …。


   ……答えは部屋に戻ってから言います。
   だから……。


   …う。


   先に寝てしまっては…嫌ですよ。








   ……うぅぅ。


   比叡お姉さま、大丈夫ですか…?


   はーい、ひえいはだいじょうぶ、れーす。


   ……。


   …へへ、ちょっと、のみすぎちゃったかなぁ〜。


   お顔が真っ赤です…。


   榛名も、赤いよー…。


   …榛名、は。


   お酒、美味しかったねぇ。


   …榛名には少し、強かったです。


   榛名は飲めないものねぇ。


   …お姉さまだって、あんまり強くないじゃないですか。
   強く、ないのに。


   いやぁ、だってさぁ…。


   …だって、何ですか。


   あーーー……。


   あ、お姉さま…!


   …やばい、ちょっと足にきてる、かも。


   ……榛名、お支えします。


   ん…ありがと、榛名。


   ……。


   …ねぇ、榛名。
   少し、夜風に当たってきても良いかなぁ…?


   …。


   酔いを少し、醒ましたい…。


   …分かりました。
   では榛名も参ります。


   榛名も…?


   …。


   …冗談だよ。
   最初から、付き合って貰うつもりだったから。


   ……。


   …。


   ……。


   …榛名は、私の大事な妹で。


   ……。


   これまでも、これからも、ずっと、大事な妹で。


   ……。


   …変わらないと、思ってた。
   だけど…榛名にとって、私はただの姉じゃなかったんだね。


   ……は、い。


   …。


   …比叡お姉さまが金剛お姉さまをお慕いしているのを、痛い位に知っていても。
   榛名は……比叡お姉さまを恋い慕う気持ち、を。


   …分からないなぁ。


   …ッ。


   私の、どこが、良かったのか…。
   私は、自分でも、分からないのに…。


   …。


   分からないけど……でもなんか、なんとなく、分かった気もするんだ。
   榛名が私を、好きになって呉れたから。


   …。


   あー…。
   私、分かんないこと、言ってるよねぇ…。


   …はい、分かりません。


   はは、だよねぇ。


   ……。


   …。


   ……。


   …榛名。


   …は、


   ……。


   ………おねえ、さま。


   …ありがとう、好きになって呉れて。


   あ、あ、う……。


   …お酒臭くて、ごめんね?


   ……!


   ……しっかし。
   お酒の力って、すごいよねぇ…。


   お姉さま…ッ。


   …んー?


   榛名、嫌です…ッ!


   …え。


   …嫌、です。


   は、榛名…?


   ……こんな、はじめて。


   あ、ああ…。


   …いやです…いや…。


   …ごめん、榛名。
   ごめんね…。


   ……。


   ……ごめん。
   ごめん…。


   ……わたしは、いもうとのまま、なんですね。


   え…。


   ……わたし、は。


   ……。


   …でも、だいじょうぶです。
   だいじょ……ん。


   ……。


   ……。


   …ごめん。
   でも……もう、ちがうから。


   …ちが、う。


   ……じゃなきゃ、こんなこと、できない。


   …。


   …できないよ、はるな。


   ……ひえい、おねえさま。


   ……。


   …。


   ……。


   …名を。


   …。


   …呼んでも、良いですか。


   …うん。


   ……ひえい。


   …。


   …比叡。


   それは…今の私の事じゃないね。
   然う…ふねだった頃、の。


   …どうして。


   そんな気がしただけ…かな。


   …。

   …。


   ……一緒に、居られなかった。


   …。


   …比叡さん。


   …はい。


   ……一緒に、居たいです。


   …。


   …榛名と。
   今の私と……一緒に。


   …良いのですか。


   …。


   後悔は、しませんか…?


   …どうして、丁寧語なんですか。


   どうしてでしょう…。


   ん…。


   ……榛名。


   …、と。


   …。


   榛名は…私、は。


   …う。


   …良いと、言いました。


   …。


   貴女の事、何度、好きだと言えば…ちゃんと、伝わるのでしょう。


   …はる、な。


   比叡さん……貴女でなければ、私は駄目なんです。
   駄目なんです…。


   ……。


   …人の子の為、命を擲って戦う存在である私が、こんな想いを抱く事。
   それは屹度、許される事では無いのでしょう…。


   ……。


   …けれど。
   心を持って…心を持って生まれてきてしまった以上、どうしようもないじゃないですか…!


   …榛名。


   どうして好きになったのなんて……そんなの!


   榛名、榛名。


   一緒に居られなかった…!
   一緒に居たかった、居たかったの…!


   榛名、分かった。
   もう、分かったから。


   いいえ、分かりません…!


   う。


   分かるわけ…ない!
   一人残された、残されてしまった私の気持なんか…!


   …ッ。


   榛名は、榛名は、一人になんて、なりたくなかったのに…なのに。


   榛名…ッ!


   ぁ……。


   ……。


   …あ、あぁ。


   ……榛名。


   ………おねえ、さま。


   …分かるわけない。
   榛名の、言う通りだ…。


   …わたし、おねえさまに。
   なんて、ことを……。


   …。


   それに、おねえさまだって……あぁ。


   …。


   ごめん、なさい……。


   ……榛名。


   ごめんなさい、ごめんなさい…おねえさま…。


   …。


   …榛名のこと、嫌いにならないで。
   嫌いに、ならないで…


   ……聞いて、欲しい。


   ……。


   …榛名はもう、私の妹じゃない。


   あ……。


   だから「比叡」(わたし)はもう、榛名を妹として見るのは…極力、止める。


   あ、あぁぁ……。


   …だけどそれは榛名が望んだ事でもあるんだ。
   然う、でしょう?


   ……。


   …赤城さんと加賀さんのようになれるかは、分からない。
   寧ろなれないと、思う。


   ……。


   …でも、そんな事は良いんです。
   榛名と私の……私達なりの、形を作っていけば。


   …かた、ち。


   ……夫婦と一口に言っても。
   皆が同じ形をしているわけではないでしょう…?


   ……。


   …榛名、私と。


   …。


   夫婦になろう。
   姉妹では無く、夫婦に。


   …いい、の。


   それは私の台詞だったんだけどな…?


   ……。


   …榛名、私と一緒になって下さい。


   お姉さ…ん。


   …もう、違う。


   ……。


   …だめ、かな?


   ……!


   と…。


   …榛名は…私は……わたし、は…。


   ……良い?


   …もちろん、です。


   …嬉しい?


   ……とっても。


   ん…良かった。


   お姉さ……比叡さん。


   …はい。


   ……はるなは、とても、しあわせです。


   …もっと、してあげる。


   …。


   ……って、思ってます。


   …ああ!


   ……なんて。


   …。


   でも私!頑張ります!から!


   …。


   …頑張ります、榛名。


   榛名も…ん。


   ……。


   ……おさけ。


   …ごめん。


   ……いい、です。


   …いやって、言われたんだけど。


   今回は、とくべつです…次は、だめです……。


   …はい、分かりました。


   ……。


   …部屋に戻ろうか、榛名。


   はい……比叡さん。








   ……。


   …加賀さん、大丈夫ですか?


   ……大丈夫です。


   …。


   …。


   …お酒って、人を変えますよね。


   然うですか…。


   …笑ったり、泣いたり、怒ったり、暴れたり。
   まぁ、変わらない人も居ますけど…。


   ……変わると、言うよりも。


   …。


   日頃は表に出せないだけなのかも知れません。


   …表に?


   奥に、仕舞い込んで。


   ……ああ。


   心というものは…時に、厄介なもののようなので。


   …然ういう考え方も、出来るのですね。


   …。


   …加賀さんは、どうですか。
   仕舞い込んでいるものは、ありますか…?


   …さぁ、分かりません。


   分からない…ですか。


   ……。


   …加賀さんの耳、真っ赤です。
   これも酒精によるものですね…。


   赤城さん…。


   良く熟れていて、美味しそう…。


   ……。


   …食べてみても、良いですか?


   ……どうぞ。


   では……いただきます。


   …。


   ……ふにふにして。
   とても、やわらかい…。


   いきが…くすぐったいです。


   …感じては、呉れないのですか。


   ……。


   …私ばかり、感じて。
   私ばかり、加賀さんの熱に浮かされて…。


   …。


   ……。


   …しあわせ、ですか。


   ……。


   ……あかぎさん。


   …どうぞ、引っ張り出して下さい。


   引っ張り出す…。


   …あなたがのぞむ、こたえを。


   ……ありますか。


   はい…きっと、このおくに。


   ……わかりました。
   では…。


   ……こよい、は。


   …。


   …ねつは、だいじょうぶですか。


   酒精によるものだけ、です。
   躰に異常は感じられません。


   ……もう、まじめなかおで。








   ……はーるよ、こい。


   …?
   ひえいさん…?


   はーやく、こい……。


   …。


   はーるよ、こい……。


   …はーやく、こい。


   ……。


   …ひえいさんは、はるがすきですよね。


   いいえ…。


   …すきでは、ないのですか?


   いいえ。


   では…どのきせつが、すきなのですか。


   しりませんでしたか…?


   …はるだと、おもっていました。


   そうですね…はるは、すきですよ。


   …ん。


   ……かみのけが、めにはいりそうでした。


   …。


   ……はるなさんは、どのきせつがすきですか?


   わたしは……わたしも、はるがすきです。
   しろでおおわれていたせかいが、いろづきはじめる…あの、きせつが。


   …おなじですね。


   はい……おなじ、です。


   けれどね、はるなさん。


   …はい。


   これからは、どのきせつも。
   わたしは、すきだといえそうです。


   …どのきせつも、かわらずに、ですか。


   はい…そうです。


   …けれど。
   ひえいさんはさむいのが…。


   …まぁ、にがてなままでしょうけど。
   でもね、はるなさん。


   ……はい。


   これからは…あなたが、となりにいるでしょう?
   どのきせつにおいても、あなたが。
   はんりょである、あなたが。


   …。


   …もちろん、“いもうと”であるあなたもとなりにいてくれましたけど。
   ざんねんながら、“ひえい”(わたし)はあなたのきもちにきづくどころか、そばにいてくれたことさえ、きづかずに。


   …。


   …うつろいゆく、きせつ、を。
   あなたとみられるのなら、かんじられるのなら、すごせるのならば。
   わたしは…


   ……。


   …いきすら、いてついてしまいそうな、あの、しろいふゆも。
   すきになれる…そう、おもってならないのです。


   ……ほんとうに、そう、おもってくれるのなら。


   …。


   わたしは……。


   ……はるなさん。


   …。


   ともに、あいしてくれますか。


   …はい、わたしはあなたとともに。


   ……ありがとう。


   …。


   はるな。


   …はい。


   …どうか、わたしをひとりにしないでください。


   …。


   わたしも…あなたをけっして、ひとりにはしませんから。


   ……やくそく、いたします。
   わたしはあなたを、けっして…。


   …。


   …。


   …はるな。


   はい……。


   Could you grow old with me…?


   …Yes, sure thing。


   …。


   …。


   …なつまつり。
   たのしみ、ですね。


   ……。


   …わすれていましたか?


   ……いろいろ、ありすぎて。


   はは…たしかに、そうですね。


   ひえいさんと…こうなれるなんて、おもっていなくて。


   ほんとうに…?


   …ほんとう、です。


   ……。


   ん…。


   ……あしたに、なっても。


   …。


   ……“ひえい”を、よろしくおねがいします。


   …こちらこそ、“はるな”をすえながくよろしくおねがいします。


   ……。


   ……。


   …ねぇ、はるな。


   はい…ひえいさん。


   なつまつり、たのしみだね…。


   ……はい、とても。








   ...the last