さやか。
杏子。
おかえり、さやか。
ただいま、杏子。
今日で学校、ひとまずお仕舞いだな。
うん、おしまい。
明日から冬休み。
杏子とずっと一緒にいられるよ。
ずっと、な。
うん、ずっと。
その前に、さやか。
テストの結果は成績に響かなかったかい?
…う。
……補習かい?
それはギリギリセーフ。
それは良かった。
よーくーなーい。
あたしのテストがよくなかったのは、杏子、あんたのせいなんだからね。
あんたがあたしのこと、ほっぽってから、だから。
…でも迎えには来てくれてたよね。
……。
…。
さやか、それについては謝っただろう?
謝れば済むなら警察いらない。
じゃあ、どうすればいい?
そんなの、決まってるでしょ。
…お。
冬休みはずっと、ずぅっと、傍にいてもらう。
それでいいのか?
大晦日もお正月もだからね。
分かった。
と言うかさ、言われなかったら、いてくれないつもりだったの?
…それ、言っちゃうんだね。
……。
いや、言われなくてもいるつもりだったよ。
本当にぃ?
ああ、本当だ。
さやか。
…わ。
ずっと、いよう。
…ふふ。
…?
なんだい?
…杏子の手、あったかい。
さやかがくれた手袋のおかげだよ。
マフラーは?
ああ、あったかいよ。
ありがとな、さやか。
…どういたしまして、杏子。
ねぇ、さやかちゃん、杏子ちゃん。
『まどか?』
クリスマスパーティーの事、ちゃんと覚えてる?
それは、
もちろん、覚えてるわよ。
マミさんのケーキ、楽しみだなぁ。
張り切って作るんだろうな、屹度。
ね。
……。
?
なんだい、まどか。
あたし達の顔に何かついてる?
ううん、何も。
うん?
てか、なにニヤニヤしてんのよ〜。
いつもの二人だって、思っただけ。
ね、ほむらちゃん。
……。
て。
ほむら、いたのか。
…まどかの居る所に、私は居るわ。
ほんと、ほむらはまどかにべったりだよねぇ。
まどか、鬱陶しくない?
鬱陶しいだなんて。
ほんとか〜。
さやかに言われる筋合いは無いわ。
は?
何よ、それ。
佐倉杏子にべったり。
今だって然う。
…それでもあんたほどじゃないわよ。
ちょっと一緒にいられないだけで拗ねる、不貞腐れる。
そして、まるで世界が終わったような落ち込みようを見せる。
そ、そこまでひどくない!
その挙句、まどかを巻き込む。
別に巻き込んでは
かなり、巻き込んでいたわ。
…まどか、あたし、そこまで酷くなかったよね?
ね…?
…うん、まぁ。
そこまでじゃなかった、かな…。
あー、今ちょっと間があったぁ…!
しかも、かなって何よ、かなって…!
あはは…。
うぅぅぅ…。
はぁ。
ほむら。
…何かしら、佐倉杏子。
あんた、それが言いたかっただけだろう。
さぁ、どうかしらね。
いや、そうだろう。
確実に。
杏子ぉ…!
うん?
それもこれも!
全部、あんたのせいなんだから!
…分かった。
責任、取るよ。
絶対、だからね…!
ああ、絶対な。
そうやって甘やかすから、益々、美樹さやかは駄目になるのよ。
うっるさい!!
ほむらだってまどかバカのくせに!!
まどかは莫迦じゃないわ。
貴女と一緒に…。
わぁぁん、杏子ぉ!
ほむらがバカにするよぉ!
ああ、よしよし。
えへへ、杏子、杏子ぉ…。
…さやかは可愛いな。
え、なに…、もう一回言って。
後でな。
…ええ、今がいいな。
後で、な…?
…もう、杏子のばか。
……。
……。
…はぁ。
本当に莫迦過ぎるわ。
え、と。
ほむらちゃん、もう止めておこう?
まどか…。
多分もう、何も聞こえないと思うから。
「「「「メリークリスマース!!!」」」」
…メリークリスマス。
ほむらぁ、あんた暗いよ。
……。
はい鹿目さん、ケーキどうぞ。
ありがとうございます、マミさん。
暁美さん、紅茶はどうかしら?
…ケーキに合っていると思うわ。
美樹さん、佐倉さん。
いやぁ、おいしいっすよ。このケーキ。
ねぇ、杏子。
うん、そうだな。
そう、ありがとう。
沢山作ったから、いっぱい食べてね。
はぁい!
…あまり食べ過ぎると、体重計と睨めっこする事になるぞ。
いいの、今日は特別なの。
そうかい。
杏子、はい。おかわりのケーキ。
相変わらず、食べるの早いんだから。
ああ、ありがとう。
さやか。
へへ、どーいたしまして。
それでね、美樹さん、佐倉さん。
今日は貴女達に特別なプレゼントがあるの。
へ?
プレゼント?
あたしたちだけに?
そう、貴方達だけに。
まどかやほむらには無いのか?
うん、わたしたちはないよ。
…ええ、無いわ。
だったら、貰えないよ。
ねぇ、杏子。
ああ。
いいんだよ、さやかちゃん。
良いのよ、佐倉杏子。
でも、
けど、
大したものじゃないから。
はい、これ。
…ん?
封筒…?
中身は帰ってから見てね。
はい、じゃあ鹿目さんおかわりは?
ありがとうございます、いただきます。
ほむらちゃん、マミさんのケーキって本当においしいね。
ええ、然うね。
まどか。
んー…どうしよう、杏子。
…受け取らないといけない雰囲気と言えば、そうだけどな。
そうよ、ちゃんと持って帰りなさい?
…じゃあ。
そうしようか、さやか。
うん、宜しい。
…うわぁ。
マミさんの笑顔、なんかアレなんですけど…。
…なんか嫌な予感しかしないな。
何かしら?
い、いいえ。
なんでもないよ。
そう。
それじゃあ気を取り直してクリスマスパーティー、楽しみましょうか。
マミさんのサンタさんの帽子、可愛いですね。
よく似合ってます。
そうかしら。
そうそう、こんなのものあるんだけど…これは佐倉さんに。
…あたし?
トナカイ。
はい。
いや、はいって…。
ねぇ、美樹さん。
美樹さんも似合うと思うわよね?
あー…。
…さやか。
うん、似合う。
似合うよ、杏子。
…おいおい。
大丈夫よ。
貴女が運ぶべきサンタさんは美樹さんだけなのだから。
え。
はい、美樹さん。
これ、美樹さんの衣装。
…う、わ。
……。
佐倉さんも見たいわよね?
美樹さんのサンタさん。
…うん、まぁ。
え、ええ…。
はい、じゃあ決まり。
……。
…遊ばれてるな、完全に。
でも可愛いと思うよ。
ねぇ、ほむらちゃん。
…まどかが然う言うのなら。
…ておい、ほむら。
あんた、そんなこと全然、思ってないでしょ。
いいえ?
良くお似合うだと思うわ、美樹さやか。
皮肉じゃん!
じゃあ、言い方を変えるわ。
バカップルにはお似合いよ。
むきぃ!!
…はぁ。
さやか。
だって、杏子…!
…プレゼントも一応、貰っちまったことだし。
な…?
うー…。
兎に角。
かぶればいいんだな、これ。
ええ、そうよ。
美樹さんは向こうで、ね?
…はい。
……。
…何、杏子。
あ、いや…楽しみだなって。
……。
……。
…行ってきます。
ん、行ってらっしゃい…。
……。
……。
…顔、真っ赤にしてるけど。
バカップル、だよね。
ええ、まさにバカップルだわ。
ふふ、楽しみねぇ。
それじゃ鹿目さんと暁美さんの分も。
え、わたしたちもですか?
……。
ええ、勿論。
だって折角のクリスマスパーティーなんですもの。
うーん…。
……まどかが着るなら。
マミさん、張り切ってたなぁ。
ねぇ。
ケーキもお茶も料理も、どれも、うまかった。
うん、本当においしかった。
あまりはしゃぐと後が寂しくなるとか、言ってたんだけどな。
でもまぁ、今年はまどか達が泊まっていくみたいだから平気だろう。
…。
あれで結構、イベントが好きなんだ。
次は早くて、正月かもな。
…へぇ、そうなんだ。
二人だった時にもやらされてさ。
あの時はハロウィンだったかな。
南瓜をかぶらされた。
…ふぅん。
昔の話だよ。
…そう、だけど。
そう、だけどー。
今はもう、さやかのものだ。
と言っても、昔だってマミさんのものだったわけじゃない。
…。
さやか。
…でも、面白くない。
…。
…だからもっと、話して。
何を?
…杏子のこと。
あたしと知り合う前の杏子のこと。
…ああ、幾らでも。
写真、ないの?
杏子が小さい頃の写真。
…。
小さい杏子、見てみたい。
…親父に燃やされたよ。
だから多分、一枚も残ってない。
…え。
あたしは魔女だったから。
…。
娘が魔女だったなんて、認めなくなかったんだろう。
だから、存在を消してしまいたかった。
いや、最初からいないものとしたかったんだろう。
…ひどい。
あの人にとっての娘はモモ…妹、ただ一人だけ。
他には誰もいない、存在しなかった。
だからって。
仕方ないさ。
親子だからって、どうにもならない事だってある。
子がどんなに親を愛していても。
世の中はそういうものなんだ。
…。
そんな顔するなよ。
今日はクリスマスなんだ。
…なんでだろうね。
うん?
…なんで、親子なのにうまくいかないんだろうね。
人、だから。
…。
…だから、なんだよ。
理屈じゃないんだ、屹度。
……。
それに今は。
さやかがいる、いてくれる。
あたしはそれで十分だ。
十分すぎる程だ。
…杏子。
さやか。
…うん、あたしも。
ん。
……杏子。
にしても、だ。
これ、結局貰っちまったっけど、どうするか。
…。
トナカイのかぶりものに…サンタの服。
まどか達も多分、押し付けられると思うけど。
…ねぇ、杏子。
うん?
杏子はどうしたらいいと思う?
…さやかの好きにすればいいと思うよ。
好きにすればって言われてもねぇ。
着る機会なんてそうそうないでしょ、これ。
…来年のクリスマスとか。
来年、ねぇ。
て、なんで顔逸らしてるの?
…いや、別に。
…。
…。
…ははぁ。
…。
ね、今夜これ着てあげよっか?
…え。
それで…いっぱい、食べさせてあげる。
……。
…あ、今想像しちゃった?
あ、いや…。
もう、杏子ちゃんったら。
コスプレプレイがお望みだったら、早く言ってくれればいいのにー。
こすぷれぷれい?
いいよ、今夜は杏子ちゃんだけのサンタさんになってあげる…。
さやか、こすぷれぷれいって何だい?
…へ。
ん?
…。
さやか?
…とにかく。
今夜のさやかちゃんは杏子だけのサンタさんになるのだ…。
…。
ね…サンタのあたし、どうだった?
…。
杏子…。
…すごく、可愛かった。
マミさんちでは、言ってくれなかったけど。
…。
…言ってくれなかった。
すごく、恥ずかしかったのにさ…。
さやか…。
…ん。
すごい、可愛かった…可愛い。
……。
…また、着て欲しい。
うん…いいよ。
だってあたし、杏子だけのだから。
…さやか。
ね、杏子。
なんだい…?
杏子も着てみてよ。
…え。
ね。
いや、あたしは…。
可愛いと思うんだよねー。
…マミさんはさやかに用意したんだ。
だからそれはさやかが一番
問答無用?
…む。
ね?
着てみて?
……。
それで…あたしだけのサンタさんになって。
…。
…トナカイもいいけど。
サンタになるのは、構わない。
けどその服は…。
なによぅ。
……。
ねぇ、杏子。
…さやか。
うん…て。
それ、サンタの帽子…あ。
……。
…なんで変身してるの?
あ、あたし、赤いだろう?
…え?
だから、これ。
これで、サンタだ。
……。
……。
…それ、ずるくない?
う。
……。
…やっぱり、駄目か。
きょーうこ。
…お。
だっこ。
え。
だっこ。
それで、上からイルミネーション見せて。
……。
ねぇ、サンタさん?
あたしのお願い、叶えてくれる?
…寒くないか?
大丈夫。
サンタさんがあったかいから。
……。
あたしね。
…おう。
初めてなの。
…。
恋人と…大好きな人と二人でクリスマス、過ごすの。
だから…すごく嬉しい。
…ああ、あたしもだよ。
…。
…大事な人と過ごす、クリスマス。
願わくば来年も、再来年も…
…この命が終わる、その時まで。
……。
…ねぇ、杏子。
叶えて、くれる…?
…ああ、勿論だよ。
だから、さやか…。
…。
…さやかも、叶えて欲しい。
……うん、もちろん。
…。
…。
…Love will grow。
……。
And nothing comes in the way…。
…。
It's true that love is here to stay…。
…。
All we have to do is to face tomorrow…。
…母さん。
…。
また、殴られたんだね…。
…おかえりなさい、杏子。
父さんに…親父に。
……。
…。
…早く、入っておいで?
……。
…杏子?
……、なさい。
なぁに…?
…ごめんなさい、母さん。
どうして…?
…親父が、ああなったのは。
あたし、あたしが…。
…大丈夫よ、杏子。
でも、昨日はモモにまで…。
だいじょうぶ…。
…う。
……お父さん、少し疲れてるだけだから。
時間が屹度、解決してくれるわ…。
でも…ッ。
…貴女は悪い事、一つもしていないのでしょう?
だから、大丈夫…。
でもあたしの写真、燃やしてた…ッ!
…。
ぜんぶ、ぜんぶ…ッ。
…貴女を愛しているわ、杏子。
かあ、さん…。
…お父さんも。
でもあたし…!
まじょって、言われたよ…!
…。
あたしは魔女なんだって……。
…Love will grow。
……。
愛は、育っていくもの
最初から完全な愛なんて、無い。
仮令、親子であっても。
…。
…ねぇ、杏子。
どんな事があっても、貴女は私達の…。
……。
…ずぅっと、愛しているわ。
…。
…。
…Love will grow。
……。
There's no need to run and hide…。
…。
It's true we've always been so slow…。
……。
Should I tell you now what's been burning inside…?
……ラブ、ウィル、グロウ。
ん…。
…あたし、そのうたすき。
……。
すき…。
…母さんが、好きだったんだ。
…。
他にも…。
…プレリュード?
……。
…ね。
ん…?
…あたしにも、おしえて。
あたしも、うたってみたい…。
…いいよ。
ほんと…?
…ああ。
じゃあ、やくそく…。
…おう。
へへ…。
……。
それから…もう、ひとつ。
…なんだい?
あたしも、たべたい。
…うん?
きょうこだけじゃ、なくて…。
…。
…きょうこだって、おんなのこだなんだから。
……ああ。
あたしだっておなか、すくんだから…。
…屹度、まずいと思うけど。
ううん、そんなことない…。
…。
…だって、あたしのあいしたひとなんだから。
……さやか。
だから…ね。
…て、今かい?
そ…。
…でも、疲れたろう?
だいじょうぶだもん…。
…さやか。
ね…サンタのあたしは、おいしかった?
……。
…ね。
ああ…とても、うまかったよ。
…たまには、いいかな。
うん…?
んーん、なんでもない…。
……。
ねぇ、きょうこ…いい?
いいよね…?
…ああ、いいよ。
さやかになら、何をされたっていい…。
…うれしい。
……。
……きょうこ。
あ。
…え。
思い出した。
…なにを。
マミさんから貰った、封筒。
……。
中身、気になるだろう?
…なんでいま、おもいだすのよぅ。
ごめん、ふと思い出した。
…あとで。
……。
きょうこ。
…ごめん、さやか。
なんか、異様に気になるんだ。
むぅぅぅ。
…確認したら続き、しよう。
ぜったい、だからね…?
…うん、絶対。
…。
…。
…なんだろうね。
なんだろうな…。
……おかね、じゃないよね。
それはないだろう。
…だよね。
もらっても、こまっちゃうし…。
……ん?
なんだった…?
…紙が、二枚。
こっちは手紙で…。
…そっちは?
……。
…きょうこ?
これ…て。
……みせて。
う、うん…。
……。
……。
……これ、て。
…。
……あれ、だよね。
だよな…。
…てがみには、なんて?
あ、ああ、ちょっと待って……。
……。
…え、と。
『さっさと、繋ぎ止めてしまいなさい。』
…あ。
て、それだけだ。
……。
ど、どういうつもりなんだ…。
……。
なぁ、さや…。
…。
さ、さやか?
…ああ、もう。
マミさんの、ばか…。
さやか…。
…。
さや
…ねぇ、きょうこ。
な、なんだい…?
…おねがいが、あるの。
う、うん。
…さらいねんの、クリスマスになったら。
Song...
“Love Will Grow” from 「FINAL FANTASY Vocal CollectionU」 曲:植松伸夫 歌:大木理沙
“Prelude” from 「FINAL FANTASY Vocal CollectionU」 曲:植松信夫 歌:大木理沙・野口郁子
“Jesus loves me,this I know (主われを愛す)” 讃美歌461番
“いつくしみ深き (What A Friend We Have In Jesus)” 讃美歌312番
BGM...
“Last Christmas” Wam!
“蟲音” from 蟲師 増田 俊郎
“Jesus loves me,this I know”
“What A Friend We Have In Jesus”
恋人が出来て、初めて迎えたクリスマス。
14年間生きてきて、初めて恋人と過ごしたクリスマス。
特別な…そう、とっても特別だったクリスマス。
そして、今年も迎えたクリスマス。
これからずっと、二人で歩む事を誓うクリスマス。
そう…二人が唯一無二になる、クリスマス。
『Darling、strange days are over…。』
形式だけのつもりだったのに。
…。
あっさりと事が進むと思っていたのだけど。
私に嫉妬するくらいだから。
…貴女が思うようにはいかないわ。
『Fears and tears、they're all gone…。』
貴女達の分もあったのだけれどね。
形式など、私達には必要無いもの。
証として、残せるけれど。
私はあの子とは違うの。
こんな形、要らないわ。
『This is the very beginning…。』
まぁ、法的にはなんの効力も無いけれどね。
でも、それでも、あの子達にとっては大事な証になる。
…でしょうね。
良いわねぇ、若いって。
…歳、一つしか変わらないのではなかったかしら。
『Now the world is meant for you and me…。』
14の歳から2年後のクリスマス。
ロマンティックと言うべきかしらね。
本人達がそうと決めたのだから、部外者が口を出すべきじゃないわ。
そうなのだけれど。
お節介ね、貴女。
ええ、ありがとう。
皮肉よ。
ところで暁美さん、ちゃんと練習はしてきたかしら?
……。
まさか、とは思うけど。
…してきたわよ、一応。
うふふ、それは良かったわ。
……。
マミさん、ほむらちゃん。
まどか。
鹿目さん。
二人で何を話していたの?
他愛も無い事よ。
今度は貴女達の番ねって、話していたのよ。
え。
…巴マミ。
良いじゃない、16歳なのだから。
…だから、私達には必要無いと。
うーん…。
…まどか?
そしたら、ここでしようか?
ねぇ、ほむらちゃん。
え…。
わたしたちの時も、さ?
え、えぇぇぇ…。
うん?
ほら、見なさい。
…う、うるさいわよ、巴マミ。
ほむらちゃん、大丈夫?
顔、真っ赤だけど…。
だ、大丈夫よ、まどか。
本当?
え、ええ。
…鹿目さんの前だと、一人の少女なのよねぇ。
……。
はいはい、ごめんなさいね。
ふふ。
ねぇ、ほむらちゃん、マミさん。
な、なに?
何かしら?
二人の歌、とてもきれいだね。
…ええ、そうね。
でも、あの子が英語なんて。
教えて貰ったんだって。
…好きはものの上手なれ、とは言うけれど。
ね。
鹿目さん、暁美さん、歌もきれいだけど。
二人も…ね?
はい、もちろん。
ね、ほむらちゃん。
…そうね、まどか。
私達も二人の歌に負けてられないわ。
良いわね、鹿目さん、暁美さん。
え、あ、は、はい…。
…勝ち負けの問題なの。
『Love will grow…。』
再来年のクリスマス…?
…。
なったら…なんだい?
…あたしたち、16さい、になってるから。
うん。
…だから、その。
…?
さやか…?
…あーもう、にぶいなぁ!
う、わ。
そのときになったら、これ、かいて。
…え。
まだ、わかんないの。
え、でも…。
なによ、いやなの。
…あ、いや。
いやなのね。
いやじゃないよ。
いやじゃないけど。
けど、なによ。
あ、あたしで、いいのか?
は?
あたし、さやかの
ばかなの?
う。
いまさら、なにいっちゃってんのよ。
そ、そうだけど。
でも、これを書くってことは
けっこんしてくださいって、いってるの。
…。
……。
……。
…ほんとに、いやなの。
さやか。
…。
これ、今書こう。
…いま?
それで、再来年のクリスマスに…
あたし。
…ん。
きょうこのきょうかいで、したい。
…え。
きょうこがそだったばしょで。
で、でも…。
…したいの。
さやか…。
…しゃしんはもう、ないかもしれない。
でも…あなたがそだったばしょは、まだ、のこってる。
ああ…。
…つらいおもいでは、きえないけど。
でも…。
…。
…しあわせなおもいでは、きっとまた、つくれるから。
さやか…。
……きょうこ。
…あたしを、ひとりにしないで。
あたりまえでしょ…ぜったいに、しない。
……。
…あなたを、ずっと、あいしてる。
あなただけを、ずっとずっと、あいしてるから。
だから。
……。
…あたしと。
けっこん、してください。
…はい。
What a friend we have in Jesus, all our sins and griefs to bear !
……。
What a privilege to carry everything to God in prayer!
……。
O what peace we often forfeit, O what needless pain we bear,
……。
all because we do not carry everything to God in prayer...
……。
……。
……。
…母さん。
……ああ、やっと来た。
…ごめん。
どうして?
…。
その子が、そうなのね?
…うん。
大事な人、大切な人。
貴女も見つけたのね。
…うん、見つけたよ。
その人と育てていくのね?
うん。
ずっと、ずっと、育てていくよ。
…そう。
報告、遅くなってしまってごめんなさい。
良いのよ、そんな事は。
…。
お父さんも喜んでいるわ。
…親父も。
ええ。
……。
…そんな顔、しないの。
折角の日なのだから。
…でも、母さん。
貴女の妹も喜んでる。
お姉ちゃんがしあわせになるって。
……。
ほら、そんな顔しないで?
笑って?
…でも。
貴女の大事な子も心配しているわ。
……。
さぁ、笑って。
私達の可愛い子供達。
そして、どうか。
…。
どうか、どうか、しあわせに。
ずっと、ずっと、しあわせに。
…母、さん。
それから、あの歌。
二人で歌ってくれて、有難う。
…。
いつかまた、歌って聞かせてね。
…うん、母さん。
あともう一つ。
ね?
うん、約束するよ。
ふふ、楽しみだわ。
…まだ、そっちには行けないけど。
未だ、来ては駄目よ?
貴女には大事な人がいるのだから。
うん…分かってるよ。
杏子。
…。
それから…さやかちゃん。
杏子を宜しくね。
……。
ずっと。
ずっと、ずっと、貴女達を愛しているわ。
……。
……。
……杏子。
…へへ。
…。
あたしの、家族。
…うん。
…。
ありがとう、杏子。
あたしを連れてきてくれて。
…。
あたしを、選んでくれて。
…さやか。
あたしを、見つけてくれて。
…あたしも、ありがとう。
杏子…。
…。
…ね?
うん…?
あたしで、本当にいい?
…ばか。
今更、何言ってんだ。
…だって、ね?
さやか以外、いない。
…。
…さやかじゃなきゃ、いやだ。
うん…あたしも杏子じゃなきゃいや。
…。
…。
…な、さやか。
ん…?
…本当に佐倉でいいのか?
うん、いい。
…そう、か。
うん、そーだよ。
……へへ。
鼻水、出てる。
…え。
嬉し泣き?
…うん。
しょーがないなぁ。
……さやかだって。
あたしは、違うもん。
…違うのか。
嘘。
…。
…ね、杏子。
なんだい…さやか。
しあわせ。
…。
…あなたと、いれば。
うん、あたしも…あなたと、いれば。
…。
…。
…わー、恥ずかしい。
はは、本当だな。
…。
…。
…末永く、よろしくね。
杏子。
こちらこそ、よろしくな。
さやか。
慈しみ深き 友なるイエスは
罪 咎 憂いを 取り去りたもう。
心の嘆きを 包まず述べて
などかは下さぬ 負える重荷を。
「「「Merry Chritmas and Happy wedding…!!」」」
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