ナディ・キジャ・カサドール。
…。
貴女は…エリス・エル・カサドールを人生の伴侶としたいですか。
…もう、とっくの昔にしてるけど。
ナディ?
…はい、したいです。
ならば。
順境にあっても、逆境にあっても、健やかなる時も、病める時も、
これを愛し、これを敬い、その命のある限り、忠実を尽くす事を誓いますか。
……。
誓いますか?
…命が尽きようと。
…。
ずっと、愛する事を誓います。
…宜しい。
では、エリス・エル・カサドール。
…はい。
貴女は……。
ちゅー!ちゅー!
……。
…しぃ、ロント。
ちゅーむが。
ごめんなさい。
続けてください。
…こほん。
エリス・エル・カサドール。
……。
あなたはナディ・キジャ・カサドールを人生の伴侶にしたいですか。
…はい、したいです。
ならば、順境にあっても、逆境にあっても、健やかなる時も、病める時も、
これを愛し、これを敬い、その命の……その命が尽きようと、忠実を尽くすことを誓いますか。
…はい、誓います。
宜しい。
ナディ、エリス、主は貴女たちの間に愛を育み……。
…ふぁぁ。
……。
…ナディ。
だって、長い…。
…こほん。
では、誓いの口付けを…
ちゅー!
待ってましたー。
……あーもう。
はい、ちゃっちゃっとやっちゃいなさい。
…。
…ブルーアイズ。
見せ付けるんでしょう?
はい、どうぞ。
……。
で、でも…あ。
ちゅー、ちゅー。
キース、キース。
…エリス。
ナディ、待っ…ん。
ちゅー!
良いぞー、もっとやれー。
リリオ、人が変わってるわよー。
……て、言ってるけど。
もう、だ…ん、んぅ。
エリス。
…。
エリス。
…。
やっぱり、あんたが作るごはんの方が美味しい。
…ナディの、ばか。
……。
あんなキス…しなくたって、良いのに。
…。
ばか…。
…ん。
分かってない。
……。
ナディ。
…来なかった。
…。
でもまぁ、姿は見られたから。
…うん。
…。
…あまり、飲みすぎないでね。
勿論。
夜に響くから。
…。
初夜、だっけね。
…もう、違う。
……。
……。
…良い天気だ。
……うん。
エリス。
…なぁに。
この湖の名前、教えたっけ?
…ウィニャイマルカ。
そう…ウィニャイマルカ。
永遠の、場所…。
……。
…私の、永遠の場所。
ティティカカ。
…え?
とも、言う。
今は。
…それも、昔の言葉?
今の言葉に直すと…ピューマの岩。
……。
ティティがピューマ。
カカが岩。
…うん。
でも。
…でも?
ティティとカカは、本当は違う言葉。
……。
カカ、はあたしがあんたに教えた昔の言葉。
ばあちゃんが主に使っていた、言葉。
…ティティは?
昔の言葉じゃないの…?
昔の言葉だよ。
……。
ばあちゃんはもうひとつ、話せた。
それがもう一つの昔の言葉。
…ナディは?
あたしは少ししか分からない。
覚えてないの…?
本当に分からない。
教われなかったから。
……。
……。
……。
……。
…キジャ。
ロント。
…。
ちびのロントは、どこに行ったんだか。
…多分、また遊んでると思う。
リリオに迷惑、かけてなきゃ良いけど。
…あの子とは。
…。
正反対、だね…。
…そうでもない。
…。
どこか、似てるものがある。
あたしはそう思う。
…ナディが、そう言うのなら。
まぁ、手はずっと掛かるけどね。
我侭放題だし。
…ふふ。
……。
…ナディ。
あんたの作ったごはんが、食べたい。
…これもおいしいよ。
私が作るよりも
でも、あんたのごはんの方がおいしい。
…我侭。
ロントの事、言えない…。
…。
…。
…もう一人、作ろうか。
…。
もう一人くらいなら…。
…ばか。
ねぇ。
……。
ねぇねぇ。
……。
ねぇねぇ、どうしてこなかったの?
……。
おねえちゃんは?
どこ?
……。
ねぇねぇ、どうしてー?
……。
うー。
……。
まぁ、いっか。
また、あそぼ。
…ごはん、一緒に食べなくて良いの?
たべるよ。
でも、あそぼ。
…食べてからでも、良いわ。
じゃあ、いっしょにいこ。
……。
“ロント”もいっしょにいこ。
…行けないの。
ね、どこにいるの?
……私は。
ね、いこ。
行けないの。
?
なんで?
……。
ナディ、むかえにいけって、いったよ?
だから、いこ。
……。
……行けない。
うーー。
…貴女も、そっくりなのね。
うん、ロントはエリスにそっくりなんだよー。
…いいえ。
わぅ。
…あの人に、そっくりだわ。
腹立だしいくらいに。
あーうー。
瞳の色、これから先、必ず持つであろう、揺るがない意志。
あの人と同じ…。
あのひとって、だれ?
…。
?
ねぇ、おねえちゃん。
…なぁに。
ごはん、たべよ。
たべて、ロントとあそぼ。
……。
みんなで、あそぼ。
…ごめんね、ロント。
もう、行かないといけないの。
えー。
あの子が…呼んでるから。
あのこ?
あのこって、だれ?
…エウレカ。
えう?
どこかの言葉で、見つけたって意味…あの人が教えてくれたの。
…。
私は、見つけたの。
やっと…。
……。
…ずっと、私だけを見ていてくれたのに。
それを認めるまで、時間、いっぱい掛かっちゃったの…。
ふぅん。
…もう、行くね。
ばいばい…小さいロント。
うー、つまんない。
…そういうところ。
あの人と少しだけ似てる。
強引で。
ねぇねぇ、こんどあそんで。
また、あそんで。
いっぱい!
…うん、屹度。
やた!
…さぁ、もう行きなさい。
二人が、貴女を待ってるから…。
わ…。
…小さな、たまご。
貴女はどんな“人間”になるのかしらね…。
見つけた!
あ、リリオー。
あ、じゃない。
あまり遠くに行っちゃ駄目だって言ってるのに。
ほら、戻ろう。
……。
ロント?
おねえちゃん、いなくちゃった。
…。
ロント、ばいばい、いってないのに。
…屹度、帰っちゃったんだね。
あのね、こんどあそんでくれるって。
いっぱい!
そっか。
楽しみだね。
うん!
だから、リリオでがまんするの!
……。
うー。
全く、どこからそういう事覚えてくるんだか。
ひひおー。
ロントはそんな事、言わなかったのに。
ひょんと?
大きい方のロント。
おねえちゃん!
…元気だった?
?
貴女のお姉ちゃん。
ロント、げんき!
だから貴女じゃなくて。
もう、早く戻ろう。
早くしないとごはん、無くなっちゃう。
えー!
何しろ、くいしんぼがいますから。
ナディ!
そう、ナディ。
だーめーー!
そうそう、その調子。
ナーーディーー!!
……。
…リリオ。
…。
…ありがとう。
……ねぇ。
…うん?
今、しあわせ?
…うん、しあわせだよ。
そっか…。
…見られて、良かった。
今も変わらず、しあわせそうで…良かった。
もっと、増えるかもね。
…はは。
……。
……。
ロント…ううん。
…。
今はもう、違うんだよね。
…違わないよ。
…。
…。
…アクリャ。
それが今の、貴女の名前。
……。
会っていかなくて、良いの。
…また、会えるから。
…。
その時は、わたしの…わたし達の宝物を見せてあげるね。
…宝物、ね。
じゃあ、楽しみにしてるから。
うん…。
……。
…あの子は、妹は。
普通の子供なんだね。
全然。
運動神経が並じゃないもの。
…でも、視えていない。
……。
良かった…。
…それはエリスの心配?
……。
……。
…行かないと。
呼ばれてる。
…ロント。
うん…?
約束。
…約束?
ああ、
必ず、二人に見せてあげる事。
勿論、一番にね。
…。
貴女の、貴女達の宝物。
…いえっさ、リリオ。
うん、宜しい。
リリオには、敵わないなぁ…。
当たり前でしょ?
私、お姉ちゃんだもの。
…そっか。
そうだね。
ロント。
…はい。
また、ね。
…うん、またね。
…アリス。
……。
アリス。
……。
…顔色が少し、良くない。
どうして。
…ん。
どうして、行かなかったのよ。
…。
行けば、良かったのに。
……。
触らないで。
…元気そうだった。
それを見られただけで、十分だよ。
嘘。
…どうして?
……。
…良く、眠っている。
お腹、いっぱいになったんだね。
…。
良い子だ…。
……。
…はは、やっぱり嬉しいもんなんだなぁ。
二人の気持ちが良く分かる…。
……。
…君に、似ている。
どこがよ。
…似ているよ。
目元なんて、そっくりだ…と。
…。
むずがってる…起しちゃうところだったかな。
折角、良く寝ているのに…。
……。
…初めての恋をしたんだ。
…。
君だけがそこにいたんだ、アリス。
だから、わたしは。
…。
…いつだって、君と共にいるのを望んだ。
何があっても、もう、離れない。
…貴女の世界は、狭い。
……。
あいつらと、同じ。
…。
…狭くて、息苦しくて。
でも…殺してやりたいくらいに、温かくて。
…たまごを守っていた殻は、いつか、割れて。
雛は、外の世界を知る。
……。
雛は己で一度、世界を壊す。
そう、広い世界を知る為に。
…なのに、貴女はこのザマってわけ。
…。
……。
…目を開いた時。
どんな世界を視るのかな…。
……。
世界は、広い。
あの二人でさえ、全てを見聞き出来ないくらいに。
……。
それでも、二人だから。
一人だった頃より、確実に、世界は広がった。
…逆よ。
…。
実際は、とても狭くなった。
そう、他者が入り込めないくらいに。
……。
…誰も、入れない。
そう、貴女でさえ…。
…それは違うよ、アリス。
…。
わたしや…ロント、リリオに、ブルーアイズ、それから、リカルド。
あの二人が旅で出会った人々…そして…。
…。
…そして、アリス。
みんな、あの二人の世界の中で生きている。
みんな含めて、二人の世界なんだ。
……どうだか。
…。
…。
…一人では限界がある。
二人でもあるだろう。
…。
三人なら。
やっぱり、あるかも知れないけど。
それでも世界は広がっていく。
そう、幼子が育っていくように。
……貴女と同じだわ。
うん…?
…いつか、自分の世界へ旅立っていく。
そうしたら…。
……そうして、世界は広がっていく。
…。
愛された事。
今も愛されている事。
忘れる事無く。
…私には分からないわ。
所詮、私は創られた存在だから。
…。
…愛とか。
そんな不確定で不安定なもの…。
……。
…本当、莫迦みたいだわ。
ねぇ、アリス。
…。
…この子は、温かいね。
ちょっと熱いくらいだ…。
……。
…命と命が、繋がって。
そして、新しい命が生まれる。
……。
…良く眠っている。
寝顔はアリス、君にそっくりだ。
……。
君も少し、眠った方が良い…疲れたろう?
…触らないで。
……。
…妹。
考えている以上にそっくりで、少し可笑しかったな…。
……。
もう一人の、わたし。
あの子はどんな名前を貰うんだろう。
……。
…ねぇ、いつか。
この子を二人に…みんなに見せてあげても、良い?
……。
…屹度、笑ってくれる。
君にそっくりだって、言ってくれるだろう…。
…ロント。
うん…?
貴女に…。
…ん、アリス。
あんたに、そっくりなのよ。
お…。
そう…忌々しくなるくらいに。
……。
……あいつにも。
血、なのかな…。
…。
でも、わたしから言わせると君に似ているよ…。
…莫迦じゃないの。
ふぁ…。
……。
…わたしもちょっと眠ろう。
アリス…おやすみ。
…だから、触らないで。
うん……。
……。
…。
……ロント。
なに…?
……あんたは、ロントだわ。
…。
何も変わらない…何も。
…うん。
……莫迦で、大莫迦で。
うすらタコス、で…?
……。
…おやすみ、アリス。
目が覚めたら…また、旅に出よう。
……。
……アク、リャ。
色々、考えたんだけどね。
でも、その名前は…
同じじゃ不満か、やっぱり。
そんな事ありません。
ありません、けど…。
けど、なんだ?
…それはナディの
ばあちゃんの、名前。
……。
ばあちゃんの、だ。
…そんな大事な名前。
わたしが貰っても、良いんでしょうか…。
良いよ。
……。
ばあちゃんも、駄目だとは言わない。
多分。
……。
意味は?
教えたっけ?
…選ばれた。
そう。
太陽の…処女。
あたしの村では、子供が一人前になるとその証として新しい名前を子供に贈った。
……。
贈られた子供は、その日から、その新しい名前を名乗る。
だから、ロント。
…。
たった今から、あんたは。
…アクリャ。
そう。
……。
ばあちゃん曰く。
昔は子供がちゃんと大きくなる事が奇跡のようなもんだった。
だから、ちゃんと成長してくれた子供に新しい名前を贈った。
生まれてきてくれた時と同じように。
……。
そんな顔、するな。
新しい名前を名乗るようになったとしても、あんたがロントじゃなくなったわけじゃない。
…ナディ。
ロントと言う名前は、あんたが知ってる通り、エリスが名付けた。
…。
あたしも一応考えたから…まぁ、二人で決めたようなものだけど。
それでも、名付けたのはエリス。
…うん。
新しい名前はナディが。
事あるごとに、エリスに言われててさ。
…。
それでもあたしは、心の中では、新しい名前なんて必要ないんじゃないかって。
エリスが付けた名前だから、それ以上の名前なんて、あたしには思いつかないから。
…。
でも…エリスは望んだ。
あんたが…一人前になった証だからって。
……。
アクリャ・ロント・カサドール。
…あ。
本当に大きくなった。
……ナディ。
背丈。
追い抜かされたこと、エリスは本当に喜んでいた。
…知って、ます。
ごはん、ご馳走だったっけ?
…はい、とても。
アクリャ。
…はい。
守りたいもの、守れ。
…。
一応、教えられる事は教えたつもりだけど。
足りないものがあったら、自分で何とかしろ。
いえっさ、ナディ。
良し。
じゃあ、エリス。
…ん。
この子は今日から、
アクリャ、なんだね…。
…エリス。
大きく、なったんだね…。
……。
……もう、私達の
わたしは、今日から、アクリャだけど。
でも、エリス。
…。
わたしは、ロントだから。
貴女達の子供である事、何も、変わらないから。
…うん。
うん……。
ナディ、エリス。
……。
……。
わたしを、生んでくれてありがとう。
わたしを、育ててくれてありがとう。
……。
……。
わたしに、たくさんのものをくれて、ありがとう。
…こっちこそ。
私達の子供に、
生まれてきてくれて、
大きくなってくれて、
ありがとう。
ありがとう、ロン…アクリャ。
知ってる?
魔女はね、赤毛の狩人に恋をするんだよ。
えう・かざど!
エル・カザド。
ロントの髪の毛も赤いね?
ロントもかざど?かざど?
ロントは違うね。
まだまだ、小さいし。
えー。
じゃあさ、ロント。
どんな事があっても、ロントは魔女を守ってあげられる?
られるー!
世界が敵になっても?
せかい?
そう、世界。
…。
その魔女さえ、いれば。
それで良いって、本気で思える?
…。
ちょっとロントには難しいか。
たまご、だから。
ロント、まもれるよ。
まじょ、まもるの!
本当かなぁ?
ほんとだよ!
だって、どんな事があっても、だよ?
できるよ!
ロント、えう・かざどのこどもだもん!
子供、子供ねぇ。
そうなんだけど、ロントがそうなれるとは思えないなぁ。
なれるもん!
ロントのおねえちゃんもかざどだもん!
だからって、小ロントもなれるとは限りません。
むーー!
そもそも大ロントはおねしょした事、無いだろうし?
ロントもしてないよ!
へーぇ。
じゃあ、エリスに聞いちゃおうかなぁ。
う。
ほぉら、お姉さんに素直に言ってごらんなさい?
し、してないもん!
おねしょなんか、あかちゃんがするんだもん!
ロント、あかちゃんじゃないもん!
へぇ、じゃあ赤ちゃんの時にしちゃったんだ?
してない!
良いの良いの、ロントはまだまだ、お子ちゃまなんだから。
おねしょの一回や、十回くらい。
うー!
小さい方は、なかなか、子供らしいわね。
おかげで手が掛かる。
上の子が特別だったのよ。
ねぇ、エリス。
…ん。
魔女は赤毛の狩人に恋をする、ね。
それは私も該当するのかしら。
は。
あら、私だって一応は魔女よ?
一応、ね。
…ブルーアイズは。
うん?
ナディの事、好きだった?
…。
私が?ナディを?
魔女、だから。
そうねぇ。
あたしは、エリスのエル・カザドだから。
知ってるわよ。
エリス、私は年下、しかもお子ちゃまには興味無かったの。
…こっちだって機械女なんか願い下げだ。
じゃあ、今は?
今?
過去形、だから。
そうね…今は良いかも知れないわね。
ほら、自分より若い方が歳を取った時に良いじゃない?
…?
そうなの?
ええ、そうなの。
…。
エリス、こんな奴の話を真面目に聞かなくたって良い。
…ねぇ、ブルーアイズ。
ん?
私は…ナディが年上でも年下でも良いよ。
ナディは、ナディだから?
…うん。
良い歳してるくせにお子ちゃま、でも?
…それは幾つになっても、治りそうにないから。
取り分け、夫婦の営みとなるとでしょう?
……。
貴女も大変ねぇ。
…大変、では、ないけど。
でも、大変でしょう?
体力的に、とか。
……でもナディ、優しい、から。
それでも限度はあるわよねぇ。
ねぇ、エリス。
…?
もしも、三番目なんて求められたら。
応えて、あげる?
え…。
と言うより、もう求められていたりしてね?
……。
ブルーアイズ。
何かしら?
人んちの家族計画を詮索するな。
下世話にも程がある。
じゃあ、計画しているのね?
そんな事は言ってない。
エリス、もうこの話は続けなくて良い。
……もし、も。
エリス。
求め、られたら…嬉しい、から。
……。
然う。
ナディ。
…何。
今更、だけど。
大事にしないと駄目よ。
あんたに言われるまでも無い。
十何年越しでも、結婚式は結婚式だから。
けじめは大切でしょう?
言われるまでも、無い。
はいはい、然うね。
エリス。
…ん。
私はナディの事は好きよ。
それから、貴女の事もね。
……。
恋、とは違う。
それが先刻の問いの答え。
…うん。
うぅ……。
ふふ、良く寝てる。
電池切れ。
ま、あんだけ食って、あんだけ遊べばね。
ロント、楽しそうだったね。
もう少し、他人と触れ合う機会を作ってあげるべきだわ。
親子三人だけでは世界が広がっていかないもの。
ねぇ、ナディ。
うん?
この子が大きくなったら、どんな名前をあげる予定?
まだ、何も考えてない。
少しも?
こいつはまだまだ、たまご、だからね。
あぅぅ…。
ふふ、確かに。
でも、エリス。
…うん?
どうして下の子もロントにしたの?
良い名前だと思うけど、違うのにしようと思わなかったの?
……。
あれ、聞いちゃいけなかったかな…。
…ううん。
あのね、リリオ。
う、うん。
ロント、だから。
え?
生まれてきた子供は、みんな、ロントだから。
それはナディとエリスの子供は、ってこと?
……。
エリス?
可能性のたまご、て、とこかな。
子供なんてものは、さ。
ナディ。
ロント。
もし、次もあったらその子もロントかな。
そうすりゃ、大中小、が揃う。
で、その次もあったらどうするの?
勿論、その子もロント。
大中小、じゃ、足りないけど。
その時は、その時。
ナディが言うといい加減に聞こえる。
あはは。
いい加減、だもの。
なんだと、この機械女。
寝てると更に可愛いわね、おちびちゃん。
…ナディにそっくりなの。
つまりはお子ちゃまって事ね。
…ん。
エリ
ちゃんと、考えて。
お。
名前。
ちゃんと、考えて。
ん、分かってる。
人数分。
同じのは駄目。
一人ひとり、違うから。
分かって
貴女の、子供だから。
お…。
…次、生まれてくる子も。
貴女の子供だから。
あ、うん…。
いい加減は、絶対、だめ。
…はい、分かってます。
あはは。
ナディはなんだかんだで、エリスに頭が上がらないよね。
…。
…ま、惚れてるしね。
今でもべた惚れ?
ま、そんなところ。
エリスも?
…言わない。
聞きたいんだけど。
ナディ、すぐに調子に乗るから言わない。
聞きたい。
いや。
エリス。
…あ。
言え?
…いや。
じゃあ…後で言わせようかな。
ばか。
と…。
…すぐ、調子に乗る。
だってエリスが
ところで、ナディ、エリス。
つまり、三人目もありという事よね。
…え?
あ?
三人目。
若しかしてもう、お腹に仕込んであるのかしら?
…ッ。
まだ、仕込んでない。
…!
ナ、ナディ…ッ!
う、お…。
ばか…ッ!
いや、だって、まだ仕込んでは…
そういうこと、言わないで…!
そういうこと?
そういうことって?
…ッ!
ばか…ッ!
エ、エリ
下品ね、ナディ。
…は?
仕込む、だなんて。
貴女は一体、エリスを何だと思っているのかしら。
あ、ああ。
…て、あんたが言ったんだろうが!!
どうだったかしら。
ああ?!
う、ぅー…。
ナディ、大きな声を出さないで。
ロントが起きちゃう。
いや、でも
ナディ。
…いえっさ、エリス。
やっぱり、上がらない。
親がしてあげられる事なんざ、そんな無いもんだよ。
…それは上の子の事?
さて、ね。
……。
自分が親になるなんて、あの頃は一つも考えていなかった。
なるとしても、産んで貰うなんてさ。
…貴女は。
……。
自分で産みたい、若しくは、産みたかったと考えた事は?
だから、言った。
…。
一つも考えていなかったって。
…然うだったわね。
エリスと、あの子と出逢って。
あたしの歩く道は大分、変わった。
…。
あんたが、あの子と出逢う機会をくれた。
それは…一応、感謝してる。
それ、ちゃんと私の目を見て言って欲しいわね。
それから何年越しかしら?
人が素直に言えばこれだし。
…まぁ、良いわ。
何にせよ、貴女達は私を介さなくても出逢っていただろうし。
…。
…貴女は屹度、あの子を見つけてた。
そして、あの子も。
魔女様が言うと、違うもんだ。
…茶化して。
……。
…三人目、考えているんでしょう。
さぁ…。
…二番目の子も赤髪なのね。
質は、エリスに似てるよ。
…良かったわね?
は。
……。
…三番目は、エリスと同じだったら良い。
だから?
…。
あの子に似ている子が、欲しいのね。
…ふん。
でもなんとなく、三番目も赤い髪を持って生まれてくるような気がするわ。
…。
そしたら、四番目かしら?
…血統、かもしれない。
血統…?
エル・カザドのさ。
……。
…祖母の髪も赤かったよ。
だと、したら。
あ?
相当強いわね、貴女の中に流れてる血は。
然う、魔女なんかよりもずっと。
…は。
……。
…あんたは子供は?
もう、そんな歳じゃないわ。
…血の繋がりなんか、無くたって。
親子は、親子。
…。
…あたしと母がそうだったように。
貴女が言うと、違うわね。
…それはどうも。
その割には、エリスと子供を作ったけど。
生物の理、壊してまで。
…。
…。
…順番で言えば、あたしとエリスが先だから。
うん?
一人には、させたくない。
ま、上の子は相手、見つけたけど。
…親莫迦?
言ってろ。
ええ、言ってあげるわ。
…やっぱり、むかつく女だ。
有難う。
…さて、エリスのとこに行こうかな。
酔いは?
そこまで、飲んでない。
然う。
……。
……。
…悪くない。
ん…?
次はエリスに似ている子を作る。
莫迦ね。
そんな思うように行くわけ、無いじゃない。
子育てと同じ、よ。
あんたに言われたくない。
ふふ。
…エリスは。
…。
あたしの子供、お腹の中に抱いている時。
酷く仕合わせそうな顔をしてた。
上の子の時も、下の子の時も。
…。
まるで
宝物を抱いているような?
…。
宝物なのよ。
女にとって、愛しい人の子供は。
…。
掛け替えの無い時間、なのよ。
妊娠している期間は、屹度。
孕んだ事、無いくせに。
それはお互い様。
…。
…エリスは貴女を愛してるから。
そして、貴女もエリスを愛しているから。
…。
だから、仕合わせなのよ。
これからも、ずっと。
…。
…私の両親も、然うだったら良かったのに。
……。
それにしても。
惚気、有難う。
…どういたしまして。
いつまで私は貴女達に見せつけられるのかしらね。
一生、じゃないの。
ここまで来たら。
言ってなさい。
……。
ナディ。
…何。
結婚、おめでとう。
…とっくにしてたけど。
本当、捻くれてるわね。
…本当に良く寝てる。
これなら夜中、起きないかな…。
…。
リリオ。
うん。
ロントの事、お願いね。
うん、任せて。
エリスはナディと、ね?
…。
初夜?
…もう、リリオ。
ナディは欲しくてしょうがないみたいだから。
エリスに似ている子供。
……。
小ロントも赤い髪だったね。
…あの人の子供だから。
これじゃ、間違いようが無いよね。
…それが、嬉しいの。
でもそれでもナディはエリスと同じ色の子が欲しいんだよ。
……困った人。
うわ、仕合わせそう。
…。
応えて、あげるんでしょう?
…もう。
…。
そんなに時間、無いから…。
そんな事無い。
急げばもう二、三人は産めちゃう。
…リリオ。
ナディ、喜ぶよ。
…子供と変わらない。
そんなナディが愛しくて仕方無い、と。
…。
あーあ、小ロントがもっと早く産まれてたらなぁ。
…ごめんね。
でも、歳なんて関係無いから。
……。
その時は貰っても良い?
…リリオが良いのなら。
やった。
……。
…ね、エリス。
うん…?
ナディとエリスの命は二人のロントに繋がっているんだね。
…。
そのうち、三人になるかも知れないけど。
…人と人は。
……。
命と命は、繋がっている。
どんな形でも、必ず…。
…ナディに教えて貰った?
ん……。
…良いなぁ。
そういうの。
リリオ。
うん?
私達は貴女の仕合わせを、いつだって、願ってる…。
…。
…そう、いつだって。
ありがとう…エリス。
…。
でも、ナディみたいな人はそうそういないしなぁ。
だから、エリスが羨ましい。
…子供みたいな人なのに?
子供みたいに一途、とも言えるから。
…。
どうせなら、一途に、愛されてみたいな。
……うん。
大ロントも一途だった。
でも、小ロントはどうかな。
…荒くれ者、かも。
荒くれ者?
ナディにそっくりだから。
そう、上の子よりも。
あはは。
…もし、夜中に起きたら
大丈夫だよ。
でも、遊んでって言われると思うから。
そうしたら、一緒に遊ぶから。
夜中の一時でも。
…。
だからエリスはナディと、いっぱい、愛し合って?
初夜、なんだから。
…も、う。
かわいい。
…。
…そろそろ、ナディが迎えに来るかな。
あの人、は。
…うん?
いつだって、私を愛してくれる…。
…。
私に、あの人の赤ちゃんをくれる…。
…。
…本当なら、あの人だって産めたのに。
私に…人間である事すら捨てて、全部、くれた。
エリス…。
…でも、あの人は。
……。
仕合わせだって、いつも、言ってくれるの…。
耳の傍で、
甘く、囁くように…?
…。
ナディは嘘は言わない。
と言うより、吐けない。
でしょう?
…う、ん。
三人目。
楽しみにしてるね。
……ナディ、が。
迎えに、来る…?
…。
じゃあ、行かないと。
ロントはお姉さんに任せて。
…いえっさ、リリオ。
……。
……。
エリス。
…ん。
結婚、おめでとう。
とてもとても、綺麗だった。
…ありがとう、リリオ。
いつか。
…。
大ロントにも言ってあげたいな。
…うん。
ほら、エリス。
…なに?
月。
…。
輝いてる。
…うん。
帰りたくなる?
…?
ハポンの昔話でそういうの、あったような気がするから。
…私の帰る場所は、あそこじゃないから。
…。
私は月のお姫さまじゃないから…。
…エリス。
私の帰る場所は、貴女だから…。
…知ってる。
言ってみただけ、だから。
ばか…。
……。
……。
…少し、明るいかな。
う、ん…。
でも。
…ナディ。
……。
…?
よ、と。
…。
んー…このベッド、ふわふわだ。
…ブルーアイズが用意してくれたから。
後で請求されそうだ。
…ふふ。
エリス。
…。
おいで。
…う、ん。
……。
ナディ…。
…とりあえず、ここに。
ん…。
……エリス。
なぁに…。
今夜は久しぶりにあいつに気を使わなくても…?
…ばか。
夜中に躍らされるあたしの身にもなってみろ…?
…ナディの子供だから。
あたしは夜中、飛んだり跳ねたりしない…。
…私の中で、暴れるくせに。
でも、いつもじゃない…。
…がっつく、し。
それはいつも出来ないから…。
…昔と、変わらない。
そう、あたしは変わらない。
ん…ナディ。
あんたを愛してる…これからも、ずっと。
……。
…ふわふわのベッドなんて、慣れないけど。
でも…エリス。
…ねぇ、ナディ。
ん…。
…また、こうやって抱いてくれる?
…。
…お腹の赤ちゃんと私、包むように。
勿論…。
……。
エリス…。
…愛、してる。
…。
貴女を、愛してる…。
…あんたを、愛してる。
ナ、ディ…。
……。
…あ、…ぁ。
三番目、は…。
…。
…あんたにそっくりだったら、いい。
だめ…。
…なんで。
だって…。
…だって?
そうしたら、ナディ…わたし、より…。
…ばか。
そんなわけ、あるか…。
……。
…あくまでも子供は、子供。
あたしの相棒は…
…あ、ん。
あんただけ、だ…。
…はぁ。
エリス……あたしの、エリス。
…ナディ…わたしの、ナディ……。
…ん。
…。
ああ……。
…。
また、あのおとだ…。
…あのおと?
そう…あの、おと。
なつかしい、おと…。
…。
…そっか。
あ…ぅ。
やっぱり、あのふたりは…なかよしふうふだ。
……やだ、ねむい。
うん、ごめん…。
…。
…ねぇ。
……や。
…あのおと、は。
きみのなかからも、うまれたんだよ…。
…。
…きみと、わたしが、ひとつになったときに。
たしかに、きこえたんだ…。
……いの、ちの。
うん…。
……。
…あいしてるよ。
…。
あいしてる…。
……ばか。
……。
…つぎの、こも。
……ん。
あなたににた、こどもが、いい…。
…また?
そう、また……。
…しょうがない、な。
ん…。
あんたがそう、のぞむなら……しょうがない。
あたしは、あんたのねがいを、かなえてあげたいから…。
…。
…でも、わからないけど。
エル・カザド…。
……。
…。
…かさなった、かな。
ないしょ…。
…ちぇ。
ナディ…。
…ん。
お…。
……ふたり、だから。
……。
こんや、だけ…だから。
…いえっさ。
ナディ……。
エリス。
……。
エリス。
……。
…エリス。
……ん。
……。
…ん…ん…。
……。
……ばか。
無防備だったから?
…もう。
あったかいのは、分かるけど。
風が出てきたから、中に入った方が良い。
……。
躰に障る。
…うん。
……。
もう、駄目。
しないって。
…。
体調は?
…平気。
うん。
……あともう少し。
…。
あと、もう少し…。
…うん。
……。
けど。
…。
…本当だったらもう少し、早い予定だったんだけど。
……。
やっぱり思い通りにはいかないもんだ。
…本当は。
ん?
…一人貰えただけで、仕合わせだった。
知ってる。
…ナディの躰に負担を掛けるから。
あんたに比べれば、大した事じゃない。
……。
欲しかった。
それで、良いじゃない。
…単純。
はは。
……。
ところで、エリス。
…なぁに?
ちびはどうしてると思う?
…もう、ちびじゃない。
そうかな。
私、追い抜かれちゃったから。
身長は、ね。
…ナディにそっくり。
そっくり、ってほどじゃないと思うけど。
ううん、そっくり。
特に好みとか。
好み?
魔女が好き?
…あ?
似てる。
言葉を返すけど、あたしはあんたが魔女だから好きになったわけじゃない。
…知ってる。
だったら…ん。
……。
…それは、誘ってる?
……ばか。
乗るけど…。
…だめ。
それは残念…。
…ねぇ。
うん…?
今、どこら辺にいるのかな…。
さて、どこかな。
…ウィニャイマルカ。
……。
見つけられるかな。
…さぁ、どうかな。
……。
…もう、見つけているのかもしれない。
だから…。
……ね。
ん…。
…吃驚、するかな。
どうかな。
…するね、屹度。
あの子は分かってるからなぁ。
…分かってる?
あたし達の事。
……。
仲良し夫婦?
…あ。
でも、どんな顔するもんだかね。
…ふふ。
……。
ナ……。
……。
……。
…さて。
……もぅ。
中に入ろうか、エリス。
ん……。
...last
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