はは、やっぱり嬉しいもんなんだなぁ。








    ……。


    ロント。


    …?


    おいで、ロント。


    ……。


    ここにお座り。


    …。


    よしよし、良い子だ。


    ……?


    外には何が見えた?


    …。


    掴まり立ち、出来るようになったから。
    あともう少しかな、自分で歩けるようになるまで。


    …。


    帰ってきたら、歩いちゃった後なんだろうけど。
    エリスと違ってあたしはあんたとずっと一緒にいらんないから。


    ……。


    …一緒、ね。
    エリスの体調が良くなれば、旅に戻れるんだけど。
    そしたらずっと、家族三人でいられる。


    …。


    まぁ、今は我慢。
    エリスの方が大事だからさ?


    …。


    それに…あんたのコトを考えると、留まってる方が良いんだろうし。
    どっかの青目がそうしろそうしろ、うるさいし。


    う……。


    …さっきのはエリスには内緒ね。
    あの子、気にするからさ。
    て、分かんないか。





    わかってるよ。





    ん?


    …。


    …まぁ、いいか。


    うー。


    …目が、やっぱりエリスに似てる。
    髪も似て欲しかったんだけど、しょうがないか。


    ……。


    …こんなに似るもんなのかね。
    子供って。


    …ぅ。


    ……不安、ね。
    確かにこれなら全く感じない、かな。


    …。


    なんだかな…こそばゆいな。


    あーうー。


    お?


    あーー。


    なんだ、あたしの顔が気になる?
    と、目潰しは無しね。





    はやく、おおきくなりたい。
    はやく、あなたのように。
    なって、はやく。





    んー……。


    …あ。


    喋れるようになるのは、まだかな。
    歩くのと喋るの、どっちが先だっけ。


    ぅー……。


    まぁ、良いや。
    そのうち、だ。


    ……。


    重くなった。
    けど、まだまだあんたは赤ん坊。
    エリスにおっぱい、貰ってるうちはね。


    ……。


    …でもあれは、あたしのだから。
    そのうち、返してもらう。


    …。


    …ま、今も断ってるわけじゃないけど。





    ……やっぱり、ならなくていい。





    これもエリスには言えないなぁ。
    言ったら、唇、また尖らせて不機嫌になるから。


    …。


    …それも、可愛いけど。
    あんたはどんなヤツを好きになるかな。


    ……。


    …好みは、似てなくて良いけど。


    ……ぅ。


    もう少し大きくなったら、表情、変わるようになるのかなぁ。
    こういうトコは逢った頃のエリスに似てるんだけど。


    …。


    …あたしとエリスの子供、か。
    やっぱり、どっかくすぐったいなぁ…。


    ぅー……。


    …はは、柔らかいほっぺた。
    エリスとどっちがやわらか





    ぐに。





    …い。


    ナディ。


    エリス、痛い。


    同じコト、してるだけ。


    同じって?


    ナディがロントにしてること。


    あたしはそんなに、つか、抓ってるわけじゃないんだけど。


    ロント、いやがってる。


    そうかな、表情が変わらないから


    私には、分かるの。


    いたたたたたた。


    離して。


    …もう、離してるって。
    強制的に。


    ロンティタ、こっちにおいで。
    ナディはあらくれものだから。


    エリス。


    …。


    あたしはたまの休みだし遊んであげようかな、と思っただけで。


    ……。


    なんで怒ってんのよ。
    ほっぺただって、抓ってたわけじゃ


    ばか。


    あー。


    ……。


    …つか、なにむくれてんだか。


    むくれてない。


    むくれてる。


    む、く、れ、て、な、い。
    ロンティタ、行こう。


    て、どこに。


    ……。


    エリス。


    ……そろそろ時間、だから。


    時間?


    ……。


    ああ、おっぱい?


    …!


    別にここでも良いじゃない。


    いや。


    思ってたんだけど、なんで隠すのかな。


    …隠してない。


    そうかな。


    …そうだよ。


    じゃおいで、エリス。


    ……。


    ほら。


    …ナディが、見るから。


    ああ、恥ずかしい?


    …!


    て、当たりかい。


    ナディのばか…!


    そんな大きな声出すと、ロントが驚くぞ?


    …あ。


    まぁ、こいつはこれくらいじゃあまり泣かないけど。
    動じないと言うか。





    いつもどおりだし。





    ま、でも、いきなりあまり大きな声は出すな?


    …ナディのせい。


    そうかい。


    ……。


    エリス、おいで。
    ここでやれば良い。


    ……。


    ほら。


    …見ないで。


    見せて、とは言わないけど。


    …でも、見るんだ。


    うん。


    ……。


    ここにおいで。
    エリス、ロント。


    ……何も、しない?


    何か、されたい?


    ……すぐ、そういうこと言う。


    まぁ、エリスの事が好きだし。
    だから、ナニかしたいし。


    ………今は、だめ。


    いえっさ、分かってる。





    あんまり、わかってないとおもう。
    というか、そういっておいて、きっと。





    ……ん。


    うん?


    …ロント。


    お腹、すいたって?


    ……。


    …ねぇ、エリス。


    ……なに。


    あげてる時も、感じるもの?


    ………。


    ちょっと、気になってた。


    ばか、うすらタコス。








    ……。


    ……。


    ………。


    …ナディ。


    いっぱい飲むようになったな、て。


    ……。


    ……。


    …あんまり、見てないで。


    目、閉じてる。


    …。


    飲んでる時。
    いつもこうだったっけ?


    …いつもじゃない。


    ふぅん。


    ……。


    …生まれた時より、大きくなった。


    …。


    当たり前、だけど。


    …でも。


    うん?


    ちょっと小さいって。


    小さい?


    …おばあちゃんが。


    大きくなってれば、それで良いと思うけど。


    ……。


    今のところ、大きな病気もしてないし。
    昔はさ、今より赤ん坊が育たなかったんだってさ。


    ……。


    だからこのまま、元気で大きくなってくれればそれで良い。


    …ナディ。


    ねぇ、ロント。





    やだ、じゃましないで。





    ……。


    …お、生意気。


    飲んでるのに、邪魔するから。


    邪魔したつもりはないんだけど。


    ……。


    ……。


    ……まだ、だよ。


    分かるんだ。


    …日によって、違うけど。


    へぇ。


    ……今日は、いっぱい飲んでる方。


    そっか。


    …。


    ロント、エリスのおっぱいおいしい?


    …そういうこと、言わないで。


    いや、あたしには薄かったからさ。


    …!


    でも、ロントには





    …わ。





    ばか…!


    お。


    ナディのうすらタコス…!


    エリス、片手じゃロントが飲みづらそう、つか危ないって。


    ナディのせい!
    どうしてそういうこと、言うの!


    そういうこと?
    ああ、味のこと?


    …ッ。


    つい、かな。
    ほら、両手じゃないとロントがうまく飲めないって。


    …ばか、ばか。


    ごめんって。
    もう言わないから。


    そうゆって、また、言うくせに。


    約束する。


    大体、ナディはいつもそうだから。


    エリ


    だからしばらく、だめ。


    え?


    ロントがおっぱい離れするまで、だめにする。


    て、それは…。


    ……。


    エリス、ごめんって。


    だめ。


    エリス。


    この間だって、調子に乗っていっぱい飲んだ。


    …。


    だめって、言ってるのに…


    いっぱい…ね。


    ……あ。


    まぁ、否定はしないけど…。


    ……。


    …エリスに言われると、ちょっと。
    でもそんなに飲んだかな…。


    な、ナディ!


    はいはい、ごめん。
    あとあたしの場合はそれが目的なわけじゃ


    うるさい、ば





    わかったから、しずかにのませて!





    …いた!


    …?


    ……。


    エリス?
    どこか


    …なんでもない。


    なんでもなくて、いきなり痛がるか。
    どこが痛いの。


    ……。


    ん…?


    ……歯、が。


    歯?
    ああ、噛まれた?


    ……。


    こら、ロント。
    噛むな。





    うぅー。





    ……ナディが邪魔ばかりするから。


    あたしのせいってか。


    …そう、ナディのせい。
    ロントもそう言ってる。


    はいはい、ごめんなさい。


    ……。


    エリス。


    …なに。


    顔、赤くなってる。


    …!


    どした?


    なんでもない、ばか。


    …そ。
    なら、良いけど。


    …。


    …離乳食、だっけ。


    ……。


    赤ん坊が食べるの。
    考えた方が良いのかな。


    …まだ、いいって。


    おっぱいで?


    …うん。


    そっか。
    じゃあ、良いや。


    ……。


    …。


    ……今、思った。


    ん、何を?


    ……。


    エリス?


    …ナディのばか、くされタコス。


    はいはい…。


    ……。


    ……。


    ……。


    …少し、甘かったよ。


    ……。


    少しだけ、だけど。
    でも確かに甘かった。


    …やっぱり言った。


    味は…大事らしいからさ。


    …。


    …体調とか、分かるんだって。
    食べ物でも変わるらしいけど。


    ……おばあちゃんが?


    まぁ、そうかな…。


    ……。


    …だから、怒らないでよ。


    …。


    …あとおっぱい離れするまで待つのは、辛い。


    ………。


    …辛い。


    ……知ってる、ばか。








    …ロントって、さ。


    ……。


    外見てるの、好きなのかな。


    …どうして。


    なんとなく。


    ……。


    いつもあんな感じ?


    …いつもっ、て。


    見てんの?


    ……うん。


    そっか。
    じゃ、好きなのかな。


    ……ナディ、は。


    うん。


    …きこえ、る?


    何を?


    ……いまでも。


    今でも?


    ……アリス、の。


    前も聞こえなかったけど。


    …うそ。


    お…。


    …わるいうそは、だめ。


    ほんとだって…。


    …そのわりには、ふたりであってた。


    あれは会うというより、出くわ


    …わたしがねてるあいだ、も。


    …。


    ふたりで、なにしてたの…。


    …あんたにするような事は、一切してない。


    ……。


    …その話は、何度も、してるんだけどな。


    ……。


    しょうがないなぁ…。


    …うすら、タコス。


    はいはい…。


    ……。


    そういやアリスの姿、ここのところ見てないなぁ。
    どうしたんだろ。


    …。


    …やきもち、やくな?


    ……べつに、やいてない。


    うそつけ…。


    …あ、ん。


    ……。


    や、だめ……。


    …初めてじゃ、ない。


    あ、あ……。


    ……。


    …は…あぁん。


    ……エリス。


    やだ、そんなところでしゃべらないで…。


    ……はいはい。


    や、やぁ…。


    ……。


    だめ、だめ…ぇ…。


    ……もう、ちょっと。


    あ……ッ。


    ……ん。


    …な、ディ。


    ……ここ、食べていい?


    だ、め…。


    …そう言われると。
    我慢、出来なくなる…。


    …ひゃうぅ!


    ………。


    ひぁ、あぁ、あぁん…ッ。


    …たまんない。


    いや…いや…ぁ。


    ……。


    ねぇ、それやだ…や、ぁ…ッ。


    ……このまま。


    ナディ、ナディ、ナ…ッ。


    ……。


    いや、いやぁぁっ、……ぁ、あああぁぁぁッ!


    ………。


    ……あ……ぁ…あぁ…。


    ……。


    ………。


    ……エリス。


    ……。


    ……ごめん?


    ……。


    これはもう、しない…。


    ……。


    …次はちゃんと、中に入るよ。


    …、…。


    ん…?


    …、……。


    …ばか?


    ……。


    …おしまい、なんて。
    言わないでよ。


    ……。


    …まだ、入ってない。


    …。


    …だって、したいんだって。


    ……。


    エリス。


    ……ば、か。


    うん…ごめん。


    ……。


    でも…また、するよ。
    どうしても、したいから。


    …。


    けど、今夜はもうしない…約束、する。


    …。


    …少し、休んでから。
    ね…?


    ……。


    …エリス。


    ……。


    …うん?


    ……アリ、ス。


    …また、アリス?


    ……。


    しょうがないな…。


    ……。


    ……よしよし。


    ……。


    エリス…。


    ……ロントは。


    ロント…?


    …そとに、でたいの。


    外に?
    じゃあ、散歩にでも連れて


    …そうじゃ、ない。


    …。


    じぶんのあしでたって、あるいて……そして。


    それはいつか必ず叶うよ。
    掴まり立ちも出来るようになったしさ。


    …みつけるの。


    …?


    みつけるために…あのこは、うまれた。


    て、何を。


    ……ロントには、きこえてるのかもしれない。


    聞こえる?


    どこまでしってるか、わからないけど…。


    …うーん。


    ……きっと、ロントは。


    で。
    エリスには何か、聞こえてんの?


    …え。


    何か?


    ……。


    …ロントと会話、してるみたいにも見えるからさ?


    ……。


    分かる?


    …ううん。


    ほんとかぁ?


    …ほんとだよ。


    なら、いい…。


    …いいんだ。


    うん、いい。


    ……どんかん。


    あぁ?


    …ふふ。


    エリス。


    …や、まだだめ。


    聞こえない。


    …だぁめ。


    む。


    ……おおかみ。


    …むぅ。


    ……ロント、なかないね。


    …。


    よなき…。


    …出来れば、しないでいて欲しいかな。


    あかちゃんだから…。


    そう、だけど。


    でも、あまりしなかった…。


    …。


    …もっと、するものだとおもった。


    分かってるのかも。


    …?
    わかる…?


    あたしとエリスが、こういうコト、してるから…。


    …。


    …泣いたら、悪いってさ。


    ばか。


    と。


    …わたしたちは、ロントのおやなの。


    はいはい、ごめんなさい。


    …かるい。


    ちゃんと謝ってるって…。


    …だめ。


    ね、エリス…。


    …ナディ。


    ……愛してる。


    ……。


    ……。


    …ずるい。


    ん…。


    …こんなとき、ばかり。


    そんなこと、ない…。


    ……こんなとき、ばかり。


    エリス…。


    …みみもと、で。


    それは……まぁ、こういう時じゃないと、ね。


    ……。


    …エリス、愛してる。


    あ……。








    ロント…。


    …?


    何が、見えるの…?


    ……。


    私も、一緒に見ようかな…。


    …うー。


    だめ?


    …。


    …ありがとう、ロント。


    ……。


    …こうやって、ロントと一緒に外を見てたら。


    …。


    ナディ、早く帰って来ないかな…。


    …あーうー。


    うん…分かってるの。


    …。


    分かってるけど…一緒に、いて欲しいの。


    ……。


    …ロントが、いるのにね。
    ごめんね。


    …うぅ。


    ……ロントは、優しいね。
    あの人に良く似てる…。


    ……。


    …あ。


    あーううー。


    …そこは。


    うーー。


    ……だめって、言ったのに。


    …。


    …すぐ、痕つけるんだから。
    昨日だって…。


    うー。


    …あ、ロント。


    ……。


    だめ…?


    …。


    …それは、似なくても良いの。


    ……?


    気になる…?


    …。


    …これは、ナディが私にくれるもの。
    私が、ナディに…。


    …。


    ……愛された、証拠。


    ……。


    ……。


    …うー?


    ……こんなこと、ナディには言えない。


    …。


    …だから、秘密。
    ね…。


    う。


    …ふふ、不思議。


    …。


    ロントはまだ、話せないのに。
    お話、ちゃんとしてるみたい。


    …。


    …ロント。


    あー。


    …?
    うん?


    ……。


    …外。
    今日も良い天気だね…。


    ……。


    …外、行きたい?


    …。


    私も、行きたい…。


    …。


    …ナディと、また。


    ……。


    …少しだけ、行こうか。


    うー。


    …大丈夫。
    今日は調子が良いみたいだから。


    …。


    …少し、疲れてるけど。
    でも、大丈夫…。


    ……。


    …ナディのせい、だから。


    …。


    少しだけ、お散歩しよう…?


    うぅ。


    …心配、しないで。
    私は大丈夫…。


    ……。


    …着替えるね。


    あ、う。


    ……。


    …。


    …ロントは大きくなったら。


    …。


    ナディみたいに、なるのかな…。


    …。


    …なってくれたら、嬉しい。
    けど…。


    …?


    …あまり、エッチにならないで。


    ……。


    すぐ、調子に乗って…。


    ……。


    …こんなとこにまで。
    ナディの、ばか…。


    ……。


    ……だけど。


    …。


    もしも、あなたが…アリス、と。


    …。


    ……そしたら、私みたいに。


    …。


    ……こんな願い、いけないって分かってるよ。


    …。


    それでも……。


    …うーー!


    え。


    うー、うーー。


    ロント、だめ、
    落ちちゃう。


    うーーー。


    あ…。


    ……。


    ……ロント。


    あーー。


    ……うん、そうだね。
    先の事なんて、分からないよね…。


    …。


    …そうだ。
    ナディのこと、後で迎えに行こうか…。


    …。


    …驚いて、くれるかな。


    ……。


    …ナディ、エッチだけど心配性だから。


    ……。


    …でも、今は。
    ロントとお散歩に行くのが先だね…。


    …あぅ。


    ……。


    …ぅ。


    …ナディの、子供。
    私が産んだ、ナディの…。


    ……。


    …早く、大きくならないで。
    もう少し、私の中に…。


    ……。


    …ごめんね、ロント。
    ママ、変な事言ってるね…。


    ……。


    …うん。
    じゃあ、行こう…?


    う。


    自分で、歩く…?


    うー。


    そっか…。


    あーうー。


    …こんなに小さいのに。
    生きて、自分の足で歩くんだ…。


    …。


    …人の、子。
    でも私の…。


    ……。


    …ん。
    じゃあ、行こう…外に。


    あー!








    ん、気持ち良い…。


    うー、うー。


    …風、気持ち良いね。


    うー!


    ……。


    あー、あー。


    そっちに行きたいの?


    あー。


    ん、じゃあ行こうか。


    あーうーあー。


    ……。


    あーー。


    …。


    …?
    えー?


    ……。


    …!


    ……はぁ。


    あー、あー!


    …大丈夫。
    大丈夫だよ、ロント…。


    うぅー…。


    …あそこまで行ったら。
    少し、休んで良い…?


    うー!


    …ありがとう、ロント。


    ……。


    …良い天気。
    ナディと旅してた頃も、こんな空だった…。


    …。


    青くて、高くて…どんなに手を伸ばしても、届かなくて。


    ……。


    …たまに雨も降ったけど。
    ね、ロント。


    …う。


    私、流れてきたトカゲの子を助ける為に川に飛び込んだ事があるの。
    あの時も雨が降ってた。


    ……。


    川に流されていく私を、ナディが助けてくれた。


    …。


    少しだけ、呆れられたけど。
    ナディは怒らなかった。


    ……。


    …ナディはいつだって、私を助けてくれた。
    守ってくれて、何があっても傍にいてくれるって…。


    ……。


    …そして、あなたをくれた。
    自分の躰がどうなるか、分からなかったのに…それでも、構わないって。


    ……。


    …ナディ。


    ……。


    早く、帰ってきて…ナディ。


    …う。


    あ、ロント…。


    うー、うーー。


    どこへ行くの?
    そっちじゃないよ。


    ……う!


    え…。





    ……。





    うー!


    ……。


    あなたは…。


    …この餓鬼が。


    あ、う。


    だめ、その子を離して。


    そう、この餓鬼があの時の。


    うー、うー。


    お願い、離して。


    …今、あんたが大事にしてるもの。
    そう、今あんたはこれを!


    あ、う…。


    やめて、やめて、アリス…!


    何、その声。
    随分、弱っちゃったものね?


    …お願い、止めて。


    は。
    どうして私があんたのお願いなんか聞かなきゃいけないのよ。
    あんたの願いを聞いてくれるのは、あの莫迦ぐらいよ。


    …ロントを離して。


    返して欲しいなら、その力を使えば良いじゃない。
    ねぇ、出来損ないのエリスちゃん?


    ……はぁ。


    ああ、もう出来ないんだっけ?
    出来損ないくせに、身に余る力なんか使うから!


    ……。


    あはは!
    ざまぁみろ!!


    …アリス。


    今だったら、簡単に殺せるけど。
    どうしようかしら。


    …う。


    まずはこの餓鬼をあんたの目の前で弄り殺す方が面白いかも。
    どんな顔するか、想像しただけで昂ぶるわ。


    ……お願い、アリス。


    私はどうなっても良いから?
    そんな言葉、あんたが言うの?


    ……。


    あの莫迦を、ナディを自分と同じにしたくせに!


    …ぅ。


    莫迦じゃないの。
    ねぇ、エリス。


    ……あなた、が。


    あんた、生意気なのよ。
    出来損ないのくせに、あいつも、餓鬼も、全てを手に入れたような顔をして。


    …。


    私は何も持ってない。
    結局、何も無い!


    ……。


    だから一つぐらい、私に寄越しなさいよ。
    そう、例えばあの莫迦にそっくりなこの餓鬼とか。


    ……たすけて、くれたから。


    は?


    ロント、が生まれた時…本当だったら、死んでたかもしれない。


    ……。


    …でも、あなたが。
    あなたが、ロントに…。


    莫迦じゃないの。


    …私にはもう、残ってなかったから。
    ナディにあげて、ナディの命を私のと一つにして……だか、ら。


    黙れ、出来損ない。


    …う、ぅ。


    この私がこの餓鬼を助けたって?何の為に?
    思い上がりにも程があるわよ。


    ……アリ、ス。


    あんたさぁ、生意気に結界みたいの、張ってたでしょ。
    おかげで骨が折れたわ。


    ……。


    そんなに、邪魔されたくなかった?


    …。


    そんなに、この餓鬼を渡したくなかったの?


    …。


    でも、残念ねぇ。
    もう、あんたには何も出来ないんだもの。


    ……。


    …良いじゃない。
    魔女のクセにあんたには人間の、人間を捨ててくれたあいつがいる。
    それ以上、何を望むのよ。


    ……。


    …本当、似てる。
    むかつく面、してるわ。


    …ロント、は。


    ……。


    あなたに、会いたくて…。


    本当に莫迦じゃないの。


    ……。


    …私が欲しいのは、こんな肉の塊じゃない。
    私が、欲しいのは…


    …いつか。


    ……。


    きっと、ロントは……。


    …くだらない。


    ……。


    この餓鬼、貰っていくわ。


    あ…。


    良いわね、その表情。


    …。


    もっと、歪めなさいよ。
    ねぇ?


    ……。


    ああ、それとも代わりを作る?
    あの莫迦に頼めば屹度また、孕ませてくれるものね。


    …だ、め。


    突っ込んでもらって、散々、喘いで。
    こんな餓鬼の代わりなんて、幾らでも、作れるものねぇ。


    だめ、まだ…。


    それでもあんたの躰が保てば良いけど?
    激しいみたいだから。


    …まだ、連れて行かないで。


    殺して、あげる。


    う……。


    何度でも。
    あの莫迦に、あんたにも似た餓鬼なんて、見るだけで反吐が出る。


    …。


    …ねぇ、エリス。
    あんたの腹から、あの莫迦に似たこんなのが出てきたなんて。
    想像しただけで、この身が焼けてしまいそうよ…。


    …アリ、ス。


    あの莫迦、愛しいエリスちゃんとの間に生まれた餓鬼を殺されたなんて知ったらどんな表情をするかしら。
    ああ、想像しただけでゾクゾクする…!


    ……。


    …じゃあね、出来損ないのエリスちゃん。
    ナディに宜しく?


    ……たすけ、て。


    ……。


    たすけて、ナディ…。


    …莫迦じゃないの。


    ナディ…ナディ…ナ、





    パシン!





    ……う、ぅ。


    うざいのよ。
    あんたなんか、さっさと死ねば良いのに。


    ……ナ、ディ。


    ……。


    ロン、ト……。








    エリス。


    …。


    エリス。


    …ナ、ディ。


    …ただいま、エリス。


    おかえり、なさい…。


    …ごめん、一人にさせて。


    ううん…いいの。
    かえってきて、くれるから…。


    …エリス。


    ん……。


    ……エリス。


    ナディ……。


    …。


    ナディ…ナディ……。





    エリス……!!!





    ……。


    エリス、エリス!


    …ナ、ディ。


    エリス!


    ……あぁ。


    エリス、何があったの?
    どうして、こんな所に!


    きて、くれた…。


    …。


    ナディ…ナディ…。


    …あんたの声が、聞こえたから。


    ……。


    助けてって。
    だから、あたしは。


    …ナディ。


    何があった?


    ……。


    ロントは?
    ロントはどうした?


    ロン、ト……。


    家にいるなら、


    …あぁぁ。


    エリス…?


    ロント…ロントが……。


    ……。


    ごめんなさい…ごめんなさい……。


    …ゆっくりで良い。
    ゆっくりで良いから。


    はぁ…。


    ……酷い熱。
    一度、家に


    まって…。


    エリス、このままだとあんたの躰が。


    …わたしは、いいから。
    だから、ロントをたすけて…。


    …。


    アリ、スが…。


    アリス?


    ロントを、つれて……。


    ……。


    …しって、たの。


    ……。


    アリス、が、ずっと…みてた、の。
    ロントの、こと…。


    ……。


    …だから、わたしは。


    いつから?


    …。


    エリス。


    …ずっと。


    お腹にいる頃から?


    …。


    姿、見ないと思ったけど。
    そっか。


    …ナディ。


    あたしは知らなかったな。
    と言うか、全然気付かなかった。


    …。


    早く、言え?


    …ナディ。


    最後に会ったのは…え、と。


    …ナディが、わたしに。


    あんたを孕ませた時だっけ。


    ……。


    違った?


    …ばか。


    む…。


    …ナディの、ばか。


    エリス。


    どうしてそういうこと、いうの…。


    ……。


    …ばか、ナディのばか。


    ごめん…?


    ……。


    でもそっか。
    たく、あの子は。


    …アリスは、ずっと。


    一度、家に帰ろう。


    でも…


    大丈夫。
    多分、あの子は何もしないと思う。


    ……どうして。


    なんとなく。


    …。


    でもあたしのエリスにこんな目、遭わせたから。
    そこら辺は許さない。


    …ばか。


    ロントはあたしが必ず、連れて帰ってくる。
    だからあんたは家で躰を休ませる事。
    良い、相棒?


    …いや、いく。


    こんな躰で。


    ……。


    …聞き分けろ?


    いや…。


    …こうしてる間にも時間は流れてる。


    ……。


    さぁ、帰ろ?


    ……まってるのは、いや。


    …。


    いや…。


    …すぐ、帰ってくる。


    ……。


    帰ってきた時、おかえりって言って欲しい。


    ……。


    アリス、どうせ近くにいると思うし。
    あの子の事だから。


    …。


    でしょ、エリス。


    …あのこ、なんて。


    ん…?


    …いわないで。


    ……。


    ききたくない…。


    …分かった。
    もう、言わない。


    ……それから。


    それから?


    …うぬぼれすぎ。


    いや、そういうんじゃないけど。


    …。


    それにあたしが自惚れてるのはあんたに関する事だけだしね。


    …うすらたこす。


    うん…。


    …かえって、きて。


    ……。


    つれて、かえってきて…。


    …いえっさ、エリス。








    ……。


    よし。


    ……じゅう、もっていくの。


    一応ね。
    一度家に帰ってきたのは、この理由もあったってわけ。


    ……。


    でも一番はあんたを休ませる事だけどね。


    …もう、つかわないって。


    うん、あたしは使つつもりはないよ。


    ……。


    じゃあ、行ってくる。


    …ナディ。


    ちゃんと連れて帰ってくる。


    ……。


    行ってきます。


    …。


    エリス?


    ……。


    心配性?
    あたしのコト、言うくせにね?


    …。


    …直ぐ、帰ってくる。
    だから、要らない心配するな?


    ……ナディ。


    エリス。


    手……。


    …手?
    手がどうした?


    …。


    ああ、右腕なら問題ないよ。
    今となれば、左腕もそれなりに使えるしね。


    …そうじゃなくて。


    うん?


    かして…。


    うん。


    …。


    …なに?


    ここ…。


    首?


    ……ロント、が。


    …ん?


    ……あと。


    えと?


    …くちびる、つけてきたの。


    え?


    …あなたに、そっくり。


    そっくり、ね。


    …ばか。


    ……。


    …?
    ナ……んッ。


    …どうせなら、もう片方にも。


    ……ばか。
    ナディの、ばか…。


    …。


    ナディ…。


    行ってくる。


    ……。


    帰ってきたら、ごはんにしよう。
    あたしが作るよ。


    ううん、わたしが…。


    あたしが作ったのは食べたくないって?


    …そんなこと、いってない。


    あはは。


    ……。


    じゃあ、エリス。


    …ん、いってらっしゃい。


    ん、行ってきます。


    …かならず。


    ……。


    かならず、かえってきて…。


    当たり前、だ。


    ん…。


    ここが、あたしの家なんだから。


    ……うん。








    ……。


    どう?
    最愛のオヤどもから引き離された感想は。


    ……。


    あんたより、あいつの方が最悪だと思うけど?
    あはは!!


    ……。


    あんたはもう、あいつらの元に生きては帰れない。
    そう、もう二度とね。


    ……。


    あんたはこの私に殺されるから。


    ……。


    あいつらが最愛の餓鬼の死体を見た時、どんな顔をするか。
    特にあの莫迦とか。


    ……。


    愛しい愛しいエリスちゃんとの間に儲けたあんたを殺されたら。
    憎しみで顔が歪む?悲しみで泣く?喜ぶなんて事は、絶対に無いわね。


    …。


    …でも、案外あっさりとあんたの代わりを作るかも。
    あの莫迦、エリスちゃんが可愛くて仕方ないみたいだから。
    エリスちゃんがいれば何も要らないなんて、本気で言うくらいだもの。


    ……。


    自分の命よりもあんな出来損ないの方が大事だなんて。
    本当の莫迦。


    ……。


    …そう、あの莫迦はあんたよりもエリスちゃんが大事なの。
    ああ、なんて可哀想なたまご。


    ……。


    …でも殺す前に、私の玩具にしてやるのも良いかしら。
    精々、良い退屈凌ぎになってね?


    ……。


    ねぇ、エリスのかわいいかわいいたまごちゃん?


    ……。


    …むかつく面して。
    そんな目で、私を見てるんじゃないわよ。


    ……。


    今直ぐ、殺されたいの。
    だったら、殺してやるけど。


    ……。


    …そんな目で、私を見るな。


    ……と。


    …?


    あえ…ね。


    う……。


    わたしのことば、つたわる?


    …おま、え。


    ああ、よかった。
    やっと、つたわった。


    ……やめろ。


    ありす。


    止めろ、私の中に入ってくるな…!!


    ……。


    糞餓鬼が…!


    あって、みたかった。


    く…。


    あえて、うれしい。


    こ、の……。


    ほんとは、ちゃんとはなしがしたいんだけど。


    ……。


    このからだはまだ、ことばをはなせないから。


    …。


    はじめまして、ありす。


    ……。


    はじめてじゃない、けど。
    でもこうやってあえたのははじめてだから。


    …。


    ずっと、いいたかった。
    わたしをたすけてくれて、ありが


    黙れ!!


    ありがとう、ありす。


    …!


    ありす。


    …一人でべらべらと。
    意味が分からないのよ!!


    わからない?
    そっか、ことばってむずかしいな。


    …は?


    なでぃとえりすのはなし、きいてるんだけど。
    でもあのふたり、あまいことばばかりだから。


    ……。


    すき、とか。
    だいすき、とか。


    ……。


    ばか、とか。
    うすらたこす、とか。
    あいしてる、とか。
    そんなのばかりだから。


    …くだらない。
    そんな事、私に話して何になるの。


    なに?
    なにって?


    聞いてるのは、私よ!


    おこってるの?


    …ッ!
    本当、むかつく餓鬼!


    どうして?


    折角、傍に置いてやろうかと思ってたけど。
    止めたわ。


    …わ。


    原形、留めてないくらいに引き裂いて殺し


    ねぇ、ありす。


    …先ずは、その口を切り裂いてあげる。


    ずっと、みてた。


    …。


    ずっと、なでぃとえりすをみてた。


    …っ!


    かなしい、かおで。


    黙れ、黙れ…。


    ふたりが、ふたりをだいてるとき。
    いちばん、かなしそうだった。


    黙れ…ッ!!!


    えりすが、いってた。


    …殺す、殺す、殺してやる。


    ありすは、


    あんたなんか、出来損ないが産んだ子供なんか…!!!!


    なでぃが、すきなんだって。


    うるさい、黙れ…!!


    でも


    どうしてあいつばかり、あいつばかり手に入れるのよ!!


    …なでぃは、わたしをすきになってくれたって。
    わたしみたいなまじょを、すきになってくれたって。


    私だって魔女なのに!あんな出来損ないなんかじゃない、完全な魔女なのに!!


    えりすは、じぶんがまじょなのがいやだった。
    まじょなんかに、うまれたくなかった。


    は、何が!!


    …でも、ナディはそんなエリスが


    魔女の力を使って、餓鬼まで作っておいて!!
    ああ、ナディが欲しがってくれたから?


    …。


    抱いて貰って、泣いて喜んでたくせに!
    魔女に、生まれたくなかっただと!!
    ふざけんじゃないわよ!!


    …だから、だって。


    …。


    だからなでぃは、えりすがすきなんだって。
    まもって、あげたいって。


    ……ふざけるな。


    ありす。


    ……私だって、子供を産める。
    作れるのに…。


    ありす。


    ……何が、違うのよ。


    ありすは、ありす。


    …。


    えりすは、えりす。
    なでぃは、えりすをすきになった。
    だから、わたしがうまれた。


    ……私には、何も無い。


    ううん。


    無いのよ…!


    わたしが、あるよ。


    …。


    あれ、いる?


    …あんたが、何だって言うの。


    ありすが、くれた。


    …。


    いのちを。
    わたしに。


    …は、どうして私が。


    いつかきっと。
    なでぃのように、なれたら。


    ……。


    あいに、いくよ。


    …いつかも、きっとも無いわ。
    あんたはここで殺されるの。
    私に。


    ……。


    …あんたがいるだけで。
    出来損ないが産んだナディに似てるあんたを、この世界に生かしておきたくないの。


    ……。


    …あんたが、悪いんじゃない。
    全部、全部…。


    もうすこし、まって。


    …。


    わたしが、おおきくなるまで。


    …餓鬼のクセに命乞い?


    ううん。


    …。


    ありす。


    ……。


    わたしを、なでぃとえりすのところにかえして。


    …嫌よ。


    …。


    誰が返すか。


    ……。


    返さない、返さな





    アリス。





    …。


    ありす。


    ナ、ディ……。


    …。


    …お前か。
    お前か…っ!


    …。


    止めろ、あいつの…ナディ、の、





    アリス。





    …止めろッ!


    ちがう。


    何が違うッ。
    お前が





    アリス。





    …う、あぁぁっぁぁぁ!!!


    はい、そこまで。


    …!


    久しぶり、は変かな。


    …どうし、て。


    アリス。


    どうして、どうして…ッ!!


    ロントは返して貰う。


    どうして、あんたが…ッ!!


    怪我…うん、してない。
    良かった。


    無視するな…!


    なんとなく。


    は…ッ?


    半分、エリスの命が混ざってるからかな。


    ……。


    でも、遠くに行かれていたらまずかったけど。


    ……。


    ロント、さぁ帰ろうか。
    エリスが待ってる。


    うー。


    お、と。


    ……分からなかったくせに。


    うん?


    今まで、分からなかったくせに!


    うん、分からなかった。


    …!


    傍にいるなら、遊びに…は、無いか。
    何にせよ、こんなコトしなくてもあたし達は


    うるさい…ッ!!


    …お。


    出来損ないばかり、愛してるくせに!
    私の事なんか、


    それ、本音?


    あ……。


    うん?


    ……。


    少し、可愛くなった?


    …ッ!!
    黙れ、人間…!!!


    冗談だけど。


    …ッ。


    そうそう、アリス。


    …。


    エリスの事、また散々してくれたみたいだけど。


    …だから、何よ。


    だから





    ぺチン。





    ……。


    もう、するな?


    …何よ、今の。


    うー、うーー。


    と。
    ごめんごめん、帰ろっか。


    うーー。


    じゃあ、アリス。
    来たくなったら、いつでもおいで。
    でもこんな事、二度とするな。


    ……だから、むかつくのよ。


    あたしにむかつくのは構わないけど。
    それをエリスに向けるな。


    …そういうのが!!


    アリス。


    ……。


    出来れば、あんたには使いたくないのよ。
    もう。


    ……撃てば、良い。
    どうせ、私は


    でも、痛い。
    痛みはあげたくない。


    ……。


    それじゃあ、アリ


    うぅ。


    て、ロント?


    あーうー。


    ああ。
    ロントもばいばい、する?


    うーー。


    ……。





    ありす。





    …。


    きっと、またね。








    ただいま。


    ……。


    ただいま、エリス。


    …ナディ。


    ……起きて、大丈夫?


    ナディ、ナディ…。


    …ん、エリス。


    おかえりなさい…。


    ……。


    ん……。


    ……ただいま。


    う、ん……。


    ……。


    ロント…ロントは?


    寝てる。
    ほら。


    …あぁ。


    どこも怪我はしてない。


    …ロント。
    私の、ロント…。


    …。


    良かった…。


    …。


    ……。


    …じゃ、ごはんでも作るかな。
    出来たら呼びに来るよ。
    それまでロントと


    …ナディ。


    うん?


    …帰ってきて、くれた。
    ちゃんとロントを連れて…。


    当たり前だ。


    ん…。


    …ここが、あたしの家。
    あんたがいるところが、あたしの帰る場所。


    …。


    例えば、この家が無くても。
    あんたがいれば、あたしは帰る場所を失わない。


    …うん。


    あたしは必ず、あんたがいる場所に帰ってくる。


    うん…。


    エリス…。


    …ん。


    ……。


    ……ナ、ディ。


    声が、掠れてる。
    唇も、熱い。


    …ばか。


    もう、心配しなくて良い。
    ごはん出来るまで、ロントとゆっくり休んでて。


    …アリス、は。


    ん?


    …何、してたの。


    んー…。


    …この子、と。


    話してた。


    話す…?


    そう。


    …ロントと。


    まぁ、そういう風に見えたって話。
    まだ、喋れないしね。


    …。


    結局、何がしたかったのかは分からない。
    話さなかったから。


    …。


    すぐに帰るって約束してたしね。
    さみしんぼ、と。


    …してなかったら、


    ま、してなくてもすぐ帰るけど。


    …本当に話さなかったの。


    まぁ、少しは話したけど。
    理由は聞かなかった。


    …。


    ああ、でも。
    二度とこういう事はするなって、言っておいた。
    あとエリスの事も。


    …わたし?


    あたしにむかついても良いけど、エリスの事は苛めるなって。


    …それで。


    それで?


    …。


    ああ、そういや少し可愛くなってたかな。


    …!


    冗談。


    …ばか。
    ナディのばか。


    ごめん?


    …しらない。


    …。


    キス、しないで…。


    …。


    や、ん…。


    ……やっぱり、熱い。
    熱、これ以上高くならないように、今夜はゆっくり休まないと…。


    ……。


    …涙、こぼれそう。


    ばか……。


    …ふふ。


    ……。


    まぁ、ね。
    まさか、この子の心臓が欲しかったわけじゃないんだろうけど。


    …。


    久々に出てきたと思ったら。
    結局何がしたかったのかな、アリスは。
    来たけりゃ、普通に来れば良いのに。


    …鈍感。


    うん?


    …だから、アリスは。


    アリスは?


    …う。


    アリスは…何?


    …やだ、言いたくない。


    そこまで言ったんだから、言え。


    …いや。


    ……。


    …ごはん、作らないの。


    あんたに言わせてから。


    …。


    ……エリス。


    …いや。
    いや……。


    …。


    …ナディを好きなのは、私だけでいい。
    いいの…。


    …そんなの、今更だ。


    ……。


    …あたしだって、他にいらない。


    ナディ……。


    …それでも、言わせるけど。


    ……。


    …ん?


    いじわる…。


    …そりゃ、好きだから。


    …。


    笑ってる顔が一番だけど。


    …。


    …ほっぺた赤くして、眉毛ぎゅっとして、涙いっぱいためて。


    あ、ぅ…ん。


    …そういう顔も、好きだから。
    そういう顔にさせたくて、意地悪、してやりたくなる…。


    そんなナディ、なんて…。


    …きらい?


    きらい…。


    …じゃあ、ほどほどにしないと。
    本当に嫌われちゃう前に…。


    …ばか。


    ん……。


    …きらいになんか、ならない。
    なれないの、しってるくせに…。


    …知ってるって、言いたいけど。


    ……。


    …ごはん、作ってくるよ。
    ロント連れて帰ってきて、あんたの安心した顔を見てたら、お腹、へってきたから。


    …。


    …エリスは?


    …。


    …食欲、ない?


    ……。


    それとも心配で、それどころじゃなかった?


    …そういうこと、いわないで。


    ……。


    …ナディ。


    うん…。


    …ばか、だいすき。
    だいすき……。








    ...three