−花筐。(俺屍版聖蓉)
蓉子。
…。
…。
…なに?
いや…。
…。
え、と…邪魔、だった?
…どうして?
…何となく。
……でも付いてきたのでしょう?
…うん。
別に邪魔だなんて思っていないわ。
…。
だからこちらにいらっしゃい?
…良い?
ええ。
……これ。
お花?
うん。
ありがとう。
屹度、喜ぶわ。
…然う、かな。
…。
…やっぱり邪魔だったね。
邪魔じゃないわ。
だって貴女も家族だもの。
…でも。
…ねぇ、聖。
ん…?
聖は何を話した?
話す?
然う…。
…あまり、話さなかったかな。
…。
今だから言えるけど。
一寸、近寄り難い方だった。
いつも、難しい顔をして…眉間に皺を寄せてたり、さ。
難しい顔…ね。
怒られるかな…。
…本人を前にしてるから?
……ええ、と。
ごめんなさい。
ふふ。
大丈夫よ、そんな事ぐらいで怒る方じゃないわ。
……蓉子はいっぱい話した?
……。
蓉子?
…話した、と思う。
思う?
…教えて頂いた事は覚えているのだけど。
…。
…。
…だから、今話しているの?
え…。
何か、話してたんでしょう?
…然う言う風に見えた?
うん。
…然う。
……。
…今、お姉さまがいらっしゃったら。
…。
……私は。
……。
…。
…。
…。
蓉
聖。
…うん?
ありがとう。
…寧ろ、邪魔してたよ?
然うかも知れない。
…。
けれど、聖が居てくれて嬉しかったから。
…そっか。
……さぁ、そろそろ帰らないと。
もう、良いの?
うん。
…分かった。
せ
蓉子。
…。
手、繋ごう。
…。
繋ごう。
……うん。
−空色ソーダ。(聖蓉)
あ。
え?
蓉子、一寸待ってて。
聖?
野暮用。
やぼ…?
なんて、ただのお買い物。
あ、でも外は暑いから中に入ろ。
何を買うの?
無駄遣いは駄目よ?
無駄じゃないよ。
なら、良いけれど。
蓉子、お母さん気質。
やかましい。
行くなら早く行きましょ。
そだね。
早く帰っていちゃいちゃしないといけないし。
だまれ。
はい、お待たせ。
それだけ?
うん。
食べたかったの?
蓉子と、ね?
帰れば
帰るまで待てなかった。
あっついし。
…でもそれ、一つよね?
蓉子さん、まさかご存じない?
うん?
これはねぇ…。
…ああ。
ぱかっと二つに割るヤツなんだな。
…。
知ってる、でしょ?
聖も知ってるのね。
へ?
聖はそういうの、食べないと思ってた。
偏見?
…かも知れない。
正直だね?
でも私は祥子のような生粋なお嬢様じゃないよ。
…ごめんなさい。
良いよ、蓉子なら。
…。
て、言われたら。
嬉しい?
…ばか。
しし。
…。
よっこ。
待って、お金を
あのさ、蓉子。
え?
これくらい、素直に奢られてください。
…。
きっちりしてるのは、良いけれど。
私だって良いトコ見せたいじゃん。
…50円のアイスで?
うん。
……。
あ、今、安いって思った?
思ってない。
ホントかなぁ。
本当よ。
だから、聖。
なんでしょ。
溶ける前に頂けるかしら。
お、そーだね。
んじゃ、はい。
ありがとう。
食べさせてあげよっか。
それは要らないから。
−プレリュード(音楽聖蓉)
…アルペジオ?
……だけのもある、し。
途中から対旋律が入るのも、ある。
リラックス、出来そうな曲ね?
…安眠効果もあるでよ。
眠たそう。
…ん、眠い。
こぉら。
…あいて。
レポート、終わって無いんでしょう?
……あともう少しー。
今日終わらせなきゃ、って言っていたのはだぁれ?
…誰かしらねぇ。
人の事、呼び出して。
……よーこさんのごはん、食べるとやる気もりもり。
で、お腹いっぱいになって、リラックスして?
良いねぇ…今の私、まさにしあわせって感じ。
奥さんが隣に居て。
誰が奥さんよ。
幸せなのは結構だけれど、レポート、やらないと単位まずいんじゃないの?
……それなりに、まずい。
必修でしょう?
卒業、出来なくなるわよ。
…いやいや、まだまだ大丈夫。
聖。
…一寸した休憩だから。
少し休まないと、まとまるものもまとまらない。
…もぅ。
……あーー、落ち着くー。
夕ご飯も作っておいたから。
後で食べて。
…ん?
帰るから。
私も暇じゃないの。
……帰るの?
ええ、帰るわよ。
……怒ってる?
怒ってたらわざわざごはんだけを作りになんて来ない。
…。
貴女の食生活、少し目を離しただけでも直ぐに乱れるんだもの。
一食抜いたりだとか、平気でして。
…だから早く、一緒に暮らそうよ。
……。
……まぁ、良いけど。
…じゃあ、頑張ってね。
…そっちも。
……寝たら、まずいんでしょう?
……うん。
……。
……。
……聖。
…ん。
……。
……帰るんじゃ、なかったの?
…良く、言えたものね。
……全く、だ。
……。
……。
…ずっと、リピート?
……落ち着くのよ。
…。
…。
……かも。
……え、なに?
弾ける、かも。
…え、本当?!
……。
本当に弾けそう?
…もう、いきなり。
だって。
…。
今度、聞かせて。
…でも、こんなに綺麗には無理よ。
対旋律を絡ませるのも…
良いよ。
……。
蓉子のピアノ、久々に聞きたい。
…なら、今度ね。
うん、約束。
じゃあ、私との約束も守って。
へ…。
たった今、約束。
今日中にレポート、ちゃんと終わらせる事。
……。
ね?
……へぇい。
−トカール、エル、プレリュード。(音楽聖蓉・上の続き)
…。
…なに、やっているの?
何をやっているように見える?
…てを、かざしてる?
そのまんまだね?
…。
…そんな顔すると。
ほっぺた、突〈ツツ〉きたくなるな?
…からかって。
可愛い蓉子が悪い。
…。
ふふ。
…もう、いい。
しらない。
あらら…。
……。
蓉子?
…しらないっていったら、しらないの。
いや、さ。
…。
同じ手なのになぁ、て。
…?
蓉子の手と、私の手。
手には変わり無いのになぁ、て。
…だから、なに。
私の手は出来ない。
…。
あー…蓉子の音、好きだなぁ。
……ピアノ?
私には出来ないから。
……わたしだってたいしたこと、ないわよ。
それは弾ける人だからの言葉。
弾けない人には言えない言葉だよ。
…さちこのほうが、
ね。
祥子と志摩子、どっちが上手だと思う?
…。
贔屓目から言ったら、やっぱり、祥子かな?
…。
私は蓉子の音が好き。
音楽ってそんなもんだと思う。
…わかったふうに。
人間の手ってすごいな…。
…。
貸して、蓉子。
……。
蓉子の手。
この手が音を奏でる、奏でた。
……わたしは
こんな、何も出来ない手でも好きって言ってもらえるのは嬉しい。
……。
連弾、だっけ?
…うん。
蓉子と出来たら、楽しいかなぁ。
…やってみればいいじゃない。
…。
おしえてあげる。
たいしたこと、ないけれど。
…今から?
あら、やってみないとわからないわ。
……。
わたしが…私が、アルペジオを弾くから。
…私が対旋律?
ええ、そうよ。
……和音で?
勿論。
…わぁお。
大丈夫、出来るわ。
…そっかなぁ。
ええ、屹度。
屹度は絶対じゃない、よ。
そうよ。
…。
私は聖の手が好きだから。
…ここでそう来るのか。
ずるい?
…うーん。
…聖。
ん…。
何も出来なくなんか、無い…。
……。
…私も聖のギターの音、好き。
…ろくすっぽ、出来ないけど。
言ったでしょう?
…ん?
それは弾ける人の言葉、て。
……言ったっけ?
すぐ、とぼけるんだから。
……。
…ん。
……蓉子。
…また?
……一番、上手になりたい。
……。
誰でもない、私だけが貴女を奏でられるよう…。
……せぃ。
−法学部と文学部。(聖蓉)
へくち。
…。
うー…。
…。
うう、なんか寒くない?
今日。
何しろ、12月の陽気らしいから。
…は?
12月。
つか、今10月なんだけど。
そうね。
12月って。
12月よ。
…秋は?
最近は本当に秋が短くなったわよね。
ね…は、は
今夜は少し厚着して寝た方が良いわね。
長袖とは言え、薄着なのよ。
でも、蓉子と、一緒だか……くしょ!
とりあえず上、もう一枚着たら?
……。
それから。
はい、ティッシュ。
…ありがと。
何。
言われて見れば蓉子さん、結構な装備ですね。
膝掛けまで用意してあるし。
寒いもの。
……。
止めて。
未だ何も言ってないよぅ。
予防よ。
ねぇ、蓉子さん。
だめ。
予防?
予防は大事でしょ。
…え、と。
あったかいの、飲まない?
ええ、頂くわ。
一緒に飲も?
と言うか一緒に居るけれど。
隣に座って。
座るだけ、ね。
…。
なに。
…何が良い?
ミルクティ。
…えぇ。
同じもので無くても良いでしょ。
折角だから。
じゃあ、ココア。
……。
カフェオレでも良いわよ。
…甘いの、ですか。
甘め、よ。
好きだよねぇ。
寒いから。
関係無いと思います。
暑いと甘ったるいの、あんまり欲しいと思わない。
…本当に“あんまり”、だよね。
いれてくれるの、くれないの。
…ただいま、カフェオレをいれさせて頂きます。
うん、ありがとう。
…。
…。
…。
…座ったら?
あ、うん。
…。
…面白い?
ええ。
…ふぅん。
…。
…。
…。
…だから、座ったら?
うん。
膝掛け、もう一枚あるわよ。
…。
一枚じゃ二人は無理だからね?
…毛布、持ってくるってのは?
…。
炬燵、もう出さないとかなぁ。
未だ早いと思っていたけれど。
私も。
…毛布、持ってくるの?
うん。
…そう。
零さないようにしてね。
…ほんと?
何よ、本当って。
んーん。
あ、カフェオレね。
あつあつだから気をつけて。
ありがとう。
でもってこっちは私の。
…カフェオレ?
甘くない、ね。
そ。
間違っても良いよ。
もう、間違わない。
へへ。
んじゃ、取ってくるね。
はいはい、行ってらっしゃい。
…。
…。
…よーこ。
…。
あったかい?
…あったかい。
そっか、良かった。
…。
…よーこ。
…。
もっと、くっついても良い?
…邪魔しない程度なら。
ダコー!
…だこ?
仏語。
…ああ。
…。
…。
…よーこ。
…なに。
六法。
…ちゃんと返してね。
じゃなくて。
六法って何?
…何、て?
六法って、六つの法ってコトじゃん?
…まぁ、然うね。
その六つって何?
…。
ん?
…いえ。
そっか、そんなの習わないものね。
と、思うよ。
記憶に無いから。
憲法。
けんぽう…ああ、憲法。
民法。
うん。
商法。
へぇ。
刑法。
ふむ。
ここまでは浮かぶと思う。
商法ってあまり聞かないけど。
悪徳商法。
…。
それは手法の事だから一緒にしないで。
はーい。
あとは何だと思う?
知ってたら聞いてないよ。
本当に?
うん、本当に。
…まぁ、良いわ。
あれ、引っ掛かる言い方?
民事訴訟法。
ほぉ。
あとは?
ん?
民事と来たら?
…刑事、かな?
然う、刑事訴訟法。
へへ、やった。
はいはい、良く出来ました。
で、六法?
六つの法典、或いはそれらに対応した法分野と言う意味では。
ちなみに今の民事訴訟法は平成8年に制定されたものを言うのよ。
あら、意外と新しいんだね。
元々は明治23年に制定されたの。
おおー昔だねぇ。
でも何で?
興味があるのなら、自分で調べてみたら?
うーん、それは良いや。
とりあえずは分かった?
うん、分かった。
で。
で?
よーこは何が好きなの?
…。
何が好き?
…好き、ね。
やっぱり刑法?
どうして?
んー何となく。
残念。
民法の方が好きよ。
あれれ。
民法は“普通”の生活に密接しているわ。
だから。
民法、かぁ。
でも欠かせないのは最高法規である憲法だけれど。
どの法律家も必ず、憲法は学ぶわ。
どんな事を学ぶもんなの?
とりあえず暗記とか?
なら、誰でも出来るわ。
それこそ、小学生でも。
私でも?
勿論。
やる気さえあれば、だけれど。
…あんまり無いなぁ。
良いわよ、無くても。
六法開けば載ってるもの。
まぁ、言葉だけでも知っておいた方が良いものもあるけれど。
例えば?
法の下の平等。
おー。
戦争放棄。
たまに論争が巻き上がるよね。
選挙とか。
たまにはじゃないわよ。
規定された時からあったものだもの。
あとは?
生存権。
…生きる権利?
まぁ、然うね。
あとは表現の自由。
確かに。
うっかり捕まるのはゴメンだ。
基本的人権については知らないよりは知っておいた方が良いと思うわ。
余談だけれど権利が守られる為に義務があり、義務を果たすからこそ権利を主張出来る。
最たるところは、納税、とかね。
これも憲法で規定されてるわよ。
…おお。
ところで、聖。
ん?
日本で同性婚が認められていない理由の一つしてあげられているもの、知ってる?
…宗教、じゃないよね。
も、あるかも知れないけれど。
憲法に規定されているからよ。
ほぅ、どれどれ?
…24条1項。
「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、
相互の協力により、維持されなければならない」
…そんなのまで規定されてんの?
だから、憲法改正をしないと同性婚は出来ない、と。
…国民投票、だっけ?
国会の発議、国民の過半数での承認、そして天皇の公布。
これも憲法に規定されているわ。
…。
とは言え、この条文はあくまでも一般の婚姻について述べたものであって、
同性婚を否定しているわけでもないと言う説もあるから一概には言えないのだけれどね。
…ふーん。
分かった?
へ?
憲法の解釈は人それぞれなのよ。
戦争の放棄なんて顕著でしょう?
…そろぞれ、ね。
もっと言えば憲法改正についても「限界」についての説があるわ。
…何となく、それは分かる。
どう解釈するのか、それを学ぶのも憲法の授業だと思っている。
ふーーん。
ふふ。
話、大分逸れたわね?
…あー。
でもどうしてそんな事を聞くの?
蓉子がどんな勉強してるのか知りたいと思ったから。
…今更?
まぁ、ね。
…まぁ、良いけど。
高校生までは同じ事してたのになぁ、て。
…。
今じゃもう、蓉子のノートを借りてもさっぱりだ。
さっぱり、では無いと思うけど。
貴女はやる気さえだせば出来る人だもの。
例えば、大学受験とか。
はは、ありがと。
…でもまぁ、そうね。
今となっては全然違うことを学んでいるわよね、お互い。
うん。
聖はどうして文学部に?
他に向いてそうな学部が無かったから。
ま、もう一寸学生してみようと思っただけだからねぇ。
誰かさんのお孫さんの影響で。
…被服科は?
あはは、勘弁。
まぁ、貴女がミシンと向き合ってるのはあまり想像出来ないわね。
でしょ?
でも、それも良いと思うけど。
冗談。
貴女、わりと手先が器用なんだもの。
そうかなぁ。
ええ。
けど、やっぱ無理。
続かない。
…飽きやすいのよね。
あーあ。
もう蓉子のノート、借りられないんだなぁ。
良いじゃない。
他の誰かさんに借りてるんでしょうから。
そういや、蓉子のノートに似てるなぁ。
私のと?
うん。
そうかしら。
世話焼きっぽいところとかさ?
…あのねぇ。
確かに私は世話焼きだけれど、貴女にとってそれだけの人間なの?
ううん、違うね。
それに加東さんにも失礼よ。
へいへい、すみませ
…くしゅ。
あり?
…今日は本当に冷えるわね。
それはいけない。
あっためてあげないと。
これ以上、どうするつもり?
とりあえず本を読むのは止めない?
もう、読んでないに等しいけど?
頭に全然入っていかない。
あらら。
だから今夜は先に寝てて。
えー…。
誰かさんのお喋りに付き合わなければ読み終わったのだけど?
…。
だから言ったでしょう?
…因果応報、だっけ?
ええ。
…。
拗ねても駄目よ。
…コーヒー、もっかい淹れてくる。
ありがとう。
……。
…。
……ちぇ。
…これから。
…。
一時間くらい、放っておいてくれれば。
…一時間くらい?
そう、一時間くらい。
…。
…。
…コーヒー飲んだら。
一寸、散歩でもしてこようかな…。
…そう。
ちゃんと暖かくして行くのよ。
分かりました、蓉子お母さま。
怒るわよ。
…今度はココアが良い?
そうね…。
……。
…聖と同じので良いわ。
う…
……。
……くしゅ!
あー…。
…聖。
……なにー?
寒いわね。
…そだね。
……。
……。
聖。
なに。
…風邪、ひかないでね。
若しもひいたりしたら…
…。
…。
…じゃあ今夜は“あったかくして”寝ないと。
…。
蓉子も気をつけて。
…。
…私はそれでも構わないけど。
ばか。
−ハロウィン2010。(聖蓉)
…ハロウィンってさぁ。
…。
いつからこんなに定着したんかねぇ。
…。
気付いたら、お菓子でも何でもパンプキンの絵が溢れててさ?
…。
そもそもハロウィンって何をするんだろね?
知ってる?
…元々は収穫感謝祭よ。
ん、なぁに?
…。
でもまぁ、行事好きな蓉子さんには良いのかにゃ…?
…聖。
ん?
歯、立てないで。
…痕は付けないよ?
付けなくても、止めて。
なんで?
なんでもよ。
食べないよ?
…。
よーこ。
…。
よーこぉ。
…ああもう、止めて。
んふふ〜。
…忌々しいわ。
蓉子ちゃんはとっても不機嫌だね?
誰のせいよ。
でもちゃんと選ばせてあげたよ?
どこが。
ちゃんと聞いたもん…。
だ、から…!
…ん?
噛まないでって言ったでしょうが。
…どして?
何度するつもりよ。
何度でも?
ばか。
…へへ。
大体。
飴、あげたでしょ。
うん。
だから蓉子にもお裾分けしてあげたの。
要らないから。
でも貰ってくれた。
それは貴女が強引に…んッ
…えへへ。
……。
よーこ、よーこ。
…大体、ねぇ。
うん。
結局、便乗してるじゃないの。
そりゃあもう、行事好きの蓉子さんの為ですから。
人を口実に使わないで。
…口実、かなぁ。
口実でしょ。
…。
全く、毎年毎年…。
…ねぇ、蓉子。
何よ。
噛んで、良い?
…。
いい?
や、め、て。
…じゃあ、こっち向いて。
いや。
じゃ、噛んじゃう。
ああもう、止めてってば。
…。
聖。
…ふふ。
……。
…そだ。
…何よ。
飴、まだあったよね?
……もう無いわね。
もーぅ、蓉子ちゃんってばぁ。
気色悪い声出さないで。
飴、舐めよ?
要らない。
さっきのは苺味だった。
今度は何味が良い?
どの味も結構よ。
そだ、オレンジにしよう。
オレンジもグレープも要らな
じゃーん。
………。
吃驚した?吃驚した?
…呆れてるのよ。
だって折角蓉子から貰ったんだし。
だからって持ってくる?
普通!
へへ、褒められてる。
褒めてない。
ああ、もう。
本当はね、ポケットから落ちたみたいなの。
足の辺りでチクチクしてね?
…。
ね、舐めよ?
…舐めるのなら、一人で舐めなさい。
一人じゃ甘すぎるもん。
…。
だからね?
いやよ。
さっき、甘かったでしょう?
…。
甘かったでしょう?
…飴だけのせいじゃ無いわよ。
…。
…。
…その甘さは大好きなの。
……。
ねぇ…こっち、向いて。
…。
…蓉子。
……。
蓉子…。
……甘い、の。
……。
好きじゃないクセ…に…。
−花形見。
…。
…。
…志摩子さん。
うん?
…。
乃梨子。
…。
どうしたの?
…空、綺麗だね。
ああ。
然うね。
…。
ねぇ、乃梨子。
…なに?
貴女は何が欲しい?
え…?
欲しいもの。
何か一つだけと、言われたら。
…それ、無人島に持っていけるもの一つだけ、に似てるね。
無人島?
無人島に。
何かを一つだけ持っていけるとしたら、何を持っていく?
それは物?
さぁ、どうだろ。
その時は気にしなかったから。
然う。
でも人でも良いんじゃないかな。
あの人は私のものって言うじゃない?
ふふ、然うね。
…志摩子さんはさ。
何を持って行きたい?
然うね、私は…。
…。
…。
…志摩子さん?
乃梨子の答えの方が先。
私の?
欲しいもの。
…そうだなぁ。
貴女の事だから、
仏像じゃないよ。
…。
手に入ってしまったらそれは…何か、違うものになっちゃうような気がする。
ほら、仏像は触れられない場所から見るから良いんだよ。
…然う。
…。
…乃梨子。
私は、空が欲しい。
…空?
うん。
…どうして?
手に入れる事が出来ないものの象徴のような気がするから。
そう、人には決して。
…。
幾ら伸ばしても、手に入らないものってあるじゃない?
世の中、さ。
…。
な、なんて。
…本当に然うね。
…。
届かないわ…あの、雲にさえ。
……志摩子さん。
私はね。
…うん。
何も持って行かないわ。
…え?
無人島。
……。
何も持って行かないの。
…なんで?
私は欲が深いから。
志摩子さんが?
ええ、然うよ。
…だったら、
持って、行けないのよ。
……。
…。
……そっか。
…。
…ねぇ、志摩子さん。
うん…?
夏、終わりだね。
…ええ。
今年も暑かったね。
乃梨子は日に焼けたわね。
え、本当?
ええ。
えー…。
山百合会は今でも健在なのね。
人が替わっても、ね。
ふふ。
今年でお仕舞い、かぁ。
早かったなぁ。
…。
今だから言うけどさ。
なに?
志摩子さんと逢わなければ、私は山百合会に近付きもしなかったと思うよ。
…逢わなければ良かった?
ううん、逢えて良かった。
心から、思ってる。
…。
楽しかった。
すっごく。
…うん。
瞳子と、菜々ちゃんと。
それから。
…。
そうやって名前も知らない子に繋がっていくんだね。
然うよ。
あーあ。
ほんと、あっと言う間だった。
志摩子さんと過ごした時間も、本当に。
…。
…。
…好きよ。
…。
どんな乃梨子も。
…ありがとう、志摩子さん。
私も好きだよ。
…。
どんな志摩子さんも。
だって志摩子さんは…。
…。
…私の、お姉さまだから。
…。
…。
……ありがとう、乃梨子。
…。
…。
…そうだ。
うん?
夏休みが終わる前に、志摩子さんちに行ってもいい?
ええ、良いわよ。
けれど大丈夫?
うん、何が?
山百合会、もっと忙しくなるでしょう?
泊まりじゃ、だめ?
泊まり?
終わってから行く、みたいな感じで。
駄目かな?
ああ。
いい?
ええ。
父も母も喜ぶわ。
やった。
じゃあ、いつだったらいい?
然うね…。
…。
今度の……。
ラストは聖蓉以外で、が最近のルール。
つか白薔薇さんちの真ん中(聖を一番上として)を書くと、どこか…。
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