……。 美樹さん、新しいお茶を淹れたけれど。 …ありがとう、ございます。 気になる? …え? 気になるのなら一緒に入れば良かったのに? あ、あたしは…! ふふ、冗談よ。 ……。 お茶、冷めないうちにどうぞ。 …はい。 佐倉さんの分は出てからでも良いわね。 …。 莫迦になってるのね。 …え? 美樹さんの事が、好きすぎて。 マ、マミさん…? これで、分かったでしょう? な、何が…。 美樹さんは佐倉さんに愛されてるって、こと。 ……。 美樹さんを捨てるなんてこと、ばかになってる佐倉さんに出来っこないってこと。 そ、それは…。 寒い場所で、中にも入らずに。 屹度ね、心配で、いてもたってもいられなくなって探しに来たのよ、あの子。 これは推測だけれど、今夜は佐倉さんと約束していたのでしょう? …はい。 で、でも、時間には… それでも、よ。 なんと言うのかしら、悪い予感…じゃないけれど、多分、そんなものね。 ……。 単純に、約束の時間よりも早く貴女に逢いたくなった。 だから、貴女の家…或いは学校まで迎えに行った。 でも、貴女はいなかった。学校はとっくに終わっている筈なのに。 …どうして、マミさんの部屋に。 鹿目さんや、暁美さん。 若しかしたら…上条君だっけ? …え。 回ったのかもしれない。 美樹さん、貴女が来ていないかどうか。 近くに行けば、魔力の気配で分かるから。 まどかとほむらは分かるとして、どうして…。 言ったでしょう? 莫迦になってるから、よ。 ……ばか。 恋は盲目。 …今更、恭介のところになんか行くわけないのに。 美樹さん。 …あたしは、もう。 …さやかに、触るんじゃねぇ。 あら、出てきたの? 早かったようだけど、ちゃん温まった? ……。 髪の毛、ちゃんと拭かないと駄目よ? …うるせぇよ。 そもそも、風呂になんか 美樹さんに言われたから、だものね? …うぜぇ、マジうぜぇ。 杏子。 ……。 髪の毛、水が垂れてる。 ちゃんと拭かないと、風邪ひいちゃうよ。 ただでさえ、あんなに冷えてたんだから。 …さやか。 ほら。 ……。 …て、杏子。 ……やって。 え。 …さやかが、やって。 えぇ…。 あらあら。 …泊まった時はいつも、やってくれるじゃん。 そ、そうだけど…。 …やって。 でも、マミさんが 私の事は気にしないで? …うー。 て、きょ、杏子…。 ……。 濡れてる、濡れてるから…て、そうじゃなくて。 ……うー。 ああ、もう…。 ねぇ、美樹さん。 一つ、提案なのだけれど。 は、はい、なんでしょう。 今夜、うちに泊まっていかない? 勿論、食事つき。 どう? …え? ね、たまには良いでしょう? で、でも、 大丈夫よ。 予備のお布団くらい、あるから。 …でも。 やっぱり、二人きりの方が良い? そ、そういうわけ、じゃ…。 じゃあ? ……はい。 決まりね。 …おいこら、マミ。 さやかは 貴女はどうする? 佐倉さん? ……。 ん? マミ。 何? さやかは、あたしのだ。 …! 誰にも、やらない。 あんたにだって、やらない。 もし、手ぇ出すって言うなら きょ、杏子…! そん時は、赦さない。 止めて、杏子。 自分で何を言っているのか、分かってるの。 ……。 大体、何がどうしてそんな話に ……。 杏 本当、しょうがない子ね。 …マミさん。 ほらね、美樹さん。 これで分かったでしょう? …え? 佐倉さんって結構、独占欲が強いのね。 …あ。 あのね、佐倉さん。 妹の恋人を取るような真似、するわけないでしょう? ……。 美樹さん、その子の髪の毛を拭いてあげて? じゃないと、ずっとそのままにしてしまうでしょうから。 ……。 二人ともお腹はすいた? お夕飯、何か食べたいものでもある? ……さやかの飯。 ……杏子。 ふふ。 ……。 ……もう。 そうそう。 お布団、一組で良い? と言うより、一組の方が良いかしら? …。 マ、マミさん…! ふふ、冗談よ。 一応は二組、用意するから… …それじゃあ、おやすみなさい。 はい、おやすみなさい。 マミさん。 ……。 おやすみなさい、佐倉さん。 …。 …杏子。 ……。 …ごめんなさい、マミさん。 良いのよ。 じゃあ、また明日。 はい。 ……。 ……。 ……。 杏子。 ……。 …いつまで、拗ねてるの。 ……。 何か、言ってよ。 ……寝る。 杏子…! ……。 …どうして、来たの。 ……迎えに来たって、言った。 だから、どうして…。 …来ちゃ、いけなかったのかよ。 …。 ……悪かったな、来て。 そんなこと、言ってないじゃない。 ばかって、言った。 だって、それは…。 それは、なんだよ。 …だって、来てくれるなんて思ってなかったんだもん。 ……。 それにあたし、マミさんの部屋に行くなんて…約束の時間、だって。 ……。 …あ。 さやか。 な、なに…。 …お前はもう、あたしのもんだ。 他の誰かのものになるなんて、許さない。 赦さない。 きょ、杏…んッ。 ……。 …だめ、やめて。 ここは…。 …本当だったら、お前はあたしの部屋に来るんだったんだ。 ……行かない、なんて。 マミさんと別れたら、ちゃんと…。 そしたら。 あ…、ぁ……。 …こうやって、お前はあたしに抱かれるんだったんだ。 だから。 やめて、きょうこ…やめて…。 うるせぇ、黙れ。 や、やだ…。 ……。 …なん、で。 なんで、怒ってるの…。 …怒ってなんかない。 でも、 黙れよ。 あ、ぅ……。 ……。 …きょ、うこ。 ……。 おねが、ぃ…つよく、しないで。 ……でもさぁ、さやか。 …ぅ、…ん。 鳴けよ、いつものようにさ…。 ……。 …いつもより、強くしてやるからさぁ。 きょ…ぅ……。 …お前は、あたしのものだ。 誰にも渡さない…渡すくらいなら。 ……。 …殺してやる。 あぁ……。 …そうすれば、ずっと、あたしだけのものだ。 ……。 さやか……。 …しっ、と。 …ッ! ……杏子の、ばか。 ちがう……。 あたしはもう、あんたのものなのに…。 ……ちが、う。 …ましてや、マミさんとなんて、ありえないのに。 ……。 ……ばか。 ……。 …いいよ、杏子。 ……。 続き、して…。 ……。 ……好きに、して。 ……。 ……ねぇ。 ……。 …? きょうこ…? ……。 …ねぇ、どうしたの。 ねぇ…。 ……。 きょう… ……。 ……きょうこ。 ……。 …ねぇ、杏子。 こっち、向いて…。 ……ならない、で …。 ……きらいに、ならないで。 ならないよ…。 …でも、あたし。 でも…なに? ……。 …なるわけ、ないじゃない。 ばか…。 ……。 …どんなことを、されたって。 あたしは、杏子が好き…。 ……。 …杏子になら、滅茶苦茶にされたっていいの。 さやか……。 迎えに…探しに来てくれて、ありがとう。 うれしかった…。 …さやか。 ねぇ、あたしのこと…好き? ……。 ねぇ、杏子……。 …好き。 ……。 好きだ…ダイスキだ…だから。 …。 ……あたしを、捨てないで。 あぁ……。 …あたしと一緒に、いて。 ひとりに、しないで…。 …ひとりになんて、しない。 うざいって言われたって、絶対にしないから…。 ……こわいんだ。 …。 こわいんだ…いつかまた、ひとりになるのが…。 …。 ……こわい、こわいよ。 だいじょうぶだよ…。 …。 …だいじょうぶ、だから。 ……。 …ねぇ、一緒に寝よう? …。 あたしのこと、抱いて…眠って。 …さやか、も。 うん…。 …さやか…さやか…さやかぁ…。 ……きょうこ。 ……。 ……だいすき。 ……おやすみなさい、二人とも。 どうか、良い夢を…。 あの夜、あたしの胸に縋りつくようにして眠ったあの子は紛れもなく女の子で。 どんなに戦い慣れしていても、どんなにその背中が頼りになっても、どんなにあたしを、傷だらけで、守ってくれても。 嫉妬して、不安に思って、独りになるのが怖くて、独占してしまいたいと思ってしまう、ただの女の子で。 あたしだけじゃなかったんだって…ばかなあたしは、やっと、気が付いたの。 …ねぇ、杏子。 うん…。 …あたしのこと、 好きだ…。 …。 好きだ、好きだ、大好きだ…。 …あたしね。 …。 杏子のどこが好きなのか、考えてみたの…。 …どこ、が? そう…。 ……どこが、好きなの。 聞きたい…? ……。 …じゃあ、聞かせてあげる。 ……。 あたしね…杏子の全部が、好き。 …ぜんぶ? そう…全部。 …うそだ。 なんで…? ……。 …乱暴だけど、優しくて。 雑だけど、本当は繊細な心を持ってて。 手や足はあたしより小さいけど、それが可愛い。 その手で躰に触られると…言葉に出来ないくらい、気持ちよくて。 ……。 …いつも、あたしを守ってくれる。 どんなに傷だらけになっても。 だから、あたしは戦える。 必ず、あんたが後にいてくれるから。 ……。 …髪や瞳の色が好き。 笑った顔が好き、戦ってる顔はカッコいい、あたしに甘えてくる時の顔は…愛しい。 ……。 杏子とするキスが好き…セックスも好き。 杏子と過ごす時間は何よりも大切。 杏子と一緒に食べるごはんはおいしい。 杏子とずっと、一緒にいたい。離れたくない。 ……。 不器用だけど…あたしを一生懸命愛してくれるのが、好き。 大好き…。 ……もう、いいよ。 どうして…? …恥ずかしくなってきた。 と言うか、恥ずかしい…。 ……そういうところも、好き。 さやか…。 …あたし。 杏子がいないなんてもう、考えられない…。 杏子がいてくれないともう、だめになっちゃった…。 ……。 …あたし、杏子に恋してる。 杏子を、愛してる…。 ……。 …あたしと同じ女の子の、あなたを。 誰よりも、愛してるの…。 ……。 杏子…。 ……ありが、とう。 …。 …しあわせ、すぎて。 しにそう、だ…。 …その時は、連れて行ってね。 お、おう…。 ……。 さやか…。 ……杏子、は? …。 …あたしのどこが、好き? なんで好きになってくれたの…? ……あたしは。 …。 あたしは、さやかの全部が、好きだ…。 …ぶぶー。 …? さやかちゃんの真似は、ゆるしません…。 ま、真似じゃない。 あたしは、む。 …ね、杏子。 ……。 本当にあたしで、いい…? …。 あたし、本当は自信がない…。 杏子のこと、こんなに好きなのに、愛してるのに、しあわせにしてあげる自信がないの…。 …ばか。 …。 さっき言ったろ…しあわせすぎて、死にそうだって。 …。 …あたしはとっくにして貰ってるんだ。 ……。 …さやかに、愛して貰って。 これでしあわせじゃないなんて、言えるわけがない…。 …でもあたし、嫉妬深いよ。 面倒だよ…。 それは…あたしも、言えない。 …。 …あたしは、独占欲が強い。 さやかが他の誰かのところにって思うだけで…血が沸騰しそうになる。 ……。 …親父の教えに背いてばかりだよ。 マミさんにまで嫉妬、したしね…? ……う。 …笑ってたよ、マミさん。 ほらね…て。 …何がほらなんだよ、ばかマミ。 佐倉さんは。 …あ? …美樹さんのこと好きすぎて、ばかになっているのねって。 ……。 …それから。 …まだ、あんのかよ。 これで分かったでしょうって。 …。 …美樹さんは佐倉さんに愛されてるって、こと。 美樹さんを捨てるなんてこと、ばかになってる佐倉さんに出来っこないってこと…。 ……。 …杏子が、お風呂に入ってる時に。 ちょっと、いたたまれなくなっちゃった…。 ばかマミ…。 ……ね。 ん…。 …あたしは、あんたのだから。 うん…。 …あんたは、あたしのもの? もちろんだ…。 ……。 ……離す、もんか。 うん…。 ……さやかは、あたしのものだ。 ずっと、あたしだけのものだ…。 …。 …さやか。 ……あたし。 …。 …ずっと、愛してる。 あんたのことだけを、ずっと、愛してる…。 ……。 …あんたがそう、感じてくれてたら。 感じてるよ…。 …。 …すっげぇ、感じてるよ。 よかった……。 …しあわせに、してやる。 誰よりも、しあわせに。 …あたしも、してあげる。 絶対に、絶望なんてあげない…。 …。 …。 …二人でなろう、さやか。 うん、杏子…。 勇気を。 あたしの中にあるありったけの勇気を集めて。 ……ん。 ……。 …さやか、なにしてんだ。 ……。 …さやか? そと、みてたの。 あめ、やまないなぁって。 …。 かぜもつよいみたい。 そういえばよるはあれるって、よほうでいってたような。 …ふぅん。 でも、あたしたちにはかんけいねーだろ…。 ……ん、そうだね。 …ふあぁ。 ……。 …で。 いつまで、そうしてるんだい…? きょうこが、むかえにきてくれるまで。 …。 …かな。 ……。 …あ、こら。 ……。 ちょっと、なにねてんのよー…。 …きてほしいっていわなきゃ、いかね。 む…。 ……。 …じゃあ、かえすけど。 きょうこちゃんは、ひとりで、ねむれるのかな? …む。 さやかちゃんのぬくもりなし、で。 ……。 …さいきんはあたしのむね、おきにいりみたいだし? きたねー…。 …かけひきって、いって? なんだよ、それ…。 …で。 きてくれる?きてくれない? さやかこそ。 ん? ずっと、そうしてられるのか。 …。 ひとりで。 あたしがそばにいなくても、へいきなのか。 …それ、ずるい。 かけひき、なんだろ…? きょうこのばあいは、ずるい。 なんだ、それ。 ……。 ……。 …ふ。 …は。 すなおじゃ、ない。 まったく、だ。 …きょうこ。 さやか。 きて、ほしいの。 あんたなしじゃ、ねむれない。 ……。 だから。 ……。 ……。 ……きょうこ。 さやか…。 …ふふ、きょうこあったかい。 おまえは、すこしつめたい。 …じゃ、あっためてもらお。 ああ、いくらでも。 …。 …ん? ……だっこ。 いま、しようとしてた。 …さすが、きょうこ。 すぐ、だけどな。 …いいの。 ……。 …そっと、ね? わかってるよ、おひめさま。 …うわ、にあわない。 うっせ。 …あんたも、おひめさまだし。 は。 …。 …いいか、おろすぞ? うん…。 ……。 …ああ、あったかい。 ……。 きょうこも、はやく。 …かぜ。 …。 ほんとに、つよいみたいだな。 …でも、ここはおだやかだから。 ……。 …はやく、きょうこ。 おう…。 ……。 ……へへ、さやか。 …。 ……。 …ほんと、すきだね? うん…すきだ。 ……。 ……。 …ねぇ、きょうこ。 なに…? あたしのいえに、その、こない…? …? いいぞ。 じゃあ、こんどは そうじゃないの。 …ん? だから…その、いっしょにくらそうって、こと。 え…。 …あたしの、いえでさ。 でも…。 …うちのおやのこと、しってるでしょ? しってるけど…。 …いざとなったら、まほうがあるし。 じぶんのためにつかわないんじゃなかったのか。 …そうだよ。 だから、あたしはきょうこのためにつかうの。 あたしの…。 …そう。 きょうこがあたしのいえで、くらせるように。 あたしとずっと、いられるように。 …おまえは。 あたし、ばかだから。 …。 …ばか、だから。 わかった。 じゃあ、あたしはさやかのためにつかう。 …。 さやかがあたしとずっと、いられるように。 …そしたら、すっごいきょうりょくだね。 おう、すっごいきょうりょくだ。 ちょっとやそっとじゃ、こわれない。 …。 …。 …じゃあ、きまり? さやか。 …ん。 ぜったい、はなれないからな。 …うん、あたしもぜったいはなれないから。 あの子と過ごす、日々。 あの子と過ごす、時間。 永遠なんて、多分、ないけれど。 それでも。 一分、一秒、あの子といる全ての時が、かけがえのない、あたしの宝物。 ……。 んー…♪ さぁーーやか! …わっ。 なになに、なに作ってんの? …杏子。 うん? 重い。 …。 て、杏子。 …へへ。 とりあえず、離れて。 やだ。 …おい、こら。 さやかぁ。 …ごはん、食べさせないわよー? えぇ。 やだったら、離れる。 はい。 …。 今日は杏子の好きなオムライスなんだけどー? マジで? おう、マジよ。 デミなんちゃら? ノットデミなんちゃら。 じゃあ、ケチャップ? イエス、ケチャップ。 しかも卵は半熟じゃない、昔ながらのやつ。 おお。 分かったら、離れる。 これじゃ作れない。 ……。 食べらんなくても、いいのかね? なぁ、さやか。 なにかね? さやかの飯、うまいから好きだ。 …誰かの為に頑張ってるもの。 へへ。 …最初は酷かったけどねぇ。 厚焼き玉子は毎回、スクランブルエッグになってたなー。 殻も入ってたし。 …。 でも、味はうまかったぞ。 …いや、そうでもない。 黒焦げじゃなきゃ、平気だ。 …杏子って好き嫌い、ないよねぇ。 酸っぱいの以外。 おう。 酸っぱいのも、結局は食べるし。 食い物は粗末には出来ないからな。 はいはい、そうですねぇ。 そっかー、今日の夕飯はオムライスかー。 へへ、楽しみだ。 じゃあ、離れて? もうちょっと。 だーーーめ。 いいじゃん。 後でも出来るでしょ。 …。 …どうせ、するでしょ。 食ったばかりだと、きついだろ? …。 …ん? あーもう。 ほんと、ばか。 …おう、ばかで結構だ。 ……。 ……さやか。 あ、あの。 …ん? なんだい、ほむら。 …私、帰った方がいいですか? んー…。 なんで? …そもそも、どうして私ここにいるのか。 あんた、一人暮らしだって言うから。 良かったな、ほむら。 さやかの飯はうまいぞ。 は、はぁ…。 やっぱり、一人じゃねぇ。 うん、誰かと一緒に食べる飯はうまいよな。 あたしはさやかだけどな。 …はぁ。 まどかも誘ったんだけど。 タッくんのお世話しないといけないから、遅れるって。 まどかのパパさん、どうしたんだろーねぇ? マミのヤツも遅いなー。 あいつは特段、用事なんてないだろーに。 …理由、分かるような…いえ、分かりました。 そうそう、あんたは半熟がいい? それとも、杏子と一緒のでいい? オムライスはやっぱり、完熟だよなー。 …え、と。 どちらでもいいです…。 じゃあ、完熟ね。 さやかもあたしと同じのだろ? ……。 あたしは半熟の方が好きなんだけどなー。 ふわふわとろとろの。 まぁ、あれもうまいけどな。 あたし、あれも好きだ。 …。 つまるところ、あんたはなんでもおいしそうに食べてくれるのよねー。 そりゃ、さやかの作ってくれた飯だからなー。 ……。 そんなに、好き? おう、好きだ。 大好きだ、さやか。 ……早く来て、鹿目さん。 て、あたしじゃなくて。 あたしの作るごはんの事なんだけどー。 大好きなさやかが作るから、好きなんだけどなー。 ……巴さんでもいいから。 ばーか。 ほら、そろそろ離れろ。 もう、堪能したでしょ。 ん。 じゃあ、また後でなー。 ……いっそ、帰りたい。 新婚さん、ですよね。 まさしく、そうよね。 ほむらちゃん、大丈夫かなぁ。 気になるのだったら、一緒に行けば良かったのに。 そうなんですけど…弟のこともありましたし。 あら、口実ではなかったの? そんな、違いますよ。 そう? そうです。 マミさんこそ、どうして 蜜月なんですもの。 …。 その中に入るのは…流石に、ねぇ? 新婚さん、ですから。 ええ、まさしくね。 最近のさやかちゃんの話題、杏子ちゃんのことばっかりなんです。 本人はそんなに話してないって言うんですけど…。 あら、それは最近の事なの? 前から話題になることはあったんですけど、杏子ちゃんと同棲し始めてからは余計に。 杏子ちゃんのことを話してる時のさやかちゃんはいつも、楽しそうでしあわせそうなんです。 実際、そうなんでしょうね。 美樹さんにとっては初めての事なんですもの。 わたしも誰かとお付き合いしたら、そうなるのかなぁ。 気になる人でもいるの? え? そうなりたい人って、いる? 今は特にいませんけど。 あら、気になる人はいないの? はい、特には。 …そう。 マミさん、わたし。 うん? 杏子ちゃんがさやかちゃんを見つけてくれて良かったって、思ってるんです。 …。 さやかちゃんを好きになってくれたのが杏子ちゃんで本当に良かったなって。 …どうしてそう思うの? だって杏子ちゃん、さやかちゃんのことをいつだって大切に思ってくれてるから。 これからも、きっと…ううん、絶対。 …。 だから。 …私もね。 はい。 美樹さんが佐倉さんを好きになってくれて本当に良かったって思ってるの。 …。 自分が好きになる人と自分を好きになってくれる人、それらがいつも同じだとは限らない。 寧ろ、違ってばかりだから。 だからこそ、切なかったり辛かったり…悲しい思いだってするのだわ。 …。 実際、美樹さんの初恋は叶わなかった。 でもそれは。 …それは? 終わりは、始まり。 …。 美樹さんが佐倉さんの想いに気付く為の、ね。 …でも、気付くとは限りませんよね。 ええ、そうなの。 でも、美樹さんは気付いた。 自分を心から大切に想ってくれている人の存在に。 …。 そんな人を好きになれば…そうなれば、惚気たくもなるでしょうね。 それも、無自覚に。 …ですね。 ね。 佐倉さんが美樹さんを見てる時の顔って、でれでれだと思わない? でれでれ、ですか? そう、でれっでれ。 もう、好きで好きで仕方無いって顔。 ああ、分かります。 杏子ちゃんはさやかちゃんを見てる時が一番、優しい顔をしているから。 でもね、本人は無自覚なのよ。 あんなにでれでれなのに、ね。 ふふ。 すっかり、角が取れてしまったわ。 美樹さんのおかげね。 …さやかちゃんも。 …。 すごくきれいになったなぁって。 それって杏子ちゃんのおかげなんだろうな、って。 …そうね。 ええ、絶対そう。 …。 良いなぁ。 羨ましいなぁ。 マミさん? 二人を見ていると私も恋、したくなる。 …。 良い事ばかりじゃないのでしょうけどね。 いつか、必ず。 …。 叶います。 だって、マミさんですから。 …私だから? だって、マミさんはいつだってとても素敵ですから。 …ありがとう。 でも、私はそんなに素敵な人間じゃないわ。 …。 …見栄張って、先輩ぶって。 本当は怖くて仕方ないのに、強がって。 …。 …素直に助けて欲しいって言えたら、言えていたら。 そうしたら…。 マミさん。 …? 鹿目、さん…? 私で良かったら、マミさんのそばにいますから。 いつだって、いますから。 …。 どうか、忘れないで下さい。 マミさんはもう、独りじゃない。 …鹿目さん。 さぁ、早くさやかちゃんの家に行きましょう。 ほむらちゃん、きっと二人に中てられて大変だと思うから。 …ありがとう。 さぁ、マミさん。 …ええ。 行きましょう…! Song... “I Believe in you (Pollyanna)” from 「MOTHER」 鈴木慶一 BGM... “Powell” from 「聖剣伝説3」 菊田祐樹 ”帰るべき所” from 「天地創造」 小林美代子 “Decretum” from 魔法少女まどか☆マギカ 梶浦由記 You can call us “Pollyanna”。 …ポリアンナ。 ばかって、意味さ。 えー、そうだっけ? …。 楽天とか楽観とか、そんな感じじゃなかったっけ? だから、つまりはばかってことだろ? …。 身も蓋もないじゃん、それ。 まぁ、そうだな。 でも、そうだろ? …佐倉さん、美樹さん。 と言うかあたし達、緊張感なさすぎ。 今更、だしなぁ。 この惨状を見て、緊張しろと言われてもだよ。 逃げてください。 ん、なんで? どうしてだ? …もう、見滝原は壊滅を逃れられません。 だけど、魔法少女なら。 だって。 どうしようか、杏子。 さて、どうするかなぁ。 どっか行きたいか、さやか。 …お願いだから、逃げて。 二人でどこか、遠くに…。 んー温泉とか? あーいいな、それ。 二人なら、きっと…。 温泉内で、エッチな事は禁止ね? おう、分かった。 ま、誰もいなかったらするけどな。 …! ふざけないでください…! んー…。 あー…。 巴さんも…鹿目さんももう、いません。 いないんです。 知ってるよ。 見てることしか、出来なかったからな。 …もう、おしまいなんです。 だから、あなた達だけでも生きてください。 あたし達だけ、ねぇ。 どうする、杏子。 あたしはさやかがいてくれればそれでいいからなぁ。 さやかも、あたしがいればいいだろ? ……。 二人でだったらどこででも生きていけるね、あたし達。 どこででも、な。 …お願い、生きて。 無駄に、死なないで。 無駄? 無駄に死ぬつもりなんてないさ。 だったら、 でもあたし達、 ばか、なんだよ。 …そんな。 正義の味方に、さ。 なりたかったんだよ。 …そんなものより。 生きることの方が、大切じゃないですか…! ……。 ……。 …どうして。 どうして、みんな……どうして…鹿目さん…。 …あんたも大きな声、出せるんだね。 しかも驚くほど意志がこもってやがる、な…。 お互いを大事に想っているのなら、尚更、生きるべきです。 どんな世界になっても、生きるべきなんです。 …。 …。 大切な人の為にも、生きて…二人で、生きてください。 …ありがとう、ほむら。 ありがとな、ほむら。 じゃあ… …でも。 行くべきところは、決まってるんだよ。 …。 あたし達は、魔法少女だから。 魔女を、狩らないとな。 ……どうして。 どうして……! ばか、だから。 ばか、なんだ。 ……。 …あんたもさ、まどかのこと、大事だったんでしょ。 見てたら、分かるよ。 ……。 ねぇ、ほむら。 あんたはまどかと、生きたかったんでしょ。 …わた、し。 ごめんな。 あんたの大切な人、守れなかった。 佐倉さんと美樹さんは…! マミさんも守りたかった。 誰も、死なせたくなかった。 …! もっと、力があれば。 誰も、死ななくてすんだ。 ……。 大事な人と。 大切な時間を。 …。 失くさないで、良かったのに。 失うことも、無かったのに。 ……。 …さぁて、と。 そろそろ行こっか、杏子。 おう、行こうか。 さやか。 …まって。 ……。 ……。 まって…。 …また、さ。 オムライス、食べに来てよ。 え…。 さやかのオムライスは、うまかったろ? だから来いよ、またうちにさ。 ……。 それまでまたね、ほむら。 またな、ほむら。 …おいしかった、おいしかったです。 ん、ありがと。 だろ? だから、だから…。 ん、また作ってあげる。 さやかちゃん特製オムライスを、ね。 ……お願い、だから。 さやか、あたしには? これが終わったらおなか一杯、作ってあげるわよー。 へへ、やった。 楽しみだなー。 でしょ? おう! さやかの飯はうまいからな!! ……。 …じゃあ、ほむら。 またそん時にな、ほむら。 ……私達に。 そんな時なんてもう二度と、来ないのに…。 ねぇ、杏子。 なんだい、さやか。 あの歌、歌って。 あの歌? ポリアンナ。 ああ。 でも、今かい? ううん。 じゃあ? 言わせんな、ばか。 だって聞きてーじゃん? やです、絶対に言いませーん。 じゃあ、歌ってやらね。 杏子のけちー。 おう、けちで結構だ。 むー。 …。 …。 …でかいなぁ、あれ。 そうだねぇ…。 さやか。 …なんだい、杏子。 真似すんなよ。 だって、好きなんだもん。 …。 …だから、歌って。 ……しょーがねぇなぁ。 …。 じゃあ…いつもどおり、な? …うん。 なぁ、さやか。 …なぁに、杏子。 好きだ、大好きだ。 …。 離さないからな、ずっと。 うん…あたしも離さない、ずっと。 Because、 I believe in you。 は? あんた、オムライス嫌いなの? …ええ。 つかさぁ、食い物に好き嫌いとかありえねーんだけど。 さやかもだけど、ほんと、なんなの。 て、今はあたしの話じゃないでしょ。 …嗜好にあれこれ言われる謂れは無いわ。 意味分かんない。 あんなにおいしいのに。 …皆が皆、美味しいと感じるとは限らない。 確かに、さやかのはひでーけどさ。 フツーのオムいてぇ!! ……。 どうせ、あたしのオムライスは酷いわよ! なんだよ、ホントのことを言っただけだろ! ……。 殻は入ってる、卵は炒り卵になってる、飯はケチャップでべしゃべしゃ。 これをひでーと言わないでなんて言うんだよ! いやなら食うな! と言うか、食わせてやってるんだから、それだけで十分じゃないの! 文句言われる筋合いはないっつの! ……。 食い物を粗末にするわけにはいかねーだろ! だったらもう二度とあんたなんかに作ってあげないわよ! それでいいでしょ!! ……うるさい。 はぁ?! なんでそうなるんだよ!! ケチつけられるのが分かってて作ってあげるばか、いないわよ! …それが美樹さやかなのだけど。 は? なんか言った?! …いいえ。 どうせあたしの作るオムライスはまずいわよ! あーあー、そうですか!! そりゃ、確かに殻は入ってるし炒り卵だし、飯はべしゃべしゃだけど、まずいとは言ってねーだろ! 言ってるようなもんでしょ?! 今日はオムライスの予定だったけどやーめた! 絶対、作ってなんかやらない! さやか! ……。 とにかく、まずいとは言ってねー! 言ってる! 言ってねーって言ってるだろ、ばかさやか! 言ってるって言ってるの、ばか杏子! …はぁ。 佐倉杏子。 あ、なんだよ?! 貴女は美樹さやかが作るオムライスが好きなのでしょう? 然う、どんなオムライスよりも。 …は? …。 佐倉杏子は美樹さやかが好きで好きで仕方が無い。 だから、オムライスには程遠いオムライスでも好んで食べる。 つまりは、そういう事。 ば、ばばばば…!! ……。 ちゃんと言葉にしないと、好きと言わないと伝わらないわよ。 相手はあの美樹さやかなのだから。 ば、ばか…! な、なに言ってんだ…! 貴女の気持ちだけれど。 ほ、 と言うかあの美樹さやかってどういう意味よ、転校生。 そのままの意味。 人の為には献身的に尽くすくせに、それを自分に向けられると途端に臆病になる。 な…。 ……。 佐倉杏子の好意がとても嬉しいくせに、それを素直に受け入れられない。 けれど、確かめずにはいられない。 そ、そんなこと…! ……。 本当、不器用で面倒ね。 貴女。 め、面倒ゆーな! ……。 兎に角、私はオムライスが嫌いなの。 もう二度と、食べるつもりは無い。 …。 …。 もう良いかしら。 帰りたいのだけれど。 …。 …。 さようなら、ポリアンナ。 …? …ポリアンナ? ばかと言う意味らしいわよ。 ちょ、何それ! と言うか今、普通にあたし達に向けて言ったわよね?! ポリアンナってあれだろ、児童文学の。 あんた、知ってるの? それくらい、知ってるよ。 さやか、知らないのか。 知らなくて悪かったわね。 だから、そんなこと言ってねーだろ。 いいえ、歌よ。 …え? 歌? 然う、歌。 私も詳しくは知らないのだけれど。 …何よ、それ。 …。 じゃあ、また明日。 …。 …。 ……変なヤツ。 …なぁ、さやか。 …何よ。 ……腹、へった。 …。 …。 …殻が入ってて、炒り卵で、おまけにごはんがべしゃべしゃなオムライスで良ければ作れるけど。 …。 …いらないなら、 …いる。 …。 …だから、その。 ……なに。 あ、あんたの作るオムライス…。 …。 …きらいじゃ、ないよ。 ……。 …さやか、腹へった。 ばか杏子。 …うっせ。 …。 …。 …じゃ、食わせてやるけど。 残したら、許さないから。 あたしが食い物… …。 …あんたが作ったの、残すわけねーだろ。 ばかさやか。 |