受け入れる瞬間が好き。

   然う、気付いたのはつい最近。




















M ä r c h e n




















   受け入れて、重力さえ消えて、感覚の全てが其れだけになった時。
   彼女を、まるで支配しているかのように思えて。


   胸の上を流れるサラサラの髪も。
   荒く吐き出される息も。
   滴り落ちる汗も。
   切羽詰ったような声も。
   今だけは全て、私だけのもの。



   然う、この一瞬だけは。



   実際は。
   彼女に翻弄されて、良いようにされているのは私。
   組み敷かれて、攻められて、時には乱暴に、時には意地悪く弄
〈ナブ〉られて。
   快楽
〈ケラク〉の底へと引きずり落とされる。
   息をするのでさえ、ままならない。許してくれない。
   だから然う、支配されているのは私の方。
   だけど、それでも思う。
   今は、今だけは。



   刻むように、残す爪あと。
   其れが私の、彼女への己の証。



   本当は。
   指だけで無く、彼女の全てを受け入れてしまいたい。
   私の子宮
〈ナカ〉に。
   彼女と出逢わなければ、いつか、生命を育む事になったかも知れない其の場所に。
   そんな風に思ってしまうのは屹度、私が女だから。


   女は子宮に動かされている。
   そんな文言を何処かで読んだ。



   私も、そして彼女も。










   あなたをいつか、産んだ気がした。










   固い感触の他に柔らかくて生温かいものが、ザラリ、と私の中で蠢いた。
   瞬間、高くて耳につく声が己の口から漏れる。
   ああ、ああ。



   一つになりたい。
   なってしまいたい。
   このまま。



   二つの固体。
   若しも一つになれたとしたら。
   離れる事はもう、無くなるのだろう。
   心も、躰も。



   けれど。



   それと同時にあの感触を、受け入れる時のあの感触を、永遠に失ってしまう。
   藻掻くようにして、漸く得た、あの瞬間を。
   彼女の指が理屈も理性も柵も背徳さえも、押しやって。



   私を支配して。
   私が支配して。
   何もかも、何もかも。















   犯して。


















   「蓉子…蓉子…よぅ、こ…ッ」

























   受け入れる瞬間が好き。

   然う、泣いてしまう位に。










「メルヘン」
Jungle Smile