−蓉子と。
――このまま繋がっていられたら。
ひとつ間の区切り、いつも通りの闇、日常を営む空間に、声が漏れ湿ってゆく。 聖という異物ひとつで。あっさり反転する世界。
「……蓉子。」
とっくに暗順応した夜目に映る聖は、何かに耐えている顔つきをしている。 おわった、ばかりで、そういう顔をされると、私は途方にくれてしまう。 滲み出る欲は、ちっとも昇華されていやしないのだと主張されてでもいるようで。 上り詰めさせられてしまった私が、満ち足りているのがおかしなことだと言われているようで、じわりじわりと、熾が燻る。
「………あ、の。」
あぶられながらの無言に堪えかねて、かけた声。 極力動かないように気を使って。否、動けないまま。聖に向けた視線も逸らせないまま、彼女の反応を慎重に待ち受ける。
「ん…。」
無造作に髪を梳き連ねて、ようやく私に目を合わせた聖は、途端心細そうな表情に変わった。 心配、は確かに透けているのだけれど、それよりもっと過剰に溢れる、迷い子の雰囲気。 どうしてそんなかおをしてしまうの。わたしでは、あなたにやすらぎはあたえられないの?
「蓉子…?」
「……。」
ふ、と笑んだ貌は、青白く発光しているかのようで。 それは彼女が私のことが好きな癖、自分のことで精一杯だから。
「どした…?」
「……ない、の。」
「え、なに…?」
だからそんな聖に絞り出した私のことばを、いとも簡単に聞き流す。
「だ、だから…。」
「うん、」
「……このまま、なの?」
「……ああ。 重い…?」
……それは、よいの、だけど。 私ばかりが熱い、わけでもないのは知っているけれど。
「…そっか、良かった。」
応えに安堵したのが気の緩みに繋がり、その間隙をついたとしか思えないタイミングで、指が動く。 堪らず漏れてしまった、声。
「…ん?」
聖に乗られたまま、聖に入られたまま。 こんな、……誘うような、
「ち、ちがうの。」
「…何も言ってないよ。」
「…!」
どう取り繕っても裏目に出る羽目になるのだと本当は気づいていて、それでも何もせずにはいられない、羞恥に押しつぶされている私に、聖は心底嬉しそうに笑って。 ああ、彼女の昇華がやっと叶ったのだと、胸を撫で下ろす私の裡を今度は確信の動きをもってそっとなぞった。
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