ごきげんよう!
   今日も山百合家の皆様の為に頑張ってます!イツ花です!
   あ、ちなみに上の挨拶は山百合家の皆様が使ってる挨拶なんですがぁ、
   私も一応、山百合家に仕えてる人間なのでぇ真似て使ってみたりしてます。
   もっと言うとこの挨拶、男子は禁止だそうです。
   何ででしょうかねぇ?別に良いと思うんですけど。
   残念ながらイツ花には分かりません。うーん。


   さて。


   今日も今日とて皆様に美味しいものを食べて頂く為に厨で奮闘中です。


   …奮闘中、の筈だったんですが。














  雪 ト 醤 ト 
 供 達 ト














   あぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!







   な、何事なの?!イツ花!


   あ、蓉子さま。


   あ、て。
   急に大声が聞こえたからどうしたのかと思って駆けつけたのだけど。
   何かあったの?


   其れが、ですねぇ。
   お夕飯の支度をしていたんですけどぉ。


   してたんだけど?


   醤
(ひしお)を切らしていたのをとんと、忘れていましてぇ。


   …つまり?


   味付けが出来なくってどうしてくれよう!てなもんなんですヨ。
   もうもう、困っちゃいました。


   …。


   だからって煮物にお塩もどうかと思いまして。


   まぁ、然うね。


   だけど、鍋を火にかけたまま手は離せないし。
   と言うか、外は雪が降ってて寒そうだし。
   誰かにお使いを頼もうにも皆様は丁度討伐に行かれていて、だし。
   残っている人と言ったら当主様と蓉子さまと、


   ならば、私が行くわ。


   え、でも。


   今、寝付いた所だから。


   あのぉ、お手を離しても大丈夫なんでしょうか?


   目が覚める前に行って来てしまうつもり。
   どのみち、早く買って戻ってこないと困るでしょう?
   味付けが出来なくて。


   然う!然うなんですよ!
   特にそろそろ当主様がお腹を空かしになられそうで!


   其れじゃ早速行って来るわ。
   醤で良いのね?


   はい、そーです!
   あ、ついでに魚醤もお願いしても良いですか?


   分かったわ。
   じゃ、直ぐに戻ってくるから。


   はい、お願いしまー…


   …イツ花?


   蓉子。


   …江利子。
   いつから?


   イツ花の素っ頓狂な声が聞こえてから。
   蓉子、何処かに行くの?


   ええ、一寸お使いに行って来るのよ。


   都に?


   ええ。


   じゃ、私も行く。


   今日は急ぎだから。
   父う…当主様とお留守番してて。
   ね?


   いや。


   江利子には眠っている聖の事もお願いしたいのよ。


   もっと、いや。


   江利子。


   私、支度してくるわ。


   あ、江利子!
   待ちなさい、江利…





   あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……ッ





   …子。


   あ、起きやがった。


   そんな。
   先刻やっと眠ったのに。


   うぉーい、蓉子ぉ。


   …当主様。


   白ちびが起きたみたいだぞ。


   …其のようですね。


   目が覚めたらお前が傍に居んから探して泣いてるんだな。
   あれは。


   …。


   ところで蓉子。
   何処ぞに行くのか。


   今から、醤を買いに行こうかと。


   然うか。
   雪は止んだみたいだが、さっむいぞ。外は。


   はい。


   どれ、俺の上衣を貸してやろう。


   有難う御座います。
   だけれど自分のがあ


   や、や。
   背中に赤子(やや)を負ぶったら、お前のじゃ小さいだろ。


   …。


   どうにもこうにも俺じゃアレをあやすのは、なぁ。
   お前に懐いているからなぁ。


   …父上。


   江利子ぉ。


   はい、当主様。


   お前も行くのか?


   はい。


   …!


   然うか。
   ならちゃんとあったかくして行けよ。


   勿論、です。


   と、当主様…!





   あぁぁぁぁぁぁ…ッッ





   ほれほれ、泣いてるぞ。派手に。


   …いっその事、父上が代わりに行ってくれても良いと思います。


   悪い!
   俺、寒いのは苦手でなぁ!
   おまけにほれ、一応風邪気味だしなぁ。


   初めてお聞きました。


   だろうなぁ。
   今、初めて言ったんだしなぁ。


   …。


   ……あのぉ、蓉子さまぁ。


   …何、イツ花。


   こう言っては何ですが、早めに行ってきて頂けると助かるんですがぁ…。


   ……。


   あ、いや、元々は切らしていた事をうっかり忘れていたイツ花が悪いってのはよぉく存じております!
   はい!


   ……とりあえず、なるべく早く行って来ます。
   江利子、ついてくるつもりならばちゃんと暖かい格好をしていく事。
   良いわね。


   はーい。


   気をつけてなぁ。





   ・





   …買い忘れは無し、と。
   雪、また降り出しそうね。
   急いで帰らないと。


   蓉子。


   うん?


   寒いわ。


   …然うね。
   早く帰りましょう。


   お団子は?


   今日は無し、よ。


   …聖も食べたいって言ってるわ。


   赤子が言うわけ無いでしょう。


   ねぇ、蓉子。


   何、江利子。


   蓉子の手、温かいわ。


   然うかしら。
   江利子の方が…


   蓉子の方が温かいわ。
   だから。


   …?
   江利子?


   蓉子の背中はとても、あったかいんだわ。
   こんなに周りの空気は冷たいのに。


   …聖、眠ってる?


   ぐっすり、と。


   然う…。


   蓉子。


   うん?


   今夜もやっぱり聖と寝るの?


   然うね、夜泣きが酷いから。


   でも其れだと蓉子が眠れないでしょ。


   私なら大丈夫。
   其れに…。


   …。


   直に聖も大きくなるわ。
   そしたら。


   さっさと大きくなってしまえば良いのに。
   蓉子の手が掛からないくらい。


   …然うね。


   早く自分の足で立って、早く言葉を覚えて。


   多分、二週間も掛からないわ。
   江利子の時も然うだったもの。


   私も蓉子が見てくれたんでしょう?


   ええ。


   やっぱり私も夜は蓉子と眠ったりしたの?


   いいえ、江利子は今と同じで当時から菊乃さまと一緒よ。
   江利子はどちらかと言うと手の掛からない子だったから。
   夜泣きもあまりしなかったし、人見知りもしなかった。


   じゃあ、お姉さまが討伐の時は?


   先代様と一緒だったわ。


   …あ、然う。


   江利子?


   ねぇ、蓉子。
   淋しい?


   え…?


   聖が蓉子の手から離れたら。


   …そんな事、分からないわ。
   でも然うね、少しは淋しいかも知れないわ。


   …ふぅん。


   でもどうして?


   別に。
   深い意味は無いわ。


   ?
   然うなの?


   ええ。


   江利…あ。


   雪。


   やっぱりまた降ってきたのね。
   此の様子だと明日まで降り続きそう。


   積もるかしら。


   積もったら雪かきしないと。


   ついでに雪だるまを作らないと。












   ただいま戻りました。



   おう、お帰りー。















   再び、ごきげんよう。イツ花です。
   此の日は蓉子さまのおかげで無事、お夕飯のおかずを減らさないで済みました、けど。
   これからは気をつけてね、と蓉子さまに言われてしまいました。
   はい、気をつけまーす!と元気良く答えたら、一寸苦笑いされてしまいました。
   何ででしょうかね?やっぱりイツ花には分かりません。うぅーん。

   そうそう。
   思えば聖さまは此の時から蓉子さまに懐かれていた模様です。
   赤子のくせにませていたのか、それとも母恋しさだったのかは知りませんけどぉ。
   ともあれ、お夕飯のおかずが減らなかったので良し!とします。
   え、関係ない?


   ではではごきげんよう!
   イツ花でした!