んー、まぁ、何だ。 人間の女と言うものは。 子を産むと乳房から母乳と呼ばれるものが出るのよね。 ああ、然う然う。 何でも腹に種を植え付けられて孕む事数ヶ月頃から出始めるらしいよ。 でも其れって何も人に限った事では無いのよ。 犬や猫も然うらしいから。 らしいねー。 そもそも赤子がお腹から生まれると言う事自体、凄い事だと思うわ。 腹の中で子が成長すればするほど、腹が膨らんでいくのでしょう? そんなお腹じゃ討伐には行けやしないよねぇ。 派手に邪魔で。 貴女は自分のお腹で産んでみたいと思う? 面白そうだけど。 不自由そうだから思案しどころ。 ま、幾ら思案したところで私達には関係無い事なのだけれど。 なら訊かないでよ。 なんか損した気分じゃないよ。 …藤花、菊乃。 『何かしら?椿』 いい加減に本題に入りたいのだけど。 ああ、どうぞどうぞ。 どんどん入っちゃってー。 と、其の前に。 藤花。 うん、何? 私が呼んだのは藤花、聖の姉である貴女だけの筈だったわよね。 ええ、然うね。 菊乃。 はいはい、何でしょう? 何故、呼ばれていない貴女達が此処に居るのかしら。 椿と藤花が揃う所私あり、てねー。 本音は? 面白そうだったから。 とりあえず、出てけ。 えー、椿さんったらひどいわー。 黄色組を除け者にするなんてー。 除け者とかと言う問題では無くて。 大体、どうして江 …ふーん。 ? 何、江利 …。 な…ッ やっぱり、無いわ。 ええええええ江利子…! 突然、何するのよ!! お姉さま。 蓉子には胸がありません。 平らです。 …ッ おー、江利子。 良いところに気付いたねー。 だって。 赤子に乳を与えている女の人って皆、胸が腫れてますから。 お姉さま方みたいに。 残念ねー江利子。 胸は腫れるんじゃなくて、膨らむのよ。 ここ、重要よー。 然うなのですか。 其れにね、膨らんで無いだけで蓉子ちゃんにも勿論江利子ちゃんにも胸はあるのよ。 成長すれば何れ、膨らみを持つようになるよ。 ふぅん。 江利子…ッ 何?蓉子。 藪から棒に何するのよ…ッ 胸、触ってみただけだけど。 何かいけなかったかしら? いけないとかって問題じゃ無くて…! じゃ、良いじゃない。 良くないわよ…! 聖は良くて。 私は駄目なの? どうして? 聖は未だ赤子じゃない! つまり。 0ヶ月の赤子は良くて、一ヶ月の私は駄目なのね? いや、だから…! あまり大きな声を出すと胸の中の其れ、起きちゃうわよ。 …何度も言っているけれど。 聖を「其れ」呼ばわりするのは止めなさい。 だって其れは其れじゃない。 十分だわ。 江利子! 貴女はどうして…! 蓉子。 今話すべきは其れでは無いわ。 お姉さま…。 兎に角。 菊乃。 はいはーい。 江利子ちゃんを連れて、退出して呉れないかしら。 除け者にする積もりなんて毛頭無い事だけは先に断っておくから。 勿論、後で報告もするわ。 えー、つまらな 菊乃。 分かって呉れるわよ、ね? はーい、分かりましたー。 と言うわけだから行くよー、江利子。 …はい。 で、話って何? 椿。 聖の事、なんだけれども。 其れは分かってるわ。 で、蓉子ちゃんに何か仕出かしちゃったりしてるのかしら? …あの、藤花さま。 仕出かす、なんて大それた事では…。 腹を空かすと、仕切りに。 胸を触ってくるらしいのよ。 …。 あぁ、成る程。 成る程って。 先刻も菊乃と話していたでしょう? 母と言う生き物は乳房から、正確には乳首から子に与える乳が出るものなのよ。 子が其れを求める事は何もおかしい事では無いわ。 けれど幾ら求めたところで蓉子からは出ない。 蓉子だけじゃない、そもそも私達には… 出たら問題じゃない。 そんな事になったら屹度、勇魚兄が大騒ぎするわ。 …俺の蓉子に、と? ともすれば。 決闘する、とかって言い出しかね無いんじゃない? ねぇ、蓉子ちゃん。 …「血」に「闘う」で。 「血闘」を申し込む、と。 でしょう? いやぁ、そんな姿が容易に目に浮かぶわ。 兄上の事は良いから。 と、言われても。 私ではどうにも出来ないわよ。 悪いけれど。 藤花。 何だったら試しに、直接に、と頼んでみる? 確か角の奥さんだっけ?分けて貰っているの。 …多分、駄目だと思います。 然う。 聖は赤子の癖に酷く人見知りする子だから。 慣れぬ者に抱かれたら其れはもう泣いてしまって、乳どころでは無くなるわ。 このままだと蓉子は初陣に行けないわ。 大丈夫。 初陣は逃げやしないわ。 聖が乳離れしてからだって遅くないじゃない。 藤花、少しは貴女も… 勿論、私も見ているわよ。 蓉子ちゃんが初陣を飾るというのならば、其の時は私が聖を見る。 だけれど。 …あ。 せ、聖…。 微笑ましくなるのよねぇ。 見てると。 …あのねぇ。 聖は蓉子の妹では無いのよ。 当たり前じゃない。 聖はあくまでも私の妹よ。 あ、あの、お姉さま。 聖がお腹を空かせたみたいで、其の…。 …良いわ。 行ってらっしゃい。 はい。 ああ、然うだわ。 蓉子ちゃん。 え、あ、はい。 何でしょうか、藤花さま。 聖に胸触られるの、嫌? …藤花。 ……嫌、 だったら。 私が其の子の じゃ、無いです。 ただ…。 ただ? …幾ら触っても私からは一滴も出ないから。 …。 …蓉子。 …え、と。 私、行ってきます。 はーい、行ってらっしゃい。 気をつけて。 はい。 其れでは暫し失礼致します。お姉さま、藤花さま。 ……結局。 世話焼きな子よねぇ、蓉子ちゃんって。 良い子だわ。 当たり前でしょう。 私の妹なんだから。 でも父親は勇魚兄。 肝心なのは私が姉と言う事、よ。 相変わらず。 自信漲るお姉さまのようで。 何とでも仰りなさいな。 でも。 でも? 江利子ちゃんも気付いた事だけど。 蓉子ちゃんの胸は未だ、膨らんで無いのよね。 当たり前でしょう。 蓉子は未だ、三ヶ月の子供なのよ。 赤子ってね。 ある程度膨らみのある乳房じゃないと認識出来ないらしいわよ。 そもそも口に含めないらしいし。 …。 其れなのに仕切りに触りたがる。 これってどう言う事なのかしらね。 ちなみに藤花はどうなのよ。 うん? 聖に。 私は今のところ、無いわねぇ。 だから一層、ね。 …乳を欲しがる以外にも要因があるとでも言いたいのね。 若しも然うだったら。 将来、面白い事になるかも知れないなぁって。 少し、思った。 菊乃の様な事、言わないでよ。 ・ ・ …はぁ。 …。 …蓉子。 …。 蓉子…。 …。 は…。 …。 …? …。 蓉子…? …。 ……。 …ッ い、たぁ…ッ …。 聖…ッ 何するのよ…ッ …こんな時に。 他の事を考えてる蓉子が悪い。 だからって痛いじゃ 何考えてたの。 …考えていたわけじゃ無いわ。 じゃあ、誰を想っていたの。 …聖。 ねぇ、蓉子。 私が蓉子に夢中になっている間、何を想っていたの。 …ふと、思い出しただけよ。 思い出す…? 今の、聖の姿を見ていたら。 赤子の頃、の。 …。 だから聖の問いに答えるのならば。 聖を想ってた、と答えるわ。 でも其れは昔の私でしょう? 然うね。 今は、今の私を、今の私だけを見てよ。 見てるわよ。 こんなに近くで。 然うじゃなくて。 うん? なぁに? …。 どうしたの、聖。 …何か。 あやされているような気分になってきた…。 然う? 頭、撫でて貰うのは好きだけど。 今は良いよ。 ん…。 其れより。 もっとくしゃくしゃにしてよ。 ねぇ、聖。 …んー。 聞きたい事があるのだけれど。 …何? 胸、好きなの? ……は? 聖、最初は胸ばかりだから。 …。 其れに終わった後も… 蓉子。 ん…? はっきり言う。 すごく好き。 …然う。 前にも言ったと思うけど。 安心するのよ。 其れだけ? …。 聖…? あったかい、やーらかい、良い匂いがする、掌に収まる大きさで、形が良い、だけど指を動かすと其れに合わせて形が変わる、 これは胸に限った事じゃないけれど痕を残したくなる位の白、それから感じてる時の仄かな色と もう、良いわ。 だから其れを口に含みたくなる、舐めたくなる、吸いたくなる、歯を立てたくなる。 もう分かったわよ。 聞いたのは蓉子じゃない。 然うだけど。 其処まで生々しく言えとは言って無いわ。 其れに…あん。 …。 聖…。 …上辺だけの理由なんて。 幾ら言葉にしたって、意味が無いわ。 …ええ、其の通りね。 …蓉子。 …。 蓉子の胸に触って良いのは。 私だけ、よ。 聖だけ、ね…。 絶対、だから。 …。 他の誰かなんて。 絶対に許さない。 …思えば。 昔から然うだったのかも知れない。 だから。 昔の、ましてや赤子の私の事なんて今は思わないで。 …然うね。 …好きよ、蓉子。 ええ…。 蓉子も言って。 …好きよ、聖。 もう一度。 好きよ。 今の貴女が…好き。 じゃあ昔の私は好きじゃなかった? …今を見てと言ったのは貴女じゃない。 天邪鬼、だから。 本当よ、も… …。 あ、ん…。 …ああ、良いにおい。 せい…。 でも、ね。 好きなのは胸だけじゃ無いよ。 …。 唇も、耳の後ろのここら辺とかも、項も、あとお臍とか、腰の線とか、傷がうっすらと見える貝殻骨辺りとか、 噛み付きたくなる鎖骨とか、足の指とか踝とかの形とか、何より此処と、がッ 其れ以上、言わなくて良し。 主張しておこうと思っただけのに。 しないで良し。 蓉子だって。 舐められたり舌でされるの、好きなく、ぜッ …本気で殴るわよ。 …み、鳩尾は、止めて下さい…蓉子さん。 本気で、息が止まる…の、で。 …思い出したわ。 は?唐突に何? 然う言えば子供の時、 …はいはい、今度は何かしら。 江利子に触られた事があったのよね。 は、何を? 胸。 ……………はい? だから。 胸を、ね。 触られたと言うか、軽く撫でられたと言った方が適切かしら。 ………。 と言っても。 赤子の貴女が仕切りに触るから、其れでお姉さま方、が…ッ …。 ちょ、一寸聖、未だ…。 でこが…でこが、蓉子の胸を、撫で、た…。 せ、聖、待って、もう少し…。 ……でこ、が。 あ、や、やだ…あぁッ …………許さん、でこ。 ・ …聖。 …ごめんね。 幾ら触っても。 私からは…。 聖…。 …。 …本当、に。 「……こ」 …聖? 「…ぅ、こ」 ……。 …せ、い。 ……少しだけ、なら。 分かってる、分かってるけど…。 ん…。 ……あ。 …さま。 …。 お姉さま。 …うん? 言われたとおり、お茶を淹れてきたんですけど…。 ああ。 有難う、令。 どうされたのですか? 心此処に在らずって感じでしたけど…。 ああ、一寸ね。 昔を思い出してただけ。 昔、ですか? そ。 未だ令も生まれて無い頃の、ね。 勿論、由乃もね。 れいちゃんがうまれてないんじゃ、あたりまえですから。 いちいち、いわなくてもよいです。 一応、言っておこうかなと思って。 よいです。 えんりょします。 然う、遠慮しないで。 いいえ、します。 だんこ、します。 然うね、令が家に来る一寸前は未だ だからいいっていってんだろ、でこ。 よ、由乃、言葉使い言葉使い。 だってこのでこが。 でこも駄目だって言ってるでしょう。 良いのよ、令。 いや、良く無いですから。 なによ、れいちゃん。 でこのみかたをするつもりなの。 いや、味方とかって言う問題じゃなくてね、由乃。 そもそも由乃はお姉さまに対しての言葉使いが… なによ、れいちゃんのばか。 な。 ばか、ばか、れいちゃんのばか。 れいちゃんなんてしらない。 ちょ、由乃…。 あらあら。 だ、だけどね、由乃。 仮にも母上であるお姉さまに向かって「でこ」は無いよ。 でこはでこじゃない。 いや、だから… でこすけ! …?! あら? 話がある!表に出やがれ!! ほら、ほかのひとだってそうよんでるじゃない。 い、いや、由乃。 他と人と言ったって、其れは当主様だけであって… でこはどこまでいってもでこなのよ。 ああ、もう…ッ 聞こえてるの?!でこ! 聞こえてるわよー。 じゃあ…! 生憎だけれど。 表に出るのは寒くて嫌だから、どうしてもと言うのであらば中に入って下さらないかしら。 入らないのであらば、お断りする パシーン! ごきげんよう。 出来ればもっと丁寧に入って下さらないかしら。 障子が壊れてしまうわ。 …。 其れにしても。 でこすけとはご挨拶ね、色魔天狗。 …色魔、だと。 我ながら的を射た呼称だと思うけど。 どうせまた蓉子と乳繰り ご、ごきげんよう!当主様! え、あ、うん。 ごきげんよう、令。 今日は良い天気ですね! は? どうみてもくもってるわよ、れいちゃん。 いや、ほら、過ごしやすいと言うか。 ひがさしてないぶん、さむいわよ。 そういってわたしにうわぎをきせてくれたのはれいちゃんだったでしょ。 あ、あー…。 で、何用なのかしら?聖。 わざわざ人の部屋に乗り込んできたからには其れなりの用があるのでしょう? でこに聞きたい事がある。 何かしら。 …本当なの? 何が? 良く聞こえないんだけど。 昔、蓉子の胸を撫でた事があるって、本当なの!? …! 蓉子の…? …ああ。 あるのね? まぁ、あるにはあるけど。 でも。 でも、何よ! 聖が蓉子にしている様な事、例えば舐めたり吸 わ、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!! な、何?! いきなり大声をあげるものじゃないわよ、令。 うるさいわ、れいちゃん。 いや、と言うか! お姉さま方、由乃は未だ元服前なんですよ!? 其れだと言うのに何て会話をしてるんですか!! 其れを言うのなら令も、でしょう? そ、然うですけど…いや、然う言う問題じゃなくて!! じゃあ、どんな問題? だから、其の、子供の前で閨事らしき話をするのはどうかと思うわけでして。 れいちゃん。 な、何?由乃。 ねやごと、て。 なに? ……あ。 墓穴。 そ、然うだ、由乃! 散歩にでも行こうかー! どうして? きょうはいろはうたをやるっていってたじゃない。 いや、幾ら身体が弱いと言っても、やっぱり少しは動かした方が良いかな、て! 由乃、外に行くのは好きでしょう? …すき、だけど。 うん、然うと決まれば早速支度しないと! 其れではお姉さま、私達はこれで! 待ちなさい、令。 は、はい…? ついでにお団子買ってきて。 お団子、ですか? 然う、お団子。 下鴨前の店の御手洗、ね。 あ、はい、分かりました! はい、お金。 貴女達の分も買って良いわよ。 有難う御座います。 だって。良かったね、由乃。 …ところでれいちゃん。 うん、何? ねやごと、て さ、さぁ!行こうかー由乃ー!! さて、と。 …。 完全に出鼻を挫かれた様な様相ね、天狗面。 撫でたと言うのは、本当なのね。 ええ、本当。 …ッ はいはい、分かりやすい反応有難う。 でもね、其れは子供の頃の話だから。 子供だからって! 其れを言ったら聖だって触っていたのよ。 赤子の頃から。 …。 そもそも。 赤子の貴女が腹を空かせる度蓉子の胸に触って、其れを蓉子が気にしていたから。 椿さまと貴女のお姉さまである藤花さまが其の事で話し合った事もあるのよ。 其れと。 江利子が蓉子の胸に触るのとどんな関係があるのよ。 多分、疑問だったのよねぇ。 何が。 だって。 当時の蓉子の胸は平らだったのよ。 真っ平らと言っても良かったわ。 当然よね、未だ三ヶ月の子供だったんですもの。 …。 なのに。 貴女はまるで、乳を強請るかのように蓉子の胸に触って。 だから、自分も触ってみたと? ええ。 そんなに良いものかと思って。 …! 江利子…! なんて。 一ヶ月の子供が思うわけ無いでしょう。 いちいち反応しすぎ。 …。 然う言うわけだから。 別にやましい思いがあったわけじゃないの。 安心した? …けど、気に入らない。 本当。 莫迦ね、あんた。 うるさいな。 ねぇ、聖。 …何だよ。 貴女は覚えてないでしょうけど。 覚えて無いよ、赤子の頃なんか。 …口惜しい? は? 貴女が知らない時間の蓉子を。 私が少しとは言え、知ってる事。 …。 はい、図星。 悔しいわけじゃないわよ。 所詮、無いもの強請り。 本当、むかつくわね。 一つだけ、教えてあげるわ。 …。 夜、夜泣きが酷くてなかなか寝付かない貴女を、蓉子は…。 …? 何よ。 …やっぱり、何でも無い。 はぁ?! 蓉子も言って無いみたいだから。 私も言わない。 言いかけておいて! 仕方が無いでしょう?気が変わったの。 でもどうしても気になると言うのなら、蓉子にこう聞いてみれば良いわ。 赤子の私が夜、どうしても寝付かなくて、しかも、乳を強請った時。 蓉子は何をして呉れたの?て。 …何よ、其れ。 何って言われても。 そのままの事よ。 …。 はい、と言うわけでこの話は終わり。 一寸待て。 いつまでも、今はもう昔の子供にやきもちなんぞ妬いていても仕方が無いでしょう。 其れに蓉子はもう、貴女の…。 …。 さて、と。 折角来たんだから、もっと私の相手でもしてく? 冗談じゃない。 帰る。 蓉子が居る部屋に? ああ、然うだよ。 あ、そ。 …然うだ、天狗面。 何よ。 上手く消せたと思っているようだけど。 微かに未だ、残ってるわよ。 …何が。 蓉子以外の女の匂い。 …ッ 私の鼻が利く事は貴女も知ってる筈よね? それから気付かれていないとでも思ってるの? 目出度いわね。 いや、でも…。 で、そのまま蓉子を抱いて。 本当に莫迦ね。 蓉子にしてる様な事は一度もした事無いわよ。 だからって。 他の女の白粉を纏っていたら、蓉子がどんな気持ちになると思ってるの。 …。 聖の事なんてどうでも良いけど。 蓉子が傷付くようなら、私は。 …帰る。 あ、然う。 ああ、障子はちゃんと閉めていってよね。 風が入って寒いから。 ・ …聖。 …。 聖。 …。 邪魔、なんだけれど。 だから? 作業が捗らないから。 退いて。 嫌だ、退かない。 あのねぇ。 本来だったら此れは当主である聖が…て。 …。 …はぁ。 …。 貴女の事だから。 江利子の部屋に行って、聞いてきたんでしょうね。 うん。 子供の頃の話なのに。 知ってて、言ってるでしょう。 知って…? 私は子供だから。 仮令其れが子供だったとしても、面白くない。 …止めなさい、聖。 どうして? 昨夜は沢山触らせて呉れたのに。 状況を考えなさい。 昼。仕事中。 然うよ。 じゃあ、赤子の私が乳を強請って触った時は? やっぱり駄目って言った? 比べどころが間違ってる。 貴女はもう赤子ではないし、今の貴女が赤子と同じ目的で触ってるとは到底思えない。 然うだね、蓉子の言うとおりだ。 でも。 でも? 結局は同じ事なのよ。 意味が分からないわ。 ちゃんと分かるように言いなさい。 蓉子が欲しい。 ただ、其れだけの事。 …赤子はそんな事、考えないわ。 さぁ、どうだろう。 所詮、私だし。 …聖。 ねぇ、蓉子。 夜、夜泣きで寝付かなかった私に。 蓉子は何をして呉れたの。 …いつか、話した通りよ。 私は聖と同じ部屋、同じ布団で眠って。 貴女が夜泣きをする度、私は貴女をあやして。 日が昇るまで、其の繰り返しだった。 私が聞きたいのは…其れじゃない。 ん…ッ 聞きたいのはそんな事じゃないのよ。 …止めて、聖。 ねぇ、蓉子。 私ね、何となく覚えている事があるの。 何、を…。 蓉子の、温もり。 …。 ただ其れが胸の温もりだったのかは分からない。 だけど…。 …だめよ、聖。 …。 あ…。 …其れは甘かった、と思う。 だめ、だ…と。 …。 あ、ん…。 …ね、蓉子。 蓉子は何をして呉れたの。 …私は、別に。 あやして、呉れたのでしょう…? …江利子、ね? …何故? 江利子が、何かを言って…あん! 聞いてみろ、て言った。 蓉子を、私が知らない蓉子を知ってるようだった。 …。 …蓉子。 大した事じゃ、無いわ…。 じゃ、言って。 …。 大した事が無いのなら言えるでしょう? ……言う程でも、無いわ。 …ッ あ…! ……。 聖、駄目…。 足、広げてよ。 …い、や。 あ、そ。 じゃあ…。 …! や…ッ …へぇ。 …ぁッ 未だ、あんまり触ってないのに。 もうこんなに濡れてるよ、蓉子。 や、だ…。 蓉子。 …んんッ。 …。 だ…め。 …一本じゃ、足りないみたいじゃない。 そ、そんなこと…あぁッ ほら、足りてなかった。 どうせだからもう一本、欲しい? ぃ、や…。 蓉子の躰って。 せ、せぃ…。 …。 あ…、は…ッ …本当、いやらしい。 ひ、あ……ぁ…ッ …。 う、ぁ…ッ ね、聞こえる? 水の音。 や…。 此れ、蓉子の音だよ。 淫靡な音だよね。 ……い。 …。 せい、せい…。 …蓉子のこんな姿。 せ…ふ。 …知ってるのは、私だけ。 私だけなのよ、蓉子。 …はぁ。 …なのに。 …。 江利子が。 せ…ぃ。 私の知らないコトを知ってる。 そんなの、やだ。 …。 やだよ、蓉子。 ……わたし、は。 …。 あげよう…と。 …。 でも…わたしは……じゃ、ないから…。 …うん。 …け…ど、あなた…は。 …私、は? ……さぐ…て、吸おう…と。 …。 で、ない…のに…。 …。 ただ…それだけの、こと…。 …然う。 せい…おねがい。 …。 もう…ゆるし、て。 …。 せ…あ。 …ありがとう、蓉子。 あ、あぁ、あぁ…ッ ……あぁぁぁッ …結局、あの時。 貴女は疲れて眠ってしまったのよ…。 …。 出もしないのに、それでも吸おうとして…。 一所懸命に探って…。 …。 其の時、思ったの…。 貴女はただ単に肌の温もりが欲しいだけなのかも知れないって…。 …蓉子。 …。 其の、躰、大丈夫…? 何処か痛くない…? …言わせる気? …ごめん。 だったら。 ちゃんと、支えて。 …うん。 …ばかよ、貴女は。 …。 本当、に。 …江利子にも言われた。 私が好きなのは…聖、貴女なのよ。 ……うん。 …なのに。 …。 …自分は、他の女のトコロに行って。 あ…。 私が気付かないとでも、思ってたの。 …思わない。 …一つ、教えてあげるわ。 …。 聖。 私は貴女が好きだった。 …ようこ。 好きだったのよ。 じゃなきゃ、あんな事出来なかった。 …ごめん、蓉子。 ばかな、聖。 ごめん、ごめんなさい…。 …。 …? …蓉子? 口付け、して。 …え。 して。 …。 ……好き、よ。 …うん。 聖は? 私の事、好き? 好き…好きよ、蓉子。 ずっと、傍に居て。 …居てあげるわ。 私は貴女の傍に居る。 だから、離さないで。 うん…うん…。 …もう、仕方の無いの人ね。 これじゃ、どっちが支えて貰っているのか、分からないじゃない…。 蓉子…ようこぉ…。 ・ 蓉子、皺。 …。 そもそも。 蓉子は聖に甘いのよ、昔から。 悪かったわね。 開き直り? 違うわよ。 ふぅん。 まぁ、良いわ。 で、聖の次は蓉子なのね。 江利子。 うーん? …其の。 ふふ。 其の顔を見ると言ったみたいね。 聖は。 …。 本当、分かりやすいわよね。 聖も、貴女も。 いや、蓉子が分かりやすいのは聖が関わった時だけ、だっけ? …其れを私に聞くの? じゃあ、祥子辺りにでも聞いてみようかしら。 止、め、て。 別にね. 見たくて見たわけじゃないのよ。 …分かってるわ。 本当に? 覗き見するつもりじゃ無かったのでしょう? そ。 あくまでも偶々。 …。 ま、そこまでとは思ってなかったから。 正直、吃驚はしたけれど。 …。 まさか。 蓉子が聖、に…。 言葉にしないで。 布団の中で子守唄代わりに漢詩を聞かせてたなんて、ね。 幾ら好きでも其れはどうかと思ったわ。 …は? いやいや、吃驚したわ。 あの時は。 …。 あら? 蓉子、顔が赤いわよ。 瞬間的に風邪でもひいた? …ひいてないわよ。 然う? でも駄目よ、身体を冷やしては。 特に汗が冷えると効果覿面よ? …。 ふふふ。 皺、増えてるわよー。 …放っておいて。 最早、血筋ね。 眉間に皺。 …。 あら、蓉子。 用はもう良いのかしら? …ええ。 邪魔、したわね。 お構いなく。 邪魔と言うほどの時間では無かったし、邪魔になるほど立て込んでも居なかったし。 ああ、然うだ。 折角だからお団子食べてく? また買って。 令と由乃が散歩に行った、から。 此の店の御手洗団子、美味しいわよ。 ええ、知ってるわ。 飽きっぽい貴女が珍しく贔屓する稀な店だもの。 然うだったわね。 さぁ、どうぞ。遠慮なんか要らないわよ。 其れじゃ、遠慮なく頂く事にするわ。 で、取るのは二本なのね。 誰かさんの分? 此処のはあまり甘くないでしょう? くす。 やっぱり、甘いわね。 お八つは平等に。 父上の教えの一つだから。 面白い人だったわよね、蓉子のお父上。 蓉子に全然似てない。 否定はしないわ。 令と由乃ちゃんは? 仲良く午睡中。 散歩に行ったら令も眠くなっちゃったみたいで。 お陰で暇なのよ。 然う。 蓉子。 うん? 知ってる? イカサマってばれなきゃ良いのよ。 それこそ死ぬまで、ね。 じゃあ。 私が見破ってあげるわ。 聖のは直ぐにばれそうだけど。 あれは隠し事が下手糞だから。 江利子。 うん? 何でも無いわ。 何よ、其れ。 呼んでみただけ。 ああ、然う。 其れは有難う。 じゃ、お団子有難う。 どういたしまして。 其れと買ってきたのは令だから。 令と由乃ちゃんにも有難う、と。 言っておくわ。 忘れなかったら、ね。 あーそうそう。 ? 何? 出来れば。 睦言か何かで私の名前を出さないで頂けると助かるわ。 要らんやきもちを妬かれるから。 大体、蓉子も大変でしょう? …江利子こそ、無駄使いは控えてね。 ところで聖は? 寝てるわ。 矢っ張り、疲れて? …まぁ、そんなところ。 じゃあ、蓉子も寝起きだったりして。 違うわよ。 そ? 其の割には此処、微かだけれど撥ねてるわよ。 …そんな所ばかり、見つけて。 ・ ・ 椿、皺。 誰のせいよ。 あら、可能性の話をしただけよ。 椿だって思わなくも無いでしょう? あの子達は未だ、子供なのよ。 聖にいたっては赤子。 子供の成長は早いから。 …。 若しも蓉子ちゃんが聖のお嫁さんになって呉れたら。 蓉子ちゃんは私の妹になるのね。 楽しみだわ。 冗談。 じゃあ…娘? 違うわよ。 椿だって聖の姉になれるわよ? …あら、そしたら私たち姑同士? 止めてよ。 ねぇ、考えると面白いでしょう? 何処が。 あ、でも其の前に難関があるかも。 難関? 勇魚兄に血闘、申し込まれてしまうでしょう? 蓉子ちゃんを嫁に貰うとしたら。 ……。 皺、増えてるわよ。 と言うか。 蓉子も聖ちゃんも女の子でしょう。 だから? 女の子同士でどうして嫁だとかの話になるの。 じゃあ、婿でも良いわよ。 蓉子ちゃんにうちの聖を婿に、てね。 あのねぇ。 婿は男がなるものなの。 繰り返すけれど、聖ちゃんも女の子でしょう? 良いじゃない、そんな細かい事は。 細かくないわよ。 菊乃は屹度、悔しがるでしょうね。 黄色組だけーて。 菊乃が? そ。 どうして。 知らぬのは紅だけ、てね。 何よ、其れ。 菊はね、椿の事が好きなのよ。 …。 だけど。 私も、椿の事、好きだから。 ……。 其れはもう、水面下で大変なのよ。 …はいはい、然うね。 だけど私は二人とも好きよ。 大事な家族ですもの。 黄色と言えば。 江利子ちゃんは、どう、思うかしらね。 聖ほどでは無いにしろ、蓉子ちゃんに懐いているから。 もう、良いわよ。 其の話は。 いやいや。 やっぱり恋敵は必要でしょう? あくまでも其れに結びつけるのね…。 ねぇ、椿。 知ってる? 何が。 イカサマってね、 バレなきゃ良いんでしょう? 菊乃の口癖。 其の割には上手く出来ないのよね、菊は。 で、だから何?何の関係があるの。 ううん、別に無いわ。 はぁ? ただ。 聖と蓉子ちゃんには向かないだろうなぁ、て。 聖ちゃんは兎も角。 蓉子には見破る力を持って欲しいわね。 其れはお手柔らかに頼みたいものね。 聖の為にも。 さぁ、どうかしらね。 夢 ノ 卵 ガ 孵 ル ト コ ロ 了 「夢の卵が孵るところ」 Xenogears 光田康典 余談。 ねぇ、聖。 …んー? そんなに胸って、良い? …うん。 私、思ったのだけど。 ? 何を? 私も知ってみたいな、て。 え? あ。 だから。 試してみても良いかしら? あ、いや、一寸待って。 何故? や、何故って…。 いつも貴女が私にしてる事じゃない。 そ、然うだけど。 私にも教えてよ。 いや、で、でも。 …。 あ、よ、蓉子…。 …これだけじゃ、分からないわね。 も、もう良いでしょう? 分からないと言ったの、聞こえなかった? あ…! …。 や、蓉子…ッ ……ふぅん。 ふ、ふぅん、て…。 なるほどな、と思っただけ。 なら、もう良い…? 続けても良いのなら、続けるけど。 …。 …聖はどっちが良い? 私はこのままでも構わないのだけど。 そんなの…聞くまでも無いわ、よ! …。 私は矢っ張り、こっちの方が良い。 然う言うと、思った。 …良いよね? …聞くまでも無いわ。 だって、今更、でしょう? 然う、今更。 今夜は寝かせません。 …程ほどにしてよね。 |