…ん、どうかした？


……。


おーい。エリース。


あれ。


あれ？


あれ、なに？


どれどれ…あぁ。あれはタコス屋。


たこすや？


タコスを売っているお店ってこと。


タコスって、なぁに？


…食べたこと、ないの？


わかんない。


…ふむ。


……？


じゃ、お腹も空いてるし。ここらでお昼にしましょうか！


さっきからおひるだよ？


…お昼ご飯を食べましょうか、ってこと。


ふぅん。そっか。


そう。


わたしもおなかすいてきたし、いまからおひるになる。


…うーん、それじゃちょっと惜しいかなぁ…。








はい、これがタコス。
何が好きなのか分かんないから、オーソドックスな豚の挽き肉のやつにしたけど。大丈夫？


よくわかんない。


…エリス、あんたホントに食べたことないの？


…おぼえてない。


……そ、か。


……。


…さ、熱いうちに食べようか！


…うん。


あ。さっき教えたでしょ？返事は元気よく？


…いえっさ。


そう！いえっさ！というわけで、いっただっきまー…む。


いただきま…ふ。


…おー、美味しい！


……。


エリスはどう、美味しい？


うん。


そ。良かった。


…よかった？


うん、良かった！


…よかった。


…！


…ナディ？


や、エリスってそんな顔で笑うんだなー、とか。思ったというか。ちょっと驚いたというか。


え？


…い、いやぁなんでもない！ほらほら、だから冷めないうちに食べようって。


…いえっさ。


……ねぇ、エリス？


なに？


あたしは料理が…ま、下手じゃあないんだけども。上手くもないからさ。
これからしばらくは、こうやって何かを買って食べる機会が増えると思うけど。
それでもいい？


なにが？


なにが？って…えー、と。タコスは嫌いじゃない？


きらいじゃないよ？


これから先、私の食生活について来てくれる？


ナディのしょくせいかつ？


そ。こんなふうに安い店で何かを買ったり、街の外で焚き火して自分で作ったり。
出来れば避けたいけど、ご飯抜き…になったりするかもしれない。行き当たりばったりな生活になると思う。
それでも、ついて来てくれる？


…ナディはわたしをつれて行ってくれるんでしょ？


……へ？


ウィニャイマルカ。


え、あぁうん。


だったら、わたしはついていくよ。


…なんか、分かってくれたんだかどうなんだか分からないんだけど。
でも確かに、それくらい着いて来てもらわないと困るわよね。


……。


私の質問がおかしかったね。
…ついて来て、エリス。


いえっさ。


いえっさ、相棒！


…あいぼう？


これから一緒に旅をするんだから、相棒なの。


…あいぼう。


そ。私と、エリスは相棒！


わたしと、ナディはあいぼう。


うんうん。ってちょっとエリス！


なぁに？


あーあー。足、サルサが垂れてるわよ。


ほんとだ。


ってよく見たら下にも…あーもったいない。


もったいない。


あー、えー、と。タコスは後ろから具が落ちやすくなっちゃってるから、ある程度食べたらこうやって、ココを指で押さえて食べるの。
そしたら最後まで何もこぼすことなく…このとおり。


…こう？


うーん、それだと指が汚れちゃいそうだから…ちょっと貸して。


……。


食べないっての！


…はい。


ったく、失礼な。ほら、こんなかんじよ。


ナディはタコスたべるのじょうずだね。


上手、て…。あー、もう手ぇ汚すと面倒だし、今回はこのまま食べちゃいなさい。


このまま？


そ。エリス、あーん。


……？


口開けて。はい、あーん。


……ん。


これ食べたら、しばらく車で移動するよ？


うん。


あーん。


そのあーんって、なに？


…えーと…。あーって言うと、口が開くでしょ。


ナディのくちしかひらかないよ？


…よく知らないけど、これが口を開ける合図みたいなものなの。


そっか。


はい、分かったら口を開けろぃ。


…あーんっていってな…んぐ。


タコス食べるだけで時間取りすぎ。


……ん…。ナディのせっかち。


あんた、そんな言葉は知ってるのね。…そしてあたしはせっかちじゃない。


……ナディはせっかち。


はいはい、最後の一口。大きく口開けて！


またあーんじゃな…む。


あ。あんたがちゃんと口開けないから、口に付いちゃったじゃない。


……ナディが、むりやり。


へーへーそうかい。
これで拭いたげるから、ちょっとじっとしてね。


……。


よし、こんなもんか。
…しっかし、なんだかひよこの親子みたい。


ひよこ？


あんたがひよこで、あたしがひよこの親ね。


……。


…って、エリス？


……。


なんでそんな睨むみたいな顔なのさ……あ。
こら、なんでそっち向く。


……。


…ちょっとエリス？どうしたって言うのさ…。


……おやじゃない。


……は？


ナディはおやじゃない。


そりゃそうよ。


……。


って、だから何でむくれてるのよ。


おやじゃないのに、おやっていった。


そこなの…？
だいたいそれは言葉のアヤってもんで…てか、それを言うならあんたがひよこでもないでしょうに。


……。


…もぅ、何なのよ？


…ナディこそ、なんなの？


…は？


ナディはわたしの、なに？


なに、て…。


おやじゃないなら、ナディはわたしのなんなの。


なんなの、って言ったら…。


……。


……あたしはエリスの、相棒…ってこと？


……。


当たりかい。


だって、ナディがそういった。


だからそれは……あーもぅ！
そうだね、あたしが悪かったね。ごめんね相棒。


うん。ナディがわるい。でもいいよ。


…コノヤロウ。


……。


……。


ナディ。


…あーはいはい、何ですか。


そろそろひがしずむよ？


え？…うわ、もうこんな時間！？


くるまでいどうするんじゃないの？


まさかこんなに時間が…ってか日が沈むの早くない！？


どうするの？


あー……いや、あー…。
なんかもういいわ…予定変更。ここでホテル探すわよ。


…いえっさ！









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