どれだけ、大事に想っていても。

   どれだけ、守りたいと思っていても。

   どれだけ、全部を懸けて頑張ったとしても。



   どれだけ、愛していても。



   いつか、死んでしまうかも知れない。

   いつか、失くしてしまうかも知れない。

   いつか、いつか、その時が。

   一瞬で終わってしまう、その時が。



   だから、一緒に居られる時間を大事にしないといけないの。

   だから、だから、この大切な時間が少しでも長く続くように、続いてゆくように…頑張りたいと、思っていたの。

   思って、いたの…。










   ひびきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……ッ!!!!!















  R h y t h m o s















   あぁ、おなかいっぱい。
   やっぱり、奏が作ってくれるごはんはおいしいなぁ。
   …しあわせ。


   …。


   カップケーキもおいしいし…もう、最高だね。


   …うん。


   あ、片付けは私がやるよ。
   奏は座ってて。


   ううん…私がやる。
   響こそ、座ってて。


   いいって、私がやるって。
   奏がごはんを作ってくれたんだし、片付けぐらいは私がやらないとね。
   と言うか、いつもそうしてたじゃん?


   …。


   私と奏の約束事って言うやつ。
   奏がごはんを作ってくれたら、片付けは…?


   …。


   奏?


   …そう、だったね。


   そうそう。


   ……。


   …。


   …。


   …奏、どうしたの?
   もしかして、疲れちゃったとか…?


   …疲れているのは響もでしょ。
   大変だった、し…。


   私は奏と違って体力があるから!
   奏はねぇ、もう少し体力つけた方がいいと思うよ。


   …そうだね。


   あれ。


   ……。


   奏、本当に大丈夫…?


   ……私は大丈夫だよ。


   本当の本当に…?


   …。


   かなで…?


   ……ひびき。


   なに、かなで。


   …ひびきは、だいじょうぶなの。


   私は、大丈夫だよ。
   それより、奏の方が…


   ……。


   …わ。


   ……。


   か、かなで…?


   ……ひびき、ここにいるよね。


   いる、けど…。


   …。


   …奏。


   ……ほんとうに、いるよね。


   …いるよ。
   私は…ここにいるよ、奏。


   ……。


   …奏こそ、いる?
   ちゃんとここにいる…?


   ……いるよ、ひびきのそばに。


   うん…よかった。


   …。


   …奏、座ってて。
   すぐに洗ってきちゃうから…さ?


   ……はなれたくない。


   え…。


   …そばにいて、ひびき。


   かなで……。


   …こんやだけで、いいから。
   ずっと、そばにいて…どこにもいかないで。


   ……。


   …。


   …どこにも、行かないよ。
   と言うか、なんで泣いてるのよ…。


   ……ないてなんか、ないよ。


   泣いてるじゃん…。


   …ないてない。


   泣いてるって…あぁ、もう。


   …めんどうで、わるかったわね。
   どうせ、私はめんどうよ…。


   そんなこと、言ってないじゃん…。


   ……。


   …。


   …。


   ……お風呂、どうする?


   …おふろ?


   今日、泊まっていくんだよね?
   だったらお風呂、入るでしょ?


   …。


   ええ、と…一緒に、入る?


   …。


   なわけ、ないよね。
   さすがに、お風呂は…。


   …いいよ。


   え。


   …ひびきと、はいる。


   え、えぇ…。


   ……冗談でしたなんていったら、ゆるさない。


   …う。


   …。


   え、えと…久しぶりだね?


   …そうね。


   い、いつ以来かな…。


   …そんなの、今はどうでもいい。


   …。


   …。


   ほんとに、一緒に入る…?


   …だから、そういった。


   …。


   …。


   ……今夜の奏、変。


   …うるさい。








   …ねぇ、奏。
   ほんとに一緒に入るの?


   …一緒に入るって聞いたのは響でしょ。


   そうだけど…そうだけどさ。


   …今更、冗談だって言うの?
   許さないって言ったわよね…私。


   …。


   …。


   …やっぱり変だよ、奏。


   ……うるさいって、言った。


   …。


   …。


   …かなで。


   …からだ。


   え…?


   …どこも、痛くない?


   いたく、ないけど…。


   …。


   あ、あの、かなでさん…?
   あまりじぃっと見られるのは…。


   …部活の助っ人やってるんだから、着替えを見られるのなんて慣れてるでしょ。


   着替えは…慣れてるけど、でも、ハダカを見られるのは慣れてないよ。


   …小さい頃に、何度か一緒に入った。


   そ、そうですけど…もう、小さくないよ、私たち。


   ……だから、なに。


   なにと、言われても…と言うか奏は、慣れてるの?


   …慣れてるわけ、ないでしょ。
   ばかなの?


   ば、ばかって。
   ばかって言った方がばかなんだからね。


   …響がばかだからいけないんでしょ。


   は、はぁぁ?


   …。


   …なんなの、ほんとに。


   …。


   と言うかさ、触られるのも、ちょっと…いや、かなり。


   …私に触られるのは、いや?


   いや…じゃ、ないけど。
   その、落ち着かないと言いますか…服、着てれば違うんです、けど。


   …。


   かなで。


   …傷、残ってない。


   え?


   …残ってないね。
   あんなにぼろぼろになっていたのに…。


   それは、かなでもでしょ…。


   …。


   か、かなで…くすぐったい、よ。


   …傷は残っていなくても、痛いよ。


   え。


   ……痛いよ、響。


   奏、どこか痛いの?
   どこ?どこが痛いの?
   だから、なんか変だったの?


   …。


   かな


   …。


   え…と。


   …あまり、見ないで。
   それから、さわらないで。


   ちょ、なにそれ。
   人のことはじぃっと見といて、おまけに触ったくせに…。


   …。


   奏、どこか痛いのなら言って。
   言ってよ、奏。何でも話そうって約束したじゃない。


   …言って、響には分かるの。


   は?


   ……。


   何よ、それ。


   …どうにか、してくれるの。
   出来るの…。


   どうにかしたいし、出来るかもしれないじゃない。
   けど奏が言ってくれないと、私は何も出来ないよ。
   したくたって、出来ないよ。


   ……。


   奏。


   …お風呂、はいろ。


   は…?


   …ハダカでこのまま、ここにいてもしょうがないでしょ。


   奏、話は…。


   ……。


   奏…!


   ……ひびき。


   なに…


   いまはただ、そばにいさせてよ。


   …ッ。


   …ひびきの、そばに。








   …ハミィ、今頃どうしてるかなぁ。


   ……エレンとおしゃべりしてるか、歌ってるんじゃないの。


   フェアリートーンたちもついていっちゃったし…。


   …響んちのお風呂、相変わらず広いわね。
   ふたりで入っても…あまり、狭く感じない。


   ……小さい頃はもっと、広く感じたけどね。


   …もう、中学生だもの。


   中学生、か…。


   …。


   …一年生の頃のこと、私、一生忘れないかもしれない。


   ……忘れなさいよ、そんなこと。


   奏は忘れられるの…?


   …さぁ、どうかしらね。
   もしかしたら忘れてしまうかもしれないし…忘れないかも、しれないし。


   なにそれ…結局、どっちなのさ。


   …分からないわ、先のことなんか。
   だけど…忙しかったら、思い出している暇なんてきっとなくなる。
   そうやって…人は忘れていくんじゃないの。


   それでも。


   …。


   …それでも、忘れない。
   奏と離れてた時のこと、私は忘れないよ。


   …どうして言い切れるのよ。


   言い切れるよ。


   だから、なんでよ。


   だって。
   …だって。


   ……ちょっと。


   …。


   なんで泣き出すのよ…意味が分からないんだけど。


   …奏の、ばか。
   分からず屋。


   はぁ…?


   ……。


   …なんなの。


   ………寂しかったんだよ。


   …。


   こんな無駄に広いお風呂にひとりで入って。
   こんな無駄に大きい家の中で、私しかいなくて。私以外の音がしなくて。
   …奏の声が、聞きたくて。


   …。


   聞きたくて、聞きたくて………でも、できなくて。


   …。


   …さびしかったんだよ、かなで。


   ………ひびき。


   …だから、忘れない。
   あの時感じた寂しさは…一生、忘れない。


   ……ひびきの、ばか。


   …奏の方がばかだよ。


   ばかって言った方がばかなんでしょ。


   先に言ったのは奏じゃない。


   …。


   …。


   …。


   …ねぇ、奏。


   ……。


   どうしても、話してくれないの…?
   それとも…私には、話したくないの?
   エレンとかアコとかになら話せる?


   ………。


   …かなで。


   ……とりあえず、泣き止んだら?


   …。


   ………なきむしひびき。


   …泣き虫じゃないもん。
   涙が勝手に出てくるだけだもん…。


   …それを泣き虫って言うのよ。


   …。


   ……私だって、忘れないわよ。


   …?


   ………私、だって。


   かなで。


   …あんな思いをするのはもう、いや。
   二度といや…。


   ……。


   ……さわらないでよ。


   ううん、触る。


   …だから、やめて。


   やめない。
   やめない!


   …大きな声、出さないで。


   奏、奏。


   …二回も呼ばないで。


   泣かないで、奏。


   …。


   …なかないでよ、かなで。


   ……ないてなんか、ない。
   ないてるのは、ひびきでしょ…。


   かなで、かなで。


   …だか、ら。


   ……ごめんね、かなで。


   …。


   ごめんね…。


   …なんで、どうして。


   ………分からなくて、ごめんね。


   …ッ。


   …。


   …どうして、よ。
   そんなやさしさ、いまはいらないのよ…。
   いつもみたいに、にくまれぐち、たたきなさいよ…。


   …。


   ……ひびき。


   かなで……。


   ……………いたいよ、ひびき。


   …ぁ。


   …いたい、よぅ……。


   かなで…かなで……。


   …。


   わたし、どうしたらいい…?
   かなでのためなら、なんだってできるよ…。
   なんだって、する…するから。


   ……。


   ……そうだ。
   むかし、ちいさいころ、かなでがわたしにしてくれたこと…。


   …ん。


   いたいの、いたいの、とんでゆけ…。


   …。


   いたいの、いたいの、ぜんぶ、ぜんぶ、とんでゆけ…。
   かなでのいたいの、わたしに、とんでゆけ…。


   …やめ、て。


   わたしに、かなでのいたみを…わけて。


   …やめて、ひびき。


   ……いたいの、はんぶんこ。
   はんぶんこにすれば、そうすれば……。


   やめて…!


   …。


   ……やめて、おねがい。


   ……かなで。


   ………。


   …。


   ……ひびきにいたみなんて、あげたくないの。
   すこしだって、いやなの…そんなの、いやなの…。


   …わたしだって、いや。


   …。


   ……かなでは、ずるいよ。
   ずるいよ…かなで…。


   …。


   ……いやだよぅ、かなで。


   …………ばか。








   ……はぁ。


   …。


   あぁ、ぼーっとする…。


   …。


   …かなで?
   だいじょうぶ…?


   ……だれの、せいよ。


   そんなん、しらないよ…。


   …ひびきがしがみついて、はなれないから。


   かなでだって…。


   …さわらないでって、いった。


   ……。


   …はぁ。


   ……すこし、おさまってきた。


   …。


   はぁ…なんかもう、つかれちゃったなぁ。


   …たいりょく、あるんじゃなかったの。


   たいりょくのもんだいじゃないよ…。


   …。


   …かなで、なにかのむ?
   のめそう…?


   ……。


   なんか、もってくる…。


   …いらない。


   …。


   いらないから、ここにいて。
   はなれないで。


   かなで。


   ……そばに、いて。


   でも、なにかのんだほうが…。


   …わたしの、ためなら。
   なんでもできる…なんでもするんでしょ。
   そう、いったじゃない…。


   …。


   …だったら、いうことをきいてよ。


   かなで……。


   ……はなれたくないの。
   どうして、わかってくれないの…。


   …じゃあなんで、さわらないでっていうの。


   …。


   かなでがいってること、めちゃくちゃだよ。
   はなれないでっていうくせに、さわらないでって。


   ……。


   かな


   キス、して。


   …え。


   ……。


   か、かなで…?


   …キス、して。


   き、キス…?


   ……してよ。


   き、キスって……ど、どの、キス?


   ふざけないで。


   ふ、ふざけてなんか…


   わからないなんて、いわせない。


   ぅ…。


   …なんでもしてくれるんでしょ。
   だったら…してよ。


   …でも、かなでは。
   か、かなでは…おうじせんぱいのことが、すきなんでしょ。


   …すきだよ。


   だ、だったら…その、キスなんて……。


   …はやくしてよ。


   で、できないよ。
   できない、できないよ…。


   どうしてよ。
   なんでもしてくれるっていったじゃない。


   いったけど…!
   できないことは、できないよ…!!


   …。


   かな、…。


   ……。


   ………で。


   …。


   な、んで……なんで…どう、して……。


   …うそつき。


   うそ、つき…。


   うそつき。


   う、うそつきって…。


   できないのなら、なんでもするなんて、いわないでよ。
   うそつき、ひびきのうそつき。


   …。


   うそつきなひびきなんて…きらい。


   …!


   …。


   …どうして、かなで。


   ……どうして、わからないの。
   わかろうと、してくれないの…。


   わからない、わからないよ…だって、かなではいってくれない。
   それなのに、どうしてキスなんて…だって、かなでは……かなでは。


   …わかってよ。
   おねがいだから…わかって。


   …。


   ……キス、してよ。


   …。


   …わたしは、ひびきのことが。


   ……なんか、のんでくる。


   …!


   かなでは、いらないんだよね…。


   …いらない。


   わかった…。


   …。


   ……。


   …って。


   ……。


   まって、ひびき…。


   ……。


   ひびき…いかないで。
   そばに…


   ……あぁぁぁもう!


   ぁ…。


   ……もう、しらない。
   もう、どうでもいい……。


   ……ひび、き。


   …。


   ん……ん。








   ………かな、で。


   …。


   かなで……かな


   …へたくそ。


   な…。


   へたくそ…。


   ……あぅ。


   ほんと、へたくそ…。


   しょ、しょうがないじゃん。
   は、はじめてだったんだし…。


   …にかいめ。


   わ、わたしからするのは、はじめてだよ…ッ。


   …もうすこし、まともにできないの。


   で、できないよ…!
   そもそもまともってなに…?!
   どうやってするの…!?


   ……はじめて、だったのに。


   わ、わたしだって、はじめだったよぅ…。


   ……どうでもいいって、いわれたし。


   そ、それは…だって、かなでが……。


   …わたしのせいって、いいたいのね。


   …。


   …どうせ、わたしのせいよ。
   そう、わたしのせいにすればいい…だって、わたしがわるいんだもの…ぜんぶ…。


   ……かなで。


   …もう、いい。
   はなしかけないで…。


   ……。


   ……。


   …わたしで、ほんとによかったの。


   ……はなしかけないでって、いったでしょ。


   こ、ここでひいたら。


   …。


   …女が、すたる、から。


   ………すたれちゃいなさいよ、ひびきなんか。


   …。


   …。


   ……かなでのせいになんて、したくない。
   ううん…しない。


   …。


   ……だから、ききたい。
   きかせて…かなで。


   …。


   …どうして、キスしてほしいなんて。
   いったの…。


   ……きもち、わるかったよね。


   え…?


   ……キスなんて、したくなかったよね。
   はじめてがわたしで……いや、だったよね。


   …。


   ……だけど、あやまらない。
   あやまりたくない…。


   ……いやじゃ、ないよ。


   うそつかないでよ。
   …いったでしょ、うそつきはきらいって。


   うそじゃない。


   …ぁ。


   ……うそじゃ、ないよ。


   ひびき……。


   …だけど、かなではよかったの。
   はじめてがわたしで……だってかなではおうじせんぱいが、


   ねぇ、ひびき。


   …。


   …すきってね、しゅるいがあるのよ。


   しゅるい…?


   ……ひとつじゃ、ないの。
   たったひとつじゃないの…。


   …。


   ……たったひとつなのは、このおもいだけ。


   …。


   …。


   ……かなで、ほんとうのおとをきかせて。


   ほんとうの、おと…?


   …そう、かなでのほんとうの、おと。


   ……わたしのおとって、なに。


   かなでが…奏だけが、奏でられる音だよ。
   奏でている、音だよ…。


   …。


   小さい頃から……好きだった。
   奏の音が、何よりも大好きだった…。
   他の、どんな音よりもきれいで…とても、澄んでいて。
   ずっと、聞いていたいって思ってた…。


   …わたしが、かなでる、おと。


   しゃ、洒落じゃないからね…?


   …わかってるわよ。


   ……。


   ……だけど、どうしろっていうの。
   どうしたら、いいの…。


   ……。


   それに…私の音なんて、きれいじゃない。
   澄んでなんか、いない…。


   …ううん、とてもきれいだよ。
   きっと、世界のどこを探しても見つからない…絶対に、見つからないの。


   …。


   ……ずっと、ずっと、聞いていたい。
   今でも……きっと、一生、思ってるの。


   ……いっしょう。


   …だから、奏。


   …………ひびき。


   …なぁに、かなで。


   ……わたし、ね。


   うん…。


   …ほんとうに、だめだと、おもったの。


   だめ…?


   あのとき…ひびきが、たおれたとき。
   ほんとうに、だめだと……おわってしまう、と。
   おもっ、たの…。


   …。


   …ひびきが、いない、せかい、なんて。
   いらない、の……。


   …。


   わたしが、まもりたいのは…まもりたいと、おもっていたのは。
   ひびきが…あなたが、いる、せかいなの…。


   …。


   わたしは、プリキュアなのに……ひびきのこと、ばかり、おもうの。
   ひびきを、うしなうのが、こわいの…。
   ひびきが、いなくなるのが……こわくて、こわくて、しかたがないの。
   はなれたく、ないの…そばに、ずっと、いたいの……。


   …。


   こわかった……こわかったよ、ひびき。


   ……。


   いたいの…。
   むねが、むねのおくが……いたくて、くるしくて、しかたがないの。


   …。


   ………あなたが、すきなの。
   だれよりも…ひびきのことが、すきなの。
   だいじ、なの…。


   ……。


   …この、おもいは、たったひとつだけ。
   ほかのだれでもない、ひびきだけにむけられているもの……。


   …。


   ……ねぇ、なにかいって。
   いってよ…ひびき。


   ………かなで。


   ねぇ、きこえる……きこえてる?
   わたしのおと、きこえた…?


   ……うん、聞こえた。
   聞こえたよ、奏…。


   …。


   ……ありがとう、奏。
   聞かせてくれて…ありがとう。


   …ひびきぃ。


   ……。


   ごめんね…ひびき。


   …私も、ごめんね。
   ごめんね…奏。


   ……ぁぁ。


   …あの時、リズムの。
   奏の、私を呼ぶ声が、聞こえた…。


   …。


   …だから、私は立ち上がれた。
   奏がいてくれたから……呼んで、くれたから。


   …。


   奏がいてくれるなら、私は、何度だって立ち上がれる。
   そう、あなたさえ、私のそばにいてくれるのなら…。


   …。


   かなで…好きだよ。
   大好きだよ…。


   …。


   …ずっと、わたしのそばにいて。
   一生、そばに…。


   ………わたしで、いいの。


   奏がいいの…。
   奏じゃなきゃ、いやなの…。


   ……めんどうだよ、わたし。


   しってる…だけど、そんなかなでもわたしはすきだよ。


   ………はなれない、いっしょう。
   それでも…


   …はなれないで、かなで。
   わたしも、はなれないから…。


   …。


   ……。


   ……キスして、ひびき。


   うん…かなで。


   ……。


   ……。


   ……。


   …………かなで。


   ……やっぱり、へたくそ。


   …ごめん。


   でも、でもね……ひびきらしくて、すきよ。








   …はい、奏。


   ありがとう…響。


   さっきはいらないって、言ったのにね。


   さっきはいらなかったの。


   それ、前も聞いたような気がするんだけど。


   気のせいじゃないの。


   いやいや、言われたって。
   あれは確か…む。


   それ、今思い出さなくちゃいけないこと?


   …。


   ねぇ、いけないことなの?


   …たく、奏は。
   だけどまぁ、いいや。


   …冷たくて、おいし。


   それでよかった?


   …うん、いいよ。


   そ…。


   響も飲んだら?


   うん、そうする。
   あー、喉乾いた。


   ……。


   …なに?


   見てるだけ。


   …そうですか。


   そうです。


   なんで敬語なの。


   そっちこそ。


   …。


   …。


   変な奏。


   響だって変じゃない。


   私は変じゃないよ。


   私だって変じゃないわよ。


   いーえ、変ですー。


   …。


   …わ。


   ……じゃあ、変でもいい。


   は?


   …いいよ、変でも。


   い、いや、だめでしょ?


   響が言ったんじゃない。


   そう、だけど……あぁもう、なんか調子狂うなぁ。


   …ふふ。


   ……。


   …なぁに?


   ………。


   ひびき…?


   ……どうしよう、奏がかわいい。


   はい…?


   すごく、すごく、かわいい…。


   …。


   か、かなで、キスしてもいい…?


   …ムードなさすぎ、だめ。


   ね、ね、キスしたい。
   いいでしょ?


   だーめ。


   さ、さっきは、か、かなでがしてほしいって言ったじゃん。
   だ、だから、今度は私が言っても…。


   …。


   かなでぇ…。


   …どうしても?


   ど、どうしても…!


   …私とキス、したい?


   したい…!


   …どうしようかな。


   か、かなでぇ……。


   …ふふ、情けない声。
   もう、仕方ないなぁ…。


   …!
   じゃあ…


   …ん。


   かなで……。


   …なんて、言うと思う?


   え。


   だめよ、響。


   え…えぇぇぇ。


   ……。


   そんなぁ…ひどい、ひどいよ、かなで。


   …もう一回、言って?


   キスしたい…!


   もぅ、それじゃなくて。


   なにをいえばいいの?!


   …かわいいって、もう一回、言ってくれたら。
   いいよ…キス、しても。


   ほ、ほんと…?


   …ん、ほんと。


   かなで。


   ん…。


   かわいい。


   …。


   …すごく、かわいい。


   ………響、私のこと、好き?


   好き。


   …。


   い、言ったよ…。


   ……じゃあ、いいよ。


   かなでぇ…ッ!


   え…きゃっ。


   ……。


   ひ、ひびき…。


   ……大好きだよ、奏。


   …っ。


   ……。


   …もぅ、あぶないじゃない…ばか。








   ……。


   …。


   ……♪


   …?


   …♪……♪


   ……響、その歌。


   …ちっちゃい頃、よく奏と歌ってたよなぁって。
   なんて歌だったっけ…。


   …とても懐かしいとは思うのだけど。


   思い出せない…?


   …。


   へぇ…奏でも忘れちゃうことってあるんだ。


   人のこと、なんだと思ってるの…?


   奏はなんでも憶えてると思った。


   …流石にそれはないわよ。


   少なくとも…私たちのことは。


   …全部は無理。
   ましてや小さい頃の記憶なんて…ね。


   ま、そうだよねぇ…。


   ……だけど、大切なことは忘れてないよ。


   大切なこと…?


   …雨の日の演奏会で、響が泣きながらピアノをやめるって言ったこととか。


   それは……忘れてよ。


   ううん…一生、忘れない。
   忘れてなんか、やらない。


   そ、そんなに…?


   …今でも、その感触を思い出せるの。
   雨に濡れたからだが、ふるえてたこと…。


   ……。


   …響が泣き止むまで、私、ずっと抱き締めてた。


   …。


   ね…響がまたピアノを始めてくれたこと、私、本当に嬉しかったんだよ。


   …奏。


   響のピアノが一番、好きなの…。


   …小さい頃から、聞いてくれてたよね。


   だって、本当に大好きだったんだもん…響のピアノ。


   …。


   …今も、大好きよ。


   奏に聞いて欲しい。


   …。


   …これからもずっと、私の音楽を聞いていて欲しい。


   うん…聞いてるよ、ずっと。


   おばあちゃんになっても、だからね…?


   …もちろん。


   ……。


   ん…ひびき。


   …おばあちゃんになっても、一緒に弾いてくれる?


   響のようには弾けないと思うけど…それでもいい?


   音楽とは。


   …。


   音を楽しむと書くんだよ、奏?


   …知ってる。


   奏と奏でる音楽は…何よりも、楽しい。
   それじゃ、だめ…?


   ううん…だめじゃない。


   じゃあ、弾いてくれる…?


   …うん、響。


   じゃ、約束…。


   ずっと一緒に音を楽しもうね…響。


   うん…一生、楽しもう。
   私たちの、私たちだけの音を…。


   ……うん。


   ……。


   ……。


   …ところで、奏。


   なに…。


   狭くない…?
   寝辛くない…?


   …ぜんぜん。


   このままでもへーき…?


   …へいき。
   だってひびきのうでのなか、きもちいいもん…。


   ……かなでのからだだって、やわらかくて、きもちいいよ。


   それ…むだなにくがついてるっていいたいの?


   へ…?


   …。


   ち、ちがうよ。
   かなでは、どっちかというと、ほそいよ…。


   …。


   だ、だけど…うまくいえないけど、やわらかくて、きもちいいの。
   いいにおいもするし…。


   ……ふふ。


   かなで…。


   …ねているうちに、はなれてしまうかもしれないけど。


   …。


   でも、ねむるまではこのままでいたい…。


   ……うん、わたしも。


   …ね、さっきのうた、もういちどうたって?


   いいけど…どうせだから、いっしょにうたおうよ。


   …。


   …うたって、かなで。


   ……うん、ひびき。





   …愛おしくて。


   嬉しくて…。


   …悲しくて。


   切なくて…。


   …悔しくて。


   もどかして……。





   …愛のメロディー。





   …。


   ……思い出した。


   …私も。


   あの頃は、歌詞の意味も分からないで歌ってたことも…。


   ……。


   今は…少しだけ、分かる。


   …。


   …あの頃にはなかった、気持ち。
   ううん…あの頃から好きだった、けど。


   …。


   …もしも、一年も擦れ違っていなかったら。
   この想いは…生まれなかったかもしれない。


   …もっと、言えば。


   …。


   …プリキュアになって、なければ。


   ……うん。


   だけど……。


   …もう、あの頃には戻れない。
   この気持ちを知らなかったあの頃には、もう…。


   ……愛おしいって、こういう気持ちを言うのかな。


   …。


   ん、かなで…。


   …離れたくない。


   ……離れない。
   もう二度と……離れたくない。


   …ぜったい、だからね。


   うん…ぜったい。


   …せきにん、とってね。


   せきにん……責任?


   …そう、責任。


   私が取るの…?


   …当たり前でしょ?


   あ、当たり前って。
   と言うか、奏は…。


   ここで決めなきゃ、女がすたる。


   む…。


   …でしょ?


   …。


   …すたれちゃっても、いいの?


   ……ここで、決めなきゃ。


   …。


   女が、すたる。


   …ん。


   ……せきにん、とるよ。


   しあわせにしてね…?


   …がんばる。


   わたしも、がんばるから。


   …奏もがんばってくれるの?


   もちろん…ふたりで、がんばろ?


   うん、かなで…!


   …ん、くるしい。


   あ、ごめん…。


   ……ゆるさない。


   ごめんって…。


   …もっと、ぎゅうってして。


   …!


   もっと、してくれたら…ゆるしてあげる。


   わかった…!


   ……ん。


   かなで…、わたしのかなで。


   …わたし、ひびきのものなの?


   そうだよ、かなではわたしだけのもの。
   だからだれにもあげない、あげないんだ。


   …いいかたが、こどもみたい。


   いっとくけど、わたしはかなでのものなんだからね。
   だれにもあげちゃ、だめなんだからね。
   ぜったい、なんだからね。


   …ばか。


   ばかじゃないもん…ほんきでいってるんだよ、わたし。


   …だから、ばかっていってるの。


   なんでよ…。


   …だれかになんて、ぜったいに、あげない。


   …。


   あげるわけ、ないじゃない…ばか。








   ……。


   ……ひびき。


   …。


   …ねちゃったの?ひびき。


   ………うぅ、ん。


   ねぇ…もうすこしだけ。


   ……かなで。


   …もう、すこしだけ。
   ひびきのこえ、きかせて…。


   わたし…もぅ、ねむい……。


   …しってる。
   ねちゃったら、あさまでおきないってことも…しってるから。


   かなで…かなでも、ねよう…?


   …ねるよ、ひびきといっしょに。


   う、ん…。


   ……。


   …。


   ……ひびきがプリキュアをやめないなら、わたしもやめない。


   …うん。


   だけど……わたしは、ひびきのようにはもう、たたかえないとおもう。
   みんなのためにはもう、たたかえない…。


   …?


   ……わたしがまもりたいせかいは、まもりたかったせかいはね。
   とても、とても、ちっぽけなものだった…それに、きがついてしまったから。


   かなで…?


   ひびきといっしょにいるために…ひびきのえがおをまもるために。
   わたしのたいせつなものを、こわされてしまわないように…がんばって、たたかうの。


   …えれん、も。
   あこも、いるよ…。


   ふたりのことも、だいじだとおもってる…けどやっぱり、ひびきがいちばんたいせつなの。


   ……。


   だから……みんなを、せかいをまもるひびきを、わたしがまもるの。
   まもりたいの…。


   ………かなで。


   …わたしがわたしらしくいられるのは、ひびきがいるから。
   ひびきが、いてくれるから……。


   …。


   …ひびきが、いなくなったら。
   いなくなって、しまったら……せかい、なんて。


   ……。


   だから……だから。


   ……わたし、がんばる。


   え…?


   かなでが、わらっていられるように…いっしょうけんめい、がんばるんだ…。
   がんばらなきゃ、かなではまもれない…すきなひとをまもれないのは、そんなのはおんながすたるんだ…。


   ひび、き…。


   ……がんばろ、かなで。
   きっと、えれんも、あこも……がんばって、くれるから…。


   うん……うん……。


   ……。


   ……ごめんね、ひびき。
   ねむたいのに……。


   ……いい、よ。
   かなで、だから……。


   …。


   でも…もぅ、げん、かい………。


   …うん、もういいよ。
   ありがとう…ひびき。


   ……あ。


   …うん?


   わすれてた……。


   ……。


   ……おやすみの、きす。
   ぱぱがままに、してるんだ……ままも、ぱぱに…。


   ……。


   …おやすみ、かなで。
   また、ね…。


   ……おやすみ、ひびき。
   また、あした…。


   ん……。


   ……。


   ……。


   …………だいすきよ、ひびき。
   ずっと、ずっと、わたしのそばにいてね…。








   …。


   …ひびき。


   …。


   ひびき。


   ……ぅ。


   響。


   …うぅ。


   響、起きて。
   朝だよ。


   …もぅ、すこし。
   あと…ごふん…。


   いいけど。


   うん…じゃ、おやすみ。


   朝ごはん、冷めちゃってもいいのね。


   …。


   私、先に食べて


   北条響、たった今、起きました。


   おはよう、響。


   おはよう、奏。
   今日はいい朝だね。


   いつもと変わらないわよ。
   それからなに、その無駄にいい笑顔。


   いやいや、とてもいい朝です。
   奏が起してくれて、朝ごはんを作ってくれてる…こんないい朝はございません。


   変な響。


   ひどっ。


   だって変じゃない。
   何よ、その言葉遣い。


   私は本当にいい朝だって思ってるんだよ?
   本気で言ってるんだよ?


   はいはい。
   じゃ、さっさと着替えて顔を洗ってきて。


   はーい。


   それから、髪を整えるのも忘れないでね。


   結んで。


   は?


   髪の毛、結んで?


   …自分でやりなさいよ。


   奏に結んで欲しい!
   ほら、小学生の頃まではよく結んでくれたじゃない?
   またやってよ!


   …もう、中学生でしょ。
   自分でやりなさいよ、と言うか、やってたでしょ。


   中学生になっても、奏に結んで欲しかったんだよ。


   …は?


   結んで欲しかったの。


   …。


   奏。


   …そんなに私に結んで欲しいの?


   うん!


   どうしても?


   どうしても!


   …。


   結んで、奏。


   …もぅ、しょうがないなぁ。


   結んでくれる?


   しょうがないから、結んであげる。
   だから早く、着替えて顔を洗ってきて。


   うん!
   じゃあ、着替える!


   慌ててブレザーのぼたん、かけ間違えないようにね。


   そしたら直して!


   そこまではしません。








   〜〜♪


   …。


   〜♪〜〜♪


   …ちょっと、あまり動かないで。


   ん〜〜♪


   て、なんでこっち向こうとするの、結べないでしょ。


   んー♪


   んー、じゃないわよ、もう。


   …〜〜〜♪


   …。


   〜〜♪〜♪


   …響語。


   〜♪?


   響って、小さい頃も機嫌がいいとよく歌ってたわよね。
   自分で曲を作って…なんか良く分からない、響だけの言葉で。


   んー…そうかも。


   そうなの。
   はい、片方おしまい。


   ありがと。
   でも、奏と一緒の時だけだよ?


   私と一緒じゃない時の響なんて知らないし。


   一緒の時だけなの。


   はいはい、じゃあそういうことにしておくわ。


   そうなの。


   分かったって。
   もう少し、じっとしててね。


   はーーい。


   て、言ってるそばから。


   …〜〜♪


   ……ねぇ、響。


   なにー?


   …雨の唄って、あったわよね。


   あめのうた…?


   …雨の日に歌ってた、唄。
   ふたりでお迎えを待ってた時…よく、歌ってたじゃない。


   んー……。


   …憶えてない?


   ………。


   …はい、おしまい。
   もう、動いていいわよ。


   ……〜♪


   …?


   〜〜♪、♪〜〜♪


   あ。


   〜♪、♪、♪〜〜♪


   ……。


   …こんな感じだった?


   …憶えてるんじゃない。


   んーん、思い出したの。
   奏の為に。


   …。


   がんばったんだよ?


   …あ、そ。


   え、酷くないですか、その反応。


   ……。


   奏ぇ。


   …。


   …わ。


   ……私、その唄好きだったんだからね。


   え、そうなの?


   そうなの。


   知らなかった。


   じゃ、知っておいて。


   ん、分かった。


   雨の日に歌ってね。


   それはお願い?


   だとしたら?


   奏のお願いなら、しょうがないなぁ。
   歌ってあげてもいいよ。


   じゃ、お願いしない。


   は、なんで?
   ここはありがとって言ってくれるところじゃないの?


   そんなの、言わない。


   えー。


   さ、朝ごはんにしましょ。


   奏は素直じゃない。


   それ、響には言われたくない。


   奏よりかは素直だよ。


   …。


   あ、奏。


   ごはん、食べるの?食べないの?


   もちろん、食べるよ!


   そ。


   ……。


   …なに。


   いつもの奏。


   は…?


   別にいいんだけど。


   …言いたいことがあるなら、言えば?


   言わない、めんどうだから。


   何よそれ。


   …。


   響。


   …めんどう!


   え…ちょ…っ。


   ……。


   いきなり、なに…。


   …奏がいつもどおりだから、だよ。


   意味が、分からないん、だけど…。


   …。


   響…。


   ……私、奏の為ならいくらでも歌うし、ピアノも弾くから。


   …ぁ。


   忘れないで、憶えておいてね…これからも。


   ひびき…。


   …。


   ………忘れないからね、ぜったい。


   …うん、いいよ。


   ……。


   ……。


   ……ねぇ、ひびき。


   なに…かなで。


   ……は、しないの?


   え、なに…?


   ……おはようのきす、は、しないの?


   …え?


   だ、だって…おやすみのキスは、したじゃない…?


   …!


   …しない、の?


   あ、あぁ…!!


   …。


   ……え、と。


   …。


   …する?


   ……きいてるのは、わたしなんだけど。


   …。


   …。


   ……じゃあ、する。


   …じゃあ、って、なによ。








   ベーコンエッグ?


   ベーコンの賞味期限が切れそうだったから。
   …いやだった?


   んーん、そんなことない。


   なら、いいけど。


   やった、ベーコンエッグだ。
   私が作ってもこんなきれいに焼けないから嬉しい。
   パパが作ってもたまご潰れちゃうし…うちはみんな、料理がほんとだめなんだよね。


   ケチャップでいいのよね?


   うん、ケチャップ。
   奏んちは醤油だっけ?


   うちはね。
   でもケチャップも好きよ。


   私も醤油でもいいよ。
   嫌いじゃないから。


   響って嫌いなもの、ないわよね。


   奏が作ってくれるものだったらね。


   …そ。


   ねぇねぇ、今度オムライス作って。
   奏が作ったオムライス、食べたい。


   ほんとはオムライスも考えたのよね。


   え、そうなの?


   どっちがいいかなぁって思って。
   でも朝ごはんにオムライスは少し重たいなって。


   私は平気だよ!


   響が平気でも私のお腹には重たいの。


   じゃあさ、夕ごはんに作って!


   はいはい、今度ね。


   約束したからね。


   分かったって。


   なんだったら、今日の


   二泊するわけにはいかないわよ。


   …なんで?


   家の手伝いもしなきゃいけないし。
   それに…昨日は勉強も全然出来なかったし。


   家の手伝いをしてからうちに来ればいいじゃん。
   勉強だってうちでやればいいよ。
   …私はしないけど。


   とにかく、今日は泊まらない。
   それと勉強はして。また酷い点を取っても知らないわよ。


   …ふぅん。


   拗ねないでよ。


   拗ねてないよ。


   拗ねてるじゃない。


   拗ねてない。


   その態度が拗ねてるって言うのよ。


   しつこいな、拗ねてないって言ったら拗ねてないの。


   大体、


   一緒にいたいって言ったじゃん。


   …。


   …離れたくないって、言ったじゃん。


   ……響。


   …それとも忘れちゃった?
   奏ともあろう人が?


   …そういう、言い方。


   だって……もう、いい。


   …。


   …たまご、半熟。


   …好きでしょ、半熟。


   ……うん、好き。


   …私も、好きよ。


   ……。


   オムライスは…絶対に作ってあげるから。


   …絶対、だからね。


   私、響とした約束は破らないわ。


   …。


   …破りたく、ないの。


   ……。


   …離れたくないって言ったこと、嘘じゃないのよ。
   本当のことを、言えば……そばにいたいし、いてほしい。


   …。


   …でも、だけど。


   ……ねぇ、奏。


   …なに、響。


   結婚したら、一緒にいられるのかな…。


   …え。


   毎日、奏が作ったごはんを食べて…私は出来ることを、して。
   喧嘩もすると思うけど…それでも、同じベッドで一緒に寝て。
   そんな風に…いられるのかな。


   …。


   ……家族になれば、一緒にいられる?
   ううん、家族だって…一緒には、いられない。


   …。


   …やっぱ、なんでもない。


   そこまで言っておいて、なんでもなくはないでしょ。


   なんでもないよ。


   響。


   …なんでもないって言ってるの。


   それが、響の本当の音なら。
   私は聞かないわけにはいかないし、聞きたいの。
   響だって言ったでしょ、私の本当の音を聞かせてって。


   …知らない、憶えてない。


   だったら、知って。
   そして、思い出して。


   ……。


   …響。


   ………奏の作ったごはん、毎日食べたい。
   ケーキも、毎日、お腹いっぱい食べたい…。


   …。


   奏と、一緒にいたい…。


   …。


   …全部、奏のせいだ。
   ずっと、ずっと、分からないようにしてたのに…。


   ……それが、響の本当の音なら。


   …。


   …ねぇ、響?
   分かる…?


   …何が。


   私、嬉しいの。


   …。


   …うれしいの、ひびき。


   奏……。


   …。


   …かなで。


   ……ひびき。


   …。


   …朝ごはん、早く食べよ?


   ……え?


   このままだと遅刻しちゃうから。


   …なに、それ。
   なにそれぇ…。


   だって、今日は学校だもの。
   遅刻するわけにはいかないでしょ?


   そうだけど…そう、だけど!!
   この流れでそんなこと言う…?!


   もたもたしてたら先に行っちゃうから。
   遅刻したくないし。


   な…っ。


   一緒に行きたいなら、ね?


   べ、べつに一緒に行きたくなんかないし!
   先に行くってなら、先に行けば!?
   私はひとりで行くか、ら…?


   …。


   奏…?


   …響は私と一緒に行きたくないんだ。


   え…。


   私と一緒じゃいやなんだ…。


   そ、そんなことは…ない、よ?


   別に一緒に行きたくなんかない。
   先に行けば、私はひとりで行くから。
   たった今、そう言われた。


   そ、それは、奏が先に行くって言うから…だ、だから。


   私は先に行くとは言ったけど、響と一緒に行きたくないとは言ってない。


   …ッ。


   …言ってないのに。


   か、かなで……。


   ……。


   あ、あの…あの、ね?
   私はべつに奏と一緒に行きたくないわけじゃ、なくてね…?
   どっちかと言われたら、その、一緒に行きたいわけで…


   ……ふふ。


   …へ?


   響ってば、必死すぎ。


   …はぁぁぁぁぁ???


   ふふ…。


   ちょ、ちょっと、今のなに?!
   なんだったの…!?


   ね、響。


   なに…ッ!


   私と一緒に行きたい?


   …ッ
   い、行きたく…ッ


   …。


   ……あぁ、もう!
   行きたい、行きたいよ!
   奏と一緒に行きたい…!


   …そ。


   奏は…?!
   私と一緒に行きたいの!?


   私は、別に?


   は、はぁぁぁぁぁぁ??


   …。


   なんなの、このやりとり…ッ!
   意味が分かんないだけど…!!
   結局、さっきの流れはなかったことにされてるし…!


   ねぇ、響。


   なによ…ッ。


   私と一緒に行きたいなら、行きたいと思ってくれてるなら。
   早く食べて、支度してね?


   …ッ。
   あぁぁぁもぅぅ…ッ。


   …。


   奏…ッ。


   なに?


   オムライス、絶対に作ってね!!
   おやつにカップケーキも!!


   はいはい、作ってあげる。


   上からだし!!


   …。


   ほんと、奏は…!


   …この国ではまだ、出来ないけど。


   うん…?!


   …ちゃんとうれしかった、からね。


   なに、聞こえないんだけど!


   ちゃんと責任取ってねって、言っただけ。








   ……。


   響、戸締りは大丈夫?


   ……ちゃんとしたよ。


   なら、いいけど。


   …。


   まだ拗ねてるの?


   …別に拗ねてないし。


   思い切り拗ねてますって顔に書いてあるんだけど。


   …書いてないし。


   響は分かりやすいわよね。


   …。


   ねぇ、響。
   手、繋ぐ?


   …繋ぐ。


   繋ぐんだ?


   繋ぐよ、悪い?


   ううん…悪くない、けど。


   繋ぎたいから、繋ぐの。


   …。


   て、奏。


   …やっぱり、繋がない。


   …。


   …あ。


   私はちゃんと繋ぎたいって言った!
   だから、奏の言うことなんて聞かない!


   …。


   離さないからね!


   …うん、離さないで。


   オムライス、作ってね!


   …オムライスだけでいいの?


   だめ!


   …他には何が食べたい?


   なんでも!!


   なんでもが一番困るの。
   ちゃんと言って。


   そしたら、カレーライス!
   カレーライスも食べたい!


   カレーライス…他には?


   他には……そうだ、炊き込みご飯!
   交換ステイの時にパパに作ったのと同じのを作って!!


   …うん、いいよ。
   おかわりできるように、いっぱい作ってあげる。


   いっぱい、食べるからね!


   分かってる。
   …で、機嫌直った?


   最初から悪くないし!


   そう?


   そう!


   …ふぅん。


   なに。


   もしも、直ってなかったら…キス、してあげようかなって思ってたんだけど。


   …え。


   直ったのなら、いいわ。


   ……。


   さぁ、行きましょ。
   忘れ物はない?


   奏!


   なぁに?


   …。


   …なぁに、響?


   ……やっぱ、なんでもない。


   は…?


   呼んでみただけ。
   さ、行こ。遅刻したくないんでしょ。


   …。


   そういやハミィ、まだ帰ってこないのかな。
   今頃、なにしてんだろ。エレンといっぱい、お喋りできたかな。


   意気地なし。


   …は?


   おはようのキスはしたくせに。
   おまけに、へたくそなくせに。


   なに言ってるの、かな…あ。


   響のばか、ばーか。


   奏、なんで手離すの、と言うかばかってなに、なんなの。


   知らない、ばか。


   離さないって言ったでしょ。
   なのに、なんで離すの。


   響がばかだから、よ。


   ばかって言った方がばかなんだよ、奏のばか。


   て、ちょっと、やめてよ。


   手、繋ぐって聞いたのは奏だし、私は繋ぎたいって言った。
   だから、繋ぐの。何があっても、繋ぐの。


   いやよ、繋がない。


   ここで決めなきゃ女がすたる…!


   すたれちゃえばいいでしょ…!


   かーなーでー!


   いやって言ってるの!
   しつこいわよ!


   …!


   何よ、響のばか!


   ……。


   …。


   ……もう、いい。


   …。


   …奏の言ってること、よくわからない。
   よく、わからないよ…。


   ……。


   …。


   ………響。


   …。


   …響。


   …。


   …無視、しないで。
   返事、してよ…。


   ………わからないよ、奏。


   …。


   …わたし、どうしたらいいの。
   なにをすればいいの…。


   ………手、繋いで。


   …いやなんでしょ。


   ……いやじゃないから、繋いで。


   …しつこいって、言われた。


   ……だって。


   …。


   ……。


   …だって、なに。


   ……響が、なんでもないって言うから。


   …。


   ………キス、したかったの。


   …ッ。


   …それなのに、なんでもないって言うから。


   だって…ッ。
   だって、奏が意地悪そうな顔して笑ってるから…ッ。
   絶対、なんかあると思って…ッ。


   なんかってなによ…ッ。


   なんかはなんかだよ…ッ。


   なによそれ!
   響こそ、よくわかんないじゃないッ。


   奏の方がわかんないよ!
   全っ然、わかんないよ…!


   …。


   あ。


   ……。


   かなで…。


   ………めんどうでしょ、わたし。


   …。


   …こんなわたしと、ずっといっしょになんていたくないよね。


   …。


   …キスしてほしいって、いってほしかったの。
   それで…ひっしになって、ほしかったの。


   ………かなでは。


   …。


   すなおじゃないし、いじっぱりだし…よくわかんない、けど。


   ……。


   …だけど、だけど。
   わたしは…ずっといっしょにいたいって、おもう。


   …。


   いっしょにいたいっていわれたとき…すごく、うれしかった。
   すごく、すごく、うれしかったから…ずっといっしょにいたくないなんて、おもわない。


   …。


   そ、それに…!
   責任取るって、約束したから…!!
   だから一生、責任取らないと…!


   …。


   …う。


   ……こんな私だけど。


   …。


   ……一生、ね。


   ま、任せて…ッ。


   …どうかなぁ。
   響ってば、意外に泣き虫だし…。


   泣き虫は関係ないじゃん…!


   …そう?


   そうだよ…!


   ……ひびき。


   …。


   ……。


   ……かなで。


   …キス、してほしかったんでしょ?


   ……。


   …ひびき、わたしのこと、すき?


   …………すき。


   …。


   かなでは…わたしのこと、すき?


   …もう、しってるでしょ?


   …。


   …。


   …かなでは、ほんとうに。


   ………すきよ、ひびき。


   …からの、ふいうちだし。


   ふふ…真っ赤、ね?


   か、奏だって…!


   …だって、すきなひとにすきっていうの、はずかしいんだもの。


   …ッ。
   あぁぁもうぅぅ…ッ。


   …声、大きい。








   ……。


   ……。


   …あー、顔があっつい。


   …顔、真っ赤だもん。


   …。


   …ねぇ、ひびき。


   ……なに、かなで。


   わたしたち、りょうおもい、なのよね…?


   …たぶん。


   たぶんって、なによ…。


   たぶんは、たぶんだよ…。


   …この期に及んで違う可能性があるって、言いたいの?


   そうじゃなくて…。


   …そうじゃなかったら、なに。


   …。


   …。


   ……かなで。


   …ちゃんと、いって。


   何を言えばいいの…。


   …私、響にちゃんと言ったわ。
   好きって……言ったわ。


   …私も言ったよ、奏が好きだって。
   キスだって…したし。


   だったら…。


   …。


   …だったら、これから私たちはどうするの?


   どうするって…。


   …両想いなら。
   ずっと一緒にいようって約束したなら…。


   …。


   …これからの私たちの関係は、変わるの?
   それとも…変わらないままがいいの?


   …奏は変わったほうがいいの。


   聞いてるのは私…。


   …。


   ……ねぇ、ちゃんと言って。


   …奏はなんて言って欲しいの。


   言わなきゃ、分からない…?


   …分からないから、聞いてるんだよ。


   響は…本当にそういうこと、分からないのね。


   …。


   ……私たち、これからもただの幼馴染のまま?
   両想いで、キスもするのに…責任を取るだなんて、将来の約束めいたこともしたのに。


   …。


   …ちゃんとした言葉が欲しいの。
   響から、欲しいの。


   …。


   …ねぇ、なんか言ってよ。
   ちゃんと、言ってよ…。


   ………付き合って、奏。


   …。


   私、奏のこと、好きだから…付き合って、下さい。


   …。


   …これで、いい?


   どうして聞くの…。


   …だって、奏が欲しい言葉かどうかわからないから。
   それに、こういうの、まだよくわかんないし…。


   ……。


   わ…。


   …しょうがないから、付き合ってあげる。


   …。


   …付き合ってあげる、ひびき。


   あぁもう、奏は…。


   …ありがと、ひびき。


   どういたしまして…かなで。


   ふふ…へんなの。


   …かなでには、いわれたくない。


   …。


   これからの、わたしたちは…その、こいびとどうし、だからね。
   おさななじみなのは、かわらないけど…。


   ……うん、ひびき。


   …。


   …ひびき。


   かなで…。


   ………ひびき。








   …ねぇ、奏。


   …うん?


   思うんだけど、さ…。


   …何を?


   私も結構、ぼろぼろになったけど…リズムもぼろぼろになったよね。


   …。


   昨日の、話。


   …それでも、メロディほどじゃないわ。
   私は…私は結局、捕まってしまって何も出来なかった。
   メロディが痛めつけられるのを、ただ、見ていることしか出来なかった…。


   …。


   …本当にだめだと、思ったの。


   リズムだって、痛かった。


   …え?


   リズムだって、ぼろぼろになって…痛かったでしょう?
   傷だらけになって…痛くなかったわけ、ないでしょう?


   …。


   …あの時、私は。


   あの時…一番、痛かったのは。


   …。


   体なんかじゃなくて…心だよ、響。


   …私も同じだよ、奏。


   …。


   ……同じなの、奏。


   …響。


   私ね…奏と一緒でよかったって、心から思ってるの。


   …うん、私も思ってる。
   響と一緒でよかったって…。


   だけど……だけどね。


   …。


   奏がプリキュアになっていなかったら…あんな痛い思いをすることもなかったのかなって。


   …それは響も同じだよ。


   ねぇ、奏。
   どうして私たちだったんだろうね。


   それは…心にハートのト音記号があったから。


   なんで、私たちの心にあったんだろうね。
   加音町のみんなだって、音楽を愛しているのに。


   それは…分からないわ。
   今でも、分からない…。


   …私、奏に痛い思いをさせたくない。
   して欲しくないの。


   私だって…!


   …奏と一緒だから、私はがんばれる。
   けど…奏が怪我をしたり泣いたりするのは、本当はいやでいやで仕方ないの。


   ……私だって、いやだよ。


   リズムがハウリングに捕まった時…絶対にゆるさないと言う気持ちで、頭の中がいっぱいになった。
   リズムを助けなきゃ倒すことは出来ない、音楽を取り戻すことも出来ない…だけど、それ以上、に。


   響…。


   …ビートとミューズのことだって大事なのに、大事だと思っているのに。
   頭の中はリズムのことでいっぱいで…。


   …。


   ……私、奏を守りたい。


   …。


   …だけど。


   ……わかってる、わかってるよ、響。


   奏…。


   …だから、私はそんな響を守りたいと思うの。
   そんな響だからこそ、私は守りたいと…強く思うの。


   ……。


   ……。


   …抱き締めたい。


   ……抱き締めて。


   …。


   …強く抱き締めて、響。


   ………奏。


   …。


   ……奏も。


   …うん、響。








   …。


   ……遅刻、しちゃうね。


   …いいじゃない、たまには。


   私、一応優等生で通ってるんだけど…。


   …自分で言う?


   悪い…?


   …べつに悪くはない、けど。


   …。


   …私とふたりの時は、優等生じゃなくてもいいって思ってるんだけど。
   ただの奏でいいって、思ってるんだけど…。


   ……あぁ、もう。


   ん…奏?


   ……ほんと、響って厄介よね。


   は…?


   …厄介。


   ちょ、なんでよぉ…。


   …。


   奏、ねぇ、奏ってば。


   ……ただの奏って、なによ。


   ただの奏は…ただの奏だよ。


   …。


   …わがままで、めんどくさくて、でも、私が大好きな奏のことだよ。


   ……なによ、それ。


   だ、だから…。


   …ほんと、厄介。


   …。


   ……言い訳、どうしようかしら。


   …言い訳?


   遅刻した理由。
   響はいいかもしれないけど、私にはそれなりの理由がいるの。
   響の前は…ただの私かもしれないけど、学校では違うの。


   て、私だってよくないんですけど。


   いつも遅刻ぎりぎりじゃない。


   いつもじゃないよ、それにぎりぎりだけど遅刻はしてないよ。


   それもどうなの?


   遅刻はしてないんだから、いいじゃん。


   日直。


   …う。


   忘れてること、あるわよね?


   それは…あるけど、でも、遅刻はしてない、よ?


   そういう問題じゃない、でしょ。


   …だって、忘れちゃうんだもん。
   しょーがないじゃん…。


   …しょうがないじゃないでしょ、もう。


   ……奏ってほんと、優等生。


   ありがとう。


   …お礼を言われること、言ってないよー。


   ……。


   …奏。


   ……響の前では、ただの私でいられる。


   うん…?


   …ね、響の前ではただの私でいい?


   …。


   …ただの私で、いいよね?


   ……さっき、そう言った。


   …もう一度、言って欲しいの。


   …。


   …言って?


   奏はしょうがないなぁ。
   じゃあ、何度でも言う。


   …何度も言わなくてもいいけど。


   ううん、言うよ。
   しつこいって言われても、呆れられても、言うの。


   ……。


   …好きだよ、奏。


   ……言ってること、違うじゃない。


   ただの奏が、好き。


   …優等生の私は?


   ……一応、好き。


   一応…?


   …どんな奏でも好きってことだよ、察してよ。


   …。


   ……だから、もう少しだけこうしてよう?


   …しょうがないから、していてあげる。


   もぅ、奏は…。


   ……ふふ。


   …。


   …。


   …ね、またキスする?


   ……したいなら、してもいいけど。


   …。


   ………して、ひびき。


   …うん、かなで。


   ………。








   ねぇ、奏。


   なに、響。


   今日もいい天気だね。


   何よ、それ。
   それよりもう少し急がないと。


   だっていい天気じゃない。
   それとも奏には悪い天気に見えるの?


   見えないわよ。
   どう見てもいい天気にしか見えないわ。


   こんな天気の日はどっか行きたくならない?


   サボりの誘いならお断り、よ。


   …。


   …何よ、その顔。


   がんばったんだけど。


   何を?
   サボりの誘いを?


   違うよ。


   違うの?


   違います。


   じゃあ、何をがんばったのよ。


   わからないの?


   わからないわよ。
   はっきり言って。


   奏って意外に鈍いよね。


   はぁ?


   わかんないなら、いい。


   よくないわよ、気になるでしょ。


   気になるの?
   ほんとに?


   なるわよ。
   サボりの誘いじゃないというなら、なんなの。


   んー…。


   ちょっと、響。


   …。


   響。


   …今度の休み、こんな天気だったらいいと思わない?


   は…?


   だからさ、今度の休みもこんないい天気だったらいいなって。


   …だから、何?


   …。


   …何、その顔。


   南野さん、鈍感にも程がありませんか。
   私には察しろっていうくせに、どうなんですか。


   …意味がわかんない。
   どうして私が責められなきゃいけないのよ。


   …。


   …。


   …デート、しませんかって言ってるんだよ。


   デート…?


   …今度の休み、ふたりきりで。
   デートなんだから、当たり前なんだけど…。


   ……。


   …これでもまだ、わかんないの。


   …!
   響…!


   な、なに。


   わ、わかりづらいのよ…!!


   痛い…!


   デ、デートの誘いならもっとちゃんと言いなさいよ…!


   言ったじゃん!
   こんないい天気の日はどっか行きたくならない?って聞いたじゃん!
   と言うかなんで私叩かれてんの?!


   言ったけど、それをデートの誘いだなんて思わないわよ…!


   思ってよ!私、すっごいがんばったんだよ!?


   知らないわよ、そんなの…!


   前の日からうちに来て!でもって、泊まって!
   お店の手伝いがあるっていうなら、終わった頃に迎えに行くから!


   ちょ、ちょっと響…!


   朝になったらごはんを食べて、ふたりだけで出かけようよ!!
   出かけるのがいやなら、うちにふたりでいようよ!!
   奏とふたりきりでいたいんだよ!!


   …ッ。


   わかったでしょ、わかったよね?!
   これでわかんないとか言われたら、どうしていいかわかんないよ!?


   こ、声が大きいわよ…!


   だってしょうがないじゃん!


   しょうがなくないわよ!


   はっきり言えって言うから、言ったんだよ!


   だ、だからって…ああもうッ。


   で、答えは?!


   …。


   か、奏…?


   ……して、あげる。


   は?


   …デート、してあげる。


   ……。


   …なに、よ。


   ほんとに奏は…。


   …。


   …じゃあ、約束したからね。


   ……うん。


   …。


   …ねぇ、響。


   なに。


   …耳まで真っ赤。


   ……奏もね。


   …誰のせいよ、ばか。








   どれだけ、大事に想っているか。

   どれだけ、守りたいと思っているか。

   だからこそ、全部を懸けて頑張れるのだと。



   私はあなたを、何よりも誰よりも、愛しているから。



   いつか、死んでしまうかも知れない。

   いつか、失くしてしまうかも知れない。

   いつか、いつか、その時が。

   一瞬で終わってしまうその時が、たとえ、来たとしても。



   今はただ、一緒に居られる時間を大事にしようと思うの。

   そして、この大切な時間が少しでも長く、続いてゆくように…頑張ろうと、頑張りたいと思えるの。

   ずっと、ずっと、あなたと一緒に…おばあちゃんになっても、あなたの隣にいたいから。



   ねぇ?

   わたし、あなたをあいしているの。

   ほかのなによりも、だれよりもよ?

   わたしにはあなただけなの。

   ねぇ、あなたもそうでしょう?

   ちがうなんていったら、いっしょう、ゆるさないんだから。

   …じょうだんよ。ううん、やっぱり、じょうだんではないかも。



   …ね。

   わたしにはあなただけってこと……どうか、わすれないで。

   ずっと、ずぅっと、わすれないでいてね。










   行くよ、リズム!!


   オッケー、メロディ!