…合コン、なの。















  番 の 鳥















   …は?


   だからね。


   だから、なんだ。


   だから、誘われて。


   誘われた?


   蓮にも話していたじゃない。
   以前から


   今までは断ってきたんだろう。


   然う、なんだけど…。


   今回も断れば良かった。
   それから合コンは聞いてない。


   だけど今回は勝手に頭数に


   そんなもの、無視すれば良い。


   そんな事、出来ないわよ。


   どうして。
   勝手にされたんだろう?
   だったら


   でも友達なんだもの。


   そんなの、友達じゃない。


   蓮が決めることじゃない。


   …。


   …もう、リリアンじゃない。
   蓮は…居ないじゃない。


   …だからって。


   ……。


   …葵は酒が飲めないだろう。


   お酒は飲まないの。


   飲まされたらどうするんだ。


   飲まないわ。


   そんなの、分からない。


   飲まないから。


   ……男がいるだろ。


   それは…。


   …。


   …私の事、信用してくれないの?


   …。


   蓮。


   …そうじゃ、ない。


   じゃあ…


   ……行きたければ。
   行けば、良い。


   ……。


   ……。


   …夕ごはんは


   勝手に食べる。


   …うん。


   ……。


   あまり、遅くならないようにするから。


   …勝手にすれば良い。


   …。


   …。


   ……じゃあ


   葵。


   …。


   …。


   ……なに。


   …。


   蓮。


   ……。


   ……大学の最寄の駅。


   …。


   …その近くにあるお店、だって。


   ……誰も聞いてないだろう。


   言いたくなったの。


   …。


   …若しも。
   遅くなりそうだったら、連絡、するから。


   …遅くなるな。


   …。


   なるな。


   ……うん。








   葵、なに帰るの?


   …うん。


   早くない?
   未だ九時じゃない。


   でも明日もあるから。


   優等生ねぇ。


   少し、気分も悪いから。


   気分?


   …お酒が。


   オレンジジュースしか、飲んでないのに?


   …臭いも苦手で。
   それから煙草も…。


   ふぅん。


   …じゃあ、帰るね。


   なに、君…佐藤さんだっけ?
   帰っちゃうの?


   え?


   なら、一緒に帰ろう。
   僕も明日があるし。


   いえ、私は


   夜のこんな時間に一人で帰るのは危ないからね。


   そんなに遅くないので大丈夫です。


   良いから。
   駅まで行こう。


   でも


   じゃあ、僕らは帰るよ。
   行こう、佐藤さん。








   あの。


   あ、雨が降ってるよ。
   今日、降るなんて言ってたかな。
   佐藤さん、傘、持ってる?


   本当に良いですから。


   そんなに警戒しなくても大丈夫だって。
   僕、そんなに悪い人に見えるかな?


   あ…。


   そうだ、もし傘持ってないならどこかで雨宿りしていかない?


   は、離してください。


   気分、悪いんでしょう?
   そのまま帰ったら危ないよ。


   大丈夫です、だから離してください。


   まぁまぁ、良いじゃない。
   僕、そんなにがっついてないからさ。


   …!


   ん?


   …は、離して。


   あらら。


   ……。


   …あんまり慣れてないんだねぇ。
   まぁ確かに、他の子たちとは違うな、とは思ってたけど。


   ……


   心配しないで。
   僕は





   「葵」





   …ッ!
   蓮…ッ!


   …ん?


   蓮、どこ?


   …。


   あ!


   …帰るぞ。


   うん…。


   て、待って待って。
   君、誰?


   …誰だって良いだろう。


   何、佐藤さんの彼氏?


   誰だって良いって言ってる。


   なんか、感じが悪い奴だなぁ。
   佐藤さん、こいつと付き合ってるのかい?


   蓮は…


   葵。


   …うん。


   ふーん。
   なんだ、彼氏いたんだ。


   …。


   けど、さ。


   あ。


   彼女を良く、合コンなんかに行かせるよね。


   ……。


   あ、あの、離してください。


   僕だったら、行かせないけどなぁ。
   特にこんな子は。


   ……。


   それとも何、ちょっとした刺激を求めちゃったりなんかした?


   いや、離して


   ね、佐と





   パシッ





   葵に、触るな。


   ……痛いなぁ。


   蓮…!


   …さっさと帰るぞ。
   雨が強くなる。


   うん…うん…。


   おい、待てよ。


   ……。


   先に手を出したのは、そっちだよね?


   …だから?


   やられたら、やり返すもんでしょ?


   …。


   折角、目付けてたし。
   この子、あの中で一番かわいかったんだよね。


   ……。


   だから、さ。
   ただ帰すのは


   ……。


   …!


   …ん?
   なに、それ?


   ……。


   れ、蓮…。


   へぇ、剣道のつもり?


   …下がってろ、葵。


   蓮、だめ。


   傘で?
   なにそれ、幾らなんでも格好つけすぎじゃないの?
   と言っても全然、良くないけど。


   ……。


   …蓮、お願いだから。
   そんなことしたら…。


   …。


   ……お願い、止めて。


   ほら、彼女が止めてって言ってるよ。


   …。


   お願いです、あなたも止めて下さい。
   これ以上蓮を


   じゃあ、大人しく付いて来てくれない?
   どんなつもりで君があんなトコに来たのかなんて、知らないけどさ。
   彼氏が良いって言ったんでしょ?
   だったら、遊ぼうよ。


   私はただ、


   僕、これでも妻が居るんだよ。
   子供もね。


   え…。


   …さっきはああ言ったけどさ。
   わりと、普通なコトなんだよね。
   ただの遊びなんだから、さ。


   最低…。


   それ、君達が言える事?
   特に、本当は来たくないのに友達のせいにしてノコノコ来ちゃう女が。
   本当に何も無いと思ってたの?


   ……。


   …これ以上、無理を言うのなら。
   警察を呼びます。


   警察、警察ね…。


   蓮、もう良いから。
   お願い、もう傘を下ろして。
   濡れてしまうわ。


   …。


   そんなに睨み付けなくてももう、言わないよ。
   あーあ、折角ヤりやすそうな女だと思ったんだけどな。


   …。


   …蓮、もう聞かないで。
   帰ろう、ね?


   こういう堅くて真面目そうな女ほどさ、一回オとすとイイ声で





   ……。





   ……な。


   蓮…。


   …葵。


   ん…。


   帰るぞ。


   …ん、帰ろう。


   …なんだよ。
   ばっかじゃねぇの!!








   …。


   …。


   …。


   …あの、蓮。


   …。


   どうして


   散歩。


   こんなところまで?


   たまたまだ。


   …雨、降ってるのに?


   降ってなかった。


   …なのに傘を持って?


   …。


   蓮はあまり、天気予報を見ないのにね。


   …。


   …。


   …帰る。


   うん。


   …。


   …あのね、蓮。


   …。


   私、折り畳みの傘持ってたんだよ?
   ほら。


   ………。


   ふふ。


   …。


   ありがとう、蓮。


   …葵。


   うん?


   友達だったら。
   嫌がる事は強要しない。


   …。


   …そんなのは、友達じゃない。


   …。


   …。


   ……いつか、聖さんが言ってた。


   …。


   もしも弱いところを見せて…。


   …。


   …それを、攻めるような奴が居たら。
   そんなのは取るに足らない人間だから切り捨てても良いんだって。


   …。


   そんなのは、友達じゃないからって。


   …。


   蓮が言った事とは少し、違うかもしれないけど。


   …。


   …でも、その通りなんだね。


   弱み。


   …え?


   見せたのか。


   …。


   そうなのか。


   …ううん、見せてはいないと思うけど。
   それに私の弱みって


   莫迦正直。


   …。


   あと、お節介。


   …もう、蓮は。


   …。


   …。


   …葵。


   蓮は…。


   …。


   誰よりも、私の事を分かってくれてる。


   …。


   …聖さんたちよりも。


   双子。


   …。


   だから。


   …うん。


   …。


   …。


   …雨、強くなってきた。


   ねぇ、蓮。


   …なんだ。


   そっちに行っても、良い?


   …。


   …。


   …一本じゃ、濡れる。


   うん、分かってる…。


   …濡れてるから、来るな。


   それは私のせいだから…。


   …。


   傘で、なんて…。
   …令さんが知ったら、怒られるね。


   ……。


   蓮…。


   …勝手にしろ。


   …。


   …。


   ……ふふ。


   濡れる。


   うん、私も。


   …。


   …蓮の腕、冷たいね。


   …。


   ねぇ、夕ごはん、ちゃんと食べた…?


   …。


   食べてないのなら…。


   …食べた。


   そう…良かった。


   …。


   …ねぇ。


   …。


   本当は…


   食べた。


   …。


   …。


   …いつから、居てくれたの?


   …。


   ねぇ、蓮…。


   …もたもたしてたら。


   …。


   風邪、ひく。


   …仲良く?


   迷惑な話だ。


   ふふ、じゃあ早く帰らないと。


   …。


   …でももう少し。
   もう少しだけ…。


   …。


   ……蓮。


   …。


   ありがとう…。








   …。


   ただいま。


   …風呂、沸かしてある。


   お風呂?


   風邪ひく前に入れ。


   それを言うのなら蓮もじゃない。


   私は後で良い。


   でも


   煙草の臭いがひどい。


   …そんなにひどい?


   ひどい。


   ……。


   気分、悪くならない方が不思議だ。


   …ん。


   分かったらさっさと入れ。


   うん、そうする。


   …。


   ……けど。


   …。


   ねぇ、蓮…。


   …。


   あの…。


   …


   …。


   …。


   …ううん、なんでもない。
   じゃあ先に入っちゃうね。


   ああ。


   …うん。








   ……。


   …出た?
   何か飲む?


   …自分でやるから良い。


   …そう。


   …。


   …。


   ……葵。


   ん…。


   髪の毛、濡れてる。


   うん、分かってる…。


   …なんで乾かさない。


   そうなんだけど…。


   …。


   …蓮こそ、ちゃんと拭いてない。


   短いから、直ぐ乾く。


   でもちゃんと拭かないと駄目よ。


   ……。


   ほら…。


   …お節介。


   …。


   …。


   …蓮。


   …。


   ありがとう。


   …もう、聞いた。


   …。


   …。


   ……蓮。


   …暑い。


   ……。


   …。


   ……怖かった。


   …。


   もしも蓮が来てくれなかったら…。


   …。


   ……。


   …だから、言ったんだ。


   ……ごめんなさい。


   …。


   蓮…。


   …明日も学校だろう。


   そう、だけど…。


   ……。


   ……だけど。


   …。


   だけど…。


   ……。


   れ…。


   ……目、瞑るな。


   …。


   瞑るな。


   …でも。


   聞けないなら、しない。


   ……いや。


   だったら。


   …。


   ……葵。


   れ……ん。








   “Quieres saber cuánto te quiero...?”








   ……。


   …へんな、かお。


   いきなり変なことを言うからだ。


   ふふ…。


   ……。


   …蓮なら、分かるでしょう?


   …。


   ねぇ、知りたい…?


   …別に。


   …。


   …。


   …冷たいね。


   取ってなかった筈だ。


   …そうよ。
   だけど、知ってるの。


   …どこで


   ないしょ。


   ……。


   …ね、知りたい?


   別に良い。


   …。


   …。


   …知りたいって言って。


   …言ってどうなる。


   …。


   …。


   …蓮はいつも、然う。


   分かってるなら、言うな。


   …。


   …疲れた。
   もう


   蓮。


   …。


   ……貴女の事を聞かせて、なんて言わないから。


   …。


   私の事は、聞いて。


   …重い。


   退いてほしいのなら、聞いて。


   …。


   ……聞いてよ、蓮。


   …。


   蓮…。


   ……どれくらい、なんて。


   …。


   容易く言葉にしてしまえるのなら。
   そんな想い、大した事無い。


   …そんな言い方。


   本当の事だ。


   …それでも言葉にする事は大事だと思うわ。


   …。


   形に出来ないから、だからせめて…。


   ……。


   ……躰を幾ら重ねても。
   不安は拭えない…。


   …言葉にしても、それは同じだろう。


   でも…!


   …。


   ……でも、私は聞きたい。
   何度だって…。


   …。


   ……愛しているから。


   …。


   愛して、いるの…。


   ……。


   あいし、て…。


   葵。


   ……。


   …そんな顔、するな。


   …。


   するな。


   …どんな顔、してるの?


   …。


   ねぇ…。


   ……。


   …むすっとしてる。


   …もう、寝る。
   明日、起きられない。


   …起こしてあげる。
   いつもどおり…。


   …。


   ……だから。


   …葵。


   ……。


   お前は…。


   ……だって。


   …。


   …。


   ……聖みたいだ。


   …聖さん?
   私が…?


   …甘えた。


   ……。


   …そっくりだ。


   蓮だって…。


   …私は、違う。


   ううん、違わない…。


   …おい。


   ……。


   あ、お…。


   …懐かしい。


   …。


   ……小さい頃、一時期だけどそう呼ばれてた。


   ……。


   れん…。


   ……。


   …言葉の代わり、に。


   …。


   教えて…。


   …拭えないって言ったろう。


   ん…。


   …。


   …だけど。


   …。


   私は…蓮のものだって、思えることが出来るから。


   ……。


   …蓮が、私のものじゃなく…んん。


   …。


   …れ、ん。


   ……もう、良い。


   …。


   喋るな。


   …。


   …喋るな。


   ん……。


   …。


   は、ぁ…。


   ……。


   れん…れん……。


   ……お前、は。


   ぁ…。















   …。


   蓮。


   …。


   れーん。


   …。


   蓮。


   ……。


   おはよう?


   ……あと


   だぁめ。


   ……。


   朝ごはん、一緒に食べましょう?


   …。


   蓮、起きて。
   顔、洗ってきて。


   ……寝不足。


   だから、ぎりぎりまで寝かせておいてあげたの。


   …どこがだ。


   ほら、蓮。


   ……ありえない。


   今朝はね、蓮の好きな卵焼き。
   蓉子さんのようには出来ないけど、でも上手に焼けたのよ。


   …。


   蓮、起きて?


   …起きるから、退け


   …。


   ……て、おい。


   うふふ。


   …。


   聖さんみたいって言われたから。


   …そんな真似までしなく良い。


   着替え、ここに置いてあるから。
   後ろ前、間違えないようにね?


   …。


   ふふ。


   ……ふぁぁ。


   大きい欠伸。


   …誰かのせい。


   …。


   …?
   なんだ。


   …ううん。


   …。


   じゃあ、待ってるからね。


   ……葵。


   うん?


   …。


   蓮?


   …大丈夫か。


   …。


   …分からなければ、良い。


   …。


   …先に食べてろ。


   ね、蓮。


   …。


   私は、大丈夫。


   …。


   蓮が、居るもの。


   …。


   だから。


   …。


   ……大好きよ、蓮。


   …。


   貴女が居れば、貴女さえ居てくれれば……。


   ……次が、あるのなら。


   え…?


   ちゃんと、断れ。


   …。


   面倒、かけるな。
   もう、二度と。


   ……うん。