−11・22(聖蓉+江利子)
…。
…。
…今日は、さぁ。
…。
良いふーふの日、なんだってさ。
…だから?
別に。 ただそれだけ。
…あ、そう
…。
…。
……ま、単なる語呂合わせなんでしょうけど。
…と言うより、然う読めるからでしょう。
…日本人ってそういうの好きだよね。
……どうでも良い事だわ。
……。
……。
…良い夫婦、ねぇ。
…。
……ねぇ、蓉
聖。
なに。
…気安く話しかけないで。 未だ、許したわけじゃない。
…。
…。
…。
…。
…そもそも。 喧嘩、って呼べるのかな。
…少なくとも今は貴女と話をしたくないわ。
でも、一緒に居る。 なんか、変だと思わない?
…貴女が勝手に居座っているだけでしょ。
勝手…勝手、ね。
…。
まぁ、そうなるのかな。 ここは蓉子の部屋だし。
…私、少し出てくるわ。
何処に行くの。
…何処だって良いでしょう。
てか、黙って行けば良いのに。
…。
違う?
…余計なお世話だわ。
…。
…。
…黙っていては分からない。
…。
妹に然う言ったのは誰だったっけか…。
……。
言いたい事があればはっきりと言えば良い。
…。
睨む程に、何かあるのなら。
……。
…とりあえず、行ってらっしゃい。
いずれにせよ、私はここに居るつもりだから。
…帰りなさいよ。
いや、今日はもう帰るつもり無いから。
顔も見たくないって言ったら。
だから、外に行くんでしょう。
…!
……。
……。
……お仕舞いにするつもりなんて、無いのよ。
…。
……だから。
……聖。
…なに。
財布、取って。
…財布?
そこにあるでしょう。
…ああ、あった。
取って。
はい。
……ありがとう。
…。
……甘いもの、買ってくるわ。 貴女が食べられないような。
…蓉子の好きなの、なら。 良いと思う。
…。
…。
…じゃあ。
ん…。
……。
今日は良い夫婦の日なんですってね。
…。
好きよね、日本人って。
…同じ事、言っていたわ。
それは嫌だわ。
…。
で?
…。
手放す事なんて、出来るのかしら。
…。
欲しい欲しいと、願って。 自分の心を押し殺していた頃もあったでしょうに。
…。
けれど手放す事が出来るのもまた人、なのよね。
…。
どんな思いでいたか、少しだけなら理解してるつもりよ。 でもそれでも離したい、離せるのならば…勝手にすれば良いと、私は思うわ。
…。
決めるのは貴女。 後悔するのは私じゃない。 後悔するかどうかなんて、分からないけれど。
…。
その時はまたこうして、お茶を飲みながら聞いてあげるわ。 幾らでもね。
…。
…話、聞いて貰いたかったのではなくて? さっきからずっと、黙っているけれど。
…。
今、居るの?
…。
声の発し方、忘れてしまった?
……江利子。
死にそう。
…。
いつかの令よろしく。 とは言え、私はその時の令の顔をまともに見ていないのだけれどね。
…。
切羽詰まっていそうだったから、色々なものを切って来たのだけれど。
…ごめんなさいね。
良いわよ。 貴女の死にそうな顔なんて、この先、早々見られるものじゃないわ。
……。
冗談よ。 タチの悪い、ね。
…。
ごめんなさいね?
…いいえ。
それで。 顔、見たくないの?
…。
声、聞きたくない?
…。
同じ空気、吸いたくない?
…。
もう、触れられたくない?
……。
今度は泣きそう。
…。
ねぇ、蓉子。
…。
私は思うのよ。 人生は長いようで、短いわ。
…江利子?
その中で面白いものを見つけられる事なんて、本当に、限られているって。
…。
つまらないのは、嫌い。
…。
まぁ、つまらない事があるからこそ、面白い事があるのでしょうけれど。
…。
ねぇ、同じでしょう?
…。
答えはもう、あるのでしょう。 貴女の事だから。
…。
どうしたら良いのかなんて、初めから決まっているのよ。
…。
蓉子。
…。
聖のこと、嫌い?
……。
それとも。 …愛してる?
……。
触れたい?
…。
…なんだかいじめっ子の気分だわ。
…ごめんなさい、江利子。
ますます、いじめっ子の気分。
…。
屹度、待っているわよ。
…。
と、言っても。 貴女の部屋ってあたりが少し、滑稽なのだけれど。
…。
同じ空気が吸えるのなら、大丈夫よ。 なんて、言っておいてあげるわ。
…ありがとう、江利子。
いいえ。 と言うか、私は全然、蓉子の話を聞いていないのだけれど。
…本当、ね。
とりあえず、ここは奢りで良いかしら?
ええ、勿論。
そう、ご馳走様。 それじゃ、ね。
もう、行くの?
ええ、行くわよ。
…そう。
わんこ、待ってるわよ。 ご主人様の帰りを。
…。
面白いものだわ。
…そう、かしら。
そうよ。 貴女達が付き合い始めた時はあまり、意外ではなかったけれど。 あれがここまで貴女に懐くとは思わなかった。
…。
貴女は自覚してないでしょうけど。 今でも貴女はあれの手綱をしっかりと握っているわ。 だからあれは貴女を待っていられるの。
…。
じゃね、蓉子。 今度は三人で会いましょう。 たまにはね。
…ええ。
あ、そうそう。 とびきり甘いお土産を買っていけば良いと思うわ。 胃もたれを起こしそうなくらい、ね。
…ん、そうするわ。
じゃ…ごきげんよう。
…ごきげんよう、江利子。
…。
…。
…しかし。 あんなに言い合える仲、だったのにね。
…。
手に入れると…かえって、臆病になってしまう事もあるのね。
いえ…だからこそ、かしら。
おかえりなさい。
…。
なんて。 ここは蓉子の部屋だものね。
……。
…。
…どいて。
…うん。
…。
…。
…。
…良かった。
…ここは私の部屋よ。
そう、なんだけどね…。
…。
…帰ってこなかったらどうしようって。 ほんの少し…ね。
…。
だから、良かった。
…。
それ、買ってきたもの?
…だとしたら?
お茶、淹れる。
…自分で淹れるから。
淹れさせて。
自分で淹れる。 余計な事、しないで。
…。
…。
…じゃあ、自分の分を淹れる。
…。
それも…だめ?
……。
あ、蓉子…。
…どうして、居られるの。
え?
…私、貴女にひどい事をしているわ。
…。
……。
…うん、本当は凄く辛い。
…!
けど…ここで帰ったら、もう。 …そんな気がして。
…。
……待ってるの、辛かったよ。
…あの人の事を思い出して、でしょ。 私じゃない。
…。
…あ。
……。
…。
……蓉子。
…。
…もう、駄目なの?
…。
蓉子は…もう。
……。
……好きだよ。
…。
好きだよ……蓉子。
…。
…。
……。
…。
…。
……ばいばい、ようこ。
…。
…。
…。
……何か、言って。 一言だけ良い…。
…。
…なに、か。
…。
お願い……。
……て。
…。
…そこに、座って。
………え。
座って。
……。
早く。
……う、ん。
…。
よ、蓉子…?
……。
あ、う…。
……わけ、ないのに。
…。
…顔、ひどい事になってるわ。
そう、かな…。
…。
……でも、良い。
蓉子が触れてくれるなら…気にならない。
…ばかな人。
…。
でも…本当にばかなのは私。
…そんなこと、な
…。
……ようこ。
……ごめんなさい。
…。
…。
……ごめんね、蓉子。
…。
…。
…お茶、淹れるわ。 貴女の分も…
待って、もう少しこのままで…。
……。
…このままで、いさせて。
…。
……ああ、安心する。
…聖。
ようこ…。
……。
…ぅ、く。
…。
よぅ、こ…ぉ。
……あげるわ。
え…。
…とびきり、甘いのを。
あ…。
……胃もたれを、起こしそうな。
…。
…寧ろ、私をそうさせて。
……。
……。
………蓉子。
…。
−Balgarska Muzika(音楽聖蓉)
…ねぇ。
んー?
ブルガリア、と言ったら?
ブルガリアンヴォイス、或いはブルガリアンポリフォニー。
…。
ヨーグルトって言った方が良かったかしら?
…いや、良いや。
つまんなそう。
…一寸、つまんない。
貴女との付き合い、もうどれくらいになるのかしらね。
と、言うと?
分かるくらいには一緒にいると思っているのよ。 勝手に、だけど。
……。
勝手でしょう?
…蓉子。
なんてね。
…。
だって貴女、さっきから聴いてるじゃないの。
…分かる?
独特だし、何より初めてじゃないもの。
…ああ。
…。
…蓉子?
今度はブルガリアなのね、て。
…ところでさ。
うん。
ブルガリアってどこだっけ?
…。
ヨーロッパの方だっけかな…。
東、が付くわよ。 確か。
ああ、東欧かぁ。 綺麗な人が多いんだっけ。
…。
て、テレビで言ってた。
…まぁ、良いけど。
名前は知ってるけど、それ以上は知らない国って多いよねぇ。 ブルガリアなんてその典型的な例かもしんない。
そうね。
……。
旅してる?
…ん?
聴き入っているみたいだから。
…ブルガリア語ってさ。
うん。
何の言葉に近いんだろーねぇ。
…そうねぇ。
そもそもブルガリア語ってあるのかねぇ。
あるわよ。
…。
聞いた事、あるもの。
…そっかー。
…。
…。
…こぶし、に。 ほんの少しだけ似ている部分があるわね。
日本人の耳にはそう聞こえるかもねぇ。
貴女も日本人でしょう?
だから蓉子が言いたい事分かるよって話。
…。
…けどやっぱ違うものだけどねぇ。
…うん。
…。
…
…若しも。
…ん。
貴女と世界を旅したら。 色んな音が聴けて楽しそうね。
蓉子と一緒なら楽しいかも。
…。
ほら、私一人だとそこら辺で野垂れ死んでそうじゃない?
…。
……蓉子?
冗談でも止めて。
…。
…。
…そう、江利子に言っておいて。
…ええ。
…。
…。
…男声合唱だと。 独特さが弱いからあまり好きじゃないなー。
…混声だと良いんじゃない?
混声だと、ね。 でも引っ張るのはやっぱり女声だよ。
…そうね。
…。
…。
…しっかし。 全然、分からないや。
…本当ね。 でも
そこが面白い。
…貴女って結構、言葉が好きなのかも知れないわね。
分からないから、と言う説明も付くけどね。
だから分からないままでいるのね。
…興味はそれなりにあるけど。 本腰入れて、とまではいかないなぁ。 聴いてるだけで良いもの。
…。
ねぇ、蓉子。
…ん。
世界は、広いねぇ。
…ええ。
言葉で溢れているよ。
然うね…。
−Caffeinism(聖蓉)
ただいまぁ…。
あら、おかえりなさい。
外はさ
さむ、さむ…。
…でしょうね。
この冬一番の冷え込みらしいから。
おこた〜。
の前に手洗いうがい。
インフルエンザ、ノロウィルス、その他感染症予防。
…うぅ。
やでしょ?
苦しいのは。
…はぁい。
宜しい。
…。
…。
…。
…。
…ばっちりー!
じゃ、お茶でも淹れてあげましょうか。
Just a moment, please.
うん?
そのまま、そのままで。
…いや。
あーだめー。
どうせまた、ロクな事を…
…えへへ。
……。
あったか〜い。
…冷たいんだけど。
ぬくぬく〜。
冷たい。
少しだけで良いからこのままで。
ね?
やだ。
寒い。
蓉子はおうちの中に居たじゃん。
居たけど、外気で冷えた貴女がくっついていたら冷える、寒い。
一緒にあったまろー?
一人であったまって。
ね、お願い。
一生の。
こんなコトで使わないで。
…へへぇ。
……。
蓉子、あったかいなぁ。
……で。
んー?
買えたの?
うん、買えた。
後で一緒に飲もうね?
今日ぐらい、我慢すれば良いのに。
だってー。
…普段だったらこんな寒い日、早々出歩かないくせに。
ああ…あったかい。
…。
しあわせ〜。
それ、コーヒー飲んでも言うわよね。
…ん?
私はコーヒーと同じレベルなのよね、どうせ。
違うよー。
…寒い中、わざわざ豆を買いに行くんだから。
うん、頑張った。
…。
よーこ。
…。
よーこさん。
…。
…断然、蓉子なんだけどなぁ。
…。
ね…?
…嘘ばかり。
嘘じゃないよぅ。
…然う言っておけば良いと思って。
…。
…断つ事なんて、出来ないくせに。
ねぇ。
…。
して、良い?
…は?
したい。
い、いきなり何を…
…あったまってきたし、もっとあったまりたいし。
それに…。
こ、コーヒーはどうするのよ…あ、こらッ
…後で。
今は蓉子。
ば、ばか!
…ん〜。
あ、ど、どこ触って…ひぁッ。
…あつい。
や、やめ…。
…やわらかい。
ん、ん…。
……。
だめだ、と…。
……後で。
…。
美味しいの、淹れてあげるから…ね。
……。
蓉子…。
……コーヒー、なんか。
ん…。
…聞きたくないし、いらないわ。
−Cumpleaños feriz!(聖誕2010)
…ただいま。
…。
0時5分過ぎ、か…。
…。
…聖?
…。
もう、寝てる…?
…。
…寝てる、わよね。
…。
……はぁ。
…。
約束、守れなかった…。
…。
明日…いえ、もう今日ね。
なんて言おうかしら…。
…。
…。
…。
…はぁ。
とりあえずお風呂に入ってから、それから…。
……蓉子。
わ、吃驚した。
…。
聖?
起きてたの?
……。
それとも、起こしてしまった?
…起きてた。
でも電気は
不貞寝しようと思ってベッドの中に居た。
……。
…。
…ええ、と。
…約束、守ってくれなかったね。
……ごめんなさい。
言い訳、しないの?
守れなかったもの。
…仕事だから仕方無いのに。
連絡もちゃんとくれたし。
…。
…ねぇ、蓉子。
…うん?
メリークリスマス。
…。
たまには言ってみようと思って。
…そう。
メリークリスマス、聖。
…てかもう、26日になっちゃってるけどね。
…そうね。
……蓉子。
ん…?
日、替わっちゃったけど。
我侭、言っても良い?
…どんな?
…蓉子にしか出来ないコト。
私にしか?
うん。
蓉子にしか。
…私に出来る事なら何でも。
歌、歌って。
歌?
学生時代に歌ってたの。
………え、と。
月が輝くとか、そんなの。
……ああ。
歌って。
でも、良いの?
何が?
クリスマスの歌で。
…うん、良いの。
…今?
じゃない。
…いつ?
ベッドの中。
…ん、分かった。
……。
聖?
…待ってる。
今度は、守って。
…うん。
…じゃあ、後で。
ええ、後で。
…。
…。
…。
聖。
…なぁに。
お誕生日、おめでとう。
…もう過ぎてるけど。
でも、クリスマスの歌を歌うのだから。
…今朝、聞いたし。
一度しか聞きたくない?
……ううん。
…おめでとう、聖。
…うん。
…。
…蓉子。
もう一つ、我侭言っても良い?
…どんな?
ぎゅっとして。
…ぎゅっと?
今、と、後で。
…寧ろ、眠るまで?
……。
…良いわ、してあげる。
でもいつものコトだから我侭とは言わないような気がするわ。
良いの、今夜は特別なの。
…そうね、特別ね。
…。
…。
…。
…続きは後で。
…ん。
待っててくれる?
…まってる。
…うん。
やくそく…。
うん、約束…。
……。
…。
…。
…何か、聞こえる?
…音。
何の?
…心臓の。
本当に?
…響いてるよ。
…。
…ねぇ。
ん…。
赤ん坊ってなんで左の胸で抱っこするか、知ってる?
…話してみて。
知っているのね。
…聞いたことがあるってだけの話。
じゃあ、言わない。
…。
…トクン…トクン。
それが私の音?
うん。
…貴女のは?
分かんない。
…聞かせて。
今は私が聞いてるの。
…いつもそうね?
うん…。
…。
…。
…安心するから。
ん…?
て、私は聞いたわ。
…。
さっきの話。
…。
…同じ?
…教えない。
…。
…。
…まぁ、良いけれど。
良いの?
敢えて言いたくないのは肯定、だもの。
貴女の場合。
…。
…無言も、また。
…ちぇ。
不満…?
…敵わないなぁ、てコト。
…ふふ。
…。
…。
…なんでだろうね。
…。
落ち着くのは。
…記憶があるのかもね。
きおく…?
生まれる前から屹度、聞いていた音だから。
……ふぅん。
…。
…。
…聖。
…。
聖。
…し。
…。
…聞こえないから。
……自分ばかり。
…。
…。
…蓉子。
…なぁに。
聞きたい?
…。
私の…。
…本当はね。
…?
…聞こえてるのよ。
…。
耳を通じて、じゃなくても。
聞こえるの。
…。
分からない?
……うん。
触れているから。
…。
躰を通して、聞こえてくるの。
…ふぅん。
本当なのに。
…蓉子が然う言うなら然う思うことにする。
…。
……蓉子が居てくれれば。
…。
それで、良いの。
…。
ケーキとか、プレゼントとか要らない。
ただ…ずっと、ずっと、傍に居てくれれば
本当に要らない?
…?
“プレゼント”、本当に要らない…?
……ものは、要らない。
もの、は?
…うん。
でも聖は私にくれる。
…蓉子が喜ぶの、見るの好きだから。
……。
…ね。
服、脱いで。
…。
要らない。
……そのまま寝たら。
風邪、ひいちゃうわ。
…蓉子はあったかいから。
…。
…早く。
我侭、みっつめ?
……蓉子は叶えてくれる。
……言っておくけれど。
…。
聖の方があったかいわ。
…蓉子のがあったかいよ。
聖の方が体温、高いもの。
…。
こうやって抱っこしてるとね…良く、分かるの。
……。
…ね、聖。
…あに?
…ふふ、言えてない。
……なに?
貴女は私の宝物。
……。
…なんて、ね。
……よーこ。
来年も、再来年も……ずっと、一生。
貴女を抱っこ出来ますように…。
……。
……。
…欲しいの。
ん…?
…蓉子と過ごす時間。
数えきれないくらい…長い時間。
…。
……叶えて。
……聖。
叶えて…来年も再来年も、ずっと一生傍に居て。
…うん。
…。
…。
…とりあえず、来年は一緒にごはんが食べたいな。
……ん。
蓉子が作ったごはんだよ。
…外じゃなくても良いの?
蓉子が良い。蓉子のが一番好き。
蓉子が作るごはんよりおいしいのなんて、ない。
…。
それに…外だと抱っこしてもらえないもの。
…外と言っても、ホテルを予約して
蓉子と一緒に住んでるこの部屋が、このベッドが一番なの。
…はいはい、分かった分かった。
……絶対、だよ。
…ええ。
絶対…ね。
−休日の潰し方。(聖蓉)
…。
ん。
……ええ、と。
蓉子。
……佐藤さん、一寸良いかしら。
今はみょーじ、やだ。
…いや、と言うかね?
蓉子、ん。
……いやいやいや。
いや?
やだ?
…そうじゃなくて。
じゃ、ん。
………ああ。
早く、早く。
…あのね、聖。
焦らさないで。
いや、焦らしているわけではなくて。
…。
別に嫌なわけじゃないのよ?
でも最近、やたらに過剰と言うか…。
蓉子。
……聖。
抱っこ。
………ああぁ。
よーこ。
……。
早く、早く、早く。
……幼児帰り、なのかしら。
……。
ねぇ、聖。
落ち着いて聞いて?
…。
夜、寝る時なら良いけど。
今は未だお昼だし、
そんなの、関係ない。
…折角のお休みだし。
だから、だよ。
…昨日だって、その…したし。
今はしないよ。
……でも。
蓉子がしたいならする。
そ、そうじゃなくて…!
…。
だ、だから、折角の休みなんだし、休みにしか出来ないような事を…
蓉子と一日、一緒に居るのは休みにしか出来ない。
…。
でしょう?
…それは、そうなんだけど。
だから…ん。
………。
抱っこ、して。
………。
蓉子。
……分かった、分かったわよ。
ふふ。
と言うか、聖。
…?
なぁに?
寧ろ、して。
…したいの?
そうじゃなくて!!!
わ…。
抱っこ。
…抱っこ?
聖が、して。
……え?
抱っこ。
して。
………私が?
早く。
え、え…。
私だってね。
う、うん。
されるの、好きなのよ。
そ、そうなの?
そうよ。
あ、あー…。
するのもされるのも好きなの。
貴女だから好きなの。
………。
聖、早く。
え、あ…。
聖。
……で、でも。
でも、じゃない。
早く。
…。
聖。
……わ、分かりました。
畏まらないで。
ご、ごめんなさい…。
謝らないで。
早く、して。
…なんか、蓉子が言うと変な気分に
なに?
あ、いや…。
早く、聖。
う、うん…。
…。
……こ、こんな感じ?
…。
よ、蓉子?
…やっぱりベッドの中の方が良いわね。
そ、そうだね。
と言うわけだから。
え、え?
ベッドで抱っこ、して。
えーー…。
何よ、貴女だってそのつもりだったのでしょう?
そ、そうだけど。
じゃあ良いじゃない。
……てか、気分がそっちの方向に行きそうですよ。
しないって言ったでしょ。
……あぁぁ。
ほら、早く。
わ、待って、待って。
待たない。
もう、決めた。
…あー。
私ね、聖の腕の中で眠るのが一番良く眠れるのよ。
…初めて聞いた。
言わなかったもの。
……。
…ああ、落ち着く。
…ね、蓉子。
…なぁに?
……ええ、と。
…。
……しない?
しない。
あ、う…。
言ったのは貴女。
…そうだけど。
で、でもさ…?
抱っこだけで良いの。
……ちゅー、したけど。
けど、そこまでだから。
…。
……ふふ。
………ああぁ。
…。
よーこ、よーこ。
…。
よーこ、よーこってばー。
…連呼しないで。
だって良く寝たなーと思って。
だっての使い方が間違ってる。
だってー。
だから。
ん?
…それはもう、良いから。
じゃあお風呂入ろ。
じゃあの使い方も間違ってるから。
お風呂お風呂。
だっこ、したげる。
…それももう、良いから。
沸かしてくるね。
未だ早いでしょ。
良いじゃん、さっさと入ってくつろご。
…その前に。
んん?
お夕飯はどうするの。
ごはん?
買出しに行くつもりだったのよ、今日。
え、そうだっけ?
そうよ。
なのに貴女が。
でも蓉子もおねだりしてくれたー。
…だからそれは貴女が
非常にじゅーじつした一日でございました。
終わらせないで。
大体、未だ夕方前でしょうが。
もう、夕方前だよ。
朝寝も出来て昼寝も出来て、今日は本当に良かった。
寝てばかりじゃないの!
折角のお休みが…
蓉子と久しぶりに一日ゆっくり出来た。
すんごく嬉しい。
…。
…あ、でも。
…未だ何かあるの。
蓉子のごはん、蓉子のごはんを食べてない!
…は?
ちゃんとした蓉子ごはんが食べたい。
一寸、蓉子ごはんって何よ。
それにちゃんとって何。ちゃんとって。
蓉子が作ったうまうまごはん。
略して蓉子ごはん。
止めて。
本当に止めて。
なんで?
なんでもよ。
恥ずかしい。
?
どして?
どうしても、よ。
もう。
じゃあ蓉子も私の作るごはんを聖ごはんって呼んでも良いよ?
良いから、呼ばないから。
そなの?
そうなの。
大体何なのよ、蓉子ごはんだの聖ごはんだの…。
んー良いと思うんだけどなぁ。
……。
蓉子?
……別に何でもないわよ。
…。
何でもないから。
…一寸良いかも、て思った?
思ってません!
あ、ムキになった。
かわいい。
ムキになんかなってません!
聖ごはん、好き?
ああ、だから!
蓉子が食べてくれるから私も作るの、楽しいんだ。
……。
ふふ。
……ああ、もう。
蓉子、ん。
…抱っこはもう、しないわよ。
違う違う。
ごはんの材料、買いに行こ?
…。
ん。
……聖が作るのよ。
んーん、今夜は蓉子のごはん。
聖。
蓉子。
せーい。
よーこ。
…。
…。
…ふふ。
…へへ。
行きましょうか。
うん、行こ。
−瑕疵。(俺屍版聖蓉)
あー食べた食べた。
聖、行儀が悪い。
いやぁ、お腹いっぱいでー。
食べて直ぐ横になるとお腹に良くない。
そっかなー。
そうなの。
早く起きなさい。
へぇへぇ。
全く、子供達が覚えたらどうするの。
まだ平気じゃない?
と言うか今は居ないし。
水は低い方に流れるのよ。
と、言うと?
つまりは、怠惰。
…ははぁ。
ほら、早く起きて。
よーこー。
なに。
手なら貸さないわよ。
ん、とねぇ。
だから、なに。
蓉子のお雑煮、おいしかった。
…。
イツ花には悪いけど。
イツ花のより、ずっと、ずっと、美味しかった。
…それ、イツ花には言わないでね。
どして?
イツ花に作り方を教わったから。
え、そなの?
そうよ。
…でも味、違ったけどなぁ。
…。
何と言うか、すっごく、美味しかった。
分かったわよ、もう。
また作る?
さぁ、どうかしらね。
作ってよ。
どうしようかしら。
ほら、ちび達にも食べさせてあげないと。
自分が食べたいだけでしょう、どうせ。
へへ、分かってるなら話は早い。
早くない。
大体、今回は貴女が正月だと言うのにぐーすかぐーすか寝てるから。
私も歳かなぁ。
…は?
いやぁ、疲れが抜けないと言うか?
…嘘ばっかり。
蓉子さんは元気だね?
うるさい。
腰、大丈夫?
うるさいから。
でもなぁ、結構
聖。
そだ。
本当は蓉子もうっかり寝坊しちゃった、とか?
…!
あはは。
お、初笑い。
寝坊はしてない。
なのに貴女が掴んで離さないから。
振り解けば良かったのに。
…眠ってるくせに力が強いのよ、貴女は。
でも、ま。
そーいうトコ、本当に好きだなぁ。
…。
好きだよ?
…うるさい。
ふふ。
…。
みんな、いつ帰ってくるのかな。
…本当は私達も行くつもりだったのよ。
そだっけね。
でも思いがけず、家の中で二人きりになれた。
ばか。
食べたのなら支度、して。
へ、なんの?
出掛ける支度。
どこに?
皆と合流するのよ。
えー。
えー、じゃない。
さ、早く。
いーじゃん、お留守番してれば。
初めが肝心なの。
元日ぐらいゆっくりしてよーよ。
元日、だからよ。
面倒だなぁ。
聖。
後で良いじゃん。
後、っていつ。
後は後。
少なくとも今じゃない。
…先代様が淋しがるわよ。
あはは、お姉さまはそんなタマじゃないよ。
……。
お姉さまは屹度、蓉子のお姉さまやでこのお姉さまと酒宴でも開いてるさ。
あと蓉子のおとーさんとかと。
…。
小唄歌って、琵琶弾いて、太鼓叩いて。
然う、あの時のようにさ。
……聖。
正月早々、乱痴気騒ぎってねー…。
…。
思えば、あの頃は騒がしかったっけねぇ。
…。
たった一年、されど一年。
一年でこれだけ家族が変わる家は無いなぁ、と。
……。
ま、そんなわけだから。
折角の二人きり、満喫しようよ。
だめ。
えぇ。
ねぇ、聖。
あー?
藤花さまは確かに然うかも知れない。
けれど、
蓉子。
貴女の
それ以上は良いよ。
けれど
良いって言ってる。
…。
ふぅ。
もう少し経ったら、ちょいと一杯でもやろうかしら。
蓉子、付き合ってよ。
…未だ、駄目なの?
…。
ねぇ、聖…。
……だめ、とかじゃない。
……。
顔も知らないし覚えてない。
それなのに、さ。
…。
冷たい手で、私の首を絞める。
壊れたような笑みを浮かべながら、ね。
…今は見なくなったのでしょう。
うん、蓉子のおかげ。
蓉子の温度が傍にあるとあの女は出てこない。
…。
だから言わないで。
ましてや…
…お優しい方だった、と。
…。
とてもとてもお優しい方だった…と。
と言うか弱かっただけだよ。
…然うかも知れない。
けど最初から“然うだった”わけでは
もう良いよ。
こんな話、もう止めよう。
……。
はぁ…。
…片付けてくるわね。
蓉子さぁ。
…なに。
よ、と。
…?
聖?
こっちにおいで。
…。
おいで、蓉子。
…片付けをしないと。
良いよ、今は。
……。
さぁ。
……何をするの。
腹熟し?
……。
ん、何を想像しちゃった?
行かない。
しないって。
今は。
…信用、出来ない。
えぇ、悲しいなぁ。
……。
よーこ、よーこ。
片付けが先。
て事は片付けが終われば良いんだね。
じゃ、待ってるから。
お墓参りへ行くの。
行かない。
聖、駄々を
じゃ、蓉子が私の言う事を聞いてくれたら行く、。
……。
と言うコトだから。
待ってる。
…手伝いなさいよ。
ん?
寧ろ、自分で洗え。
……んー。
私は行くから。
分かった、手伝う。
…。
手伝いなさいって先に言ったもんね。
早く終わるんなら、労は惜しみません。
…面倒くさがりのクセして。
よっし、そうと決まれば。
蓉子、行こう行こう。
て、持ちなさいよ。
おう、それは失礼。
貸して。
…。
でもって。
蓉子が行くのは井戸、ね?
……あぁ、もう。
−さちこなぐ。
つぅ…。
こんなになるまで放っておくなんて。
…。
さっさと治せば良いのに。
泉源氏ぐらい、もう使えるでしょう?
歩けなくなっても知らないわよ。
…。
ましてや、蓉子に黙っているなんて。
…ああ、だからなのかしらね。
…。
避けているのは。
…さけてなど、いませんわ。
で、私に捕まるなんて。
莫迦だわね。
…。
ちびなんだから、甘えても良いのよ。
ましてや蓉子は貴女の姉なんだから。
…あまえはひとを弱くさせるだけですわ。
あら、分かったような事を言うわね。
ほんとうのことですわ。
あ、然う。
ま、確かに人間には然う言う本能があるって聞いた事あるし。
ほんのう…?
貴女のお母様から聞いた話よ。
蓉子も勿論、聞いているでしょうね。
…。
自己防衛って言うんですって。
…。
男にもあるものなんでしょうけど、殊、女の方が強いそうよ。
…ありがとうございます。
もう、けっこうですわ。
どういたしまして。
で、やっぱり治さないつもり?
はい。
これしきのいたみで弱音をはいていたら、討伐になど、いけませんので。
それくらいの処置じゃ思い切り踏み込めないのではなくて?
いいえ、これでいいのです。
庇うと余計、駄目だと思うけど。
変なクセがついてしまって。
…。
この家に薙刀は貴女しか居ないから。
結局は一人でやらなければいけないのでしょうけど。
…お母さまがのこしてくださった教えがありますわ。
みたいね。
だから、わたしは…
蓉子、ね。
…。
良く、してたわよ。
…なにをですか?
貴女のお母様の相手。
…。
と言うか修練、かしら。
…なぜですか。
お姉さまには
ええ、居たわよ。
親父様が。
では、なぜ…。
お姉さま、だからじゃない?
……。
無手と薙刀だと、間合いが全然違うけど。
鬼相手にそんな事、言ってられないでしょう?
…。
他に聖のお姉さまともやっていたわ。
薙刀の間合いとはまた、違うらしいから。
…せいさまとなんて、やりたくありませんわ。
やれなんて言ってないわよ。
そもそもそんな格にもなっていないし。
あれは…藤花さまと違って少し厄介だから。
必ず他を巻き込む。
…。
…血の肉刺。
化膿したら、本当に歩けなくなるわよ。
…かんけいありませんわ。
本当に歩けなくなったら、ただのタダ飯食らいになるだけだけれど。
それでも構わなくて?
わたしはなりません!
これしきのことで、わたしは!
口ではなんとでも言えるわね。
ちなみにそういう輩が真っ先に死ぬのよ。
…!
破けて破けて、そうしてやっと硬くなるらしいけど。
そもそもなんで草履でも靴でも履かないのかしらね、貴女達は。
…。
ま、履いても出来る時は出来るけれど。
…江利子さま。
やり方、もう分かったでしょう?
…。
巻き方。
貴女のやり方じゃ、壊死、するわよ。
指が。
……。
不器用ね。
は、はじめてだから、うまくできなかっただけで!
次からはちゃんとできますわ!
然う。
じゃ、次からはちゃんとなさい。
いわれなくても…!
はいはい、喚かない。
頭に響いて、煩わしいから。
……。
さ、もう行きなさいな。
処置は終わったのだから。
…ありがとうございました。
いいえ、どういたしまして。
…。
蓉子。
…え。
終わったわよ。
あ、ああ然う。
有難う、江利子。
矢張り肉刺を潰していたわ。
皮もきれいに剥けていて、ね。
ああなると足を床に置いただけでも痛いと思うけど。
然う…。
相当、痛かったと思うわよ。
…分かるわ。
私も良く潰したから…。
私はあまり分からないわね。
残念ながら。
…それで
術での治療は拒まれた。
曰く、これしきの痛みで弱音は吐けないそうよ。
…。
気になるのなら、自分でやれば良かったでしょうに。
…いいえ。
あの子は私の前だと決して弱さを見せようとしないから。
で、私の前だと見せてくれると?
そこまでの人間かしら、私って。
…ごめんなさいね、江利子。
本当にね。
誰の妹なのかしら。
…ええ、本当ね。
ま、一ヶ月もすれば見事に硬くなっているんでしょうけど。
貴女の、足の裏のように。
然うね…屹度、なっていると思うわ。
一日千本。
…。
貴女のお姉さまの教え、相変わらず容赦が無いわね。
でも。
…?
無闇矢鱈に振り回してるだけで、本当に良いのかしらね。
幾ら教えどおりとは言え。
…駄目よ
弓も拳も、槍も、そして薙刀も。
闇雲にすれば良いってわけじゃない…。
私は弓の事しか、基本、分からないわよ。
相手をした事、ほとんど無いから。
…ええ、分かっているわ。
やぁ…!
…。
やぁ…!
…祥子。
…?
祥子。
…お姉さま。
続けて。
……はい。
…。
やぁ…!
…やっぱり。
はぁ…はぁ…。
祥子、中段の構えで止まってみて。
中段…?
ええ、然うよ。
…。
早く。
…はい。
……。
…お姉さまになにがわかるんですの。
分かるわ。
貴女のお母様の構えを近くで、何度も、見ていたから。
…。
祥子、貴女の中段は切っ先が真っ直ぐすぎる。
…まっすぐ?
…。
あ。
……。
お姉さま、なにを…。
貴女のは、こう。
……。
けれど貴女のお母様のは…こう。
…なにがちがうんですの。
良く見てみなさい。
…。
貴女はこう。
そして…。
……。
…お姉さまの切っ先は必ず、少し斜めになっていたわ。
体の中心を守るようにして。
…あ。
貴女の構えだと…打突の時に腕を上げ辛いと思う。
…。
でもお姉さまの構えなら……自然に上げる事が出来て、
……ッ!
振り下ろす事が出来るわ。
…ど、どうして。
お姉さまは良く言ってたわ。
中段こそ全ての基本だと。
お姉さまがどうして。
言ったでしょう?
私は近くで、何度も、見ていたからと。
ですが、それだけで…。
文面だけと分かり辛い事があると思う。
私達も薙刀では無いから、貴女のお母様のようには教えられない。
けれど。
…。
私が教わった事を、貴女に伝える事は出来るわ。
……。
祥子。
…。
疲れてくると人間はどうしても楽をしたがる。それも無意識に。
そんな状態で無闇に振り回していても、強くはなれない。
…。
でも然う言う時こそ、強くなれる要素があるの。
苦しくても、決してだれない事。
口で言うほど簡単な事では無いけれど、それでも然うしなければならないわ。
…。
そうやって日々、積み重ねていくの。
それが必ず貴女の力になるから。
…はい、お姉さま。
うん。
……。
それと…足の事だけど。
…!
痛いのなら痛いと言いなさい。
言う事は決して悪い事でも、弱さを見せる事でも無いわ。
黙っている事で…最悪の状況に繋がる事が戦では、多々、あるのだから。
…。
聡い貴女なら…分かるでしょう?
……それでも、わたしは。
…。
…いえ。
以後、気をつけますわ。
……うん。
最近好きなマンガと言えば、「あさひなぐ」。
江祥も良いと思いながら。(でも甘くならない)
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