−レッツ、季節はずれ(聖蓉)





   ……さむ。


   …うーん。


   …聖、起きて。
   貴女、今日は一時限からだったでしょう…?


   ……。


   聖。


   ……う。


   聖ってば。


   ……さむいからおきたくない。


   起こせと言ったのは貴女でしょう。


   ……でも、さむい。


   あのねぇ。


   ……さむいからはいって。


   ……。


   ……ううう。


   …全く。
   私、ご飯作るから。
   出来るまでに起きなさいよ。


   ……よーこもねてればいい。


   だめ。
   私は二限からなの。


   ……たまには


   だめ。


   ……うう、さむい。


   …たく。
   でも今朝も本当に冷えるわね。
   もう、四月も半ば過ぎだと言うのに。


   ……。


   …そういえば、雨。
   未だ降っているのかしら…。


   …。


   予報では朝まで残ると言っていたけれど…。


   …カーテンあけたらさむいー。


   …目が覚めてるのなら、起きなさいよ。


   ……むり、さむい。


   冬生まれのくせに。


   …あんまりかんけいないとおもうきょうこのごろ。


   自分で言ったくせに。


   ……おもいなおした、きょうこのごろ。


   ………カーテン、少し開けるわよ。


   えー…。


   雨、降ってるかどうか確認するだけよ。


   …むー。


   …………未だ、降って


   ……。


   聖!


   …わ、なに?!


   外、白いわよ。


   ………まぁ、さむいし。


   良く考えて。
   今は四月、しかも半ば過ぎなのよ?


   ……でも、寒いし。


   いつだったか、4月1日に降った時があったけど…やっぱりなんか変な感じよね。
   桜、咲いているのに。


   ……よーこ、さむいよー。


   いい加減、起きなさいよ。


   むり、さむい、さむすぎる。


   ……


   ……だから!


   え、なに…っ?


   よーこ、よーこさん!


   な、何よ。
   と言うか起きたのなら早く服を着ないと


   ひとはだが恋しい、のです!


   は…ちょ…ッ!


   よーこ、よーこ…。


   あ、こら、離しなさい…!


   あー…これだよ、これ…。


   て、どこ触ってるの…!


   …よーこのはだはさいこーです。


   …!


   はやくおふとんにもどってもどって……でもって、ふくもぬいで。


   ……。


   ……んー。


   …大学、どうするの。


   …雪のため、自主きゅーこー。


   ……。


   ……んふふ。


   …。


   …!
   い、た…ッ!


   さっさと起きなさい。


   …おにー。


   もっと、抓られたい?
   それとも“ご飯”抜きが良いかしら?


   …うー。








  −すべてがなくなくなってしまいそうで。(聖蓉)





   …蓉子。


   …。


   蓉子。


   ……。


   あの、生姜湯作ったけど…飲まない?


   …今はいらない。


   あったまるよ?


   …いらない。


   じゃあ、ごはんは…。


   いらない。


   …ですよね。


   …ごめんなさい。
   きょうだけは、ほうっておいて。


   ……。


   ……。


   ……蓉子。


   …。


   …ごめん。


   ……。


   ………うーーーー。


   …?


   うーー。


   …せい?


   …。


   せい…。


   ……よーこ。


   …。


   せめて、そばにいてもいい…?


   …。


   ほうっておいてほしいのは分かってる…けど。


   ……。


   …静かなのが、怖い。


   ……。


   何も音がしないのが…。


   ……どっちがよわっているのか、


   …。


   わからなくなるわね…。


   …ごめん、…ごめんなさい。


   ……。


   ……。


   ……。


   ……いやにならないで。


   ……。


   よーこ…。


   ……きて。


   ……。


   いっしょに、ねむりましょう…?


   ……いいの?


   あなたであたためて…わたしを。


   ……。


   せい。


   ……うん。


   ……。








  −鬼として、人として。(俺屍版聖蓉)





   …聖。


   …。


   聖。


   …え、なに。


   替わるわ。


   …。


   貴女も少し眠って?


   …うん。


   ……聖?


   いや…ね。


   …眠れない?


   …。


   …然う。


   慣れてる筈なんだけどな…。


   …私達だって人間だもの。


   ……呪われてても?


   …然うよ。


   ……。


   眠らなくても良い。
   目を瞑って横になっているだけでも違うから。


   ……。


   聖?


   …蓉子。


   うん?


   寄りかかっても良い?


   ……。


   …なんて。
   討伐中だもんね…。


   …横になった方が楽よ。


   そうかな…。


   …あと半刻で出発するから。


   …うん、分かった。


   …。


   …。


   …眠るのが、怖い?


   ……。


   …。


   …眠ると言ってもさ。


   …うん。


   頭のどっかは起きてるんだよね…。


   …。


   それが当たり前のように染み付いてる…。


   …然うね。


   …。


   聖。


   ……ごめん、やっぱ触れてたい。


   ……。


   …蓉子、お願い。


   ……。


   …。


   ……何かあったら容赦無く動くから。


   ……うん。


   …躰、冷やさないように。


   ……蓉子があったかいから。


   …だめよ。
   ちゃんと掛けなさい。


   ……はい。


   …じゃあ、また後で。


   うん、また後で…。








  −You are my key.(聖蓉)





   …あれ。


   聖…?


   え、と…。


   どうしたの?


   あ、いや…。


   …?


   あれ…あれ、どこやったのかな…。


   …何か無いの?


   あ、いや…あ、あった。


   ……。


   良かった…。


   …鍵?


   ……うん。


   …入れておくところ、ちゃんと決めておかないと。


   入れておいたつもりだったんだけど…。


   …私、合鍵持ってないんだから。
   若しも無くしてしまったら入れな


   蓉子。


   え…?


   あ、合鍵…。


   ……。


   持ってよ。


   ……でも


   持ってて欲しい。


   ……。


   蓉子に持ってて欲しい。


   …貴女が無くしても大丈夫なように?


   や、ほら、蓉子が持っててくれたら安心じゃない…?


   …私だっていつもいつも駆けつけられるとは限らないわ。


   あ、う…。


   ……だから。


   …あ。


   無くしては、だめよ?


   ……はい。


   ……さ、早く中に入りましょう?


   う、うん…。
   ……ねぇ。


   …うん?


   やっぱり、持ってて欲しい…な。


   ……。


   その、私が無くした時の為じゃなくて…。


   ……じゃなくて?


   …ただ、蓉子に持ってて欲しい。


   …。


   持ってて欲しいんだ。
   蓉子に。


   ……うん。


   …!
   じゃ、じゃあ早速…!


   あ…。


   早く上がって上がって。
   ね?


   …もう、子供みたいな人ね。








  −マイハニー。(聖蓉)





   …。


   …。


   …。


   …ねぇ、聖。


   …。


   聖ってば。


   …え、なに?


   …私、何か変かしら?


   え、なんで?


   だって…。


   や、や、全然、変じゃないよ。


   ……そのわりにはさっきからずっとジロジロ見てない?


   え、そう…かな。


   …私の思い違いかも知れないけど。
   でも…。


   ……まぁ、見てるかも。


   ……何?


   いや、何って言われても…。


   …気になるじゃない。


   べ、別に気にしなくても良いよ。


   …。


   あ、いや…。


   ……ご飯、出来るまであともう少しだから。


   あ、ああ、うん。
   すごく、楽しみです。


   …本でも読んでいたら?


   別に今はそんな気分じゃないし…。


   …大学の課題は?


   …今は特に。


   ……ともかく、あまり見てないで。


   ……気が散る?


   ……そういうわけじゃないけど。


   ……。


   でも出来ればあまり見ないでいてくれた方が…。


   ……蓉子。


   え……あ。


   蓉子…。


   せ、聖…。


   ……。


   な、何…。


   …あ、いや。


   び、吃驚するじゃないの…。
   それに危ないわ…。


   ……ごめん。


   と、とりあえず、離れて。


   ……。


   聖。


   ……ねぇ、蓉子。


   な、何…。


   ……。


   聖、はなれ


   ……いい。


   ………。


   蓉子のエプロン姿…。


   な…ッ


   …見惚れる。


   な、何を…っ


   ……うなじとか、やばい。


   …!
   聖…!!!


   …わっ。


   ば、莫迦な事ばかり言ってると怒るわよ…!!


   え、え…。


   も、もう…!


   よ、蓉子…?


   ほ、ほら、ご飯を作るのに邪魔だから…!


   な、なんで怒るの…?


   お、怒ってないわよ…!


   け、けど…。


   怒ってないから…ッ


   ……。


   と、兎に角。
   大人しく、待ってて。


   ………うん。


   ……ああ、もう。
   聖が変な事を言うから…。


   …蓉子。


   え…。


   ……だって、好きなんだもの。


   ……。


   ……。


   …………ああ、もう。








  −女神(音楽聖蓉)





   …僕はとりとめのないことになりそうだ。


   え、何か言った?


   いや?


   然う?


   気のせいじゃない?


   …然うかしら。


   然うだよ。


   …ふぅん。
   まぁ、良いけど。


   うん、良い事にしておいて。


   …やっぱり何か言ったんじゃない。


   言ったかな。


   …言いたくない事?


   と言うか、ただの独り言。


   …。


   ん、何か言いたげな眼差し?


   …私には聞かれたくない事?


   いや、然うでもないけど。


   けど、言わないのね?


   言ったら…どんな顔されるかな、て。


   …どんな顔って?


   セクハラ?


   ……なの?


   ううん、違うよ。


   …変な問答になってきてない?


   私は楽しい。


   ……変なの。


   かな、やっぱり。


   …つまらない?


   それも、ある。


   …お茶でも飲む?


   蓉子の淹れるお茶はいつも、美味しい。


   …じゃ、淹れてくるわね。


   ありがとう。


   ……何か調子が狂うわね。


   …。


   冷たいのと、あったかいの、どちらが…


   僕がたとえるのなら。


   うん…?


   あなたは、女神。


   ………は?


   て、歌があるんだ。
   今度、一緒に聴こうね。


   え、ああ、うん…。


   私には珍しく日本語です。


   然うね。
   名前は何て?


   それは今度のお楽しみ。


   持ってきていないの?


   私の部屋で、私が蓉子を抱っこして、聴く為に。


   ……。


   呆れた顔。


   …貴女のその独占欲、嫌いじゃないから良いけど。
   でも程ほどにしてよね?


   分かんない。


   ……。


   そんな顔も好きー。


   ……はいはい。


   愛してる。


   …今日は暑いから、かしら。


   そうそう。
   もう、夏みたいだねぇ。


   然うね。
   冷房、苦手なのよね…。


   …。


   聖も気をつけてね。
   貴女、たまに付けっぱなしで寝る事が…


   愛しているよ。


   …もう、分かったから。


   狂うほどに。


   ………。


   一種の花だね、恋は。


   ……ねぇ、聖。


   んー?


   頭、暑さでやられた?


   かもねー。


   …冷たい方が良さそうね。


   綺麗な日本語は好きなんだ。


   …歌の話?


   ね、蓉子。
   知ってる?


   何を、かしら?


   私、言語では日本語が一番好きなんだ。


   然う、私も好きよ。


   やった、お揃い。


   ええ、お揃いね。


   だから蓉子が好き。


   ……氷も入れた方が良いかしら。








  −いりませんか。(音楽聖蓉)





   …私以外、触れぬ様に。


   …。


   …私以外、見ない様に。


   ……。


   …私以外、名を呼ばぬ様に。


   …。


   …私以外、


   聖。


   うん…?


   私は貴女のもの?


   …。


   私は貴女以外の声を、聞いてはいけない?


   …。


   そんなの、無理だわ。


   …うん、知ってるよ。


   でも、


   …言わずにはいられないのよ。


   ……。


   私は独占欲が強いの。
   蓉子は知っているでしょう?


   …ええ、知ってるわ。


   だったら、今だけでも許して。
   形だけでも良い。


   …形だけでも?


   だって、無理な話なんでしょう?


   …だから、今だけでも?


   然うよ。


   ……。


   せめて、今だけ。


   …刹那的だわ。


   だから、切ない、のよ。


   …なかなか、詩人ね?


   日本語、好きですから。


   …ええ、私も好き。


   お揃い。


   然う、お揃い。


   …ねぇ、蓉子。


   …。


   私はいつか、貴女を壊してしまうかも知れないわ。


   …然う。


   嫌じゃない?


   …さぁ、どうかしら。
   そこまで行った事が無いから、分からないわ。


   …イく事はあっても?


   …然うよ。


   どこか、醒めてる?


   醒めてるわけじゃ、無いわ。


   …。


   …貴女の、この指は、私の脆いところを刺し、柔らかい場所を抉り、弱い部分を晒す。
   私のそんな姿、貴女以外誰が知っていると思う?


   ……。


   そして、貴女の方が知ってる。
   私よりも。


   …然うかしら。
   分からないものが多い気がするわ。


   それは私も同じ。
   私は聖の事、分かっているようで分かってないし、知っているようで知らない。


   …蓉子は私の全てを見透かしているような気がする。


   …然うね、誰よりも貴女の姿は見てきたつもりよ。
   だって。


   …だって?


   私は貴女を愛していたから。


   …。


   だから貴女の愛が、欲しかった。
   誰よりも、誰よりも。


   ……蓉子。


   …今だけは。


   …。


   今だけならば。
   私は貴女のもの、貴女だけのもの。


   …私は蓉子のものよ。
   いつだって。


   …。


   …いりませんか。


   …聖。


   私だけの、愛。
   いりませんか。


   ……。


   壊すほどに。
   壊してしまうほどに。
   あげるわ。
   貴女に。


   …ん。


   ……だから。


   …。


   私だけの愛、くれませんか。


   …。


   私だけに。
   …私だけを愛して。


   …のよう、ね。


   …。


   歌のよう、だわ…。


   …。


   然うだわ…、歌は告白する為にあったのね…。


   …私は蓉子の為に、歌っているのね。


   …自分の為かも知れないわ。


   …。


   ねぇ、聖…。


   …なに。


   いりませんか…?


   ……。


   私だけの愛、いりませんか…?


   …くれませんか。


   …。


   私だけに、くれませんか。


   …どうぞ、…どうか。


   …。


   ん、あ…。


   …貴女の憎しみすらも。


   ……せ、ぃ。


   …。


   ……わたしの、もの。


   …千切れるほどに。


   いまだけは…。








  −ハルモニア〜見果てぬ夢。(「和」後日談)





   蓉子、そこ気をつけて。


   え…あ。


   …と。


   せ、聖…。


   雨が降って地面が、特に泥濘んでいたから、ね?


   あ、ありがとう。


   どういたしまして。
   大丈夫、かな?


   うん、大丈夫。


   じゃ、離すよ?


   ええ。


   よし。
   んじゃ行こうか…


   …。


   …て。
   蓉子。


   …え、何?


   下ばかり見てたら前がお留守になっちゃうって。


   …あ。


   お約束。
   ふふ、蓉子ってば可愛いなぁ。


   ご、ごめんなさい、聖。


   大丈夫、何て事無い。


   でも


   ほんの軽くぶつかっただけ、だから。
   其れに止まっていたのはわざとだし?


   …。


   ねぇ、蓉子。
   無理して、早く歩こうとしなくても良いんだよ。


   …無理してるわけじゃないわ。


   と言うか、そっか。
   私が駄目なんだ。


   …?


   至らなくて、ごめん?


   …何を言っているの?


   クセの話。
   つい、自分の歩調になっちゃってた。


   ……。


   ね、蓉子。


   …ごめんなさい。


   ん?


   私、もたもたしっぱなしで…。


   別に良いじゃない。
   慣れてないんだから。


   ……。


   て、あれ?


   ……。


   蓉子?


   ……ごめんなさい。


   あー…。


   …。


   蓉子、さ。


   …。


   山道は、歩き辛いもんなんだよ。
   仮令、踏み固められていたとしても。
   町の其れとは違うんだ。


   …。


   慣れていても、油断なんか絶対に出来ない。
   天候なんかで直ぐに変わるから。


   …。


   蓉子、顔上げて?


   ……聖。


   私達は先を急いでいるわけじゃない。
   でもって私は蓉子と色んなものが見たい、蓉子に見せたい。
   だから寧ろ、ゆっくり行きたいと思って…


   …?
   聖…?


   蓉子、顔を上げて。
   今直ぐに。


   え、え…。


   急がないって言ったけど、ほんの一寸だけ早歩き。
   ごめん?


   え、せ、聖…?


   あっちの方が良く見えると思うから。


   な、なにが…。


   其れは見てからのお楽しみ、さ。


   あ、ま、待って…。


   大丈夫、置いていく事は絶対にしない。


   う、うん…。


   さぁ、蓉子。
   手を。


   …でも。


   転びそうになったら。
   支えてあげる。


   …。


   だから蓉子は、私が自分の歩調になりそうになったら止めて。
   ちなみにこれは重要な役目だよ?


   …けれど。


   て、話しているうちにも薄くなって消えちゃうかも。
   蓉子、行こう。


   あ……。








   うん、此処なら。


   …はぁ。


   此処で少し、休もう。


   え、ええ…。


   此処は日当たりが良いから、地面が乾いてる。
   座っても着物には染みない。


   …。


   でも、其の前に。
   蓉子。


   な、なに…。


   あっち、見てごらん。


   あっち…。


   然う、私が指を指している方向を真っ直ぐに。


   ………あ。


   見えた?


   見えた、見えたわ、聖。


   良かった。


   綺麗…。


   でしょ?
   蓉子に見せたかったものの一つなんだ。


   …。


   ま、村に居ても見られるっちゃ見られるけど。
   場所が変われば違うもんでしょや?
   見え方とか。


   ええ…ええ。


   …ふふ。


   …。


   …蓉子。


   ……聖?


   良いよね?


   ……うん。


   ずっと、思ってた。
   蓉子はどんな顔をするだろうって。


   ……。


   何より、蓉子を抱いて見たかった。
   やっと、叶った。


   …聖。


   綺麗だ。
   山々の間に掛かる虹も……蓉子も。


   …もう、莫迦ね。


   本気で言ってるんだけどな。


   だから、ばかなのよ。


   ああ、そっか、なるほど。
   でもま、ばかでも良いや。


   ……。


   …だって私は蓉子が好きだから。


   …ばか。








  −お気に入りなほど。(聖蓉)





   聖、足。


   うへ?


   …靴下。


   んー……お?


   切れてる。
   指のところ。


   みたいだねぇ。


   履く時、気が付かなかったの?


   んー…。


   …気が付かなかったのね。


   へへ。


   …まぁ、良いけど。
   気を付けなさいよ。


   何に?


   …まさかとは思うけど。
   加東さんの家にお邪魔する時も


   言われたこと、無いなぁ。


   …それだけ?


   ?
   何が?


   切れてる靴下。


   うん。
   と言うかコレ、お気に入りの靴下だったのに。


   だから切れちゃったのね。
   履きすぎで。


   あーあ。


   仕方ないわね。


   蓉子。


   縫って欲しいなんて、言わないわよね?


   欲しい、って言ったら?


   自分で縫いなさい。
   あと物を大事にするのは良いと思うけど。


   未だ履けるから自分ちで履く事にする。


   …まぁ、良いけど。


   ……。


   …て、何してるの。


   よーこ。


   ……。


   おとーさんゆびー。
   こんにちはー。


   止めなさい。


   あいた。


   子供じゃないんだから。


   だって、なんか良い具合だったからー。


   やらなくて良いから。


   …お辞儀も出来るのに。


   良いから。


   ちぇ。


   私は良いけれど。
   他の人の前で、やらないでよ。


   …やるな、って言ったじゃん。


   て、拗ねるところ?


   別に拗ねてないもん。


   …ほら、貴女が子供じみたことするから。
   穴、広がってしまったんじゃない?


   かも。


   未だ履くのでしょう?


   …やっぱ止めようかなー。


   貴女の靴下だから、構わないけど。


   …。


   何。


   …お気に入りでした。


   うん。


   …あーあ。


   本当に気に入っていたのね?


   ……うん。


   …代わりにはならないと思うけど。


   …。


   新しいの、買いに行く?


   …替え、未だあるし。


   そう。


   ……ねぇ、蓉子。


   うん?


   気に入ってたの。


   …。


   …。


   ねぇ、聖。


   …んー。


   また、お気に入りの靴下に巡り会えたら良いわね。


   ……。


   …何よ、その顔。


   いや、蓉子さんのそういうところってアレだよね。


   …。


   乙女的?


   ……莫迦にしてる?


   寧ろ、褒めてる。


   ……。


   靴下に巡り会うって、あまり言わないから。


   …やっぱり莫迦にしてる。


   してない。


   ……もう、いい。


   蓉子。


   …。


   蓉子。


   …何よ、聞こえてるわよ。


   …。


   だから、何。


   えへへ。


   ……気色悪い。








  −遠くへ。(放浪記)





   …。


   …水。


   ん、グラシアス。


   なにを見てたの?


   地平線。


   …。


   太陽が沈んでいく。
   今日が終わる。


   …ええ。


   宿、どうしようか。


   今日も野宿でしょう?


   分かってるね。


   もう、慣れたから。


   本当に?
   布団とか、恋しくない?


   …。


   私は恋しいよ。
   やっぱり布団に敵うものはない。


   ベッドだったくせに。


   例えだよ。


   例え、ね。


   そう。


   …。


   今宵も、両手いっぱいの星空を君に。


   きざ。


   あはは、やっぱり?


   火、起こす準備でもしようかしらね。


   ごはんはどうする?


   勿論、携帯食だけど?


   干し肉?


   と、豆の缶詰でスープでも。
   たまには野菜が食べたいわね。


   町に着いたら、食べよう。
   いっぱい。


   あんまり好きじゃないでしょ、貴女。


   それでも大分食べられるようになったよ。
   貴女のおかげで。


   はいはい、本当にそうなら良いのにね。


   そうだって。


   ん…。


   …あのさ。


   …なに?


   どこまで、行こうか。


   …どこまででも。


   どこまで、付いてきてくれる?


   貴女が思うままに。


   果て、無かったらどうするの?


   知らない。
   考えて無い。


   優等生のくせに。


   私はただ、決めただけ。
   だからその果てなんて知らない、知らなくてもいい。


   …。


   …。


   そこら辺で、終わっちゃうかもよ。


   それでも良い。


   帰りたいと思わないの?


   貴女が一緒なら、それで。


   家族は?


   …。


   どうするの?


   …私はもう、選んでしまったから。


   …。


   貴女を。


   …私を。


   貴女と、生きるの。


   …。


   さぁ、本格的に冷えてくる前に。


   うん、そだね。


   火、起こしてくれる?


   オーケイ。


   …水、今度町に付いたら補給しないと。


   ねぇ。


   うん?


   とりあえず、あそこまで行く。


   …地平線?


   そ。


   終わり、無いじゃない。


   はは、ばれた?


   ばれるわよ。


   そっか、流石。


   ばか。








   
「遠くへ」・・・BOF3青年期フィールド








   聖蓉オンリー。最後のはエル・カザドの(以下略)
   貴女となら、どこまででも。