先住民、て意味。
せんじゅうみん?
先に住んでた人ってこと。
ナディはせんじゅうみんなの?
まぁ、一応ね。
いちおう?
どっかで混ざってるみたいで。 目とか髪なんか良い例。
まざる?
血。
ち?
元々、いた人間。 新しく来た人間。 それらが混ざりました、とさ。
……。
まぁ、簡単に言えば元々いた人間と新しく来た人間の間に子供が生まれました。 そうなるともう純血じゃなくなります、と。
インディヘナじゃないの?
そこは本人がどう思うかだとあたしは思ってる。 混血は混血でなんだか色んな呼び方があるみたいなんだけどね。 ここでは割愛。
ナディはじゅんけつじゃないの?
らしいよ。 まぁ今となってはもう、なかなかいないんじゃないかな。 多分。
そうなんだ。
それと。 似た言葉でインディオってあるんだけどね。
いんでぃお?
聞いたこと、ない?
…。
北では…インディアンって言うかな。
しらない。
そっか。
それはなに?
それもあたしたちを指して言う言葉。 けど、使わない方がいい言葉。
どうして?
あたしたちは“インディオ”じゃないから。
……。
どっかにね、インドって国があるんだって。 で、その言葉はインドの人って意味なの。
だから、あたしたちじゃないってわけ。
なんでいんでぃお?
ここを見つけた人が勝手にそう思ったから、だってさ。
…みつけた?
あたしも良く分からなくてね。
だってそうでしょ、あたしたちは昔からここに住んでるってのに。
うん。
とにかく、あっちの方から海を渡って来た人が勘違いしたのが始まりだとか。
いんど?
そう、インド。
どんなくに?
さぁ、知らない。
…。
そのうち、本で読むかもよ?
うん、そうかも。
分かった?
うん、わかった。
よろしい。 けど難しいコトもあってね。
…?
それまでの事を否定されるみたいだから、インディヘナと呼ぶなと言う人もいるの。
どうよべばいいの?
だから、そういう名称でわざわざ区別して呼ばなくていい。 名前を知ってればそれを呼べば良いことだし。
しらなければ?
普通に挨拶。 それで十分。
そっか。
まぁ、どんなでもあたしはあたしだし。
うん、ナディはナディだよ。 エリスのよめ。
…はいはい。
エリスはナディのよめ。
そうね。
そうだよ?
…。
ナディ?
あたしをあたしとして見てくれる人がいれば、それでいい。
わたし?
そう、あんた。
…えへへ。
以上、講義はおしまい!
いえっさ!
でもってそろそろごはんにしようかな、と思うわけなんだけど。
ごはんー。
と思ってる時に丁度、村が見えてきた。 とりあえず、あそこまで行ってみよ。
たべるとこ、あるかな?
あると、良いな。
やすいの?
出来れば。
おいしければいいね。
うん、それにこした事はない。 けど小さな村っぽいし、なさそうかなぁ。
ナディ。
ん、なに?
なかよしふうふ。
…。
なかよしふうふ?
…新婚旅行ってか。
えへへ。
まぁ、いいけどね。
いいんだよ?
はいはい、じゃあそれで。
ナディ。
んー?
だいすき。
はい、ありがと。
ナディは
ところで、エリス。
…?
あんた、あたしの村がどこにあったか分かるって言ったわよね。 覚えてる?
……うん。
何となく?
うん。
どんな風に分かるの?
うまくいえない。
…。
でも…わかるの。
…なるほど。 とりあえずは先に進めって事かな。
みずのにおい。
…?
が、するところ。
…塩のにおいは?
しない。
なんで?
したら海、だから。
うみ…。
…やっぱり湖、か。 となると。
…?
多分、あの辺なんだろうなぁ。 と、一口で言っても広いんだけど。
どこ?
ウィニャイマルカ。
…ウィニャイマルカ?
…。
…ナディ?
て、呼ばれてるのは今では小さい方なんだけどね。
…。
偶然、と言うか。
…ぐうぜん。
あんたのウィニャイマルカは違う場所だったけど。 ばあちゃん、今になって思えばわざとだったのかなぁ。
…。
ま、いいや。 今は進むだけだし。
…ナディ。
ん?
おなか、すいた。
ん、あたしも。
いっしょ?
そう、一緒。
やった。
喜ぶところかぁ?
そうだよ。
真顔で。
ちがうの?
…まぁ、いいけどね。
ゴーゥ。
はいはい、ゴーゥ。
あ。
え?
ナディ、いってない。
何を?
だいすき。
…あんたね。
ナディは?
…。
ナディ。
…大好き、よ。
…。
…。
……やった。
…やれやれ。
ありがとう、ナディ。
どーいたしまして。
……えへへ。
…。
…。
…うーん。
だれもいないね。
ねぇ。
ぜんぜんいない。
人がいる気配はあるんだけど。
あるの?
生活感、あるじゃない。
…。
洗濯、干してあるし。
うん、ほしてある。
…さて。
どこにいっちゃったんだろうね。
本当にねぇ。
どうするの?
まぁ、このまま通りすぎれば良いかな、と。
ごはんは?
特製ソーセージで。
いえっさ。
でもほんと、ここまで人がいないのもなぁ。
ナディ。
おー?
あそこ。
どこ。
あそこ。
んー……。
ひとがいる。
え、どこどこ。
あそこ。
………あれ?
うん、おとこのひと。 いく?
どうしようかなぁ。
いかない?
…行ってみようかな。 ここまで人がいないのも気になるし。
きになるの?
あんたは気にならない?
ナディがきになるならきにする。
おいおい。
あ。
今度は何。
いっちゃうよ、あのひと。
え、マジで?
うん、まじ。
わーわー待って待って。
まってまって。
ほぉ、お前さんたちは旅をしてるのか。
うん、そうだよ。
女二人でか。
まぁ、ね。
見たところ、二人とも結婚しているようだが。
うん、してるよ。
…良く分かるわね?
なに、手を見れば一目瞭然さ。
ゆびわ?
おう、指輪。 ほれ、わしもしてる。
ほんとだ。 おじいちゃんもけっこんしてる。
ほっほ。 うちのかみさんは元気すぎてちと困るがな。
こまるの?
おお、困る困る。 人より飯を食いやがってなぁ。
おじいちゃん、いやそうなかお、してないよ。
お…。
だから、こまってない。
…こりゃ、参ったな。
ごめんね、じいちゃん。 この子はこういう子なのよ。
いやいや、なんの。 ところで、旦那はどうした? ほっぽといて、二人で旅行か。
だんなはいないよ。
ふむ?
エリスは
ところでじいちゃん。
うん?
なんで誰もいないの? 他の人は?
ああ。 今日はみんな、わしの家に集まっておるよ。
じいちゃんの? なんで?
今日は結婚式だからさ。
結婚式?
…。
おお、そうさ。 今日はうちの末の娘の晴れの日さ。
へぇ、じいちゃんの娘さんが花嫁なんだ。
そうだ、お前さんたちも来い。 一緒にお祝いしてやってくれ。
それはいいけど…。
…エリスは
歌って踊って祝ってくれれば良い。 飯もあるぞ。
わぁ、本当に?
おお、たんとあるぞ。 酒もな。
だってさ、エリス。
…。
エリス?
…。
どうしたの、エリス。
ふむ。 こっちの娘さんは乗り気じゃないか。
まぁ、無理にとは言わんが…。
エリス、どうしたの。
…エリスはナディのかぞく。
…。
家族? ああ、もしかして姉妹だったのか? あまり似てないが。
…ちがう。
…?
えーと。
…ナディは
とりあえず。 じいちゃん、行ってもいい?
ああ、大歓迎さ。 祝ってくれる人が増えるなら、娘も婿どのも喜ぶ。
と言うわけだから。 行くよ、エリス。
…。
エリス。
………いえっさ。
娘のチャスカだ。 チャスカ、ナディとエリスもお前たちを祝ってくれるそうだ。
ありがとうございます。
ああ、いえいえこちらこそ。
…。
…エリス。
……。
…? どうかしましたか?
あ、ああ、まぁ気にしないで。
…エリスは
ところで花婿はどうしたの?
ああ、彼なら向こうにいます。
向こう?
そこでみんなと。
…て、あの踊ってるの?
はい。
わぁお…。
…。
クシは…彼はお酒に弱いんです。
で、ああなったと?
でも楽しそうですから。
…まぁ、それでいいならいいけど。
なに、良いのさ。 みなと騒いで、騒がれてこそ、祝いになる。
そんなもんなんだ?
ああ、そんなものだ。 だからお前さんたちもおおいに騒いでくれ。 こっちとしてはそれが嬉しいのさ。
…。
エリス、折角だからいっぱい食べよ?
…。
エリスってば。
……わたしは。
エリスさん。
…。
今日はありがとうございます。
貴女たちにしてみればたまたまだと思いますけど、私はそのたまたまががとても嬉しい。
…うれしい?
はい、嬉しいです。
……。
…エリス、笑って。
…なんで?
こういう時は笑うのよ。 大きな口を開けて、笑うの。
……けっこんしきだから?
そう。 ここではそれがお祝いになるの。
でもって、チャスカたちが仕合わせになるように。
…しあわせ。
エリス、行こ?
…。
ほら。
…て。
うん?
…いいなら、いく。
…。
だめなら
エリス。
…。
これで、いい?
…うん。
お前さんたちは仲が良いんだな。 ま、だからこそ一緒に旅をしてるんだろうが。
それなんだけどね、じいちゃん。
ん?
あたしたち、結婚してるのよ。
…!
それはさっきも聞いたが…。
あたしたちが、ね。
……あたしたち?
ま、分かってもらおうなんて思ってないから気にしないで。 行こう、エリス。
いえっさ…!
……ふむ?
お父さん。
なんだ、チャスカ。
聞いたことがあります。
何をだ。
多分、ナディさんたちは…いえ、何でもありません。
まぁ、いい。 お前も歌って踊ってこい。 盛大にな。
はい。
ああ、食べた食べた。 もう、はいらない。
ナディはくいしんぼう。
折角なんだもん、食べないと。
おさけはのまないの?
お酒は…どうしようかな。 折角のお祝いだし。
よっぱらいはきらい。
でもこれ、チチャだから。 そんなに強くないと思うのよね。
チチャ?
とうもろこしのお酒。
…。
…まぁ、強いのもあるけど。
…のむの?
まぁ、飲まなくても平気だし。
…いいよ?
…。
…。
…まぁ、嫁に酒くさいって言われるのも嫌だし。
よめ?
まったく、さっきは仏頂面して。
…だって。
あのね、わざわざ言わなくてもいいのよ。
…。
会う人会う人、言ってたらキリがないでしょうが。
…でもナディはいったよ。
それはあんたがずっと不機嫌そうにしてるから。
…。
あたしはね、みんなに知ってもらおうなんて思ってないの。
…それはナディとわたしが
そういうんじゃない。
…。
みんなにお祝いされなくても、エリスとあたしの気持ちは変わらない。 でしょ?
…。
何よ、エリスは変わっちゃうの?
…かわらない。 ナディがすき、だいすき。
だから、あたしはそれでいいの。
…。
さぁ、エリス。 折角のお祭なんだから、楽しも。
おまつり?
そう、お祭。
けっこんしきはおまつりなの?
ここでは、そう。
おまつり…。
どうせだから、
「ねぇ、僕らと踊ろうよ」
…お。
女二人で旅をしてるんだって?
折角だから、僕たちと一緒に踊ろう。
ごめんね、あんたたちのお誘いは受けられないんだわ。
なんで?
踊らないのかい?
いいや、今から踊るところ。
なら、
一緒にどう? 丁度、バイレシートが流れてる。
ばいれしーと?
気になる娘を誘って踊るのさ。
どうかな?
おどらないよ?
そんなこと言わないでさ。
折角だし、楽しもうよ。
おどらないっていったよ。
…。
…。
あはは、ごめんね。 そういうことだから、他に行って。
…この辺じゃみかけない娘だと思ったのになぁ。
髪の色とか、すげぇきれいなのに。
ありがと。
…いや、あんたじゃないんだけど。
…と言うか、男みたいだし。
なんか言った?
…いった?
い、いや、何も。 仕方ない、行こうぜ。
お、おう。
まったく。
ナディ。
ん?
…えへへ。
お…。
おどるの?
と言うか、あんたに踊れるかな?
…。
踊ったこと、ある?
ない。
でしょうねぇ。
ナディはあるの?
まぁ、昔にね。
…どうやるの?
どうって。 言葉じゃ難しいなぁ。
むずかしいの?
ま、これはやってみなきゃね。
やればできる?
多分ね。
じゃ、やってみる。
よし、その意気だ。
ナディといっしょだから。
…。
だから。
…あたしに合わせて動けばいい。
ナディに?
でも一番大切なのは、楽しむこと。 いっぱい、いっぱいね。
ナディといっしょだから、たのしいよ。
なら、いいけど。
たのしいよ?
…分かった分かった。
ナディはたのしくない?
いや、楽しい。 今でも十分なくらいにね。
…。
じゃ、行こっか。 エリス。
いえっさ!
ふぅ。
…。
あー、楽しい。 たまには良いなぁ、こういうのも。
…ナディ。
うん?
わたし、おどれてた?
うん、踊れてた。
…。
なぁに? 珍しく気にしてるの?
…きにしてないもん。
言ったでしょ?
楽しければいいのよ。
…。
楽しかった?
…うん。
ん。 なら、良し。
…。
昔ね、やっぱりこうやって歌って踊ったことがあるんだ。
…こどものころ?
うん。
…。
村のみんなで。 多分、お祝い事だったと思うんだけど。
…。
今はエリスと。 すごく、楽しかったよ。
ナディ…。
…こら、あまえんぼう。
…ナディも。
たく。
…。
…ん?
…。
エリス? 何飲んでるの?
…わかんない。
て、これ。
……。
チチャじゃない。
……ちがうよ。
いや、違わないから。
…。
ちょっと大丈夫なの?
…だいじょうぶ、だいひょーぶ。
いや、だめだから。 ああ、もう。
ナディ。
とりあえず向こう、に?
…。
ん…っ?
……えへへ。
て、エリス…!
なぁに?
なぁに、じゃなくて!
…ナァディー。
こらこらこら!
……。
あ、こら、どこ触ってんの!
…ナディのむ
言わんでいいから!
…ナディがいったのに。
ああもう、こいつめ!
どうした?
あ、ああ、じいちゃん。
……えへ。
エリスの顔が赤いようだが。 酔っ払ったのか?
よっぱらいはきらいー。
…あんたが今まさにそれだっての。
ふふふふ。
…これは少しまずいかも。
大丈夫か、エリス。
だいじょうぶだよー。
…いや、全然大丈夫じゃないから。
ナディとエリふはかひょくだかあ。
口、回ってないから!
…ナディ、エリスは本当に大丈夫なのか。
大して飲んではないと思うんだけど…。
…えへへへへ。
だめ…かも。
…ふむ。
ああ、もう。
ナディ。
若し良かったら、だが…。
じいちゃん、本当にいいの?
ああ、構わんよ。 まぁ、離れですまんが。
全然! ありがとう、じいちゃん。
なんの。
娘たちを祝ってくれたお礼だ。
こっちとしてはお腹いっぱい食べられただけでもありがたいのに。
…ナディ、いっぱいたべてた。
こら、エリス。 酔っ払いは余計な事を言わんでよろしい。
はは。 そんなに広くはないが、ゆっくりしていってくれ。
ありがと、じいちゃん。
…。
ほら、エリスも。
……ありがとう。
しかし、本当に仲が良い娘さんたちだ。
じいちゃんたちも仲良しじゃない。
いや、こっちはただの古女房ってやつだ。
それだけ一緒にいられるって凄いと思うけど?
そうとも言うか?
うん、言う言う。
はは、そうか。
娘さんたちもそうなるといいわね。
そうだな。 いや、そうなってもらわんとな。
…。
じゃあ、また明日。
うん、明日。
…。
エリス。
…うん、あした。
ははは。
…。
さて、と。 少しは酔いは醒めた?
…よってないよ?
ほぉ。 そんな事言う口はこの口か。
…いひゃい。
まったく。
……。
疲れた?
ううん。
眠たそうだけど?
…すこし、ねむい。
エリスはお子ちゃまだからなぁ。
…じゃあねむくない。
ふふ。
無理しないでいいから。
…してないよ。
目、とろんとしてるけど?
きのせい。
気のせい、ね。
…。
ベッド、きれいね。 離れとか言ってたけど、ちゃんと手入れされてる。
…うん。
一応、ふたつ、あるけど。
…いっしょにねる。
言うと思った。
……。
今にも寝ちゃいそう。
…ねむくないもん。
はいはい、そうね。
…ナディ。
んー?
…はやく。
…。
はやく、きて。
…はいはい、行くわよ。
…。
…エリス。
ナディ…。
…本当は疲れたでしょ?
…。
一緒に踊ったの、楽しかった。
…うん、わたしもたのしかった。
ああいうのも、いいと思った。
…うん、おもった。
…。
…。
…ねぇ、エリス。
ん…。
エリスも…したい?
…。
…エリス?
…。
……お子ちゃま。
んん…。
…おやすみ、エリス。
……ナデ…ィ。
…。
…。
…エリス。
…。
疲れてたくせに。
…つかれてないよ。
でも眠たかった。
…。
どうしたの…?
…ううん。
…。
ナディ…?
…たく。 隣にいないから…。
…。
…何よ。
わたしがいないと…さびしい?
…。
…。
……ばか。
ん…。
さぁ、早く戻りなさい?
さびしい…?
…。
…ナディ。
……そんなの、言わせないでよ。
ききたい。 きかせて。
…。
…。
……さびしい。
…。
…だから、早く戻ってよ。
…いえっさ。
…。
…ほし。
…?
ほし、みてたの。
星…?
……とどかないなぁって。
ばか、当たり前でしょ。
…えへ。
…。
…。
…エリス。
なぁに…?
チャスカ。
…?
昔の言葉で「明けの明星」という意味よ。
…あけのみょうじょうってなに?
あれ。
…。
あの、明るい星のこと。 「星」はコイユル。
…チャスカ。 おじいちゃんのむすめさんとおなじなまえだね。
ん、そうだね。
…。
ついでだから。
…ついで?
クシ。 「喜び」という意味。
…よろこび。
そう、喜び。
…うん、おぼえた。
…。
…。
…さ、戻ろ?
うん…。
…。
……ナディ。
ん…?
あのふたり、しあわせになれる…?
…勿論。
つかもう、なってる。
…。
…あたしたちとおんなじ。
…。
違うの…?
…ううん、ちがわない。
…。
そっか…。
…そうよ。
うん…。
…。
……。
…なに?
……。
エリス…?
…あのね、ナディ。
うん。
……。
あ…。
……さわって。
…。
“ここ”に…。
……もう、触らせてるくせに。
…。
……本当に疲れてないの?
つかれてないよ…だから。
…。
…だから、ナディ。
…。
…。
…ばか。
……。
…はぁ。
ナディ…ナディ…。
…。
…ナディ、ナ…ディ。
……。
…ナディ…。
……エリス。
……。
エリス。
……?
…きついって。
……。
そんなに強くしがみつかれてたら…出来ない。
……。
まぁ、これだけでも気持ちいいけど…それでも、いい?
……や。
…。
やだ…。
…。
…ナディ。
……ん、分かってる。
…。
エリス…。
……あまり、はなれないで。
…。
…。
…ばかね。
…。
離れるわけ、ないじゃないの…。
…うん。
…。
…。
…。
…あ。
……。
ん、あ…あぁ。
…。
…ッ!
……。
ナディ…、ナディ…ッ!
……あまり大きな声、出すと。
は……ぁ。
聞こえちゃう…って。
…はなれて、るよ?
…まぁ、それはそうなんだけどね。
…。
…。
…いえっさ。
…。
ん…んん。
…。
は…んんん。
…。
……ッ!
…。
…。
…やっぱり、我慢しなくていい。
…。
…。
…どっち?
…。
…。
……ほどほど、かな。
…。
…。
…むずかしいよ、ナディ。
…。
…。
…あたしも、難しい。
…。
…。
…なにが?
……加減、出来そうにない。
…。
…。
…いいよ、しないで。
…。
…。
……ばかだなぁ、あたし。
しってる。
…あいかわらず、フォローなしかい。
ナディはうすらタコスだから。
…なんだとぉ。
…。
…ん?
いつも…いつも、ナディはやさしいから。
…そんなこと、ないわよ。
そんなこと、あるよ。
…。
…わたし、いったよ。
…。
ナディがしたいようにして…て。
……エリス。
ナディがしてくれること…みんなうれしい、から。
…。
だから……もっと、さわって。
…。
わたしのなかに…きて。
…。
…かげんなんて、しないで。
……エリス。
…あと。
……まぁだあるんかい。
…。
…。
…だめ?
…。
…。
…言ってみ?
…。
…。
……なまえを。
名前…?
…よんで。
…。
いっぱい、よんで…。
…。
わたしに…「ナディ」の「エリス」だってこと、おしえて。
……。
わたしも、よぶから…だか、ん。
…。
ナ、ディ…。
……いえっさ、エリス。
…。
いっぱい、分からせてあげる。 だから…。
…ん。
エリス…。
ナディ…。
エリス、エリス…。
あぁ…ん。
…。
…。
…ふぁぁぁ。
…ねむいの?
うん…。
…ナディもおこちゃま。
あのなぁ…。
…えへ。
さすがにつかれた…て。
…。
…こぉら。
……だめ?
もう、おしまい。
…。
…おしまい。
…。
…。
…そっか、おしまいか。
…。
…。
…あんたって、わりと底なしよね。
そこなし?
…。
ナディもそこなし?
…いや、あんたほどじゃないわよ。
…。
……まぁ、気持ちに底はないかもしれないけど。
…ナディ。
て、こらこら。
…あったかい。
重いって。
…。
つか、そのまま寝るなって。
きもちいいのに。
そりゃあんたはね…と言うか、定位置にするな。
…ナディも?
や、あたしは…。
…。
…。
…。
…だから、そんな顔するなって。
……ナディも。
…。
…。
…ああ、もぅ。
…えへへ。
…。
…おもい?
重い。
…。
…。
…そんなに?
…。
わたし、おもい…?
…。
…。
…ま、言うほどじゃないけど。 むしろ、軽いくらいだし…。
エリス、かるい?
うん、軽い軽い。
…。
ん? どしたの?
…もっとおおきいほうがいい?
は、なにが?
むね。
………ぱーどぅん?
まちできいた。
…誰から聞いた?
おとこのひとがはなしてた。
忘れなさい。
今すぐに。
…。
すっごく、くだらないから。
…。
と言うか、風穴開けてやりたい。 あたしのエリスになんてことを
ナディの?
…え?
わたし、ナディの?
…。
ナディ?
……まぁ。
…。
…。
えへへ…。
……とにかく、忘れなさい。 いいわね。
ナディはちいさいほうがすき?
だぁから…!
…。
おおきいとか、ちいさいとか! そんなのはどうでもいいの、あたしはエリスがエリスならそれでいいの!
…ナディ、こえおおきい。
……あ。
……でも、うれしい。 わたしもいっしょだから。
あー…。
…。
…擦り寄るとくすぐったいって。
……ナディ。
ん…?
……だいすき。
…。
…。
……エリス。
…。
…て、やっぱりそのまま寝るんかい。
……こうしてるとナディのおとがきこえるから。
あたしの、おと…?
…“ここ”にみみをあててると。
…。
あんしん、するの…。
…。
…わたしのおとも、きいてほしい。
…。
…。
…だから、なのね。
うん…。
…。
…。
…ちゃんときこえた、きこえてるから。
……うん。
…。
…。
…まったく、しかたないヤツだ。
……えへ。
じいちゃん、ありがとう。
ゆっくり休めたか?
もう、ばっちり。 やっぱりベッドはいいなぁ。 ゆっくりできるし。
はは、そうかそうか。
朝ごはんまでご馳走になっちゃって。 ほんと、ありがとう。
いやいや。 ところでエリスは大丈夫か?
うん、わたしはだいじょうぶだよ。
顔、真っ赤にしてたくせにね。
よっぱらいはきらいだよ?
はいはい、そーねぇ。 じゃエリス、お礼。
ありがとう、おじいちゃん。
なんの。 わしの方こそ、かわいい娘が二人も増えたみたいで楽しかったよ。
ふふ、ありがと。
ナディとわたしはおじいちゃんのむすめじゃないよ?
お…。
こらこらエリス。
おじいちゃん、ナディのおとうさんだったの?
いや、違うけど…。
じゃあ、ちがうよ?
あーもう、何と言うのかなぁ。
ははは、面白い娘さんたちだ。
…はは。 ごめんね、じいちゃん。
なんであやまるの?
…いや、だからだな。
なんで?
…うん。 とりあえず、黙っておこうか。
どうして?
いいから。
…いえっさ。
行くのか?
うん。 娘さんたち、仕合わせになるといいね。
なるさ。 なんせ、お前さんたちにも祝ってもらったんだからな。
あはは、だといいなぁ。
これからどこに行くんだ?
気の向くまま、かな。
そうか、気をつけてな。
ありがと。
ナディ。
うん?
お前さんはわしたちの同胞だ。 いつでも戻っておいで。
…。
…どうほう?
エリスも、だ。 ナディと家族だからな。
…じいちゃん、どうして?
同じ匂いがしたからな。 そう、“太陽”の。
…。
…ナディ。
……ねぇ、じいちゃん。
なんだ?
焼かれた村の事、知ってる? もう、随分と前の話なんだけど。
…焼かれた?
そう…“同胞”、の。
……聞いたことはあるな。
何か知ってる?
いや、詳しいことは分からん。
…そっか。
ただ…。
ただ、なに?
“魔女”が関わったとか。
…。
…。
まぁ、そんなものは今となってはもう有り得ない事だがな。
…。
ナディ…。
……。
その村がどうかしたのか?
ううん、なんでもない。 ありがと、じいちゃん。
…。
じゃ、行こっかな。 じゃあね、じいちゃん。 チャスカたちにもよろしく。
ああ。
…。
エリスも。
ばいばい、おじいちゃん。
ああ、元気でな。
よし。 行こっか、エリス。
いえ
「ナディさん、エリスさん」
あ。
て、チャスカじゃない。 どうしたの?
お見送りをしようと思って。 良かった、間に合いました。
と言うか旦那、放っておいて大丈夫なの?
昨日、飲みすぎたみたいで…まだ、起きません。
あぁ。
…よっぱらい?
…恥ずかしい話なんですが。
え、と。 あまりにも嬉しすぎて、タガが外れちゃったんじゃない? 愛しい娘と結婚できたんだもん。
……。
あらら、まっか。
……ナディさん。
ふふ。
……。
かお、あかいよ。 だいじょうぶ?
……エリスさん。
ねつ?
…。
この、分かって言ってるな。
ナディもあかくなるよね。 きのうも
エリス。
なに?
もう、いいから。
なにがいいの?
とにかく、いいの。
…いえっさ。
まったく…。
…ふふ。 ナディさんとエリスさんは本当に仲が良いのですね。
それ、じいちゃんにも言われた。
なかよしふうふだから。
…て、エリス。
なかよしふうふのしるし。
あ、こら…。
…それは?
う…。
指輪、ですか?
……まぁ、ね。
お二人は…
まぁ、そういうコトなんだけど。 別に分かってもらおうとか思ってな
ナディさん、エリスさん。
…え?
なに?
どうか、お仕合わせに。
…。
しあわせだよ?
…エリス。
なに、ナディ。
今はそうじゃなくて。
…?
あ、あー。 チャスカ。
はい?
それはあたしたちのセリフ。 どうか、お仕合わせにね。
ありがとうございます。 けれど、私からもお二人に。
…。
ありがとう、チャスカ。
いいえどういたしまして、エリスさん。
…まぁ、いいや。 ありがと、チャスカ。
ふふ、どういたしまして。
……なんだかなぁ。
ナディ、あつい。
あーもう、うっさいから。
…ほんとうのことなのに。
や・か・ま・し・い。
ふふ。 それじゃあ、お気をつけて。
…はぁ、ありがと。
ばいばい。
ん~…♪
…。
…チョリータイ♪
ナディ、ごきげん。
…。
ごきげん?
なーんか、頭に残っちゃって。
けっこんしきのうた?
おどったでしょ?
うん、おどった。 すごくたのしかった。 でも。
ん?
ナディがうたってたの、バイレシート、じゃないよ?
カルナバリート。
かるなばりーと?
エル・ウマウアケーニョとも言うかな。 結構、有名な曲よ。
うまう?
春の祭り、とも呼ばれてるらしいけど。
いっぱいあるね?
ねぇ。 でもカルナバリートは曲名じゃないんだな。
じゃあ、なに?
そうねぇ、簡単に言えば…舞曲のこと、かな。
ぶきょく?
もっと簡単に言えば、踊るための曲。
へぇ。
あたしの村ではワイニョって呼んでたけど。 ちょおっと、違うんだよなぁ。
…わいにょ?
とにかく、お祝いごとがあるとみんなで踊るのよ。 この曲で。
うん、おどったね。
でしょ。
ナディとおどった。
うん、エリスと踊った。 楽しかった。
すごく、たのしかった。 また、おどりたいね?
ん、そだね。
…ふふ。
ん?
すごく、たのしかったから。
それは良かった。
またふえた。
なにが?
ナディとのおもいで。
…。
うれしい。
…うん。
しあわせになれるといいね。
なるわよ、きっと。
…わたしたちも?
…。
ナディ?
もう、なってるし。
…。
なってるわよ、あたしは。
そっか。
何よ、それだけ?
わたしもしあわせだから。
ん…それは良かった。
…。
…。
…ねぇ、エリス。
なぁに?
エリスもしたい?
なにを?
いや、だから
けっこんしき?
…分かってて。
ナディは、したい?
聞いてるのはあたし。
ナディがしたくないなら、しない。
…。
ナディが
エリス。
…?
あたしはあんたの希望を聞いているのよ。 あたしがどうとか、そんなのはいいの。
…。
エリス。 あんたは結婚式、したい?
……。
…。
…わたしは。
うん…。
………ナディ、と。
…。
…ずっといっしょにいられるのなら、それでいいから。
……エリス。
だから…。
…。
…。
ほんとうに?
…どうして。
違う、あたしが言っているのは。
…。
本当にそれだけでいいの?
…。
あたしはまぁ、どっかの青目曰く甲斐性もないし、現に“指輪”も用意できないし、
だからって言うのも変だけど立派なものは出来ないと思う。
ゆびわはあるよ?
そう、なんだけど。
たいせつ。 すごく、すごく…たいせつ。
…。
…。
…エリス、さ。
ん…?
その…抱き締めてもいい?
…うんてんちゅう?
だから、停まるわよ。
…。
…。
…きかなくても、いいのに。
…いや、なんとなく。
へんなナディ?
…どうせ変ですよー。
ふふ。
……え、と。
ナディ。
わ…。
……ふふ。
……。
…だいすき。
エリス…。
…あのね、ナディ。
ん…。
……したい。
…。
ナディとけっこんしき、したい。
…そっか。
おどって、うたって。 そしたらまた、ナディとのおもいでがふえるから。
……うん。
…でもね。
…。
しなくても、わたしたちはいっしょだから。 ずっと…いっしょだから。
…エリス。
だから…わたしはしあわせだよ。
…。
…ウィニャイマルカ。
え…?
いっしょにいこうね。
…。
いこうね?
…それ、前にも聞いた。
うん、いったよ。
と言うか今度はあたしのセリフ。
…。
あたしの故郷だから。
…ん。
…。
…。
…よし。
ナディ?
いつか、きっと。 いや、かならず。
…なにが?
こっちの話。
…。
じゃ、そういうコトでしゅっぱーつ。
ねぇ、なにが?
さぁ、なんでしょう?
…。
ふふ~。
ずるい。
ずるくない。 分かんないエリスが悪い。
むぅ…。
でもそうなったらあいつも呼ばないといけないのかなぁ、やっぱり。
……。
あんたが呼ぶって約束しちゃうから。
…あ。
ま、そん時はそん時かな。
ナディ、ほんとう?
何がー?
…。
あはは。
…むー。
...ocho
|