−親、二人。(夫婦)
……。
聖。
…んお?
皺に眉間。
お、そいつはいけない。
伸ばしておかないと。
珍しいコトもあるものね?
はい、お茶。
うん、これのせい。
でもってありがとう。
これ?
ここ。
…………また?
最近、多いよね。
…そうねぇ。
今回は恋人の頃のように戻りたかったんだって。
……。
それでこのザマ。
……聖。
うん?
隣、良い?
勿論。
さ、おいでおいで。
…。
恋人同士、か。
…結婚と子育ては。
現実だから。
そうだねぇ。
良い事ばかりじゃない…
…。
かも知れないけど、私は良い事づくめ。
まぁ、強いて言えば営みの時間が少なくなったくらい?
…貴女の場合は、ね。
蓉子は?
私は……うーん。
後悔?
は、してないけど。
うん、なら良いんだ。
…蓮、良く寝てるわね。
ぐっすり、だよ。
しかも涎つき。
あらあら。
何だかお気に入りらしくてさぁ。
おかげで重たくてしょーがないよ。
でも嫌じゃないんでしょう?
うん、まぁね。
そういえばお腹の上で寝てること、多いわね。
そんなに肉、付いたかなぁ。
付いていないと思うけど。
思う、なんだ。
…腹筋、しようかな。
ふふ。
大丈夫、貴女のお腹は学生の頃と変わってない。
寧ろ、変わったのは私の方。
え、どこが?
…まぁ、ね。
妊娠するとなかなか元には
蓉子のお腹のライン、綺麗なままだよ。
思わず頬ずりしたくなるもん。
…ありがとう。
葵は?
こっち。
だから蓉子の膝の上に乗っけてあげて。
起きてしまうわよ。
だいじょーぶだいじょーぶ、葵も良く寝てるから。
ほい。
…はい。
ほら、起きなかった。
…良く寝てるわね。
うん、寝てる。
かわいい。
…うん。
−たけのこごはん。(佐藤家)
筍を頂きました。
…。
誰から貰ったの?
おばあちゃん。
…。
…お母さんの方の?
そうそう。
で、だ。
筍ごはん。
私も筍ごはんが良いな。
やっぱり?
んじゃ
蓉子の。
…私は聖ちゃんのでも良いけれど。
蓮君。
蓉子の。
蓉子は忙しい。
それは君も分かってるよね。
蓉子の。
聖ちゃん、私は聖ちゃんの筍ごはんも好きだよ。
ありがとう、葵。
本当可愛いな。
あ、う、うん…。
へへへ。
蓉子の筍ごはんが良い。
…蓮君。
蓉子さんは私の作った筍ごはんが好きなの、ご存じない?
蓉子の筍ごはんの方が美味しい。
でも今回は私が
蓉子のが良い。
蓮、我侭言わないで。
葵だって蓉子の好きだろう。
…好き、だけど。
だから。
けどね蓮君、筍だってそうそう日持ちするもんじゃないから。
痛んだり腐ったりなんかしたら、折角下さったお義母さんに悪いわけよ。
蓉子が帰ってきたら聞く。
いや、出来れば今晩の夕飯にと思ったわけで。
蓉子のが良い。
だからだな、
聖だってそう思ってるだろ。
ま、また痛いところをつくちびだな…。
…。
蓮、今回は聖ちゃんの筍ごはんで我慢しようよ。
我慢?!
あ。
我慢なの、葵…!
あ、いや、悪い意味じゃなくて…。
…良いんだ、良いんだ、どうせ聖さん特製筍ご飯は人気無いですよーだ。
ち、違うの、聖ちゃん。
ふーんだ。
…子供。
もー良いもん、作らないもん。
今日のご飯はただの白いごはんで決定だもん。
あ、ああ…。
…面倒な親だな。
ただいま。
…おかえり。
おかえりなさい、お母さん。
はい、ただいま。
…。
…え、と。
…聖は?
居ないの?
…。
…それが。
…?
聖ならあそこにいる。
…あそこ?
キッチン?
…うん。
お夕飯?
…本当だったらもう出来てる筈だったんだけど。
…何かあったの?
大したことじゃない。
……葵?
それがね、お母さん…。
……。
聖。
…おかえり。
早かったね…。
ええ、まぁね。
それで、いじけてるんだって?
……いじけてなんかないもん。
いじけてるのね?
……。
筍、母から送られてきたんだってね。
…うん。
筍ごはん?
……いやだって言われた。
蓮に?
…葵には我慢してって言われた。
それは蓮を説得させる為にやむなく言ったんでしょう?
葵自身はそんなこと、全く思ってないわ。
…でも。
葵は嘘を吐くような子じゃない。
分かってるでしょう?
……うん。
蓮だってそうよ。
本当に嫌なわけ、無いじゃない。
でも…。
あの子は貴女のごはんも好きよ。
私が言うんだから間違いないわ。
…。
ね、聖。
……よーこー。
………。
なんかへこんだんだよー…。
……はいはい。
…うー。
聖、私は貴女の筍ごはん、大好きだから。
…蓉子ぉ。
よしよし。
えへへ。
…単純。
…蓮。
大体、蓮が我侭を言うから…。
……ふん。
それで、お夕飯はどうしたの?
…。
聖…?
……。
まさか、作ってないの?
…うん。
……。
蓉子、お腹空いた。
…あの、私も。
………聖。
だって、だって…。
…ああ、もう。
ごはんは炊けてるの?
…。
…まさか、聖。
……スイッチ、入れ忘れてました。
……。
蓉子。
…お母さん。
……はぁ。
早く帰ってきて良かったと言うべきか…。
……ごめんなさい。
お米は研いであるのよね?
…研いで、釜の中に。
そう。
蓮、葵、もう少し我慢出来る?
…ん。
うん。
うん。
聖、筍の下拵えはしてある?
…一応。
作るつもりだったから…。
そう。
なら作りましょうか。
え…?
筍ごはん。
材料はあるのでしょう?
ある、けど。
じゃあ作りましょう。
…。
だって私、聖の筍ごはんがすごく食べたいんですもの。
…!
ね?
うん!
蓮、葵、今日は聖の筍ごはんよ。
良いわよね?
『うん』
お、はもった。
でも蓮君、本当に私ので良いのかね?
…。
…蓮。
…お腹空いたから、この際何でもいい。
なんだとぅ。
…もう、蓮は。
たく、素直じゃないヤツだなぁ。
誰かに良く似てるじゃない。
蓉子?
貴女。
ええ、私は素直だよ。
はいはい、そうね。
本当なのに。
ふふ。
じゃあ聖、子供達がお腹を空かせてるから。
なるべく早く、ね?
はーい!
−そして、繋がる。
はじめまして。ごきげんよう。
私は佐藤……いいえ、名前は敢えて言いません。ごめんなさい。
何故かって……今はただ、私が佐藤家の人間だという事だけ知って貰えればそれで良いと思うから。
名が嫌いなわけではありません。逆です。だって母達が私にくれた、初めての贈り物〈レガーロ〉ですから。
だから…そう、今日は私の家族について少しだけ話そうと思います。
私には母が二人居ます。
一人は口数が少なく、たまに話しても少しぶっきらぼうな話し方をします。
だけど不機嫌なわけではなくて、それが母の話し方なんです。
近寄りがたいとか感じが悪いとか、言われる事もありますが…でも、ただ不器用なだけなんです。
人と付き合うのがへたと言うか…人が嫌いなわけでは無くて、苦手と言うのかな。
けどもう一人の母曰く、面倒くさがりなんですって。
だから用が無い時は出来るだけ話したがらないそう。
折角良い声をしているのに勿体無いなぁ、と思うんですけど…仕方ないのかな。
もう一人の母は…話さない母に代わって、良く話します。
お喋りなわけでは無いのですが…ほら、片方が無口ですから。
ご飯を食べている時、私はお喋りをするんですけど、相槌を返してくれるのは決まってもう一人の母の方です。
私は二人に喋っているのに、返って来るのはもう一人の母の声だけ。
いつか、今よりももっと子供の時、それが淋しくてもう一人の母に話したことがあります。
そしたら…ちゃんと聞いているし、寧ろ、私の話なんかよりも良く聞いてるわ、でもね下手糞なのよ…と、柔らかく微笑みながら教えてくれました。
その時、思ったんです。
二人の母はずっと一緒にいたから、それこそ生まれた時からずぅっと一緒だったから。
お互いの事を凄く分かっていて…良いなぁ、て。
…少し、話がそれましたね。
もう一人の母はとても優しい母です。
それからご飯がとても美味しい!
私はもう一人の母の作るご飯が大好きです。特にお雛祭りやこどもの日に作るちらし寿司。
けど無口な母は祖母には敵わないって、いつも、言います。
そのわりにはおかわりしているんですけどね。家族の中で一番、食べているんですよ。
優しい母も分かっているからたまに、じゃあ食べなくても良いわよ、と言って意地悪したり。
母達は基本、喧嘩らしい喧嘩はしません。
昔はしたそうですけど、少なくとも私は見たこと…聞いたことがないんです。
母二人の他に、祖母が二人、それから叔母が一人います。
二人の祖母は二人の母に顔が良く似ているそうです。と言うより、そっくりだそうです。
無口な母はあまり似てないと言うんですけど、他の人から言わせればこんなに似ている親子はいない、とか。
ちなみに私は二人の母を足して2で割ったような顔をしているそうです。だから言い方を変えれば二人の祖母を足して2で割ったような…とも言えるのかな。
そうそう、二人の祖母は歳を取った今でもそれを感じさせない容貌だそうですよ。
アメリカ人(祖母のお友達曰く・笑)な祖母は若い頃は黙っていればモデルさんみたいだったんだって。見てみたかったなぁ。
それから今でも子供のよう、ともう一人の祖母は言います。
確かに凄く面白いおばあちゃんです。あ、私は祖母の事はおばあちゃんって呼んでます。母の事はお母さんです。
もう一人の祖母は若い頃は緑の黒髪って比喩されるくらいに髪の毛が綺麗で顔も美しかったそうです。
勿論今でも!ってアメリカ人のようなおばあちゃんは言ってますけど。(笑)
この人がさっき言った無口な母曰く、優しい母が敵わないちらし寿司を作る祖母です。
確かに祖母の作るちらし寿司はすっごく美味しいです。
けど私は母の作るちらし寿司も負けてないと思うんだけどな…ねぇ、お母さん?
でもおばあちゃんは…祖母はたまに、どこか淋しそうにしているように思える時があります。いつもとても優しいけれど…でもどこか、淋しそうで。
そんな時、私は何も言えなくて、だからおばあちゃんの手に触れて、握り締めるんです。
何も出来ないけれど、せめて、せめて、淋しく思わなくても良いように。私はアメリカ人のようなおばあちゃんじゃ無いから駄目かもしれないけど…少しだけでも。
二人の祖母は学生の時、リリアンで出逢って、色々あったけれど結ばれたそうです。
今でもとても仲良しで、らぶらぶです。無口な母が良い歳してって呆れてますけど、私は良いなぁ、と思うんです。
だって幾つになっても仲良しさんなのって良いですよね。私もいつか、そんな人に出逢えたら良いなぁ。
それから母の妹である叔母のこと。
日本にあまり居ません。落ち着きが無い、てみんなに言われてます。ふらふらしているのはアメリカ人の祖母譲り、とも。
でも私の知らないコトをいっぱい知っていて、叔母のお話は聞いていて凄く楽しいです。
そうそう、色んな国の言葉も話せるんですよ。凄いなぁ。
将来の夢は宇宙に行く事で、若しも宇宙に行ったらとりあえず月の石を拾ってきてくれるんだって。
でもこれは叔母と私だけの秘密なので言わないで下さいね。
叔母さんと呼ぶと微妙な声をされるので、名前で呼んでます。
そして、私。
私はひとりっこです。
本当は上に一人、いたみたいなのだけれど……産まれる前にお母さんのお腹の中で死んでしまったそうです。
その時、お母さんはとてもとても悲しんで…もう、無口なお母さんと一緒に居られなくなるくらいに、傷付いて。
お母さんを支えてくれたのは二人のおばあちゃん、特にアメリカ人のようなおばあちゃんだったそうです。
無口なお母さんは……優しいお母さんの事をとても大事に想っていて愛していた筈なのに…不器用で、優しくするのも上手に出来なくて。
二人は本当に駄目になる……ところまでいったらしくて。
若しも二人が分かれてしまっていたら…私は此処には居ませんでした。
私はお母さん達が好きです、大好きです。
だから本当に良かった。私が此処に居る事よりも、お母さん達が分かれなくて本当に良かった。
だってお母さん達は……多分、互いが居なかったら、生きていけなそうな感じがするんです。
弱いとかじゃなくて…何て言うのかな…そう。
おばあちゃんの親友、且つ、悪友の人が言っていました。
あの子達は欠片なのだと。二つで一つ、なのだと。
私は欠片が合わさった事で生まれたのだと。
……仮令、どんな躰であろうとも。
私はお母さん、おばあちゃん、それから叔母さんが大好きです。
あと、あと、お母さんの友達、おばあちゃんの友達、叔母さんの友達、みんな大好きです。
だから。
私はみんなが出逢ったリリアンに行きたかった。
とても、とても、行ってみたかった。
初等部、中等部、そして、高等部。
薔薇さま、山百合会、薔薇の館…かつてのお母さんやおばあちゃんたちが居たそこに、私も立ってみたかった。
屹度、叶うことは無いけれど……。
それでも私は生まれてきて…生まれることが出来て……。
私の家族。
大事な家族。
私はこの家の子に生まれて良かった。
私はみんなの顔を見るコトが出来ないけれど…感じることは出来るよ。
私はお母さん達に似ているし、おばあちゃんたちにも似てる、勿論叔母さん…ひぃさんにも。
私はみんなに逢えてよかった。
みんな、みんな、どうかずっと仕合わせでいて。
ずっと、ずっと…。
−ネタにしすぎ。(夫婦)
お風呂、沸いたから入ってしまって。
おー。
子供達も。
オーライ。
そうそう。
今日は菖蒲、入ってるから。
はいな。
着替えは……なに。
なに、と言うと?
何、にやにやしてるの。
してる?
してる。
意識はしてないよ?
そっちの方も大抵、タチが悪い。
そ?
そう。
で?
蓉子さんも一緒に。
うちのお風呂はそんなに広くありません。
案外、いけるもんだよ。
ちび達もまだ、ちっちゃいし。
と言うかどうして懲りないの。
私が懲りてしまったら、詰まらないじゃん?
つまるつまらないの問題?
けどつまらないよ、屹度。
…。
たまには、さ?
聖って。
うん。
一緒にお風呂に入るの、本当に好きよね。
そらぁ、ね。
お風呂ぐらい、一人でゆっくり入りたいと思わない?
思うも何も、一緒に入れる方がレアですから。
レアって。
私は蓉子と一緒に、ゆっくり寛ぎたい。
子供達が居る時点で無理な話ね。
うん、そうなんだ。
で?
未だにやにやしてるけど。
最近はちび達セットでも全然気にしないんだ、私。
…。
さぁ、一緒に入ろ?
ちび達も屹度、その方が嬉しい。
…寛げないわよ。
それなりには寛げる、し、二人の方がある意味、楽。
……。
さ、蓉子。
入ろう?
……。
あれ?
先、行ってなさい。
と、言いますと。
確かに二人一遍に入れるのは大変なのよね。
と、言う事は?
私が葵と一緒に入る。
聖は蓮と入って。
いや、それじゃ話が違います。
違わない。
私は蓉子と入りたいんだよ。
狭いから、いや。
大丈夫だって。
何を根拠に。
蓉子が思ってる程、狭くない。
だから、何を根拠に。
子供が生まれる前は良く一緒に入った。
…良く、でも無いわよ。
ちび達も未だ、ちっこい。
だから大丈夫。
……全然、根拠になって無いわ。
蓉子。
何。
真面目な話をしよう。
…真面目?
たかがお風呂に入るぐらいで?
たかが風呂、されど風呂。
…。
私はもっと、蓉子と触れ合いたい。
…今更?
触れ合うのに、今更も何も、無い。
……真面目な顔で。
…入ろう。
一緒に。
……今日は何を言っても無駄なのね?
うん。
…。
蓉子。
…決めた方が良いわね。
ん?
お風呂の事。
主に一緒に入る回数について。
と、言うと。
定期的に入らないと。
貴女、拗ねるんですもの。
今みたいに。
拗ねてないけど。
でも、拗ねてる。
そっかな。
そうよ。
じゃ、そうだね。
全く。
親になっても、聖は聖ね。
そうだよ。
蓉子も蓉子だよ。
…成長してないって事?
違う。
蓉子はちび達の良いお母さんでもあるけど、私の可愛い奥さんでもあるってコト。
…。
私のかわいい蓉子。
……はいはい、ありがとう。
よし、そういうわけだから一緒に入るよね?
…先に行ってなさい。
だから、
だから、4人分の着替えが必要でしょう?
…!
うん!
−同レヴェル。(佐藤家)
にゃー。
…。
にゃー、にゃー♪
…ふむ。
にゃー…
…えい。
に゛ゃッ?
あらら蓮君、これはやり直しだしねぇ。
…。
ん?
うぅ。
ごめんね?
……。
お、やるかやるか。
ばかせー!
あはは、きたなきたな。
にゃぁ!
ははは。
…聖。
んー?
人格形成に多大なる影響を及ぼすような事は止めて。
だって面白いんだもん。
蓮は玩具じゃないの。
うん、私達の大事な子供だもんね。
大丈夫、大丈夫、これぐらい平気だって。
止めて。
蓉子さんはお堅いなぁ。
…そう。
聞いてくれないの…そう。
あ、えと。
遊んでるだけだよね、蓮君?
ね?
にゃー!
……よいしょ、よいしょ。
お、葵?
こわれちゃったから、なおすの。
うん、そうだね。
ほら、蓮君。
蓮君もお城、直さなくてお良いのかな?
…ばかせー。
はいはい、ちゃんとお手伝いするから、ね?
や。
あり?
よーこ。
うん、直しましょうね。
あらら。
ふん。
ほら、見なさい。
蓮君、聖さんも入れてよー。
ね?
…。
…あおいー。
せーちゃん、せーちゃんはこっちやって。
おー、まかせろー!
全く。
誰が子供なんだか分からないわ。
−Mi corazón.(佐藤家)
ふむ。
今日も可愛い寝顔ですねぇ…。
…すぴー。
…すぅ。
ふふ。
ほんと、かーわいーなー…。
…にゃ。
……んん。
へへ、やーらかいなぁ。
…聖。
ん?
可愛いのは分かるけど、起こさないでよ。
うん、分かってます。
…。
ん、なに?
顔、緩みっぱなしね。
相変わらず。
だって、さぁ。
すっごく、かわいいだもん。
はいはい。
蓉子さんの可愛いもの好きな気持ち、今なら分かるわぁ。
…一寸、違う気もするんだけど。
でも、可愛がるのは悪いことじゃないし。
ふふふ。
…正直、少し予想外だった。
うん?
貴女がそんなになるなんて。
そう?
…特に蓮に対して。
……あー。
……いつか、言っていたから。
…心配、してた?
……ええ。
あー……まぁ、そうだよねぇ。
……ごめんなさいね。
いや、良いよ。
実際、自分でもこうなるとは思わなかったから…
…にゃぁぁ。
…お、と。
……ぅ。
…よしよし。
…。
蓉子さんもこっちにおいでよ。
…私?
そう、向かい側。
……こっち?
そうそう。
で、横になってごらん?
……こう、かしら?
うん、ばっちし。
…。
…まぁ、ね。
最初は結構、複雑だった。
…。
生まれた時、目元が似てるって言われてもいまいちピンとこなかったし。
ああ、似てるなぁと思うようになったの、ぶっちゃけると、つい最近なんだよねぇ。
…最近?
うん。
…。
葵は凄く可愛いと思った。
だって蓉子に似てるんだもの。
思わない筈が無いんだ。
…うん。
でも不思議なコトにさ、自分に似てる蓮も気付けば可愛いと思ってた。
なんでかは、自分でも良く分かんないんだよね。
…。
ねぇ、蓉子。
蓉子は自分に似てる葵、可愛いと思ってる?
…勿論。
なんで?
…自分の子を可愛いと思うのに。
特別な理由なんて必要無いと思うわ。
…。
私はそう思う。
…そっか。
そんなもんなんだ…。
…。
…かわいいなぁ。
……聖。
んー?
…ううん、何でも無い。
何、気になるよ。
何でも無いもの。
気になるよ。
……本当に何でも無いんだもの。
よーこ。
…ただ。
…。
貴女と一緒に歩めて、歩める事が出来て良かった…て、思っただけだから。
……。
…ね、何でも無かったでしょう?
……ああ。
……。
私、蓉子さんにべた惚れです。
…知ってる。
ああ、蓉子さんも私にべた惚れだったら良いのに。
…ばかね?
…へへ。
お…。
……。
…蓉子、蓉子。
うん?
蓮が…。
蓮が、なぁに?
私の指を…。
…あらあら。
……たまんないなぁ。
そろそろ、目を覚ますかも。
お腹を空かせて?
ええ。
…凝視、しないでよ?
…戻ってくるのはいつになるんだろうなぁ。
こら。
…だって。
貴女だけの、じゃないのよ。
分かってるよー…。
……仕方の無い“お母さん”ね。
−おさんぽびより。(白薔薇姉妹+芙蓉の片割れ)
や。
…。
ふむ。 やっぱり、ごきげんよう、のが良いかな。
…お姉さま。
ごきげんよう、志摩子。 久しぶり。
…お久しぶりです。
元気だった?
…はい。 あの、お姉さまは…。
見たとーり。
…元気そうで、何よりです。
志摩子も。
あ、あの、わざわざ来て下さったのですか?
んにゃ、散歩道の途中。 ほら、今日ってば天気が良いからね?
……。
て、流石に無理があるかなぁ。
でもそう言うことにしておいてよ。
…はい。
あー…。
…あの。
ん?
その赤ちゃんは…。
ああ、このちび? 私と蓉子の子。 ちなみに三月生まれ。
…ああ。
知らせてなかったけど、知ってた?
…話だけは。
でこちん?
……はい。
そっか。
あの、折角なので寄っていきませんか?
あー、どうしようかなぁ。 蓉子には言ってきてないんだよなー。
…。
うん、今回は止めとく。 蓉子ともう一人の子が待ってるから。
…双子、でしたね。
うん、そうなんだ。 それぞれ、私と蓉子に似ているんだよ。
…お姉さまが抱いていらっしゃる子は
私に似てる方。 今は一寸、おねむみたいなんだけどね。
…お名前は何と言うのですか?
そこで、だ。
…はい?
志摩子は芙蓉って花、知ってる?
…はい、知ってます。
んじゃ、芙蓉と言う名の花がふたつ、あるのは?
…確か蓮の花を昔は芙蓉と呼んだのですよね。
お、知ってるね。 じゃ、もう一つは?
別名で木芙蓉と呼ばれている花です。 確か、アオイ科…
さて、そこで問題です。 この子はどっちでしょう?
え…。
蓮、と、葵。 どっちだと思う?
……。
正解したらもれなく、佐藤家にご招待! 勿論、お食事つき!
……。
適当で良いよ。 正解しなくても、今度暇だったらうちに来れば良いから。 住所、知ってるよね、確か。
……れん。
うん?
蓮、だと思います。
それは、どうして?
…何となく、蓉子さまだったらそう名付けるような気がしたので。
……。
……はずれ、ですか?
いや、当たり。 すごいね?
……。
蓮君、良かったねぇ。
蓮、と、葵……芙蓉の、子。
うん、そうなんだ。
…お姉さまが考えたのですか?
うん。
……お姉さまらしいですね。
そっかな?
はい。 お姉さまは蓉子さまを心から愛していらっしゃいますから。
やだなぁ、志摩子。 そんなに真面目な顔で言われると背中がむずがゆくなっちゃうじゃんかー。
けれど、間違いではないですよね。
ま、そうなんだけどね。 て、やだなぁ、照れるなぁ。
………お姉さま。
んー?
お姉さまは
志摩子。
……。
しあわせ?
……。
志摩子は。
……私は
知らせて欲しかったなんて、言わない。
…。
知らせてくれなくても、志摩子が選んだ道なら。 私はそれで良いと思うから。
……。
だけど。 後悔をしているようなら、
して、いません。
…。
後悔は。
…そう。 なら、良いんだ。
……。
志摩子、今日は良い天気だね。 うっかりいつもの散歩道から外れてしまうくらいに。
…はい、本当に。
まぁ、ぶっちゃけちゃえば、さ。
…?
でこちん、なのは…アレなんだけどね。
……。
今、そっちはお昼寝中?
…はい。
そっか。 でもだからっていつまでも離れてるわけにはいかないね。
あの、お姉さま。
そろそろ、行くよ。
私の、私達の…
蓉子と聞くよ。 今度。
…あ。
蓉子も屹度、知りたいと思うから。 私が先に知っちゃったら…なんか、ね。
…夫婦だから、ですか?
うん、そうかも。
…。
だから今度、おいで。 でこちん、みたいに。
…江利子さまみたい、に。
あいつ、連絡無しで来やがるからね。 しかもご飯まで当たり前のように食べていきやがるんだよ。
……江利子さまらしい、ですね。
全く、厄介なヤツだ。
お姉さま。
ん。
お会い出来て、嬉しかったです。
そんな大層なもんじゃないさ。 たまたま、だからね。
たまたま、ですか。
そ、たまたま。
…それでも、嬉しかったです。
そっか。
ま、志摩子がそう言うならそれでいっか。
…。
じゃ、散歩に戻るよ。 ごきげんよう、志摩子。
はい。 ごきげんよう、お姉さま。
と?
…?
ほらほら。
…ああ。 ごきげんよう、蓮。
ほい、蓮君も。 志摩子にごきげんよー。
…ふふ。
おかえりなさい。
うん、ただいま。
遅かったわね?
一寸、いつものコースと変えたみた。
そう。 蓮、大丈夫?
うん、ほとんど寝てた。
…疲れちゃったんじゃない?
そうかも。
水分、ちゃんと摂らせた?
うん。
そう。
葵は?
お昼寝中。
そっか、蓮と一緒だ。
それでもさっきまでは起きてたのよ。 貴女を待ってたのに、なかなか帰ってこないから。
ほんと? ああ、それはかわいそうなコト、したなぁ。
蓮も居ないし。
ごめんね、葵。 起きたらいっぱい遊んであげるからね〜。
そうしてあげて。
…。
聖?
今度は葵も連れて行こうかなって。
そういえばどうして葵は連れて行かなかったの? いつもは連れて行くのに。
蓮の方が分かりやすいかなって。
分かりやすい?
私と蓉子の子ってコト。
…どこに行ったの?
うん、一寸。
…言えないの?
いや、言えるよ。
…。
深刻なコトじゃないし…蓉子が心配するようなコトでも無いし。
…じゃあ、どこに行ってたの。
志摩子んとこ。
…志摩子?
天気が良かったから、顔、見てきた。
…元気そうだった?
うん。 ああでも、少し、痩せたかもしれない。
…そう。
でも、辛そうな顔はしてなかったから。
…子供は?
見てない。 名前も聞いてない。
…。
今度、蓉子と一緒の時にって言ってきた。
…私と?
うん。
…どうして?
だって蓉子は私の奥さんだもの。
……。
だから、一緒が良い。
……そう、志摩子に?
うん、言った。
…呆れられたでしょう?
うんにゃ、その辺志摩子は分かってるから。
分かってる?
私が蓉子さんを愛してるってコト。 なんかね、すごく真面目に言われちゃった。
……ああ。
ん?
恥ずかしい…。
ね、恥ずかしいよね。
…全然、そう見えないから。
そっかな。 これでも言われた時は恥ずかしかったんだけどな?
…もう。
ところで、蓉子さん。 聖さん、少し、お腹が減りました。
…何か食べる?
うん。
じゃあ何か、作るわね。 簡単なもので良い?
蓉子さんの作ったものなら、ゆで卵でも、好きなので。
ありがとう、じゃあゆで卵を作ってあげるわね。 半熟で良い?
うん。 ねぇ、蓉子。
んー?
しあわせ。
…はい?
私。
……。
えへへ。
…はいはい、良かったわね。
ほんとだよ?
分かってるわよ。
でも今は少し、冷たいな?
…だって。
だって?
いよいよ、ばかになっちゃうじゃないの。
…ばか?
そうよ。 …もう。
…?
……だから江利子に、万年新婚夫婦って言われちゃうのよ。
−蒼い空の下から。
あ。
ん?
見て。
…写真?
きれいな空。
…濃い青だな。
こっちとは全然違うのね。
きれい。
今はどこにいるんだ。
え、と…。
…日本語で書けって何度言えば分かるんだ。
この間とは違う言葉。
この間はアルファベットですら、なかった。
キリル文字?
たく。
でも今回は読めるわ。
…。
ね?
…まぁ、な。
読んで。
お前も読めるだろう。
少しだけなんだもの。
私は取ってなかったから。
…。
お願い。
…たく。
今度は日本語で送って来いって言っておいてくれ。
うん。
でも多分、聞かないでしょうけど。
…。
なんて書いてあるの?
元気。
それは毎回書いてあるじゃない。
他のは?
空がきれいだから送る、とさ。
ふふ、あの子らしい。
この前のは雪がきれいだから、だったわ。
…。
今、どこら辺にいるって?
南米大陸のどっか。
どっか?
これが届く頃にはもうここにはいないから、だろ。
ああ。
全く、あの子は。
…誰に似たんだか。
それは勿論、あの二人。
…主に片方、だろう。
ふらふらしてるところなんてそっくりだ。
そんな事無い、やっぱり似てるわ。
…。
行動力があるところなんて、まさに、そうじゃない。
…行動力って言うのか、これ。
ええ。
それから興味を持ったらやってみなきゃ気が済まないところとか。
…。
二人に良く似てるのよ。
自由奔放で、行動力があって。
だからか。
ん?
タチが悪い。
…。
落ち着きが無いにも程がある。
手綱を握ってくれる人でもいれば良いのだけれど。
そんな物好き、いないだろ。
早々。
…ふふ。
笑い事じゃない。
なんだかんだ言ってても心配なのよね。
…。
お姉ちゃん、だもの。
…止めてくれ。
ふふ。
……。
…ね。
……。
行って、見てみたいね。
こんな空…。
…ここでも見られるだろ。
でも、違うじゃない。
青の色が。
空なんてどこも
違う。
…。
そう思ったくせに。
…面倒なタネを蒔いてくれた。
ねぇ、いつか行こう?
私達も。
…。
ね。
…いつか。
良かった。
確定はしてない。
でも約束は破らないもの、貴女は。
…。
これ、向こうにも届いているかな。
…届いているだろ。
あいつが出さないわけ、ない。
そっか、そうだよね。
…ああ。
あ。
ん?
見て見て。
あら。
今度はどこからだろね?
…わ、きれいな空。
本当…。
見て、この顔。
元気みたいだね。
ええ、良かった。
楽しんでるかな。
病気になったりしてなければ良いけれど。
心配性だなぁ。
当たり前。
はい、そうでした。
…今、どこら辺にいるのかしらね。
え、と、予定では…遺跡をいっぱい見てるって。
そう。
あの子らしいわね。
うん、らしい。
…顔、見たいわね。
…。
写真だけじゃなくて.…。
…うん。
…。
あ、ここ見て。
…どこ?
ここ。
年内に帰るって書いてある。
…本当。
お土産あるから楽しみにしててってさ。
またへんてこなの、持って帰ってこなきゃ良いけど。
それは貴女に似てるから無理でしょうね。
えー?
少なくとも、私じゃない。
むぅ。
ふふ。
あと、驚かせたいから二人には内緒にしてって。
ここは貴女似だね。
私ってそんな?
うん、そんな。
うーん…。
はは。
でもそっか、帰ってくるのか…。
…また、行ってしまうんでしょうけど。
あの子は留まるのを知らない子だからなぁ。
…。
だけどさ、あの子が帰る場所はいつだってここにあるんだ。
そうでしょ?
…ええ。
好きなもの、沢山作ってやろうかね?
うん、そうね。
食べきれないくらい。
そうなったら貴女が食べるのよ?
大丈夫、ちび二人もいる。
もう、ちびでは無いけれど。
あはは。
…ふふ。
これ、あっちにも届いているかな。
ええ、屹度。
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