とまぁ。
そんな事があったのよ。
…。
ふむ。
あのお下げ髪の子、やっぱり由乃ちゃんだったか。
矢っ張り、て。
聖、どういう事?
いや、ね。
此処で蓉子を待ってた時の事なんだけど。
由乃ちゃんがさ、ぼうっとしながら歩いてきたんだよね。
しかも其の後には令まで居て。
正直、魂消たわよ。
…。
あら?
でも其れっておかしくない?
何処が。
だって。
蓉子の方が先だったじゃない。
疾うに逢ってるものだと思ったわ。
其れがさ。
どうやら此処の時の流れって此岸のと違うみたいなんだよね。
ふぅん。
と、言うかさ。
でこ、お前何し
令も由乃も!
危うく賽の河原で石を積み上げ続けなけばならなくなるところだったじゃないの!!
賽の河原?
石?
良い?
曰く、親よりも先に死んだ子は其の償いとして賽の河原で石を積み続けると言う苦を受ける事になるのよ。
あ、出た。
蓉子の薀蓄。
聞くの、久しぶりだなー。
まさに生きてる時以来?
最終的には地蔵菩薩に救済されるとは言え、
其れは詰まり、生前に善行を積めなかったどころか、親を悲しませたと言う罪が
良いじゃない。
結果的には死ななかったんだから。
ひとえに私のお陰だな。
感謝しろ、でこ。
どうせ。
かえって逆効果だったんじゃないの?
由乃の場合、駄目って言われるとかえってやる気になるから。
あははは。
いや、あの時は本気で参ったっけなー。
所詮、天狗は天狗。
いや、天狗は関係無いだろ。
一寸。
人の話を聞きなさいよ。
おまけに。
由乃は虚弱体質では無くなったし。
思い切り長生きしそうだなー、由乃ちゃん。
令も大変だ。
て、おい。
ま、何と言うのかしら。
結果良ければ全て良し?
其れを言うのなら終わり良ければ、でしょ。
て、然うじゃなくて。
蓉子さん蓉子さん。
自分だけが除け者にされたからって、拗ねない拗ねない。
拗ねてないわよ。
大体除け者がどうとかと言う問題じゃないわよ、此れは。
とか言っちゃってるけど。
自分だけ知らなかったの、実は少し気にしてんじゃないの〜?
ふざけないで、聖。
はい、しーましぇん。
江利子。
うーん?
貴女、どうして由乃を面子に加えたの。
いえ、面子に加える事自体は間違いじゃない。
けれど初陣、加えて虚弱体質だと言う事をもっと考慮しても良かった筈よ。
と、言われても。
適当な討伐地が残ってなかったのよねぇ。
鳥居千万宮も相翼院も今更、だし。
私が言っているのは。
いきなり大将とぶつけなくても、と言う事。
神の解放が望みだったわけでは無いのでしょう?
そういや。
私ん時は相翼院でお業さんとだったっけなぁ。
おまけに其の後、髪とも一戦やったような。
江利子は?
私?
私は…んー、誰だったかしら。
氷ノ皇子辺り?
蓉子はー?
私は赤猫お夏だったわ。
其の前に鳴神小太郎とも戦ったわね。
おー、揃いも揃って何か凄い。
然うなのよ。
当時の当主様がこれまた奔放不羈を絵に描いた様な方だったから…て。
然うじゃなくて。
ま、良いじゃない。
終わった事は。
良くないわよ。
だって。
今更あーだこーだ言ったところで、どうしようも無いじゃない。
江利子、貴女ねぇ。
だって、私は後悔なんてしていないもの。
自分で選んだ事だから。
私は私の遣れる事を遣ったし。
其れに似たようなの、何時だかも聞いたような。
確か…
…交神の時、だったわね。
そうそう。
あん時も頑として譲らなかったんだよねー。
もう。
本当に貴女は。
正直。
由乃は良いのよ。
?
お、何の話。
でも。
令が、ね。
あの子、いちいち気負い過ぎてるのよ。
由乃に対して。
うん、まぁ確かに。
由乃は仮令虚弱体質だろうが、何だろうが。
周りなんて気にせず突っ走るわよ、あの子は。
…猪突猛進な節があるものね。
でもね、令は然うは行かない。
あの子はね、優しいのよ。
うん、然うだね。
でも其れと同時に弱い…と言うより脆いのよ、とても。
…。
由乃を閉じ込めておく事なんて出来ない。
かと言って、討伐には連れて行きたくない。
この手で大事に大事に守りたい。
然う、令が思うのは勝手。
だけど由乃は其うされたいとは思ってない。
寧ろ、後よりも隣。
肩を並べて歩きたい。
かな?
まぁ、妥当ね。
…其れで?
由乃は薄々感じ始めたみたいなのだけれど。
令は、ね。鈍いところもあるから。
ふむふむ。
ぶっちゃけ。
依存、してるのよ。お互い。
なーるほど。
で?
ま、そんな感じだから。
とりあえず、討伐に行かせてみようかなーと。
…て。
何だ、そりゃ。
何事もやってみないとねー。
…無茶苦茶だわ。
途中までは其れなりに親らしい事言ってたかと思えば。
やっぱ、でこはでこだった。
ま、切っ掛けぐらいには為るでしょ。
由乃も健康になった事だし、此れからが見物よ。
…。
おおよそ、親とは思えない台詞。
流石、でこ。
ま、大丈夫よ。
…私、何だか頭が痛くなってきたわ。
む、其れはいけない。
この聖さんが撫でて差しあげましょう。
いや、要らないから。
遠慮なさらず。
遠慮なんかしてな
…ろ!
…?
でこ、何か言った?
いいえ、私は何も。
…みろ!
みろ?
何を?
…。
…まぁみろ!!
…まぁ、みろ?
…え、と?
…ふふ。
『…江利子?』
ざまぁみろ…!!!!
ざまぁ…
…みろ?
ふふ…あははははは…!
え、江利子…?
はははは…!!
ちょ、江利子、大丈夫…?
だ、駄目…かも、あは、あははははは…!!
でこがとうとう、壊れたな…と。
南無南無。
一寸聖!
ははははははは…!!
売られた喧嘩は買う、そして倍返し。
矢っ張り、そうでなくっちゃ。
面 白 く 無 い 、 わ よ ね 。
ねぇ。
由乃。
黄薔薇ノ陣・了
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