お、なんか映像が古いなぁ、これ。


   …あ。


   昔の映画…かな?


   ……。


   んー……お。


   …。


   そういや昔、こんなのが流行ったような…ねぇ、蓉子。


   …。


   蓉子?


   ……お願いだから、かえて。


   なになに?
   夜、眠れなくなっちゃう?


   良いから、かえて。


   大丈夫、蓉子には聖さんが居る。
   夜中のトイレも心配要らない。


   子供達だって居るのよ。


   今宵も今宵とて腕枕、てね。


   …聖。


   おわ、蓉子らしからぬ低いこ


   ……ッ


   …ん?


   ……。


   うわ、えっぐい。


   ……せい。


   …え、と。


   お願い…だから。


   うん、直ぐかえる。


   ……。


   えと、大丈夫?


   ……ええ。


   …ごめんなさい。


   ……それより。


   あー…。


   ……。


   ……。


   …固まってる、ね。


   …だから、言ったのに。


   蓮、葵。
   おーい。


   ……。


   ……。


   あらら…。


   …幼い子には刺激が強すぎるのよ。


   あと蓉子にも?


   ……。


   …はい、ごめんなさい。


   …はぁ。
   蓮、葵、もう大丈夫。
   怖いのはもう、映ってないわ。


   ……。


   ……。


   大丈夫、大丈夫よ…。


   ……。


   ……。


   …あー。
   こいつはまずった、かなぁ…。















  ま な つ の よ の ゆ め















   ……。


   そんなに何度も確認しなくてもさ、ちゃーんとここいるから大丈夫だって。


   ……。


   だからほれ、ちゃっちゃとしちゃいな?
   ね?


   ……。


   ……。


   ……。


   …なかなかに。
   疑り深い、ねぇ。
   誰に似たんかなぁ?


   ……。


   ほれほれ、間に合わなくなっちゃうよ?


   ……。


   大丈夫だって。
   蓮君が入ったのを見計らってドアを思い切り閉めたり、わー!


   …っ


   って、大きな声を出したりもしないから。


   ……。


   …あれ?


   ……。


   あ、ちょ、本気で切羽詰った顔してるから!


   ……。


   ああ、もう、仕方が無いなぁ。


   ……。


   はいはい、蓮君。
   さくっと中に入ろうね。


   …せー。


   大丈夫、聖さんはちゃんと此処に居るから。
   だから、ね。


   ……。


   ちゃんと待ってるから。


   ……。


   蓮君は。
   手伝って貰わなきゃいけないほど、ちっちゃな子じゃない、でしょや?


   ……う。


   よし。
   じゃ、行っておいで。


   ……。


   ……。


   ……。


   …ふぅ。
   危ない危ない。
   蓉子にまた、怒られちゃうところだった。


   ……。


   …さて。


   ……。


   ……。


   ……せー。


   ……。


   せー。


   ……。


   …?


   ……。


   せー…?


   ……。


   せー!!


   ……。


   せー…っ!


   んーー?
   なんだーい?


   …にゃっ


   やだなぁ、蓮君。
   ちゃんと居るって言ったでしょやー。


   ……。


   でも一寸ドキドキしちゃった、かにゃ?


   ……。


   ……て、あら?


   ……ぅ。


   蓮君…?


   ……うぅ。


   あ……あーー。








   ……聖。


   ……はい。


   貴女、一体何をしているの。


   …何を、て。
   蓮君の寝る前の用足しのお供を…。


   で、どうしたらこんな事になるの。


   あー…まぁ、ほんの出来心と言うか…。
   思った以上に怖がってる蓮君の反応が…その、少々面白くてつい…と言う、か。


   …ほぉ。


   ……ごめんなさい、すみません、申し訳ございません。


   全く、要らぬ仕事ばかり増やして。


   …後始末はちゃんとさせて頂いている次第でございます。


   当たり前でしょう。


   …はい。


   よーこ…。


   蓮、大丈夫よ。
   貴女に怒っているわけではないから、ね?


   ……。


   おー、蓮君。
   白いぷくぷくあんよが眩しいなー。


   ……。


   …うわ、凄い仏頂面。


   誰のせい?


   …はい、すみません。


   全く。


   …でも、さぁ。


   でも、何。


   怖がりすぎじゃないかな、て。
   あんなのは所詮、人が作ったものなんだし。


   ……。


   あ、いや、そのぅ。


   こんな小さな子にそれが理解出来ると?


   …ですよね。


   聖にとっては何でもなくても、子供達にしてみれば何でもあるの。


   …子供達、ねぇ。


   聖、まさか懲りてないとでも?


   いやいや、それは無いです。


   なら、良いけど。
   もう、面白がらないでね。


   はーい。


   返事は伸ばさない。


   はい、蓉子さま。


   全く。
   本当に反省しているのかしら。


   …。


   蓮、おいで。
   体を拭いてあげるわ。


   …よーこ?


   然う、私が。
   拭き終わったらお着替えしましょうね。


   にゃ。


   仏頂面が瞬時としてだらしない顔に。
   たく、ゲンキンだなぁ。


   蓮を誰かと一緒にしないで。


   同じ顔じゃーん。


   でも蓮はだらしない顔なんてしないわ。


   えーそうかなー。
   今現在の顔はまさに


   兎に角、違うの。


   …むぅ。


   …おかーさん。


   葵。


   もう、だいじょうぶ…?


   …。


   大丈夫、何でもないわ。
   ね、蓮。


   …。


   葵、貴女も寝る前にトイレを済ませてしまいなさい。


   …はい。


   大丈夫だよ、葵。
   聖さんが居るか、ら?


   ……。


   …蓮君、そんなに睨まないでくれよぅ。
   聖さんが悪かったから、ね?


   …。


   …あらら。


   失った信用を取り戻すのは、並大抵じゃないってコトね。


   そんなー…。


   そんな事より。
   葵のこと、お願いね。
   分かっているとは思うけど…


   葵を泣かすような真似はしません。


   ……。


   さぁ、葵。
   おいで。


   うん…。


   …全く。
   …?


   ……。


   せいちゃん、ちゃんといてくれる…?


   当たり前だよ。
   だから、大丈夫大丈夫。


   ……。


   …差別、と言うわけじゃないのだけれど。
   でも、このままはやっぱり良くないわね…。


   ……。








   はい、お着替えお仕舞い。


   にゃ!


   ボタンの掛け違いは…一つだけ、あるわね。


   …にゃ。


   でも日に日に上手になっているわ、蓮。
   この調子よ。


   う!


   …終わった、かにゃー?


   …。


   お、ちゃんと終わってるね。
   うん、なかなか上手に着られているよう、で?


   …。


   …蓮く〜ん。


   蓮、聖も反省しているようだから。
   そんなに避けないであげて?


   …。


   そだよ、蓮。
   ほら、おいでおいで。
   聖さんが抱っこしてあげよう。
   何なら肩車でも可!


   …や。


   蓮君、おいで。
   ほら、ほら。


   ……よーこ。


   む…。


   聖。


   分かってるよぅ。
   …葵。


   …?
   なぁに?


   抱っこ、してあげる。


   え…わ。


   良く、眠れるように。
   ね。


   わぁ。


   ……。


   聖、貴女ね…。


   葵が終わったら蓮にもしてあげる。


   ……。


   蓮は抱っこ、好きでしょや?


   …。


   …蓮、して貰ったら?


   ……。


   はい、お仕舞い。
   楽しかったかにゃ?


   うん。
   ありがとう、せーちゃん。


   いいえ、どういたしまして。
   さ、蓮。
   次は君の番。


   …。


   さぁ、おいで?


   …よーこ。


   蓮、聖の抱っこ好きよね?


   ……。


   蓮、さっきはごめんね。


   …せー。


   うん、おいで。


   ……にゃ。


   おーし。
   ウェルカム、蓮君。


   良かったわね、聖。


   へへ。
   …そーれ。


   にゃーーーー。


   …てか、重くなったなぁ。
   葵もそうだけど。


   ねぇ、聖。


   んー?


   どうする?


   どうするって?


   今夜の話。


   …それは、あれですか。
   お誘いのお言葉として


   ばか。
   子供達の事よ。


   ちび達?


   あんなのを見た後だから。


   …マジで?


   マジで。


   若しかして蓉子さんにも覚えが


   今は子供達の話をしているのだけど。


   …え、と。
   りょーかいです。


   葵は…大丈夫って言うかもしれないけれど。


   …確かに、葵は然う言う子なんだよねぇ。


   聖はどうする?一人で寝る?


   て、なんでそーなるのさ。


   聖は一人でも大丈夫でしょ。
   怖くないのだし。


   でも一人は嫌だよ。


   大人なんだから。


   大人だって嫌なものは嫌だよ。
   蓉子、わざと言ってるでしょ。


   さぁ?


   …蓮君にはちゃんと謝ったのに。


   ちゃんと懲りた?


   懲りた懲りた、本当にごめんなさい。


   …ふふ。
   なら、許してあげるわ。


   やた、これで私も一緒。


   蓮、葵。


   にゃ?


   なぁに、おかーさん。


   今夜は二人とも、私達と一緒よ。


   …!


   おかーさんたちと?


   ええ。
   今夜は一緒に寝ましょうね。


   よーこ!


   あ、こら、いきなり体を伸ばすな…


   にゃーーー!!


   わ…


   あ。


   ととととと…


   聖、危ない!


   にゃ…?


   ……ふん!!


   …聖?


   あーー、吃驚したー…。


   こっちだって吃驚したわよ、もう!


   や、だって蓮君が…。


   蓮。


   よーこよーこ。


   抱っこされているのに、いきなり体を伸ばしてはだめ。
   ましてや、暴れてはだめ。


   …にゃ。


   もしも、今よりもうちっと重たかったら。
   ちとやばかったよ、蓮君。


   ……。


   蓮、聖はちゃんと謝る事が出来るわよ。


   …そこで引き合いに出される私ですか。
   三歳児と、ですか。


   蓮、さぁ。


   ……い。


   うん?


   ちゃい。


   …よしよし、聖さんは怒ってないぞ。
   でももう、やっちゃだめだぞ。


   …う。


   よーし、良い子だー。
   流石私達の子!


   うん。
   それじゃ、聖。


   少し早いけど、今夜はもう寝ようか。


   ええ。








   …と、言ってはみたけれど。


   …。


   流石に、少し早いかなぁ。


   …八時を過ぎたばかりだものね。
   でもたまには良いでしょう?


   …本当なら蓉子さんと良いコトをしてる予定だっただけに。


   たまには早く寝たいもの。


   然うだと思って最近は日が替わるまでにはお仕舞いにしてるじゃん。


   …次の日が休みだと軽く一時は過ぎるじゃない。


   だって休みだもん。
   あーあ、明日も休みなのになぁ。


   子供達の方が大事でしょう?


   然うだけど、比べられない。


   …。


   だって、ベクトルが違う。


   …家族、でしょう?


   然うだけど…営みだって、大事には違いないよ。


   ……江利子、曰く。


   え、なんでここででこちん?


   貴女達は日本人じゃない。


   …は?


   その、夜の生活が。


   ……。


   徐
〈オモムロ〉に言われて…ね。


   …おのれ、でこちん。
   求める回数は多くても私達は日本人だっつーの。


   ……なんか、違う。


   そんなコト言うけど、多いのが悪いってわけじゃないじゃん。
   多い日本人が居たって良いじゃん。


   …やっぱり、違う。


   ねぇ、蓉子。
   私達はずっと、今のままでいようね。


   もう、ばか。


   なんで?
   私、何か悪い事言った?


   そうじゃなくて。


   悪く無いでしょ?
   寧ろ、良い事でしょ?


   …ああ、もう。


   うん。
   やっぱり夫婦の営みは大事。


   …多ければ良いってもんじゃないでしょうが。


   だけど無いのはイケナイと思います。


   ……。


   はーぁ。


   …それより。


   あん?


   子供達、改めてこう見ると大きくなったわね。


   そ?


   然うよ。
   気付かないの?


   いや、確実に重たくなってはいる。
   もう二人いっぺんに、は無理だなぁ。


   でしょう?


   もう三歳だもんね。
   でもまだまだ、ちっこいよ。


   …まぁ、同じ頃の子と比べると。


   ああ、そうじゃないそうじゃない。


   …?


   あくまでもうち基準、です。


   うち基準?


   そうそう、うち基準。
   または佐藤家基準。


   ……。


   ま、良いじゃん。
   ゆっくりと行こうよ。


   …ゆっくり、ね。


   そうそう。
   大体さ、大きくなったらこんなふくふくほっぺじゃなくなっちゃうと思うし。


   …。


   ほら、蓉子。
   ふにふにー。


   …起きちゃうから。


   この感触、蓉子の胸と同じくらいに…いや、でも蓉子の方がやーらか


   …。


   ……うへぇぇ。


   貴女の頬は相変わらず、固いわね。


   ……わざわざ起き上がらなくても。


   誰かさんの口がおしゃべりだから。


   …本当の事なのに。


   …ん?


   …え、と。
   どうせ、大人になってからの時間の方が長いんだしさ。


   …。


   まぁ、なんだ。
   良いじゃん、急いで大きくならなくても、と続く予定だったんです、実は。


   ……。


   あの、蓉子…聞いてます?


   …聖。


   はい、何でしょうか。


   蓮が…


   蓮?
   蓮がな





   …にゃぁぁぁぁ!!





   …ッ
   吃驚した…!


   蓮、蓮?


   にゃ、にゃぅぅぅ…ッ


   て、なんだなんだ、どうした?


   聖、葵を


   え、葵?


   …ひっく、…え…ひっく。


   え、葵?
   なんで?


   屹度、怖い夢を見たんだわ。


   え、夢?


   …せ、ぃちゃん…ひっく。


   え、ああ、よしよし。
   聖ちゃんはここにいるよ、葵。


   …ぅぅ。


   でも、なんで?


   貴女のせいでしょう。
   蓮、大丈夫よ。


   私?


   怖い映画。


   え、あれ?


   そうよ。
   蓮、葵、さぁ、もう大丈夫だから泣かないで。


   ……うーん。


   聖。


   あ、はい、よしよし。
   大丈夫だよ二人とも、私と蓉子が居るからね。


   言葉だけじゃなくて、ちゃんと抱っこしてあげてよ。


   してますって。


   もっとちゃんと。


   いや、ちゃんと…て。


   …う、ぅぅ。


   …ひっく。


   安心出来ないと眠れないから。
   分かるでしょう?


   …うん、分かる。


   せぇ……。


   …大丈夫だよ、蓮。
   怖いの、もう居ないだろ?


   …。


   ほら、ここには私と蓉子、それから葵しか居ない。


   …よぉ、こ。


   なぁに…?


   よぉこ…!


   うん…いいこ、いいこ。


   …く、ひっく。


   葵。


   せぃちゃ、っく…。


   ほら、葵。
   ここに居るのは葵の大好きな蓉子さんと聖ちゃんだから。


   …。


   …もう、怖くないでしょや?


   …う、ん。


   ちゃんと、つかまって。
   そうすりゃもう、怖くなんてない。


   …せぇちゃん。


   うん。


   …。


   …。


   ……さぁ、もう大丈夫。


   もう、怖い夢はどっかに行っちゃったから…ね。


   ……にゃ。


   …ん。


   ……。


   ……。


   ……。


   ……。


   ……大丈夫、かな。


   …まだ、分からないけれど。


   それってまた泣いて起きるってコト…?


   …多分、だけれど。


   …多分、ね。


   ……。


   ま、良いや。


   良くないでしょう。


   いや、泣いて起きるのが良いってコトじゃなくて。


   じゃあ、何よ。


   何て言うか…ま、そん時はそん時ってコト。


   …その時、ね。


   そんなわけだから。
   眠れなくても、寝ておこうかな。


   ……まだ早いんじゃなかったのかしら?


   何となく、長い夜になりそうだから、さ。


   …。


   ……多分、だけど。


   ……ええ。


   じゃ、おやすみ。
   蓉子。


   …おやすみなさい、聖。















   ………………………にゃぁぁぁぁぁぁ…ッ!!!





   …よしよし。


   ふぇ…。


   葵、大丈夫、大丈夫よ。
   お母さんが傍に居るわ。


   ……ぅぅ。


   蓮、大丈夫、大丈夫。
   ほら、聖さんだよ、怖くないよ。


   ……。


   怖くない、怖くない。
   ね…?


   せ…ぇ…。


   おかぁ…さん…。


   うん。
   大丈夫、大丈夫。


   …。


   …。


   ……はぁ。


   聖。


   …ごめん。


   …。


   …蓉子?
   怒った…?


   ねぇ、聖。


   うん?


   しっかりと、抱いていてあげて。


   あ、うん。


   …蓮、葵。


   …。


   …。


   ずっと、こうしているから。
   大丈夫、大丈夫…。


   ……。


   ……。


   ……蓉子。


   ……。


   あのさ、蓉子。


   …人の温もり、は。


   …。


   何よりも落ち着いて…何よりも安心、するわ。


   ……うん、よく知ってる。


   …いいこ、いいこ。


   ……ねぇ、蓉子。


   なぁに?


   蓉子は…本当は、どうだったの?


   …。


   やっぱりちび達のように…。


   …幼い頃。


   ……。


   やっぱりテレビで、だったのだけれど…ね。


   …うん。


   そういうのってどうして夢で見るのかしら…。


   ……。


   しかも自分に置き換えられて…。


   …小さな蓉子は。
   その時、どうしたの…?


   ……私、は。


   やっぱりお義母さんに…?


   ……ううん。


   ……一人、で?


   その時の私は今の蓮と葵よりももう少し大きかったから。
   お布団を頭まで被って…ね。


   ……。


   出来るだけ、考えないようにするの。
   夢は夢だから、て。


   ……。


   でもまた見てしまって。
   その度、泣いて起きて。


   ……あの、さ。


   ん…?


   ……。


   ……なぁに?


   いや、何と言うか…。


   ……。


   あー……ちび達、大丈夫かな。


   …多分。


   若しもまた起きちゃったら。
   そん時はそん時かな。


   …また?


   うん、また。


   ため息、ついたくせに?


   …う。


   ふふ、本当にいい加減な人ね?


   や、てかさ。
   抱っこ、してれば良いかな、と。


   …ええ。
   していてあげて…。


   ん……。


   ……いつも。


   ……蓉子。


   貰ってるから…貴女に。


   ………それは私の台詞だよ。


   …。


   蓉子、手を繋ごっか。


   …子供達が真ん中に居るのに。
   どうやって?


   ちび達には悪いけれど。


   …。


   こう、やって。


   …重たくないかしら。


   だからなるべく下の方で。


   ……ん。


   …今度こそ。


   ええ…。


   おやすみ、二人とも.…。















   …く。


   …ひっく。


   ……こわい。


   …こわいよ。


   …。


   ……こわくない。


   こわくない…こわくな…い。


   ひっく…。


   ………。















   …こ。


   …。


   …ようこ。


   ……。


   蓉子。


   …聖。


   大丈夫…?


   …私。


   涙。


   え…。


   ……大丈夫?


   ……ん、大丈夫よ。


   ごめん。


   ?


   テレビ、私がつけなければ…ちび達も、蓉子も…。


   …ねぇ、だから言ったでしょう?


   ……うん。


   でもわざとじゃなかったのだから。


   でも、ごめん。


   …それに。


   ……。


   別に怖い夢を見たわけじゃないから。


   …え。


   一寸、小さい頃の夢を見ただけ。


   小さい頃?


   怖い夢を見て、泣いている夢。


   ……。


   思い出しちゃった。


   …蓉子。


   平気だから、心配しないで。
   私よりも子供達を…


   ……。


   聖…。


   …怖い夢を見たら。


   …。


   蓮も、葵も 蓉子も。
   私が何とかするから。


   …何とか?


   絶対、するから。


   …くす。


   …え。


   もう、何とかって何よ。


   何とかは何とかだよ。


   出来なくても、私が夢の中に入って、とか言えば良いのに。


   だってそんなの、出来ないもの。


   けど、言われた本人がそう強く思っていれば、本当になるかもしれないわ。
   特に子供達は。


   けど、それだと


   良いのよ。
   聖の言葉はそれだけの力があるのだから。


   ……。


   聖。


   …なに。


   あと、貴女の温もりがあれば平気。
   泣いて起きたとしても。


   ……。


   ね?


   …もう、蓉子は。


   だって本当だもの。


   ……それは私の台詞だっつーのにさぁ。


   それだけ、貴女の存在が大きいのよ。


   …。


   ねぇ?


   ……蓉子も。


   …。


   蓉子も大きな存在だよ。
   私にとっても、ちび達にとっても。


   …ん。


   大丈夫?


   …ん、大丈夫。


   子供達も大分落ち着いたみたい。
   良く寝てるよ。


   そうね…もう、大丈夫かも。


   だと、良いなぁ。


   寝不足?


   一日ぐらい、どうってコトない。
   可愛い子供達ならば。


   …今日だけ、とは、限らないわよ?


   それにほら、赤ちゃんだった頃の方がもっと大変だったし?


   ふふ、そうね。


   あの時はさ、泣き声が頭の中でずっと響いてるようで。


   そう、そうだった。


   蓉子が居なかったら、私、おかしくなってたかも知れない。


   それは…私もだわ。


   それに比べれば、どうってコトないさ。


   …ええ。


   ……三歳、かぁ。


   ……あっと言う間、だったわね。


   うん…。


   ……。


   …寝ようか。


   …そうね。


   手、繋ぐ…?


   ……うん。















   ……ぅぅ。


   よ、蓮君。


   …?


   怖い夢、見てるかな?


   ……。


   そんな夢なんかポイして、聖さんと遊ぼう。
   ね?


   せー?


   おいで、肩車してあげよう。


   !


   さぁ、蓮。
   いや、私から行けば良いね。


   にゃ…?


   そーれ、高いたかーーい!


   にゃーーー!


   ははは。
   蓮は高いトコが好きだもんね。


   にゃ!


   私の事も、好きかな?


   …。


   それとも、


   せー!


   わ…。


   せーー!


   …うん、そっか。
   見てごらん、蓮。


   …にゃ?


   向こう。


   …。


   ほら、見えるだろう?








   …く、ひっく。


   葵。


   …?


   葵、こっちよ。


   …おかーさん?


   おいで、葵。
   もう、大丈夫。


   おかーさん!


   …。


   …おかーさ


   よいしょ、と。


   あ。


   聖のようには、出来ないけど。
   ね?


   わぁぁ。


   ね、葵。
   聖の方が良かった?


   ううん、おかーさんでもいい。


   でも、ね。


   おかーさん。


   うん?


   だいすき。


   …。


   おかーさん、だいすき。


   …葵。


   ふふ。


   ねぇ、葵。
   向こうを見て。


   え、どこ…?


   向こう。
   ね、見えるでしょう?










   あ

   な

   た

   の

   だ

   い

   す

   き

   な

   ひ

   と

   た

   ち

   が 




















   ・


   ・








   …。


   …ううーん。


   せー。


   …?!


   せー。


   な、なんだなんだ。


   …。


   なんだ蓮君か。
   と言うかもちっと寝させて…


   せー!


   わ。


   せー。


   分かった、分かったから。
   ぴしぴしは止めれって。


   にゃ。


   全く…?


   …おはよう、聖。


   あ、蓉子。


   …葵に、ね。


   せーちゃん、おはよう!


   ん、ああ、おはよう。
   二人とも、早いねぇ。


   にゃ。


   うん!


   ……今、何時?


   ……六時。


   …そか。


   あお。


   おはよ、れん。


   ……もう、無理っぽいかな。


   …うん?


   せー、どっかどっか。


   おかーさん、きょうもやすみだよね?


   ………寝なおす、の。


   ……ええ。










   ・










   さーて。
   そろそろ寝る支度をする時間ですよー。
   今日もいっぱい遊んで、主に私達が、くたくたですねーー。


   …。


   はーい。


   てなわけで。
   トイレ、一人で行けるかにゃ?


   にゃ。


   うん、だいじょーぶだよ。


   ん〜〜本当かな〜?


   へーき。


   だって、おかーさんがいるもん。


   …うん?


   せー。


   なんだい、蓮君。
   あ、蓮君は一人では…


   せー、いる。


   そーかそーか。
   仕方無いなぁ、それじゃ一緒に


   うー!


   …て、あれ?


   いらにゃい。


   …え、と。


   せーちゃんと、おかーさん。
   いつもいっしょだもん。


   にゃ!


   ………。


   聖、どうしたの?


   …蓉子。
   どうしよう、ちび達の言っているコトがよく分からないんだけど。


   うん?


   よーこ、いっしょ。


   ね、おかーさん。


   …トイレ?


   いや、一人で行けるらしい。


   なら、良いじゃない。


   そうなんだけど。


   あお。


   うん。
   いこう、れん。


   て、本当に大丈夫かー?


   ん!


   うん!


   …って言ってるわりには二人なんだけど。


   まぁ、良いんじゃない?


   いや、さぁ。
   夜のトイレ、あんなに怖がっていたのに。
   昨日の今日だよ?


   然うねぇ。


   分かんないなぁ。
   蓉子、分かる?


   私も分からないわね。


   ……ま、いっか?


   ええ、良いじゃない。


   今夜からまた二人きりだし。


   …は?


   だって大丈夫でしょ、もう。


   ……それは分からないわよ。


   いやいや、あの様子だともう大丈夫。
   大体、あの二人は一人になる事が無いから。


   聖。


   ね、蓉子。
   今夜こそ、ね?
   ね?


   明日は仕事。
   それに今日はもう疲れてるから。


   だから今夜も早く寝よう。
   うん!


   私は疲れてるの。


   だから無理しないから。
   ね?


   あ、こら。


   蓉子、蓉子ー。


   ああ、もう。
   鬱陶しいわね。


   ……ね、蓉子。


   離れてよ、もう。


   昨日の分まで、頑張るからね…?


   …ッ!
   もう、ばか!


   …大丈夫、ちゃんと寝かせてあげるから。
   熟睡をお約束します。


   ばかなコト、言ってないで。


   …ふふふ。


   聖、今夜は


   …。


   …。


   お?


   …あ。


   ……。


   せーちゃんと、おかーさんもいっしょ?


   うん、そうだよ。
   もうね、ずっと一緒なんだ。
   蓮と葵はトイレ、もう済んだのかな?


   …。


   うん。


   そっか。
   んじゃ、寝ようか。
   今夜は二人で大丈夫かな?


   う


   よーこ。


   …あら?


   よーこ。


   蓮、今日も一緒が良いの?


   …。


   れん、もうだいじょうぶだって


   て、葵も言ってる事だし。


   聖。


   いや、でも。


   仕方無いじゃない。


   て、蓉子さん、甘やかすのは良くないと思います!


   そうかしら。


   そうだよ。
   蓮君、トイレにも行けたし寝るのも大丈夫だろ?


   …。


   ね、蓮君!


   …。


   聖、無理強いは駄目よ。


   蓮君、ここは素直に頷いて!
   お願いだから!!


   …。