C o n f e s s i o n





   江利子。


   …。


   さん付け。


   …。


   江利ちゃん。


   …。


   ダーリン。


   …。


   ハニー。


   …。


   矢張り、呼び捨て。


   …。


   どれが良いと思うかしら。


   …知るか。


   ねぇ、蓉子。


   …と、言われても。


   …。


   私としては呼び捨てが妥当かしら。


   だから、知るか。
   そんな事でまた、唐突に来やがって。


   貴女達はまぁ、最初から呼び捨てだったから良いけれど。
   …て、ああ、途中まではさん付けだったわね。


   …ねぇ、江利子。
   別に呼び方なんて何でも良いんじゃない?


   本当に?


   え…。


   本当に、そう思う?


   …本当に、と言われても。


   どうでも良いじゃんか、そんな事。
   と言うかそもそも私は認めてな


   聖。


   …何だよ。


   若しも。
   蓉子に毎日、毎晩、聖さま、て呼ばれたら貴女はどんな気持ち?


   一度も呼ばれた事無いから分かんないよ、そんな事。


   だから、若しも、て言ってるでしょう。


   ……。


   …な、何。


   …変な気持ちになるかも。


   ……。


   いや、だってねぇ…?


   し、知らないわよ。
   同意を求めないで。


   だって一度も呼ばれた事無いのに、さぁ。
   そんな事になるとしたらそんなシチュの時くらいしか有りえないかな、と。


   シチュ、と言うと?


   ご主人様ごっこ、とか。
   蓉子がメイドさんで、


   …。


   あだ…ッ


   ……聖。


   あ、いや、だから若しも、の話だって。
   ね、ね…?


   …。


   あだだだだ。


   はぁ。
   そうね、貴女達だったらそれで済んじゃうのよねぇ。


   江利子、私達はしてないわよ。
   断じて、してないんだからね。


   別に良いんじゃない。
   たまにはご奉仕なんて、しても。


   え、江利子…ッ


   飽きられるよりは良いでしょ。


   だ、だからって…ッ


   い、いたい、痛いよ、蓉子…ッ


   ……。


   私達の場合、それが普通の事だからそうもいかないのよ。
   だからそんなシチュ、有りえないし。


   …。


   べ、別に良いじゃない。
   そんな事しなくても二人の仲が良ければ。


   あら、たまには変わった事がしてみたいじゃない。
   気分を変えて楽しむ事は必要だわ。


   ……。


   …確かにそれには同意するけど、


   …聖。


   あ、いや、でも素直には頷けないものがある、うん。


   せめて。
   さま付けは、止めて欲しいのよねぇ。


   …。


   ねぇ、江利子。
   そんな事は


   もう、私の子もいる事だし。


   ……ッ


   ……ぶっ


   え、え……?


   あら、知らなかった?


   う、嘘だ…ッ!


   え、江利子、一寸どういうコトなの…?!


   どういう事も何も。
   居るらしいのよ。


   らしいって何だよ、らしいって…ッ!?


   …それはお腹の中に?
   それとも


   この間、生まれたらしいの。
   曰く、私の子。


   の、ノォォォォォォォォォ……ッ!!!!


   し、志摩子と江利子、の…。


   だから、


   志摩子、なんて早まったコトをぉぉぉ…。


   で、でも待って。
   貴女達、確か未だ籍は…


   ん、入れてないわよ?


   と言うか付き合いだしたのだって…


   あと言ってなかったけど。
   高等部卒業後、たまに程度では逢っていたの。
   とは言え、付き合ってはいなかったけれど。


   志摩子、どうしてでこなんかと…っ


   そこのアメリカ人、少しは落ち着いたら?


   これが落ち着いてなんかいられるかあぁぁ…ッ!!


   江利子、貴女籍も入れてないのに…そもそも、一緒に暮らしているわけでもないのに


   別に良いんじゃない?


   良くねぇよ!!


   良くないわよ!!


   あらあら。
   蓉子は兎も角として、アメリカ人に言われるのは心外だわ。


   よくも志摩子に…ッ


   こういうコトには順序と言うものが…


   と、貴女達は言うけれど。
   寧ろ、貴女達に未だ、子がいない事の方が意外じゃないの。


   は…?!


   とっくに孕んでても…いや孕ませてても、かしら。
   何にせよ、おかしくないのに。
   実はいるんじゃない?


   はぁぁ…?!


   と、と言うか江利子!


   ん?


   孕む、て…!


   日本語は間違っては無いわよ。


   で、でも…ッ


   絶対に、籍を入れる前だと思っていたのに、ねぇ。
   勢い余って大学在学中に、とか。


   お、お前なぁ…ッ


   ま、そんなコト、蓉子が許してくれるわけないわね。


   あ、あのね、江利子


   とは言え、一度も無いって事は無いと思うけど。
   当たらなかったのね。


   ……ッ!


   ……ッ!


   うん。
   やっぱり絶対なんて無いのね。


   で、でこぉ…ッ!


   え、江利子ぉ…ッ


   ああ、でも。
   時間の問題よね、屹度。
   案外、気付いていないだけかも。


   『…ああ、もうッ』


   …私、みたいに。


   よ、蓉子…志摩子が、志摩子に…。


   聖、とりあえず、落ち着いて?
   ね?


   呼び捨てで一度も呼ばれていないのに、ねぇ。


   もう良いよ、それは…!
   それよりでこちん、どう責任を


   認知はしたわよ?
   特には言われなかったけど。


   あ、当たり前だ…!


   江利子、ちゃんとしたのね?


   ええ。
   …して欲しいとは言われなかったけど。


   …ああ、私の志摩子がッ


   もう貴女のじゃないわよ。


   でも私の妹には変わりない!


   然うですわね、お義姉さま。


   うあぁぁぁ、気色悪ぃぃ…ッ!!


   …江利子。


   うん?


   それで貴女、これからどうするの。


   どうしようかしらねぇ。


   どうしようかしらねぇ、じゃねぇよ!


   ねぇ、蓉子。
   どうしようかしら。


   …本当に貴女の子なら。
   貴女がすべき事は一つだけだと思うわ。


   やっぱり責任を取れって?


   …志摩子一人に責任を取らせるつもりなの。


   そんな事したら。
   軽蔑、されるわね。


   …ええ、するわね。
   どんな事情があるにしろ、軽く見るというのなら


   そんなつもりがあるのなら。
   蓉子に話していないわ。


   ……。


   あぁぁ、よりにもよってでこちんの子なんてぇぇ…ッ








  D N A 2





   ふむ。


   さっき眠ったばかりなのよ。


   ふぅん。


   くれぐれも。
   起こすような真似、してくれるなよ。


   どうしようかしら。


   止めて。


   止めろ。


   あら、息ぴったりね。


   お願いだから、本当に止めて。


   何、そんなに大変だったの?


   …蓮がぐずってしまって。
   葵は蓮が眠らないと不安がって眠らないから。


   何がそんなに面白くなかったのかなぁ。


   あんたの顔じゃない?


   そうか、殴られたいか。


   止めて頂戴。


   だってこいつが


   聖が変な顔をしたのも事実でしょ。


   いや、あれはあやそうと思っただけだよ。


   おかげで余計に機嫌がななめになってしまったけど。


   …葵は喜んでくれるのに。


   自分と同じアメリカ面、ましてや変な顔を見せられたってねぇ。
   面白くも何とも無いじゃない。


   …このやろう。


   それより、江利子。


   うん?


   今日はどうしたの?


   んー…、気が向いたから?


   向くな。


   まぁ、いつもどおりだから。
   気にしないで。


   少しは人の迷惑と言うのも考えろ。


   特定の人に迷惑をかけっ放しだった、寧ろ現在進行形、な人が言えた事かしら?


   …そうか。
   どこまでも人に喧嘩を売ってるわけだな、このでこちんが。


   止めなさい、聖。


   だってこのでこちんがいちいち


   江利子。


   うーん?
   …あー、やっぱりちっちゃい子のほっぺたってぷにぷにしてるわね。


   と言うか、触るな。


   良いじゃない。


   起きるだろ。


   じゃ、私のほっぺた触らせてあげるわ。


   誰が触るか。
   触りたくも無いわ。


   あら、本気にした?
   ただの冗談なのに。
   私だってあんたなんかに触られたくないわ、安心して。


   寧ろ、そのでこに平手を喰らわせたいわ。


   だから止めなさいって言ってるでしょ。


   だってこのでこちんがどこまでも


   ところで、江利子。


   んー?
   …うん、やっぱり手もぷにぷにねぇ。


   志摩子は?
   子供はどうしたの?


   元気じゃない?


   いや、然うじゃなくて。
   と言うか他人事のような言い方をして。


   他に何か気になる事でもある?


   貴女、そろそろ、


   まぁ、一応、ね。


   一応、って何よ。


   だから、一応。


   あのなぁ、お前んとこもまだ小さいだろ。


   この二人よりは大きいわよ。
   一年近く、ね。


   いい加減、腹を括ったらどうなんだ。


   腹を括る、ねぇ。
   なんか、違うのよねぇ。


   このまま、志摩子一人に任せてしまうつもりなの?


   いいえ、一人じゃないわよ。


   未だにお前は志摩子と一緒に暮らしてないだろ。
   へたをしたらお前が親だってコト、ちびが認識出来ないままになるぞ。


   …まぁ、ねぇ。


   江利子。
   ちゃんと聞いているの?


   ねぇ、遺伝子って本当にあるのね。


   …は?


   …はい?


   この二人、本当に貴女達に似ている。
   不思議だわ。


   …何よ、急に。


   面白いわね。


   …お前んとこのちびだってお前に似てるだろ。


   そうなの。
   だけど志摩子にも似てるのよ。


   それは貴女達の子だからであって、


   と言うか私は絶望すら覚えたわ、孫と共に。
   志摩子のDNAは何処に行ったんだ…っ


   だから志摩子にも似てるって言ってるじゃない。


   あのでこ…見紛う事無くあのでこはお前似だわ…っ


   聖、声が大きいわ。


   だって…っ


   大きくなったら。
   益々似てくるのかしら…いいえ、“そっくり”になりそうね、この子達。
   双子ってあたりが、本当、面白いわ。


   …はぁ。
   江利子、とりあえず、お茶でも飲む?


   頂こうかしら。


   じゃあ…


   少しは遠慮しろよ。


   必要?


   お前の場合は特に、だ。


   蓉子の淹れてくれるお茶は美味しいままなのよね。
   何故かしら。


   話を聞け。


   あら。
   聖だって然う思ってるでしょう?


   思ってるけど。


   不思議よね。
   お茶の味は学生の頃のままなんて。


   それは違うな。


   違う?


   味は変わらないまま、でもあの頃よりもっと、美味しくなった。


   …。


   だよね、蓉子。


   …と、私に言われてもね。
   分からないわよ。


   蓉子はさ、私の淹れたコーヒーは美味しいって言うじゃない?


   …言うけど。


   それと同じなんだって。


   …やっぱり、分からないわ。
   私はそんなに変わらないと思ってるから。


   つまり。
   変わらない、なんて無いのね。


   そう、然うだよ。
   たまには良い事言うじゃん、でこちん。


   …まぁ、それを教えたのは蓉子なんでしょうけど。


   蓉子、私も手伝うよ。


   ありがとう。
   じゃあ、お茶請けを用意してもらっても良いかしら?


   でこちんには勿体無いなぁ。


   聖。


   仕方ないなぁ。
   でこちん、ちゃんと味わって食べれよ。


   …変わる、けれど、変わらないもの、ね。








  P l a y  w i t h  R e n





   にゃ!


   ふむ。


   にゃー!


   うーん。


   にゃぁ!


   まだまだ、かしらね。


   や、やー!


   む、なかなか、いた。


   止めれ。


   痛いわねぇ。
   何するのかしら。


   それはこっちの台詞だっつーの。


   うん?


   人んちのちびで遊ぶな、このでこちんが。


   …うー!


   よしよし、蓮君。
   もう大丈夫だよ。


   何よ、人を悪者みたいに言って。


   悪者以外の何だって言うんだよ、でこちん。


   遊んでただけじゃない。


   どこが、だ。


   ……。


   見ろ、完全に警戒しきってるじゃないか。


   おかしいわねぇ。


   言っとくがな、蓮君が私の足にしがみついて離れないってのは稀なんだぞ。


   今は蓉子が居ないから、ねぇ。


   そうそう、いつもは蓉子にべったりだからな…て、そうじゃなくて。
   そもそもお前はちびに対しても容赦が無さ過ぎる。
   少しは手加減しろっての。


   常に本気じゃないとつまらないじゃない。


   お前が?


   ええ、私が。


   …。


   いた。


   ふざけろ、このでこちんが。


   痛いじゃないの、アメリカ人。


   たく、トラウマにでもなってくれたらどうしてくれるんだ。


   何よ、人の親切心を。


   ど、こ、が。


   失礼ね。


   大体、何しに来やがった。


   蓉子に会いに。


   生憎、蓉子は仕事ですよ。


   知ってるわよ、蓉子はあんたと違って引き篭もりじゃないもの。


   さらっと失礼な事を言いやがったな、でこちん。


   じゃあニート?


   よし、そのでこを出せ。
   紅葉を作ってやる。


   蓉子の稼ぎあっての佐藤家のくせに。


   あ、の、なぁ!
   私だって一応は働いてるの、社会人なの!


   蓮君、お姉さんと遊びましょうか。


   やー!


   て。
   おいこら、無視すんなや、でこちんが。


   いっそ、蓉子の扶養に入ったら?
   そしたら税金安くなるわよ。


   ああ、それは結構本気で考えた。
   そしたら103万


   正しくは102万と9999円、ね。


   そうそう。


   でも配偶者控除無くなったら意味無いわよねぇ。


   そうなんだよなぁ。


   ま、どうでも良いけど。
   れーん、おいでー。


   …て。


   蓮、おいでー。


   やーーー!!


   だから、止めれって言ってんだろうが。


   何よ、ケチねぇ。


   ケチとかって問題じゃねぇよ、でこちん。


   と言うかさっきからでこでこ言いすぎよ。
   ちびちゃんたちが間違って覚えてしまうじゃないの。


   別に良いだろ。
   でこはでこなんだから。


   …アメリカ人アメリカ人アメリカ人アメリカ人アメリカ人アメリカ人。


   何だと、このでこちんが。


   何よ、このアメリカ人が。


   …大体、今日は平日で蓉子は仕事なんだから、来るな。
   と言うか、居ても誰が会わせるか。


   そんなの貴女が決めることじゃないわ。


   そもそも志摩子はどうした。
   ちびは?


   家に居るわよ。


   いつもそればっかりだな。


   学生時代からの親友に会いに行ってくると言うと、行ってらっしゃいって返ってくるのよねぇ。
   あの子らしいわ。


   ……。


   ま、蓮が駄目なら。
   葵ー。


   …え。


   おいで、おいで。
   おねーさんと遊びましょう。


   あ、あの…。


   おいでおい、た。


   遊ぶなら、自分んちのちびで遊べ。


   遊ぶなら面白い方が良いじゃない。


   うちのちびはお前の玩具じゃないっつーの。


   それにつけてもピシピシやり過ぎじゃないかしら。


   とりあえず、帰れ。
   これから夕飯の準備するんだから。


   すれば?
   私はちびちゃん達と遊んでるから。


   か、え、れ、と言ってるんだよ、でこちん。


   蓉子が帰ってくるわよ。


   …は?


   貴女の愛しい蓉子が。


   あのなぁ。
   蓉子は


   ただいま。


   ……ま、だ。


   おかえりなさい。


   あら、江利子。
   来てたの?


   ええ。


   …蓉、子?


   ただいま、聖。


   よーこ!


   おかーさん!


   ただいま、蓮、葵。


   おかえりなさい、蓉子。
   貴女に会いに来たのよ。


   そうなの?
   だったら連絡をくれれば良かったのに。


   何となく、思い立っただけだから。


   貴女はいつもそうね。


   そうかしら。


   ええ、そうよ。


   ……蓉子。


   聖?
   どうしたの?


   それはこっちの台詞だよ。
   どうしたの、帰り早くない?


   思いの外、早く片付いたから。
   早く帰れる時は帰ろうと思って。


   そう、なんだ。


   ……駄目だった?


   あ、ううん、そんな事ない!
   嬉しい!


   うん。


   おかえり、蓉子。


   ただいま、聖。


   あらあら、良いわねぇ。
   未だ新婚さん気分なのねぇ。


   ……。


   ……こいつさえ、居なければもっと良かったのに。








  C a u t i o n !





   蓮ちゃん。


   …う?


   ごきげんよう。


   ……。


   おいおい蓮君、忘れちゃったんかい?


   ……。


   久しぶりですから。


   ……。


   そうだっけ?
   そーでもない気がするけどなー。
   現に葵は…


   確かこの前に会ったのは…


   …にゃ!


   え…?


   しまこ!


   あら。


   しまこー!


   ごきげんよう、蓮ちゃん。


   しまこ、しまこ。


   ふふ。


   あらら。


   すっかり懐いているわねぇ。
   血は争えないってトコロかしら?


   にゃ…ッ


   ごきげんよう、蓮。


   ……。


   あら、また固まった?


   ……。


   いや、違うな。


   ん?


   ……うー。


   あら?


   …思い切り、警戒されてますね。


   まぁ、失礼ねぇ。


   ……。


   ひとえにでこちんの行いが悪いせいだな。


   折角、あんなに遊んであげたのに。


   うー!


   あらあら…。


   お前の場合、自分が楽しむ方向で遊ぶからタチが悪いんだって。


   楽しいじゃない。


   いやだからだな…。


   でこ!


   …んー?


   でこ、やー!


   ……んー。


   ほれ見ろ。


   おかしいわねぇ。


   蓮ちゃん、


   ああ、志摩子。
   それ馴染まないから、蓮君、或いは呼び捨てで良いよ。
   言ったでしょや?


   …ですが、


   良いの良いの。


   …良いのでしょうか。


   蓮君、おいで。
   お姉さんと遊びましょう?


   や!


   ふむ、おかしいわねぇ。


   全然、おかしくない。


   だけれど葵は懐いてくれてるわよ?


   そりゃ、葵は蓉子に似て非常に礼儀正しい子だからね!
   でこちん相手にも一応の態度は示すのさ!


   ……お姉さま、それは


   ま、あんたは莫迦がつくくらい人見知りで無愛想だったものねぇ。
   あー、つくづくそっくりだわー。


   ……ぶっ飛ばす。


   しまこ、でこ、や。


   そんなに隠れなくても大丈夫よ。
   江利子さまは…


   いや、それは約束出来ないわねぇ。


   …江利子さま。


   これが、私の性分だもの。


   …然うですね。


   でこ、やーーー!








  L i k e  c a t  a n d  d o g





   蓮。


   …。


   蓮。


   …何か用。


   私とあんたがここの当番でしょ。


   …。


   さっさとしなさいよ。


   …。


   はい、箒。


   …。


   お礼は?


   …は?


   持って来てやったんだから。
   感謝の言葉ぐらい述べなさいよ。


   …誰も頼んでない。


   あ、然う。
   あんたはお礼も言えない最低人間だったものね。


   ……。


   なんであんたと一緒にやらなきゃいけないのかしら。


   それはこっちの台詞だ。


   葵と一緒の方が良かったわ。
   あの子は誰かよりよっぽども気が付くし、何より良い子だし。


   同い年だろ。


   うん?


   上から目線で物を言うの、止めろ。


   然うは言うけどね、ほぼ一年違うのよ。
   同じ学年ってのが信じられないわ。


   お前が上だったと思うとぞっとする。


   そしたら、さまづけで呼ばれていたのね、葵に。
   それも良いわね。


   やだね。


   誰もあんたに呼ばれたいなんて言ってないわよ、アメリカ人Jr。


   葵だってでこをさまづけするなんて、嫌がる。


   あの子なら妹にしても良さそうね。
   素直でかわいいもの。


   は、お前が姉だなんて、願い下げだな。


   だからあんたじゃないって言ってるでしょう。


   葵は私と双子だ。


   それが何よ。
   葵はあんたなんかとは全然違うわよ。


   知ってる。
   私はあんなにお節介じゃない。


   何よ、分かってるじゃないの。


   けど、お前なんかの妹になんかさせない。


   あんたが決めることじゃないわ、シスコン。


   …。


   なんだかんだ言ってても離れられないのよね、あんたは。


   …何だと。


   だって然うでしょう?
   そのせいでどんな噂が立っているのかも知らないで、いい気なものだわ。


   瓦版に載ってるのなら、あんなの、真っ赤な嘘だ。


   けど、ネタとしてはおいしいそうでしょう?
   温室のお嬢さん方には。


   は、くだらない。


   貴女にしてみればね。
   けど、葵にしてみればどうかしら?


   …。


   あんたの世話ばかり焼いて。
   おまけに変な噂まで立てられて。
   迷惑極まり無いわ。


   世話をしてくれなんて、頼んじゃいない。


   知ってるわ。
   でも放っておけないのあの子の性質
〈タチ〉なのよ。
   そんなの、昔から良く知ってるでしょうが。


   ……。


   全く。
   なんであんたなんかと同じクラスになったのかしら。
   葵と一緒なら


   いい加減黙れ、でこちん。


   ……。


   こっちだって一緒に居たいわけじゃない。
   だったら、さっさとやって終わらせた方がよっぽども良いだろう。


   ……は、言われなくてもやるわよ。


   …。


   …。


   蓮。


   ……。


   あら、葵じゃないの。
   どうしたの?


   何か揉めてるって聞いたから。
   また喧嘩してるの?


   …。


   してないわよ、全然ね。


   然うなの?


   ……それより、自分の受け持ちはどうしたんだ。


   喧嘩しているようだったら、止めてって言われて。


   それで、代わってもらったのか。


   うん。


   …余計なお世話だ。


   だって蓮達、昔から顔を合わせれば言い合いばかりしてたから。


   …。


   葵。


   なぁに?


   とりあえず、休戦中だから。
   心配するコトは無いわよ、今はね。


   今は…て。
   やっぱりしてたのね。


   さぁ、どうかしらね。
   蓮、さっさとやってしまうわよ。


   言われるまでも無い。


   ……もう。