−シンオン。(聖蓉)






   んー…。


   …雨。


   …。


   止まない、わね…。


   ……。


   …このまま、起きないつもり?


   …。


   ねぇ。


   …ん、なに?


   未だ、起きないの?


   …少なくとも、もう暫くは。


   ……私は


   蓉子も、だよ。


   ……。


   あー…。


   ……静か、ね。


   …うん。


   ……。


   …。


   …聖。


   …。


   聖ってば。


   …うん?


   雨、止まないわね。


   あー…そうだねぇ。


   ……。


   今日は、止まないかもねぇ。


   ……。


   でもま、良いんじゃない…?
   余計な音がしないし…。


   ……。


   蓉子とのんびり出来るし…。



   ……ねぇ。


   ……。


   ねぇ。


   ……。


   ねぇ…!


   …なぁにー。


   …私が隣に、居るのに。


   ……。


   そんなの、聴いてないでよ。


   …え、何だって?


   …っ


   ん…?


   私、起きるわ。


   …だめだって。
   言ったでしょ…?


   …。


   ほら、横になって。


   離して。


   今日はこのままのんびりするんだよー…。


   ……離してよ。


   だぁめ。


   ……。


   はい、いいこ…。


   ……のに。


   ……。


   私が、居るのに。
   私と、居るのに。


   …よーこ?


   ……こんなに静かな中で。
   私、一人だけ…。


   どーした…?


   ……。


   わ…ど、どうしたの?


   ……聖の、ばか。


   え…。


   ばか、聖のばか。


   よ、良く分からないんだけど。


   ばか…。


   えー…と。
   …あれ?


   ……。


   よーこ、いつのまに外してたの?


   ……。


   あらら、つまらんかった?


   ……。


   あー、ごめん。
   気付かなかっ…


   ……。


   ………蓉子。


   …こんなに静かなのよ。


   …。


   雨の音はするけれど…。


   …うん、そうだね。
   本当に静かだ…。


   ……。


   ……ごめんね?


   …。


   よーこ…。


   ……。


   …こうすると、よーこの音がするよ。


   …どんな音よ。


   よーこの音。
   とても優しい音…。


   ……。


   どんな音にも負けない。
   どんな音でも勝てない。


   …じゃあ。


   ん…。


   聖の音、は…?


   それは……よーこ次第じゃ、無いかな。


   ……。


   ……聞こえる?


   ……聞こえる。


   うん、良かった…。


   ……ねぇ、聖。


   なぁに。


   ……曲がつまらなかったわけじゃないの。
   聖が好きな曲を、聖と一緒に聴くのは……とても、好きだから。


   ……。


   ……だけど、今、は。


   ……。


   ……ごめんなさい。


   ……何で?


   ……。


   ……。


   ……ね、聖。


   ん…。


   また、後で…。


   ……うん、また後で。
   だけど今は…。


   ……ん。








  −Symphonic Fantasies in Deutschland 「CHRONO TRIGGER & CHRONO CROSS」(音楽聖蓉)






   …聖?


   …。


   聖。


   …。


   どうしたの、聖。
   何か気になる記事でもあった?


   …あ、いや。


   何?


   …一寸、良いかな。


   …良いけど。
   何なの?


   …これ。


   ……オーケストラ?


   どこのだかは知らない。
   でも外国のどっかだとは思う。


   …中継?


   いや、録画だと思う。


   知ってる曲?


   いや、全然知らない。
   聞いた事も無い。


   クラシック…と言うわけでも無さそうね。


   その心は?


   眠くなる、でしょう?


   よく分かっていらっさる。


   …興味、ある?


   分からない。


   …じゃあ、面白い?


   この楽器、何だろう。


   どれ?


   これ。
   見た事が無い。


   太鼓…かしら。
   私も知らないわ。


   何か、浮いてる。


   確かにオーケストラの中では浮いているようにも見えるわね。


   …面白い。


   ……。


   色んな曲が混じってる気がする。
   何か、面白い。


   …聖って。


   ん…?


   たまにそういう目をするのよね。


   そういう目、て?


   子供みたい、な。


   ……子供扱いは、たまにと言うか結構、されるけど?


   そうじゃなくて…。
   …そう、江利子みたいな。


   …えーー。


   有体な言い方をすると。
   目がきらきらしてる。


   …でこが面白いものを見つけた時みたいに?


   そう言ったら機嫌がななめになりそうだから言わない。


   十分に言ってると思う。


   …ななめになった?


   でこと一緒なのは面白く無いなぁ。


   …ふふ。


   あ、笑ったな。


   だって。
   子供みたいなんですもの。


   じゃあ後で存分に甘えさせて貰おうっと。


   こら。


   子供の特権です。


   実年齢は子供じゃない、でしょう?


   良いの。
   蓉子の前では特別。


   …もう。


   ……。


   ……。


   …これ。


   …うん。


   目の前で聴きたいかも知れない。


   …そう。


   その時は一緒に来てくれない?


   一人じゃなくて良いの?


   最近は蓉子と一緒に聴くのがお気に入りなもんで。


   そう言われてしまったら断れないわね。


   じゃ、約束。
   嘘ついたら針千本、ね。


   はい。


   …まぁ、その時は無いだろうけど。


   でしょうね。


   でもあったら蓉子と一緒。


   ん。








  −秋霖(聖蓉)






   …今日、は。


   …。


   雨、止まないのかな…。


   …秋雨前線が活発らしいから。


   じゃあ今日はこのままで良いかなぁ。


   …お腹、空くわよ。


   空いた?


   …今は、あまり。


   うん、私も。


   …。


   じゃ、空くまでこのままでいよう。


   …空いてから支度をするの?


   簡単に、で良いよ。
   卵でも焼こうかな。


   …。


   雨、えらく降ってるなぁ。


   …聖。


   これじゃ、どこにも行けないなぁ。


   聖。


   なぁに。


   何か着た方が良いわ。


   へーきへーき。
   蓉子と一緒だから。


   …。


   あたためて?


   …そんなに寒くないでしょう?


   でも、ほら。


   …。


   冷たい?


   …いいえ?


   あれ、おかしいなぁ。


   …。


   じゃあ、あたためてあげるね。


   …。


   ふふ。


   …聖、は。


   ん?
   なぁに?


   ……素肌同士が好きよね。


   うん、大好き。


   …。


   蓉子は?


   …さぁ。


   なんてね。
   私、分かってるんだ。


   …何を?


   嫌いじゃない、てコト。


   それはどうかしら。


   だって何度もしてるのに、本当に嫌そうにはしないもの。
   怒られる時はあっても。


   我慢してるだけ、だとしたら?


   …。


   本当は嫌だと言ったら、どうするの?


   ……それ、本心?


   …。


   本心なの、蓉子。


   ……。


   ……蓉子。


   …冗談、よ。


   ……。


   本当にいやだったら。
   貴女とこんな風に逢う事はしない。


   …。


   …結局、貴女の肌の温もりが好きなのよ。


   ……うん。


   …。


   蓉子は自分に厳しい人だから。


   …そうでもないわよ。


   …そうかな。
   今だって何かを律しようとしてる。


   ……。


   だめになるの、怖い?


   …怖いわね。


   …私と一緒でも?


   …。


   私とじゃ、いや?


   …そうなるのを望んでしまう自分が怖いのよ。


   …。


   だって私は貴女と生きていきたいから。


   …生きていけるよ。


   ………。


   ……あの時とは、違う。


   ………然う、ね。


   ……。


   ……。


   …雨、止まないなぁ。


   …ええ。


   お腹、空いた…?


   …。


   そっか…。


   …聖は?


   ん、ぼちぼち…。


   じゃあ…


   …起きよう、か。


   ……。


   蓉子とはずっと一緒だから。
   今だけじゃ、無いもの。


   ……うん。


   蓉子の卵焼き、食べたい。


   ……じゃあ私は貴女のオニオンスープが食べたいわ。


   うん、分かった。


   ……。








  −本当は直ぐ傍にあったもの。(聖蓉)





   あの頃の蓉子の笑った顔が、思い出せない。






   ん…。


   …。


   …なぁに?


   …いや。


   何でもない?


   いや、何でもなくもない。


   変な人ね…?


   …蓉子。


   なぁに?


   ……いや。


   聖…?


   ……。


   …どうしたの?


   ……ねぇ、蓉子。


   ん…?


   ………いや。


   本当にどうしたの…?


   ……うん。


   …。


   …もっとくっついてもい?


   ……。


   蓉子…。


   ……ふふ、赤ちゃんみたい。


   …ねぇ。


   なぁに…?


   …。


   今度は。
   いや、て言わないのね?


   ……いて。


   うん…?


   …そばに。


   ……ええ、勿論。


   約束、出来る…?


   出来るわ。


   ずっと、だよ。


   ええ、すっと。


   …途中で嫌になったら


   ならないわ。


   ……。


   ならない、から。


   ……よーこ。


   ……。


   ……ねぇ。


   ……なぁに?


   ……わらって。


   …わらう?


   わらって。


   …急に言われても困るお願い、ね?


   ……お願い。


   …上手に、出来るかしら。


   よーこの笑った顔が見たい。


   …いつも、見てるのに?


   また、みたい。
   今。


   …じゃあ。


   …。


   少し離れてくれないと。
   見せられないわ。


   …。


   ね…?


   ……うん。


   ……聖。


   …よーこ。


   ……。


   ……ああ。


   ……私、上手に笑えてる?


   …。


   …聖?


   ……すき。


   …。


   ずっと、そばでわらってて。


   ……聖。


   ずっと、私のとなりで…。






   思い出すのは。
   困った顔と、怒った顔、それから悲しませた顔と。
   屹度、私にも笑いかけてくれていた筈なのに。






   聖も、笑って…?


   …うまく出来ないよ。


   うまいとか、へたとか。
   そんなのは、良いの。
   でしょう…?


   …。


   …好きよ、聖。


   …うん。


   ずっと、私のそばで笑っていて。


   ……うん。


   ……。


   ん…。


   ………せい。


   やくそく、する…。


   ……。


   だから…。








  −赤と黒。〈俺屍版聖蓉)





   凭れ掛かる肢体、重み。
   べったりと染み付いた其れ。
   まるで塗りつぶすかのように。
   それでも止まらない。
   止まらない。
   やがては染みの限界を超え。
   流れ出す。
   ねっとりと。
   其れは足元にねばついて。
   新たに染めていく。
   手には拭えぬ染み。
   赤。
   己の手。
   消えぬもの。
   赤くて赫くて…




   黒い。








   ………うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ


   …!


   は…っ、は…っ、は…っ。


   聖、聖…っ


   いや、だ…、いやだぁぁ…っ


   聖、確りして…っ。
   聖…っ。


   あぁ…あぁぁぁ…。


   聖…、聖…。


   ………よ…、こ。


   聖…。


   ……蓉子っ


   ……。


   蓉子…っ、蓉子ぉ…っ。


   ……聖。


   あぁぁ…。


   ……大丈夫。
   私は、此処に居る…。


   ………ぁぁ。


   ……いいこ、いいこ。


   ……。


   怖い夢を、見たのね…。


   ……。


   もう、大丈夫よ…。


   ……ぁ。


   怖くない、怖くな


   蓉子…!


   え…。


   ふさがないと…、ふさがないとぉ…っ
   じゃなきゃ…っ


   ……。


   蓉子が、蓉子がぁ…っ


   いた…。


   傷を治せ、泉源氏…っ


   …。


   塞げ、お雫
〈シズ〉…っ


   …。


   彼の者の傷を癒せぇ、円子〈マルコ〉ぉ…っ


   ……。


   …なんで、
   なんでぇぇ……っ?!


   ……せい。


   いやだ…、いやぁぁ…っ


   聖。


   あぁぁぁ…っ。


   ……。


   ようこぉ…ようこぉぉ…。


   ……落ち着いて、聖。


   …ぁ。


   いいこ…、いいこ…ね。


   ぅ、ぁ…。


   …大丈夫、大丈夫。


   ……。


   …ねぇ、聖。


   ……。


   ゆっくり、触ってみて。


   ……。


   其の手で。


   ……で、も。


   触って。
   ね…?


   ……。


   ……。


   ……。


   ……ん。


   ……。


   ………どう?


   ……。


   私のからだ…。


   ……あったか、い。


   ん…。


   ……。


   ……どこも。
   いたくなんか、ないわ…。


   ……うん。


   けがなんてしてない、から…。


   ……。


   ね……?


   …うん。


   …だから。
   そんなに、泣かないで…。


   ……ようこ。


   ……。


   よかった…、よかっ、た…。


   …ありがとう、聖。


   ……。


   あ、ん…。


   ようこ…。


   ……せい。


   ようこ…、ようこ……。


   ……。


   ………すき。


   ………わたし、も。


   ……。


   はぁ……。


   ……。


   ……。


   …よ…、こ。


   ……せ…ぃ。








  −We form in crystals(音楽聖蓉)





   …。


   …ねぇ、聖。


   …ん?


   なんか、この曲…。


   蓉子?
   どうした?


   ……。


   わ…。


   ……。


   よ、蓉子、どうしたの?


   ……なんか、ね、


   う、うん。


   空へ、飛んでいってしまうような気分…。


   …飛んで?


   うん…。


   ……。


   ふわふわとじゃ、無くて。
   こう、鳥になって…。


   …。


   ……。


   …あの時みたい?


   ……あの時、て?


   ……。


   ひゃ…。


   ……あの時は。


   と、突然、何を…。


   あの時、だよ。


   あ…。


   分からないのなら。


   せ、聖。


   ……。


   ちょ…。


   …教えてあげる。


   ま、待って。


   …やぁだ。


   と言うか、何でそうなるのよ。


   …だって分からないんでしょう?


   分からない、て何の話よ。
   私はただ、この曲を聴いてると…。


   飛んでいくみたい、なんでしょ?
   だから、あの時みたい?、て聞いたの。


   だ、だから、あの時って何よ。
   あ、こら…。


   …言葉にするより。
   実際にした方が早いかな、と。


   ……。


   …ねぇ?


   ………あ。


   うん、分かっちゃったかな…?


   ば、ばか…!


   …ふふ。


   違うわよ、もう…!


   …全然?


   私が言ってるのは…!


   飛んでいくみたい、でしょ?


   …兎に角、離れて。


   離れたらイアホンが外れちゃう。


   構わないから、離れて。


   やーだ。


   聖。


   どうせなら二人で飛ぼう…?


   だ、から、そうじゃなくて…!





   ゴン





   ……。


   もう。
   本当に莫迦なんだから。


   …本気で、殴られた。


   貴女が止めないから。


   ……だって、蓉子が。


   私が、何。


   ……。


   私はこの曲の感想を言っただけ。
   分かった?


   ……でも、誘われた。


   聖。


   ……飛んでいくみたい、てのは分かる気がします。


   ありがとう。


   だけど。


   だけど?


   …暗い淵に落ちていくような感覚にも似ています。


   …。


   目を閉じて、風を切る音を耳にしながら、底へ底へ、みたいなね。


   ……。


   だけど、なるほど。
   飛んでいくみたい、か。


   ……聖。


   ん…?


   一寸、切ないわ。


   …。


   それから、白くて。


   ……イメージ?


   …変なイメージには変換しないでね?


   変な、て?


   ……。


   あー…、はい。


   宜しい。


   …私は。
   無機質、かな。


   …無機質?


   うん。


   ……。


   熱が無くて。


   …。


   何も感じない。


   ……寒いの?


   の、かなぁ。
   ま、所詮、イメージだから。


   …。


   …ん、なに?


   ……ううん。


   何でもないの?


   …ええ、何でもない。


   …ふぅん。


   ……。


   じゃあ、私も何でもない。


   ……何でもないの?


   うん、何でもない。


   ……そう。


   蓉子。


   …なに。


   蓉子はあったかい。


   …聖は熱い。


   そう?


   子供みたい。


   それでも良い。
   大人になんて、なりたくないから。


   ……。







   ・







   はぁ…はぁ…。


   ん…ん…。


   ……はぁ。


   ん、あ…んんっ


   ……よーこ。


   はぁ…あ、あ…あぁ、あぁぁ。


   はぁ……。


   せ……ぃ.…。


   …ふたり、で。


   あ……あ………あ…ぁ…。


   ……。


   ぁぁ……ッ。


   ……よ…こ…。








   ……。


   ……せい。


   ん……。


   ……。


   ……なに?


   ……ううん。


   ……へんなの。


   うん…。


   ……よーこ。


   …なぁに。


   ……ねこみたい。


   ……それはあなた。


   よーこも、だよ。


   …あなたが、よ。
   ほら…。


   さきにしたのはよーこだよ。


   ……。


   よーこのかみ、こしょこしょする。
   こそばゆい。


   …あなたのかみもおなじ。
   いえ…。


   ……。


   あなたのほうが、やわらかい。


   …よーこもやわらかいよ。


   でもあなたのほうがやわらかいの。


   けどわたしはよーこのかみのほうがすき。


   ……。


   いいにおい…。


   ……あなたとおんなじよ。


   …いーにおい?


   ……ええ、いいにおい。


   ふたりの、におい…?


   …そういっても、いいのなら。


   うん…。


   ……。


   よーこ、よーこ…。


   ……やっぱり。


   んー…。


   あなたのほうが、ねこみたい…。


   …じゃあ、もっといい?


   だぁめ。


   …むぅ。


   ……あまえた。


   じゃあ、いーじゃない。


   もう、だめ。


   …ちぇ。


   ……けど。


   ……。


   ……。


   …よーこも。
   あまえた…?


   ……だめ?


   んにゃ。
   むしろ、だいかいげー。


   …。


   …ふ、ぁぁ。


   …ねむい?


   なってきた。


   ……そう。


   ……とんだ?


   え…?


   とべた?
   そら。


   …あなたは?
   おちた…?


   よーことおんなじほう。


   …じゃあ、わたしもせいとおなじほう。


   そっか。


   ええ、そう。


   ……。


   せい…?


   …よーことなら。
   どっちでもいい…。


   ……。


   いいの…。


   ……そうね。


   ……。


   ……。


   ……。


   ……せい。


   ……。


   ……おやすみなさい、せい。








  −紅薔薇さまと白薔薇さま。(薔薇さま二人)





   紅薔薇さま!


   …ごきげんよう、白薔薇さま。


   ごきげんよう。
   紅薔薇さまも、これから?


   ええ。


   然う。
   んじゃ、一緒に行こう。


   良いですけど?


   良いなら普通に良い、で良いじゃない。
   相変わらずなんだからなぁ。


   仕方が無いわね。
   それが私なのだから。


   ま、知ってるけど。


   白薔薇さまは購買?


   うん、たまにはね。


   また喧嘩でもしたのではなくて?


   はは、ばれたか。


   相変わらず、分かりやすいわね。


   自分で作るつもりだったんだけど。
   こういう時に限って冷蔵庫に何も入ってないんだもの。


   ならば今日の帰りは買出し?


   特に用事も無いのなら、付き合ってくれない?


   残念。
   今日は先約があるので。


   それって、


   違うわ。


   そうなの?


   ええ。


   じゃあ…


   勘ぐるのは止めて欲しいわ。


   勘ぐってはいないけど。
   ただ、家族と食事でも行くのかな、って。


   …。


   あ、当たりだ。


   だから、止めてと言っているでしょう。


   良いじゃない。
   でも良いなぁ、家族と外食。


   何だったら一緒に行く?


   え、でも


   勿論、冗談だけれど。


   …分かってるけど。
   私は貴女のお姉さまじゃないし。


   …その言い方だとお姉さまは一緒した事があるように聞こえるわね。


   寧ろ、無いの?


   未だ無いわよ。


   ふぅん。
   もう、とっくだと思ってた。


   貴女こそ、どうなのよ。


   私?


   そもそも会っているの?


   …。


   会っていないの?


   うん。


   どうして。


   いや、どうしてかなぁ。


   …何よ、それ。


   会わなくても繋がってるから。
   淋しくないし。


   嘘ばかり。


   嘘じゃないよ。
   それにほら、紅薔薇さまもいるし。


   はぁ?


   学年は違うけど、黄薔薇さまもいるし。
   淋しがってる暇なんて、今のところ、無いもん。


   …呆れた。


   じゃあ、紅薔薇さまは淋しいんだ?


   …。


   図星。


   そんな事は無いわ。


   無理しなくても良いって。
   ぼろぼろ、泣いてたもんね。


   無理など、してません。
   それからぼろぼろ泣いてません。


   はいはい。


   白薔薇さま。


   でも、さ。


   …。


   会おうと思えば、いつでも会えるよ。
   仮令学校が違ってても、ね。


   …。


   だって、それだけの絆があるもん。


   …恥ずかしいわね。


   え?


   恥ずかしいって言ったの。


   そぉ?


   ええ、そうよ。


   ふぅん。


   さっさと行くわよ。


   ところで紅薔薇さま。
   お話があるんだけど。


   あげないわよ。


   そう言わず。
   何だったら今から貴女の好きなマスタード・タラモ・サンド、買ってくるから。


   今は間に合っているわ。


   購買のパンも好きだけど、何か一品欲しいんだよねぇ。


   然う言って何度も人のおかずを取って。


   だって、美味しいんだもの。


   もう、あげないわよ。
   そもそも喧嘩した貴女が悪い。


   原因も知らないで然う言うのは良くないと思うんだけどな。


   じゃあ、冷蔵庫の中を確認しなかったのが悪い。


   …う。


   自業自得。


   優しくないなぁ。


   ええ、知らなかったの?


   うん、知らなかった。


   じゃあ、知っておいて。


   なんだかんだで、くれそうだもの。


   はぁ?


   紅薔薇さまは。


   …。


   紅家系は白家系に弱いってね。
   “先代”が言ってたんだよね。


   それはある特定の代だけでしょう。
   私は甘くないわよ。


   そうかなぁ。


   そうよ。


   ちぇ、仕方ない。
   諦めるかー。


   明日はちゃんと持ってくることね。








   さて。
   最後の薔薇さま二人は誰でしょう?(バレバレですね)
   たまには、たまには。