−Spring has come.(蓉子と聖)
桜の花が舞う。
ひらひらり、ひらひらり、と。
風に舞い、浚われ。
まるで花の雨のように。
ひらりひらり、と。
蓉子。
…。
なかなか戻ってこないから。
…聖が?
珍しいわね。
…で?
そんなとこで突っ立って何してるのよ。
お花見、かしら。
…。
今年も桜が咲く季節になったんだなぁ、て。
…そんなことで30分以上も?
ああ、もうそんなに経っていたのね。
さっさと戻った方が良いと思うわよ。
聖にそんな事を言われる日が来るだなんて。
私も同じ気持ちよ。
ねぇ、聖。
…。
綺麗ね、桜。
…。
聖?
私は先に戻るわ。
貴女と感傷に浸る趣味は無いから。
感傷…。
…じゃあ。
こんなおまじないがあったの。
…。
小学校の時にね。
散っている桜の花びらを空中で取るの。
力づくだと潰れてしまうから、包み込むように。
…その続きを聞かなければならない義務は無いわね。
取れたら…片想いが叶うのよ。
……。
クラスの、一部の女の子達が夢中でやってた。
一生懸命に、中にはムキになってやっている子もいた。
…。
あの子達は想いを叶えたかったのかしら。
いえ、叶えたかったのね。
…くだらない。
花びらを取れたぐらいで、片思いが叶うわけが無い。
ええ、そのとおりだわ。
だけど、それだけ本気だったんでしょう。
おまじないに頼る、そんなののどこが本気だと言うのよ。
叶わないのが、怖いから。
…。
想いを抱く事に。
年齢など、問題では無いのね。
あまりにも年少だと。
マセガキと、言われるのでしょうけど。
ふふ、厳しいわね。
皆が、貴女を待ってるわ。
会議を始められないから。
…ええ、ごめんなさい。
…。
…。
…蓉子?
掴もうとしない方が掴めるだなんて。
なんか、皮肉だわ。
……。
花びら、なんて。
…蓉子も信じてるの?
そんな顔、しないでよ。
信じてるわけでは無いのだから。
ただ…綺麗、だから。
……莫迦みたいね。
…本当ね。
……。
花の雨のよう。
本当に、綺麗だわ…。
…私は先に行くわよ。
…。
…蓉子。
…うん、私も行くわ。
皆が待ってるって、聖が言ってくれたから。
−Closer〜Contrast media(聖蓉)
造影剤?
…ええ。
と言うと…
使うことで、CTやレントゲンの画像をよりはっきりとさせるみたい。
へぇ…。
…。
蓉子?
同意書、書いちゃったわ。
同意書? なんで?
造影剤を使うのに、よ。
同意書なんて書かないといけないの?
副作用があるんですって。 と言ってもどんな薬にもあると思うのだけど。
そんなに大袈裟なものなの…?
そんな顔、しないで。
だって。
アレルギーを持っている人なんかは副作用を起こしやすいようなのだけれど。 僅かな確立、本当に僅かな確立なのだけれど…死に至る場合があるそうなの。
死…て。
だけど本当に僅かな可能性だから。
…他は?
後遺症や合併症。 最も多いのは微熱程度の、発熱。
…。
聖、聖、あんまり深刻な顔しないで。
……蓉子。
私は貴女に全てを話すわ。 心配させてしまうのは分かっている。 けれど、知っていて欲しいの。
……。
…聖。
…。
ごめんなさい、聖…。
…良いよ。
聖…。
私に出来る事だから。
…。
私が知る事で、蓉子が少しでも楽になるのなら。
…ごめんなさい。
良いんだ。 それに確立、すんごい低いんでしょ? 大丈夫、大丈夫だよ、蓉子。
……うん。 ありがとう、聖…。
−こんな春の一日。(聖蓉)
いい天気だねぇ。
そうね。
あ、鳥が鳴いてるよ。
うぐいすだっけ?
めじろ。
何度も言ってるけど、鳴き方が違うでしょう?
そっか。
その調子だと。
来年になったらまた聞かれそうね。
うん。
貴女、ね。
蓉子を覚えてるから。
…。
ね、だから良いでしょう?
…ばか。
はは。
まったく。
ねぇ、蓉子。
…なに。
競争、しよう。
…はい?
負けた方が今日の夕ご飯作る、て事で。
一寸待ってよ、急に何を言い出
ゴールはあそこの電信柱ね。
よーい、
聖、ま
どん!!
あ、聖…!
はやくはやくー!
あーもう、待ちなさいよ!!
やだーー!
あーーーもう…ッ
勝った。
ぶい。
……はぁ、はぁ。
これくらいで息切れしちゃうなんて。
運動不足だね。
い、いきなり、走り出し、ておい…て。
荷物は半分こしてるから平等?
…はぁ。
スタートが同時じゃないわ。
だからその分、少しだけ長く走ったよ。
兎に角。
フェアな勝負じゃない。
兎に角。
乗った以上、蓉子の負け。
あのね。
今日の夕ご飯を作るのは蓉子。
楽しみです。
……。
ん?ん?
…競争は別にして。
最初から作るつもりだったから良いわよ。
あれ、然うなの?
すっ惚けて。
ん?
もう、良い。
あれ?
さっさと帰るわよ。
待ってよ、蓉子さん。
疲れちゃったわ、もう。
やっぱり運動不足。
だーかーら!
いきなりじゃなかったら大丈夫なの!
ホントかなぁ?
…聖。
うん?
ピーマン、食べてもらうから。
え?
どうせ、偏った食生活してるんでしょ。
お野菜、ちゃんと食べてもらうから。
や、待って。
野菜くらい、食べてるよ。
レタス?
だって、立派な野菜です。
トマトも追加。
えぇ〜。
安心して、プチトマトじゃないから。
プチっとした食感が嫌いなのよね、確か?
おっさるとーりです。
でもおっきいトマトも生のままだと
それからほうれん草。
は、好きだから良いもんねー。
ツナ和えが良いな?
お生憎様。
今夜は胡麻和え。
む。
大体、貴女はバランスと言うものを考えない。
食事は大事なのに、いつも適当に済まして。
…また始まった。
何よ、そのうんざりした顔は。
毎回、言われてるので。
毎回、冷蔵庫にろくなものが入ってないんだもの。
一応、料理もしてるんだって。
知ってる。
だけどもっとちゃんと食べて欲しいのよ、私は。
お母さんみたい。
良く言われる。
貴女に。
だったらさ。
それはだめ。
何でよ。
未だ、学生だから。
言ったでしょう?
……。
聖?
じゃあ、もっと泊まりに来て。
ごはん、作って。
私は貴女の家政婦さん?
違うよ。
じゃあ、何?
蓉子のばか。
そんなコト、言わせないでよ。
あら。
言ってくれないと、分からな…
…ばか蓉子。
…。
早く、帰ろ?
もっと、もっともっと、くっつきたいから。
…その前に。
シャワー、貸してね?
うん、一緒に入るんだよね。
決定。
…一寸。
蓉子は負けたんだから、勝った私の言うコトを聞かないと。
いつそうなったのよ。
今!
…。
蓉子、早く早く。
…一緒になんて、絶対に入ってあげないんだから。
−親友。(蓉子と江利子)
例えば。
求められなくなったら、どうする?
……はい?
相変わらず大変そうだから。
…。
勿論、そればかりが全てでは無いけれど。
分かり易いとは思うのよね。
…江利子は、どうなの?
…知りたい?
……いえ、やっぱり良い。
あら、遠慮なんて要らないわよ。
聞かなかった事にして。
いいえ、ちゃんと聞いちゃったわよ。
この耳で。
じゃあ、流して。
お願いだから。
不平等。
え?
貴女達の万年バカップルの話は、双方から、聞かされているのに。
私の話は聞かないだなんて。
……。
然う、思わない?
…江利子。
うん?
それで?
何が分かり易いの。
元紅薔薇様ともあろう者がまさか逃げの体勢?
…そういうわけじゃないわ。
じゃ、どういうわけ?
……。
と言うより、未だ苦手?
そういう話は。
……。
自分はすっかり、虜になっているのにね。
…。
ま、良いわ。
話を戻すけど、分かり易い、でしょう?
助平、大いに結構。
…だけど、程度と言うものがあると思うのよ。
だからっていきなり求められる回数が減ったら。
どう思うかしらね?
……。
ほら、分かり易い。
だけど体調が悪い時だってあるわ。
それに疲れている時だって…
そういう場合は含まれないのよ。
別の感情が先立つものだから。
…。
特に蓉子の場合は。
ねぇ、世話焼きさん?
…江利子。
安心、するのでしょう?
……。
しない、と言うのなら話は別だけど?
……。
ふ。
相変わらず、ね。
…ごめんなさい。
いいえ、中等部の頃からだから。
−ライン〈聖蓉)
…よーこ。
…。
おきちゃうの…?
…ごはん、作らないと。
まだ、いいよ。
…おなか、すくでしょう?
運動、したから?
…。
シャワー、貸したよ?
やくそく、まもった。
…一人ではいる、て、いったのに。
今話題のエコ、かな?
……とにかく。
ごはんの支度をしないと。
もうちょっとだけ、いいじゃん。
あとになって、おなかがすいたって言い出すのよ。
いつだって、そう。
そうだったっけ?
そうよ。
……。
ごはん、買ってきておいてよかったわ。
今から炊いていたら間に合わないもの。
…よーこ。
なによ。
すきだなー。
……それはありがとう。
照れた?
…べつに。
ホックはさ、やっぱ後の方が良いよね。
……は?
ブラの。
……。
そりゃあさ、前の方がラクなんだろうけど。
…何を言い出しているの、あなたは。
やっぱ後だよ、うん。
…ああ、そう。
もう、たまんない。
…知らなかったわ。
あなたにそんな拘りがあっただなんて。
だってきれいなんだもの。
……後ホックのブラが?
じゃなくて、よーこの姿が。
……?
後姿、低い目線で見てるとね、ムラっとくるんだよね。
…さっきからなにを話しているの、あなたは。
よーこのブラをつけている姿。
……。
伸びた背筋、浮き出した形の良い、触るとスベスベな肩甲骨、
左側に少しだけ傾いた重心、頭を前に倒す事で後髪から見える白いうなじ…ああ、もう。
あ、ちょっ…
……すごく、ムラっとくるのよ。
こらえきれない。
………聖。
…。
…んっ
前にはいっぱい付けたから。
今度は後に、ね?
…私はごはんの支度をするのよ。
まだ時間はあるよ。
…気付いたら遅い時間だなんて。
だいじょーぶ、寝かせないから。
……せい。
食事前の軽い運動。
ね?
……調子に乗らないで。
あ。
あー。
どうせ、食事の後もするんでしょう。
食後の運動とか言って。
うん。
だから前もするの。
もう、したでしょう。
今までのは準備運動。
これからが
今は、だめ。
ただでさえ貴女、平気で食事を抜かすんだから。
…よーこが一緒の時は抜かさないよ。
だったら、大人しく待ってて。
すぐ支度をするから。
…。
聖。
…じゃあ、キスして。
…。
してくれたら、大人しく待ってる。
…。
よーこ。
……遠くに行くわけではないのに。
…だって。
……。
よー…ん。
……。
…よーこ。
……やくそく、よ。
−シャ・リオン(音楽聖蓉)
ん〜…。
…ねぇ、聖。
…んー?
これ、何語なの?
知らない。
知らない?
だって造語だから。
造語という事は
どんな言語でも無いって事だね。
…ふぅん。
ウィリアム・ワーズワースって知ってる?
聞いた事があるわ。
確か…
英国のロマン派詩人。
ロマン派…。
ん、なに?
聖って意外にロマンティックなのよね、て。
そうかな。
蓉子の方がそうだと思うけどな。
恋愛もの、好きだし。
私が言っているのはそういうことじゃなくて…
あ、終わっちゃった。
ね、もう一回つけてもい?
…好きなの?
最近、ね。
珍しく、歌入りなのね。
日本語じゃないからね。
…。
なんて。
別に日本語でも良いけど、これと言って好きなのが無いんだ。
意味が分かってしまうから?
どうせなら分かんない方が面白い。
空想出来て?
うん。
愛だの恋だの歌っていても分からなければ気にならない。
…要因はそれ?
それも、ある。
…。
造語なんて特にわけが分からなくて良いよ。
ロマンティック。
ん?
やっぱり聖の方が。
いやいや、そんな事無いですよ。
…それで。
ん?
ウィリアム・ワーズワースがどうかしたの?
ああ。
造語って言ったけれど、本当はとある詩を逆さまから読んだらしいよ。
?
さかさま…?
ワーズワースのとある詩を、ね?
とある詩って?
知らない。
……ふぅん。
ご先祖に、さ。
…?
父方の何代か前に。
モンゴロイドじゃない人がいたって言ったじゃない?
…ああ。
若しかしたら。
ふらふらと、世界を巡っていたのかもしれないなぁ、とか。
…。
だから、かも知れない。
え…?
ま、何となく、だけどね。
…。
飽きた?
飽きたなら違うのにするよ。
…いいえ、そのままで良いわ。
そ?
じゃ、お言葉に甘えて。
……。
ん、ぉ?
……なに。
いや…。
……なによ。
珍しいな、と。
……。
ふふ、嬉しいな。
…鼻の下、伸びてる。
当たり前。
…ん。
だって蓉子から、だよ?
伸びない筈が無い。
……。
手、どうせだから恋人繋ぎにしよ?
…ねぇ、聖。
ん、なぁに?
……。
ようこ?
……いかないで。
え、なに?
…どこにもいかないで。
…はい?
……何となく、よ。
何となく、て。
…歌、終わっちゃうわよ。
あ、うん。
…て、ようこ。
…。
…んーと。
……ソノ、シャリオン。
お?
私も、好きよ。
え、ほんと?
…ええ。
聖が好きな曲だもの。
−Blue day(聖蓉)
…。
…こ。
…?
…よーこ。
聖?
…。
どうしたの?
…まだ、ねないの?
あともう少しだから。
…。
眠れないの?
…こし、いたい。
眠れないほど?
…。
うつ伏せになると負担がかかって、余計に痛むから…
…て、よーこに言われたから。
よこになってた。
楽じゃなかった?
…だいじょうぶだった。
そう。
…よーこ。
ん?
もう、ねようよ。
…。
ほんなんて、あしたでもよめるじゃん。
…聖、一寸良い?
ん…。
顔が少し、赤いわ。
…すこし、あつい。
微熱が出てきたみたいね。
水枕、要る?
…いらない。
冷たくて気持ちが良いわよ。
…そんなのより、よーこがいい。
…。
ねぇ、よーこ。
いっしょにねようよ。
…。
ねぇってば。
…分かったわ。
じゃ、いこ。
はやく。
だけど。
ちゃんと大人しく寝るのよ。
うん。
水枕、本当に要らない?
顔、火照ってて熱いのでしょう?
…。
先に言ってて。
水枕を作ったら直ぐに行くから。
やだ、いっしょにいくの。
聖、そんな子供みたいに
……。
…聖?
……。
…もう。
……。
分かったから。
裾、引っ張らないで。
…やだ。
一緒に行くから。
……。
代わりに手を繋いであげる。
……。
ね?
………ん。
…だけど。
…。
珍しいわよね。
……よーこのきもち、すこしだけ、わかった。
…辛いでしょう?
……。
お腹は痛くない?
……いまのところは。
眠れそう?
…よーこ、だっこして。
…。
いたいトコ、さわってて…。
…さすらなくても、良い?
…さいしょだけ。
ん…。
……よーこ。
なぁに…?
…なんでもない。
……おやすみなさい、聖。
……ん。
−時々、悪友。(蓉子と江利子)
精彩に欠けている、わね。
…え。
と言っても、疲れているわけでは無さそうだし。
私と居ても楽しくないと言うことなのかしら。
何を言っているの、江利子。
だってさっきから何を話していてもどこか上の空、だし?
上の空…?
私が…?
他に誰が居るのかしら?
貴女の恋人?
……。
うん?
…聖、は。
何、また浮つかれた?
…いいえ。
じゃあ…
ねぇ、江利子。
んー?
…やっぱり、何でもない。
夜の生活の悩み?
……………。
なんて。
今更だものねぇ、そんなの。
ち、ちがうの、そんなんじゃないのよ。
ま、良いじゃない、分かりやすくて。
と、この前話したっけね。
……。
あら?
……わかりやす、い。
蓉子?
……。
何、本当に浮つかれてるの?
……そんなんじゃ、
でも、不安?
……。
浮つく、と言ってもアレの場合、貴女にやきもちを妬かせたいと言う子供の駄々みたいなものなのだと思っていたけれど。
……。
深刻、かしら。
……疑っているわけでは無いの。
けど、不安なんでしょ?
…。
全く無い、とか?
……。
無いわけでは、無いのね。
…けど、ここ一週間
一週間?
……だから、その
……キスは、毎日?
………ええ。
一緒には寝てるのよね?
………う、ん。
……。
あ、甘えてはくるのだけど…その、
あー、蓉子。
……。
面倒だから、いっそ、誘ってみなさい。
………は?
したいなら。
そ、そういうわけ、じゃ…っ
じゃ、何?
大体、蓉子は受身すぎるのよ。
もっと積極的にしても良いんじゃないの。
な、なんでそんなに棒読みなのよ。
案外、待ってるのかも知れないわよー、アレの事だからー。
……。
いつも私ばっかり、とか何とかでー。
…。
思うトコ、あるんでしょ。
はい、そういうわけでこの話はお仕舞い。
え、江利子…。
で。
一寸、良いかしら。
え、なに…?
なんだかんだで貴女達とは付き合いが長いけれど。
そ、そうね。
おかげで、友達から紆余曲折を経て恋人同士になって、
うっかり同棲までし始めて、新婚気分な貴女達を誰よりも近くで見てきているわけだけれど。
……。
まぁ、最初はね、それなりに面白かったのだけれど。
…面白い、ね。
最近はお腹いっぱいなのよね、私。
……。
だから、ここで一つ。
蓉子も誰かと浮気してみるってのはどうかしら?
は、はぁ…?!
そしたら多分、聖がした時以上に修羅場ってくれそうじゃない。
い、いやよ、そんなの…!
あら、そう?
たまには相手を変えるのも新せ
絶対、嫌!
あらあら。
あらあら、じゃないわ!
何を言い出すのよ、江利子!
はいはい。
蓉子は聖を一番に愛しているものね。
浮気なんて、そんなの…!
聖以外、考えられないのよね、蓉子は。
私は聖を
じゃ、良いじゃない。
良くない!
浮気なんて…!
浮気、の話はもう終わったの。
は…?
所詮、戯言だし。
……。
それで、蓉子。
……何よ。
親友二人の夜の生活の相談を受ける気持ちって、どんなものか、分かるかしら?
……。
私と蓉子、私と聖、は親友だけれど。
蓉子と聖は親友では無くて恋人同士。
ねぇ?
ねぇ、と言われても…。
最初こそ、いじりがいがあったけど。
蓉子なんて直ぐに、存外聖もだったけど、顔に出たし。
……。
それが、ねぇ。
今となっては一週間ご無沙汰って話だものねぇ。
………。
まぁ、顔に出るところはやっぱり変わってないのだけど。
直ぐ赤くなるし。
……江利子。
ま、たまにはねだってみれば良いのよね。
屹度、と言うか絶対、喜ぶから。
……。
あー、見える、見えるわ、アレが尻尾をブンブン振っている姿が。
せ、聖は犬では無いわ…。
似たようなものでしょ。
大体、夜の生活なんて本能に基づくところが大きいんだから。
…………。
−毎回、このザマなのよ。(俺屍版聖蓉+江利子)
蓉子!
え?
見せて!
早く!
え、なにを
手の甲!
え、あ。
やっぱり。
…。
何で黙ってるのさ!
ただのかすり傷じゃない。
蓉子は人には言うくせに、自分の事となると疎かになるんだ。
騒ぐ程の傷じゃないもの。
大袈裟よ。
血が滲んでるじゃない!
これくらい、大丈夫だから。
騒がないでよ。
ちゃんと治さないと。
先は未だ長いのよ。
こんなかすり傷くらいで
治せ、泉げ
聖。
……。
貴女こそ、怪我してるでしょう?
見せて。
こんなの、どうってことない。
私の傷より、度合いは高いわ。
怪我は怪我だよ。
度合いも何も無い。
…治せ、
蓉子!
だって、痛いでしょう?
それは蓉子も同じでしょや!
私は痛くないもの。
私だって平気だよ。
けれどこれは痕が残るわ。
蓉子だって。
私のはただのかすり傷だもの。
重要なのは痕が残る残らないじゃない。
私の蓉子が怪我をしたって事なんだよ、どうして分かんないのさ。
私の、て。
私は貴女の所有物ではないわ。
所有物とかじゃなくて。
あーもう、蓉子のわからんちん!
それは聖じゃないの!
いーや、蓉子だね!
いいえ、聖よ!
こんなに血が滲んでいるのに、強がってるのは誰さ!
強がってなんかいないわ!
聖だって本当は痛いんでしょう?!
平気だって言ってるじゃん!
それより蓉子だよ!
どうして貴女は然うなのよ!
本当に痕が残ったら
んなの、どうってコトないって言ってるじゃんか!
私が気にするのよ!!!
お、わ。
私がどんな思いで貴女の躰に触るか分かってるの!?
知らないうちに痕を残して!いつの間にか数を増やして!
私がどんな思いで…!
…よ、蓉子。
この間だって増えてたわ…。
だけど、何でもないよ、って。
貴女、いつも言うのよ。
…。
お願いだから、あまり心配させないで。
貴女が私の知らないところで傷付くのは嫌なのよ…。
……え、と。
じゃ、こうしよう。
…?
聖…?
私が蓉子の傷を治すから、蓉子は私のを治して。
私のは大丈夫だから
私が嫌なんだって。
蓉子なら分かるでしょう?
……。
だから、そうしよう。
先の事より、今が大事だよ。
…けど、これくらいで
いざとなったら薬もある。
だから、ね。
……
私も蓉子が怪我してるの、やだよ。
それから蓉子の綺麗な躰にこれ以上、痕が残るのも。
……聖。
だから。
あ…。
…血の味。
ば、ばか、当たり前でしょう。
早く傷が治るように。
術で治せば
でも、したかったの。
だけど汚いじゃない。
蓉子の血だもの、汚くなんか無いよ。
せ、聖…。
じゃ、私からね。
治せ、泉源氏。
……ありがとう。
うん。
聖、腕を。
はい、お願いします。
…治せ、泉源氏。
ん、あったかい。
どう?
うん、平気、痛くない。
ありがと、蓉子。
どういたしまして。
あまり無理をしては駄目よ。
蓉子もね。
あ、こら。
へっへー。
仮にも今は討伐中なのよ。
うん、だから少しだけ。
駄目。
離れて。
ん、もう一寸。
もう、せ
あーあー、こほん。
何だよ、でこちん。
そろそろ、良いかしらね。
先に進みたいんだけど。
え、ああ、そうね、行きましょう。
聖も離れて。
ちぇ、もう少しくっついてたかったな〜。
今は討伐中よ。
だからこそ、蓉子分を補給しないとね。
元気の源、だから。
莫迦な事を言ってないで、行くわよ。
じゃ、ちみっとだけ手繋ご?
ばか。
繋いでたら何かあった時に動きづらいじゃないの。
へーきへーき。
この辺りの鬼は粗方片付けたから。
こら、聖。
ほんの一寸で良いの。
ね、ね?
…もう。
あーあー。
だから何だよ、でこちん。
家に帰ってからやりやがれ色惚けども、て口にしても良いものかしら。
−角度がストライクでございました。(聖蓉)
聖。
んー?
ボタン、取れかかってる。
え、どこの?
右手の袖の。
…ありゃ、本当だ。
そのままだと取れてしまうわ。
かな、やっぱ。
貸して。
うん?
縫ってあげる。
え、ほんと?
ええ。
いつもだったら自分で縫いなさい、とか言いそうなのに〜?
それで良いなら、構わないわよ。
ううん、蓉子が良い。
縫って縫って。
じゃ、じっとしててね。
え、このまま?
然うだけど。
何か問題でも?
いや、脱いだ方が良いかな、と。
…こんなところで?
だよね、うん。
先ずはボタンを取るから。
はーい。
…。
だけど。
そんなの持ち歩いているなんて、流石蓉子だよね。
…普通だと思うけれど。
そうかなぁ。
寧ろ、貴女は持たなさすぎ。
身軽の方が良いじゃん。
せめて、財布を入れる鞄ぐらい持ちなさいよ。
ポケットに突っ込んでいるんじゃなくて。
今日は持ってるよ。
今日は私が言ったからでしょ。
そうだっけ。
そうよ。
これから縫うから動かないで。
あい。
…。
あー…。
…取れないように、何度か縫っておくから。
うん、ありがと。
…。
あー……。
…何、間抜けな声を出して。
いや、蓉子は良いお嫁さんになるなぁと思って。
ご飯も美味しいし。
……それはありがとう。
あれ、動じない?
…どうして。
誰のお嫁さんか分かってる?
…さぁ、誰のでしょうね。
それは勿論、聖さんのお嫁さんだよ。
…はいはい、そうだったわね。
ありゃ、全然?
…前にも聞いたもの。
本気だよ?
…先ずは大学を卒業する方が先。
本気だからね?
…玉止め、するから。
む、ぅ…?
……。
おぅ、わ…。
…今度は、何。
蓉子、今、鋏使わなかった。
使わなかったけど…はい、お仕舞い。
動いて良いわよ。
………。
聖?
……やっば。
?
きた。
何が?
ドキューン、て。
…は?
糸を歯で…。
あぁ。
つい、やってしまったのだけど…ごめんなさい、嫌だった?
いや、寧ろ…。
…聖?
仕草が、すっごい、色っぽかった。
………。
やばいやばいやばい。
ば、ばか。
何を言っているのよ。
上から見てたもんだから、角度がね、余計たまんなかったのよ。
ああもう、どうしよう。
し、知らないわよ。
蓉子、責任とって。
この衝動、何とかして。
知らないって言ってるでしょ…っ
いや、だって、ああ…!
ここが公衆の面前で無かったら今直ぐ抱っこして寧ろ押し倒してその唇にち
恥ずかしいから止めて…っ
−Un croissant de lune.(聖蓉)
見て、聖。
…。
三日月。
……そーだね。
きれいね。
…うん。。
雲もひとつも無いし。
……うん。
何より、空気が澄んでいるからかしらね。
……。
ねぇ、聖。
……うん。
…。
…。
聖。
……なに。
ずっと会えないわけではないでしょう?
…でもまた会えない。
明日起きたら蓉子はもう居ない。
お互い、学生。
学業を疎かには出来ないでしょう?
バイトだってあるし。
……。
聖、そんな顔しないで。
…わたし、は。
……。
ずっと、一緒に居たいだけなのに…。
……聖。
毎日、毎日、同じベッドで眠りたいだけなのに…。
……。
なのに…。
聖……。
会えないのは…蓉子が居ないのは、淋しいよ。
…どうしたの?
今日は一段と愚図るわね…?
…茶化さないでよ。
ねぇ、聖。
……。
私、前にも言ったけれど。
私、ね?
…。
貴女とずっと一緒に居たいって、心から、思っているの。
……だったら。
だから。
私、ちゃんとした社会人になりたいのよ。
いいえ、なるのよ。
……。
勉強ばかりが全てじゃないけれど。
手段には出来るわ。
……。
貴女と将来を生きる為に。
生きる力を持ちたいの。
……。
だから
……だから今を犠牲にするの。
……。
蓉子といたい、いたいよ。
未来なんて、そんな不確かな事、口にしないでよ。
…。
先の事なんて分からない。
分からないのに…。
…そうね。
……。
でも、聖。
…でもなんて聞きたくない。
私はそれでも望んでいるの。
……。
貴女と歩く未来を。
…。
貴女は?
分からないから望めない?
……分かんないよ。
…。
そんなの、分かんないよ…。
……聖。
私はただ、蓉子が欲しいだけなんだよ…。
……うん。
蓉子…蓉子…。
……私も。
聖が欲しいわ…。
……。
…ずっと、欲しかった。
欲しくて、欲しくて…。
……一緒に、
やっと、聖が私を欲しいって思ってくれた。
だから、離さない。
……。
離さないわ、聖。
私は諦めない。
……。
その為になら、私は。
幾らでも頑張れる。
…。
だからって、今を犠牲にするつもりなんて毛頭無いわ。
聖が若しも然う思ってしまっているのなら……ごめんなさい。
…よーこ。
好きよ、聖。
よーこ…。
…誰よりも、貴女が好きよ。
……。
離したくないの…。
……うん。
……。
……。
……せい。
こんど…。
…。
いつ、逢える…?
…きれい。
…?
貴女の目…。
……誤魔化さないで。
…そうじゃないの。
でもきれいだったから…。
……。
私、貴女の目が好き…。
…目だけ?
……言葉で表現するだけでは足らないわ。
……。
聖…。
……好き。
…。
蓉子…好き…、好き…。
……うん。
ね、今度いつ逢える…逢えるの?
…。
ようこ…。
…次の週末、逢いに来て。
待てないよ。
夜、部屋に居るから…。
待てないよ、蓉子。
…夜には居るから。
だから…ん。
いる、から。
……。
ね…?
夕方には行く。
……。
待ってる。
…だからって。
明日は、だめよ…?
……知らないよ、そんなの。
どこまでいっても聖蓉サイトでございますよ、もう。
|