蔵の中からごきげん蓉!
  再び登場!のイツ花です!覚えてますでしょーかー?
  今日は今日とて苦手な片付けをやってたりします!
  相変わらず物が多くてごちゃごちゃして埃がほわほわ舞っててぶっちゃけいっそ捨てちゃった方が早いかもと思わないでも無いですけどぉ。
  あ、それでも蓉子さまが家に来てくれてからは大分すっきりしたんですよ!
  何が凄いって其々がちゃんと分別されて並んでいるコトでしょうか!
  おかげでイツ花、大分助かっちゃっている反面、やるべき仕事を取られちゃって面目無し、と言うか。
  本当、蓉子さまには頭が下がるばっかしですよー!もう!


  だけどたまにはイツ花だって!と言う事で。
  目の前のガラクタども…もとい、先代様方が遺していって下さった物品たちと素敵に奮戦中でっす!!
  ええい、このーーー!!





  …と、気合を十二分にして臨んでいたら思わぬものを見つけてしまって。










 啓 、 初 代 サ マ










  皆さま皆さまーーー!!
  これ、これ見て下さい!!


  あーん?


  イツ花、廊下は走っては駄目だと以前にも言ったわよね?


  それより、これって何?
  何か面白いものでも見つけたの?


  当主様、蓉子さま、江利子さま!
  ああもう、お三方さまが揃っていらっしゃるだなんて!


  私としては蓉子と二人きりが良かったんだけどね。
  このでこが気を利かさないから。


  私が江利子に用があったの。
  それよりもイツ花、危ないから廊下は走っては駄目よ。


  天狗面が当主としての役割をちゃんと全うしないから、皺寄せがこっちに来るのよねー。


  とか言ってるけど。
  仕事やってんの、結局蓉子じゃん。
  でこ、要らないじゃん。
  全然要んないじゃん。


  誰かとぶつかって怪我でもしたら大変でしょう?


  蓉子に呼ばれたら来ないわけにはいかないじゃない。
  寧ろ、あんたがどっかに行けば良いと思うわ。
  散歩にでも女漁りにでも好きに行けば?


  散歩は兎も角、女漁りって何かな、でこ。
  私がそんな下衆な真似をするとでも?


  イツ花、分かった?


  あーら。
  じゃあこの間市井で見掛けた、どこぞの女子
〈オナゴ〉に声を掛けて其れはもう楽しそうにしていた白髪で赤目は誰だったのかしら。
  あんな風貌をしてるの、この家の者ぐらいだと思うのだけど。


  は、白髪頭の人なんて何処にでも居るわよ。
  赤目だって光の当たり具合によっては然う見えなくも無い…かも知れないじゃない。


  イツ花…


  しかも。
  話すだけじゃ飽き足らず、共だって茶屋へ消えていったような気もしたんだけど。
  あの白髪頭。


  つか、“しらが”じゃねぇし!
  あくまでも色が薄いだけだし!!
  せめて“しろかみ”って言えよ、でこちん!!


  イ…


  あら。
  と言う事は矢っ張りアレは天狗面だったって事なのかしら。


  あ、いや、其れは断じて違いますヨ。
  屹度でこの見間違い、若しくは目がおかしかっただけ、じゃないでしょうかね。


  へーーーー。


  と言うかお茶ぐらい、誰でも飲むっしょや。
  でこが見たヤツもただ単に喉が渇いただけで他に目的があったわけじゃ…!


  …。


  だって、蓉子。


  あ、いや、蓉子サン?
  私は別に…と言うか、知らないよ。其れはもう、何にも!


  …聖。


  は、はい、あんですか?


  江利子。


  うーん?


  少し、黙ってて呉れないかしら。
  ほら、イツ花が用件を言い出せなくて困ってるじゃないの。


  あ、そ、然うだね。


  あー、そういや然うだったわねー。


  で、イツ花。
  そんなに慌てて私たちに何か用かな?


  え、と。
  別に慌ててたわけじゃないんですけどぉ。


  だけど廊下を走ってくるぐらいだったのだから。
  それだけ急ぎの用件だったのでは無いの?


  急ぎってわけでも無いんです。


  で。
  結局、何なわけ?


  実は私、今日は蔵の中の片付けを朝から決行していたんですけど。


  知っているわ。
  どう?少しは捗った?


  いや、其れがあまり。
  と言うより、やっぱり蓉子さまの様にはいかないですねぇ。


  はは。
  イツ花が片付けるとよりひどくなりそうだよねぇ。


  一寸、聖。
  笑うなんて失礼だし、そんな言い方も無いわ。


  これは失礼。
  でも本当の事だしなー。


  聖。


  へーい、すみましぇーん。


  もう。
  そもそも貴女は…


  あーはいはい、分かってますよ。
  だらしがない、でしょ。
  耳たこ耳たこ。


  分かっているなら少しは改めようとしたらどうなの。


  分かってるだけで改まったら、こんなにラクなコトは無いんだけどねー。


  大体、そのいい加減な態度が…


  はいはい、そこまで。
  いつもの痴話喧嘩は後にしてね、二人とも。
  で、イツ花。
  其れがどうしたの?


  いや、片付けてたら懐かしいものを見つけちゃったわけでして。
  これは一つ、皆さまにも見て頂こうと思って馳せ参じたわけなんですヨ、はい。


  懐かしいもの?


  て、何なに?
  良いモノ?


  面白い?


  面白いかどうかは分かりませんけどぉ。
  これ、です。


  おー、どれどれ。


  …あ、これって。


  幻灯、よねぇ。
  で、これが何?


  何を隠そう!
  この写ってる人こそが山百合家初代、会様なんですよ!


  …へー。


  あぁ、この方が。


  …ふーん。
  で?


  で、て。
  初代様なんですってば。
  現当主様である聖さまは嫌がりますけど、本来は会様のお名前を襲め…


  やなもんは、やなんだから仕方が無い。
  以上。


  聖、話は最後まで聞きなさい。


  じゃあ、蓉子は然う呼ばれたい?
  自分の名前以外の名前で、例えば私に。


  …其れとこれとは話が別よ。


  ほーら、蓉子だって嫌なんじゃん。


  と言うか、何で例えが貴女なのよ。


  だってさ、やっぱ私には蓉子って呼ばれたいでしょ?


  いやだからどうして貴女が基準なのよ。


  私の基準が蓉子だから。


  …は?


  蓉子には間違っても他の名で呼んで欲しくないんだよね。
  特に閨の中、とか。


  せ、せい…!!


  だってヤじゃん。
  思い切り、萎えるじゃん。


  そ、然う言う事を平然に言わないで…!


  えー、だって本当の事だし。


  た、仮令然うでも…ッ


  んー何?蓉子。


  あ、いや、だから…其の…。


  あー、若しかして私とイツ花の事を気にしてたりする?
  別に良いわよ、ものっそ今更だし。
  ねぇ、イツ花?


  まぁ、然うですねぇ。
  ものっそ、今更ですしねぇ。


  も、ものっそ…。


  てか、人の言葉取んな、でこ。


  蓉子も気にしなくて良いわよ。
  閨でも閨事でもナニでも思うように言えば?


  ……。


  うん?
  蓉子さんってば顔赤いけど、大丈夫?
  良かったら胸貸すけど。
  さぁ、おいむぎゃ。


  ………イツ花。


  はい?


  この人が初代さま、なのね。


  へ?


  げ、ん、と、う、の!


  あ、あぁ、然うなんですよ。


  ど、どんな人だったのかしら?


  蓉子、声、ひっくり返ってるわよ。


  …うるさいわよ、でこ。


  あら、蓉子にまででこ呼ばわりされちゃった。
  なんか新鮮。


  会様は、ですねぇ。
  其れはもう、肝っ玉の据わった人だったと言うかぁ。
  何しろ、女手一つで三人の子供を育てたぐらいの方ですから。


  へぇ。


  …何、聖。


  いや、別に。


  それから。
  お散歩がお好きな方でしたね。
  散歩に行くと言ってはフラリと居なくなって、そうそう、日が暮れても帰ってこない時もあって。
  其の時はご長男である紅
〈コウ〉様が良く探しに行っては説教しながら連れ帰ってきたものです。


  どっかで聞いた事あるわね、其れ。


  『で、何でこっちを見るのよ』


  いえ、別に?


  そういや。
  行方知らずになった時、決まってこう言うんですよ。
  や、あっちで面白そうな匂いがしたもんだからつい、ねー、て。


  『……』


  二人して何かしら、其の無言の間は。


  別に何でも無いわ。


  そうそう。


  でも何と言っても。
  お子様想いの良い母上様でした。
  討伐に行くのだって明日の子供の食い扶持を稼ぎの為って言ってるぐらいでしたから。
  いやぁ、当時は貧乏でしたからねぇ。庭でお芋を育てては飢えを凌いでましたよ。


  …其れは今もよ、イツ花。


  ふーん。


  ちなみに。
  甘い物がお好きだったのですけど、其の頃の京ではあまり手に入らなかったんですよねぇ。
  ま、お金も無かったですしね。


  そういや、初代って。
  蓉子と同じ風髪なんだねぇ。
  こっちはまんま緑髪だけど。


  …雰囲気は何処と無く、今の貴女に似てなくも無いわよ、聖。


  えー、何処が。


  頭弱そうな処、とか。


  良い度胸だ、でこ。


  江利子、初代様に向かって失礼じゃない。


  其れも然うね。
  初代様の方が良さそうだわ。


  て、蓉子さん。
  私の件
〈クダリ〉に関しては全くもって無視ですか。


  気ままそうな処は貴女に似てるわね、江利子。


  うーん、然うかしら。
  でも迷子になるような間抜けじゃないわよ、私。
  ねぇ、聖?


  …其れはどこまでいっても私に喧嘩を売ってるんだな、でこ。


  でも何より。
  一番は蓉子、ね。


  一番?
  何が?


  お母さんっぷりが。


  ……冗談でも止めて頂戴。


  初代さまが三人なら。
  蓉子は、ひぃ…


  て、私が筆頭かよ。


  祥子
〈フゥ〉、令〈ミィ〉、志摩子〈ヨォ〉、由乃〈イツ〉、祐巳〈ムゥ〉


  それから、なぁ。


  私は違うわよ。


  どうだか。


  天狗面な貴女と一緒にしないで下さるかしら。


  あんだとぉ。


  一寸待ってよ。
  其れって令と由乃も数に入ってない?


  ええ。


  二人は貴女の子じゃないの、江利子。


  少なからず、面倒をみていた子も数に含んでますから。
  ま、蓉子にとって最も手に掛けていたのは聖だけど。


  あのねぇ…。


  と、言うわけで。
  初代様は一寸変わってはいましたけど、それはもう立派な方で…て。
  あの、当主様方?イツ花の話、聞いてます?


  大体、志摩子は聖の妹でしょう。
  本来ならば貴女が面倒を見なければならない立場だったのに…


  いやぁ、当時は赤子が苦手だったからねぇ。
  はっは。


  寧ろ、毛嫌いしてたと言った方が正しいわね。


  間違ってはいないけど、でこに言われると何か良い気持ちがしない。


  それでも家に来た頃は誰しもがか弱き赤子なのよ。
  誰かが面倒を見てあげなくてはいけないの。
  貴女達だって然うだったのだから。


  そこでお世話好きな蓉子の出番ってわけで。


  私だって誰彼構わず世話をしたいと言うわけじゃないわよ。
  ただ、気になったから、だから。


  特に筆頭の私、とか?


  は?


  やぁ、其れは微妙に光栄だなぁ。


  何が。


  だって其れってさ。
  私が赤子の頃から気になって仕方が無かったって事でしょ?


  な…ッ
  ば、ばかなこと言わないで…ッ


  うん?
  蓉子さんってば、本当の事を言われて照れてらっさる?


  ち、違うわよ、ばか!


  何だかんだ言っても。
  蓉子はやっぱり、おかん的立場になりやすいのよねぇ。


  え、江利子も!
  止めてって言ってるじゃないの!


  あーでも大丈夫よ。
  だからって聖との事は問題にしないから。
  本当の親子ってわけでは無いし。


  だ、だから…!!!


  あ、あのォ…。


  な、何、イツ花…!?


  え、と。
  そろそろ私、蔵の片付けに戻りたいと思いまーす。


  あ、あぁ、然う。
  大変だとは思うけど、頼むわね。


  くれぐれも。
  蔵の中を混沌とさせちゃあダメだよー…なんて。


  いや、其れは其れで面白いからありかも。


  ………ああ、もう。
















   大体、貴女たちは子供の頃から…!!!
















   はいはーい、再度ごきげんよーう!イツ花でーす!
   蔵の中を片付けてたら初代様が写った幻灯を見つけたのでこれは是非皆様にも!と思ったんですけど。
   結局、途中から全く全然見てないどころか、話もろくすっぽ聞いて貰えませんでした…。
   でも良いンです。
   お三方様は今を生きていらっしゃるわけですし。
   そもそも何代も前の人の話なんてお盆とお彼岸の時だけで十分なんだって初代様も言ってましたし。
   其れにそう、皆様が此処にこうしている限り、初代様の血は絶える事無く脈々と受け継がれているのですから!
   …なーんて。
   今、一寸だけ格好良い事言っちゃいました。
   え、然うでも無いですか。あれぇ。

   けどけど。
   あのお三方様を見ていると矢張り血なんだなぁ、って思う事があります。
   特に蓉子さまの眉間の皺のより具合、とか。
   …なんて、これは蓉子さまには絶対に内緒ですよ?最近、お気にされているようなので。
   イツ花との約束です。



   ではでは!
   イツ花でした!!














   そうそう、聖。


   うん、何?


   女子と共だって茶屋に言ったという話。
   詳しい事を教えてくれないかしら。


   …や、やだなぁ、蓉子サン。
   其れ、私じゃ無いですヨ?


   へーぇ、然うなのー。


   さ、さぁて。
   天気も良い事だし、散歩にでも出掛けようかしら。


   たまには私も一緒に行ってみようかしら。
   仕事も江利子のおかげで、一段落着いた事だし。


   え…。


   あら、嫌なの?


   あ、いえ、滅相も御座いません。はい。


   然うねぇ。
   ついでにお茶屋さんにでも寄ってみましょうか。


   あ、いや、其れは…。


   其れは、何?


   ほら、蓉子ってば日頃から無駄使いはダメだって言ってるし。


   たまには息抜きも必要じゃない。
   甘いものも食べたいし…。


   ……。


   それとも。
   私は連れて行っては呉れないの?聖。


   そ、そんな事無いよ。
   じゃあ、其の…行く?


   聖が連れて行って呉れるのなら。


   や、もう、連れて行きますよ!
   其れはもう!


   声を掛けた女子と共に行ったお茶屋さんにも?


   勿論!


   …ふーーん。


   ……あ。


   其れじゃ、行きましょうか。


   えと、其の、よ、蓉子さん…?


   詳しい事は道すがら聞く事にするわ。
   良いわよね、“会”様?


   ……は、はい。















拝啓、初代サマ了