−恋はノンストップ。(聖蓉)





   んー…♪


   …。


   …んー♪


   …ちょっと。


   ん、なに?


   その鼻歌、なに。


   気分が良いから。


   …気が散るんだけど。


   ああ、ごめんごめん。
   集中したいよね?


   …古い歌ね。


   それがさ、今日、どっかで聞いたんだ。
   この歌、頭に残るよね。


   …まぁ、分かるけど。
   だからってこんな時に…。


   こんな時?


   …。


   ふふ、ごめんごめん。
   集中、したいよね?


   …や、だからそうじゃなくて。


   もう、どうにも止まらない。


   ……。


   今宵も蓉子さんの躰の上を、てね。


   …ばかなコト言ってると、止めるわよ。


   だぁめ。


   ぁ…。


   …言ったじゃん?
   もうどうにも止まらない、て。


   ……。


   んん、良い表情
〈カオ〉


   …せい。


   どこまで行きたい?


   …。


   それとも行けるトコまで、行っても良い?


   …明日の事も、考えて。


   明日は明日の風が吹くって。


   …そんなことばかり、言って。


   はは。


   本当に


   んじゃ、集中しようかな。


   あ…。


   蓉子さんの望みはどんなコトでも叶えなくっちゃ。


   …なら、加減を


   それは、聞けない。


   …うそつき。


   許して欲しいな?


   …ゆるさない。


   ちゃんと、二人だけにしてあげるから。


   …いまも、


   この世には、だよ?


   …浮かれすぎなのよ。


   こんな時に、浮かれない方がおかしいもんね。


   もう少し真面目に…。


   いつだって、真面目ですよ。


   …。


   ふざけてこんなコトするなんて、勿体無い。
   だから私はいつだって、本気で真面目なのさ。


   …やっぱり、浮かれすぎ。


   …。


   ん、ぁ…ッ!


   …蓉子。


   い、いきなり…。


   …そろそろ始めようかな、と。


   …いままでのは


   蓉子。


   ……。


   …今夜は、眠らせない。


   ……ばか。








  −臆病な獣。(俺屍版)





   …。


   …ん。


   …。


   聖、起きた…?


   …。


   …おなか、すいた?


   …。


   ん…。


   …。


   聖…。


   …。


   …どうしたの?


   …。


   あ…。


   …。


   せ、聖…。


   …。


   …。


   …ようこ。


   …。


   …。


   …この方が、落ち着くの?


   …。


   …。


   ……ん。


   …そう。


   …。


   …あったかいね。


   …。


   それに…。


   …。


   …とても、心地良い。


   …。


   い、た…っ。


   …。


   …聖、かみつかないで。


   …。


   いたいから…。


   …。


   …お願い。


   …。


   ん、いいこ…。


   ……。


   …。


   …。


   …もう少しだけ、このままで。
   おやすみなさい…聖。








  −二年と言う命の中で。(俺屍版)





   聖。


   …。


   聖。


   …。


   聖、どこに


   ここー。


   …どこ?


   ここ。


   …姿が見えないんだけど。


   声で分かんない?


   …。


   分かると思うんだけどな。
   蓉子なら。


   …何、してるのよ。


   いや、たまには童心に返ってみようかと思って。


   …。


   来る?


   行かない。


   然う言わず。


   寧ろ、降りてきなさい。
   子供達が真似をするでしょうが。


   んー、良いんじゃない?
   別に。


   危ないでしょう。


   大丈夫だよ、落ちなきゃ良いだけだから。


   …。


   おいでよ。
   昔は来てくれたじゃない。


   …昔は、昔よ。


   でも蓉子は蓉子だよ。
   変わってない。


   …。


   おいで、蓉子。


   …。


   なんて、昔の私じゃ言わなかったな。
   言わなくても、来るもんだと思ってたし。


   …。


   …蓉子?


   わ…ッ。


   へへ、吃驚した?


   と言うか、危ないから!


   大丈夫だって。


   危ないから、頭を上げて!


   大丈夫なのに。


   貴女が大丈夫でも見てるこっちが


   わ…。


   聖…!


   …。


   …あ。


   …ね、大丈夫だったでしょう?


   ……。


   おいでよ、蓉子。
   今日は天気が良いから遠くまで見えるんだ。


   ……。


   …怒った?


   ……。


   蓉子。


   …じっと、してなさいよ。


   ん?


   説教。


   …えぇ。


   逃げたら、許さない。


   いや、逃げるでしょ。
   それは。


   でも、分かってるわよね?


   …それは半ば脅しと言うものでは。


   脅しよ。


   ……へぇぇ。


   絶対、駄目だから。


   あー…。


   聖。


   …はぁい。
   大人しく待ってまーす。








   大体聖は自覚が無さすぎるの。


   …。


   貴女は一応、この家の当主なの。
   大黒柱なの。


   …稼ぎは今となっては大して無いですけど。


   稼ぎとか、そんなのは問題にしてないの。
   私が言っているのは年長者としての自覚が足りないと言う事。


   …。


   この際、当主だとかそんなのもどうでも良いわ。


   蓉子。


   話は未だ終わりじゃありません。


   …。


   完璧な手本になれとは言わない。
   けれど


   よーこぉ。


   …人の話は最後までちゃんと聞きなさい。


   お母さん。


   ……は?


   この家の。


   ……あのね。


   あーあ。


   …何よ、その大袈裟なため息。


   …良いんだけどさ、別に。


   何がよ。


   そんな蓉子を好きになったのは、私だし。


   ……。


   …直ぐ、顔赤くなるところも可愛いし。


   か、からかわないで良いから、ちゃんと話を


   ねぇ。


   な、何よ。


   抱っこ、しても良い?


   …は?


   抱っこ。
   いつもして貰ってばかりだから。


   …とりあえず。


   ん?


   下りる、わよ。


   …。


   さぁ。


   その前に。


   聖。


   ほら、見て。


   …。


   ここからだと京の町並みが良く見える。


   …然うね。


   別にどうでも良い事だったんだけど。


   …。


   うちが、やってきた事でもあるんだよね。


   …どうしたの、急に。


   良くやってきたな、と思って。
   他人の事どころじゃないのにさ。


   …。


   どうしてだろう。


   …聖。


   ん?


   私達は、私達だけで生きてるわけじゃないわ。


   …。


   貴女が未だ赤子
〈ヤヤ〉だった頃、貴女にお乳をくれたのはあそこの家の人。


   …らしいね。


   もっと言えば、江利子も。


   …。


   それから


   …蓉子も?


   …然う、私も。


   …やった。


   何が「やった」なのよ。


   ううん、こっちの話。


   …兎に角。


   でもさ、嫌なヤツもいっぱい居るじゃない。
   石、投げられた事だって


   それが、全てじゃない。


   …。


   だから。
   私達は彼らを生かす為に、生きる。
   私達を生かしてくれる彼らの為に。


   …ふぅん。


   そうやって、回ってるのよ。
   多分。


   多分、なんだ。


   自分でも分かっているのよ。


   綺麗事?


   だとしても。
   うちの家の者はずぅっと然うやってきた。
   それは変わらない。


   蓉子は綺麗だね。


   …?


   凄く、綺麗だ。


   …皮肉?


   違う。


   …。


   蓉子、こっち。


   …の前に、下りるわよ。


   一緒に見よう。


   …。


   空、雲、山、そして、京。


   …。


   見たいんだ。


   …最後じゃあるまいし。


   然うだよ。
   でも良いじゃない。


   …。


   それに。
   二人ならあったかい。


   …。


   て、教えてくれたのは蓉子だったから。


   …覚えてるのね。


   勿論?


   ……貴女はどこまで覚えているのかしら。


   結構、覚えてるかもよ。


   …本当かしら。


   さぁ、蓉子。
   抱っこしてあげる。


   …。


   さぁ。


   ……少しだけだからね。


   うん、そんな蓉子が愛しい。


   …ばか。


   ふふ。








  −春が、始まる。(聖蓉)





   明日も、晴れるかな。


   …?


   いや、もう春じゃない?


   暦ではね。
   でも明日は寒いらしいわよ。


   もう、三月なのになぁ。


   ねぇ。


   ま、気付けばあったかいのが当たり前になってるかな。


   当たり前って気付かないものよ、わりと。


   そっかな?


   大抵はね。


   じゃあ蓉子が私の隣にいるのも気付かないものなのかな。


   …は?


   当たり前、だから。


   ……。


   しし。


   …春って。
   天気、変わりやすいわよね。


   冬に比べるとね。
   と言うか話、逸らした。


   元々は聖が振ってきた話。


   まぁ、然うだけど。


   晴れると花粉がね。


   蓉子、花粉症だったっけ?


   少し、ね。


   そっか。


   貴女もでしょう?


   私のはただの鼻炎。


   ふぅん?


   目、痒くないし。


   ま、油断は出来ないけれど。


   …。


   …聖?


   春、ね。


   …。


   蓉子。


   …うん?


   また、会おうね。


   …何よ、急に。


   何となく。


   変な聖。


   あはは。


   …。


   …。


   …ばいばい、また明日。


   ?
   何?


   リリアンではごきげんよう、だったけれど。


   …。


   聖。


   …うん?


   また明日とはもう、言えないけれど。


   …。


   ごきげんよう、またね。


   …。


   …何よ。


   いや、そうだなと思って。


   …。


   蓉子。


   …なぁに。


   ごきげんよう、またデートしようね。


   ……。


   ん?


   …なんかニュアンスが違う。


   いや、一緒だよ。


   …。


   いっしょいっしょ。
   ね?


   …じゃあ、そういう事にしておいてあげるわ。


   やった。
   じゃあさ、次はいつ逢える?


   …。


   んー?


   …全く、貴女は。


   なんか変?


   いいえ。
   次は…そうね。








  −想い不器用。(聖蓉)





   …。


   ねぇ、蓉子。
   これなんだけどさ。


   …。


   どうかなぁ。
   そんなに悪くはないと思うんだけど…。


   …。


   …?


   …。


   蓉子?


   …え?


   話、聞いてた?


   …。


   聞いてなかった?


   …ごめんなさい。


   まぁ、良いけど。
   どした?


   …ううん。


   …。


   な、なに?


   そういう「ううん」を言う時の蓉子は、絶対、「ううん」じゃない。


   …え、と?


   蓉子。
   正直に言ってごらん?


   正直も何も


   よーこ。


   …。


   どうした?


   …。


   ん、あれ?


   …なんでもない、から。


   …。


   ほ、本当よ…?


   …うん、分かった。


   え、あ…。


   いや、分からないけど。


   せ、聖。


   けど。


   ……。


   …蓉子、何を考えたの?


   べ、別に…。


   …教えてくれない?


   …。


   言えないこと…?


   …。


   …じゃあ、さ。


   ぁ…。


   どう、したい…?


   ど、どうしたい…て。


   …キス?


   …ッ!


   …されたい?
   それとも…したい?


   わ、私は…んん。


   …。


   …。


   ……私は、したいけどなぁ。


   …。


   ん…?


   …した、じゃない。


   うん、しちゃった。


   …。


   …蓉子は?


   …。


   言えないなら、直接行動に移しちゃうのも手だよ…?


   そ、んなこと…。


   …されたいんだけど、な。


   ……。


   ねぇ、蓉子…?


   …。


   ……なんて、ね。


   ……聖。


   そんなに焦らなくても良いよ。


   …。


   ……もう少しだけなら、待てるから。


   もう少しだけ…。


   …そう、もう少しだけ。


   …。


   我慢出来ない時は…しちゃうけどね。


   ん…。


   ……こんな風に。


   …ごめんなさい。


   謝ることじゃ、ないさ。


   でも……。


   …。


   ……。


   ん、よしよし…。








  −道。(俺屍版:山百合家)





   蓉子。


   …。


   いつでも良いぞ。


   はい。


   が、俺も加減はせぬ。
   分かってるな?


   はい、父上。


   其の意気や、好し。


   …。


   さぁ、今日は楽しい仕合だ。


   はい…!








   …。


   緊張感、あるわね。


   あの勇兄ぃがねー。


   …。


   椿。
   心配?


   …いいえ。


   ふぅん?


   …藤。


   大丈夫よ。


   だから。


   お、始まった。


   …。


   …大丈夫、ねぇ。


   蓉ちゃん、疾い。
   流石。


   …けど。


   …ッ。


   勇兄も未だ、鈍ってない。


   …。


   …うわぁ、痛そ。


   痛いに決まってるでしょ。


   だよねぇ。


   …けれど。
   私の妹は退かない。


   …。


   …。


   此れぐらいで。
   退くような子に育てた覚えは、無い。


   うん、怖いわねぇ。
   兄も姉も、そして子である妹も。


   …。


   おろ。


   …。


   藤、藤。


   んー?


   白ちび。


   …。


   あらあら、起きちゃったの。


   …藤花、聖を連れて奥へ。


   良いじゃない。


   …何が。


   どうせだから、見せておけば。


   …。


   私も見たわよ。
   これくらいの頃。


   はい、私も私もー。


   …。


   椿も、でしょ?


   …勝手になさい。
   ただ、面倒な事になったら。


   はいはい、分かってるわよ。


   …。


   …力は勇兄ぃの方が未だ上、かなー。


   何れ、抜くでしょうけどね。


   然れど、疾さは既に蓉子の方が上。


   子供の動きじゃない。
   末恐ろしいとはこの事ね。


   …。


   …一つ、入った。


   …けど、其れくらいじゃ、ね。


   未だ未だこれからよ。


   奥義、未だ一つも見せてないもんね。
   勇兄ぃ。


   …。


   …聖。


   …。


   これが仕合。
   親子とか、そんなのは今は無い。
   ただ、拳として生きる為の、仕合。


   …。


   蓉子ちゃんは今日から貴女の先を行く。
   いえ、元から先を歩いてはいたけれど。


   …。


   槍はこんな事、しないけれど。
   まぁ、何にせよ、“出来ない”けれど。


   …。


   貴女もいずれ、其の場所に立つ。
   …としても。


   …。


   …てか、藤。
   さっきからなーんか、要領得ないよー?


   あら、わざとだもの。


   …ああ、やだやだ。


   ま、今はちゃんと見ときなさい。
   蓉子ちゃんの姿を。


   …。


   あの子は屹度…自分の為にでは無く“誰か”の為に、拳を振るう事になるだろうから。


   …。


   そして其れは聖、貴女も


   …ッ!


   ん?


   …くぁぁ、今のは相当痛いー。


   あらあら。


   …。


   …聖?


   ……ぅ。


   聖。


   ……ぅぅぅ。


   聖。


   ぅぅ、ぅぅぅ…。


   …だめ。
   今は。


   ……。


   …今は。
   其の姿をちゃんと見届けなさい。
   其れが…此の家に生まれた者の務めでもあるのだから。


   …。


   …そして。


   …。


   あの背中を守る為、に。


   …。








   然うだ、蓉子!
   来い…ッ!!


   あぁぁぁぁぁぁ…!!!!








  −Puro de nuevo.(放浪記)





   …。



   …ん。



   …。



   …よーこ。



   …?



   蓉子…?








   …。


   なんだ、居たんだ。


   …居ては悪い?


   夢かと思った。


   …。


   極東のちっちゃな島国から蓉子が私を探しに来て。
   ずっと一緒にいるって。
   そんなの、夢みたいじゃない。


   夢じゃないわよ。


   そうかな。
   私は今、目が覚めていると自分では思っているけれど、本当は寝ているのかもしれない。


   頬、抓ってあげましょうか?


   古典的だね?


   他にご要望があれば叶えてあげるけど?


   いや、良い。
   痛いのは苦手。


   どうだか。


   嫌じゃない、痛いのは。


   …。


   …ん、なに?


   ……心が痛いのは、いや。


   …。


   …待ってるのは。
   多分、いつまででも待っていられるけれど…でも。


   …莫迦だね、蓉子は。


   知ってるわ。


   …。


   …。


   …ねぇ、蓉子。


   …ん。


   …。


   聖?


   やっぱ良いや。


   何よ、それ。


   怒られそうだし。


   それは内容にもよるわね。


   怒られそうな内容だから、止めた。


   …。


   …さて、もうちょっと休もうかな。


   聖。


   んー?


   言ってみなさいよ。


   やーだ。


   言いなさい。


   怒られるのは学生時代だけでもう十分。


   聖。


   やだねー。


   待ちなさい。


   待たない。


   待って。


   どうしてもって言うなら、捕まえれば良いよ。


   …。


   ねぇ、蓉子?


   …分かった。


   お。


   乗ってあげるわ。


   …。


   覚悟なさい。


   わぁ。


   捕まえたら、言ってもらうから。


   じゃあ捕まらない。


   聖。


   やーだ。


   諦めないわよ、私は。


   知ってるよ。


   絶対、捕まえるんだから。


   やれるもんならやってみろー。


   ええ、やるわよ。


   はは。


   笑っていられるのも今のうち。


   ずっと笑ってやるもんね。


   …。


   よ、と。


   こら、待ちなさい。


   やなこったいー。


   聖。


   蓉子。


   聖!


   よーこ!


   絶対、諦めないんだから。


   あはは。








  −Líneas paralelas.(放浪記)





   …いたッ


   ん、なに?


   …。


   蓉子?


   …なんでもない。


   何でも無くは、無いでしょ。


   …。


   どこ?
   見せて。


   …大丈夫だから。


   蓉子。


   本当に大丈夫だから。


   見せて。


   …。


   早く。


   …。


   …目?


   ……ごみが、一寸入っただけだから。


   水。


   …。


   早く洗い流す。
   オーケイ?


   …オーケイ。


   出来る?


   …出来るわよ。


   なら、良い。


   …。


   …。


   …聖。


   ん?


   ありがとう。


   何が。


   心配してくれて。


   …。


   …。


   …まぁ、連れだし。


   …。


   出来た?


   ええ、もう大丈夫。
   けど。


   何?


   水、大事なのに。


   一口、我慢すれば良い事だよ。


   でもその一口が


   町に着いたら買う。
   ここからならもう直ぐ。


   …お金だって


   蓉子。


   …ッ。


   黙った?


   …近い、から。


   そうだよ。


   …そうだよ、て。


   こうでもしないと、貴女は黙らない。


   …。


   …。


   …もう、言わないから。


   …。


   せ、い…。


   ……冗談だよ。


   …。


   されると思った?


   ……いいえ。


   でしょ?


   …。


   じゃ、体調が悪かったら直ぐに言う事。
   ここは日本じゃない。


   …ええ。








  −雷の夜(聖蓉)





   …。


   …。


   …暗い。


   …停電、だから。


   …いつ、復旧するかな。


   雷が収まらない間は無理かもしれないわね。


   でも雷で停電って珍しいよね。


   そうね。
   子供の頃はあったけど。


   そうだっけ?


   あったわよ。


   蓉子んちだけ?


   失礼ね。


   ごめんー?


   …全く。


   …。


   …。


   …蓉子。


   ん?


   周りも暗い。


   そりゃあ、ね。


   音も聞こえない。


   雷の音はするけど?


   …。


   …。


   …なんか違う世界に来たみたい。


   …そうね。


   …。


   …。


   …えへへ。


   何よ。


   よーこ。


   だから、何。


   蓉子が居て良かった。


   …。


   怖くない。


   …らしくない。


   ほんとだもんね。


   …。


   ね?


   あ、こら…。


   …こうすれば、怖くないでしょや?


   …。


   …ね?


   ……もぅ。


   蓉子さんは雷が苦手だから。


   …言わなくて良いから。


   だって言ってくれないんだもん。
   私は言ったのに。


   …。


   …二人で良かった?


   …。


   よーこ。


   …良かった、わよ。


   …。


   …。


   …にしし。


   ……。


   未だ復旧しないかなー。


   …どうかしらね。


   …。


   …て、なに。


   や、暗いなら…良いかなぁ、とか。


   だめ。


   …少しだけ。


   だめったら、だめ。


   …。


   て、聖…ッ!


   んー…。


   ちょ…んっ。


   ……他にやるコト、無いし。


   だ、だからって…。


   ……少しだけ、少しだけ。


   だめだ、と……。


   ……でもちゃんと、するから。


   ぁ…。


   ……こうしてれば、何も怖くない。


   ………ば、か。








  −アルベドとルベド。(聖蓉)





   …。


   …気が付いた?


   …。


   水、飲む?


   ……いらない。


   掠れてる。


   …。


   喉、やられたら。
   きついでしょ?


   …。


   それとも、飲ませて欲しいのかな?


   …いい。


   それはどっちの意味で?


   …。


   …飲ませて、欲しい?


   じぶんで、のむ。


   …あ、そ。
   けど


   …っ。


   …だから、言ったのになぁ。
   飲ませてあげるって。


   ……。


   躰、思うように出来ないんじゃないかな、と。


   …。


   そんなに睨まないでよ。


   …。


   ……ごめんね?


   …なにが。


   無理、させて。


   …。


   もう少し優しく出来たらとは、思うんだけどね。


   …。


   だから、睨まないでって。


   …。


   …そそられちゃうから、さ。


   …!
   ん…っ。


   ……ねぇ?


   せ、ぃ…!


   でもその前に。
   水、飲む?


   あな、たは…んん。


   ……。


   ……。


   ……飲んだ?


   …むりやり。


   …。


   すぎるの、よ…。


   …だって、ねぇ。


   …。


   もう一口、いる?


   …いらない。


   飲んでおいた方が良いと思うんだけどな。


   …。


   だってさ…。


   ぅ…。


   未だ、するから。


   ……せい。


   ねぇ、蓉子…?


   ……。


   …泣いても、良いよ?


   …。


   ……まぁ、泣かせるけどね。
   何度だって…さ。


   ……。








  −えぐり出して(音楽聖蓉)





   …。


   …。


   …。


   …どこに、行くのよ。


   …。


   …。


   …気付いてたんだ。


   …それで。
   どこに行くつもり?


   …どこでも良いでしょ。


   ええ、そうね。


   …。


   そしてまた、一人になるのね。


   …。


   …独りがそんなに良い?


   …。


   けど、させない。


   …。


   させないわ。


   …貴女に。


   …。


   貴女なんかに、私をどうこうする力なんて無いわ。


   無いわよ。
   それがどうしたの。


   …。


   無いけれど、だからって何も出来ないと思ったら大間違いよ。


   …。


   聖。


   ……ふ。


   …。


   そうね。
   わざわざ、犯されに来るんだものね。


   …そうよ。


   …。


   けれど、貴女に私は犯せない。


   …何を言っているの。
   さっきまで散々


   心までは。


   ……。


   貴女に私の心まで好きなようにする力なんて、無い。


   …。


   無いのよ。


   ……かわいくないな。


   ええ、然うよ。
   そんなの、疾うに知ってると思ったけど。


   …。


   悔しい?


   …別に。


   …。


   …離してよ。


   離さないわ。


   離せ。


   嫌。


   ……。


   全てを拒絶しようとも。
   私は貴女を離さない。


   …。


   絶対に、離さない。


   ……貴女に何が出来るの。


   出来るわ。


   …。


   …。


   …その目が、嫌い。


   知ってる。


   どんな事をしようとも、折れない。
   そんな貴女が、嫌い。


   知ってる。
   けど。


   …。


   私だって、折れるわ。
   折れるけれど…だけど、それでも離したくないものがあるだけ。


   ……。


   聖、私は。


   ……抉り出してよ。


   …。


   そんなに言うのなら。
   私を抉って、抉り出してみなさいよ。


   …。


   じゃなければ。


   …う。


   私が、貴女を抉り出してあげるわ。


   …何を抉り出したいの。


   知らない。
   けど。


   …。


   …その目も、その躰も、その心も。
   全て抉って、中のものを滅茶苦茶にしてあげる。


   …そうして、抉り出すのね。
   何かを。


   そうよ。


   それが貴女の欲しいもの?


   欲しくないわ。
   貴女のものなんて。


   …。


   さぁ、離すのなら今のうち。


   …そんな事で私が怯むとでも思ってる?


   でしょうね。
   貴女は莫迦だもの。


   …。


   ならば。
   ぐちゃぐちゃにしてあげるわ。
   すべて、すべて、抉って、壊してあげるわ。


   …。


   蓉子。


   …。


   全部…無くしてあげるわ。


   …やってみなさいよ。


   …。


   貴女が嫌いなもの全て。


   …。


   貴女が見たく無いもの全て。


   …。


   貴女が欲しいもの、全て。


   …。


   あげるわ、あなたに。


   …狂ってるわね。


   ええ、そうかも知れない。
   でも貴女にそれが言えて?


   …。


   貴女が私を抱いた時から。
   貴女も私と同じ。


   …どこが。


   良いのよ、私が勝手に思っているだけだから。


   …。


   貴女は私を嫌いと言う。
   だから、その感情は私だけのもの。


   …嫌われているのに。


   ええ、そうね。


   …。


   でもね、聖。
   それでも、私は。


   …。


   私は、貴女を愛してるわ。








  −Das Liebeslied





   ごきげんよう、蓉子。


   『…!聖、聖なの!?』


   じゃなかったら、誰だろね。


   『今、どこにいるの?』


   んーと、北陸のどっかかなぁ。


   『北陸の何処?!』


   だから、どっかだって。


   『…標識とか無いの?』


   とりあえずあるのは畑と山と道。
   それから公衆電話。


   『……』


   それより、元気だった?


   『それは…!』


   ん?


   『……どれほど、心配していたか』


   誰が?


   『誰って!』


   蓉子は、してくれた?


   『当たり前でしょう…ッ!』


   そんなに大きな声を出さなくても聞こえるって。


   『私だけじゃない…志摩子や祐巳ちゃん、


   つまるところ、山百合会メンバー?


   『……』


   でも江利子はしてなかったでしょ。
   あいつはそういうヤツだから。


   『……江利子は


   いいって。
   なんだかんだ言ってあいつとは一番付き合いが長いからさ。
   変なトコで分かるのよ。


   『……』


   結局、ヤツとの関係が一番楽なのかも知れない。


   『……聖』


   だからって蓉子との関係が嫌だってわけじゃないわよ。
   蓉子とは…いや、私は屹度、蓉子がいないと駄目だと思うから。


   『…そんなこと、』


   あるのよ。


   『…』


   こんなこと、顔が見えていたら言えないなぁ。
   絶対。


   『……帰ってくるのでしょう』


   うん、帰るつもり。


   『小母さまが体調を崩しているわ』


   母親が?


   『…貴女の事、心配しすぎて。夜も眠れないらしいの』


   それは大変だね。


   『…声を、聞かせてあげて』


   携帯、持ってないんだ。
   分かるでしょ?


   『…携帯じゃなくても良いわ。今みたいに


   小銭、もう無いの。
   と言うか、もう余裕が無いのよね。


   『余裕が無いって』


   尽きそう。


   『…!』


   嘘だよ。
   でも余裕が無いのは本当だからもう帰るつもり。


   『…お願いだから、驚かさないで』


   でもね、帰れない。


   『…何を言っているの?』


   どこに帰って良いか、分からない。


   『どこにって、貴女には家があるでしょう…?』


   一応、ね。
   でも、あそこには帰りたくないのよ。
   蓉子には分からないでしょうけど。


   『……』


   …どこに帰れば良いと思う?


   『…だったら』


   蓉子のところへ?


   『……』


   当たり。


   『…兎に角、帰ってきて。お願いだから』


   私ね、蓉子。


   『…なに』


   蓉子の事、愛しているわ。
   多分、誰よりも。


   『…嘘』


   どうして?


   『……貴女には


   引き摺ってはいるけれど。
   前には進んでいるつもりよ。


   『……』


   こんな私じゃ、いや?


   『…嫌なわけ、ないじゃない』


   傷付くのは蓉子だけど、それでも良いって言えるの?


   『言えるわ。それに屹度、私だけじゃない』


   …。


   『聖、私は


   蓉子。


   『……聖』


   その先は帰ったら、聞くよ。


   『…絶対よ』


   うん、絶対。


   『絶対、帰ってくるのよ』


   うん、帰るよ。
   蓉子のところへ。


   『…待ってるのは私だけじゃないわ』


   謝らないと駄目かな、やっぱり。
   特に祥子。


   『…祥子?』


   蓉子が私の事心配しすぎて、眠れなくなって体調を崩しがちになっているかも知れないから。


   『ばか』


   否定はしないんだ?


   『…早く帰ってきて、聖』


   うん。


   『帰ってきて…早くなくても構わないから。無事ならそれで良いから』


   言ってる事がちょっと矛盾してるよ。


   『…うるさい、ばか聖』


   蓉子、泣いてる?


   『泣いてないわよ』


   そっか、残念だなぁ。
   あの紅薔薇さまが私の事で泣いたなんて言ったら自慢出来たのに。


   『誰に』


   江利子あたり。
   祥子に言ったら、張り倒されそう。


   『…江利子は屹度、退屈そうに流すと思うわ』


   容易に想像がついた。
   あ。


   『…聖?』


   そろそろ、切れる。


   『聖』


   じゃあ、蓉子。


   『待って、聖』


   蓉子。


   『聖…』


   待ってて、帰るまで。
   そして続きを聞かせて。


   『…帰ってこなければ、聞かせられないわ。その事を忘れないで』


   うん、忘れないよ。


   『…』


   …じゃあね、蓉子。
   ごきげんよう。


   『…ごきげ、ブツ








   オール聖蓉。