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熱いものが手に伝った。
悲しみと同じように湧き出るそれは、今まで見てきた何よりも紅く
そして、どんなものよりも尊かった。
命を証明する、それ。
ほんの一瞬だった。
足元に転がっていた、小さな亡骸。
闘争に巻き込まれた、罪の無い命。
目を奪われた。
いままで数多くの命を奪ってきたのに。
誘われるように、生を無くした子猫の亡骸に手を伸ばす。
指先に触れた毛並みは、まだ、温かかった。
悲しいのか、何なのか、この心を支配している感情。
まだ、分からない。
けれども、私の思考をかき乱すには充分すぎるほどだった。
だから、気がつかなかった。
彼女が私の名前を叫んだ事も。
彼女が私を庇った事も。
人は、全て終わった後に気がつき、後悔する。
人は、己の欲望の為に、無関係なものをも巻き込む。
人は、生きているだけで罪深い。
人の生きる理由は、贖罪を行うためのものなんだろう。
私は傷つけてしまった。
大切な人を。
私に与えられた贖罪は
彼女を守るためだったはずなのに。
左手に滴る熱い血潮。
頬を流れ落ちる、熱い涙。
右手には、熱く火照る、銃。
痛みに呻くミレイユの声を聞いて我に返る。
私は・・悲しい。
私は・・苦しい。
私は・・私は・・・!
伏せた瞼をしっかり開く。
もう、涙は溢れてこない。
私は・・許さない。
頬を裂く銃弾にも気を止めず、私は立ち上がる。
彼女を守るように、彼女に背を向けて。
いや、顔を見られたくなかったからかも知れない。
引き金を表情一つ変える事無く引く私の顔を、見られたくなかった。
私は動けないミレイユを残し、彼女を撃った敵を追う。
残る敵はあと一人だと察しはついていた。
敵を追う前から、早く彼女の元へ戻りたい、そう願いながら。
私は必ず戻るから。
できるだけ早く戻るから。
どうか、生きていて。
これからもあなたを守りたい。
だから。
私が戻ったときに、いつものおかえりを聞かせて。
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