−Di la verdad.(放浪記・前回の続き)
蓉子。
…。
蓉子さん。
…。
そろそろ機嫌直さない?
…。
ほら、仲直り。
ね?
…触らないで。
じゃ、触らない。
…。
お、あそこでごはん食べない?
…。
蓉子、行こ。
食欲が無い。
え、そうなの?
…。
バスにずっと、揺られていたからかしら?
でも途中で休んだのに。
…。
じゃあ、あれにしよう。
あれなら平気でしょや?
…。
Helados.(アイスクリーム)
お腹はふくれないけど、食欲が無い時には丁度良い。
…。
ね、蓉子。
…あれ、本音でしょう。
ん?
さっき、言った事。
アイス?
そりゃ、蓉子が
違う。
んー?
私なんて要らない。
二度と現れるな。
…。
本音なのでしょう。
うん、そうだよ。
……。
要らないよ。
そう、なりたいから。
…なりたい?
ちゃんと聞いてた?
…聞いてたわよ。
じゃあ良い。
さ、行こう。
…!
味、何が良い?
聖…!
結構、美味しいもんだよ。
こっちのも。
要らないのでしょう、私なんか…!
…。
…私なんか、初めから。
なんだ、やっぱ聞いて無いじゃん。
聞いてたわよ!
なら、繋がって無いんだ。
は?
ここに。
ちょ、ちょっと…。
蓉子は肝心なところで鈍感なんだよなぁ。
そこが少し、腹が立つ。
はぁ?!
私の事となると恐ろしく敏感でさ。
おまけにキズが深くならないよう、根回しまでしてくれる。
ああ、嫌になる。
お言葉だけど、貴女の事なんて全然分からないわ。
嫌われている事しか。
そう、それなんだよ。
先刻から何なのよ。
もっとはっきり言えば良いじゃないの。
言ったじゃん。
要らないって。
…。
今、思えば。
あの頃もそういう顔、してたね。
…あの頃って。
薔薇さまと呼ばれる以前から。
……。
一人になって、やっと、思い出した。
おまけに思い出す顔、そんなんばかりで嫌になった。
…私の事なんて、思い出す筈無いわ。
いや、思い出したよ。
時間だけなら沢山あったからね。
…手紙、ろくすっぽ寄越さなかったくせに。
筆不精なもので。
……私がどんな思いで。
だから嫁にでもなんでも行けば良かったんだよ。
そしたら
……。
……んー。
……やっと、見つけたのに。
うん、見つかった。
…だけど、貴女にしてみればただの迷惑なのよね。
さて、どうかな。
蓉子、ここで待ってる?
…。
じゃ、一寸行って…いや、やっぱ止めた。
…。
しし。
…何よ。
よいしょ、よいしょ。
…自分で歩けるわ。
そっか。
なら歩いて。
……。
Fresas y café, por favor.(いちごとコーヒー、ちょうだい)
....Gracias.
…。
はい、どうぞ。
……何よ、それ。
独断と偏見で選ばせて頂きました。
溶ける前にどうぞ。
…。
んー…よし、あっち行こ。
……。
どう?
結構、美味しいでしょ?
…。
こっちも食べてみる?
コーヒー、だけど。
…甘い。
うん?
甘い。
好きでしょ?
…。
好きそう。
…。
好きじゃない?
…好きよ、ばか。
ありがとう。
褒めてない。
受け取る人間次第ですから。
…屁理屈。
思えばあっちにいた時はこんな風にアイス、食べたこと無かったなぁ。
…。
そもそも二人で出掛ける事が無かった。
…貴女が居なくなってしまったから。
大学も放り出して…。
いるじゃん、ここに。
…。
流石に地球から居なくなるのは難しいなぁ。
今は、未だ。
…居なくなる前。
あーおいし。
…約束、してたのよ。
誰と?
…一緒にごはん食べようって。
珍しく貴女からメールが来て、だから私は…。
今ならいつでも一緒に食べてるけどね。
こんなに一緒にいるようになるなんて思わなかったな。
…楽しみにしていたのよ。
ふぅん。
貴女に会えるのが…だから。
そういや蓉子はあまりメールくれなかったね。
貴女の方がもっとくれなかった。
返事すらくれなくて…。
面倒だよね、メールって。
…だから、私は。
お、溶けてきた。
…。
やばい、やばい。
…はい。
Muchas gracias.
...No hay de que.(どういたしまして)
他人行儀ですか、蓉子さま。
…。
てか、蓉子のもやばそうだ。
ほら、手に伝ってる。
あ…。
……。
…ッ。
…ほんと甘いね、これ。
…。
違うのにすれば良かったかな。
ごめんね。
…なんでそんな事、するの。
溶けてたから。
…。
…天気、また崩れそうだな。
今夜はここで宿を取った方が良さそうだ。
蓉子、食べたら宿を探そう。
…私と一緒で良いの。
何言ってんのさ。
蓉子を一人になんか出来ないよ。
…何よ、それ。
手ごろなところがあれば良いなぁ。
どうしてそんな事が言えるのよ。
先刻は
期待させる為だよ。
……どういう意味。
そのままの意味だけど。
意味が分からない。
分からないかな。
分からないわよ。
なら、良いや。
良くない。
どうして。
要らないって言ったじゃない。
だから、言ったって言ったじゃない。
なのにどうして
なら、言おう。
う…。
そろそろ、止めようよ。
…なに、を。
保護者。
私の。
……。
ま、すぐには無理だろうけど。
…。
すぐに変えられるようなら苦労しない。
無自覚なら一層。
自分のなのに、厄介だね。
…。
例えば、さ。
蓉子は私の、何になりたい?
聖の…?
そう、私の。
……。
わざわざこんなところまで来て。
離れないって言って。
それはどんな気持ちから?
どんな気持ち…て。
いつか、お姉さまが言ってた。
蓉子は私の事になると「ばか」になるって。
…!
ただの過保護?
それとも?
……。
…ん?
……。
…あーあ。
アイス、もうだめだなぁ。
……。
蓉子、行こ。
手、洗わないと。
…。
今夜はここでいっか。
ねぇ。
…。
蓉子、先にシャワー使いなよ。
…話が終わってない。
ああ。
終わらせてからが良い?
…。
でも、私はもう言ったしなぁ。
あとは蓉子次第だし。
…聖は。
うん。
私のこと…。
好きだよ。
…。
親友だしね。
…。
どうかした?
…いいえ。
そっか。
…でも、要らないのよね。
そだね。
…。
で、蓉子は?
…。
嫌われてはいない。
なんて、勝手に思ってるけど。
……。
…。
…。
……うん。
…あ。
ごめんね。
せ、聖…。
私みたいなヤツには蓉子みたいな保護者が必要です。
…。
と言う事で、お仕舞い。
……なによ、それ。
そのままの意味だよ。
蓉子、少し髪が痛んでるかも。
要らないって言ったじゃない…。
そればっかりだね。
貴女が言ったのよ。
でももう、お仕舞い。
…!
せ
蓉子。
…っ。
…好きだよ。
……。
はい、お仕舞い。
……ぜんっぜん、分からないわよ。
愛想が尽いて帰りたいのなら、いつでも。
…。
止めない。
……帰らないわ。
うん、いつもどおり。
…。
シャワー、先にどうぞ?
……どこかに、
行かないって。
蓉子はそうやっていつも確認するんだから。
でもま、今回は言葉にしたね。
珍しい。
…。
保護者、は。
大変だねぇ。
……。
−フルエルココロ。
…。
…。
…聖。
…。
…もう、またそんな格好をして。
…。
上、ちゃんと着ないと駄目じゃない。
…。
確かに寒い季節では無いけれど。
湯冷めしたらどうするの…?
…。
……聖。
…。
…そんなところに居ないで。
こちらにいらっしゃい?
…。
聖、さぁ…。
…こ。
なに…?
ようこ…。
…なぁに?
蓉子が、来てよ…。
…。
来てよ…蓉子。
…しょうがない人。
…。
結局はここに来るくせに…。
…来て。
…。
…。
…これで、満足?
…。
また、ろくに温まって来なか…
…。
……そんな顔、しないの。
…。
さぁ、行きましょう…?
……蓉子。
ん…。
…蓉子…蓉子…。
……ここじゃ、だめ。
…。
床は…痛いから。
…。
…お願い、聖。
……。
良い子ね…。
……も、いい?
ん…?
……だいても、いい?
…。
いい…?
……貴女がそれを、望むのなら。
…。
でも…今更ね?
…。
散々、してるくせに…。
…ひょーこ、いひゃい。
…。
…。
……でも私は、そういう貴女が好きだから。
私は…ん。
……知ってるから。
…。
…今は、お願い。
……。
聖…行きましょう?
…き。
…。
好きだか、ら…。
……。
……だから、蓉子を私だけのものしたい。
…。
する、から…。
……ん。
……。
−Malka Moma.(音楽聖蓉)
どうか私に鳩の目をください。
…。
どうか私に鷹の翼をください。
…。
…そうすれば、あの川を越えて。
…。
私は…。
…。
…。
…私は?
運命の人を見つけることが出来ます。
…。
と、小さな女の子は神さまに祈りましたとさ。
…そんな意味なの?
らしいよ。
…それで、お仕舞い?
…。
聖…?
…神はご親切に、さ。
…。
女の子に目と翼を与えました。
そして女の子は運命の人を見つけました。
…。
私からは奪ったくせにね。
…。
ま、今となってはどうでも良いけど。
…そんな事、思って無いくせに。
…。
…どこか、切ない響きね。
こんなにも美しいのに…。
どうして言葉ってあるんだろうね。
え…?
…声だけで、十分だ。
…。
…。
…でも、そうだったら。
こんな歌は生まれないわ。
…。
聖は…好きでしょう?
…。
…私も、好きよ。
…。
あ…。
……酷くちっぽけなんだ。
…。
全部知ってるような顔をして、生きている。
本当は何にも知らないくせに。
…。
こんな小さな世界で、何が分かるのだろう。
…聖。
触れてみたい。
う…。
……触れて、そのまま。
…。
…蓉子。
……はぁ。
…。
…ねぇ、聖。
…。
ねぇ…。
……なに。
女の子は、どうなったのかしらね…。
…。
…運命の人を見つけて。
さぁ…どうでも良いよ。
…仕合わせになったのかしら。
…。
それとも…。
…どうでも良い。
…。
…。
……私は。
…。
なって欲しい、と思う。
……。
…仮令、その命を燃やす事になったとしても。
……それが蓉子にとっての仕合わせなの。
私にとって…。
…。
……そうね、分からない。
…なにそれ。
……分からないの。
…。
ぁ…ん。
……もう、尽きているのかも知れない。
……。
だから、神は。
……あぁ。
…。
聖…せぃ…。
……だけど、私は。
…?
…。
……やっぱり、必要だわ。
…。
ことば…。
…そうかな。
こうしてしまえば、何も聞こえなくなるのに。
いいえ、聞こえるわ…。
…言葉らしいもの、吐けなくなるくせに。
……そうだと、しても。
…。
…紡いでいる、の。
何を。
…何か、を。
…。
…。
…随分と抽象的ね。
はぁ…。
……。
……あなたの、な。
…え。
あなたのなを、つむぐの…。
……。
……いつまでも。
−El Violín canta, pero el Fiddle baila.(音楽パラレル)
せーい。
…やぁ。
やぁ、じゃないわよ。
大丈夫?
何が?
ぼうっとしてたから。
いつもの事じゃない?
そうね。
で、今日はどうしたの?
これ。
お。
昨日、言っていたでしょう?
…早いね?
ええ、感謝してね。
仕方ないなぁ。
うん?
ありがとう、蓉子。
どういたしまして。
で、大丈夫なの?
んー?
羊。
……。
柵、越えてるのが居たけど。
…わぁ、笑えない。
良いの?
良くないよね。
でしょうね。
ああ、仕方ないなぁ。
それが貴女の仕事。
…へぇへぇ、分かってますよ。
……。
んー…お、いたいた。
…。
行け、セト。
…横着者。
これが私の仕事だよ、蓉子。
知っているけれど。
んじゃ、後はあの子の仕事と言う事で。
あの子はずっと、働いていたわよ。
怠けている貴女の代わりに。
見てたの?
さぁ?
暇?
失礼ね。
……。
…。
…やっぱり暇なんじゃん。
今日は弾かないの?
…人前では弾かないって決めてるのさ。
嘘吐き。
じゃあ、高いよ。
そこまでのもの?
失礼だなぁ。
お礼が欲しいだけよ。
お礼?
それ。
これ?
お釣りは要らないわ。
…。
座っても?
いや。
…?
昔のように、踊ってくれるなら。
…。
だったら、考えても良いかな。
あのね。
町に言っている間に、鈍った?
…。
被れて。
…聖。
私さ。
…。
人で好きなものがあるとしたら。
…。
これかもしれないって。
最近、思うよ。
…そう。
…。
ねぇ、聖。
…んー。
手入れ、ちゃんとしているのね。
一応。
適当だけど。
…いいえ、そんな事無いわ。
見て分かったもの。
…。
…細かな傷はあるけれど。
弦が切れた時は吃驚したけど。
蓉子が居てくれて、良かった。
…お世辞でも嬉しいわ。
どうしたしまして。
…。
昔から、良く直してくれた。
自分でも出来るくせに。
私は適当だから。
…。
よ、と。
聖?
帰ってきた記念。
…あ。
その代わり、踊ってもらう。
…。
蓉子。
…望むところ。
良し。
聖。
んー?
あなたの“踊り”。
好きよ、私。
それはありがとう。
どういたしまして。
…。
…聖。
…。
聖。
…おはよう、蓉子。
おはよう。
…あー。
何?
変な声を出して。
いや、天井だなぁと。
貴女の部屋の、ね?
…よっこらせ、と。
髪の毛、跳ねてるわ。
……。
聖?
電線だらけ、建物ばかり。
…どうしたの?
いや、別に。
…。
蓉子。
ん?
おなか、すいた。
……。
すいた。
…はいはい。
−だいて、だかれて。
かわいいと、幾度も言う。
私を抱いている間、ずっと。
…よーこ…よーこ…。
…はぁ。
かわいい……かわいい…。
…せい。
首に歯を立て。
胸を吸い、耳を弄り。
舌を絡ませ合う。
その流れの合間に、うわ言のように繰り返す、あなた。
よーこ…ぉ。
…。
…かわいい……。
…。
けれどね、聖。
う、ぁ…?
…かわいい。
…え。
かわいい……せい。
そうやって私に夢中になってくれる、あなた。
溺れてくれる、あなた。
よぉこ…?
…ふふ。
わ…。
そんなあなたが、わたしは。
……だいすきよ、せい。
……うん。
かわいくて、仕方がないのよ。
−蓉子さんの決心、そのイチ。
え?
蓉子、免許取りに行くの?
そう言ったつもりだけど。
なんで?
おかしい?
乗りたいなら、私が乗せてあげるよ。
どこへでも連れていってあげる。
…。
どこへ行きたい?
海外は無理だけど、日本なら大抵のとこは行けるよ。
あのね、聖。
遠くに行くならお泊りだね。
温泉があるトコなんて良いかも。
聖。
景色が良いトコでさ、一緒に入るの。
うう、考えただけでたまらない。
…。
いつ行く?
やっぱ学校が休みの時が良い?
でも平日の方が空いていて
とりあえず、聞いて。
…と言うかさ。
貴女の車に乗せてもらうのは嫌では無いけれど、私も運転は出来た方が良いと思うのよ。
なんでさー。
貴女が運転出来ない時、どうするの。
乗らない。
そうじゃなくて。
なに。
具合が悪い時だってあるでしょう?
寝てれば良い。
お医者さんに行く時はどうするの?
…いざとなったら、救急車って手もある。
それに蓉子がいつも傍に居てくれるとは限らないしさ。
同棲してるわけじゃないし。
連絡、くれるでしょう?
…。
ただ一言だけ、「来て」、て。
しかも本当に悪い時は平仮名。
…。
あのね、聖。
…。
私も貴女の足になりたいのよ。
…私の足?
そう。
…その言い方、なんか問題あるような気がするけど。
言い方なんてこの際、どうでも良いのよ。
…。
貴女が動けない時、私が貴女の足になれれば良い。
ずっと考えた。
…。
勿論貴女の為だけじゃないわよ、私の為でもあるの。
将来、仕事で必要になる事もあるでしょうし。
…ふぅん。
だから、取りに行く。
今度。
…今度?
来週から。
…え。
だから少しの間
やだ。
やだって言ったら、やだ。
…聖。
会えなくなるって言おうとしたでしょ。
そんなの、やだ。
…。
蓉子は取らなくても良いよ。
私が
聖。
……。
会えなくなるなんて、言わないわ。
…けどさ。
だってそうでしょう?
教習所に行くと言っても、一日ずっとそこにいるわけでは無いわ。
…。
私が言おうとしたのはね、聖。
…なにさ。
自動車の事、貴女に教えてもらおうと思って。
私に?
だって貴女の方が先じゃない?
でも蓉子なら私に聞かなくても
聞きたいの。
…。
駄目かしら。
…別に良いけど。
けど筆記はもう
だから実技の方。
実技?
聖には簡単でも、私にはそうではないかも知れないでしょう?
…。
聞いてどうにかなるものでは無いかも知れないけど。
けどアドバイスが聞けたら良いなと思うの。
…アドバイス、ね。
ATしか出来ないけど。
ええ、十分よ。
…。
駄目?
…手取り足取りなら。
…。
…なんにせよ、蓉子なら。
なぁに。
…比較的、直ぐに取れると思うよ。
真面目だから。
分からないわよ。
あんな鉄の塊を運転するのだから。
私が出来るんだから、蓉子にも出来るよ。
努力の人だから。
聖がそう言ってくれるのなら、頑張れるわ。
ありがとう。
…どーいたしまして。
−蓉子さんの決心、そのニ。
どうだった?
うん?
初めて車を運転してみた感想。
ああ。
そうね…。
…。
ねぇ、聖。
ん。
地面の感触って伝わってくるものなのね。
地面?
ハンドル越しに、路面の凹凸を感じたから。
それが少し不思議に思えて。
…それが感想?
おかしい?
初めて運転したのに?
あら、ちゃんとした感想じゃない?
…。
聖?
ま、確かにね。
伝わってくるかな。
でしょう?
で、楽しかった?
そこまでのゆとりは無かったわ。
へぇ?
だって動かすだけで精一杯だったんですもの。
…。
聖はいつも運転しているのね。
いつもは乗らないけどね。
…。
え、なに…?
…聖はこの手で、どこへでも連れて行ってくれる。
それが私は嬉しい。
…蓉子。
あのね、聖。
う、うん。
私ね、貴女の運転が好きよ。
…。
とても丁寧だから。
…そりゃあ、蓉子を乗せてますから。
雑なコトは出来ませんって。
私を乗せてないと雑なのかしら?
さて、どうかな。
でも蓉子は、あまり乗り物に強くないから。
…。
私はいつだって、蓉子さんを想ってますので。
…ありがとう。
……。
……あのね。
…うん。
少しだけ、だけど。
聖に近づけたような気がしたの。
私に?
そう。
…。
未だ全然、出来ないけれど…。
……。
…それも、嬉しい。
……。
…?
…ああ、もう。
聖?
あのさ、蓉子。
なに?
そんな可愛い事言われると…ああもう、いいや。
ん…。
……あーあ、私がどこへでも連れて行ってあげる予定だったのになぁ。
…ふふ。
−蓉子さんの決心、そのサン。
蓉子。
あら、聖。
帰ろ。
迎えに来てくれたの?
うん。
さ、乗って。
なら、丁度良いわ。
と、言いますと?
荷物、持ってね?
それ?
いいえ?
…買い物、ですか?
貴女にごはんをちゃんと食べさせる為に。
私が迎えに来なくても買ってくるつもりだった?
だって貴女の家の冷蔵庫、ろくに入って無いでしょう?
いつも。
うんにゃ、蓉子が来た時だけは大賑わい。
それを無駄にしてなければ良いけれど。
してないよ、一応。
やれば出来るのだから。
面倒じゃなければやるんだけど。
私には作ってくれるくせにね。
そりゃあ、ね。
蓉子に美味しいって言ってもらえると嬉しいですから。
私に、ね…。
やっぱり相手がいるって大事だと思いますよ。
…まぁ、分かるけれどね。
でしょ?
だからさ
ところで。
何が食べたい?
…蓉子の手料理ならなんでも大歓迎。
なら、苦手なものも食べて貰うわよ?
どうぞ、お手柔らかに。
ところで。
うん?
今日はどうだった?
今日?
教習。
視界の大事さを改めて思い知ったわね。
雨足、こんなに強くなるなんて言ってなかったのにね。
だから来てくれたのでしょう?
私の蓉子が風邪でもひいたら大変ですので。
はいはい、有難う。
一緒に寝られなくなっちゃうし。
ばか。
けど、雨の中での運転って大変なのね。
だね。
…。
はい、待った。
…何を?
最近、蓉子がほんのり甘い気がするのさ。
そうかしら?
ま、良いんだけどね。
…。
どこで買い物してく?
…なんとなく、ね。
うん?
分かってきたような気がするのよ。
なんの?
運転のコツ。
へぇ。
それは良かった。
…。
…なに。
不機嫌?
いや、別に。
強いて言うなら蓉子の顔を見たらお腹が空いてきた。
早く蓉子のあったかい味噌汁が食べたい。
はいはい。
へへ、楽しみだなー。
…まぁ、未だ白薔薇さまには全然敵わないけれど。
白薔薇さま?
てーと、乃梨子ちゃん?
なんで、蓉子の方が
…。
……えと、そんなに見つめられると目を合わせらんないんですが。
合わせないで良いから、前をしっかりと見て運転してね?
…へーい。
よろしい。
−蓉子さんの決心、そのヨン。
おめでとう。
ありがとう。
これで蓉子さんも晴れて免許持ちだ。
ええ、そうね。
早速運転してみる?
早速?
私のぶーぶ、でさ。
…。
さぁ、どうぞ。
…今日は止めておくわ。
うん?
今は聖が運転して。
遠慮しなくても良いのに。
遠慮しているわけでは無いのよ。
助手席、座りたかったんだけどな。
…。
初めては、私以外の誰かを乗せるつもりとか?
まさか。
冗談だよ。
…。
じゃあ、帰ろうか。
ねぇ、聖。
うん?
やっぱり、私は聖に乗せてもらうのが好きなのかもしれないわ。
…それはなんで?
取ってみて、分かった。
…。
勝手な事を言っているのは自覚しているわ。
まぁ、勝手と言えば勝手かもしれないけど。
でも、良いんじゃない?
…。
私は単純に、嬉しいし。
…うん。
じゃあ蓉子、乗って。
いつもの席に。
うん。
じゃ、帰ろうか。
途中、どっかに寄っていく?
そうねぇ。
そだ、お祝いしようか。
お祝い?
蓉子さんが無事に免許を取りましたお祝い。
別に良いわよ。
いつもどおりで。
良いじゃない。
良いって。
したいのに。
もう、してくれたじゃない。
もう?
おめでとうって。
ああ。
それで十分よ。
欲が無いなぁ。
それに。
それに?
迎えに、来てくれたじゃない?
…。
今日だけじゃない。
教習所に通っている間も。
そりゃ、愛しの蓉子さんの為ですから。
私はそれだけで十分嬉しいのよ。
やっぱり欲が無いなぁ。
…。
まぁ、蓉子さんがそう言うなら。
…ねぇ、聖。
ん?
なに、やっぱりして貰いたくなった?
ううん、そうじゃないわ。
じゃあ、何かな?
…。
蓉子?
…運転してる時の聖の横顔、好きよ。
……。
……。
…え、と。
…なに。
つかり、運転してない時は好きじゃないってこと?
…。
…。
……そう、聞こえた?
…。
…。
…ううん、聞こえてない。
そう。
…。
…。
…よーこ。
聖。
…ん?
座ってね。
…?
私が運転する時は、隣に。
…勿論ですよ。
良かった。
…。
…。
……蓉子。
ん…。
ちゅう、したい。
今は、だめ。
じゃあ、帰ってから。
どうしようかしら。
するもんね。
無理矢理は、いや。
無理矢理じゃなければ良いんだ。
さぁ、どうかしら。
今はって言ったのを、聖さんが聞き逃すと思うかね?
初めから思っていないもの。
−Another Winter
…。
…古い映画ね。
…。
しかも、何を言っているのか分からないわ。
…。
面白いの、これ。
別に。
蓉子が言っていたわ。
…何を。
貴女、言葉が好きなんですってね。
日本語以外の。
…だから?
いいえ、特に意味は無いわ。
思い出しただけ。
…。
分からないところが、面白いのかしらね。
…。
蓉子には明確な答えを求めるくせに。
…江利子。
懐いたものね。
…。
睨まないでよ。
酒が不味くなるわ。
こっちは最初から不味い。
ああ、然う。
…。
…蓉子は。
相変わらず、あまり強くないのね。
…。
スイッチが切れたようだわ。
…お前が来たから。
…。
いつもだったらあまり飲まない。
ふぅん。
…。
…これ、何語なのかしら。
ドイツ語。
ああ。
…。
…なんて歌っているのかしら、この人。
凄い声だけど…。
…。
…。
…話す事、無いなら。
もう、帰れよ。
…。
…。
…本当、良く懐いているわね。
…。
蓉子が、貴女に。
…は。
あんなに素直になれなかったのにね。
今じゃこんなに無防備。
…不味い。
…。
酒が。
…然うねぇ。
…。
…。
…。
…どちらが、好きなのかしらね。
…。
蓉子と…あの人と。
…!
貴女の心の中に居るのは。
…。
その目、今でも蓉子には見せるの。
…何しに来たのよ、江利子。
親友達と久しぶりにお酒でも飲もうかと思って。
…。
それで?
…。
若しも、再会出来たとしたら。
蓉子を選ぶ自信はあって?
…。
無いのかしら。
…蓉子に決まっているだろう。
本当に?
江利子。
…。
私は…蓉子が居れば、良い。
蓉子は私の傍に居てくれる。
居なくならない。
…それだけ?
…。
再会して。
同じ事をあの子に言われたら?
…。
貴女の傍にずっと、
…。
…温いわね。
…。
…あーあ。
これ、気に入っていたのに。
…。
…。
……最低だ、お前。
…然うかしら。
…。
……でもね、聖。
…。
蓉子とあの子を見る時の貴女の目、は。
私には同じようには見えない。
お前がどう見えようが、関係無い。
…。
私は蓉子が好きなんだ。
…。
蓉子が居なくなるなんて…もう、考えられない。
…。
…蓉子が居なきゃ、駄目なのよ。
……それは大丈夫よ。
…。
蓉子は貴女から離れない。
蓉子は貴女を…。
…。
…然う、あの時からずっと。
…。
私にはそれが理解出来ないのよ。
…。
…ん。
……蓉子。
せい……えりこ、は。
帰ったよ。
…こえ、かけてくれたらよかったのに。
蓉子、良く寝てたからなぁ。
起こしても起きたかどうか。
…もぅ。
はは。
……ねぇ、せい。
ん…。
…。
…なに、蓉子。
ううん…。
…珍しいなぁ。
蓉子から躰を寄せてくるなんて。
…せい。
蓉子…。
ん…。
……ここで、良い?
…。
…何も言わなら、ここでしちゃうけど。
はぁ…。
……。
…あ。
……冷たい?
ん…。
…なら、温めてよ。
あ……。
……やっぱりきれいだ、蓉子。
……せ、い。
ほんのり赤くなってるのは…私のせいだよね。
…あまり、みないで。
いやだ…聞けない。
せめて、あかりをけして……。
…いやだ。
そんなことしたら、見えなくなる…。
ん、ん…。
…。
…せぃ。
……もう。
…。
蓉子…。
あ……ッ。
……。
せい……。
…。
……?
……。
…せい……聖。
……。
…すきよ、せい。
うん…。
……もっと。
…。
つよく…。
……ようこ。
……わたしを、だいて。
…。
あなたのあとが…のこるように。
…。
ずっと、きえないように……ん、ぁあッ。
江利子話はこういう形だと続けられる。
そんな事に気付いてみたり。
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