−花標。(俺屍版)
今の私達が在るのはこの方々が居たからなのよ。
…。
貴女の名前は今、一番下の此処にあるでしょう?
これをずっと遡っていくと…。
しょだいさまにつながるんですね。
ええ。
もっと言えば初代さまのご両親である源太さまとお輪さまに。
ようこさまもですか?
そうよ。
私達は皆、同じ祖を持っているの。
…。
けれど交わりを繰り返すうちにその血は遠くなった。
例えば私と
はーい、私わたし。
…聖を見てみて。
ここから分かれてからずっとだから……ね、遠いでしょう?
ほんとだ…。
途中で氏神と交わっている方もいるから全員が全員、遠いとは言い切れないのだけれどね。
さちこさまとわたしは、ちかいですか?
そうね。
貴女と祥子は此処、私のお姉さまである椿さまから分かれているから。
“おばあさま”ですね。
ああ、貴女から見るとそうなるのね。
おばあちゃんは蓉子だけどね。
…お姉さまから分かれた血は兄上と祥子に。
兄上の血は祐巳、貴女に繋がっている。
だから私と祥子よりも、貴女と祥子の方がより姉妹らしいかも知れないわね。
ほぁぁ…。
ま、血で決めるもんでも無いと思うけどね。
…術の巻物、指南書、武器防具や数多くの道具。
それらの全てが最初からこの家にあったわけでは無いのよ。
そうなんですか?
自分達の代では果たせない、けれど、何もしないわけにはいかない。
一つでも多く自分の子の為に、更にはその子の子の為に。
そうやって残して下さった物なの。
わぁぁ…。
ま、中には面倒くさがった人もいると思うけどね。
あとはたまたま、とか。
…聖。
蔵の整理も大変だよね。
もっとちゃんと整理しておいてくれても良かったのに。
聖。
へいへい、すみまそん。
こほん。
こうやって家系図を見ているとね、祐巳。
はい。
ご先祖さまたちの想いが分かるように思えるの。
…?
私は…いえ、私達の代ではもう果たす事は出来ないだろうけど。
けれど貴女達が居るから。
ようこさま。
うん?
ようこさまはこうしん、しないんですか?
え…。
…。
えりこさまは、れいさまとよしのさんにわかれて、つながっています。
でもようこさまは
祐巳ちゃん。
あい?
何も、血に限らなくても良いんだよ。
ち…?
…祐巳。
はい。
私の血は…連なる血は私で終わるわ。
おわってしまうんですか?
つながらないんですか?
…ええ、そうよ。
どうして
祐巳は私がこの家に居た事、ちゃんと覚えていてくれるでしょう?
おぼえて…?
それに…ほら。
辿っていけば、貴女に繋がっているわ。
誰とも繋がっていないわけじゃない。
でも
私達は“双子”として分かれた。
だから、私と貴女はそこに居る聖よりも近しいの。
ちなみに私と志摩子もそうだったりね。
……。
祐巳。
…はい。
実を言うとね、私の血は私で終わってしまうけれど、私の父上である勇魚さまの血は終わらず繋がっているのよ。
…へ?
はい、ここで祐巳ちゃんに問題でっす。
由乃ちゃんの親父さまは誰でしょう?
よしのさんの…。
良く見てみて?
………あ!
ね?
よしのさんのおちちうえさまは…。
あん時は吃驚したっけねぇ。
…本当にね。
じゃ、じゃあ、ようこさまとよしのさんは…
まぁ、そういう事になるわね。
でも由乃ちゃんは黄色の子だから。
そこんとこはあまり気にしない方向で。
わ、わぁぁ!
遠いようで、実は近かったりするのよね…。
神の方から見るとね。
だから由乃ちゃんはあんなコトになった。
…江利子がまさか、そんな選択をするとは思わなかったから。
あいつの考えてる事は分かる気がしないね。
よしのさんはしってるんですか?
少なくとも私達からは教えてないよ。
ねぇ、蓉子。
それは親である江利子が教える事だし、家系図を見れば分かる事でもあるから。
……。
ちび、寝ちゃったねぇ。
ええ。
こら、そこは私の席だぞ。
う、ううーん…。
聖。
冗談だって。
真顔だった。
…それは失礼。
良く寝ているわ。
然うだねー…。
…。
なんか思う事でもあり?
…どうして?
そんな顔。
…。
蓉子?
この子もいつか討伐に行くのね。
ま、行くだろうね。
それがこの家に課せられたもんだし。
…然うね。
なに、孫はやっぱり可愛い?
…孫では無いのだけれど。
そんなようなもんでしょ。
妹の妹なんだから。
…姉と妹と言うのは。
ん?
双子の姉妹だったからなのよね。
らしいね。
紅は…風歌〈フウカ〉と風希〈フウキ〉。
白は…んーー。
ここよ。
神凪〈カンナ〉と、神雷〈カンラ〉?
これはまたご大層な名前だね。
同じ字を付けたのね、双子には。
もちっと簡単な名前にすれば良いのに。
簡単って。
神なんて、背負うもんじゃないね。
…。
けどさ、こう見ると黄は違うじゃん。
ええ。
何を思って、然うしたんたが。
さぁ。
で、何を思って姉妹ごっこなんて続けてきたんが。
…今となってはもう、分からないわね。
厄介だなぁ。
…でも私は良かったと思っているのよ。
椿さまが私のお姉さまで。
ふぅん。
…聖は?
まぁ、悪くは無かったかな。
藤花さまで?
滅茶苦茶、やってくれたけどね。
当主に妹、こっちは全然考えてなかったってのさ。
…ふふ、然うね。
でも私はあの方が聖のお姉さまで良かったと思ってるから。
それ、お姉さまに言ったら凄い喜ぶだろうなぁ。
そうかしら。
蓉子の事、お気に入りだったからね。
ぶっちゃけ、危なかった。
危ない?
…分からないなら、良いよ。
気になるじゃない。
良いんだって。
聖。
まぁ、椿さまが居たから。
お姉さまはそっちが本命だったかな。
え、然うなの?
多分ね。
…知らなかった。
然う言う蓉子さんが好きだな、私。
…。
しし。
…菊乃さまは江利子の事、可愛がっていたわよね。
あそこが一番、一緒に居たかもね。
全然、似てないけど。
どちらかと言うと菊乃さまは令に似てるわよね。
ああ、然うかも。
由乃ちゃんは……
…ん、どした?
……ううん、何でもない。
まぁ、由乃ちゃんに関しては江利子のヤツがやってくれたからなぁ。
…。
まさか蓉子の……あ。
…?
聖?
ねぇ、蓉子。
うん?
私の母親の事なんだけど。
…久遠さまの事?
然う。
珍しいわね、聖が久遠さまの話をするなんて。
好きでするわけじゃない。
ただ。
…ただ?
若しかしたら、蓉子の親父様と交神出来たんじゃないかって。
………あ。
ね?
確かに、然うだわ…。
今の今まで、思わなかったけど。
……なんてこと。
まぁ、今更だけど。
若し、それに気が付いていたら。
久遠さまも父上も…。
でもほら、氏神になれるかなんて生きているうちは分からないから。
けれどその可能性に気が付いていたら、久遠さまは…。
……。
…あんな事に、ならなかったかも知れないのに。
そしたらお姉さまも藤花さまも、菊乃さまだって…。
ま、仕方無いさ。
…聖。
それに。
若しそんな事になっていたら、紅と白、母違いの姉妹になるとこだった。
……。
歳も今より離れててさ。
……それでも。
私はこれで良かった。
……。
自分勝手なんて、今に始まった事じゃない。
…あ。
……私は蓉子と結ばれて、良かった。
せ、聖…。
…だからこれで良いんだ。
……。
蓉子…。
……勝手だわ。
然うだよ。
…皆、どれ程傷付いて。
然うだとしても。
……。
…蓉子。
……聖。
…。
ん…。
……これ以上は出来ないね?
ばか…。
へへ。
…。
しかし江利子は何を思ったんだが。
氏神なら他にも
…若しかしたら、江利子は気が付いていたのかも知れないわ。
それを示す為に…。
でこちんが?
然う、家族でただ一人だけ…。
て、一寸待ってよ。
あの頃のでこちんって未だ…
…ええ、まだ初陣前よ。
…。
…。
……どんな餓鬼だよ、あいつは。
若しも然うなっていたら。
貴女達は本当の姉妹になっていたわよ。
父違いで無く、かと言って、母違いでも無く。
…。
…え?
夕餉時だと言うのに貴女達が人の顔、じっと見てるから。
ごはんもよそらないで。
…見てねぇよ。
じっと見てたわけでは…。
もっと言えば。
歳も然う離れてない、寧ろ今と変わらない。
だから何の話だよ。
更に言えば。
もう一人くらい、下が居たかもしれない。
何を言っているの、江利子?
戯言。
ただの、ね。
…。
…。
子を見れば、ある程度は知れるものでしょ。
親なんて。
お前が言うか。
ねぇ、蓉子。
然うは思わない?
そ、然うねぇ…。
それでも、親の顔が見てみたいって言うのよね。
…。
…。
家系図、ちびに見せたんだって?
…え?
家系図。
あ、ああ。
それで、何か変わった事でも見つけられたかしらね?
変わった事なんて…ねぇ、聖。
ただの家系図だろ。
変わった事なんかあるかよ。
ああ然う、それは残念ね。
…蓉子、ごはん。
…どれくらい?
そうそう、冷めないうちに食べた方が良いわよ。
折角温かいごはんが食べられるのだから。
最高の贅沢らしいわよ?
うるさい。
蓉子、いつもどおり。
分かったわ。
イツ花、今日のごはんの硬さは私好みよ。
…はい、聖。
ん。
それで、どうすると思う?
…え?
蓉子、それ三回目。
…。
で、どうするのかしら。
何がだよ。
若しも本当の姉妹だったら。
…。
…だから何の話だよ。
ま、好きになったら仕方無いものねぇ。
…あれ。
んー?
お姉さま、これって…。
どれ?
あら、家系図?
…由乃が今度見せて欲しいって言うので。
ああ、祐巳すけが見たからかしら。
……あの、お姉さま。
うん?
これって、もしかしないでも
姉妹、よ。
母違いのね。
じゃ、じゃあ、
けど、色違いだから。
ですが、由乃は私より
仕返しみたいなものよ。
え?
一寸した、ね。
……。
令。
…はい。
そこら辺は適当に説明しておいて、ね?
て、適当?
然うねぇ。
実は私、蓉子のお父様に惚れていたの、とか。
…それ、適当には言えません。
然う?
それに志摩子にも…
…。
…志摩子も一緒に見るんです。
ふぅん。
……え、と。
ま、いつかは分かるものだから。
良いんじゃない?
江利子さま。
んー?
ごきげんよう。
ごきげんよう。
…。
…。
…術の指南を。
教える事はもう、あまり無いのだけれど。
…。
まぁ、良いわ。
お入りなさい。
はい。
…。
…。
…ま、こんな家だから。
何も言っておりません。
然うだったわねぇ。
…。
…。
…私もいつか。
ま、好きにしたら良いと思うわよ。
…。
なんにせよ、氏神になっても出来ない事はあるのだから。
人の男とはお考えにならないのですか。
ああ。
…。
何にせよ、貴女が決める事だから。
貴女様がご健在だとしても。
私が然うだったように、ね。
……。
さて、今日は何を話そうかしらね。
−良い夫婦の日2011
ねぇ、蓉子。
今日はいい夫婦の日、だって。
みたいね。
いい夫婦の日、ねぇ。
…。
具体的には何をすれば良いのかな?
…別に特別な事はしなくても良いんじゃないの。
む、それは蓉子さんとは思えない発言。
…どうしてよ。
だってほら、蓉子さんはイベント好きだし?
そもそも私達は夫婦じゃないでしょう?
でも夫婦みたいに暮らしてるよ?
でも、夫婦では無いわ。
じゃあ、なる?
…なれないわよ。
そうだけど。
気分だけなら味わえるよ。
…婚姻届でも書くつもり?
そうそう。
虚しいじゃない、そんな事しても。
そうかな。
そうよ。
つまり、出来るならしたいの?
…。
よーこ。
…ああもう、顔を近づけないで。
しても良いよ、私は。
…だから、出来ないって。
日本じゃ、ね。
…。
法律家の蓉子さんなら、海外の法律も幾らかは詳しいでしょう?
…そこまでしなくても良いわ。
じゃあ、止めよう。
…するつもりだったの?
蓉子がしたいなら。
…聖はどうなのよ。
私?
私の事ばかり、言って。
私は今のままでも良いよ。
…。
私は…蓉子と、この先もずっと、一緒に居られたらそれで良いのさ。
…先の事なんて、分からないわよ?
大丈夫。
蓉子は私の前から居なくならない。
その自信はどこから来るのかしらね?
だって蓉子さんは私の事、大好きだから。
……。
へへ。
…莫迦?
蓉子さんのがうつっちゃったんだよねぇ。
すっかりさ。
私のって、失礼ね。
はい、ごめんなさい。
…。
蓉子が何もしないなら、まぁ、良いや。
…聖。
なに?
もう一寸、まともなプロポーズは出来ないの。
…へ?
…。
…。
…良い、聞かなかった事にして。
うん、出来ない。
……。
蓉子、蓉子さん。
…ああもう、来ないで。
ロマンティックなのがいい…?
それとも…甘いのがいい?
…両方、結構よ。
どんなのが蓉子の好みかなぁ。
蓉子は結構、乙女だから
聖。
考えておくね?
…考えなくて、良いから。
要望には応えなきゃ。
大体、そんな事言ってる時点でもうプロポーズにはならないじゃないの。
そっかな。
そうなの。
…。
…何よ。
可愛いなぁ、もう。
……。
これからもずっと、一緒のベッドで眠ろうね?
……うるさい、ばか。
−あなたがいるということ。〜蓉子〜
…。
…ぃ。
蓉子。
ぜ…。
声、ひどくなっちゃったね。
…。
熱は…少し、下がったけど。
代わりに喉に来たかな。
…。
こんなに酷い風邪ひくなんて。
疲れか、季節の変わり目か、若しくは両方か。
…。
曰く、こんな時は薬飲んで大人しく寝てるのが一番。
…
で、その薬なんだけど。
食べられそう?
…。
何か食べたいの、ある?
……ぃ、の…ら。
ああ、完全に喉がやられてる。
若しかして味覚もだったりしない?
…。
…やなんだよね、それ。
……。
さて。
御粥か、雑炊か…あ、そうだ。
…?
うどんはどうだろう。
蓉子が作ってくれるような。
…。
卵乗せてさ。
……。
…食べる?
…。
買い置き、ある?
…。
オーケイ。
買い置きってこういう時にも役に立つねぇ。
…。
私も買い置き、しておこうかな。
こんな時の為に。
そうすりゃ蓉子だって買い物して来なくても良いし。
…。
じゃ、作ってくるから。
待ってて。
…。
…ねぇ、蓉子。
…。
メール、ありがとう。
呼んでくれて、嬉しかった。
…。
…それじゃ聖さん特製うどん、作ってくるから。
楽しみに待ってて。
……、ぃ。
ん?
……ぅ。
…。
……。
…熱い。
……。
…大丈夫だよ、蓉子。
……。
大丈夫。
……。
−あなたがいるということ。〜聖〜
いらっしゃい。
…お邪魔します。
寒かったでしょう?
今、お茶を淹れるわね。
…ん。
今日は今年で一番の冷え込みなんですって。
それ、ここ最近毎日聞いてる気がする。
ふふ、そうかも。
…ねぇ。
うん?
マフラー、してきて良かった。
でしょう?
うん…。
手洗い、ちゃんとしてね。
風邪、はやってるから。
…はーい。
風邪だけじゃないわよ?
…分かってるって。
終わったら、座って待っていて。
部屋の中、温めておいたから。
…。
…ん。
……。
聖。
…なに。
…私より、部屋の方があったかいわよ。
今は、人の温もりの方がいい。
…。
…。
…何か、あった?
ううん、何も。
…。
…でも、こうしてるとなんか安心するのよ。
そう…。
…。
…。
…ねぇ、聖。
んー…。
今日、お鍋にしようと思うのだけど。
…へぇ。
食べる?
…ん、食べる。
そう、良かった。
手伝ってくれる?
…喜んで。
うん。
…。
…。
…。
…聖。
…鬱陶しい?
大人しいから。
…?
外はそんなに寒かった?
…うん、寒かった。
風がね、すごく冷たい。
間に合って、良かったわね。
間に合う?
雨、降ってきたみたいだから。
え。
音がするわ。
…今日、降るなんて言ってったっけ?
ところによって。
…便利な言葉よね、それ。
然うね。
…。
…良かった。
間に合って?
聖が、雨に打たれなくて。
…。
…。
…。
…お湯が沸くわ。
うん…。
…。
…。
…。
…ねぇ、蓉子。
なぁに?
…蓉子の背中、温い。
…。
温い…。
…然う。
−ふたりでいるということ。
…。
…。
…蓉子。
…。
蓉子、起きてる?
…うん。
…。
…。
…そっち、向いてもいい?
…。
蓉子。
…もう少しだけ、このままでいさせて。
…。
……だめ?
私は、向かい合いたい。
…。
…向かい合って、抱き締めたい。
…。
…。
…聖。
…なに。
こうしているとね…。
…うん。
……聖が直ぐ近くにいるんだなって、思えるの。
…。
…。
…抱き締めるよりも?
……変、よね。
…。
…夜中に目が覚めた時。
…。
傍に貴女の背中がある事に…ひどく、安心するようになったの。
…。
貴女の背中に頬を寄せて…もう一度、目を閉じて。
…。
…。
…分かるような気がするよ。
…本当?
顔は見えないのに…でもその体温を感じてるとひどく安心する。
なんでだろう。
…。
…。
…きっと。
…きっと?
熱くないから。
…熱くない?
腕の中も勿論、好きよ。
好きだし…安心もするわ。
…。
だけど…背中の方が、穏やかな温もりだと思うの。
…そうかな。
…。
…ねぇ、蓉子。
ん…。
一つだけ、分かった。
…なぁに?
されてる方は…少なくとも私は抱き締めたくて、たまらなくなってくる。
…。
…だからさ、そろそろ良いかな。
…。
…まだ?
聖。
…。
……こっち、向いて。
…。
向いて…それから。
−ごはんがおいしいということ。
ねぇ、聖。
今夜はシチューを作ろうと思うのだけど。
シチュー?
いや?
ううん、いやじゃない。
やった、今日は蓉子のシチューだ。
蓉子の作るシチュー、美味しいから好き。
ふふ、ありがとう。
白いの?
それとも、茶色いの?
今日は白いの。
よっしゃ。
そんなに好きだったかしら?
うん、好き。
でも茶色いのも好きだよ、勿論。
そう?
でも蓉子はどっちかと言うと白い方が得意だよね。
…どうして?
白、だけに。
白、だけに?
毎度、美味しく料理されちゃいますv
…。
なーーんて。
…聖。
うん?
冷え込みが一層、厳しくなったのだけど。
なんで?
…。
私さ、初めて蓉子のシチューを食べた時、シチューってこんなに美味しいものなんだって思ったんだよ。
それは初めて聞いたわ。
だって初めて言ったんだもの。
目から鱗って言うのかなぁ。
兎に角、蓉子の作ったシチューは凄く美味しかった。
…褒め過ぎ。
うんにゃ、そんな事無い。
シチューのモトを使わないじゃん、蓉子って。
…うん、まぁ。
だから、感動まで覚えた。
うちのはひどいものだったから。
…聖の?
普通に焦げてたからね、うちは。
…。
料理下手なのよ、うちの母親は。
…ねぇ、聖。
なになに?
温める時、ちゃんとかき回していた?
レンジだから。
かき回せないでしょや?
…ああ。
兎に角、不器用でね。
だから佐藤家の食卓はいつも暗かった。
でも小母さまは一生懸命作っていたと思うわ。
…。
…家族に食べてもらう為に。
…だとしても。
父親はいつの間にか、家であまり食べなくなってたよ。
外で済ませてくるみたいで。
…。
て、うちの話はもうやめよ。
それより蓉子のシチューの話。
聖、
蓉子んちって、モトから作るんじゃないでしょや?
…うち?
そう、蓉子んち。
…。
ん?蓉子?
…いいえ、モトからよ。
え、然うなの?
ええ。
へぇ、然うなんだ。
正直、私の母もあまり料理が得意じゃない…と言うより。
と、言うより?
…少し面倒くさがりで。
小母さまが?
…ええ。
然うなんだ、意外。
…なのかしら。
じゃあさ、どうして蓉子はモトから作らないの?
え?
ちゃんとホワイトソースから作るじゃない?
…うん。
モトから作った方がラクでしょや?
…それは、然うだけど。
なんで?
…。
蓉子?
……決まってるじゃない。
決まってる?
…。
蓉子さん?
…貴女が食べてくれるから。
え?
貴女に、食べて欲しいから。
…私?
……だから、作ってみようかと思って。
…。
それで、ずっとそうしているのだけ…ど。
……。
……。
…蓉子。
…なに。
蓉子の作るシチュー…だけじゃなく、ごはんが美味しい理由が分かった気がする。
いや、分かった。
…。
どうしよう、幸せ過ぎて…ああ、もう。
…あ。
大好きです、蓉子さん。
……聖。
あと…お腹、空いてきちゃった。
…。
へへ。
…もう。
じゃあ、支度をするから。
うん、手伝います。
−メリー聖蓉!2011
水野さんはイヴ、何か予定はある?
イヴ?
そう、クリスマスイヴ。
ある?
…。
あ、その顔はあると見た。
…でも、どうして?
みんなでごはん、でもと思って
何しろ、折角のイヴだし?
ああ。
徳永さんは旦那さんと小さな子供さんがいるでしょ?
でも、そんなに遅くならないならって良いって。
そうね。
その方が良いと思うわ。
でも水野さんは予定があるんだ?
ある…と言えば、あるけど。
川藤さんは?
あればこんな事、言ってません。
…そう。
良いって良いって。
野暮な事は言いません。
野暮?
彼氏、でしょ?
…。
そっか。
前々から怪しいとは思ってたんだけど、やっぱりいるんだ。
彼氏。
いないわよ。
え?
彼氏はいない。
そうなの?
ええ、いないわ。
…。
川藤さん?
いると思ったんだけどなぁ。
だから、
なんとなーくだけどね。
…なんとなく、ね。
一寸前、日村さんとそんな話題になってね。
水野さんにはなんとなくいそうだよね、って。
…。
水野さん?
…。
…あの、気分悪くした?
ううん。
ああ、良かった。
でも、ごめんなさい。
イヴは予定があるから。
クリスマスも?
ええ。
…本当に彼氏じゃないの?
高校時代の友人と会う約束をしているのよ。
高校時代の?
そうなの。
水野さんって確か、女子高だったっけ?
そう。
なんだ、一足遅かったんだ。
ごめんなさいね、期待に添えられなくて。
…少し根に持ってる?
いいえ、全然?
行ってきても良かったのに。
折角のお誘いだったんだからさ。
それ、心から言ってる?
うん。
散々、あれ食べたいだのこれ食べたいだの言ってくれたくせに?
ご馳走様でした。
明日も楽しみです。
まだ前日だって言うの我侭ばかり言ってくれて。
へへ。
でも、聖。
若しも私が川藤さんのお誘いを受けていたとしたら、
どっちみち、ここに来るでしょ?
…。
蓉子が来ない筈、ないもん。
…さぁ、それはどうかしら。
だって蓉子は約束は破らない。
…。
…破らない。
…。
…けど。
…ん。
友人、ねぇ。
…他に言いようが無いじゃない。
恋人、で良いじゃない。
彼氏は居ないって言ったのに?
恋人は彼氏とは限りません。
…。
…なんて。
言えないよねぇ…。
……聖。
別に良いのよ。
触れ回りたいわけじゃない、し。
…。
…言わなくなって、蓉子は私の恋人だし。
うん…。
…。
…。
……蓉子。
なぁに…?
そろそろ、日が替わるよ。
…ええ、然うね。
…。
…聖。
ん…。
…今年も、一番に言っても良い?
勿論…蓉子に、言って欲しい。
…。
…。
聖…。
…ん。
お誕生日、おめでとう。
−Positive
ねぇねぇ志摩子さん、明日はどこを巡ろう。
乃梨子との事だから、もう決まってるんじゃないの?
でも、志摩子さんの希望も聞かないと。
私はどこでも良いわ。
志摩子さん、予定を立てる時もそう言うんだもんなー。
予定を立てる時の乃梨子の楽しそうな顔を見てる方が好きなんだもの。
それもなんだかなぁ。
挨拶も終えてしまったし。
あとは乃梨子の好きな所へ行きましょう。
でもさ、私は志摩子さんの行きたい所にも行きたいよ。
うん?
いつも私の行きたい所で良いって言ってくれるけど。
…。
だからさ、たまには言ってよ。
あ、でも。
…でも?
無いって言われたら…どうしよう。
ふふ。
うーん。
ねぇ、乃梨子。
ここからだったら京都にも近いわよね。
え。
ああうん、遠くはないけど。
志摩子さん、京都に行きたいの?
駄目かしら?
ううん、行こう!
京都のどこへ行きたいの?
大江山。
…え?
冗談よ。
…え、と。
大江山と言うと…源頼光だっけ?
確か朱点童子とか、そんな感じの…。
…。
志摩子さん、興味あるの?
…然うね、然うなのかも知れないわ。
じゃあ、行こう。
…。
登るのは無理かもしれないけどさ、見ることは出来るから。
…乃梨子。
大江山かぁ、どうやって行けば良いのかな。
…。
えと…大江山、大江山、と…。
ねぇ、乃梨子。
うん、なに?
…。
どうしたの、志摩子さん。
瞳子ちゃんとは会っているの?
え、瞳子?
…ええ。
まぁ、会ってるけど…なんで?
一緒に、生活する気はないの?
それって同棲ってこと?
ええ、然うね。
今は考えてないなぁ。
あっちも忙しそうだし。
然う。
けど、急になんで。
…お姉さまが。
お姉さま…聖さま?
とても仕合わせそうだから。
…まぁ、あの方は蓉子さま大好きだし。
乃梨子は違うの?
私?
瞳子ちゃんのこと、大好きだったでしょう?
リリアンに居た頃から。
…それ。
うん?
…そりゃ、好きだけど。
聖さまみたいにはならないよ。
…。
あの方は見てるこっちが恥ずかしくなるくらい、蓉子さまだもん。
…然うね。
でも突然、どうしたの?
そんな話、するなんてさ。
乃梨子。
うん?
私は貴女が好きよ。
うん、知ってる。
…。
私も志摩子さんのこと、好きだよ。
それは私がお姉さまだから?
ううん。
お姉さまじゃなくても、私は志摩子さんが好きだよ。
…瞳子ちゃんと。
瞳子と?
いずれは一緒に暮らすの?
分かんない、けど。
でも、そうなるかもしれない。
そうしたらもう、
志摩子さん。
…あ。
なんか変だよ。
…そうかしら。
突然、瞳子の話をしてみたりさ。
…。
それに私は瞳子と同棲したって、志摩子さんとは会うよ。
だって
お姉さま、だから。
…。
…然うよね。
私は瞳子が祐巳さまに会ったって良いと思う。
お姉さま云々とかじゃなくて、瞳子は祐巳さまが好きだから。
…。
嫉妬とか、しない。
だって違うもん。
…どう違うの。
なんて言うのかな…うまく、言えないけど。
…好きに違いなど、あるのかしら。
あるよ。
…。
私は志摩子さんが好き。
瞳子が…まぁ、好き。
けど、違う。
…何が違うの?
それにさ、好きな人は一人だけなんて決めちゃったら。
親も、友達も、無くなっちゃうよ。
……。
ねぇ、志摩子さん。
志摩子さんには好きな人、いる?
勿論、私や聖さま、あと祐巳さまや由乃さま以外で。
…。
て、ほら、志摩子さん。
志摩子さんにも好きな人、私が知ってるだけでもこんなにいるじゃない?
…ええ、本当ね。
そうだ、志摩子さん。
明日の事は後回しにしてお風呂、お風呂に行こう。
乃梨子。
さ、志摩子さ…え。
…。
…志摩子さん。
大好きよ、乃梨子。
う、うん。
…。
わ、ちょっと待って!
…私の好き、は。
わ、わ…。
…時々、分からなくなるのよ。
ん……。
…。
……志摩子さん。
ごめんなさいね…乃梨子。
…。
…瞳子ちゃんに、怒られてしまうかしら。
言わないから。
…然うね。
…。
……ごめんなさい。
良いよ。
…。
良く分からないけど。
でもさ、志摩子さん。
…。
志摩子さんでも、自分を見失うこと、あるんだね。
…私でも。
ああ、けど。
私達が逢った時もそうだったかも。
…。
志摩子さんは、自分の中に封じ込めちゃうから。
封じ込め…?
抱え込みすぎるって言うかさ。
とにかく、そんな感じ。
…。
志摩子さんが好きな人は、志摩子さんの事も好きだよ。
少なくとも、私が知ってる方たちはみんな。
…みんな。
うん。
…。
志摩子さん、お風呂に行こう。
で、おいしいの食べて、ゆっくりしよ?
……乃梨子。
あ、でももう、不意打ちはなしね?
…もう、会わない方が
やだ。
…。
もう、志摩子さんは。
さっき私が言った事、聞いてた?
え、ええ。
だから、だめ。
志摩子さんとはもっと、旅行したいし。
…仏像?
あはは。
…瞳子ちゃんは良いのかしら?
良いの、良いの。
むしろ行けって言うよ、瞳子は。
…ふふ。
うん?
乃梨子と瞳子ちゃんは面白いわね。
そう?
ええ…とても。
志摩子サイド。志摩子さんは難しいです。怒られないのが不思議なくらいです…へ、へへ。
|