−子どもたちのおかいもの
蓮、これなんてどう?
……あんまり。
じゃあ、こっち?
それならさっきの方がマシだ。
じゃあ、さっきのにする?暖かそうだし。
……好きにしたらいい。
もう、蓮のマフラーを選んでるのよ?
だからちゃんと選んでるだろう。
どこがちゃんと、よ。
…はぁ。
蓮ちゃーん、これは?
…きたか。
ね、これかわいいよ!
ショッキングピンクって…。
あのなひー、これは無いだろう。
そうかな?
そうなの。
ひー、えっと…もっと大人しい……うーんと、かっこいいやつだったら、蓮に似合うと思うんだけどなぁ?
ふーん……あ、じゃあこれは?
お前の“大人しくて”“かっこいい”はそうなのか。
えぇっと……それもちょっと派手かなぁ。
そうかな?
というかオッサンくさい。
何て言ったら良いかしら…。
蓮ちゃんはわがままだなぁ。
我が儘以前の問題だろ…。
でも、蓮が我が儘なのは確かだわ。
………。
わがままはだめなんだよ、蓮ちゃん。
だからお前のは我が儘以前の問題だっての。
……でも、もうだいたいのお店は回ったわよ?
気に入った物が無いんだから、しょうがない。
それが我が儘だって言ってるの。
どうしようかしら…。
そう言う葵のはどうなんだ。
私のは…だいたい目星は付けてあるわ。
ならそれを買ってさっさと帰ろう。
だから蓮のはどうするのよ。それに、まだひーのも買ってないわ。
……確かに。
ひー、お前だってどれにするか決めてないじゃないか。
うぅん、もうきまってるよ?
え、そうなの?ひー。
うん!
その時に言ってくれたら良かったのに…。
どのお店のやつだったか、ちゃんと覚えてる?
んーん、それはまだきまってないよ。
………。
………。
…ほんとにこいつは…。
……ひー、じゃあ何を決めたの?
ひーね、蓮ちゃんと葵ちゃんと、おそろいにするの!
………。
………。
いいでしょ?
二人とお揃いって、お前はふたつ買うつもりなのか?
え?違うよ?
じゃあどういうことだよ…。
だって、蓮ちゃんと葵ちゃんはおそろいにするんでしょ?
…そんなこと一言も言ってない。
違うの?葵ちゃん。
………。
おそろい、しないの?
……葵。
…い、いつもいつも蓮が我が儘言って自分で決めないから、私と色違いになったりしているだけで。
別にお揃いにしたくてしているわけではないのよ?
…悪かったな。
…ふぅん?
だから、今日だって蓮がきちんと選んでくれさえすれば、お揃いじゃないの。
でもえらばないよ?
……そうね。
………。
だからきょうもおそろいでしょ?
………そうかもね。
………。
だからひーもおそろいするの。
なるほどね…。
…酷い話だ。
…いいじゃない。たまには智ともお揃いにしたって。
そこじゃない。
じゃあどこによ。
まぁいい。
それより、私達とひーじゃサイズがおかしくなるだろ。
…確かに、そうよね。
だめなの?
だめじゃないんだけど…。
はぁ…。
うーん……。
うーん…?
……。
……あ。
なに?
そうだ、毛糸!
けいと?
手作りなんてどうかしら?
てづくり?葵ちゃんが?
そう。どう?
マフラーってつくれるの?
やったことはないけど、マフラーなら簡単に作れるらしいし。それだったらサイズも合わせられるわ。
作り方も、たぶん蓉子さんに聞けば…
すごい!
蓮も、それでいいわよね?
…別に。
もぅ。
蓮ちゃんのわがままー。わがままわがままー。
あぁもううるさい。
それじゃ手芸屋さんに行きましょう。確かさっき通り過ぎたと思うわ。
うん、いこう!
………。
やっぱり、こういう毛糸のほうが暖かそうでいいわよね?
…好きにしたらいい。
じゃあ好きにさせてもらおうかしら。
この紅なんていいんじゃない?紅薔薇さま。
ならお前は白か?白薔薇さま。
……白か。なるほど白もいいかもしれないわね。
あ、そ。
ひーは、ひーは?
そうねぇ、ひーなら……このピンクなんてどう?あ、こっちの黄色も可愛いわね。
おや。
あら。
あ!
………。
聖さん、蓉子さん。
いろんな店があるのに、会えるもんだねぇ。
おかーさん!
わ、と。
まぁ、なんとなくこんなことになりそうな気はしていたけれど。
蓉子さん達もここに来たってことは…。
そ、蓉子が手袋作ってくれるんだ。
んで君たちは?
はい、マフラーを編んでみようかと。
おぉ、良いねぇ。
三人とも?
はい。
作り方はどれでやるつもりなの?
それが、やっぱりよく分からなくて。
とりあえずあそこの本に書いてあった、メリヤス編みに挑戦してみようかと。
そう。だったら、作り方を教えてあげるわ。
毛糸さえ買えば、本は家にあったはずよ。棒針もいくつか。
ありがとうございます、お願いします。
あのね、ひーもね、葵ちゃんに作ってもらうの。
そう。良かったわね。
うん!
ちゃんとお利口さんにしてた?
うん!
…どうだか。
む・し・ろ、葵に手を焼かせてるのは君なんじゃないかい?蓮君。
…くっつくな。
はいはい、だから蓮をからかうのは止めなさいって。
私達も選ぶわよ。
はーい。
えっと……、
そう、その糸は掛けたままで、その目に右手側の針を…そう、ゆっくりでいいから。
……こう。
うん、そう。そしてこれが裏目。
…はい。
編み目を数えるのを忘れないでね。
まぁ、目で数えてもいいのだけれど。いちいち面倒でしょ?
…たしかに。
………。
…………あれ。
合ってるわ、大丈夫。
………。
………。
………。
うん。それをやったら、最初にやったのとほぼ同じ。表目ね。
…はい。
さすが葵。なんて言ったら、親ばかって言われちゃうかしら。
えっ?…え、と。
ふふっ。
………。
最近はあまり編み物はやらなくなってしまったけど、一時期はよくやっていたのよ?
それは…。
そう、あなたたちがまだ赤ちゃんだった……いえ、お腹にいた頃。知ってた?
智が生まれたころに使っていた小さな靴下のいくつかが、私たちのために作られたものだって。
聖さんに教えてもらいました。
そっか…。
そうそう、あの頃の聖ったら二人のために毎日のように、靴下だのよだれかけだの、次から次へと。
お帽子だったり、食器だったり。
ブランケットもたくさん余っちゃったわ。生まれる頃には暖かくなるっていうのに。
ふふ…聖さんらしいです。
ひーの時もいろいろ買いたそうにしていたから、止めたのよ。
……?
その頃がそんな調子だったし、あなたたちが双子でしょ?
いくつかは駄目になっていても、たくさん余っていて買う必要がほとんど無かったから。
…あぁ。なるほど。
…でも、編み物はもっとしてあげても良かったかなぁ。
……十分だったと思いますけど。
あなたたちと比べたら少なかったわよ?
……そんなに…。
なんだか、やり始めたら止まらなくなっちゃってね。
…そんなものですか。
葵も、これを期にはまってみたら?
……考えておきます。
えぇ、考えておいて。
……はい。
…そういえば。聖もね、編み物やってみようとしたことがあったの。
へぇ…。
でも。思った通り、三日坊主にもならなかったわ。
あははっ。
手先は器用なはずなんだけど、根本的にやる気が無いのよね。
蓮を見ているとよく分かります。
あぁ…そうかもね。
そのマフラー。
はい?
三人分全部葵が作るの?
…はい、そのつもりですけど。
蓮も少しはやってみればいいのに。
…そしたらきっと、三日坊主にもならないと思います。
…ふふふっ。そうかもね。
えぇ。
だったら、ひーのは私が作る?いくらなんでも、いきなり三つも、ってなると大変でしょう?
ありがとうございます。でも、智から“お揃いのマフラーがいい”と言われて手編みにすることになったんです。
だから、出来るだけ自分でやりたくて。
そう。じゃあ頑張らなきゃね。
はい。
……えっと。
表目、ね。
はい。
………。
お。匂いに釣られた?
……せっかく何か手伝おうかと思ったのに。
ほんと?じゃあ、冷蔵庫のレタス適当に千切ってよ。水菜のサラダ作るから。
……ん。
それで、ひーは?
また寝てる。起きそうにもない。
そうかそうか。
まぁ、車の中でちょっと寝たくらいじゃそうなるわな。
………。
蓮、ちょっとこれ味見してみてよ。
………。
…どう?
胡椒がきつい。
……やっぱり?
そのまま飲めなくはないけど。
うーん、この鍋に変えてからというもの、ちょっと調子悪いかなぁ。
………。
このオニオンスープ、蓉子さんが好きなんだなぁ。
蓮もこれくらい作れるようにならないと。
…あと、塩もきつい。
うぐ…。
………。
いいもんね、こっちのビーフシチューはいつも通りだもんね。
………。
悔しかったら蓮君も料理で誰かを落としてみなさーい。
……君はやめろ。
じゃあ蓮ちゃん?
…気持ち悪い。
ひどっ。
………ん。
お、ありがと。
じゃあ水菜も出して、テキトーに切ってくれる?
………。
……うーん、こんなもんかな…?
………。
蓮、味見……はもういいか。
それの続きやるから、ひー起こしてきてくれる?
………。
葵。
…蓮。
………。
はぁ…やっぱり疲れるね、編み物。
………。
…蓮もやってみる?
性に合わない。
…まぁね。
………。
………。
………。
蓉子さんみたいに上手じゃないし、遅いけど…
なるべく早く完成させるから。
…ん。
……あ、蓮…。
………。
…マフラー、が…。
……明日やればいい。
………れ、ん…。
…………葵。
−そのころ親は
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