−蜩ノ頃。(聖蓉) 蓉子、空、空が凄いよ。 うん? 橙色と藤色、きれい。 そうね。 あーー。 なに? いやぁ、夏ももう終わりだなぁって。 夏、好きだったかしら? 暑いのはやだー。 今年も暑かったわね。 毎年、暑い。 と言うか夏ってこんなに暑いもんだったっけ? まぁ、夏だから。 子供の頃はここまで暑く感じなかったような気がするんだけど。 その頃はその頃で暑かったと思うわよ。 感覚が違うだけで。 感覚、ねぇ。 そもそも貴女、外で遊んだりしたの? どうだったかなぁ。 蝉とり、した事ある? 蝉とり? 蓉子はあるの? あるわよ。 小学生の頃、クラスの友達と。 え、嘘。 嘘って何よ。 いや、蓉子が蝉とりって。 合わない? 想像がつかない。 私だって普通の子供だったのよ? 麦藁帽子とか、被っちゃったりして? ええ。 へぇ、それは見たかったな。 聖は? 私? 麦藁帽子、被ったことある? んー…。 無さそうね。 失礼な。 私だって あるの? ……無い、かも。 生粋のお嬢様。 なーんか、ひっかかる言い方だなぁ。 リリアンのイメージ、最初はそんな感じだったから。 特に幼稚舎から通っているような子は。 外からだとそんな風? 少なくとも私は。 偏見だけどね。 ええ、本当にそうだった。 けど。 けど? やっぱり、リリアンの子が麦藁帽子被って虫取り網を片手に駆け回る姿は想像出来ない。 祥子は絶対に無さそうだなぁ。 貴女も。 …私の場合は暑いのが嫌なだけだったと思うけど。 然うかもね。 けどさ、蓉子のそんな姿もやっぱり想像出来ないよ? 然うかしら? うん、出来ない。 蓉子はどちらかと言うと 本当は私、蝉は少し苦手なの。 ……。 あの外見がね。 ああ、なんか分かる気がする。 抜け殻も苦手。 まぁ、あのまんまだし。 けど、嫌いではないのよ。 黒いアイツと違って? アレを好きな人は早々、いないと思うけど。 貴女だって変な声、あげるじゃない? そりゃいきなり出てこられたら吃驚するさ。 ふふ。 …蝉、啼いているね。 ええ、今年も良く聞いたわ。 懐かしく思ったりする事、ある? いいえ? …。 でも少し物悲しく思う事はあるわね。 特に。 …特に。 こんな空の時と。 ……。 蜩の声。 …ひぐらし。 蝉の種類。 それくらい、知ってますよ。 本当かしら。 実物は見たこと、無いけど。 そもそも蜩はなかなか捕まらないのよ。 そうなの? 人里には居ないから。 へぇ。 山に行けば、捕まえられるらしいけれど。 翅、きれいなんだって。 苦手な割には良く知ってますね? まぁね。 …。 …。 …蓉 ねぇ、聖。 ん…? ……。 …わぁ、珍しい。 何よ。 いいえ。 丁度、私も繋ごうと思っていましたので。 …。 …夏も、終わりだ。 もう、秋の空ね。 そしたら蓉子の誕生日だ。 …。 おめでとうって、今年も一番最初に言うんだ。 …はいはい。 約束。 楽しそうね? うん、楽しい。 …ねぇ、聖。 んー。 たまに、ね。 うん。 遠い昔、やっぱり貴女とこうして歩いていたような気がするの。 遠い? 然う、遠い遠い昔。 未だ、そんなに生きてないけど。 こんな日暮れ時、蜩の声を聞いて。 …。 なんとなく、だけれど。 おかしな話よね。 ……大禍時。 …。 て、言うんだっけね。 …誰そ、彼。 誰彼? 私の顔はちゃんと見えている? 勿論。 本当に? 本当に。 …。 …ほら。 ん…。 私の蓉子だ。 ……勝手に自分のものにして。 だって、そうなんだもの。 …ばか。 ふふ…。 ……離さないでね。 …え? …なんでもない。 …。 …。 蓉子。 …うん? 帰ろう。 お腹、空いた。 お腹? 蓉子の作ったごはんが食べたい。 甘い卵焼きが食べたい。 味噌汁も食べたい。 もう、貴女は。 卵焼き、蓉子のじゃなきゃ駄目なんだ。 味噌汁も、インスタントなんてもう食べられない。 卵焼き、最初は文句言ってたくせに。 今はもう、無しではいられない。 定期的に食べないと、駄目な躰になっちゃった。 大袈裟。 だから、責任取って。 責任って何よ。 責任は責任だよ。 そのまんま。 卵焼きぐらいで これからも、ずっと、一生。 作って。 ……。 ほら、早く。 あ、引っ張らないで。 …。 聖ってば。 蓉子! は、はい。 無しじゃ、いられないんだ! もう! …ッ。 だから、 もう、恥ずかしい人ね…! あはは。 …莫迦なんだから。 そうだよ、だから責任取って貰わないと。 だから! 蓉子については、私が取ってあげるから。 …。 取ってあげるよ、一生。 …。 ね? …ああもう、本当にばかなんだから。 −散花。(もうひとつのパラレル:小話の4から) ……。 はぁ…。 未だ終わりじゃないよ。 …ぁ、ん。 言ったでしょう? 寝られないって。 …あな、たは。 名前、知りたい? …いいえ。 何にせよ、教えるつもりは無いよ。 …。 貴女は… 聞いて、どうするの…。 誰が聞くなんて言った? それから私に質問する事なんて許して無いよ。 く、ぅ…。 花は花らしく、黙って綺麗に咲いてれば良い。 …。 …嘘だよ。 黙って従われる事ほど、詰まらないものは無いからね。 ……。 …ほら、一回イったくらいでさ、止めるなんてしないでよ。 …ッ! 然う、その目。 然う言う目で見られながらするのは本当、堪らない。 …。 それとも、聞かれたかった? …。 名前。 …誰が 然うだな。 ロト、でも名付けようか。 …ロ、ト。 花の名前。 綺麗らしいよ。 興味無いけどね。 …。 さて。 もう少し、満足させて貰わないと。 …。 貴女も他のヤツになんて未だ、売り飛ばされたくなんか無いでしょ? ねぇ? …。 …ま、そんなの慣れてるだろうけど。 …! わ、たしは…! …ん? 私は…! ……。 ……。 抵抗、止めて欲しく無いんだけど。 あと貴女の身の上話なんてどうでも良いよ。 …く。 貴女は私のものだ。 ロト… ……。 …つぅッ! …。 ……。 ……抵抗されるのが好きなのでしょう、貴女は。 …へぇ。 ならば 良いよ。 …。 ゾクゾクしてきた、堪らない。 …。 さぁ、今度はどうしてくる? また噛み付く?獣みたいにさ。 ん…。 …貴女に紅を。 …。 唇、痛かったよ。 …次は噛み千切ってやるわ。 どうぞ、好きなように。 …。 さぁ、次を始めようか…。 ……。 −所詮、データはデータ。(聖蓉) …ねーぇ。 …。 返事してよーぅ。 …。 よぉーこ。 …こういう時、返事すると大抵、ろくでも無い。 お、一寸歌っぽい。 ……。 でさでさ、蓉子。 …。 してくれた、と看做しました。 …。 へへ。 ……はぁ。 何よ。 わぁい、大好きー。 鬱陶しい。 むぎゃ。 それで何。 日本人ってさ、セックス頻度、世界で最低なんだって。 ………。 あと、満足度もダントツで低いらしいよ。 …やっぱりろくでも無かった。 国民性なのかねー? 知らないわよ。 と言うか何なの、それ。 そういう調査結果があるの。 誰が、何の為に、そんな調査するのよ。 して、どうするの。 知らない。 私が調査したわけじゃないし。 ……。 まぁ、話題性だけはあるよねぇ。 それだけじゃない。 興味、持った? 持ちません。 そんなの、どうでも良いわよ。 そっか。 …。 けど、幸せを感じないのは勿体無いよねぇ。 …。 然うは思わない? …人それぞれ、でしょう。 それに…。 それに? ……色んなケースがあるでしょうから。 どんなケース? だから人それぞれよ。 …。 な、なに…。 んーん。 そっか、人それぞれか。 それも然うだね、うんうん。 …。 うちはどうかなぁ。 …は? 私達。 ……。 私は幸せだけど。 どう? …て、何この手。 お約束? ……。 いたたたた。 所詮は口実だったの、それは。 別にそんなんじゃないんだけどなぁ。 じゃあ、何。 別にこんな口実、要らないし。 ……。 ねぇ? 同意はしないわよ。 うん、そうだと思った。 ……。 ん? …しないわよ。 ……。 しないったら、しない。 後でが良い? ……。 おあずけ? …知りません。 もう少し、出来たら良いなぁって思うけど。 …。 あの日がぶつかると出来ないし。 …どれくらいなの。 ん? だから、日本人…は。 …。 …別に興味があるわけじゃないわよ。 ふぅん。 …。 …聞きたい? やっぱり良い。 ま、人それぞれだもんね。 …ええ。 ところで、蓉子。 …なに。 蓉子は、どう? …。 幸せ、感じてる? …。 感じてないなら…私の責任だなぁ。 …聖。 ん? だからこの手。 へへへ。 いや、へへへじゃなくて。 好きだよってコト。 ……何、それ。 愛してるの方が良かった? ……。 蓉子さん。 …ちょっと。 ちゅー、良い? はぁ? ね? ね、って。 …。 あ、こら、せ… …今はこれだけで我慢。 …。 しし。 ……本当、ロクでも無いんだから。 −恒例、ごはんのお話。(聖蓉) 今夜のおかずは魚? ええ、然うよ。 え、と、子持ち鰈の煮付け? 然う。 美味しいよねぇ、蓉子が作ったの。 ありがとう。 魚、蓉子のおかげで大分食べるようになった。 貴女、あまり食べなかったものね。 骨が面倒だし。 どう聞いても子供の理由よね、それ。 だって面倒じゃん? 聖は面倒くさがりだから。 面倒だと思うんだけどなー。 はいはい。 骨、気をつけてね。 小さいのもあるから。 うん。 貴女、大した確認もせずに口の中に入れるから。 蓉子がほぐしてくれると良いんだけどな? そこまではしません。 だよねぇ。 当たり前。 ちぇー。 ごはん、よそるわね。 普通で良い? ん、ありがとー。 そういやさ。 ん? 蓉子の煮物の味って、小母さまが作るのに似てるよね。 …。 この前、思った。 …まぁ、親子だし。 そういうものなんだ。 それを食べて育つから。 その味が当たり前になるのよ。 ふぅん。 貴女だってそうだと思うわよ。 そうかなぁ。 屹度。 でも私は蓉子の味の方が好きだし、合ってるけどな。 ……。 特に煮物。 …私は。 ん? 小母さまが作った料理、好きよ。 うちの? 然う。 …本当に? ええ、本当に。 …ふぅん。 それにね、聖。 なに? あなたが作る料理の味は、小母さまのそれに似てるような気がするわ。 えー…。 根底にあるのよ。 無自覚なだけ。 ……。 さ、冷めないうちに食べましょう? でも、さぁ。 それは何を受けての? …蓉子ってお母さんだよね。 …はい? どっちかと言うと。 …もう一つは何。 ママ。 ……何が言いたいのか、分からないのだけれど? だからさ? お母さんとママだったら、蓉子はお母さんだなぁって。 日本のお母さん。 ……。 なんか横文字って感じがしない。 …元ロサ・キネンシスなのだけれど。 これでも。 いや、それはリリアンだったから。 リリアンだから、何よ。 あそこは箱庭だもの。 違うでしょ? …うーん。 蓉子はお母さん。 …あまり言わないでくれる? ママは煮物って感じがしない。 それは偏見。 うん、分かってます。 …たく。 あとは年季、かな。 …今度は何。 小母さまの域に達するのには。 ……。 似てるけど、違う。 ……食べないのなら、片付けるけど。 食べる、食べる。 ……。 …ん、今日のも美味しい。 …母には敵わないけれど。 小母さまは小母さま、蓉子は蓉子。 ……。 私にとっての一番は蓉子。 …ふぅん。 いつだか、言ったじゃない? …何を。 ごはんを食べる仕合わせ、教えてくれたのは蓉子だって。 …そんな事、言ったかしら。 思えば高等部時代のお弁当から始まった。 泥棒してくれたわよね、良く。 卵焼き、美味しかったなぁ。 今も、だけど。 甘いって文句言う割には、毎回、取られていたような気がするわ。 毎回、じゃないと思うけど。 でもそれに近かった。 あはは。 面白く無いから。 ねぇ、蓉子。 …なに。 餌付け、成功? …ッ! なんて、ね。 ……ばか、でしょう。 あれ、蓉子? 餌付けって、何よ…もう。 蓉子、さ。 …。 卵焼き。 …もう明日の朝食の話? 明日の朝ごはんじゃなくても良いよ。 と言うか朝はちみっと無理かな。 …無理? 作るのは 私。 …え? たまには作ってみようと思って。 …誰が? 私が。 聖が? 然う、私が。 …。 いつも作って貰うばかりだから、たまには作ってあげる。 オムレツなら、作るわよね? オムレツと卵焼きは違うじゃない。 然うだけど…。 食べたくない? …。 ん? …食べたくないって事は無いけど。 まどろっこしいなぁ? …。 食べたい? …食べたい。 じゃあ、決まり。 …。 明日の夜ごはんにでも ねぇ。 んー? 聖のうちの卵焼きってどんなだったの? うちの? 私、知らないわ。 …。 知りたいわ、聖。 うちは蓉子んちみたいのじゃないよ。 じゃあ、どんなの? どんなのって。 まぁ、普通の? 甘くないのでしょう? うん、甘くない…かな。 まどろっこしい。 あとふんわりもしてない。 基本、うちの母親はあまり上手じゃないんだよ。 お砂糖を入れないからだわ。 入れないとふんわりしないもの。 いや、それだけじゃないと思うけど。 作れる? …そんなに食べた事、無いし。 そもそもスクランブルが多かったような気がするよ。 じゃあそれでも良いわ。 えー…。 作ってくれるのでしょう? 私は厚焼きが良いよ。 じゃあ、聖のうちの厚焼きを作って? 拘るなぁ。 だって食べたいんだもの。 …。 聖。 …まぁ、努力はしてみるけどさ。 あまり期待はしないでね。 いいえ、するわ。 えー…。 楽しみね。 いや、だから…。 ふふ。 …。 ね? …あのさぁ、蓉子。 んー。 …オムレツにしない? いーや。 甘めの、作るからさ? 卵焼きじゃないと、いや。 そう、言わず。 だめなの。 …む。 ね、聖。 ……あー。 聖が食べてたのを作れば良いのよ。 …と、言われても。 ん? なんだか変なプレッシャーが。 あら、貴女にもそんなのがあったの? 蓉子さんだけには。 寧ろ、私だけには無さそうだけれど? よーこぉ。 …うふふ。 あー参ったなぁ。 人の事、お母さんだとか好き勝手な事言うから。 いや、だって思ったんだもん…。 …。 …うー。 ねぇ、聖。 …あに。 やっぱり卵焼きが食べたいわ。 …。 あなたの作った卵焼きが、食べたい。 あなたのうちの、じゃなくても。 …それで、いい? ええ。 私は貴女のが食べたい。 …蓉子! こら、お行儀が悪い。 へへ、頑張るね。 ええ、頑張って。 期待、してるから。 −獣ト贄。(俺屍版:蜩ノ声で削った部分) …。 …。 …。 ……似てきた。 …。 …お姉さまに、良く。 …だから? 太刀筋、構え…未だ未だ未熟だけれど、それでも。 …。 親子なのね…。 …。 …令も。 …。 業は違うけれど…い、た。 …それで? ……。 自分も子が欲しいって? …そんな事 どんな子だろうね、蓉子の子は。 …。 …お節介で世話焼きで、鬱陶しくて。 あ…。 挙句、勝手に人の中に踏み込んできてさぁ…! せ、せい…。 …。 …。 …赦さないよ。 ……。 赦さない。 …く、ぁ。 …。 は、ぁ…。 ……子を生すなんて、赦せない。 …。 …そんなもの、見たくも無い。 …せい。 若しも………。 ……あぁぁッ!! ……。 あぁ、あぁぁ…ッッ! ……噛み千切ってやる。 …ぁ…ぁぁ…。 今直ぐ。 ひ、ぁ……。 ……。 いたい…、いたい…いた…ぃ…。 …。 …やめて、…やめて…ぇ。 …。 あぁぁ……ァァ…。 …神なぞ、に。 ……いわな…ぃ、から…だか、ら…。 …。 だか…ら……。 …。 …破ったら。 ……ぁ…。 ………貴女は、私のもの。 …。 それを忘れたら…どうなるか、教えてあげる。 や、だ…。 …。 やだ…いや、やめて…。 ……。 おねがい…おねが、ぃ、だから…。 ……蓉子。 い…ッ。 ……良い、顔。 …ぅ…う、ぅ。 ……。 せい…せい…。 ……。 ………あぁぁぁ…ぁ。 …好きよ。 ……。 好きよ…蓉子。 ……。 ……だから、裏切りは赦さない。 ………。 はぁ…。 ……ぃ、で。 蓉子……。 ……だ…な、ん…て。 ようこ…ようこ……ぉ。 ………いわない、で。 −特別でない昼下がり。(聖蓉) …。 …。 …よーこぉ。 あら、起きた? うん…。 すっきりしない顔ね? …いつ? 一時間くらい前。 …そっか。 連絡はしたけれど…その様子だと気づいて無いみたいね。 鳴ったのは…なんとなく。 然う。 …。 勝手に上がってしまったけれど…良かった? …いまさら。 …。 ん…? 勝手に上がり込むのは…少し、抵抗があるのよ。 私と蓉子の仲なのに…? …それでも、あるの。 ふぅん…。 あ、こら…。 …へへぇ。 シャワー浴びて、さっぱりしてきなさい。 一緒に入ろ…? 入らない。 えー…。 ほら。 …ちぇ。 それとね、聖。 ん…。 鍵はちゃんと閉めておきなさいって言ってるでしょう? …開いてた? ええ。 一人暮らしなのだから気をつけないと。 うん…ごめんなさい。 …。 蓉子が来るかなー…って。 …メール、返してくれなかったくせに。 でも音で蓉子って分かったから。 …。 それにさぁ、暑いと何もしたくないんだもん…。 …だからって鍵ぐらいはしなさい。 はーい…。 それから、あまりダラダラしてたら駄目でしょう? んー…節電…? …それは結構だけれど。 熱中症だけには気をつけてね。 …。 家に居てもなるのよ? …そーなの? 昼寝してるだけなら良いけれど。 違う理由で倒れてたら 心配、してくれるの? …当たり前でしょう。 そっか…へへ。 …ほら、早くシャワー浴びてきなさい。 浴びたら…くっついても良い? 暑いから、いや。 良いじゃん、くっつこうよぅ。 いーや。 …。 だめ。 …良いや、どうせくっつくし。 何ですって? なんでもない。 聞こえてたんだけど。 はは。 …暑いくせに。 うん、暑い…でも、くっつきたい。 ちゅーもしたい。 …素直すぎ。 うん、ありがとう。 …。 さぁて、と。 …聖。 なに? アイス。 …? 暑かったから、買ってきたんだけど。 後で食べる? うん、食べる。 わぁい、アイスー。 そんなに好きだったかしら。 蓉子と食べるアイスはおいしーもんねぇ。 アイスはアイスでしょうに。 それが違うの。 蓉子とアイスー。 …。 これで心置きなく、くっつけるね。 くっつけません。 −Merdian Child.(注意:反転部分は男が出ています) こんなものなのか、と。 確かに然う、私は思ったのだ。 男の下で、初めてだと言うのに、頭の中はやたらに冴えていて。 夢中になんかなれず、躰は熱を帯びているのに、反比例するかのように心は冷めていた。 始まってしまえば、それはとても簡単なコトだった。 キスする事はおろか、手を繋ぐ事さえしなかったのに。 一向に手を出してこようとしない彼。 でもそれは仕方ない。私達は恋人同士ではないのだし、彼には娘がいて、かつ、亡くした奥さんの事を忘れてはいない。 それでも会う約束を強引に交わして、二人で居る時間を増やしてきた。 私を知って、私を好きになれば良い。然う、思っていたから。 だって彼は言ったのだ。私を知らないから結婚は出来ないって。だったら知って貰えば良いだけの話。 知って貰うには会って話すのが一番手っ取り早い。 私も彼の事を知る事が出来るし、時間を共有する事だって出来る。 初めての想い、自分でもこうなるのだと思うと、面白くて愉快で仕方がなかった。 焦れて、どうすれば良いのか、考えて。 今までの人生に無かった事柄。少なくとも退屈なんて、微塵も感じなかった。 あの日までは。 おずおずと、手を繋がれた。 夕闇の中、唇を重ねた。 そして。 今、彼の重みを感じている。 中で、彼の存在を感じている。 荒い息を私に浴びせながら、獣のように動く彼。何度も出し入れを繰り返す、彼。 男を受け入れた痛みとやらは消えていない。正直、そればかりで気持ち良くなんかない。けど、そんなのはどうでもいい。 あんなにキスも出来なかったくせに、あんなに手を繋ぐことすらも出来なかったくせに。 避妊を、していないなんて。 滑稽で、少し可笑しい。 外で出せば安全、なんて。 そんなの、私でも間違ってることを知っている。 これで妊娠なんてしたら、優等生な親友はどんな顔をするかしら。 幼馴染で、寧ろ腐れ縁とも言える親友は? …ああ、こんなの、早く終われば良いのに。 彼は案の定、外に放った。 私のお腹の上に、それは白い染みを作った。 翌日、大学には行かずにネットで調べた産婦人科に行った。 問診を受けてからそれを処方してもらい、その場で飲んだ。特に何も感じなかった。 それは二種類あって、どちらも保険は利かないけれど、服用は一回でかつ避けられる可能性が高い方にした。 安全日、なんて、無い。そんなもの、都合良く作られた幻想に過ぎない。 飲まなければ、若しかしたら。 家に着くと、そのままキッチンに進みコップに水を注いで一気に飲み干す。 幸い、と言うのか、父は商店街の会合でいない。 兄達も仕事で揃っていない。基本、忙しい奴らなのだ、あの人達は。 母にお帰り、と言われた。母には当然の事ながら病院に行くなどとは言っていない。 いつもどおり、ただいま、と返してから、自分の部屋へ向かった。 夜、お風呂に入って、躰を普段どおりに洗った。 途中、昨日は見つけなかった彼の痕を見つけた。 赤くなった部分を指でなぞる。あくまでも、無かった事にする気は無い。 でも、ただそれだけ。 眠る前。 また親友達の顔を思い出した。 彼女達は屹度、こういう経験はしないだろう。 あの二人は多分、一生一緒に居るだろうから。 絶対、とは言えないけれど、でも不思議な事に彼女達が別れて生きる姿が想像出来ない。 莫迦な二人。お互いしか、見えない二人。 そんな彼女達に…私は仕合わせになって欲しい、なんて。 言っても信じては貰えないだろうから、言う気なんてさらさら無いけれど。 然う、誰にも。 …思えば。 私は、初めてなんかじゃなかった。 男は初めてだとしても。 だから、なのだろうか。 セックスが、あんなに詰まらないものに思えたのは。 親友の、妹。 彼とは似ても似つかない姿、感触。 今になって、思い出すなんてね。 昨日の事を言ったら、どんな顔をするのかしら。 朝、目覚めは最悪だった。 それの副作用、あまり無いと説明されたのだけど、私は含まれなかったらしい。 特に吐き気は酷いものだった。朝食もまともに食べられない。 父に顔色が悪いだとかなんやら言われたから、風邪にしておいた。 まぁ、それでそれで、うるさいのだけれど。 避妊薬を飲んだから、と言うよりは随分とマシでしょう? それから。 毎回ではないけれど、何度かセックスをした。 お互いの家では基本出来ないから、所謂、そういうホテルで。 最初のそれで避妊しなかった事をひたすら済まなさそうに侘びる彼に、薬のことを話すと、あからさまにほっとされた。 100%ではないのだけれど、男とはわりと単純なものなのかもしれない…し、知らないだけなのかもしれない。 二度目以降は、いかなる場合でも、彼は避妊具を欠かさなかった。 私自身、薬を飲むのを忘れなかった。副作用は時が経つ事で治まった。 結婚まで、考えていたのに。寧ろ、出来てしまえば都合が良いだろうに。そういう点では女の方が有利だろうから。 だけど私は彼との子供なんて、欲しいとも思わなかった。 違う、最初から考えてなどいなかったのだ。私は。 抱かれながら、あの子の肌の感触をたまに思い出した。 それからその表情と。 江利子、どうしたの? …何が? さっきから、何も言わないから。 然うだったかしら。 ええ、然うよ。 …然う。 …。 …。 …何かあった? 何かって? だから…例えば山辺さんと、とか。 …然うね。 あったわ。 何があったの? 私で良ければ ねぇ、蓉子。 なに? セックスはもう、した? ……は? 聖と。 ……。 未だ…かしらね。 あれは結構、 え、江利子。 うん? 江利子の話ではなかったの? 然うよ。 わ、私と聖の話は …どうだった? …。 仕合わせに、なれたかしら? ……江利子。 …。 どうしてそんな事を 蓉子は、自分が男とセックスしてる事なんて考えられる? ……え。 貴女は聖と違って、女だけを愛せないわけでは無いでしょう? …考えられないわ。 じゃあ、してみたいと 思わない。 …でしょうね。 …。 …。 …江利子。 若しかして、だけれど ええ、したわ。 何度かしてる。 ……。 …赤くなる事、無いでしょうに。 ああ、だから聖は貴女が可愛くて仕方ないのね。 …だって。 蓉子。 …何。 別れようと思っているの。 え、なんで…。 …然う、ね。 まさか飽きたなんて 考えられなくなった。 何よ、それ。 飽きる、とは違うと思うのだけれど。 なんで。 結婚するって言っていたのに。 …。 江利子。 ……志摩子。 え? 私ね、志摩子に手を出しているのよ。 な……。 だから、では無いのでしょうけど。 聖は 私は言っていない。 あの子はどうだか知らない。 後は…蓉子。 …。 貴女が聖を見て知っていると思って? ……江利子。 志摩子との未来なんて、初めから考えていなかった。 それは今も。 それなのに、どうして! …さぁ、ね。 江利子…! 聖に言うかは貴女に任せるわ。 志摩子の気持ちはどうするのよ。 そもそも志摩子は貴女をどう思っているの。 今でも敬語のままなのよ。 敬語…? 然う、今でも。 リリアンの先輩と後輩のまま。 …いつからなの。 貴女達が始まる前。 …つまり、彼と会う前からなのね。 ええ、然うなるわね。 ……。 親友、止めたくなったかしら? 止めないわ。 …然う。 …。 …。 …兎に角。 山辺さんと別れるのはもう、決めた事なのね。 ええ。 …志摩子とは? …。 これからも、続けるの。 …分からないわ。 貴女は…ちゃんと志摩子の事を愛しているの? ちゃんと? ちゃんとって? …。 そもそも、愛ってなんなのかしらね。 ……。 ん? …江利子。 なぁに? …。 こんな姿、聖が見たら嫉妬するかも知れないわよ? …貴女は私の、親友だから。 …。 いつだって。 どうか、忘れないで。 …忘れないわよ。 聖も。 …あれは、どうかしらね。 江利子。 …はいはい。 地味に黄色祭継続中。 と言うか、ごめんなさいとしか。 |