ねぇ、抱いてみて…?
…ねぇ、温かいでしょう?
…ス。
……ん。
……。
…。
……肌が、冷たい。
……。
躰に障るよ…。
…私、に。
はい、毛布。
触るなと何度言えば、
…。
……。
…体調は?
……あんたには、関係ない。
あるよ。
…。
ある。
…!
だから…!
…だから?
…。
ん…?
……莫迦でしょ、あんた。
それは…生まれつきだから。
……。
…母さんはね。
聞きたくない。
君の事、好きだったんだよ。
聞きたくないって言ってるでしょ。
でも、母さんはたった一人の人をずっと愛してたから。
だから、わたしはここにいる。
…黙れ。
わたしは…君と出逢う為に生まれてきた。
…。
わたしは、母さんの代わりじゃない。
なるつもりなんて、ない…。
ん…ん。
……。
……。
…ねぇ。
……。
触るよ。
……。
……。
……さわらない、で。
わたしの中に母さんの影を見なくなった。
……。
それが、嬉しい。
…だまれ、ガキ。
もう、子供じゃない。
…。
…もう、子供じゃない。
人間の分際で。
…人間、だからだよ。
魔女の私に…。
…。
…私は、人間なんか…に。
……。
…なんか、の。
……驚くかな。
……。
いや、驚かないかな…。
……。
…さぁ、躰を冷やす前に。
あの子も心配してるから。
…うるさい、ばか。
ナディ。
……。
良く、眠れるものね?
今日みたいな日に。
…寝てないけど。
然うかしら。
んーーー。
…。
で、何の用。
やっぱり眠っていたんじゃない。
長く賞金稼ぎ、やってたから。
…。
さて、と。
…今でも、落ち着いて眠れないのかしら?
もう、大分前から。
…あの子が居れば、かしら?
今は、いない。
……。
感覚が一時、おかしくなった。
特に初めの頃はどうにも変だった。
それでも嬉しさの方が勝ったんでしょうけど。
と言うより、仕合わせの方。
どうにも、くすぐったかった。
……。
まぁ、あんたに言う事じゃないけど。
…一人だと、今でも戻るもの?
あれは染み込んでいる。
戻る、とか、戻らないの問題じゃない。
……。
それでも。
今じゃ、あの子の感覚の方が強い。
ずっと。
それこそずっと、一緒だったものね。
……。
今となったら、独りだった時間よりも。
……。
あの頃は、まさか貴女達がこうなるだなんて。
全く計算に入れて無かったわ。
……。
どんな相手でも殺せる。
表情一つ、変えずに。
相手が仮令、歳端もいかない…然う、赤子だとしても。
……。
だからこそ、私は貴女に依頼したと言うのに。
…今でも、それはあたしの中にある。
あの子の中に魔女であるあの子がいるように。
……。
今のあの子は魔女の力を制御出来るけど。
あたしは、どうかな。
…少なくとも、私の目には。
あの子が一緒に居る限り、大丈夫だと映っているわよ。
…。
あの子が貴女を制御してくれている。
まぁ、私に言われなくても分かっていると思うけれど。
…。
そして、それはあの子も同じ。
貴女を失えば、あの子はまた、不安定だった頃に戻ってしまうわ。
屹度。
…どうだか。
意固地ね。
相変わらず。
……。
…ナディ。
…。
良い、天気ね。
…うん。
空が貴女達を祝福してくれているようね。
似合わない。
自分でも分かっているわよ。
…あんたに。
うん?
あんたに見せるの、勿体無い。
残念ね。
貴女一人のものでは無いから。
……。
…旅には?
さぁ…。
…本当、思うようにならない子ね。
……。
……。
…やっと、見られる。
……。
やっと…。
…計画性が無いにも程があるのよ。
ちゃんと計画を立てて
根無し草に計画性なんて、無い。
…何度私を、私達を驚かせてくれるのかしらね。
あんたを驚かす気も無い。
あんたが勝手に驚いているだけ。
…なんにせよ。
付き合わされるあの子も大変ね。
……。
あの子が望んだ事だとしても。
……。
……。
……。
…本当、良い天気ね。
……。
……右腕。
夢…。
…夢?
あの子を、抱いている夢。
……。
…まだ、手に残ってる。
初めて知った、命の熱の感触…。
やっぱり、寝ていたんじゃない。
…。
数秒でも眠りは眠り、よ。
あ、そ。
緊張感、貴女は持たない方なのね。
そんなもの、より。
……。
早く、抱き締めたい。
白を纏ったあの子を。
……。
白ごと、この手で。
…ナディ。
もう、待ってるの飽きた。
自業自得、よ。
…。
自分で今日の日まで延ばしに延ばした。
望めば幾らでも手筈は整えたというのに。
…あんたに整えてもらう
あるわよ。
友人、だから。
…あーそう。
行きなさい。
…。
行ったところでもう少し、待つ事になるだろうけど。
…面倒な事、してくれたもんだ。
……。
……。
…ナディ。
…。
少しは大人になれた、かしら?
生憎、あんたを追い越す事は無い。
…ああ、然うだったわ。
…。
貴女は元々、酷く、捻くれていたんだった。
あの子と出逢ってからの印象の方が強くて、忘れていたわ。
あの子には正直だって、言われるけど。
寧ろ、忠実。
己の欲望に。
……。
本当、頭の中は…と言うより貴女の中はあの子ばかりね。
…。
待たされて、不機嫌。
子供ね、本当に。
…だったら、ほっとけ。
ええ、そうするわ。
じゃあ、また後で。
…後なんか、要らないんだけど。
……。
……。
…あの子は、来るかしらね。
……。
来れば、良いわね。
だって折角の…。
Nobody knows who I really am...
……。
I never felt this empty before...
…その、歌。
今度、行くんだ。
…どこへ?
東の最果ての、国。
…そう、なんだ。
良かったね。
旅行だから、すぐに帰ってきちゃうけど。
…誰と?
内緒。
…一人は、無し?
と、言いたいところなんだけどねー。
…内緒だったのに?
あはは。
……。
……。
……ごめんね。
ん、なんで?
…あの子の、こと。
ああ。
ねぇ、知ってる?
…ん?
良い人は、世界に、たった一人だけじゃないの。
……。
まぁね。
貴女達にはお互いしか見えなかったし、いなかったけど?
…うん。
物語、歌。
人生はそんな風にはいきませんから。
…ふふ。
……。
…今は、いないの?
内緒。
…そっか。
応援、してね?
…勿論。
あの人も一緒に。
じゃあ、心強いかも。
…でも役に立つかは分からないけど。
鈍感、だから?
…ん。
それでも姑問題とか?
クリアした感じ。
…しゅうとめ?
流石に無理かな。
歳の差があり過ぎるもの。
……。
...I want you to know who I really am.
……。
I never though I'd feel this way towards you...
…綺麗な歌だね。
ね。
…貴女の声が綺麗だから。
褒めても、何も出ませーん。
…残念。
あ、こら。
…ふふ。
……。
……。
…退屈に、してるかも。
うん…屹度。
屹度、じゃなくて、絶対、ね?
…困った人だから。
嬉しそう。
ん…。
……。
……。
…嬉しい?
うん……。
……。
とても…とても。
で、も。
…ん?
こんなに時間が経ってからだとは思わなかった。
計画性、無さすぎ。
…根無し草、だから。
そんなの、もう大分前から違うじゃない。
お互いに根っこ、張っちゃったんだからさ。
…。
確かにさ、作った方が良いとは言ったけど。
……。
…でもまぁ、いっか。
なんだかんだ言っても、今日が来たんだし。
…私は。
……。
いつでも、良かったから。
あの人が…あの人と並んでいられるのなら。
はいはい、ゴチソウサマ。
…ね。
なーに?
…もう一度、歌って聞かせて?
どうしようかな。
…お願い。
高いけど、それでも?
…後払いでお願い?
じゃあ、キス一回ね。
……。
あの人と、しあわせなキスをしてる姿。
見せ付けて欲しいな。
……いえっ、さ。
……。
……。
...And if you ever need someone to come along
…もしあなたが誰かについて来てほしいとき。
I will follow you, and keep you strong....
私があなたと共にいて、強くしてあげたい…。
……。
……。
…してあげた?
……どう、かな。
あの人は元々、強い人だったから…。
…。
今だって、私はもらってばかり…。
強いだけの人なんか、いない。
誰であろうとも。
……。
貴女がいたから、今のあの人がいる。
そろそろ、そう思いなさい。
…はい。
ん、宜しい。
…。
ふふ。
…ふふ。
……。
……。
…良い天気だね。
うん…とても。
……。
……。
...We are all rowing the boat of fate
……運命の、舟を漕ぎ。
The waves keep on comin' and we can't escape...
波は次から次へと、私達を襲うけど…。
……。
……。
…それも、素敵な旅ね。
どれも、素敵な旅ね…。
あたしに子守をしろと?
子守だと感じるのならば、然うね。
冗談じゃない。
金は出すわ。
然う、貴女が望むだけの額を。
あたしが望むだけ?
は、舐めてくれたもんだ。
賞金稼ぎ。
所詮は金で動く者でしょう。
…。
この子一人守りながら、ただ、旅をするだけ。
破格だと思うわ。
殺す方が簡単だ。
…。
あたしはずっと、独りできた。
今更、誰かと
依頼を受けるも受けないのも、貴女の勝手。
貴女が受けないのなら、他に当たるだけ。
あ、そ。
じゃあ、そうすればいい。
ナディ。
……。
あの子は誰にも心を開かない。
…あたしには関係ない。
旅は。
…。
あの子が心を開かぬ限り、始まらないの。
…知ったこっちゃない。
……。
…誰にも開かないのに、あたしに開くわけがない。
然うね。
貴女の言うとおりだわ。
……。
けれど、気にはしている。
していない。
幼子のようでしょう?
実際はあれで貴女と変わらないのよ。
……。
口が利けないわけじゃない。
でも、彼女の中にある言葉はあまりに少ない。
……。
ずっと、心の時間は止まったまま。
そして、誰にもその心を許さない。
何がそうさせているのか…私達には分からない。
……名前は。
エリス。
……。
もう一度、訊くわ。
この仕事を受けるか受けないか、を。
……。
……。
…ウィニャイ、マルカ。
先住民の言葉だそうね。
……永遠の場所。
意味までは知らなかったわ。
……。
彼女にとっての、永遠の場所。
それは今の心を閉ざした場所にあるのか。
それとも
…旅の目的地は?
ウィニャイマルカ。
…ふざけてる。
この子の中には貴女には理解出来ない力がある。
その力はこの子が生きている限り、無くなる事は無い。
……その力ってのは?
魔女の力。
かつては世界を創ったとも言われているわ。
…は。
本当よ。
……。
ナディ。
…一つ、聞く。
何かしら。
どうして、旅なんか。
…。
ここに置いておいた方が、少なくとも、身の安全は保障されている。
……。
教えて。
魔女の力は、いずれ、心を蝕んでしまうでしょう。
開く、開かない、関係無く。
…。
それ程までに、それは…本来ならば、この世に在ってはいけないものなのよ。
……。
信じるも信じないも、貴女の勝手。
けれどここまで知った以上、
やる。
……。
守りながら、旅をすればいいだけなら。
……。
……。
…時々、様子を伝えて頂戴。
つまり、監視ってわけ?
……。
……今から?
貴女の支度が整っているのなら。
そんなの、初めからない。
…ふ。
……。
…ナディ。
……。
最悪の事態も考えておかないといけない。
……。
その時は…躊躇無く、殺しなさい。
……。
簡単なのでしょう?
…嫌なやつ。
有難う。
……。
守って、あげて。
…生憎、賞金稼ぎだから。
だからこそ、よ。
……。
あんたが、エリスね。
……。
これ、あんたでしょ。
……ちがう、よ。
どこからどう見ても、そうにしか見えない。
…ちがう。
やっと、見つけた。
…?
あたしは、ナディ。
…あなたも。
ん?
わたしを、ころしにきたの…。
……。
だったら、ころして…もう、いいから。
もういいって?
……おかね、ほしいんでしょ。
…。
だったら、ころして…。
…エリス。
もう、いいの……もう…。
……。
…しんじゃった、から。
あのひとは、もう、いないから…。
あの人って?
……。
……。
……わたしの、たいよう。
太陽、ね。
それは王かなんか?
……。
……。
…だから。
太陽は、沈む。
けど、また昇る。
太陽は死なない。
……しぬよ。
だってもう、いない…。
……。
…いない…いない、のに。
行こうか。
…う。
旅に。
…た、び。
ウィニャイ、マルカ…。
……。
…えいえんの、ばしょ。
行くよ、エリス。
…いかない。
…。
あなたも、しんじゃうから…。
死なない。
…しんじゃうよ。
勝手に殺すな。
……。
行こう、エリス。
……。
さぁ、
『いこう?』
…ぁ。
……。
……やくそく、して。
何を。
しなない、で…。
だから、勝手に殺すな。
……。
好きなところへ。
旅はそういうものだから。
……すきな、ところ。
ウィニャイマルカ、どこにあるか分からないし。
……。
少なくとも、ここにいたら。
いつまで経っても、辿り着かない。
……。
だから。
……ナ、ディ。
行こっか、エリス。
旅に。
……う、ん。
……あたしが、死のうとも。
……。
君が、生きてる限り…
……。
命は、続く……。
……。
…ふぁぁ。
……。
あーあ…。
……。
……。
……。
…エリス。
……?
女の支度とは、かくも、時間が掛かるもの。
そんなこと、誰かが言ってったっけ…。
……。
全く、その通りだ…。
……。
…今日も、高い。
……ん。
青いし……広い。
……。
……。
……。
……エリス。
…なぁに?
やっと反応、したな。
…本当に退屈そうにしてたから。
してたよ。
お陰さまでね。
……。
…で。
そっち、向きたいんだけど。
…まだ、駄目。
まだ、ね。
それはどうしても?
…どうしても。
じゃあ、良くなったら呼んで。
……良いの?
ここまで、待ったから。
……。
もう少しなら、待てる。
…待ちくたびれているくせに。
……。
……ナディ。
ん。
…もう少しだけ、このまま。
もう少し、ね。
そう、もう少しだけ…。
…。
…でも、寝ないで。
起こして貰おうと思ったんだけど。
…だめ。
あ、そ…じゃ、起きてるかな。
頑張って。
……。
……。
…ナディ。
うん?
…ナディの背中。
…。
……やっぱり、あったかいね。
生きてるから。
……うん。
エリス。
…なぁに。
晴れて、良かった。
…。
どっかの青目曰く、祝福してくれてるんだってさ。
…らしくないね?
それ、本人直接に言ってやれ。
…ふふ。
……。
……。
…あたしが、死のうとも。
…。
君が、生きている限り…
…命は、続く。
……。
…でも。
……。
でも、二人は一人が欠けてしまったら…。
…それでも、続く。
……。
あんたが、生んでくれたから。
…あなたが、くれたから。
……。
……。
……良い天気、だ。
空、高いね…。
…届かない。
届いたら、怖いから…。
…は。
……ねぇ、ナディ。
うん…?
……やっぱり、ね。
…。
…似合わない、と思う。
何が…?
私には、似合わない…。
…。
……だけど。
……。
…もう、良いよ。
……。
ナディ……。
……。
……。
……。
……ナ
エリス。
…はい。
ちゃんと、あたしの顔を見る。
…。
ほら、エリス。
…ばか、いじわる。
……。
……。
…綺麗だよ。
……。
思っていたとおり…いや、それ以上に。
……。
…エリス。
……似合わない、のに。
……。
こんな綺麗な白…私には、似合わないの。
…。
あ…。
…あんたが何と言おうが。
似合っているし…とても、綺麗だから。
ナ、ディ…。
……。
……。
…やっと。
ナディ…。
やっと、見られた…やっと。
…計画性、無いって。
…。
…言われちゃった。
それ、あたしも言われたな。
…根無し草、だから。
て、答えたんだけど。
…そしたら、もう。
とっくに根付いてるって、言われちゃった…。
…。
…私の根は、貴女に。
貴女の根は…私、に。
ああ。
…ねぇ、私に根付いてる?
自分で言っておいて。
…だっ、て。
エリス。
…ナディ。
ん……。
……。
……。
…もう、しっかりと。
ああ、ナディ…ん、ん。
……。
……。
…誓いのキス、だっけ。
ばか…まだ、早い。
早くない…元々、二人でするつもりだったんだから。
…も、う。
……。
…誓いの言葉、は?
ん…?
…どう、するの。
牧師さんも、いないのに…。
だから、言ったけど?
…ん、ナディ。
二人が揃えば、それで良い。
キスも、言葉も…。
……。
でも、どうしてもと言うのなら。
あたし達には、空がある。
そら…。
空は、ずっとあった。
…あなたと、出逢った時も。
そして、これからも。
だから、空に誓えば良い。
空は、無くならない。
……。
その方がいっそ、あたし達らしい。
…そっか。
そうだね…。
……。
……あなたを。
…。
…死ぬまで、愛することを誓います。
……。
…ナディ、は?
そうだなぁ。
……。
死ぬまで、死んでも愛することを誓う。
……あ。
ずっと離さない。
……私も。
……。
……離さない。
ん……。
……だから、離さないで。
そう、誓った……。
……ナディ。
エリス…。
…もう、一度。
…。
もう一度…キスをして。
…何度でも。
ばか…誓いのキスは何度もしたら、だめ。
…二度は良いもの?
ばか……ん。
……。
……すき。
エリス…。
だいすき…ナディ……。
……。
……わたしの、たいよう。
太陽は、無くならない。
…う、ん。
…いつまでも。
ずっと、傍にいる…。
うん……。
……。
……。
…そろそろ、良いかしら。
……。
……ブルー、アイズ。
勝手に二人だけで始めて。
貴女達は本当に勝手ね。
……。
…ごめんなさい。
まぁ、良いわ。
おめでとう、かしらね。
今更、なのだけど。
…。
…ありがとう、ブルーアイズ。
どういたしまして。
良く似合っているわ、エリス。
凄く綺麗よ。
……。
とてもシンプルだけど、それがかえって貴女を際立たせてる。
まるで貴女自身が花のようだわ。
……ありが、とう。
ナディが選んだなんて、思えない。
…ナディが、選んでくれたから。
から?
……。
なるほど。
だから着た、と。
……う、ん。
今は赤い花のようね。
さっきは仄かに赤いくらいだったのに。
……見てたの。
なかなか、だったから。
良い趣味ね、相変わらず。
有難う。
何しろ、暫くそういう仕事をしていたものだから。
は。
…え、と。
リリオは…?
それが私も見ていないのよ。
貴女も知らないの?
…着替え、手伝ってくれて
それからは…。
貴女はさっさと伴侶の所に来てしまったものね。
……。
ふふ、冗談よ。
さて、何処に行ってしまったのかしら。
…エリス。
うん…。
……。
……。
…分かった?
大丈夫、近くにいる…リリオも、そこに。
そ。
…相変わらず、ね。
ん…。
さて。
誓いも終わったようだし、披露宴といこうかしらね。
しない。
貴女がそういう意向でも、聞けないわ。
…。
誓いのキスは、改めて、そこで。
は?
空に、誓うのは良いけれど。
私達の前でも誓って貰わないと。
意味が分からない。
つまり、そういう意味よ。
だから、
ナディ、貴女には。
…。
エリスを一生、幸せにしなければならない義務があるの。
契約、破棄してくれた時から。
義務とか、どうとか。
そんなの、
これは一種のけじめ。
きっちり、つけて貰うわ。
…この蛇女。
あら、私も魔女だから?
一緒にするな。
エリスはあんたと違って、可愛い。
…ナディ。
どさくさに紛れて、惚気、有難う。
とは言え、貴女達は常にそういう状態だけれど。
うるさい。
子供すら、入り込めないくらいだもの。
私達が入り込めるわけ、無いのよね。
……。
それで、披露宴の事なんだけれど。
どうせなら派手にしない?
派手も何も、
こちらの人って、何事も派手じゃない?
それは偏見。
どいつもこいつも歌って踊って
…ナディ。
うん?
良いわね、それ。
じゃあ、それで。
は?!
新郎新婦に、それはもう、派手に歌って踊って貰いましょう。
するか!
……。
合わせて、オレ!とか言った方が良いのかしら。
ねぇ?
一人でどうぞ。
そういえば、先住民の人々も踊って歌ったりするでしょう?
一度、見た事があるわ。確か、花祭りだったかしら。
やりたければ、一人で
お酒、用意してあるけれど。
飲む?
…。
……ナディ。
食事も勿論。
……。
…ナディ、今日は良いよ。
酒は兎も角、あたしはあんたの作ったごはんが
はいはい、分かっているわよ。
でも、今日だけは我慢してね。
二流のシェフで。
……。
……。
何十年越しなのだから。
派手にやりましょう。
そこまでじゃない。
と言うか、あんたがやりたいだけなんじゃないの。
人間、どこかでストレスを発散しないといけない生き物なのよ。
知るか、そんなもの。
…ふふ。
ほら、エリスの方が分かっているわ。
エリス。
…楽しそうだね?
楽しくない。
あたしは
ナディ!
エリス!
写真?
うん。
私達、三人で?
うん。
だめ…かな?
写真、写真ねぇ。
…撮ったこと、無かったね。
まぁね。
ロント。
はい。
あたし達は構わない。
良かった。
でも、どこで撮るかな。
カメラ、うちには無いから。
町で撮るとなると金がかかる。
カメラ、買う…?
それもなぁ。
買ったところで、大して使わなかったら勿体無い。
フィルムもタダじゃないし。
どうしよう…?
あの、ナディ、エリス。
うん?
なぁに?
それ、なんだけど。
話、まとまったかしら?
まとまった?
あ?
あ。
どうかしら、ロント。
うん、構わないって。
そっか。
良かったね、ロント。
ブルーアイズ。
リリオ。
頼まれて、ね。
貴女達の愛娘に。
私は話を聞いてついてきちゃった。
…ロント。
いつ?
一ヶ月くらい前、です。
手紙、書いて、それで。
…。
…手紙。
でも、こんなに早いとは思ってなかったです。
ブルーアイズ、仕事で忙しいのに。
その為に調整をするのよ、大人と言う生き物は。
ブルーアイズの調整は凄いよ。
だって、機械女だから。
リリオ?
はぁい、ごめんなさい。
そもそも、貴女が私の補助をしてくれているお陰でもあるのだけど?
私だけじゃないですけど?
けれど、将来有望なのには変わりないわ。
ありがとうございます、支部長さま。
…。
…。
そういうわけだから、ナディ、エリス。
ちゃっちゃっと支度しちゃって?
…支度?
…なに、すれば良いの?
それは勿論、写真を撮る支度。
まぁ、格好はそのままでも良いと思うけど。
ありのままの方が良いだろうし。
ねぇ、ロント。
うん。
…。
…。
ねぇねぇエリス、髪の毛触っても良い?
…え。
梳かしてあげる。
一度、やってみたかったの。
う、うん。
…。
ね、ナディ、良いでしょ?
…良い、けど。
ナディは私がやってあげましょうか?
いらない。
そ。
じゃ、ロント。
はい。
…て、ロント。
少しだけ、だから。
…。
…ナディ。
……いえっさ、エリス。
来たな。
…来たね。
ナディ、エリス!
お、と。
ロント。
すごい、すごい、エリス、きれい、きれい。
こーら、どこ行ってやがった。
大人しくしてなさいって、言ったでしょうが。
ロント、いってないよ。
おとなしく、あそんでたよ。
大人しく、ね。
大人しく遊んでて、どうして、そんなに土まみれになってるんだか。
う?
顔、汚れてる。
たく、しょうがないヤツだ。
うーー。
エリス。
ん。
ロント、じっとしててね?
いえっさ!
て、言ってるそばから動いてる。
エリスまで汚す気か。
あう。
ねぇ、ロント。
リリオは?一緒じゃないの?
あそこ!
……。
……。
…あの様子だと、散々、振り回されたな。
ん…そうだね。
ねぇねぇ、まだ?
まだ、じっとしてんの?
まだ、だ。
とりあえず、じっとしてろ。
うぅ。
あーもう!
ちっちゃいくせに速過ぎる…!
おまけに飛んじゃうし…!
手、焼かせちゃったみたいで。
ごめんね、リリオ。
ううん、それは、良いんだけど…はぁ。
あぁ、きつい…歳、かな。
と言うより、鈍ってるように見えるけど。
とし、とし!
こら、ロント。
…う。
遊んで貰ったのだから、ありがとうって、言うんだよ。
あそんでもらってないよ、ロントがあそんであげてたの。
ローント。
…うー。
ありがとう、リリオ。
誰かさんと同じで退屈しちゃってたみたいだから。
…あ?
そっくりだから。
あはははは。
いや、何が面白いんだ。
ナディ、へんなかおー。
あんたも同じ顔、してるんだけど。
ロントはエリスとおなじだもん。
ね、エリス。
…ね?
ねー。
エリス。
…ふふ。
はぁ。
あー、落ち着いた。
躰、鈍ってるんじゃないの?
うん、そうかも。
また、旅に出ないと駄目かな。
あの親父と?
ううん、あの人は引退。
次は
ロントといっしょにいこ!
ロントと?
ロントと!
もう少し大きくなってからね。
もう、おーきいよ!
ほら!
どこがだ。
夜、一人でおしっこにも行けないちびっこが。
うー、いけるよー!
大きな地図、作るのだけは一人前。
ナディ。
それっておねしょってこと?
簡単に言えば。
ロント、おねしょしてるんだ?
してないもん!
してるのはナディ!
へぇ。
するか。
エリスといっつも、いちゃいちゃしてるくせにー!
それはエリスがあたしの嫁だから。
夫婦なんだから、いちゃいちゃぐらいする。寧ろ、して当然。
おねしょとは全く、関係ない。
…ナディ。
よるになると、エリスのこと、いじめてるくせにー!
…!
いじめてない。 あれも夫婦のいちゃいちゃの一つ。
エリス、くるしそうなのにー!
ナディが、のっかって、
大体、あたし達がいちゃいちゃしてなかったら、あんただって生まれて…
ナ、ナディ…!
いた。
ばか、何言ってるの…!
…だって、こいつが。
ここは家じゃないの!
リリオもいるのに!
ああ、私の事は気にしないで。
はい、続けて続けて。
リ、リリオ!
ふふ、エリス可愛い。
も、もう…。
ね、エリス。
どこからどう見ても、花嫁さんだね。
ナディ、の。
…リリオ。
ふふ、真っ赤。
夜も同じように真っ赤になってるんだろうなぁ。
夜はこんなもんじゃない。
もっと、可愛い。
だろうね。
ナディにしか見られないのが残念だなぁ。
……もう、二人のばか。
エリス。
…。
可愛い。
…ばか。
もう、可愛いなんて歳じゃない…。
歳なんて、
関係ない、でしょ?
ね、ナディ。
その通り。
…ばか、うすらタコス。
なかよしふーふ、なかよしふーふ♪
なかよしふーふ、いつもいちゃいちゃー♪
ロント、変な歌、歌わないの。
的は射ているけれど。
…ブルーアイズまで。
さっきから黙ってると思ったら。
支部長、笑いこらえ過ぎ。
それより、リリオ。
はい。
この二人、二人だけで誓いを済ませてしまったのだけど。
どう、思う?
え、そうなの?!
当然、誓いのキスも。
ナディ!
いや、それは
幾ら、エリスが綺麗で我慢出来なかったからって!
…えと。
放っておいたら、押し倒していたわね。
あれは。
そこまでは
…ナディなら、分からない。
て、エリス。
自業自得。
ばか。
いや、でも、エリスだって
…知らない。
えー…。
と、言うわけだから。
私達の前で改めてちゃんと誓うべきだと思うのよ。
当然、です。
…。
…。
見せ付けてって約束、したよね?
エリス?
…リリオ。
まぁ、別の意味で見せ付けてはくれてるけど。
貴女達はいつも、いっつも。ね。
……。
ロント、これから改めて二人の結婚式だよ。
よーく、見てようね。
けっこんしきー!
ちゅー、ちゅー!
…まぁ、良いけど。
ナディの、ばか。
エリス。
知らないの。
はいはい、痴話喧嘩は後でしてね。
ベッドの中でとか?
結婚式の夜、ある意味初夜、だものね。
…!
ロントは私が責任持って預かるから。
リ、リリオ…!
…まぁ、それも悪くない。
ナディ…!
はいはい、全ては誓いが終わってからにして
あーー!
あ?
…ロント?
ちょっと、いってくるー!
て、どこに。
どこに行くの、ロント。
あそこ!
うん?
……?
……。
……。
……あ。
おねーちゃーーん!
…あれは。
……ああ。
ね、いいでしょ?
ね?ね?
ロント。
あい。
さっきまで、誰と遊んでたの…?
?
リリオが私と一緒にいた時、ロントは
あのね、あのおねえちゃんとあそんでたの!
……。
…ナ、ディ。
あとね、あとね!
…エリス、見える?
う、ん…。
しゃしんのおねえちゃん!
ロントのおねえちゃん!
…元気そうだ。
うん…うん…。
また、あそんでもらうの!
ロント。
あい!
行け、ロント。
迎えに。
むかえ?
そう、迎えに!
駆け足!!
いえっさ、ナディ!
転ばないようにね、ロント。
いえっさ、エリス!!
…。
…。
やっぱり、速い。
あんなに小さいのに。
おかげで、捕まえるのが大変だけど。
…ナディの子供だから。
ともあれ、これで始められるわね。
ちゃんと。
…ちゃんと、ね。
……うん。
その時の形を残しておきたいって、思ったんだ。
時間は流れていってしまうから。
…。
忘れない。
けど、全てを残しておくのは無理だから。
だからせめて、切り抜いておきたいって。
その為の写真?
うん。
黙ってて、ごめんなさい。
全くだ。
…ナディ。
エリスも、ごめんなさい。
…ううん。
写真は兎も角。
青目が来るのは
貴女がカメラ、或いは写真にかけるだけの経済力があれば、わざわざ、来なかったけど。
…。
見て、エリス。
これ、どうかしら。
…わぁ。
私は良いと思うのだけど。
リリオはどうかしら?
私もこれが一番だと思う。
ロントは?
うん、良いと思う。
でも
どれも残しておきたい。
分かってるわよ?
…ありがとう、ブルーアイズ。
ねぇ、ナディ。
ナディも見てみて?
あたしは別に良い。
あんた達が気に入った
ナディ。
…いえっさ、エリス。
青目、あたしにも見せて。
勿論。
はい、どうぞ。
…どうも。
どれと決めなくても、全ての写真をプリントして送るから。
無理に決めなくても良いわよ。
…ありがとう、ブルーアイズ。
どういたしまして、エリス。
と言うか。
うん?
これ、どうやって見んのよ。
あら、知らない?
デジタルカメラ、と言うのだけど。
…うるさいな。
ロント、教えてあげて。
あ、うん。
えと、ナディ。
……。
ここを押して…そうすると。
お。
これが一枚目。
ここを押せば二枚目三枚目って見られるから。
…ふぅん。
なんか、変な感じ。
文明は常に進んで行くものよ、ナディ。
…どうでも良い。
ナディは、どれが良い…?
…。
ナディ…?
…これ、かな。
どれ…?
これ。
…どうして?
…。
ナディ?
…どれも、良いけど。
これが一番、良いから。
…。
…あんたが綺麗に写ってる。
え…。
…青目、返す。
どの写真?
どうせなら大きくプリントしてあげるけど?
……。
……。
はいはい、ご馳走さま。
家族写真なのにね。
二人は仲良し夫婦、だから。
ロント。
…?
あんたの顔も一番良かったから。
…。
だから。
…ナディが言うなら、そうなのかな。
ともあれ、全部プリントするわね。
はい、ありがとうございます。
…楽しみにしてるね。
…。
ね、ナディ…?
…まぁ。
ブルーアイズ、私も欲しい。
良いわよ。
やった。
ねぇ、エリス。
一緒に撮ろう?
え?
ナディ、エリスを借りても良い?
エリスが、良いなら。
良い?エリス?
う、うん。
ブルーアイズ、良い?
はいはい。
じゃあ、どこで撮るのかしら?
ロント、ロントも後で撮って貰おうね。
え、わたしも?
当然。
ナディもね。
オーライ、リリオ。
……。
ナディ。
…ん。
疲れちゃった?
て、わけでもないけど。
どうにも、ああいうのは慣れない。
…ごめんなさい。
でも、エリスやあんたが喜んでいたから。
それで、良い。
……これ、飲む?
ん?
ピニャ・コラーダ。
ブルーアイズが持ってきた。
…。
エリス、今日は良いって。
…そっか。
で、エリスは?
ブルーアイズ達と話してる。
ふぅん…。
…ねぇ、ナディ。
うん…?
…我侭、聞いてくれてありがとう。
こんなの、我侭のうちに入らない。
……。
写真なんて、考えた事無かったけど。
でもまぁ、悪くない。
……。
どうせなら、撮っておけば良かったかな。
…エリスの写真?
はは。
…愛してるんだね。
勿論。
……ねぇ、ナディ。
今なら。
…ん。
何個だって、聞いてやる。
まぁ、無理なものは無理って言うけど。
……。
で?
…家族の名前が、欲しい。
家族の名前?
…ナディ、エリス。
それから、わたし。
…。
そんなの無くたって、わたしたちは家族だけど…。
…それは、あたしだけじゃ無理かな。
エリスとも話さないと。
…。
あたしが育った村はさ、ロント。
うん。
そういうの、無かった。
…。
だから、考えた事も無かった。
…うん。
けど、そういうのも悪くない。
……。
ねぇ、エリス。
……。
おいで、エリス。
…。
ほら、早く。
…ん。
じゃあわたし、中に入るね。
ロント…。
話したい事、あるから。
また後でね、ナディ、エリス。
ん。
…うん、後で。
……。
……。
…ふぅ。
…良い風だね。
うん。
…あ。
……。
ナディ…。
…二人のも、撮って貰えば良かった。
今からでも…。
……。
ナディ…。
…家族の名前、だってさ。
……。
どんなのが良いかな…。
…家族の、名前。
無くたって、家族である事に変わりない。
けど、あの子の数少ない我侭だから。
…私も。
ん…?
…欲しい。
あなたとお揃いの、名前…。
お揃い…?
家族の名前、だから…だから、お揃い。
……。
ん、ナディ…ん。
……。
…ばか。
可愛かったから。
…ちゃんと、考えて。
お揃い、か…言われてみれば、確かにそうだ。
……。
でも、思いつかない。
どんなのが良いんだろう。
……カザド。
うん?
だから…カサドール。
……。
…だめ?
と、言うか。
それで良いもの?
……。
良いんじゃないかしら?
…青目。
ブルーアイズ…。
ベイカー、カーペンター、スミス。
シュナイダー、ミュラー、シューマッハ。
どれも職業に由来するファミリーネームよ。
職業じゃない。
エリスにとっては、似たようなものでしょうから?
……。
悪くは無いと思うわよ。
エリスは貴女とのお揃いを望んでいるのだから。
…。
…。
ふぅ。
少し、飲みすぎたかしらね。
...eight
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