…とうもろこし。
そう、とうもろこし。
教えたっけ?
…小さなナディに。
あー…。
サラ、は。
太陽と大地が結ばれて、生まれてきたの…?
伝説、だけどね。
サラはとても大事な食べ物だったから。
チチャもサラから作るし。
…太陽と、大地。
こら。
ん。
…あんたの“太陽”は“月”だけ。
オーケイ?
うん……。
それで。
…もう、良いのか。
サラ。
良く、知ってたわね。
……。
母親の名前。
意味の方じゃない。
…調べれば、造作も無い事だ。
調べれば、ね。
あのいかつい男二人組に?
…。
アキラ、関わらない方が良いわよ。
ロクなニオイがしない。
……・
だから、アキラ。
あんたにはあたし達と一緒に来てもらう。
…え?
簡単に言えば、あたし達はあんたを浚う。
藪医者からね。
な、なにを…
アキラ。
オレ…パルジファル、
俺は何も聞かなかった。
で、でも
アキラ。
エリスさん、ナディさんは
コイユルを、お願い。
…え。
連れ出す。
けど、連れては行かない。
ナ、ナディさん…。
アキラ、コイユルはここに置いてはいけない。
母親がいるこの場所に、あの子を置いてはおけない。
け、けど、
母親を矯正するのには時間が必要だ。
長い、な。
けど、パルジファル…
あんたなら、アキラ。
……。
コイユルと一緒でも大丈夫。
医者と一緒にいたあんたなら、あの子の病気の事も分かる。
あたし達には、分からない。
でもわたし、オレホン、ちがう…。
当たり前でしょ。
あんたがこんな藪医者と一緒なんて、ありえない。
……。
アキラ。
……私、できません。
出来ない?
わたしは、もう……。
…でも、お母さんだよ。
……エリス。
アキラは、お母さんだった…。
ち、ちがう、わたしは、
…私には、分かるの。
あ…。
私も、お母さんだから。
エリス、さん…。
…それから、サラも。
本当は、お母さんだった…ううん、今だってきっと。
……。
…どうか、コイユルを幸せにしてあげて。
……。
アキラ。
…オレホン。
好きなように生きろ。
お前は未だ、若い。
でも、わたし、オレホンと
…永久に会えなくなるわけじゃないさ。
…。
俺は…私は、此処に居る。
オレホン…。
…私は、独りでは無い。
然うだろう、アキラ。
……。
子は母を必要とする。
生みの親でも育ての親も、どちらも、親に変わりは無い。
……オレホン。
君の躰は二度と、子を宿す事は無い。
が…君が母になる権利を永遠に失った訳では無い。
……。
ナディ、エリス。
…何。
…。
アキラを、頼む。
言ったでしょ。
頼まれる立場じゃないの、あたし達は。
…浚う、から。
戯言だ。
まともに聞くな、小娘ども。
…は、そーかい。
……全然、違うね。
オレホンは、
アキラ。
……コイユルさんは。
…。
…。
きっと、ナディさんとエリスさん、いいおもいます。
それはどうかな。
まぁ、エリスには懐いていたけれど。
…ナディ。
正直な事を言うとね、あたしも手一杯なのよ。
…ていっぱい?
エリスと…
ん、ナディ…。
…お腹の子と、ね。
でもナディさんなら、
アキラ。
これ以上、言わせないでよ。
……。
アキラ。
…どこに、いくですか。
ここから、離れたところへ。
サラが、追ってこられない場所へ。
…そんな、の。
手紙。
……てが、み?
書けば良い。
でも…。
経過が良ければ会う事だって、
きっと、ううん必ず、出来るから。
けど、そんなお金
全て俺が出す。
落ち着いたら手紙を送ってこい、アキラ。
オレホン、でも、わたし…。
アキラ。
…アキラ。
ナディさん、エリスさん…わたし、は。
発つには未だ時間がある。
少し眠っておけ。
オレホン、わたしは
さらば、とは言わないさ。
生きていれば、必ず、逢える。
然うだろう、「被検体4」。
はか、せ……。
ん……。
…あ。
……大丈夫だよ、コイユル。
えり……。
大丈夫…。
……。
…ここにいるんだよ。
………あったかい。
うん…。
……エリス。
なぁに?
…赤ちゃんがいるって、どんな感じなの?
んー…。
…。
…赤ちゃんがここに、いるんだなって。
……。
そう思うと、仕合わせになれるの。
それから…
…それ、から?
ナディが、ここに優しく触ってくれるから。
とても仕合わせになれるの。
…。
いつか、コイユルにも。
分かるよ。
……いい。
うん?
……いらない。
ママになんて、なりたくない…。
コイユル…。
……。
…エリスさん。
うん?
きになってた、ですが…
なに?
その、つわりは、ないですか?
つわり…?
きもちわるくなる、それがつわりです。
……。
…ない、ですか?
エリス。
ナディ、おかえりなさい。
ただいま。
車、大丈夫だった?
うん。
まんまと移動はされてたけどね。
ま、そのせいでなんともなかったけど。
ありがとう、アキラ。
いいえ、どうかあの人にいってあげてください。
あの人が
死んでも嫌だ。
で、何の話?
つわり、ある?
あ、悪阻?
そう、つわり。
誰に。
エリスに?
ああ。
そうだなぁ…。
…。
て、なんであたしに聞くかな。
分かると思ったから。
…。
…ナディさん、わかるですか?
いや…つか、吐き気みたいのはあまり無かったと思うけど。
それより、
だって。
…わかる、ですね。
つか、エリス。
あんたの方が
分かるけど、分からないの。
……まぁ、良いけどさ。
うん、良いの。
…?
とりあえず、気にしないで。
さて、準備は良い?
そろそろ発つよ。
うん、大丈夫。
コイユル。
……。
あたし達とこの町を出たら、暫くは戻ってこられない。
当然、母親とも会えなくなる。
けど、良いか悪いかはもう、聞かない。
……。
アキラ。
…ナディさん。
とりあえず、形から入っとく?
…荒くれ者?
ま、そう言うわけだから。
どうする?
……いいえ。
それはどっちの?
…コイユルさん。
…?
私といっしょ、いいですか?
…。
私と…
……。
…そう、ですか。
アキラ、答えは?
…行きます。
あの藪医者とも、長く会えなくなるけど。
ナディさん、いいました。
わたし、さらうって。
そ。
それに。
会えなくても、いっしょですから。
…て、それ。
インカ、ローズ…。
オレ…えと、パルジファルが、
オレホン、でしょ。
慣れない音の名前より、そっちの方が耳に分かりやすい。
…オレホン、くれました。
あの藪医者が?
くに、でるとき。
おまもり、いって。
あいつが、ねぇ。
……はぁ。
エリス?
…。
…どうした?
……ううん、なんでもない。
…。
……。
…エリス。
……ちょっと、気持ちが悪い。
最初からそう言え。
…つわり?
だろうね。
つか、タイミングが良いと言うか、悪いと言うか。
…そっか。
嬉しいものじゃないでしょうに。
だって。
だって?
……、だから。
うん、なんだって?
…もっとこっちに来て?
と…。
もっと。
…わざだな?
ナディ…。
…あーはいはい。
それで?
…ナディの赤ちゃんがいる、証拠だから。
……。
だから。
…あーそう。
まぁ、あんたが良ければ良いけどさ…。
ん……。
…熱は、今日は少し低いかな。
でも、
だいじょうぶですか、エリスさん。
…ん、平気。
ナディが、いてくれるから。
エリ、ス……。
なぁに、コイユル…?
…エリス、ナディ、だいすき、だから。
うん、大好き…。
…あー。
もう、良いかね。
顔、赤い。
いちいち言わんで良いから。
分かってるから。
…慣れないナディが、好き。
エリス。
…ふふ。
たく。
アキラ、コイユルを連れて先に出てて。
はい。
コイユルさん、行きましょう。
浚うのに、変だね?
この際、気にするな。
いえっさ。
エリス。
なぁに?
歩ける?
……。
…この、甘えため。
えへへ。
…荷物、先に運んでおいて良かったな。
あまり無いけど。
エリス。
…いえっさ。
よ……いしょ、と。
…重い?
重くない。
…二人分、なのにね。
……。
…ね。
重くなった。
…。
…なった。
単純…?
どうせあたしは単純ですよー。
そんなナディも、好きだから。
…ありがとう?
どういたしまして。
…じゃ、行くかね。
あ…。
…ん?
待って、ナディ。
と。
…。
エリス、どした?
……。
あー、寒い。
太陽、まだ昇ってないから。
そうねぇ。
でもエリスはあったかい。
帽子とマフラー、役に立って良かった。
違うよ?
今更、あったかくないって?
あったかい。
けど、違うの。
お…。
…エリスの太陽は、ここにいるから。
……。
あったかい。
…そ。
ん…。
アキラ、何か忘れたものは?
ありません。
でもそれ、聞きますか?
ナディは心優しい荒くれ者だから。
…コイユル、あんたは?
……。
コイユルさん?
……ぼう、し。
帽子?
……。
あ、こら。
ぼうし、ぼうし…!
分かったから、ちょっと待てって。
エリス。
うん。
はい、コイユル。
…あ。
帽子。
私と同じの。
……。
枕の下に挟まってたの、部屋から出る時にエリスが気が付いたのよ。
……。
持っててくれたんだね。
…ナディ、くれた。
はじめて、だった…。
ナディは、優しいから。
……うん。
んー…。
…照れてる。
エリス。
…ふふ。
コイユル、かぶってみる?
え…。
帽子はかぶるもんよ、コイユル。
それに太陽が昇るまでもう少し掛かるから。
で、でも…。
かぶせて、あげるね?
…あ。
じっとしてて…?
……。
…ん、出来た。
どう、アキラ。
はい、とてもにあってます。
…。
ナディ。
まぁ、良いんじゃない。
うん。
…ま、本当を言えばお腹の子にだったんだけど。
気が早い?
…。
だからって返さなくても良いから。
……。
それはもう、あんたの帽子。
でしょ、エリス。
うん。
……が、とう。
…。
…。
ありが、とう…。
『どういたまして。』
……。
あったかい?
…うん。
それは良かった。
じゃ行こっか、エリス。
いえっさ、ナディ。
……オレホン。
…?
……。
あきら…?
…ん、なんでもありません。
ありがとう、コイユルさん。
オレホン、ねぇ。
ナディ?
アキラ、毛布、使って良いから。
え…?
あるでしょ、そこに。
あ、はい。
ちょっと使ってなかったから、かび臭いかもしれないけど。
それで良かったらお好きにどうぞ。
…はい、ありがとうございます。
どーいたしまして。
エリス、あんたも。
私は
だーめ。
…じゃあ、ナディも。
あたしは運転しないといけないから。
ポンチョもあるし、大丈夫。
…。
躰を冷やすな?
……いえっさ。
宜しい。
アキラ、コイユル、なんだったら寝てても良いから。
寝られたら、の話だけど。
はい。
…うん。
あんたもね、エリス。
…寝ない。
…。
寝ない。
…だから、運転し辛いって。
良いの。
…エリス。
良いの。
…しょーがないなぁ、もう。
……。
…雪。
……うん。
もう、降らないと良いけど。
…降るよ。
また、いつか。
もう、いらないんだけど。
…。
たく、しょうがないヤツだ…。
……。
アキラ、寒くない?
……だいじょうぶ、です。
コイユルは?
…。
ん。
なら、良し。
…私は?
あ?
…エリスには聞かないの。
だってあんたは…。
…。
…あたしにくっついてるでしょうが。
……。
…なに。
ううん…。
…運転、し辛いんだけどね。
良いの。
…あんたは、ね。
ナディも。
…。
…ナディも。
……ま、良いや。
どこに行くの?
どこに行こうかな。
…。
あんたがいれば、どこへでも。
でしょ、エリス。
…そうだった。
そうそう。
ナディ…。
…甘えため。
……似たもの夫婦、だから。
……。
…。
…悪阻は?
ん、もう平気…。
…なら、良かった。
ん……。
……。
……。
……寝た、かな。
…起きてるよ。
そりゃ、分かってる。
そうじゃなくて…
……。
…寝てる?
うん…。
…そっか。
…。
…。
…賢き者。
…ナディ?
だったかな…。
…オレホン?
そう。
……昔の?
いや。
…?
今の言葉で耳が大きい人の事を言うんだけどね。
むしろ、悪口に近いかな。
だから覚えないで良いよ。
…。
…昔の国の貴族は耳が大きかったんだってさ。
と言うか、自分で大きくしてたみたいだけど。
自分で?
耳に穴を開けて、ね。
金やら銀やらはめ込んでたんだってさ。
…これ?
それは金でも銀でもないから。
…でも、大事な指輪。
…。
大事…。
…うん。
…。
…で、兎に角。
大きいものをはめ込んで大きくしてたんだって。
…痛そう。
ねぇ。
…痛かった?
うん?
ナディの耳も穴、開いてるから。
もう、塞がっちゃったけどね。
痛かった…?
…子供の頃の話、だから。
…。
忘れる忘れない以前の、もっと小さい頃のね。
…そうなんだ。
なんにせよ、あまり良い意味じゃない。
オレホン?
そ。
ふぅん…。
…。
…。
…エリス、あんたも少し寝た方が良い。
いや。
…エリス。
……ナディが淋しがるから。
なんだそりゃ…。
……ナディ。
……。
……。
……でもま、いっか。
それで…。
ん…。
エリス……。
……。
……。
……。
……ん?
…?
なぁに…?
…。
ナディ…?
あのやろ…。
……あ。
……。
……見送り?
かもね。
こっち、見てなかったけど。
見てたよ。
…。
…アキラのこと、見てた。
……そ。
アキラ、オレホンが…。
…。
…アキラ?
………。
…エリス。
……うん。
…。
…そういえば。
うん?
お金、払わなかったね。
ああ、そういえば。
踏み倒し?
はは、そうかも。
戻る?
まさか。
ナディは荒くれ者。
そのあたしと一緒にいるあんたも、ね。
夫婦、だから。
ん、夫婦だから。
…荒くれ夫婦?
どんな夫婦だ。
こんな夫婦?
あはは。
ふふ。
・
エリス、少しは落ち着いた?
ん…。
……。
…大丈夫。
でも、もう少し休んでた方が良いみたいね。
…伝わった?
少し。
久々だったから、ちょっとアレだったけど。
アレ?
痛みは来るんだけどね。
それも最近、無かったから。
…ナディが守ってくれてるから。
……。
…ナディ、ごはん?
え?
ごはん。
私、作れるよ。
だーめ。
あんたは休んでなさい。
でも
あたしが作る。
え。
え、ってなんだ。
…内緒。
この、エリス。
…あん、そこはだめ。
て、変な声出すな。
そもそも、そこってどこよ。
そこは…そこ?
頭、撫でただけなんだけど。
…えへ。
たく。
兎に角、休んでなさい。
いえっさ。
ごはん、何が良い?
と言うか、食べられそう?
ん……。
ナディさん、私作りますか。
ほんと?
それは助かるなぁ。
ソーセージ、焦げないから?
エリス。
…はぁい。
でもアキラ、コイユルと本読んでたんじゃ?
コイユルさん、寝てしまいました。
んー、ほんとだ。
寝てるね。
だから、今のうちに。
そ。
じゃ、火起こすから。
はい、おねがいします。
こちらこそ。
……。
エリス?
コイユル、本、離さないね。
そうね。
昔のあんたみたい。
…私?
あんたも気に入るとずっと、読んでたっけ。
特にそのカマドドリの話は、さ。
……。
…と言うか、読まされたなぁ。
読んでくれた。
今も、だけどね。
前ほどじゃないよ?
はいはい、そーねぇ。
コイユルさん、もうほとんどじぶんでよめます。
すごいです。
へぇ、そうなんだ。
子供って覚えるの、早いわよねぇ。
なんで私を見ながら言うの?
さぁて、なんでだろうね。
ナディ。
はは。
アキラ。
はい。
じゃ、宜しく。
はい。
エリスさん、トマトのスープならだいじょうぶそうですか。
トマトの…?
エリス、いちばん、おいしそうに食べてました。
……。
エリス、どした?
…ううん。
良いよ、アキラ。
……。
…アキラ?
ナディさん、やっぱりナディさんが作ってください。
え、なんで。
エリスさん、よろこびます。
え、と?
……。
ナディさんのが好き、なんですね。
……うん。
だから、ナディさん。
…しょうがないなぁ。
エリス、それなら食べられそうなのね?
うん。
にんにくは、無い方が良いかな。
さっぱりの方が良いでしょ?
ん。
んじゃ、作るか。
てつだいます。
んー……。
……。
…ナディさん?
ありがと。
でも、良いや。
?
あたしの相棒はやきもちやきだから。
…。
ああ。
じゃあ、見てます。
はは、そうして。
あー、食べた食べた。
ゴチソウサマ、だよ?
うん?
食べ終わったら。
なにそれ。
感謝する言葉だって。
へぇ。
んじゃあ…
ゴチソウサマ。
え、と…ゴチソーサマ?
うん。
やれやれ。
ナディ。
今度はなにかな?
おいしかった。
ゴチソウサマ。
どれ…。
…。
うん、これだけ食べられれば大丈夫。
良かった。
…ん。
アキラ、コイユル。
足りた?
はい。
おいしかったです。
ゴ…ゴソウ、
ゴチソウサマ?
……サマ。
それは良かった。
作った甲斐、あった。
…。
コイユル、あんたはもうお休み。
明日もたくさん、移動するから。
…うぅん。
本ももう、読めない。
夜だから。
……。
明日になったらまた、読めるよ。
だから、お休み?
て、あんたもだ、エリス。
…私?
疲れが残ると良くない、でしょ。
…大丈夫だよ。
だーめ。
さ、コイユルと一緒にお休み。
……ナディは?
あたしはもう少し。
…アキラは?
わたしは
アキラがコイユルと一緒に、
エリス。
……。
…熱、ここ最近は落ち着いているけど。
またいつ、出すか分からないんだから。
……だったら、ナディも。
あ?
…一緒に、寝て。
じゃなきゃ、いや。
おいおい。
……。
…あんたが子供返りして、どうすんだ。
……。
あーもう…しょうがないなぁ。
アキラ。
コイユルさん、ですね。
でも、その前に。
はい?
エリス、こっちにおいで。
今夜は冷えそうから。
…いえっさ。
……。
…えへへ。
これなら、いつ寝ても良いでしょ。
ナディが、あったかいから。
…。
…でも、寝ないよ?
はいはい、出来るならそうして。
……ふふ。
アキラも、コイユルがいつ寝ても良いように見ておいて。
わかりました。
お茶、は…と。
これだと、一杯ずつ無いなぁ。
わたしは
エリスと、
…ありがとう。
はい、アキラ。
でも、わたしは
それとコイユル。
味、苦手でもあったまるから。
……。
飲みすぎはだめだけど。
飲みすぎるほど無いね?
……ありが、と。
『どういたしまして。』
ナディさん、これだとナディさんの分が
あたしは
大丈夫だよ。
そう、大丈夫。
私とはんぶんこ、だから。
いつだって、ね。
けど、それじゃ
良いから。
慣れない旅で、疲れてるでしょ。
でしょ?
エリスのおなか、あかちゃん、います。
だから私より、
お母さんは、強いから。
…。
だってさ。
だから気にしないで良いよ。
でも……。
エリスの事はあたしが気にしておくから。
いつだって…。
気にしないと、むくれるし?
…むくれないよ。
はいはい。
……。
それで、
…ふふ。
アキラ?
面白い?
うらやましい、です。
うん?
…うらやましい。
……。
…あきら?
それで、なんでしょう?
ああ。
あともう少し、だから。
あともう少し?
そう、あと少し。
だからもう少し、我慢してよ。
そうですか。
わかりました。
コイユルも。
……。
ん、どうしたの?
…や。
うん?
コイユル?
……はなれる、やだ。
…コイユル。
……どうして。
いっしょに、いく。
いく。
…コイユルさん。
……。
…ナディさん、エリスさん。
…。
…。
こどもはおとなより、ずっと。
びんかん、かもしれません。
…なるほど。
……。
きっと…。
エリス。
…ん。
寒くない?
……んぅ。
やれやれ。
…。
アキラ、そっちは?
…やっぱり、です。
たく、手のかかるちび達だ。
コイユルさん、車に
いや、それは無理だと思うかな。
…え?
だって、ほら。
……。
あたしにも見に覚え、ありまくりだからねそれ。
無理に離したら…後が面倒なコトになるかもしれない。
……じゃあ。
うん?
もうふ、とってきます。
持ってこられる?
えと…かかえれば。
無理だったら良いわよ。
火、消さないから。
いいえ、いいえ。
このままだとからだ、よくありませんから。
じゃ、頼もうかな。
はい。
…さて。
……ちびじゃ、ない。
聞こえてた?
…きこえてる。
……。
ん、ナディ…。
…もう少し、だから。
……うん。
……。
…ナディ。
ん。
……あったかい。
それは良かった。
……。
ナディさん、持ってきました。
ありがと、アキラ。
これ、エリスさんに。
うん。
ところでコイユルはお茶、全部飲んである?
…少し、のこってます。
そっか。
……。
て、アキラ。
飲まなくても良いのに。
冷めてるでしょ、それ。
……。
アキラ?
…どれくらい、たちましたか。
たつ?
…あの町、でて。
思っているよりは長くない、と思うけど。
曰く、感じ方は人それぞれだし。
…エリスさんですか?
いや、どっかの偉い人。
どっかの?
まぁ、それはどうでも良いから。
……。
あたし、日付とか時間の流れとか、覚えておけないのよ。
感覚が、薄いと言うのかな。
……。
一日が始まって、一日が終わる。
ずっと一人で旅をしながら、ひたすらそれを繰り返してきたから。
……。
今日が何の日で、あれからどれだけ経ったとか。
あたしにとって、それらは何も意味が無かった。
それで今が変わるわけじゃないから。
…ですが。
ん?
今は、ちがう、おもいます。
…。
エリスさん、いますから。
…身重なこの子と旅、続けてるんだけどね。
それでも。
……まぁ、そうかもね。
……。
…この子が結構、覚えててさ。
だから、あたしはそれで良いと思っちゃう。
ふふ。
それでも、一日の流れはあたしの方が分かるんだけどね。
日が登る頃合とか、沈む頃合とか。
ほら、季節によって違うでしょ、それ。
はい。
あとは雨季乾季、とか。
雨、特に嵐が来る空気の匂いとか。
て、これは時間とあんまり関係ないか。
旅、してきたからですか。
多分ね。
……。
ま、それも時間の問題かな。
ね、エリス。
…ん、ナディ。
頑張らなくても良いのに。
……。
…ほら、たまには姿勢を直さないと辛くなるぞ?
お腹の子も…。
ん……。
…と。
………だよ。
…ん?
…にしゅうかん、くらい。
二週間?
……うん。
だってさ、アキラ。
ま、ゆっくり来たし、それくらいかな。
…エリスさんのからだ、だいじ。
うん。
……。
あいつのところに、帰りたくなった?
……いいえ、帰りません。
今更、帰せないけどね。
ここまで来たら。
…。
……。
…あともう少し、なんですね。
予定通りに行けば。
ま、そんなもの、あるようで無いけどね。
旅、なんて。
……そしたら私、コイユルさんと。
うん。
ナディさん、エリスさん、ほんとうにそれでいいですか。
良いよ、あたしは。
……。
無責任かもしれないけど。
やっぱり、コイユルは連れて行けない。
この子は根無し草な旅をするより、どこか一箇所に暮らした方が良いと思うから。
…。
そしていつか、母親に会えるようになったら。
……。
だから、アキラ。
それまでコイユルを、いやそれからも。
……たまには。
ん?
あいに、きてください。
ああ。
うん、来るよ。
たまには。
…エリスさんも、つれて。
勿論。
おなかのこ、も、いっしょに。
…うん。
きっと。
だってさ、エリス。
忘れないでよ?
……いえっさ。
……さて。
あたしも少し、休むかな…。
……ん。
…と。
ナディ……。
…起こした?
……ねてない。
はいはい、そうだったね…。
……もう、ねる?
そのつもり…。
…なら。
ばぁか…。
ここはベッドの上じゃない…。
…。
…エリス。
ん……。
…この辺に来るの、久しぶりだね。
うん…。
…覚えてる?
おぼえてるよ……。
…そっか。
……にかいめ?
ん、そうだね…。
……もう、だいじょうぶだよ。
…これくらいの高さならね。
ん、ナディ……。
……。
…どうしたの?
……エリス、さ。
ん……。
…どこかに、落ち着こうか。
……え?
あんたの躰の事もあるし…。
おちつくって…?
…どこかで暮らすってこと。
たびは…
…その時は止める。
……だめだよ。
…。
そんなの、だめ…。
…どうして?
だって…。
…旅はまた出来る。
でも…
……。
…あんたは一人しかいない。
あんただけじゃない…。
…ナディ。
……お腹の子にも、その方が良いとおもう。
だめ……。
……。
…そんなのだめだよ、ナディ。
駄目じゃない。
……。
…考えてた。
ずっと。
……きいてない。
そりゃ、今初めて言ったから。
…いつから。
前から。
…あかちゃん、できたから?
……そう、かな。
……。
なんとなく、だったけど…。
…。
…これ以上、あんたに負担は翔けられない。
だいじょうぶだよ…。
……。
…あんてい、してるから。
今は、ね…。
…ねぇ、だいじょうぶだから。
やめるなんて、いわないで…。
…これは、あんたの為だけじゃない。
……あかちゃんのため?
……。
ねぇ、そうなの…?
…。
あかちゃんがいなかったら、そんなこと…
…エリス。
……。
これは、あたしの為でもあるのよ。
ナディの……。
…そ。
……。
…コイユルとアキラと、別れたら。
……いや。
……。
ナディ……。
…これはあたしの我侭、だから。
……。
…あんたを守りたい。
お腹の子供を守りたい。
……ナディ。
旅は…また出来るよ、エリス。
……。
…また、付き合ってくれるでしょ?
ひとりたびは、なし…。
…そう、無しだから。
……。
……もう、決めたから。
だから。
…ひとりで、きめたの。
……。
ひとりで、きめちゃったの…?
…ごめん。
……。
エリス……。
…ねぇ。
うん…?
…アキラ、は?
もう、寝てるよ。
疲れ、相当溜まってるみたい。
……。
…本当だったら。
あの町であの藪医者と暮らしてた筈だしね。
……コイユルは。
あの子も疲れてる。
体、治りきってないしね。
アキラがいなかったら……。
…。
それでも、アキラよりは順応性が高いかな。
ずっと。
……どこ。
火の、向こう側。
毛布、持ってきて。
……。
…本当はあんたも横に、ん。
……。
…こら、なにすんだ?
……して。
…。
…キスを、して。
……キス、ぐらいなら。
…それだけじゃ、いや。
ここはベッドの上じゃないって、言ったでしょ…?
……でも、してくれたよ。
…。
まえの、わたしなら…。
…疲れが、残るから。
……かまわない。
構え。
……や。
…アキラとコイユルがいる。
ねてるよ…。
……キス、してあげるから。
…それだけじゃ、たりない。
エリス…。
……ナディが、ほしいの。
いま、ほしいの…。
…もう少し、だから。
そしたら…ぅ。
……。
…エリス。
……もっと、かんじて。
指、噛むな…。
……じゃあ、かんで。
…。
……ナディ。
ばか、そんな声出すな…。
……ぁ。
…。
ナディ…ナディ……。
…聞こえる。
アキラは兎も角、コイユルは気付く…。
……。
…我慢、出来るの。
する…するか、ら。
……ばか。
あ……。
……。
ん、ん……あ、はぁ…ぁ。
…声、出てる。
……ぅぅ…。
……。
ふ……。
……。
…ナ、ディ。
……。
…きて、はやく。
……エリス。
…?
…指、噛んで良いから。
でも…。
…良いから。
……。
……入るよ。
ん……。
……。
ん、んぅ……。
…つ。
…っ、……。
………エリス。
…はぁ。
……。
…うごかない、の。
……これで、良い。
やだ…うごいて。
…これで良い。
けど……。
……続きは、きっと、するから。
したいから…。
……。
今は…これだけで。
……ナディ。
…コイユル。
……。
今でもあたしに似てる…?
…う、ん。
そっか……。
…でも、おなじじゃない。
……。
ナディには、わたしが、いるから…。
……。
…わたしは、ナディのだから。
うん……。
…あ。
……愛してる。
ナディ……。
…だから。
…なぃ…で。
え…?
……ひとりで、きめないで。
……。
ちゃんと、はなして…。
……エリス。
…わたしは、ナディの。
でも、ちゃんとはなして…ひとりで、きめないで。
……あたしは、エリスの。
…。
…ごめん、エリス。
ちゃんと、話そう…。
…ナ、ディ。
……二人の事、三人の事。
ちゃんと…二人で、決めよう。
……いえっさ。
...nueve
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