けっこんしき?


   うん。


   だから、そんなかっこうしてるの?


   うん。
   てつだい、しないといけないから。


   …。


   な、なに…。


   んーん。


   …。


   …えへへ。


   さやかちゃん?


   きょうこちゃん、かっこいいね。


   え?


   あのね…すごく、かっこいい。
   それに、すごくきれい。


   …。


   …。


   …へへ。


   ねぇ、あたしもついていっていい?
   けっこんしき、みてみたい。


   いいよ。


   ほんと?


   うん。
   でも、なかにははいれないとおもう。


   えー…。


   だから、みえるところにつれていってあげる。


   やった。


   あ。


   え?


   ほら、くるよ。


   …わぁ。


   …。


   ドレスじゃないんだ。


   しんぜんしき、だから。
   きものなんだよ。


   …。


   さやかちゃん?


   …きれい。


   ……。


   すごいすごい、きれいきれい。


   …でしょ?


   うん!


   ……。


   …ねぇ、きょうこちゃん。


   なに?


   きょうこちゃんがけっこんするときも、こんなかんじなの?


   けっこん……。


   ……。


   …わかんない。


   でも、おうちつぐんでしょ?


   うん。


   …。


   もう、いかなきゃ。
   いこ、さやかちゃん。


   …ね、きょうこちゃん。


   うん?


   となりに、たってもいい?


   となり?


   あたし、きょうこちゃんのとなりにたちたい。
   たって、あるきたい。


   ……。


   あ、あのね…。


   うん。


   あたし、きょうこちゃんの……。


   ……え。


   ……。


   え、え…。


   ……だめ?


   ……。


   ……。


   …いい、よ。


   ほんと…?!


   う、うん…。


   …うれしい!


   わ…。


   …ふふ。


   さ、さやかちゃん…。


   ……だいすき。









   …杏子ちゃん?


   ……。


   杏子。


   ……なに。


   大丈夫?杏子ちゃん。


   …ああ、なんでもないよ。
   まどか。


   でも、あんまり顔色が良くないよ…。


   …たいした事じゃない。


   美樹さやかの事を気にしているの。
   置いてきてしまったから。


   ……。


   杏子ちゃん、さやかちゃんのことが…。


   …泣いてるような、気がするんだ。


   ……。


   ……。


   …思い上がりも良いとこだよな。


   そんなこと…。


   …。


   それより、まどか。


   …え?


   あんたがまさか、魔法少女だったなんてさ。
   驚いたよ。


   …うん。


   ……。


   ずっと一人で?


   …ううん。
   最初はマミさんと一緒だったんだけど…。


   マミさん?


   巴マミ。
   私達より一学年上だった人よ。


   …だった?


   ……。


   まどか?


   …マミさんはもう、いないの。


   いない?
   どうして?


   …死んじゃった、から。


   死…。


   …戦いに慣れてない私の事、かばって。
   それで…。


   …そうか。


   さやかちゃんに聞いて欲しかった…でも、話せなくて。


   …ごめん。


   ううん、杏子ちゃんは悪くないよ…。
   もちろん、さやかちゃんも…。


   ……。


   それに今はほむらちゃんが一緒にいてくれるから。


   ……。


   …これからは杏子ちゃんも、いるから。
   一緒に戦えるから…。


   あんたも、大変だったな…。


   …あ。


   ……。


   杏子ちゃん……。


   …ちょっと、杏子。


   うん?


   ……。


   なんだよ、ほむら。
   怖い顔して。


   まどかの頭に気安く触らないで。


   あ?


   離せと言っているの。


   ああ。
   悪かったな、まどか。


   …ううん。
   杏子ちゃんの手って、とてもあったかいんだね。


   むしろ、熱いって言われるよ。


   さやかちゃんに?


   …うん。


   それに、とても優しい。


   …優しくなんか、ないさ。


   ううん…優しい。


   …。


   さやかちゃんが杏子ちゃんのこと好きなの、少しだけ分かる気がする…。


   まどか。


   …ほむらちゃん。


   ……。


   …さやかは。


   ……。


   ……。


   さやかは…。


   …ねぇ、杏子ちゃん。


   …。


   さやかちゃんのこと、大切…?


   ……。


   好き…?


   ……ああ、好きだよ。
   誰よりも、大切だよ…。


   だったら。


   …。


   言葉に、してあげて?


   …言葉、に。


   さやかちゃん、ずっと待ってたと思うから。


   …でも、さやかには。


   杏子ちゃんはそれでいいの?


   …あたしはもう、魔法少女なんだ。
   だから、


   そんなの、関係ない。
   そんなの、理由にならない。


   …。


   大事なのは杏子ちゃんの気持ちだよ。


   …。


   …ね。
   本当に、いいの…?


   …さやかが幸せになるなら、


   だったら、尚更だよ。


   …。


   …ちゃんと、言葉にしないと。
   ね、杏子ちゃん…。


   ……。


   …なんて、ごめんね。
   偉そうだね…。


   …いや、まどかの言うとおりだよ。


   ……。


   …さやかは小さい頃からの想いを、ずっと大事にしてくれてる。


   うん…。


   でも、それは…所詮、小さい頃の想いで。


   …。


   …独りになったあたしを放っておけないだけで。
   だから、一緒にいてくれるんだって…。


   …。


   時が来れば、さやかは…。


   ……。


   …あたしは、さやかに何をして、さやかの何を見てきたんだろう。


   杏子ちゃん。


   …なんだい、まどか。


   さやかちゃんのこと、好き?


   …ああ、好きだ。
   大好きだ…小さい頃から、ずっと。


   じゃあ…ね?


   …ああ、分かったよ。
   ほむら、悪い。


   …そんな事を話す為に集まったわけでは無いのに。


   分かってるよ。
   でも、今夜だけは。


   …仕方が無いわね。


   頑張ってね、杏子ちゃん。


   …おう。








   カレシ?


   そう!
   このたび、さやかちゃんにカレシが出来ました!


   ふぅん。


   反応薄ッ!


   だって、他に無いだろ。


   いやいや、ここはもっとだねぇ。
   えー?、とか、マジか!とかだねぇ。


   ……。


   あー、もしかして。
   ちょっと淋しいとか、思っちゃった?


   …。


   なーによぅ、そうならそうと言えばいいのに。
   杏子は素直じゃないなぁ。
   でも大丈夫、さやかちゃんは


   いや、別に。


   …え。


   思ってないよ、そんなこと。


   ……。


   良かったな、さやか。


   …。


   今日の晩飯はカレーうどんだ。
   シミ、作んなよ。


   ……。


   …と。
   なんだよ、さやか。


   …つまんない。


   は?


   つまんない!


   …意味が分かんねーぞ。


   だって。


   だって、なんだよ。
   と言うか、離れろ。
   作ってる最中だろ。


   ……なによ。


   さやか。


   ……ちゅーして。


   はぁ?


   してくれたら、離れる。


   …なんだそれ。


   して。


   …カレシにしてもらえ。


   杏子にして欲しいの。


   なんでだよ。


   して欲しいから。


   カレシ、出来たんだろ。
   だったら、あたしと


   杏子。


   …お前な。


   して、しーて。


   …意味わかんねー。


   ……。


   ……。


   …ほんとに、離れないんだから。


   はぁ。


   …なによ、タメイキなんて。


   あたしとはもう、しない方がいい。


   …なんでよ。


   なんでもだよ。


   ……。


   カレシが、出来たなら。


   …杏子は別だもん。


   ……。


   …杏子は。


   さやか。


   ……。


   良かったな。


   …ばか。


   ……。


   杏子の、ばか。
   おたんこなす、とーへんぼく。


   …分かったから、離れろって。


   してくれないから、離れない。


   …あー、そうかい。
   じゃあ、勝手に…


   ……ばか。


   ……。


   ……。


   …分かった。
   分かったから、一旦、離れろ。


   …やだ。


   おい。


   …離れたら、してくれない。


   離れてくれなきゃ、出来ないだろ…。


   …離れたくない。


   お前な…。


   …ぎゅうっとして。


   ……。


   …じゃなきゃ、いや。


   あー……。


   …。


   …分かった、してやる。
   してやるから…。


   ……。


   …さやか。


   ……きょうこ。


   ……。


   もっと、つよくがいい…。


   ……。


   きょうこ……。


   ……さやかは。


   ん……。


   ……本当、ばかだな。









   あ、おかえりーー!


   …。


   なんだ、思ってたより早かったのねぇ!


   ……。


   なによぅ、ポカーンとして。
   はっはーん、さては相当お腹すかせてるな?


   …さやか。


   今ね、パスタ茹でてるの。
   今日はなんと、さやかちゃん特製ナポリターンなのだ!


   ……。


   と言うか、杏子。
   ただいまは?


   …。


   た、だ、い、ま。


   …ただいま、さやか。


   うん、おかえり。
   杏子。


   ……。


   じゃあ、手洗ってきて。
   もう少ししたら、出来るから。


   ……。


   ナポリタンはアルデンテより、ちょっと柔らかめがいいよね。


   さやか。


   で、ちょっと甘めなの。


   さやか。


   杏子はナポリタン、好きよねぇ。
   昔、あたしのお母さんが作ったのおいしそうに食べてたし。
   あたしの分まで、食べようとしちゃってさ。


   さやか。


   お母さんと同じのは作れないけど、でも、さやかちゃん特製の


   さやか!


   ……おいしい、から。


   さやか。


   ……おかわり、出来るように。
   たくさん、作るから……。


   ……。


   ……だから…だから…。


   さやか。


   ……。


   …こっち、向いて。


   ……いや。


   ……。


   …いや。


   …どうして?


   だって…。


   ……。


   …だっ、て。


   分かった。
   じゃあ、向かせてやる。


   あ……。


   ……。


   ……や、だ。


   さやか…。


   …ごはん、つくってるのに。


   ……。


   きょうこの、ばか…。


   ……目、赤い。


   ちがうもん…。


   …何が。


   ちがうの…んぅ。


   ……。


   ……きょう、こ。


   さやか。


   ……。


   …ごめんな。


   ……。


   ……ごめんな、さやか。
   ばかは、あたしだった…。


   ……。


   …好きだ。


   ……。


   …大好きだ、さやか。


   ……。


   さやか…。


   ……、…。


   …?
   さやか…?


   ……、じゃない。


   ……。


   ……あたしの好きは。


   …。


   あたしの、好きは……。


   …キス、したい。


   ぁ…。


   ……許されるなら、その先も。


   ……。


   ……あたしの好きは、そういう好きなんだ。


   ……。


   さやかと、同じだったら……嬉しい。


   ……ほんと、う?


   ああ…本当だ。


   ほんとうに、ほんとう…?


   さやか…好きだ、大好きだ。
   小さい頃から、ずっと……。


   ……。


   …誰にも渡さない、渡したくない。
   お前は、あたしと…。


   ……い。


   ん…?


   ……おそいよ、ばか。


   ああ、ごめん…。


   ばか……ばかぁ……。








   きょうこちゃんのかみのけって、きれいだよね。


   …?


   ながくて、すごく、きれい。
   いいな。


   …。


   あたしね、ながいのがにあわないの。
   だから、うらやましい。


   …なんで?


   おとこのこ、みたいだから。


   ……。


   いいな、きょうこちゃん…。


   だれが、いったの?


   え?


   さやかちゃんは、おんなのこだよ。


   …。


   かみのけだって、すごくきれいだよ。
   きらきらしてて。


   きらきら?


   おひさまのひかりがあたると、いつも、きらきらしてる。
   すごく、きれい。


   でもあたし、


   おひさまがあたらなくても、さらさらしてて、きれい。
   すっごく、きれい。


   …。


   みじかくても、ながくなくても、さやかちゃんはおんなのこだよ。
   おとこのこじゃない。


   …でもあたし、かわいくない。


   ううん。
   さやかちゃんは、かわいいよ。


   ……。


   かわいい、おんなのこだよ。


   …!


   ね?


   ……。


   …?


   ……。


   さやかちゃん、どうしたの?


   ……。


   さやかちゃん?


   ……。


   ねぇ、だいじょうぶ?


   ……。


   さやかちゃん…?









   …杏子の爪って。


   …。


   かわいいよね。


   …爪にかわいいなんて、


   あるよ。
   丸くて、かわいい。


   …よく、分からない。


   ね、左手の…中指。
   ネイルみたいだね…。


   …そんなんじゃないよ。


   でも、かわいい…。


   ……。


   …杏子。


   ……。


   …杏子の、躰。


   ……。


   …傷、いつからか消えなくなっちゃったね。


   ……。


   …杏子?


   苦手、なんだ…。


   …。


   治すの…。


   …うん、知ってる。
   大体、杏子は不器用だから…。


   …さやかには言われたくない。


   ……。


   …あんまり、見るなよ。


   恥ずかしいの?


   ……。


   でも、杏子だって…。


   …う。


   ……ずっとあたしのカラダ、見てるくせに。


   ……。


   …あんまり、見ないで。


   無理だ…。


   …どうして。


   どうしても、だよ…。


   ……じゃあ、あたしも。


   ……。


   …杏子の背中、筋肉ついてる。


   自分では、分からない…。


   …背中だけじゃない。
   肩も、腕も…お腹も、足も。


   ……。


   …ずっと、杏子は戦ってきたんだね。
   命を、かけて…ずっと。


   ……さやか。


   でも…。


   …ぅ。


   ……(ここ)は、やわらかい。


   さや、か…。


   かわいい…。


   ……。


   …ねぇ、杏子。


   ……。


   …あたし、あんたに触りたい。
   たくさん、触りたい…。


   …う、ん。


   ずっと、ずぅっと、思ってたの…。


   ……。


   …触って欲しいって。
   ずっと、思ってたの…。


   ……あぁ。


   あぁ、てなによ…。


   …ごめんな、さやか。


   ばか…。


   ……。


   …ねぇ、杏子は?


   ……。


   杏子は、あたしに…。


   …言ったろ。


   ん、きょうこ…。


   …許されるならその先も、って。


   ……。


   さやか…あたしは。


   …。


   …あたしは、あんたに触りたい。
   たくさん、触って……触って、欲しい。


   …。


   …触らせて。


   触って…。


   …触って。


   触らせて…。


   ……。


   ……。


   …さやか。


   ねぇ…。


   …なに?


   きもち、いいね…。


   …うん、きもちいいね。


   ……。


   ……さやかの、胸。


   ん……。


   すごい、やわらかい…きもちいい。


   …ふふ。


   …?


   …ちょっと、くすぐったいかも。


   ……。


   あ、ん…。


   …。


   ……やだ…は、たてないで…。


   …あ。


   ……。


   ……。


   …やめないでよ、ばか。


   だって…。


   ……。


   …どうして、いいか、わからない。


   そのさきもって、いったくせに…。


   それ、は…。


   ……。


   ……。


   …ね、二人で。


   ……。


   このさきの、こと…。


   ……。


   ふたりで、しっていこう…?


   …さやか。


   ね…あたしのこと、すき…?


   …うん、すき。


   あたしも、きょうこがすき…ちいさいころからずっと、ずっとすきだった…。


   さやか……。


   ねぇ、すき…だいすき…。


   …う、ん。


   ……。


   ……さやか。


   きょうこ…。


   …さやか…さやか…。


   きょうこ…きょぅ、こ…。


   ……すきだ、さやか…だいすきだ…。


   うん…あたしも、すき…だいすき…。








   ……。


   …あれ?


   …。


   さやかちゃん…?


   …あ。


   さやかちゃん、だよね?


   …う、うん。


   おじさんとおばさんはどうしたの?
   ひとりできたの?


   …あ、あたし!


   わ…。


   ……。


   …あ。


   ……。


   ……。


   …あ、あのね。


   う、うん…。


   あたし…。


   ……。


   …へん、だよね。


   …え?


   きも、の……。


   そ、そんなことない…!


   ……。


   そんなこと、ないよ…。


   …でも、おんなのこみたいだし。


   さやかちゃんはおんなのこだよ。


   …。


   その、すごくにあってる…。


   …ほんとう?


   うん…すごく、かわいい。


   ……。


   …そのかみかざり、さやかちゃんによくにあってる。


   …。


   ……。


   …あのね。


   …うん。


   きょうこちゃんに、みて、ほしかったの…。


   あ、あたしに…?


   ……。


   ……。


   …だから、おかあさんにおねがいしたの。


   そう、なんだ…。


   ……。


   …さやかちゃん。


   ……あたし。


   …。


   …にあわないって、いわれて。
   おとこが、おんなみたいなかっこう、するなって…。


   だれに?


   ……。


   そんなやつ、あたしがゆるさない。


   …きょうこちゃん。


   あ……。


   …ありがとう。
   うれしい…。


   さ、さやかちゃ……。


   ……。


   ……。


   ……きょうこちゃん。


   ……。


   ……だいすき。









   ……。


   …優しいものは、とても怖いから。


   ……。


   泣いてしまう、貴女は優しいから…。


   ……。


   誰にも傷が付かないようにと…。


   …。


   …一人でなんて、踊らないで。


   ……。


   どうか、私とワルツを…。


   ……。


   …どうか、私とワルツを。


   ……。


   …ごめんね。


   ……なんでだい?


   だって…。


   …いいよ。


   よくない…。


   …。


   ……生理、でも。


   …。


   …続けても、良かったんだよ。


   だめだ。


   ……。


   …だめだよ、さやか。


   でも、あたしは…。


   ……。


   …あたしは、続けて欲しかった。
   だって…。


   …。


   …ずっと、待ってたから。
   ずっと、して欲しかったから…。


   ねぇ、さやか。


   …ん。


   待たせたあたしが言うのもなんだけど…さ。


   …本当だよ。


   うぐ…。


   …ばか、ばーーか。
   こんなかわいいさやかちゃんを待たせるなんて、どうかしてるんだ…。


   ……本当だな。


   え…。


   …だから、坊やなんかに。


   そ、それは、あたしが…


   …いや、あたしが悪い。


   ……。


   もっと、早く…。


   …どうしてそんなに優しいの。


   さやか…。


   …あたし、こんなに汚いのに。


   汚くなんか


   ううん。


   …さやか。


   嫉妬、して欲しかったの…。
   やきもち、焼いて欲しかったの…。


   …。


   あたしのこと、誰にも取られたくないって…少しでもいいから、思って欲しかったの。


   ……。


   …あの時も。


   あの時…?


   …モモちゃん。


   ……。


   …置いていかれる、こと。
   それは、とても淋しいことだって…。


   …。


   …でも、あたし。


   モモは。


   …。


   …さやかのこと、好きだったよ。


   ……。


   あの子は…酷い人見知りで。
   家族以外に懐くこと、なかったんだ。


   …。


   …だけど、さやかのことはお姉ちゃんって。
   さやかと遊んでる時は、本当に、楽しそうだった…。


   …。


   あの子は…いつも、さやかが遊びに来るのを待ってた。
   だから、あの子はただ、さやかと遊びたかったんだ。


   ……。


   …あたしを取った、なんて。
   モモは屹度、思ってなかった…。


   …でも…でも…。


   モモは、さやかのことを恨んではいない。


   …。


   …恨んでなんか、いない。
   だって、あたしの妹だから。


   ……。


   あたし達は…あんたが本当に好きだから。


   ……。


   ほら、姉妹だし…好みが、似てるのかもしれない。


   …なによ、それ。


   う…。


   …杏子の、ばか。


   ……。


   これ以上、好きになったら…あたし、おかしくなっちゃうじゃない。


   …それは、困るな。


   そうよ…。


   …でも、それでもあたしは構わない。


   あ…。


   …ずぅっと、そばにいるよ。


   ……。


   ……どんなさやかでも、あたしは好きだから。


   ……。


   …あたしは、女だから。


   …。


   …でももう、そんなのもどうでも良い。
   最初から、どうでも良かったんだ…。


   ねぇ、杏子…。


   …うん?


   赤ちゃんって、出来るかな…。


   …え?


   だって杏子、魔法少女じゃない…?


   …そう、だけど。


   だったら、魔法で……さ?


   いや、それは……。


   絶対、無理って…言える?


   ……どうだろう。


   魔法があるんだから…奇跡だって、あるんだよ。


   …。


   …あたしの子供、見たいんでしょ?


   ……うん、見たい。


   あたしも杏子の子供、見たいな…。


   ……。


   …ねぇ、見せてよ。


   さやか…。


   望めば…奇跡はきっと、起きるんだよ。
   起こせるんだよ…。


   …そういうものか。


   そういうもの、なの…。


   …さやかが、言うなら。


   うん…。


   …なぁ、さやか。


   なぁに…きょうこ。


   …終わったら。


   ……。


   終わったら…続き、しよう。


   …うん。
   絶対、だからね…。


   …おう、絶対だ。


   ……。


   ……。


   …ね、杏子。


   なんだい…?


   …お腹、すいてない?


   おなか…。


   …そう、お腹。


   ……あ。


   ……。


   あー……。


   …ふふ。


   さやかが言うからだぞ…。


   ね…さやかちゃん特製ナポリタン、食べる?


   …。


   …食べない?


   ……食べる。
   食べたい…。


   ん、りょーかい…。








   おねえちゃん!


   …うん?


   きょう、さやかちゃん、くる?
   くる?


   きょうはこないんじゃないかな。


   えー。


   きのう、きたでしょ?


   モモ、さやかちゃんとあそびたい。


   きょうはあたしとあそぼ、モモ。


   えーー、さやかちゃんとあそぶー。


   そんなこと、いったって。


   さやかちゃん、さやかちゃん。


   モモ、さやかちゃんはこのまちにすんでないから、なかなかこられないんだよ。


   むー。


   モモはさやかちゃんがすきだね。


   うん、すき!
   おねえちゃんは?


   あたしは…。


   あ!


   え?


   さやかちゃんだー!


   え。


   さやかちゃん、さやかちゃん!


   あ、モモ…。





   きょうこちゃん!





   さやかおねえちゃん、あそぼ!


   うん、あそぼ。モモちゃん。


   さやかちゃん。


   えへへ、きちゃった。


   でも


   あのね、あしたおやすみなの。


   う、うん。


   だからおとまり、してもいいって!


   …え、ほんと?


   うん!


   …。


   …ね、きょうこちゃん。


   あ…。


   …だいすき。


   あ、う。


   あー、おねえちゃんばっかりずるいー。


   モ、モモ。


   モモは?モモは?


   モモちゃんも、すき。


   モモもすきー!


   ね、きょうこちゃんは?


   …え。


   あたしのこと…すき?


   あ、あたしは…


   …。


   …す、すき。


   ……。


   あ、さやかちゃ…ん。


   ……。


   あーー!


   えへへ…やくそくの、きす。


   ……。


   …あたし、おおきくなったら、きょうこちゃんのおよめさんになるの。


   う、ん…。


   さやかちゃん、おねえちゃんのおよめさんになるの?


   うん。


   えー、おねえちゃんずるいー。


   モ、モモ…!









   ……。


   ……。


   …杏子。


   ……。


   …時間、このまま止まってしまえばいいのに。


   ……。


   ……杏子。


   さやか。


   …。


   …必ず、守る。


   ……。


   行こう、さやか。
   避難所まで…


   …待って。


   ……。


   もう、少しだけ…。


   ……。


   …お願い、もう少しだけ。


   ……。


   ……。


   …少しの間、一人にするけど。


   …。


   あたしは必ず、帰ってくるから。


   ……。


   …だから。
   待ってて。


   絶対、だから。


   …。


   …絶対、なんだから。


   うん…絶対、だ。


   ……。


   ……。


   ……約束。


   …。


   あたし、杏子のお嫁さんになるの。


   …うん。


   ちゃんと、して。


   …うん、するよ。
   戻ってきたら…結婚、しよう。
   本当の家族になろう。


   …。


   さやか、あたしのお嫁さんになってください。


   …はい。


   ……。


   …約束のキス、は。


   分かってる…。


   ……。


   ……さやか。


   杏子…きょうこ…。


   …。


   離れたくない…はなれたくないよぉ…。


   …さやか…さやか…。


   ……。


   ……。


   ……。


   …必ず、守るから。
   約束、守るから…。


   ……かえってきたら。


   …。


   …また、だいて。
   つよく、だいて…なんど、でも。


   ああ…さやかも。


   ……。


   …さぁ、行こう。
   さやか…。








   はぁ…はぁ…。


   …ちくしょう。


   ……。


   これ以上先に行かれたら、避難所が、さやかが…!


   止めないと、絶対に止めないと…!


   ……。


   ほむら、なんか良い考えはないのかよ!


   ……。


   ほむらちゃん…。


   ……。


   ほむら…!


   ……。


   くそ…ッ!


   あ、杏子ちゃん…!


   …杏子。


   これ以上、行かせるかぁぁぁ…ッ!!


   杏子ちゃん、無茶だよ…ッ!
   戻って…ッ!!


   …。


   ほむらちゃん、わたしたちも…ッ!


   ……。


   ほむらちゃん…ッ!


   …く。


   うおぉぉぉぉぉぉおお…ッ!


   杏子ちゃん…ッ!


   …!
   だめ、まどか…!


   行かせるか、行かせるかぁぁぁぁぁぁぁぁ…ッ!!!


   ……だめ。


   まどか、戻って…戻っ


   だめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…ッ!!!


   まどかぁぁぁぁぁぁ……ッ!!








   ひと、ふた、み、よ、いつ、


   ……。


   む、なな、や、ここの、たり。


   ……。


   ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ。


   ね。


   うん?


   それ、なに?


   それ?


   たまに、いってることば。


   …。


   ふるべ、ゆらゆらと、ふるべ?


   ああ。
   あのね。


   うん。


   ふるのことって、いうんだよ。


   ふるの、こと?


   ことだまなんだ。


   ことだま?
   ことだまって、なぁに?


   えと、ことばにはちからがやどるの。


   ちから?
   やどる?


   うん。


   …。


   ことばにはね、ふしぎなちからがあるんだって。
   とうさんがいってた。


   ふしぎなちから…。


   ことばにすると、それがかなうこともあるんだ。


   じゃあ。


   うん?


   あたし、きょうこちゃんのおよめさんになる!


   …。


   いっぱいいっぱい、ことばにするね。


   …しなくたって。
   なれる、よ…。









   ……。


   ……。


   ……ひと…ふた…み…よ…いつ…、


   ……。


   む…なな…や…ここの…たり。


   ……。


   …ふるべ…ゆらゆらと…ふるべ…。


   ……。


   …杏子。


   ……。


   …帰ってきて。


   ……。


   早く、帰ってきて…。


   ……。


   …お願い、だから。


   ……。


   あたしから、杏子を取らないで…。


   ……。


   …あたしから、杏子を奪わないで。


   ……。


   …あたしを、独りにしないで。


   ……。


   …ひと、ふた、み、よ、いつ、


   ……。


   む、なな、や、ここの、たり…。


   ……。


   …ふるべ…、ゆらゆらと、…ふるべ。


   美樹さやか。


   ……。


   君はいつまでそうしているつもりだい?


   …なに、あんた。
   本当、なんなの。


   君の願いは


   あんたなんか、いらない。
   あたしが欲しいのは


   佐倉杏子だろう?


   ……。


   君の願い。
   僕なら容易く叶えてあげられるよ。


   …うるさい。


   分からないなぁ。
   どうしてそんなに頑ななんだい?


   …。


   傍に居たいのだろう?
   愛しているのだろう?
   だったら、その願いを叶えれば良いじゃないか。


   ……。


   ……。


   ……。


   一つ、教えてあげようか。


   …うるさいって、言ってるのよ。


   佐倉杏子はワルプルギスの夜に勝てない。


   …!


   正確には、佐倉杏子達と言うべきかな。


   嘘言わないで!


   嘘?


   杏子は帰ってくるって、あたしに言ったの。
   約束、してくれたの。


   それがなんなんだい?
   事実は変わらないよ?


   …。


   彼女達が死ねば、この町は間違いなく壊滅するだろう。
   でも君にとって重要な事は、そんな事じゃないよね。


   …嘘、…嘘よ。


   人間は認めたくない事実を前にした時、いつだって嘘だと言うね。
   何故なんだい?


   ……。


   美樹さやか。


   ……。


   佐倉杏子は君を守る為に僕と契約した。
   いつまでも、君の傍に在りたいと言う願いと共にね。


   …あたし、と。


   君はどうなのかな。


   ……杏子、は。


   ……。


   本当、に…。


   死ぬだろうね。


   ……。


   ……。


   ……、を。


   ……。


   …守る力、を。








   だめだ。


   …。


   絶対に、だめだ。
   そんなの、あたしが許さない。


   …なんでよ。


   なんでもだ。


   …。


   さやかは、そのままでいい。
   いて、欲しいんだ。


   …そんなの、杏子の勝手な思いじゃない。


   さやか。


   あたしが


   だめだ…!


   …!


   …頼むよ、さやか。


   どうして。


   …。


   どうしてよ!


   …。


   杏子、ねぇ。


   …さやかには、家族がいる。
   今は離れているけど、でも、ちゃんといる。


   …。


   …うまいごはんを食って、あったかいベッドで眠って。
   学校に行けば、友達がいる。


   …。


   …さやか。


   …。


   お前は…お前には戦いなんて似合わない。
   似合ってなんか、欲しくない。


   …杏子だって。


   …。


   杏子だって、似合わないじゃない!


   …。


   …いっぱい、怪我をして。
   生きるか死ぬかの戦いを、毎晩のように続けて。
   そんなの、杏子には…。


   …もう、どうしようもないんだ。


   だから、あたしが


   どうしようもないけど、後悔もしてないんだ。


   …。


   …後悔は、ない。


   ばか。


   …。


   …杏子はずっと、一人で戦ってる。
   これからも、ずっと。


   …。


   それで、あたしが知らないとこで死んじゃうんだ。
   勝手に、どっかで、死んじゃうつもりなんだ…!


   さやか。


   …あたしを、置いて。
   後悔はない、なんて、言って。


   あたしは


   魔法少女になりたいの。


   …だめだ。


   どうしたら、なれるの。
   ねぇ。


   だめだ、さやか。
   そんなこと、言うな。


   いや。


   さやか。


   あたしが魔法少女になれば、杏子は一人じゃなくなる。
   一人でいっぱい傷を作って、いっぱい血を流さなくてもよくなる。


   だとしても、


   あたしは!


   …。


   …あたしは。


   さやか…。


   …杏子と一緒に、いたいの。
   置いていかれたく、ないの。


   …っ。


   …だから、お願い。
   言って、杏子。


   …いやだ。


   杏子…あたしに、魔法少女になれって言って。


   いやだ。


   …杏子。


   あたしは…あたしは、さやかに傷付いて欲しくないんだよ。
   血なんか、流して欲しくないんだよ…。


   ……。


   頼む、頼むから…魔法少女なんかになりたいなんて、言わないで。


   ……杏子。


   お願いだから……。


   …ずるいよ。


   ……。


   杏子はずるいよ……。


   ……命をかけて、なんて。


   …。


   しなくていいなら、それでいいんだよ…。


   ……。


   …なぁ、さやか?


   ……。


   お前は、独りじゃないだろ…?
   心配してくれる家族や友達が、いるだろ…?
   そんな人達を


   あんたにだって。
   あんたにだって、いるじゃない…!


   …。


   …どうして、分からないの。
   どうして、分かってくれないの…。


   ……。


   あたしが、どんな思いで……。


   …さやか。


   ……。


   好きだよ、さやか。


   …ぁ。


   ……だから、お願い。


   …。


   一生の、お願いだ…どうか、聞いて。









   …一、…二、…三、…四、…五、


   ……。


   六…七…八…九…十…、


   ……。


   …布留部…由良由良止…、…布留部…。


   ……う、ぅ。


   ……。


   …さや、か。


   ……。


   さやか……。


   …やっと、起きた。


   ……。


   ねぼすけ杏子。
   さっさと起きやがれ。


   ……。


   杏子。


   ……その、かっこう、は。


   …。


   さやか…まさか、おまえ…。


   …へへ、似合う?


   ばかやろう…。


   …そんなに変かな、あたし。


   なんで…、なんで…。


   ……。


   なんでだよ、さやか…なんで…。


   …遅いくらい、だったんだよ。


   ……。


   …ね、杏子。
   あたしね、今とても…。


   ……。


   …だから。
   お願い、そんな顔しないで…?


   でも…でも…。


   …あたしが、決めたんだよ。
   あたしが、そうしたかったんだよ…。


   ……。


   それがあたしの叶えたい願い、だったんだよ…。


   さや、か…。


   …ごめんね、杏子。
   一生のお願い、だったのにね…。


   ……。


   …ね、杏子。


   ……。


   これからは、このさやかちゃんが…


   …。


   …ずっと、隣にいるから。


   ……。


   どんな怪我をしたって、治してあげるから。


   …さやか…さやか…。


   あたしが、治してあげるから……。


   ……。


   …だからお願い、泣かないで。








   見滝原…。


   ……。


   …みんな、壊れちゃったな。
   壊されちゃったな…。


   うん…。


   ……まどかは。


   ……。


   ほむらは…どうなったんだろう。


   …あたしが来た時には。


   ……。


   少なくとも、近くにはいなかった…。


   まどかは…あたしを、かばったんだ。


   ……。


   でも、あの魔女の力はまどかの小さな体で受け止めきれるものじゃなかった…。
   なかったんだ…。


   ……。


   …ごめんな、さやか。


   ……。


   お前の、友達だったのに…。


   ……。


   ……。


   …避難所、みんな、壊れちゃった。
   みんな、死んじゃった…。


   …うん。


   学校の友達も…。


   ……うん。


   ……。


   ……。


   …ワルプルギスの夜は。


   ……。


   見滝原を壊して、どこに、行くのかな…。


   ……。


   …どこに、行きたいのかな。


   分からない…分からないけど。
   一つだけ分かる事は…あの魔女が行くところはみんな、壊れちまうって事だ。


   …誰も、止められないのかな。


   あの魔女より強い魔法少女がいれば…な。


   …いるかな。


   もしかしたら、どこかにいるかもな…。


   …。


   …さやか。


   ねぇ、杏子…これから、どうする?


   そうだな…。


   …お腹、すいた?


   お前な…この状況で、それはないんじゃないか?


   ないの?


   …言われると、へってくるだろ。


   人間は。


   …。


   …どんな状況でも、お腹すくんだって。
   悲しいくらいに。


   ……。


   なんて。


   …分かる気がするよ。


   …。


   …家族が死んで。
   空っぽになってても……お腹は、すいたから。


   …。


   …お前と一緒に食ったごはんは、おいしかった。
   今でも忘れない…忘れられない。


   ……。


   …とりあえず、疲れた。
   どっかで、休みたい。


   …どっかって、どこ?


   どこでもいいよ。
   お前がいれば。


   …。


   …お前さえ、いてくれれば。


   ……。


   …あたしの世界は、ちっぽけなもんだ。
   お前がいる場所が、それなんだから。
   そう…小さい頃から、ずっと。


   ……。


   …そのちっぽけな世界さえ、守れればそれでいい。
   これからも。


   …正義の、味方。


   なんてもんじゃ、ないさ。


   …それでも。


   …。


   杏子は、正義の味方だよ。


   …。


   …小さい頃から、あたしだけの正義の味方。


   ……。


   …もう一度、聞くけど。


   ん…。


   …これから、どうする?


   そうだな…。


   …。


   ……結婚、しようか。


   …。


   約束した形とは違うものになっちまったけど……。


   …。


   しよう…さやか。


   …うん。


   じゃあ……。


   …?
   杏子…?


   ……。


   え……。


   …こんな魔法の使い方も、悪くないと思うんだ。


   ……。


   ……本物じゃ、ないけどさ。


   ……。


   ……。


   …なんか場違いだね、あたし。


   かもな…。


   …みんな、壊れちゃってるのに。
   あたし、すごい浮いてる…。


   …。


   …と言うか。


   うん?


   杏子も、合わせてよ。


   …あたしも?


   あたしだけじゃ、いや。


   ……。


   杏子。


   …分かった。
   じゃあ…。


   ……。


   …これで、どうだい?


   て、それ。


   ……。


   …神主さんの格好じゃない。


   礼装、なんだけど…変、か?


   …変、じゃない。
   似合ってるし、格好いい…だけど。


   ……じゃあ。


   ……。


   ……これなら、


   だめ。


   ……。


   羽織袴って。
   男の人の格好じゃない。


   でも、さやかが白無垢なら…


   杏子も白無垢にすればいいでしょ。


   いや、あたしは…。


   あたしは、なに。


   …あたしは、あまり。


   ……。


   ……。


   …それなら。
   さっきの神主さんの方がいい。
   絶対、いい。


   …分かった。


   ……。


   これで、どうだい…?


   ……。


   わ…。


   …すごく、格好いい。


   ……さやかも。


   ん……。


   …すごく、きれいだ。


   ……。


   さやか…。


   …杏子。


   え……。


   ……。


   さ、さやか…。


   …誓いの、キス。


   でも、そういうのは…。


   …いいの。


   ……。


   いいの…。


   …分かったよ、さやか。


   ……。


   ……。


   ん……。


   …一生。


   ……。


   佐倉杏子は、美樹さやかを愛することを誓います。


   ……。


   …て、やっぱり違うな。


   美樹さやか、は。


   ……。


   一生…佐倉杏子を、佐倉杏子だけを愛することを誓います。


   ……。


   …やっぱり、違う?


   ……。


   ……なんか言ってよ。


   さやか。


   …なに。


   しあわせに、してやる。
   ずっと、一生。


   …もう、しあわせなんだけど。
   願いが、叶ったから。


   もっと、だ。
   もっともっと、してやる。


   …うん、じゃあして。


   ああ。


   あたしも、してあげるね。


   …。


   …当たり前でしょ?
   夫婦、なんだから。


   …うん。















   ……。


   ……。


   …なぁ、さや


   ねぇ、杏子さ…。


   …なんだよ。


   ほむらの話、信じる…?


   …あんたとあたしが幼馴染だったって話か。


   …。


   …。


   …あいつが戻る分だけ、あたしとあんたは出逢ってた。


   みたいだな。


   …その中で、あんたとあたしは幼馴染だった時間もあった。


   ああ…俄かに信じられないけどな。


   …。


   …さやか?


   もしも。


   …。


   …この時間でも、ほむらが過去に戻ったら。
   あたし達は、どうなるのかな。


   …さぁな。


   さぁなって。
   もっと真面目に考えてよ。


   考えても分からない。
   だったら、考えてもしょうがないだろ。


   …何よ。


   …。


   杏子のばか。


   …信じてるのか、あいつの話。


   分からないのよ。


   …。


   …でもあいつが嘘を吐くようにも思えないの。


   それは分かるよ。


   …なんでだろう。


   それは分からないな…。


   ……。


   …さやか。


   ねぇ、杏子さ…。


   …おう。


   今日は…その。


   ……。


   …うち、来てよ。


   行って、いいなら。


   …来てって言ってるの。


   じゃあ、行く。


   …いつもずるいのよ、あんた。


   これでも遠慮してんだよ。


   …どこがよ。


   親、いないのか。


   …だから、泊まって。
   朝まで、一緒にいて。


   ……おう。


   ……。


   ……。


   …結婚、出来たのかな。


   ……。


   幼馴染の、あたし達…。


   …したろ。


   ……。


   互いに想い合って、そうしたいと願ってるなら。


   …出来たとしても。


   ……。


   無くなっちゃったかもしれないじゃない…。


   …無くなってないかもしれない。


   ……。


   結局、分からないんだ。
   何も。


   ……。


   でも、どっかで続いている。
   そう、思うんだ。


   …この時間も。


   …。


   そうなると、いいな…。


   ……。


   …何。


   今日のさやかは…甘えた、だな。


   …うるさいな。
   あたしだって、そういう時くらいあんの。


   あーそうかい。
   んじゃ。


   …て。


   だっこ、してやるよ。


   …なんでそうなるのよ。


   どうせ、誰も見てないだろ。


   そういう問題じゃない。


   …のわりには、しがみついてくれてるじゃないか。


   言うな、ばか。


   …へぇへぇ。


   ……。


   …なぁ、さやか。


   …。


   …多分、さ。
   あたしはいつだって、あんたを好きになってると思うんだ。


   あたしは、違うと思う。


   …ひでーなぁ。


   …でも。


   ……。


   今のあたしは……好き、だから。


   …。


   ……。


   …帰るか、さっさと。


   ばか…なに、考えてんのよ。


   そりゃ、あんたと同じコト…かな。


   …ばか。








   Song...
    “やさしさに包まれたなら” 荒井由実
    “私とワルツを” 鬼束ちひろ

   BGM...
    “君の銀の庭”  piano cover

   祝詞...
    布瑠の言…死者蘇生の言霊。ひふみ祓詞、ひふみ神言とも言う。
















   掛介麻久母畏伎菅原神社乃大前爾恐美恐美母白左久…

   今日乃朝日乃豊栄登爾日別乃御食津物献奉里弖…………

   ………………遍久世乃人賀…………家内安久穏爾身健爾心正志久……

   ……恐美恐美母白須…








   …さて。


   終わった?


   ああ。


   じゃあ、朝ごはんだね。


   あいつはもう、起きたか?


   ううん、起きてない。


   仕方ないヤツだな。
   起こしてやってくれ。
   今日は予定が入ってるんだ。


   わたしより、かあさんが行ったほうがいいんじゃない?


   いや、あんたの方が八つ当たりされない。
   あたしが起こすと、今日一日、小言を言われかねない。


   眠り姫にはキス一つが一番だと思うんだけど。


   …どうだかな。
   まぁ、頼むよ。


   うん、分かった。
   がんばってみる。


   おう、頑張れ。
   腹、へってるから。


   うん。


   ……。


   今日はいい天気になりそうだね。


   今日は初宮詣の予定が入ってるからその方が良いな。


   ねぇ、かあさん。


   うん?


   わたしも、覚えられるかな。


   何を?


   祝詞。


   まぁ、嫌でも覚えるよ。
   毎日、聞いてれば。


   毎日?


   そう、毎日。
   まぁ、覚えてないヤツもいるけど。


   布瑠の言は覚えてるのね。


   …ああ、そうだな。


   じゃあ、行ってくるね。


   お





   おっはよーう!





   あ。


   …。


   おはよう!


   うん、おはよう。


   今朝も寝坊だぞ。


   お、は、よ、う。


   …おはよう。


   お腹すいた?
   朝ごはん、出来てる?


   …本当だったらもう、出来てて欲しいところだけどな。


   よし、じゃあ今朝もこのさやかちゃんが腕を振るっちゃおうかな!


   出来れば早く作って欲しい。


   なになに、そんなにお腹すいてるの?
   仕方ないなぁ、杏子は。


   お前な。
   本当だったら、


   今朝の寝坊はあたしだけの責任じゃありませんもの。


   …。


   ねぇ、杏子さん?


   …なるだけ、早く頼む。


   おう。


   たく…。


   杏子かあさん。


   …なんだい、ゆま。


   今朝もかあさんの負け。


   …ゆま、さやかを手伝ってやってくれ。
   あたしは外の掃除でもしてるから。


   ねぇ、杏子。


   ん?


   今日は初宮詣の予定だったよね。


   ああ、そうだよ。


   楽しみだね。


   …ああ、楽しみだな。


   うん。
   じゃあ、腹ペコ杏子の為にもおいしい朝ごはん作っちゃおうかな。


   楽しみにしてるよ。


   うん、してて。
   ゆま、行こう。


   うん、さやかかあさん。








   ……。


   ……。


   ……。


   …杏子。


   …。


   今年も柿、いっぱいなるかな。


   ……。


   ごはん、出来たよ。


   …そうか。
   じゃあ、今行く。


   うん。
   待たせちゃって、ごめんね。


   その代わり美味しいご飯、作ってくれたんだろ?


   もっちろん。
   何しろ、さやかちゃんの愛がたっぷり入ってるんだから。


   それは楽しみだ。


   うん。


   ……。


   ……。


   ……見滝原。


   ん…。


   …少しずつ、だけど。


   復興、してきたね…。


   …ああ。
   でもまだまだ、時間は掛かりそうだけどな。


   …。


   …。


   …初宮詣、かぁ。


   そういや、さやか。


   はい。


   記念品、もう一度見直しておいてくれ。


   杏子が見たんじゃないの?


   見たけど。
   一応、見ておいてくれ。


   ん、分かった。


   ……。


   ね、杏子。


   なんだい?


   杏子の神主さんも板に付いてきたね。


   …そうかい。


   惚れ直しちゃう。


   おう、そうしてくれ。


   何よ、言うじゃない。


   惚れ直されるのは、何度でも構わないからな。


   杏子はあたしに惚れ直してくれてる?


   そうだなぁ。


   何よ、考えないと分からないの。


   毎晩のように。


   …。


   とでも、言っておくよ。


   何よそれ。


   …。


   …昨晩の痕、暫く残しておいてやるんだから。


   ……。


   …ん。


   さやか。


   …なに、杏子。


   好きだよ。


   …。


   …毎日、好きが重なっていくよ。


   ……。


   柿。


   ん…。


   なったらまた、皆で干そう。


   うん。


   さて、ごはんにするか。
   腹、へった。


   杏子。


   んー?


   今度の結婚記念日は。


   …。


   どう、してくれる?


   さて、どうするかなぁ。


   ちゃんと考えておいてよね。


   ああ、分かった分かった。


   それから。


   誕生日か?


   それも、だけど。


   だけど?


   今日のお宮参りのお祓い。
   気合入れて、してあげてね。


   おう、任せろ。