…はぁ。
…。
はぁ、はぁ…。
…そっちじゃ、ないよ。
…。
そっちじゃない。
…じゃあ、どっちにいけばいいの。
そっちはあぶないよ。
…。
…。
…どこに、いけばいいの。
…。
あたしは…。
…どこにでもいけるよ。
いきたくない、かえりたい。
…。
おうちにかえりたい…。
…かえりたいの?
かえりたい、かえりたいよ。
…かえっても。
なにも、ないよ。
…ッ。
それでも、かえるの?
どこに?
……。
…。
……うぅぅ。
…。
やだよ…やだよぉ。
…なにが?
ひとりは…やだよ。
…。
かえりたい…かえりたい…。
…。
……ママ…タタ…。
……みんな、もえちゃったよ。
……。
もう、なにもない。
…なんで。
…。
そんなこと、いうの…。
…ほんとうのことだよ。
なんで…ッ。
…。
なんで、なんで…。
…。
………いかなくちゃ。
…。
みんなの、ところに…。
…どこへいけばいいの?
みんながよんでる…。
よんでないよ。
よんでるよ!
…。
いかなくちゃ…かえらなくちゃ…。
…。
…。
…。
…はなして。
…。
はなして、はなして!
…。
はなしてよ…!
…。
…あ。
…いこう。
え、え…。
みんな、もえちゃったから。
や、やだ…。
しんじゃったから。
…っ!
…。
やだ、はなして…はなして!
…。
あぁぁぁぁ…ッ!!
……わたしは、あなたさえ。
…ィ!
…。
…ディ!
…。
ナディ!!
…な、に。
うるさいな…。
しっかりなさい、ナディ…!
あたしなら…。
…ベックマン!
はい、支部長。
……な。
失礼します。
あたしに、さわるな。
…支部長。
良いから、続けなさい。
はい。
…さわるな!
…。
ナディ。
あたしにさわるな。
…。
…貴女、今自分がどんな状態になっているか、分かっているの。
どんな…?
そんなの、決まってるじゃない。
仕事、を…。
そんなにふらふらで、どこが仕事なの。
…これ、は。
兎に角…
つ…ぅ…ッ
…?
…さわる、な。
…。
はぁ…。
…ベックマン、貴方は向こうへ行ってなさい。
しかし…。
良いから、早く。
は、はい。
…ナディ。
だか…ら、あたしにさわるな…て。
加減はしないわ。
え…。
……。
ちょ、何を…。
……。
…あんたにそんな趣味、あったなんて、ね。
抵抗出来るのなら、してみなさい。
然う、出来るのであらば。
…。
憎まれ口なら幾らでも聞くわ。
そう、幾らでもね。
……あとで、さんかい、ころす。
…。
…。
………これ、は。
……く。
貴女がそこまで莫迦だったなんて、流石に思わなかったわ。
……。
どうして処置していないの…!
…してた、わよ。
だったらここまで酷くはならないでしょうが!
……うる、さいな。
兎に角、病院に行くわよ。
…なんで。
なんでもよ!
これは命令よ、従ってもらうわ。
…どうして、あたしがあんた…の、
一時とは言え、部下だからよ。
…。
彼が嫌ならば私が背負うわ。
そして、貴女に拒否権は無い。
…。
行くわよ。
……エリ、スは。
…。
エリスに…は。
…貴女、本当に莫迦でしょう。
…。
あの子が、気付かないとでも思ってたの。
…。
あの子は誰よりも、貴女を見ている。
貴女だけを、一途に。
それを知らないだなんて、言わせないわ。
……はは、まいった…な。
ベックマン!
…は、はい!
病院の手配を!
分かりました!!
……はぁ。
…良いわね、ナディ。
……。
…。
…。
…。
…ナディ。
…うん?
ほんとうに、ねないの?
…うん、たまにはね。
でも…。
…ベッドでばかりだと、カンが鈍っちゃいそうだから。
…。
…あたしの事は気にしないで。
言ったでしょ、慣れてるって。
…。
さ、おやすみ。
明日も頑張らないといけないんだから。
…。
…エリス。
……。
…。
ナディ…。
…躰、冷えちゃうわよ。
ナディだって…。
大丈夫。
毛布もあるし。
…。
ほら、さっさとベッドに戻る。
…。
エリス。
…どうして。
…。
どうして、いすなの?
…だから言ったでしょ?
でも。
…。
…あのひから、ずっとベッドだったのに。
…。
あのひから…ナディが、わたしを
エリス。
…。
深い意味はないから。
…。
ただたまに、こうしておかないと。
本当に鈍っちゃうから。
…。
…さ、もう寝なさい。
あたしはどこにも行かないから。
…ナディといっしょがいい。
…。
いいよ…ナディ。
……エリス。
なんで…。
…あんたを守る為。
…。
だから。
…わたしはもう、しょうきんくびじゃないよ。
けど、間抜けがいないとは限らない。
…。
…。
……ナディ。
…そんな声、出さないの。
…。
さぁ…エリス。
…。
エリス…。
…。
…。
…。
………エリス。
……。
…。
…。
…。
……ブルーアイズ。
…なに。
……。
…で。
その傷は?
…別に。
別に、ですって?
…。
貴女、一歩間違っていたら破傷風になっていたかもしれないのよ。
はしょーふう…。
死んでいたかもしれないと言う事よ。
……ふぅん。
…。
…。
…そうなったら。
…。
エリスに蘇生してもらえば良いだなんて、安易に
思ってないわよ。
…。
…そんな事、思ってない。
じゃあ何故、そんなになるまで放っておいたの。
…。
熱まで出して。
苦しいのは自分でしょう。
…。
…いえ、違うわね。
…あたしの痛みはあたしだけのものよ。
誰にも
それは、違うわ。
…じゃあ、分かるの。
あんたに。
私は分からない。
けれど。
「……ナディ」
…。
…この子には、分かるわ。
ナディ…。
…エリス。
ナディ、ナディ…!
……こらこら。
……。
なんで、泣いているの…。
ナディが…。
…あたしは大丈夫。
どっかの誰かが大袈裟に、んん。
…。
…。
……。
……エリ、ス。
……ナディ、が。
たおれたって…。
…。
きずが、ひどいって…かのう、してるって…。
だからねつがでた…て。
…。
ナディ。
……。
これでも分からないとでも言うの。
…でも
でも、じゃない。
……。
言い方を変えるわ。
貴女には分からないの。
…なにが。
この子の痛み、貴女がそんな事になって受けた痛み。
……そんな、の。
本当に分からないと言えるの。
……。
…。
…エリス、とりあえず苦しいから。
いや…。
……エリス。
…。
……ごめん、エリス。
…ぅ。
ごめんね、エリス…。
…ナディ…ナディ…。
…。
…。
…少し休みなさい、ナディ。
…。
エリスも。
…。
何かあったら連絡して。
…待って、ブルーアイズ。
何。
だから…その。
…?
医者代なんて、その…ないんだけど。
…。
な、何よ。
そんなの、知ってるわ。
だから引いておく。
え…。
嵩むのが嫌なら、とっとと、治しなさい。
良いわね。
…簡単に言うけど。
簡単でしょ、貴女の体力なら。
体力の問題?
貴女の場合は。
…どんだけ野生児なんだっつぅの。
エリス、ちゃんと付いていてあげてね。
何するか、分からないから。
て、あのね…
…。
……え、と。
じゃあ、まと後で。
あ、うん…。
…。
……エリス。
…。
…。
…。
…エリス、あのね。
…。
エリス…。
……きず。
え…?
…わたしが、つけたのだよね。
…。
わたしが…。
…エリスが気にすることじゃないわよ。
あたしがちゃんと
でも!
…。
…わたしが、ナディをくるしめた。
それは違う。
…ちがわないよ。
わたしが…わたしが…。
エリス。
…わたしが、だいてなんていったから。
……。
わたしが、ナディのせなかにつめをたてたから…だから。
…エリス。
わたしのちからは…にんげんのじゃ、ないのに…。
もう、いいから。
わたしが…わたしが…ぁ。
…もう、いいから。
…。
これはあたしの責任。
あんたは何も悪くない。
…。
…それにね、嬉しかったのよ。
…。
エリスに…そうしてもらえて。
……。
…だから、あんたは悪くない。
…。
オーケイ、相棒?
……。
エリス…?
…ナディ。
ん…?
……。
ほら、もう泣かないの…。
…ナディ…ナディ。
よしよし。
……。
…そうだ、エリス。
…?
今、アレ持ってる?
…あれ?
その、リボン。
…。
持ってなければ…良いんだけ、ど。
…もってる。
…。
…。
…結んでくれる?
…いえっさ。
…。
…。
…。
…できた。
…ありがとう。
…。
あたしも。
…うん。
…。
…。
…うーん。
まがってる…。
やり直し、かな。
…。
…。
…えへへ。
…ふふ。
…。
出来た。
…うれしい。
うん…。
…ナディ。
……エリス。
ん…。
……。
……ナディ、あつい。
まぁ、熱があるみたいだから。
…むり、しないで。
…うん、分かってる。
…。
…。
……すき。
…。
だいすき…ん。
……。
……。
……好きよ、エリス。
ナディ…。
…。
…。
…そういえば。
…?
あたし、貰ってばかりだった。
…もらって?
リボンの指輪。
…。
けど本物、買う甲斐性なんてないし…。
ごめんね、エリス。
…べつにいらないよ。
…。
ナディがそばにいてくれれば、わたしはそれだけでいいの。
……うん、あたしも。
…。
…そうだ。
…。
……。
…ナディ?
…これ。
これ…。
…共通点は輪っかって事ぐらいだけど。
…。
しかもサイズ、合わないと思うけど…。
…ナディの、ピアス。
流石に、いらないか…。
…いる、ほしい。
…。
…つけて。
でも多分、
おねがい。
…う、うん。
…。
…。
…。
…やっぱり、
…。
あ。
………ぴったり。
……。
…。
…え、と。
……おこる?
…誰かに見られたらどうするの。
だれもみてないよ。
…あのな。
ナディ。
…ん。
もうかたほうの…。
…。
…ナディにつけてあげる。
…うん。
…。
…。
……ぴったり、ね。
うん、ぴったり。
…。
…。
…この、魔女め。
…わたし、まじょだから。
でも…。
…?
…あんたはあたしの。
ナディ…?
…。
…。
……結婚、しよう。
…あ。
あたしと…してください。
……ほんとう、に?
うん、本当。
…いつか、っていわない?
言わない。
…。
…て、おいおい。
…。
いつからそんなに泣き虫になったのかな、あんたは。
だってでてくるんだもん…。
…。
…ナディだって、ひとのこといえない。
これはあんたに釣られてるだけ。
…なきむし。
だから…ん。
…。
……あいしてる、ナディ。
…。
…。
……こらこらこら。
…。
化膿、してたのに。
いきなり治ってたら吃驚されるでしょうが。
とくいたいしつってことにすればいいよ。
何だとぅ。
…おこらないで。
…。
…。
……怒らないわよ。
…うん。
…。
…。
…エリス。
ん…。
…愛してる。
誰よりも…あんたを。
……。
…。
…。
…で。
…?
そ、その返事は…。
…。
いや、まぁ、急がなくても良いけ…ど。
いえっさ。
…それはどっちの?
ナディは、どんかん。
…む。
けっこん、してください。
…。
わたしと…。
…。
……いえっさ?
…いえっさ、エリス。
…しっかし、だ。
…ん。
ほんとにぴったりだなぁ、これ。
…ぴったりだよ。
…。
…だめ?
だめじゃない。
…えへへ。
こら、くすぐったいって。
なにもしてないよ?
あんたの髪の毛。
かみのけ?
首筋に当たる。
くすぐったい。
…えい。
お…。
…くすぐったい?
このぉ。
えへ。
柔らかいから、余計にくすぐったいのよね。
ナディの髪も。
あたしのはどちらかと言うと、固い。
やわらかいよ?
そう言ってくれるのはエリスだけ。
そうなの?
そもそも触らせたこと、ないけど。
…。
ん…?
わたしだけ?
…まぁ、そうかな。
わたしもナディだけ。
それはどうも。
…。
ふぁぁ…。
…ねむい?
色々、あったから。
…。
…でも、終わり良ければすべて良し。
いいの?
うん、いいの。
…。
エリス…。
…ナディ。
……。
…しょや。
…ん?
しょやだね。
…しょ?
しょやっていうんだよ。
……初夜?
ふうふになって、はじめてのよるのこと。
………。
ナディ?
…いや、まぁ、そうだけど。
そうだよ。
そう、か。
うん、そう。
……そっか。
…。
…。
…。
……なんか、照れる。
ナディははずかしがりや。
…言うな。
…。
くすぐったいって。
…ナディ。
ほら、少し離れて離れて。
…。
…いや、そんなに離れなくていいから。
どっち?
…出来ればあまり離れない方が。
ナディ、いってることめちゃくちゃ。
…う。
…。
…でも、これはこれでくすぐったいんだって。
……ねぇ、ナディ。
うん?
…せなか、だいじょうぶ?
…。
いたくない…?
…少し、痛い。
…。
けど、今度はちゃんと手当てして貰うから。
…だれに?
あたしの嫁は誰?
…よめ。
て、なんか違うか。
え、と、何て言えばいいのかな…。
…エリスはナディのよめ。
…。
つま?
と言うか、エリスはエリス。
…つまんない。
つまんないって。
…ナディはエリスのよめ。
……。
よめ?
…いや、なんか。
なんか?
…間違ってはないんだけど。
じゃあ、だんな?
そりゃ男だ。
じゃあ、よめ。
……まぁ、いいのかな。
えへへ。
…まぁ、いっか。
うん、いいの。
…。
…。
…エリス、さ。
ん…。
……しあわせ?
うん、しあわせ。
…あたしと一緒だから?
うん、ナディとずっといっしょだから。
うあ…。
へんなこえ。
…すごい、自惚れそう。
…。
わ…。
…うぬぼれても、いいよ。
……。
…えへへ。
……ああ、もう。
しあわせすぎて、死にそう…。
…しなないで。
本当には死なないけど…。
…なら、いい。
…。
…ナディ。
エリス…。
エリスはナディのかぞくだよね?
…そうよ。
ナディは…。
…あんたの家族だから。
…。
…。
……すごく、うれしい。
うん…あたしも。
…。
…そろそろ、寝よっか。
明日は…。
……うん。
おやすみ、エリス…。
…おやすみ、ナディ。
また明日…。
……うん、またあした。
…。
…。
…また。
…。
…。
…ナディ。
…ちがう。
あなたはナディ。
ちがう!
…。
…あたしはそんななまえじゃない。
…。
あたしは…。
…。
……あなたは、だれなの。
…。
どうしてあたしを
あなたはわたしのだいすきなひと。
…。
…あなたがいれば、ほかに、なにもいらない。
…。
いらないの。
……わかんないよ。
…。
わかんない、わかんないよ。
…。
…なんなの。
あかい、ほのお。
…!
てんをこがす、ほむら。
…て。
すべてを。
やめて。
あなたのだいじなものを。
やめて…!
…。
…そんなの、ききたくない。
…しってる。
じゃあ、どうして…!
…。
…どうして。
ごめんね。
…。
…わたしはあなたのすべてが。
…。
しりたかった。
……。
しりたかったの…ナディ。
…。
…ごめんね。
…。
ごめんね…キジャ。
…。
…。
…。
…。
……エリス。
…。
エリス、なのね。
…ちがうよ。
違わない。
…。
ああ…。
…。
…あたしは、ナディ。
…。
そしてあんたは…。
…。
…あたしの大切な人。
誰よりも…誰よりも、大切な人…。
…ナ…ディ。
ずっと、傍にいてくれたのね…。
…ずっとじゃないよ。
…。
…。
…そっか、そうだった。
…。
けど…そんなの、どうでも良い。
…。
…今が、あれば。
ごめんね…ナディ。
…どうして、謝るの。
…。
勝手に過去を、見て?
……うん。
…。
…。
…確かに、ね。
…。
でも、思い出した。
…。
あたしの名前。
昔の。
…。
あたしは、月だった。
太陽じゃない。
…。
けど、それももうどうでも良い。
月は…エリス、あんただから。
…ナディは。
恥ずかしいけど。
…。
…。
…わたしの、たいよう。
……あんたのなら、悪くない。
…。
…。
…エリス。
キ…
…違うでしょ?
…ナディ。
…。
…。
法には?
別にそんなのはどうでも良い。
らしいわね。
…ふん。
…。
…。
そもそも。
…。
らしくない事をするからよ。
…何よ、らしくないって。
うだうだと考えるようなタイプじゃないでしょ、貴女。
…あたしだってね。
で?
…。
終わり良ければ全て良し?
…うっさいな。
自分といて、本当に仕合わせなのか。 なれるのか。
…。
そんなの、貴女が決める事じゃないわ。 最初から。
…。
そして最初から、あの子は貴女に示してた。 でもどうにも、
どうせ鈍感ですよ、あたしは。
と言うより、ばか、ね。 ただの。
…ほんと、殺す。
それで、どうするの。
何が。
式。
…。
甲斐性が無いのは知ってるわ。 でも、敢えて、聞くのよ。
…特別な事をするつもりはないわ。
そう。 ま、それでも良いわね、貴女達は。
…。
けれど、あの子のウェディングドレス姿は見たいのよね。 屹度、良く似合うわ。
…!
勿論、私が、よ?
……ほんと、むかつく女。
貴女のは…。
…いいわよ、言わなくても。
ハポンの諺。
は、ハポン?
馬子にも衣装。
……何それ。
どんなにつまらない人間でも外面を飾れば立派に見える事、だそうよ。
…遺言があったら、どうぞ?
私は貴女が思ってる事を代弁しただけよ。
どこがだ。
どうせ似合わないとでも思っているのでしょ。
…。
別に西洋式のドレスだけがウェディングの衣装じゃないわ。
…タキシードでも着ろ、と?
貴女はインディヘナだったわよね、確か。
…そうだけど。
ならば、それを着れば良い。
……は?
あるでしょう? 確か…ポシェアだっけ?
…ポジェラ。 しかも着た事ないんだけど。
アワスカ?
寧ろ、普段着。
と言うか今時、着てないわよ。
それも嫌なら…いっそ、そのままでも良いと思うわ。
…あのねぇ。 適当なのにも程があるんじゃないの。
そうかしら?
そうよ。 大体、合うわけないじゃないの。
そんなの、やってみなければ分からないわ。
…。
やりようによっては、合わせる事だって出来る。 そう、全てはやり方次第よ。
…でも、流石に。
まぁ、うだうだと考えるとしたらやると決めた時に、だけど。
…。
その時は見たいわね。 貴女の締りのない顔、とか。
…絶対、呼ばない。
そう、それは残念。
…顔、笑ってる。
楽しいもの。
…。
それ。
…あ?
貴女のピアスでしょう?
……。
沈黙は肯定と取るわよ。
…。
らしいわね、とても。
…どうせ、甲斐性なしだから。
ふふ。
……ちくしょ。
はい、ナディ。
…なに。
お給料。
お。
一週間、頑張ってくれたから。 特に貴女の配偶者が。
…嫌味は良いから、さっさと寄越せっての。
エリス。
て、なんでエリスを呼ぶのよ。
…なぁに?
猫と遊んでるところ、ごめんなさいね。
べつにいいよ。 それで、なに?
はい、エリス。 一週間、お疲れ様。
…。
お給料。
ありがとう。
…。
ナディ、はい。
…あ、うん、ありがと。
よかったね。
ん、そだね。
えへへ。
これからどうするの?
どうもしないよ。 わたしはナディといっしょにいくだけだから。
だって。 頑張りなさい、旦那さま。
旦那じゃないっつーの。
ナディはエリスのよめだよ。
いや、だからそれも…。
良かったわね、お嫁さま。
……あぁぁ、もう。
ナディ、もういく?
そうね、そろそろ行こうかな。 でもその前に…ブルーアイズ。
何かしら。
あんた、あたしの村について何か知ってる事は?
…。
ナディ…?
…何故?
なんとなく、知ってそうだから。
…なんとなく、ね。
それにあんたは魔女の、純粋な一族だから。
…。
どうなの?
…ほぼ、知らないわ。
ほぼ、ね。 とりあえず知ってることを話してくれない?
…。
燃やされたのは知ってるの。 でも、どうして?
…私も詳しい事は知らない。
別に詳しくなくても構わない。 あんたが知ってる事を話してくれればいい。
…。
ブルーアイズ。
…それも貴女を悩ませていた事?
…。
ナディ…。
夢を。
…。
ここのところずっと、昔の夢を繰り返し見た。 覚えてない事すらも。
……。
別に今更だから拘るつもりはないわ。 そう、今となっては。
…それは
エリスがいるから。 ずっと、いてくれるから。
…。
ただ、見ておこうかと思って。
見る?
自分の生まれたところの空を。
…。
…。
そしてこの子にもそれを見せたい。
…そう。
…。
ねぇエリス、付いてきてくれるでしょ?
いえっさ…!
…と、言うわけなの。
見せ付けてくれて。
見せ付けてるのよ、頭の固い機械女に。
…全く。
で?
…プロジェクト・リヴァイアサン。 その名をまだ、覚えている?
…まぁ、ね。
…。
その名の下に非人道的実験が多数、行われていた。
そして貴女の村は地図にも載らない、とても小さな村だった。
…。
…それから。
以前から内戦が続いていたのも要因の一つかも知れない。
それを利用した可能性は否定出来ない。
…聞いたことはある。
で?
知っているのは…それだけよ。
…。
…。
ナディ、エリス…。
あ、そう。
……ナディ。
別に、なんて事ないわ。
…。
…。
それがなければ…癪だけど、エリスには逢えなかった。 ただ、それだけ。
…貴女は。
エリスは…どう思ってるか分からないけど。
…ナディ。
失ったモノを思っても、それはもう、取り戻せない。 だから、今あるものをあたしは大切にする。 もう、失くさない為に。
…。
何よ、間抜けな顔をして。
貴女、いきなり言うようになったわね。 うだうだしてたのが嘘みたいよ。
何とでも言え。
…。
こらこら、エリス。 そんなに強くしがみついたら痛いって。
…すき、だいすき。
…はいはい。
行くの?
そのつもり。 この子も見たいそうだから。
場所は分かっているの?
何とかなるでしょ。 前も何とかなったし。
私は
他にも何か知ってることがあれば。
…山の村だったそうね。
うん、みたいよ。 湖も、あったかな。 それからカントゥータも咲いてた。
…。
多分、だけど。
…そう。
じゃあ、ブルーアイズ。
ええ、また。
とは、言わないけど。 一応、お礼は言っておくわ。 ありがとう。
どういたしまして。
ばいばい。 げんきでね。
ありがとう。 エリスも元気で。 式には呼んでね。
しき?
て、ブルーアイズ。
勿論、貴女達の結婚式。
うん、いいよ。
て、エリス。
だめ?
…う。
ナディ?
……いい、けど。
やった。
……。
あらあら、新妻には随分と甘い事。 いいえ、元からだったかしら?
…うるせー。
いこう、ナディ。
あ、うん。 行こっか。
ナディ、エリス。 また、いつか。
縁があったらね。
しきにはよぶよ?
ええ、楽しみにしてるわ。
…まぁ、いいけどさ。 あ、そうそう。 ブルーアイズ。
何よ?
あいつはどうなの?
あいつ?
あの、ローゼンバーグに似てるやつ。
彼はただの部下だけど、それが何?
ただの?
そう、ただの。
あんた、異動とかいうのしたんでしょ?
ええ、そうよ。
あいつもそうなの?
希望を出したみたいだけど。
ふーん。
何よ。
いや、べっつにぃ。 あーあ。
何よ、気になるわね。
ま、別に大した事じゃないから。
ちょっと、ナディ。
行こ、エリス。
いえっさ、ナディ。
ちょっと!
何でもないって。
なんでもないって。
…。
あはは。
えへへ。
…何なのよ、あれ。 新婚気分も良いところじゃない。
…あの、支部長。
わ、吃驚した!
…すみません。 あの、そろそろご支度をと思いまして…。
ああ、もうそんな時間?
…はい。
じゃあ行きましょうか。
…。
どうしたの。
…いえ、何でもありません。
そう? なら、良いけど。
………はぁ。
...siete
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