初めての恋をしたんだ。 君だけがそこにいたんだ。 あなたがロント? …え? ふぅん。 え、えと…。 本当にそっくりなんだね。 …リリオ? 私の事、知ってるんだ? はい、エリ…母から聞いてるから。 母、かぁ。 じゃあ、ナディは? …母、です。 父、じゃないんだ? …一応。 一応? …。 ふふ。 …はじめまして。 ロント、です。 初めまして、リリオです。 よろしくね。 あの、一人なんですか? ロントこそ、一人なの? わたしは ロントー。 あ。 ロント、やっぱりこれもう駄目だ。 直さないと… ナディ。 ん? 久しぶり。 ……ロント、友達? 違うよ、ナディ。 私の事、忘れちゃったの? ひどい。 と、言われても…んー。 ナディ、エリスは? 勿論、元気なんでしょ? どこにいるの? 家の中? ……。 …ナディ、リリオだよ。 リリオ? て、あの? はい、あのリリオです。 …あー、言われて見れば。 久しぶり、ナディ。 久しぶり、リリオ。 大きくなったから、分からなかったよ。 本当にそれだけ? 忘れてたんじゃなくて? 忘れてはないよ。 エリスの話の中に出てくるし。 あー、それってエリスが話をしてくれなかったら忘れちゃうって事じゃない。 そんな事は。 ある、でしょ。 ねぇ、ロント。 えーと…。 そこはフォロー、ロント。 …ないですよ、多分。 ほら。 ロント。 わ。 で、リリオ。 あんた、一人? ううん、残念ながら。 て、事は 先に来ちゃった。 でも、ここが良く分かったね。 教えようにも教えられなかったのに。 ブルーアイズに聞いたから。 早く来たかったのに、パパがぐずぐずしてるから。 ぐずぐず、ね。 …リリオ。 久しぶり、リカルド。 …ああ。 相変わらずそうで。 …お前もな。 は、それはどーも。 ロント、この朴念仁が私のパパ。 は、はじめまして。 ロント、と言います。 ……。 え、と。 パパ、ちゃんと挨拶しないと駄目だよ。 失礼。 …リカルドだ。 そんなの、ロントはとっくの昔に知ってるよ。 そんなだからお嫁さん、来ないんだよ。 ……。 あはは、それは言えてる。 ……ナディ。 あんたとは飲まない。 …。 また、黙る。 本当、しょうがないんだから。 ……。 あ、あの、リカルドさん。 …なんだ。 話、エリスから聞いてます。 …そうか。 お前がロントか。 え、あ、はい。 ……確かに、似ているな。 そっくり、でしょ。 あたしに。 …ああ。 でもエリスにも似てるよ。 そりゃ、あたしとエリスの子供だから。 ねぇロント、ロントはナディとエリスの子供なんだ? え。 ね? う、うん、そうです。 話には聞いてたけど、そっかぁ。 ナディ、やる時はちゃんとやるんだね。 やる時じゃなくても、やるけどね。 わぁ言うねぇ、ナディ。 まぁ、ね。 パパも少しは見習ってよ。 女の人、嫌いじゃないんだから。 むしろ、好きでしょ。 ……。 リカルド、毛、抜けるわよ。 …余計な事だ。 ねぇ、お邪魔しても良い? エリスにも会いたい。 勿論。 ロント。 いえっさ。 わぁ。 …え。 やっぱり、「いえっさ」なんだ。 え、え? じゃあ連れて行って、ロント。 あ。 エスコート。 エ、エスコート? 冗談。 さ、行こう、ロント。 う、うん。 ……。 リカルド。 ……なんだ。 禿げるわよ。 …。 ま、それは兎も角。 あのリリオがね。 ……。 ま、あんたが親じゃね。 しっかりするしか、 お前に言われる筋合いは無い。 …リリオ? エリス! わ…。 久しぶり、エリス! 会いたかった! うん、私も。 本当? ん、本当。 あぁ、良かった。 大きくなったね。 ねぇ、エリス。 ナディなんて、私の事忘れてたんだよ。 ひどいと思わない? ああ。 エリス、そこはフォロー。 ナディ、お帰りなさい。 鍬、大丈夫そう? ただいま。 直さないと、使えないかな。 ……。 ロントも、お帰りなさい? う、うん、ただいま。 ? どうしたの? う、ううん、なんでもない。 わたし、お茶の支度してくる。 …ナディ? 押されっぱなしって、ヤツかな。 押され…? ……。 パパ、だから無言じゃ分からないでしょ。 …久しぶりだな、エリス。 リカルド。 それだけ? …元気そうで、何よりだ。 うん、リカルドも。 ……。 また黙る。 ナディとエリスは友達なんだから、もう少し、喋ってよ。 そんなだから ……。 …ナディ。 父親って、あんなものなのかね。 娘に頭が上がらない。 …ね。 パパ、あれは? ブルーアイズに頼まれたやつ。 ブルーアイズ? うん、今回はお使いでもあるの。 お使い、ねぇ。 パパ、早く。 ……。 まさか、無くしたんじゃないよね。 …リリオ、それはお前が持っていた筈だ。 私? …ああ。 俺が持っていると ちゃんと覚えてるよ。 良かった、パパ、覚えてて。 ……。 年頃の娘を持つ感想は、リカルド。 ……。 …大変そうだね、リカルド。 ……。 はい、ナディ、エリス。 これは、 手紙。 ブルーアイズから…? 本当は郵便屋さんに出そうとしてたみたいなんだけど、私が買って出たの。 こうでもしないと、絶対、会えないから。 ねぇ、パパ? ……。 手紙、ねぇ。 なんでわざわざ。 …携帯、あるのに。 勝手に置いていった、ね。 これは手紙が良いんだって。 ふぅん。 良く、分からんけど。 ありがとう、リリオ。 リカルド。 どういたしまして。 …。 パパ。 …なんでもない。 もう、言われないと分からないんだから。 うだつが上がらないって、こういう事を言うのかね。 ……。 ね、読んでみて。 今? うん。 だって、気になるじゃない? 駄目? 別に構わないけど。 エリス。 ん、いえっさ。 結婚式! て、誰の。 ナディ、それはわざと言ってるの? …結婚、式。 エリスのドレス姿、今から楽しみ。 んー…。 …追伸で。 忘れてるかと思って、だって。 忘れてない。 …ナディ。 あんたの体調も落ち着いてるし、ロントも大きくなったし。 じゃあ、しようか。 そんな、簡単に したくない? …。 あたしと、したくない? …ずるい。 いつ、するの? 私も呼んでくれる? それは勿論。 でも、そんな大きくするつもりはないから。 でもウェディングドレス、着るんでしょ? エリスがね。 ナディは? あたしは遠慮しとく。 柄じゃない。 ……。 パパ、こういう時はお世辞でもそんな事はないって言うんだよ。 て、お世辞かい。 あ、ごめん。 まぁ、良いけどね。 ……。 エリス。 …本当にするの? したく、ない? ……ずるい。 だったら、決まり…ね? ……う、ん。 良し。 ロント、ロント。 ……。 良かったね、エリス。 …リリオ。 嬉しい? ……。 嬉しくない? …嬉し、い。 エリスの、花嫁姿。 屹度、ううん、絶対綺麗だよ。 …そうかな。 そうだよ、絶対。 ……。 もしかしたら、惚れ直されちゃうかも。 …惚れ? 勿論、ナディに。 ……。 ふふ。 エリス、可愛くなったね。 …。 昔から、だけど。 今は…なんだろう、ナディのお嫁さんって感じ。 …リリオ。 それから恋する乙女って、感じ。 子供、作っちゃってるのにね。 ……。 ナディにいっぱい愛されてるんだね、エリス。 ……ん。 エリスも、愛してる? ナディのこと。 …うん、大好き。 ふふ、楽しみだなぁ。 二人の結婚式。 ね、パパ。 ……ああ。 もう、本当にちゃんと聞いてた? ……。 …あ。 ………、ス。 ローント。 …え? 見つけた。 リ、リリオ。 いないから、探しちゃった。 え、と…。 ナディに聞いても分からないって言うし、エリスは笑うだけで教えてくれないし。 何してたの? 別に、何も…。 その顔は、嘘だね。 なんで 沢山、人を見てきたから。 分かるよ。 たくさん…。 むしろ、ロントは分かりやすい方。 …。 で、何してたの? ここが、好きなんです。 ここが? うん。 ふぅん。 どうして? え、えと…。 ……。 …? リリオ…? …ここ、他と気配が違うね。 …! なんだろう…ちがう、何かがあるような感じがする。 ……。 ここ、エリスは知ってるの? …はい。 ナディは? 知ってる…と思います。 わたし、よくここにいるから。 ……。 ……ねぇ、リリオ。 うん? リリオは昔のナディとエリスのこと、知ってるんですよね。 旅、してた頃の。 うん、まぁね。 でも私、小さかったから。 今のあなたよりも、ね。 …。 聞きたい? はい。 でも、その前に。 む? 敬語、止めて? ……。 いえっさ? …いえっさ。 ふふ、可愛い。 …わ。 私、ナディとエリスが大好きだった。 久しぶりに会ったけど、今も、大好き。 あ、あの、リリオ…。 だから…二人の子供である貴女も、大好き。 あ、う…。 ………。 …ん? あ。 ……なんだろう、なんか変な気配。 ち、ちがうよ…!! え? そ、そうじゃない、そうじゃないから。 ロント? だから、ちがうよ。 わたしは… 誰と話してるのかな? ……あ。 ん? ……。 お姉さんに、話してごらん? …ひとりごと、です。 あれが? ……。 もしかして、あれ? 妖精さん、みたいなの? …ちがいます。 じゃあ、何? ………。 言えない? …。 じゃあ、しょうがない。 私が言おうかな。 …え。 この気配、魔女のでしょう? …ッ! ここだけ、エリスの気配が消えてる。 他は守るようにして、あるのに。 ……。 エリスに似てるけど……ちょっとだけ、違う。 …ま、じょ。 あれ。 ……。 …もしかして、知らなかった? ……。 …まずい、かな。 お願いです。 …。 わたしが知ってること、言わないでください。 …。 お願い、リリオ。 …うん、分かった。 でも、どうして…? ……知らない、からです。 …。 二人がちゃんと、話してくれるまで。 その時まで…。 …話してくれなかったら? そしたら、わたしも知らないままです。 けど。 本来ならば、女同士から子供は産まれない。 …。 そうなると貴女は、二人とは全く血の繋がらない子供として生きていく事になる。 まぁ、そうだとしても、二人の子供には変わりないけど。 私とパパがそうだから。 ……。 あなたはぱっと見、ナディに似ているから、ナディが産んだように見える。 けど、あの二人が他の誰かと交わるとは全く考えられないから。 ……。 それでも? ……。 …ごめん。 意地悪だったね。 ……。 何にせよ、普通に考えれば二人の子とは思われない。 同じ、と言えば、同じ。 …。 でも、私達は違うから。 あなたはナディとエリスの子供だって、知ってるから。 それだけ、知ってて欲しいな。 ……うん。 ん。 じゃあ、家に帰ろうか。 本当はね、ごはん出来るよって言いに来たの。 リリオはどうしてブーメラン、始めたの? パパの手伝いがしたかったから、だけど。 だけど? 手伝えたかどうかは、分からない。 パパ、何も言わないし。 …。 それ! わぁ……。 この時、絶対に目を逸らしては駄目だって。 何度も言われたっけ。 うん。 …来るよ、ロント。 ……。 …よ、と。 すごいね、リリオ。 投げたのみんな、ちゃんと戻ってくる。 ……。 え、なに? うーん。 リリオ? やっぱり、なーんか冷めてる。 え。 じゃあロント、今度はロントの番。 わたし? 何度も見せたでしょ? だから、はい。 でもわたし、ブーメランなんて つべこべ、言わない。 はい。 はいって、言われても…。 良いから、やってみる。 いえっさ? い、いえっさ…。 持ち方はこう。 構えは…こう。 オーケイ? う、うん。 それで…こう、投げる。 はい、やってみて。 ね、ねぇ、リリオ。 わたしやっぱり ん? ……。 掛け声はなんでも良いよ。 えい、でも、それ、でも、ほい、でも、遺言があったらどうぞ、でも。 …最後は、違うんじゃ。 なぁに? ……ええい!! んー……。 ……あ。 全然、駄目だね。 戻ってもこない。 ……。 まぁ、初めてだし。 こんなものだよ。 ……ごめんなさい。 なんで? ぜんぜん、だめで… そんなの、初めてなんだから当たり前。 失敗しない方がどうかしてるし、失敗して、上手になっていくんだから。 …。 私も何度も失敗したよ。 だから一回くらいの失敗、気にしない。 …うん。 じゃあ、はい。 拾いに行く! い、いえっさ! 走れ、走れ。 いえっさ! うんうん。 『リリオ』 ナディ、エリス。 あいつの腕はどんなもの? あんなのもの、かな。 おー、走ってるなぁ。 ブーメラン、戻ってこなかったんだね。 まぁ、初めてだし。 いきなりちゃんと戻ってきて、しかも掴めたら、私の立場が無くなっちゃう。 ふふ、そっか。 食後の軽い運動、とは言い難い? 直後、じゃないから。 それにたまには全力で遊んだ方が良いからね、あいつの場合は。 たまには? どうにも大人しくて、さ。 運動神経は悪くないんだけど。 ナディが遊んであげれば良いんじゃない? そう、思ってるんだけど。 思うだけ? ナディはちゃんとロントと遊んでるよ。 むしろ、私が遊んであげられなくて。 そんな事 ない、でしょ? ……。 リリオ、あたしの台詞取ったな? だって、すぐ惚気られちゃうから。 ……。 ね、エリス。 ロント、力あるね。 …え。 あそこまで遠くに飛ばせるなんて思わなかった。 本当は投げるだけでも難しいんだよ。 …ナディの畑仕事、良く手伝ってるから。 それだけ? …。 ねぇ、ナディ、エリス。 ん? …。 あの子に、話してないんだね。 何を? …。 エリスの事。 ずっと話さないつもりなの? 寧ろ、何を話せって? お、戻ってきた。 ……。 二人がそれで良いなら良いと思うし、私がどうこう言うことじゃないのも分かってる。 でも、エリス。 ……。 あの子はそれくらいで動じる子じゃないと思うから。 なんとなく、だけど。 ……分かってる。 うん? だって、ナディの子だから。 ナディの、ね。 それは説得力あるかも。 …ね。 まぁ、あいつはあたしの子だし。 エリスが産んでくれた、ね。 …。 ん? 今の、凄い惚気にしか聞こえない。 じゃあ、それで。 もう、お腹いっぱいだよ。 はは。 ……あの子は。 …? エリス? ナディ…。 …ん。 エリス。 あの子は、なに? 多分、分かってると思う。 …。 分かってるって? …ずっと、聞いていたから。 お腹にいる頃から、ずっと…。 ……。 だったら、尚更だよ。 ……。 大丈夫、ナディがいてくれるから。 今みたいに、手を繋いで。 ね、ナディ。 まぁ、ね。 怖いことなんて、屹度、ない。 だってあの子、ナディの子だもん。 …うん、そうだね。 エリスが産んだ、ね? ……うん。 あれ? 顔、赤くなってる? …リリオ。 可愛いね? ……。 ふふ、エリスにまで惚気られちゃった。 可愛いでしょ、あたしのエリス。 …ナディ。 リ、リリオ。 おかえり、ロント。 おかえり。 おかえりなさい、ロンティタ。 ナディ、エリス。 じゃロント、もう一回やってみようか。 え…。 いえっさ? …いえっさ。 やっぱり、押されてるなぁ。 …ん。 風邪、ひくわよ。 この辺の夜も冷えるから。 …。 ま、ひきたいんなら良いけど。 …ふ。 相変わらずだそうで。 まぁな。 昼間、どこに行ってたかは聞かない。 ああ、そうしてくれ。 いい年。 俺にはこれしか無い。 リリオがいるのに? …。 大きくなった。 最後に会ったの、いつだったかな。 どうでも良い事だ。 ま、そうだけど。 ……。 落ち着こうとかは? …さぁな。 あ、そ。 …。 それで? いつまでリリオを連れ回すつもり? …それはあいつが決める事だ。 じゃ、男連れて来ても良いって? …あいつが選んだのなら、それで良いだろう。 それ、目の前にして言えるもんだか。 ……。 ……。 …ナディ。 付き合わないわよ。 酒、止めたし。 あれは。 …。 本当にお前の子なのか。 あれ、じゃない。 …。 ロント。 エリスと決めたあの子の名前。 …ロントは。 お前とエリスの子なのか。 そっくりでしょ、あたしに。 …。 あそこまで似るとは思わなかったけど。 ……。 嬉しいもんだなって。 ……。 あの子はエリスが産んでくれた、あたしの子供。 あたしが他のヤツの子供なんか生むわけないし、エリスにだってそんな事、させるわけない。 …話には聞いていたが。 青目に? ……。 …それで? リリオは…ああいうヤツだからだな。 あっさりと信じた。 そ。 …お前とエリスの子か。 そうだって言ってる。 …。 方法とか、聞かないでよ。 三回殺されたいなら、話は別だけど。 ふ。 …。 …もう、旅に出る気は無いのか。 無いわけじゃない。 …エリスの体調か。 そこまで? …。 たく、青目め。 …良くないのか。 見ての通り。 …。 また、いつか。 …賞金稼ぎは。 とっくに止めた。 …そうだったな。 ああ、やっぱり冷える。 中に ナディ。 エリス。 風邪、ひくから。 ん、今入ろうとしてたところ。 リカルドも。 …俺はもう暫く、ここで良い。 けど エリス、こんなヤツほっといて中に入ろ。 ナディ。 そのうち、入ってくるでしょ。 …リカルド。 そういう事だ。 …じゃあ、入ってきたら言って。 温かいお茶、淹れるから。 そんなの、 俺にはこれがある。 …お酒。 それより、エリス。 …なに? あたしがリカルドと二人になってるから。 …。 …妬いた? …。 昔、どっかの町であたしとリカルドが ばか。 …と。 リカルド、リリオが心配するから。 程ほどにした方が良いと思う。 …ああ、そうしよう。 ナディはそのまま外にいて。 エリス。 知らない。 …。 あ、ナディ。 …ふふ、あったかい。 ばか、くっつかないで。 やーだ。 ナディ。 じゃ、リカルド。 …ああ。 ナディ、 あったかいお茶、淹れて欲しいな。 冷えちゃったから。 知らない、ばか。 ……ふ。 今夜はロントと寝ようかな。 …え。 え、って何? あ、いや、そのぉ…。 ナディ、エリス。 良いでしょ? あたしは構わないけど。 エリスは? ロントがそれで良いなら。 良いよね、ロント? あ、う。 じゃあ、決まり。 パパは…まぁ、良いか。 外でも。 娘、強いなぁ。 本当に良いの、リリオ? だってベッド、無いでしょ? ナディとエリスの分、それからロントの分しか。 ね、そうでしょ、エリス。 …そう、だけど。 でも 椅子ならあるけど? 椅子でも良いんだけどね。 女しかいないし、男が踏み込んだら、駄目だと思うんだよね。 ま、エリスに手を出そうものなら容赦しないけど。 ナディ。 そんな甲斐性があるくらいなら、今頃、私にママがいるところ。 …リリオ。 別にね、私は本当に良いと思ってるんだよ。 パパの人生だから。 へぇ、親父よりも娘の方が考えてる。 でも外じゃあ 大丈夫、慣れてるから。 それにどうせ、入ってこないしと思うし。 何、遠慮してんだか知らないけど。 遠慮、ねぇ。 ……。 今日だって本当は泊まるつもりなんてなかったんだよ、パパ。 渡すもの渡したら、さっさと行くつもりだったと思う。 ああ。 ……。 昼間、いなかったでしょ? あれ、仕事だから。 分かる。 …まだ、してるんだね。 仕事のついでに、寄った。 パパにしてみれば、それが精一杯の理由付け。 …。 …。 私だけで来ても良かったんだけど。 それじゃ、駄目だから。 まぁ、こっちとしてみればリリオだけでも良かったけど。 …リカルドは。 うん? エリス? 人と交わるのが、苦手なような気がする。 そうなの。 でもそれじゃ、駄目なんだよ。 駄目、ね。 そう、駄目。 人生は出逢いだから。 …出逢い。 ナディとエリスを見て、パパが言った言葉。 分かってはいるんだよね。 でもあいつの好みって、分かんないなぁ。 エリス、どう? ……。 ん? …ナディ。 は? ……。 そう、なんだよねぇ。 でもナディは無理だし。 て、リリオ。 何言ってるんだか、分からないんだけど。 まぁ、ナディはエリスしか見えないから。 他はどうでも良いんだよね。 ね、エリス。 ……リリオ。 べた惚れ、されてるね? 愛の結晶まで、作っちゃうんだから。 ……。 でもさ、あんなパパにも昔は家族がいたから。 どんな家族だったか、いまだに話してくれないけど。 どんな家族、ね。 あれで案外、愛妻家だったかも。 子供思いな、ね。 …だから。 ……。 ……。 新しい人を求めないのかもしれない。 そんな保安官、どっかにいたな。 ……。 ん、エリス? …なんでもない。 なんでない、ね。 でも、それは。 …。 いつまでもたった一人を想っていること。 それはとても美しいし、物語にもなる。悪い事じゃない。 でも、パパは今を生きているから。 …。 別に忘れるわけじゃない。 忘れてしまったら、淋しいけど。 でも、パパは忘れないから。 と言うか男は昔の女の事忘れない、忘れられないって言うじゃない? …そうなの? 男は新規保存、女は上書き保存、なんだって。 …? なんか聞けば聞くほど、あいつの駄目親父ぶりが浮かんでくるかな。 駄目、だけど。 私にとっては良いパパだよ、ナディ。 だろうね。 …リリオは。 リカルドが大好きなんだね。 それ恥ずかしいかな、真面目に言われると。 これでも年頃ですから。 はは。 …ふふ。 と、言うわけだから。 改めて今夜は宜しくね。 …わ。 んーロント? は、はい…。 はは、ロントはリリオみたいな押しの強い子に弱いみたいね。 …ナディ。 あんたはリリオみたいな子の方が良いのかもね。 引っ張ってくれるような子が。 ……。 ナディ、ロントを苛めないで。 苛めてるわけじゃないけど。 ねぇ、ロント。 今夜はいっぱい話そうね。 折角、初めて会えたんだし、次、いつ会えるか、分からないし。 昔の話、してあげる。 う、うん。 昔の話って? ナディとエリスの、婚前旅行の話。 ……婚前、旅行。 今、思えばね。 それに近かったよね。 ブルーアイズに、かなり、見せ付けてたし。 それはあいつが勝手に覗いてただけ。 あたし達は見てくれなんて、一言も言ってない。 ね、エリス。 ……。 ナディってばもしかして、分かってやってた? だったら? やっぱり婚前旅行だ。 あはは。 …ナディ。 まぁ、婚前かどうかはあれだけど。 でも、好きだったよ。 …。 それが恋愛感情だったかは、後で気付いたけど。 でも離さないって、本気で思ってた。 …もう、いいから。 だーめ。 …ロント、助けて。 ……ごめんなさい、無理です。 ふふ、ロントはエリス似? ……。 ……。 ははは。 エーリス。 …わ。 寝ないの? リリオ。 ナディ、心配しちゃうぞ? リリオは? どうしたの? 私はまぁ、ね。 …リカルド? そうかな。 …入って、こないね。 うん。 ……。 ねぇ、エリス。 …少し、喉が渇いて。 しあわせ? …え。 今。 エリスは、しあわせ? …うん。 とても? …うん、とても。 すっごく? ん…すごく、しあわせ。 そっか。 ……。 良いなぁ。 好きな人に、愛されてるのって。 …。 それはとても自然のようだけど、なかなか、叶わないから。 …リリオ? 誰かの願いが叶うころ、あの子が泣いているよ。 …? ハポンの歌、なんだって。 言葉、分かるの? 少しね。 すごいね。 本当に少しだよ。 私、歌が好きだから、それで調べたの。 …知らなかった。 小さい頃は、そうでもなかったから。 …ん。 みんなの願いは、同時に、叶わない。 恋愛なんて、特に、そうだと思う。 ……。 誰かと誰かが、結ばれて。 そのせいで、誰かの願いは、想いは、叶わない。 あ、浮気とかはなしね。 ……。 でも、それは。 仕方がないこと、なんだよね。 …リリオ。 難しいよね。 …好きな人、いるの? んー、どうかなぁ。 その人は、どんな人? 年下のくせに背伸びしちゃってる人、かな。 …どこで? ここで。 …え? 私、ナディとエリスが大好きだから。 ……。 二人は年上だけど。 ……リリオ。 冗談だよ。 …。 でも、気になったのは冗談じゃない…かな。 ……。 これ、一目惚れって言えるのかなぁ。 …そうなのかな。 複雑? …ううん、リリオだからいいよ。 ありがとう、エリス。 ……でも。 …… …好きな人が、いる。 …。 あの子には…ずっと前、から。 …そっか。 ごめんね…。 どうしてエリスが謝るの? ……。 …複雑? …。 困った顔、してる。 ナディは知ってるの? …鈍感、だから。 ああ。 ……叶うといい、そう、思ってるの。 それは。 …。 ロントのこと? …。 それとも…ロントが好きな誰かのこと? ……だれかの。 …。 わたしの、ねがいが、かなったころ…あのひとは、ないていた。 ……。 でも、わたしは…。 自分のしあわせを願うことは、当たり前の事なんだよ。 ……。 我が侭と言われても…どうしようも出来ない想いは、確かにあるから。 ……みんな、しあわせに。 …。 なることは…叶わないんだね。 だから、形を変えるんだと思う。 …。 だって世の中に、人はいっぱい、いるから。 世界はたった一人だけじゃない。 …うん、そうだね。 それでも… ……。 …叶えたかった。 ねぇ、エリス。 …なぁに? 子供、作らないの? え…。 ロントに妹。 まだ、若いんだし、もう二人くらいはいけるんじゃない? リ、リリオ…。 ナディは? なんて言ってるの? ……。 顔、真っ赤? …リリオ。 ふふ、かわいい。 ナディの気持ち、分かるかも。 ……。 …いつか。 ロントに、話してあげてね。 …。 あの子なら、大丈夫だよ。 私の予想だけど。 …うん。 それにどんな事があっても、エリスの傍には、ナディがいるから。 うん…。 ナディの赤ちゃん、また欲しい? ……う、ん。 じゃ、作っちゃいなよ。 今夜あたり。 …! リ、リリオ! ふふ、冗談。 ……。 さて、朴念仁の様子も見たことだし。 …あのね、リリオ。 うん。 …あの子が、ナディの赤ちゃんが、お腹にいたころ。 …。 いつも、あの子の鼓動を聞いてたの…。 …。 …ナディに、後から抱かれて。 時が止まってしまえばいいのに…って、何度も思ったよ。 それ、ナディには? …内緒。 調子に乗るから。 ふふ、分かる。 ……もしも、叶うなら。 …。 欲しい……。 …じゃ、ナディに言わないと。 ……わたし、欲張りだね。 欲張り、何が悪いの? 良いじゃない。 …。 それに相手もそれを望んでそうだし。 だから、お互いさま。 ……。 …きっと、叶えてくれる。 だって、エリスが愛して止まないナディだから。 ……うん。 アリス。 …。 アリス。 …。 …怒ってるの? …。 …。 …。 …ナディとエリスの友達なんだ、リリオ。 ! アリスも、知ってると思う。 …。 話してくれた。 二人が旅してたころの、リリオが見てきた話。 ……。 ナディがリカルドと夫婦に間違われたこととか、エリスはきっと話してくれない。 …。 他は大体、聞いた事ある話だったけど。 誰かから見た二人の話は聞けないから。 …。 …ねぇ、アリス。 …。 アリスは いい加減、うるさい。 …ブルーアイズ、リリオ。 …ッ。 リカルド、からも聞いてみたかったんだけど…。 …。 …旅、わたしもいつかしたいと思う。 …。 アリスと二人で。 …は。 二人で、行こう。 誰があんたなんかと。 世界は、知らないことばかりだって。 ナディが、言ってた。 だから? だから、二人で知りたい。 見て、みたい。 …。 でも、その前に。 アリス。 …。 あなたに、ふれたい。 …は! …。 餓鬼のくせに。 生意気言ってるんじゃないわよ。 …生意気でもいいよ。 …。 わたしはまだ、子供だけど。 でも、好きな人には触りたい。 ……は。 …早く、触りたい。 こうしてるだけじゃ…足りない。 ………莫迦じゃないの、あんた。 …。 もしも、私に触ったら。 殺すけど、良いのね。 …アリスがわたしを好きじゃないのなら。 …。 でも少しでも、わたしを あの小娘。 …。 あれにしとけば良いじゃない。 あれなら…あんたが思ってるようなコトまで、出来るわよ。 リリオは… セックス。 あんたの親が毎晩してること。 …。 したいんでしょ? あんたも。 ……。 は、糞餓鬼の分際で。 …毎晩、は、してないよ。 …。 ナディは、それでもいいみたいだけど…そしたら、エリスの躰がもたない。 それはナディが一番 莫迦じゃないの、あんた。 …。 ああ、でもそうね。 あいつらのそういうのを見て、自慰でもしてればいいわ。 …じい? 嘲笑ってあげる。 親のセックスで興奮して、よがるあんたを見て。 ねぇ、アリス。 きっと、とても滑稽だわ。 じいって、何? ……。 アリスはするの? …! アリス? ほんっと、莫迦じゃないの!! わ。 ……。 アリス。 …。 …。 …消えて、もう。 でも、昼間あまり話せなかったから。 もう少し… 消えろって、言ってるのよ。 …。 …あの女が、戻ってくる。 ……。 早く、行って。 …また、来るから。 ……。 また、繋がるから。 …どうして、あんたに。 …。 あんたなんかに、力があるのよ。 あいつの血が混じっているのに…。 …エリスの血も混じってるから。 殺しておけば、良かった。 …。 …殺して、おけば。 あんた、なんか…。 …またね、アリス。 おやすみ…。 ……。 リリオ、と話してた? …。 喉の渇きは、もう? …ナディ。 おかえり。 …家の外には、出てないよ。 戻ってきた、から? …ただいま、ナディ。 ……。 ナディ…。 …リカルド、相変わらずだったでしょ? うん…中に入ってくれば良いのに。 入ってこないよ、あいつは。 …。 入ってこない。 …分かるんだね。 まぁ、同業者だったし? …それだけ? 他に何かある? …似てる。 どこが。 夫婦に間違われるくらいに。 また、懐かしい話だなぁ。 …。 あんなのは今思い出しても、ただの迷惑。 大体、賞金稼ぎなんかみんな、似たような雰囲気を持ってる。 特に裏のは、ね。 …。 それだけで夫婦扱い。 だったら世の中の賞金稼ぎ、みんなデキてるよ。 ……。 賞金稼ぎなんか、冗談じゃない。 …それ。 ん? …私が、言ったら? エリスが? …そう、私が。 ……。 …ナディ。 言うの? ……。 言う? ……ずるい。 …。 私が、聞いてるのに。 …知ってるから。 ん…。 言わないって。 ……。 …エリスは、言わない。 あたしに、惚れてるから。 ばか…。 …大体。 ……。 本当にそうだったら。 子供、作らせてくれないと思うし。 ………。 …ん? ばか、うすらタコス、なんでそういうこと、平気で言うの。 そりゃ、好きだから。 ……。 …さ。 改めて、寝よっか。 …。 じゃ。 …歩けるから。 知ってる。 ベッド、すぐそこだから…。 あたしが、したいだけ。 ……ばか。 まぁ、良いじゃない。 …。 …あたしの、好きにさせてくれる。 あんたは、いつだって。 …だから、言われたの。 何を? …甘やかしてるって。 誰に? ……ブルーアイズ。 やっぱり、あの青目か。 …つけあがるって。 ……。 ん、ナディ…。 …終点。 ……だめ。 しないよ。 …。 …リカルドはともかく。 リリオがいるからね。 …いなければ、するんでしょ。 それは…あんたが嫌だったら、しない。 ……。 …しないよ。 ナディは、いつも、そうだね…。 …。 …好きにしても、良いのに。 それは。 ……。 …踏みにじって良い、と、イコールじゃない。 ……こど、も。 ……。 もし、つくって…なかったら。 もしも、わたしが拒んでいたら…。 …。 その時は、私のこと… …ばーか。 ……。 それくらいで、あたしがあんたを離すと思ったら。 大間違いだ。 ……ナディ。 …。 だって、ナディが… …エリス。 ……。 …あたしはあんたが好きだから。 ……。 だから、欲しいと思った。 誰でも良いわけじゃないし、ましてや作らせてくれれば良いってもんじゃない。 …。 …あんた、だから。 だから、あたしは欲しいと思った。 たとえ、それが生物として間違っていたとしても、あたしは間違いだなんて思わない。 ナディ…。 …だから、エリス。 ……。 …あんたに似た子が、欲しい。 あたしの血を繋ぐ、あんたに似ている子が。 ……。 ん…? ……わたしが、まじょのこと。 ……。 まじょだから、ナディのこども、うめたこと…。 また、うもうとしていること…。 …それは。 オーケイって、受け止めて良いってこと…? ……。 …エリス。 ………ロント、は、しってるの。 え…。 …じぶんのこと、わたしのこと。 …。 …それから。 あなたの… ん、エリス…。 …このみぎうで、が。 どうしてこうなった…か。 …。 …しってるの。 ……。 だまってて、ごめんね…。 いや。 …? 鈍感なだけ、だから。 ……。 そっか、ロント、知ってたか。 …。 拍子抜け…? …だって。 まぁ、あたしだけ知らなかったのは、ちょっと間抜けだけどね。 でも、それだけ。 ……。 やっぱり、母親には敵わない。 …ナディだって エリス。 …。 …気付いてあげられなかった。 ごめん。 …ちがう、ナディは悪くない。 ……。 わたしが、わたしがおくびょう、だから…だから。 ナディにも、ロントにも…。 話そうか。 ……。 ロントに。 ちゃんと。 …ナディ。 知っているのなら。 あんたの傷口、これ以上、大きくなる事はない。 ……。 親の身勝手。 でも、どうしようも出来ない。 …それも、わかってるの。 ……。 あの子は、それさえも…わかって。 だから…だから…。 ……。 …こんな力、あげたくなかった。 あげたく、なかったのに…。 …エリス。 ……。 それは、どうしようも出来ない。 あの子はあたし達の子供だから。 でもわたしじゃなくて、ナディに…あなた、に。 なのに、どうして…そのせいで、あの子は…。 …それで。 あの子は悲観、してるわけじゃない。 少なくとも、あたしにはそう見えない。 …。 …でももう少し、早く話したかったかな。 う……。 …そうすれば。 一人で抱え込ませること、なかったのに。 ……。 そんなこと、させなかった。 …。 …エリス。 ……もし、こんどのこどもが。 こんどのこども、も…。 …そんなのは、分からない。 でももし、そうだとしても…そんなこと、なんでもない。 ナディはそうかもしれない。 でも、わたしは…ううん、わたしなんかどうでもいい。 こどもは? わたしはそんなもの、もう、あげたくない。 ……そんなこと、言わないでよ。 …。 自分なんか、どうでもいいとか。 エリス、自分をこれ以上、悪く言わないでよ。 …。 …エリスは、何も悪くない。 その力だって、それ自体、悪いものじゃない。 でも…でも…。 …。 それでも…ロントに。 あげなく、なかった…よ。 ……。 なかっ、た……。 …思えば。 ……。 ちゃんと、話してこなかった。 …。 …ごめん、エリス。 あんたを追い詰めていたのは、あたしだ。 自分の想いを押し付けて、あんたも応えてくれるって…喜んでくれるって。 心のどこかで思って…違う、そう思い込んでたんだ。 ……ちが、う。 ちがう…。 エリス。 ……う。 話そう、ロントに。 ……。 ちゃんと。 ……。 …そう、二人で。 それはあの子に対する、あたし達の責任だから。 ナ、ディ…。 ……リリオ。 …。 暫く会わないうちに、大人になってた。 あたし達以上に。 ……う、ん。 リカルドじゃ、敵うわけない。 …。 …やきもち、やくな? ばか…。 ん…。 …ナディの、ばか。 寝てない、でしょ。 ……。 ん〜? …わ! ほら、やっぱり。 リ、リリオ。 おはよう。 …おやすみ、だよ。 寝るならね。 …寝ないと。 明日も畑の仕事、あるから。 ナディの仕事、手伝ってるんだね。 …うん。 ああ、違うか。 それがロントの仕事なんだね。 家族としての、役割なんだ。 ……。 ねぇ、ロント。 …なに。 くっついても、いい? …え? くっついちゃえ。 わ、わ…。 ……。 リ、リリオ…。 …ねぇ、ロント。 ……。 自分が何者であるとか。 そんなこと、考えた事ある? …なにもの? そう、何者。 どこから来て、どこへ行くのか。 どんな風に生まれて、どんな風に死ぬか。 ……。 私はね、本当のお父さんもお母さんも知らないの。 ううん、覚えてないって言った方が正しいのかな。 …。 まぁね。 今はもう、あの朴念仁が私の本当のパパだけど。 …だめだよ。 うん? リカルドのこと、朴念仁なんて言っちゃだめだよ。 …。 リリオのこと、大切にしてるのに。 …知ってるよ。 う。 痛いくらいに、知ってる。 昔から、パパと旅をし始めた時から。 パパは私を守ってくれて、愛してくれた。 でもね、ロント。 …。 その理由が、今も分からないんだよ。 何も、話してくれないから。 …。 私はどこで生まれて、どんな家族に囲まれていたのか。 ううん、家族なんてもういなくて。 …。 一人だった私を、拾っただけなのか。 今も、分からないことばっかり。 …リリオ。 いつも別に良いんだけど。 でもたまに、ほんのたまに、知りたいって思う事があるの。 ……。 パパの、昔の事も。 きっと、話してくれないだろうけど。 …リカルドは。 うん。 賞金稼ぎ、なんだよね。 そうだよ。 今も。 …ナディも、そうだった。 だから。 …。 エリスを見つけて、エリスはナディを見つける事が出来た。 本当、今でも仲が良くて…ううん、あの頃よりももっと、濃くなってる。 何でもない他愛のない会話をしてるだけで、あてられちゃうよ。 …だから、同じなんだよ。 うん? リカルドが賞金稼ぎだったから。 リリオはリカルドと親子になれたんだ。 ……。 …ごめんなさい。 なんで? …生意気なこと、言って。 ……。 …おやすみなさい、リリオ。 また、明日… …ロント。 あ。 ……。 …リリオ。 私、貴女の事、好き。 え…え? ……好き。 リ、リリオ…で、でも、わたし… …ふふ。 …? 好きには種類があるんだよ? ロント。 ……。 私は…貴女より、お姉さんだから。 ロントは妹みたいなものなの。 …いもう、と。 そう、かわいい妹。 そっか、よかった。 …。 え…あれ? ロントの、ばか。 え、な、なんで? 本当、ばか。 そういうとこ、ナディにそっくり。 わ、リリオ…。 エリスじゃない人の気持ち、本当に分かるよ。 もう。 リリオ、やめて、くすぐったいよ。 黙れ。 わ、わ…あはははは。 ……。 リ、リリ、オ…。 …謝る? う、うん、謝…あはははははは。 …別に謝ってもらわなくても良いんだけどね。 …? うん、良し。 ……はぁ。 じゃあ、寝よっか。 おやすみ、ロント。 …あのさ、リリオ。 何? また そ、そうじゃなくて。 …なに? ……。 ロント? …わたしは、ナディとエリスの子供だよ。 ただ、それだけだよ。 ……。 どんな風に生まれても。 わたしはナディとエリスの子供だから。 …うん、そうだね。 うん…。 ……。 じゃあ、おやすみなさい…リリオ。 …あの子の。 …。 「言葉」はいつだって、心に響いてきたの…。 …。 …おなかにいる時は、聞こえなかった。 ううん、聞こえてたけど、あまりにも小さくて…拙くて。 うまく、聞き取れなかった。 …。 あの子が言葉を持つようになって。 言葉を多く持てば持つほど、心のそれは、小さくなって…今はもう、聞こえない。 だから、あの子が思っている事、今はもう分からない。 …だから、か。 …。 話しているように、いや、話してたんだ。 実際、あんたとロントは。 …うん。 でも、あまり返さないようにしてた…。 …どうして? すぐに、力によるものだと思ったから。 …。 あの旅をしてた頃、過去を見ることが出来る人がいたの、覚えてる? いたっけ、そんなの。 …ナスターシャ。 ナス…? んー……。 …あの人は、私の過去を見た。 私が覚えてないことも…。 …へぇ。 ……。 で、そのナスなんとかは? …今はもう、いない。 …。 もう、いないの。 …あ、そ。 それで、だから? …その感覚に、少し、似てた。 …。 ただ、違う事は。 あの子が入ってきた時、私からも返せるということ。 ……。 …ナディ、あの子は。 …。 心の中に、入り込んでくる…入り込んできて。 …。 …繋がって、見ることさえできるの。 そう、ナスターシャと同じように過去のこと…。 …それで。 あの子は、見ないようにしてたけど…それでも、見えてしまうこともあるから。 それはあたしのも? …ナディは。 …。 分からなかったでしょう? …? 分からない? あの子の、言葉。 聞こえたこと、ある? なんか言いたそうだなぁ、って、思った事はあるけど。 あの子の力の場合。 …。 …同じ力を持ってる人にだけ、発揮するみたいなの。 同じ、ね。 じゃあ…あんた、とか? …うん。 共鳴してる、ような…そんな感じ。 キョウメイ、ね。 …分かってる? 分かってるよ…。 …ん、ナディ。 ばかにすんな…? …してない、のに。 ……他に。 …。 キョウメイ、する以外の力は。 …分からない。 隠しているのか、それともそれ以外はないのか。 私には、分からない。 …そっか。 ……自分が最も愛してるものを、失う。 …。 それが魔女の力を引き出す為に必要なら。 …。 私が、あなたを失った時のように…。 …エリス。 同じ思いは、して欲しくない…。 …。 …あの冷たさを、感じて欲しくない。 うん…。 ……ナディ。 それで、あんたが魔女の事は。 …過去を、見たから。 …。 あなたと、私が…交わったこと、交わった時のこと。 それも見て…知ってる、の。 そっか。 …。 あいつにはまだ、早いんだけど。 ……。 ん? …そういう問題じゃ、ない。 いた…。 …実際、見られてるのに。 それを聞いてからは、気をつけているんだけど…。 …止めても、聞かないから。 そうは言っても、始まりならまだなんとかなるんだけど…入ってから、急に止まれと言われても。 ましてや、 そういうこと、言わないで。 …いえっさ。 ……あの子が、おなかにいた時だって。 …。 何度も、私のこと、抱いて…。 …うん、まぁ。 ……聞かれて、たんだよ。 …。 ずっとあの子は、聞いてた…私達の、声。 …でも、それは。 …。 愛し合う声、なら。 それは大した問題じゃない。 …ばか。 いた。 ……子供に、そんなの、見せないで。 でも、エリス。 でも、じゃない。 …お腹にいた時のこと、今、言われてもなぁ。 ……。 あぁ、だから。 …? …今度の子にも、聞かれること、心配してる? …! ん…? ばか、おおばか。 …。 ナディの頭の中、それしかないの。 …そういう時も、ある。 あ…。 …これから抱こうとしている時とか、抱いている時、とか。 エリスでいっぱいになってて、他の事なんて、頭に無い。 ……。 大体、他のこと考えながらなんて、したら。 拗ねて噛み付いてくれるし、ね…。 …ナ、ディ。 これ以上は、しない。 ……。 …いつか、あいつも。 …。 誰かに抱かれるかもしれないし、抱くかもしれない。 ……そんなの。 子供だって、人を好きになる。 …。 好きになるのに、子供も何もない。 ……。 …? エリス…? ……。 …エリス。 ……私以外、の。 …。 魔女が、いること…。 …。 …アリス。 が、どした? …あの子は、アリスのことも知ってる。 ふぅん、そっか。 ……ナディ。 キョウメイ、するなら。 そうだと思うし。 …ずっと、見てるの。 アリスを? ……多分、繋がってさえ。 そっか。 ナディ…。 …ところで、エリス。 …? ナスなんたらにどうやって過去、見られたの。 どうやって…? そう、どうやって。 …さわられて。 どこを。 ……むね。 へぇ。 …でも、ナディ。 エリス。 あ。 …それは、こんな感じだった? やだ、だめ…。 …教えて、エリス。 ちがう、ちがうよ…。 ただ、手を、あてられて…それで。 でも、面白くないのは変わらない。 ナディ、今はあの子の……あんッ。 ……。 …だ、め。 ……。 ナ… …あんたに触って良いのは、あたしだけ。 ……。 いえっさ? …も、う。 ……。 エリス、不機嫌そうだね? 昨日の夜、ナディと何かあった? …ないよ。 そうなの、ナディ? まぁ、ね。 ばか、うすらタコス。 だって、あの先はしてないし。 ……。 エリス、ここ、赤くなってるよ? …! ふふ、本当にしちゃったんだ? 子づ し、してない…! 良いって良いって。 ね、ロント。 なに? 貴女に妹、出来る日も近いかもね。 そしたら、嬉しい? うん、嬉しいかな。 だって、エリス。 これならいつでも良いね。 ……ナディの、ばか。 いや、だから、してないじゃない。 ばか。 …はいはい、痕つけてごめんなさい。 そういうこと言わないで、ばか。 リリオ、そんなわけで嫁が不機嫌でごめんね。 痴話喧嘩もほどほどにね、ナディ。 はーい。 ふふ。 じゃあ、パパ。 …ああ。 リカルド、風邪、ひかなかった? ……。 ま、大丈夫そうね。 でも歳なんだから、少しは考えなさいよ。 パパ? ……。 パパ、返事は? ……ああ。 もう。 エリス、ごはんすっごく美味しかった。 ごちそうさまでした。 食べてくれてありがとう、リリオ。 ナディとロントは良いな。 あんなに美味しいごはんが食べられて。 良いでしょ。 エリスのごはんはこの世界で一番だから。 ね、ロント。 うん。 ふふ。 ね、また来ても良い? うん、また来て。 いつでも、どうぞ? …。 んー、ロントは嫌そう? ううん、そんなことない。 エル・カザドの話、また聞きたいです。 …エル・カザド? って? 内緒。 ね、ロント。 …リリオがそう言うなら。 じゃあ、また来るから。 でもその時はロントに妹、いたりして? だったら、良いな。 ……。 それは期待されてるのかな。 …ナディ。 はいはい。 ふふ。 じゃあ、またね。 ナディ、エリス、それから、ロント。 ……。 ほら、パパも。 もう、最後まで駄目なんだから。 …またな。 行っちゃったね。 …。 淋しくなる? …。 ロントは? どう? リリオって。 うん。 話に聞いてたのと、ちょっと違ってた。 そりゃあ、あたし達が知ってるのは今よりも小さい頃のだからね。 でも、また会って話がしたい。 そっか。 うん。 ……。 エリス。 …ばか。 んー。 ……。 わたし、畑の支度、してるね。 いや、ロント。 …? なに? エリス。 ……。 …エリス。 ……ナディ。 ロント、ちょっと話があるから。 うん、分かった。 ……。 先に中に入ってて、ロント。 いえっさ。 ……。 エリス。 ……。 …機嫌、まだ直らない? ……。 …さ、行こっか? ……ナディ。 うん? …手。 ……。 …つないで、て。 ……。 …おねが 最初から、そのつもりだったから。 …。 …じゃあ、行こうか。 う、ん…。 …どう? …。 みんな、元気…? …うん、みんな元気だよ。 そう…良かった。 大事な子たちだから。 …。 …そう、大事な。 ロントは。 …。 …育てるのが上手だね。 そうかな。 …うん、上手。 わたしの、仕事だから。 …。 ナディが初めてこの子たちを連れてきた日のこと、今でも覚えてるよ。 …もうずっと前だね。 でも、昨日のようでもあるんだ。 初めて触ったあの温もりも。 …。 初めて食べた、あの日のことも。 …ロントは。 …。 泣かなかったね。 …。 本当は黙ってる事も出来た。 でも、ナディは… …それが生きることだから。 …。 だから、わたしは聞いて良かったと思ってるよ。 …ロント。 殺す、んじゃない。 …。 …殺すんじゃ、ない。 ただ…。 …。 …ただ、命を食べて生きていくんだ。 誰もが、そうやって。 ……。 エリス、躰の調子は? 少し疲れたんじゃない? …ん、大丈夫だよ。 でもナディは心配するから。 …ん、知ってる。 ……。 ……。 …名前。 …。 つけちゃ、駄目だって。 …だからロントはつけなかったね。 …。 …。 …この子、そろそろ赤ちゃんを産むよ。 どの子…? この子。 早ければ今夜か、遅くとも明日にはお母さんになる。 …お母さん。 エリスと同じだね。 …。 …エリスはわたしを産んでくれたお母さん。 うん……。 ありがとう、エリス。 …。 …わたしを、産んでくれて。 欲しいって、思ってくれて。 ……ごめんね。 …。 ごめんね、ロント…。 …駄目だよ、エリス。 …。 わたしは、生まれてきて良かったと思ってる。 だから謝っては駄目だよ。 …。 …ナディだって、同じだよ。 …。 ナディは後悔なんて、していない。 ……良く、似てるね。 …。 あの人に…良く、似てる。 …親子だから。 ……。 今度の、二人の結婚記念日。 …え。 “ご馳走”、作ろう。 …。 …わたしが、やるよ。 ナディに教えてもらったから。 …うん。 ……。 ……。 …ねぇ、エリス。 ん…。 …。 …ロント? “お母さん。” …! …この力が貴女を苦しめてる。 貴女のせいじゃないのに。 ……。 でも、お母さん。 わたしは嬉しかったよ。 …。 …お母さんと同じで。 ナディとも同じで。 …。 …わたしが二人の子供だって言う、証拠だから。 ……ロンティタ。 ナディが探してるかもしれない。 エリスがいないから。 …。 もしかしたら エリス。 …ほら、来た。 ナディ…。 支度して戻ったら、いないから。 でも、丁度良かった。 ……。 ロント、畑に行くよ。 支度、出来てる? はい、ナディ。 ん? なに? いや。 エリス。 …なに。 エリスもおいで。 今日は天気が良いし、風も穏やかだから。 …。 おいで、エリス。 こんな日は家の中より、外の方が良い。 …。 行こうよ、エリス。 わたしたちと一緒に。 ……うん。 うん。 じゃあわたし、先に行ってるね。 ロント、先に行くなら いえっさ、分かってるよ。 そっか。 ……。 エリス。 …ナディ。 クイ、あの子に任せて良かった。 うん…。 じゃあ、行こうか。 …? 手、繋いで。 今まら土まみれじゃないから。 …。 いや? …ううん。 いえっさ、ナディ…。 エリース。 ナディ。 はは。 お仕事、ちゃんとやらないとだめだよ。 分かってるけど、たまには確かめないと。 エリスがちゃんとそこにいるか、さ。 どこにも行かないのに。 それでも。 …もう。 退屈じゃない? ん、退屈じゃない。 ナディとロントのこと、見てるから。 退屈だったら、いつでも言ってよ。 ロント、そっちに行かせるから。 だめ。 お仕事、して。 じゃあ…躰、冷えてきてない? 風、少し出てきたから。 ん…。 ロント、これ持ってって。 いえっさ。 ナディ、私は エリス。 …ロント。 はい、ナディのポンチョ。 …大丈夫なのに。 それだけ、エリスが大事なんだよ。 …ポンチョなら、私も着てるから。 だーめ。 はい、エリス。 …もう、ロントまで。 エリスーー。 ……。 もうちょっとしたら、休憩にしよう! …。 ロント、先に家に戻ってお湯、沸かしておいて。 いえっさ、ナディ。 なら、私が エリス。 …ナディ。 ナディはエリスがいるから、いつもより、張り切ってる。 分かりやすいね。 …ロント。 じゃあ、行ってくるね。 …うん。 じゃ、もう少し頑張るかなー。 ……。 ……。 ……ナディ。 ん、なに? ……。 今、呼ばなかった? 呼んでない。 そ? だから仕事、して。 いえっさ。 ……。 ねぇ、やっぱり呼ばなかった? …呼んでない。 聞こえたんだけどなぁ。 ……。 ま、いっか。 よ…と。 …… “…ナディ。” なぁに、エリス。 ……。 やっぱり呼んでるじゃない。 なに、エリス。 …聞こえたの? ? 勿論。 ……。 で、なに? なんでもない。 なんでもない? なんでもないから、戻って。 んー…。 なんでもない、の。 ねぇ、エリス。 …。 ロントの声も、こんな感じなの? …こんなって? 頭の中に、響いてくるような。 …。 違う? …あの子のは、もっと。 ほら、やっぱり。 …え? エリス。 あ。 …ふふ。 ……。 汚れちゃうから、触らないけど。 …も、う。 で、なぁに? なんでもないの。 呼んでみただけ? 仕事、進まないよ。 もう、休憩で良いかな。 だめ。 エリス。 もうちょっとって、言ったから。 もうちょっと、は、もう過ぎちゃった。 …。 行こ、エリス。 家に戻ろ。 …ねぇ、ナディ。 ん? …ううん、なんでもない。 エリス。 …? なに? なんでもない。 ……。 と言うかさ、エリス。 …なに。 あんたの声は、聞こえるよ。 どんなに離れてても。 …。 いつからだったか、忘れるくらい前だけど。 あたしには、ちゃんと聞こえる。 …嘘吐き。 嘘じゃないって。 さっきだってちゃんと、聞こえてた。 …。 魔女じゃ、なくても。 愛しい人の声は聞こえる。 …。 ん、エリ… ……。 …汚れちゃう、けど。 ばか。 ……。 …ばか、嘘吐き。 嘘じゃ、ない…。 ……。 …あんたの声は、あたしを呼ぶ声は聞こえる。 ちゃんと…聞こえる。 ……。 力なんか、無くても。 …… さ、行こっか。 エリス。 ……うん。 ...five |