呼んでもいないのに、あいつはあたしの元に通い来る。
しかも、決まって窓から。
この部屋一階じゃないんですけど、幾らなんでも不審者通り越してるでしょうが、なんて言っても聞きやしない。
これでも乙女なんです、窓の施錠だってちゃんとしているんです。
なのに、あのヤロウ…違った、あいつは男じゃない、一応、あたしと同じ女の子だから…え、と。
…まぁ、そんなことはどうでもいい。
あいつったら、へらっとやってくるのだ。大抵、と言うより、いつも家族が寝静まった頃合に。
鍵の掛かった窓、それを(魔法の無駄使いで)いとも簡単に、抉じ開けて。
連日の時もあるし、一週間に一度くらいの時もあるし、朝起きたら隣に寝てましたなんて事もあったりで。
目を開けたら、あいつの寝顔が、小さな子供のように眠る顔が、目の前にありましたとさ。
慣れてない頃は、それはもう、吃驚したね。
もう、声も出なかったね。
もっと言えばぎゅうっと、あたしにしがみついて寝ててね。
それがちょっと可愛いなんてね。
だって、戦いの時は誰よりも前に立って、傷つくことさえも厭わないって、感じでさ。
その姿は、その背中は、誰よりも頼りになって。いつだって、あたしを守ってくれていて。
気付けば、ちょっと格好いいな…なんて、思っちゃった自分がいたわけです。
そんなあいつがあたしにしがみついて、安心しきったような顔で、すやすやと寝ているわけですよ。
起きてる時だったら見せてくれない、他の誰かには見せてない(と思う)顔が、目の前にあるわけですよ。
かわいい、って、思わない方がどうかしてると思うんですよ。
そう、あの顔はあたしだけのもの。
なんて、さ。
今夜は一人。
ベッドは広いし、手足も思い切り伸ばせるし、言うことなし。
…なし、なんだけど。
ここ最近、あいつは来ない。
少なくとも一週間に一度は来てたくせに。
人の都合なんて、一つも構わないで。
今夜行くよって一言、言ってくれればいいのに。
そうすれば、鍵を開けて待って…いやいや、別に待ってるわけじゃないんだけど。
……ないんだけ、ど。
いつ逢える、なんて。
そもそも、嫌でも会えるのだ。
毎日とは言わなくても。
戦いになれば。
でも。
でも、さ。
あたし達は恋に恋するお年頃なんだし、さ。
…て、違う、違わないけど、なんか違う、と言うか全然違う。
あいつはそんなんじゃない。
だから、うん、違う。違うんだ。
……はぁ。
今夜はなんだか、眠れない。
カラダは疲れているハズなんだけどな…。
今日、学校であったことを思い出してみる。
和子先生は相変わらず。今回はなんで喧嘩したって言ってたっけ。
なんだかいつも、食べ物の事で喧嘩してるような気がする。
そういや、今日は数学の宿題が無駄に多かった。
さやかちゃんを殺す気か。あんな量、さやかちゃんがこなせると思ったら大間違いだ。
……まぁ。
明日、仁美にでも聞くからいいけどさ。
…きょうも、きょうすけと、ひとみは、なかよさげに、いっしょに、かえってました、まる。
……杏子の、ばか。
なんで、今夜に限って、来ないのよ。
いつもは呼んでもいないのに、勝手に、押しかけてきて。
勝手に人の布団の中に入ってきて、さやかはあったかいな、なんて言っちゃってさ。
熱い、くっつくなって、言っても、聞かなくてさ。布団の広さを考えれば、どうしようもなくてさ。
されるがままに、その背中に手を回せば、あったかくてさ。
あったかくて……ああ、杏子は今、あたしの腕の中で生きているんだなって、思っちゃうのよ。
そのことが、ひどく、あたしを安心させるのよ。
たとえ、その中に魂が無くたって。
……杏子。
念話は通じない。と言うか、返事がない。
携帯も通じない。と言うか、あいつは最初からそんなもの持ってない。
今、どこにいるんだろう。いつもはどこで眠っているんだろう。
ごはんはちゃんと食べてるの。お菓子ばっかりじゃだめなんだから。
思えばあたしはあいつのこと、ほとんど知らない。
名前と、林檎が好きなのと、お菓子ばかり食べていることぐらい。
大体、知りたいなんて思ったことなかった。
なかった、のに。
杏子……杏子…。
…返事、してよ。
早く、来てよ。
あんたの熱、感じさせてよ。
あたしがちゃんと生きてるって事、教えてよ。
眠れない、眠れないの。
一人じゃ、もう。
逢いたい。抱き締められたい。
ねぇ、杏子。
杏子…。
……さやか。
………。
…よぉ。
……。
……。
……。
…月。
……。
きれいだぞ。
…どうでもいい。
…。
…なんで。
…。
なんで、こなかったのよ…。
…。
…なんで、こなくなったのよ。
……。
…もう、こないとおもったんだから。
あたしが、来なかったら。
…。
…来なく、なったら。
ばか。
……。
…ばかじゃないの。
ひでぇなぁ…。
……。
……。
…はやく、きなさいよ。
……。
…きてよ、きょうこ。
さやか…。
……。
…わ。
……。
…さやかはやっぱり、あったかいな。
うるさい、ばか…。
…なんでだよ。
……。
……。
…きょうこ。
なんだい…?
…だまって、こなくなったら。
…。
……いっしょう、ゆるさないんだから。
……。
ゆるさないんだから…。
…ん、分かった。
……。
さやか……。
…あんたの、せなか。
ん…。
…あったかい。
あんしん、する…。
……うん。
…きょうこの、ばか。
N o c t u r n e
あいつのところへ、通い行く。
正面からは行かない。
あいつの部屋は一階じゃないけれど、そんなの問題じゃないし、妨げにすらならない。
窓の鍵は毎回、掛けられている。抉じ開けられるのは分かっているくせに。
と言っても、開けっ放しは無用心にもほどがあるから、これでいい。
あたし以外のヤツがあいつの部屋に入る。
そんなの、想像しただけで、躰が燃えるように熱くなる。血が沸騰しそうになる。
そんなの、あたしが許さない。赦さない。
……。
毎日の時もあれば、週に一度くらいの頻度で通う。
家族が寝たであろう頃合を見計らって。
あいつは起きている時もあれば、眠っているところを起こしてしまう時もある。それから、全く起きない時も。
だけど、あたしがする事は変わらない。
あいつの熱であったまった布団に潜り込み、あいつのカラダを抱き締める。
起きている時は少しだけ、抵抗されるけれど、最終的にあいつは許してくれる。
あたしの背中に回されるあいつの細い腕。無意識のうちに洩れる、溜息。
あたたかいカラダ。生きている鼓動を感じる、カラダ。
いいにおい。やさしい柔らかさ。昔、感じたことのある他者の温もり。
その中にいる時だけ、あたしは自分の生を感じる事が出来た。
その中にいる時だけ、あたしはあいつの生を抱き締める事が出来た。
たとえ、そこに魂が無くとも。
……いつ逢いに行っていい、なんて。
言えたら。
言ってもいいなら。
全部、捨てたハズだったのに。
自分の為だけに生きるのに、不要なものは一切、捨てた。
必要ない。必要にしてはいけない。必要なものなんて、あたしには、ない。
それなのに。
あたしは、捨ててなんかいなかった。
ただ、それに気付かないふりをしてただけだったんだ。
他者の温もり。
それを求める、心。
魂なんて、無い筈なのに。
それなのに、胸は痛み、苦しくなる。
魂と心は、違うものなの。
いっそ、同じものだったら良かったのに。
そうしたら、こんなに。
…こんなに、求めなくても良かったのに。
逢いに、行くよ。
逢いに、来て。
そんな睦言、どうして手に入れられる?どうして、叶える事が出来る?
大事なものを壊したこの手で、どうして掴む事が出来る?
望むな、全て、諦めろ。
あたしにあるのは、残っているのは自業自得、因果応報の人生だけなんだから。
……はぁ。
最初は、殺してやろうと思った。
無性に、むかついた。滅茶苦茶にしてやろうと思った。
だけどそれは全部、自分への感情、で。
他人の為の願い。祈り。自分勝手で、自己満足な、希望。
欺瞞。
あいつの姿は、自分のそれ。
崩れていく姿は、自分のかつての姿。
信じて信じて、信じていた筈なのに、壊れてしまった。
壊してしまって、初めて気付く、自分の中にあったもの。
願いを叶えた、叶えてあげた、見返り…。
………さやか。
…ああ。
逢いたい。
今は、ただ。
逢いたい。
逢って、抱き締めたい。
逢って、抱き締められたい。
その中でしかもう、眠れない。
その中でしかもう、生きている事を感じられない。
その中でしかもう、生きられない。
…杏子。
……。
…ばかじゃないの。
……。
こんなひどい熱…。
……さやか。
なんで、来ないのよ…。
……。
ほんとう、ばかじゃないの…。
……。
…杏子。
さやか……。
……。
……くるしい、ん、だ。
当たり前でしょ…。
…どうして。
どうしてって。
…そのきになれば、いたみも、かんじなくできるのに。
……。
どうして……こんなに、くるしいんだ…。
…あたしも、ばかだけど。
……。
あんたも、相当、ばかだね…。
……さや、か。
ねぇ…杏子。
……。
…あたしのこと、もっと、求めてよ。
……。
求めて…欲しいんだよ。
…そんな、の。
自分でも。
…。
…どうして、あんたに。
こんな感情を持っているのか…分からないのよ。
……。
…でもさ。
あんたのカラダ、あったかいんだ…。
……。
…なくしたくないって、思っちゃったんだ。
ああ……。
…ねぇ、杏子。
……。
あたしはばかで、どうしようもないけど……。
…。
…求めて、くれる?
……。
あたしも…求めて、いい?
…さやか。
さやか…。
……。
……くるしい。
…。
くるしい、よ……。
大丈夫だよ…杏子。
……。
…あたしが、いるから。
……。
だから……。
……。
…なにか、食べる?
……。
…なにか、食べたの。
……。
…体温計、とるよ。
……。
…38度9分。
……。
…ばか。
……さや、か。
……。
…。
…なにか、飲んで。
…。
水分。
とらないと。
……、って。
…。
……ない、で。
…スポーツドリンクがいいんだよね、こういう時って。
……。
すぐに、戻ってくるから。
…。
…大丈夫。
いなくなるわけじゃ、ないから。
…。
…いなくなんか、ならないから。
……。
…杏子。
……。
…飲める?
ん……。
…よかった。
……。
…。
……。
…味、する?
……ぅ、ん。
味覚、やられちゃったんだね。
あたしも熱出すと、そうなんだ。
……。
…だから、分かるよ。
ただでさえ食欲、ないってのにさ…。
……。
…飲んだら、少し眠って。
眠れなくても。
……、か。
…ねぇ、杏子。
……。
あんたでもこんなに弱ること、あるんだね…。
…。
…あんたは強いと思ってた。
いつも、あたしを守ってくれてたから。
…。
…口が悪くて、乱暴で。
顔を合わせれば、憎まれ口ばっかりで…。
……。
…でも、気がつけばいつも隣にいて。
あたしが酷い事を言っても、傍にいてくれて…。
……。
……杏子。
……。
…ずっと、一緒にいて。
……。
…あたしを、見捨てないで。
……。
……あんたが、教えてくれたの。
……。
あんたがいなかったら、あたし……きっと、ここにはいなかったの。
……。
……。
……か…。
…あたしだけの人に、なって。
さやか…さや……。
……。
……、に。
…なに?
なに、杏子…?
……いっ…しょ、に。
……。
……に、…て。
…うん。
熱を出すとどうして、怖い夢を見るんだろう。
山道、でっかい岩が転がってきて、ぺしゃんこになる寸前のあたし。
崖、すっごい高い、何故かぶらんこから放り出されて落下していくあたし。
沼、底なし、道に迷って挙句にたどり着いた場所、足を取られて沈んでいくあたし。
川、濁った水、激流、流されて飲み込まれていくあたし。
近所の道、帰り路、どっから飛んできたか分からない矢が頭にすこんと刺さる、あたし。
水底、暗い場所。
海の底、光のささない場所。
独りぼっち、誰もいない場所。
ただ、ただ、沈んでいく、あたし。
…はぁ。
……。
う…ぅ…。
…。
……ぅ。
…夢、見てるのかな。
……。
…こいつでも泣きながら起きたり、するのかな。
……。
…したのかな。
……。
……ねぇ、どんな子だったの。
……。
…今度、話して聞かせて。
……。
だって、あたし…。
……。
…あんたのこと、全然知らないから。
…。
…あたしも、話して聞かせてあげる。
うるさいって言われても…聞かせてやるんだから。
……。
ねぇ、杏子…。
……。
…それであたしが、熱を出した時は。
……。
同じように、してね…。
…。
…怖い夢を、見て。
泣きながら、起きた時…。
…。
…傍にいて、そっと、慰めて。
……。
……ねぇ。
熱を出すと、決まって怖い夢を見た。
内容はいつも、ほとんど覚えていない。
兎に角、怖い夢。それ以上、言いようがない。
小さい頃は泣きながら、目を覚ました。
暗い天井、夢と現実が入り混じって、覚めない悪夢、終わらない恐怖。
熱で朦朧としている意識、泣きながら呼ぶ、言葉になっているのか分からない、それ。
ただ、一つ。
ただ、一つだけ覚えている事は。
いつだって、あたしは独りぼっちなのだ。
独りぼっちで、何かしらの恐怖に襲われる。
黒く塗り潰されて、底に、堕ちていく。
光のささない場所、まるで、深海のような場所へ。
……ふ。
……。
さや、か…。
…。
…さやか…さやか…。
……大丈夫。
……。
…今の杏子は、独りぼっちじゃない。
……。
だから、大丈夫…。
…う、ん。
……。
……さやか。
ん……。
……。
……。
…う。
起きた?
……。
と言うか、起きて。
…さやか。
ねぇ、起きて起きて。
…わかった、わかったから。
ゆらすなって…。
起きた?
…ん。
本当にぃ?
…おきたって。
じゃあ、キス。
…あ?
勝手に寝ちゃった、そのお詫びをさやかちゃんは要求する。
……。
大体ね、やるだけやって、先に寝ちゃうなんて最低なんだけど?
…まて。
はなしが、みえない。
は?
…やる、って、なにをだ?
あたし、さやかになにかやったか…?
……。
うぐ…。
…あんた、それ、真面目に言ってたら許さないんだけど。
……。
杏子。
……ゆめ、みてた。
は…?
…ねつ、だして。
……。
さやかんちに、きて…ベッドによこになって…。
……。
…それから。
おまえが、ひとばんじゅう、だきしめてくれて…。
……。
…あれは、ゆめだったのか?
て、あたしに聞かれても。
…だよなぁ。
でも、さやかのぬくもり、ほんもののようで…む。
それは、そうでしょ。
…。
杏子さん、今あたし達がどんな状況か、お分かりになってます?
……。
分からないなんて言ったら、
…わかります、わかりました。
本当に?
…ほんとうだよ。
ふぅん?
さやか、わるかったよ…。
そう、思ってるなら。
…。
……まだ、言わせる気か。
いわなくて、いいよ…。
……じゃあ、早く。
……さやか。
ん……。
……。
…やだ、これだけじゃ足りない。
げんきだな…。
…バカにしてる?
……してない。
ん、杏子……。
……。
…ん、…ふ…ぁ。
……さやか。
やだ、もっと…。
……これいじょう、は。
いいじゃん…もっと、して。
……いいの、か。
二回も言わせないで…ばか。
……ごめん。
きょうこ…。
……。
…ね、あんたってさ。
なに…。
…あたしの胸、好きだよね。
……。
…で、決まって、左からなの。
それ、は…。
…右が利き手だからかな。
かんがえたこと、ない…。
…でも、好きでしょ?
……。
ねぇ…。
……うん、すき。
へへ…。
……。
…杏子だけ、だからね。
あたし、だけ…?
…あたしの胸、触れるの。
……。
あと、あたしが抱き締めたい思う人…。
…ぜったい、だぞ。
なぁに?
杏子ちゃんったら、疑ってるの?
…。
……絶対に決まってるじゃない、ばか。
ねつ、だしたら。
…もちろん、そばにいてあげる。
……ぜったい、だからな。
だからそうだって言ったじゃない、ばか…。
…さやか。
さやか…。
…ね、もういちど。
ね、きょうこ…。
うん……。
……ぁ。
……。
……。
…ぅ、ん。
……。
…さや、か。
……起きた?
さやか…さやか…。
…え。
……さやかぁ。
……。
……。
…あー、うん。
杏子、起きて。
…もう、すこし。
お願いだから、起きて。
と言うか、病人じゃなきゃ殴ってるから。
……。
あ、う…。
…もっと、って、いった。
は、はぁ?
……すき、なんだ。
きょ、杏子。
さやかの、むね…すき、なんだ。
…!
やわらかくて、あったかい…いいにおいが、するんだ…。
ば、ばか…ッ!
……?
さやか…?
あ、あんた、今、自分で何を言ったか…!
……。
と言うか今、何してると…!
……なに、して?
あ、あんた、人の胸…。
……。
……。
……あ。
……。
…あたし、なに、いった?
……。
あたし、なに、した…?
……。
…ッ!
わぁぁぁ…ッ!
叫びたいのはこっちよ、ばかぁ!
ち、ちが、ちがう…!
何が違うのよ!
人の胸、思いきり…ッ。
ちがうんだ、さやか!
これは、そういうんじゃなくて、
じゃあ、どういうコトよぉ…。
あ、あたしは、あたしは…ッ。
……。
……わぁぁぁぁぁぁぁ。
だから、叫びたいのはあたしの方よぉ…。
……。
……て。
……。
そ、そんなに離れなくても…落ちちゃうわよ。
……。
きょ、杏子…?
…ちがう、ちがうんだ、そういうんじゃ、ないんだ。
……。
あたしはさやかといっしょにいると、あんしんするから…だから。
…だから?
だから、いっしょにいたいって…いっしょにねむりたい、だきしめたいって、そう、思っただけで。
あ、あんなこと…。
…あんなことって?
……。
…人の胸、熱があるからとは言え、思いきり…も、揉んでくれたんだから。
ちゃんと教えてくれないと、許さない。
……さ、さやか。
なに…。
……ごめん、なさい。
……。
な、なんで、あんなゆめ、みたのか、じぶんでも…。
…どんな夢よ。
…。
あんたがどんな夢、見たのか。
あたしには分からないわよ。
……。
…分からないけど。
あたしの、その、胸と関係しているなら…。
……。
…て、杏子?
……。
…真っ赤、じゃない。
熱、まだ下がって…。
…さやか。
…。
ごめん……ごめんなさい。
…あのね、杏子。
む、むね…。
……。
…ゆ、め。
……うん。
あ、あたし…さやか、と…その…そういうコト、してたん、だ…。
…そういう、コト?
は、はだかで…。
…。
……はだか、で。
ねぇ、杏子。
……。
あんたは…あたしとそういうコト、したいの?
…!
ちが…ッ!
だから夜、あたしの所に
ちがう…ッ!
あたしは、あたしは…。
……。
…あたしは、さやかといっしょに、いたいから。
だから…。
…でも、胸。
あ、あぁ…。
……。
……。
…熱。
……。
まだ、下がらないみたいだから。
…で、でも。
いいの。
あたしがいいって言ってるんだから、いいの。
あ、う…。
…ばーか。
さ、さやか、あまりくっつく、な…。
…うるさい。
夜、人の所に忍び込んできて、抱きついてくるヤツに言われたくない…。
う…。
……。
さ、やか…。
…ねぇ、杏子。
……。
……あたしの、こと。
……。
……好きって、言って。
え…え?
…そしたら、許してあげる。
さ、さや……。
ねぇ…言って。
あ、あたし、は…。
……。
……あたし、は。
……。
……。
…ねぇ、はやく。
はやく、いってよ…。
……。
…?
杏子…?
……うぅ。
……。
……。
…なんでこんな時に熱、上がるのよ。
ばか……。
……。
杏子。
……。
何か、食べる?
食べられそう?
……。
ぼんやり、してる。
熱は下がったと思うんだけど。
……。
あたし、思うんだけどさ。
あんたって、食べられなくなったらおしまいって感じよね。
……。
……。
……。
…何か、言いなさいよ。
……ありがと、な。
…。
…そばに、いてくれて。
…。
……なぁ、さやか。
何。
…その。
だから、何よ。
…あ。
……。
さ、さやか…。
…言ってくれる気になったの。
…!
…言ったでしょ。
言ってくれなきゃ、許さないって。
……。
…言ってよ。
……。
…。
……、だ。
聞こえない。
……すき、だ。
もっとはっきりと。
すき、だ。
だいすき、だ。
…。
…う。
……ばーーーか。
ゆ、ゆるしてくれないのか…。
…うん、許さない。
……。
…こんな弱ってる杏子、次いつ見られるか分からないし。
ひでぇ……。
…勝手にあたしとそういうコトしてる夢、見ておいて。
……。
ねぇ…。
…あ、う。
教えて、杏子。
……。
…どうして、あたしだったの。
どうしてって…そんな、の。
そんなの?
…わからない、よ。
分からない?
あたしの胸、はっきりと好きって言ったくせに?
……。
どうしてあたしと眠りたいと思ってくれたの?
そ、れは…。
…。
…さやか、だから。
あたしだから?
他の誰かでも良かったんじゃないの?
誰でも良かったんじゃないの?
な、なんでだよ…。
なんでって?
…だれでもなんか、よくないよ。
……。
よく、ないんだ…。
…じゃあ、あたしがいいの?
…。
…あたしだけが、いいの?
……。
ちゃんと、言って。
あたしに教えて、杏子。
…さやか。
……あたしは、ばかだから。
ちゃんと教えてくれないと、分からない…分からないのよ。
……。
…あんたが、あたしの部屋に来て。
抱き締められて、一緒に眠って。
…。
…いつの間にか、それが当たり前になって。
一人なのが、当たり前じゃなくなって。
…。
…どうして、しばらく来てくれなかったの。
ねぇ、どうしてよ…。
…それ、は。
……あたしのこと、どうでもよくなったんだって。
もう、あたしのことなんか…いらないんだって。
ち、ちがう。
…じゃあ、どうして。
……
……。
……あたしも、おなじだから。
同じ…って?
さ、さやかといっしょじゃないと…その、ねむれなくなった。
……。
…あたりまえに、なっちまったんだ。
だったら、どうして。
…だって、それはだめなことだから。
だめ?
なんでよ。
あたしは、のぞんじゃいけない…ほしがっちゃ、いけないんだ。
だってあたしは、あたしのては、こわすだけだから…だから。
そんなこと…!
さ、さやか…。
…ばかじゃないの。
……。
…どうして、決め付けちゃうの。
だって…。
だって、何よ。
…すき、だったんだ。
……。
すきだから、もう、いやなんだ…。
…。
あんなゆめをみるほどに…あんたのこと、が。
…。
…やっと、きづいたんだ。
…。
…だから。
もう…。
ばか。
…。
本当、ばかじゃないの。
…。
…ねぇ、杏子。
……。
今夜から、あたしの部屋で寝て。
毎日。
え…。
あんたの眠る場所は、あたしの部屋。
他の場所で寝るなんて、許さない。
さ、さやか。
つべこべ言うな。
で、でも…
つべこべ言うなって言ったでしょ。
…いいの、か。
いいも何も、許さないって言ってるでしょ。
…でも、あたし。
そういうコト、する?
…ッ!
したいの?
……する、かも…しれない。
じゃあ、すればいい。
え、え…あ。
……。
さ、さや、さや……。
…ねぇ、やわらかい?
…。
ねぇ、あったかい…?
…。
…ねぇ、いいにおい、する?
…!
……きょうこ。
さやか…さやか…さやか……。
…ね、今夜からはここがあんたの部屋だよ。
う、ん……。
…ここで一緒に、眠るの。
あたしと。
…うん…うん…。
それでもし、そういうコト、したくなったら。
…。
…その時はあたしのこと、ちゃんと好きっていうこと。
分かった…?
…わかった。
うん……。
……。
さやか…さやか…ぁ。
…じゃあ、とりあえず。
……。
熱、ぶり返しても困るから。
今日は一日、大人しく寝てなさい。
…いちにち?
そう、一日。
…ここで、か?
当たり前でしょ。
不満でもあるの?
…ない。
ぜんぜん、ない…。
ん。
で、何か食べたいものは?
…りんごがくいたい。
りんご、ね。
ヨーグルトなんかは?
…くう。
じゃ、さやかちゃん特製りんごのヨーグルト作ってあげる。
そんなの、あるのか…?
と言っても、ヨーグルトの中にりんごを入れるだけだけど。
……いい。
それでも、いい…。
うん。
…なぁ、さやか。
うん?
その、な…。
…その、なぁに?
ま、また…いっしょに、ねて…ほしい。
……。
…だめ、か。
だめなわけ、ないでしょ。
ばーーか。
あまい、ゆめを。
あまい、あまい、ゆめを。
…なぁ、さやか。
うん…?
…こわいゆめ、よく、みたんだ。
熱、出すと…?
ちいさいころの、はなしだけど…。
…今もじゃないの?
……。
だから…あたしのとこ、来たんでしょ?
……。
…杏子って結構、あまえんぼ?
ば、ばか…。
…でも、あたしもね。
ん…さやか…。
…小さい頃はよく、見たんだ。
怖い、夢…。
……。
現実では起こらないような、そんな夢…。
…どんなの?
転がってきた岩に潰されそうになったり、ぶらんこから崖に放り出されたり…。
それは…ないな。
でしょ…?
でもね、すごく怖かったんだよ…。
…うん。
杏子は…杏子の夢はどんなだったの…?
…。
ね、どんな…?
…おぼえて、ないんだ。
…。
おきると、ほとんどわすれてて…でも、すごくこわかったことだけ、のこってて。
……。
…でも、ね。
うん…。
…いつだって、ひとりぼっちなんだ。
独りぼっち…
くろく、ぬりつぶされて…そこに、おちていく。
ひかりのささないばしょ…まるで、
…海の底のような場所。
さやか…?
…そっか。
…。
…水底、暗い場所。
……。
海の底、光のささない場所…。
……。
独りぼっち、誰もいない場所…。
……。
ただ、ただ、沈んでいく……。
…さやか。
……。
……。
…怖いよね、怖かったよね。
うん…こわかったよ。
…あたしも。
……。
怖かった……どんな怖い夢より、それが一番怖かったよ…。
うん……。
……。
…でももう、へいきだ。
杏子…。
…さやかがいてくれれば、もう、みない。
……。
なにも、こわくない…。
…あたしも、見ないかな。
…。
あんたが、いてくれれば…。
…だと、いいな。
いいな、じゃ、だめ。
…。
…だめなんだから。
うん、わかった…。
…でも、だからって。
…?
そういうコト、してる夢はどうかと思うけど…。
…う。
杏子って結構、むっつりなのかも?
む、むっつり…?
…そ。
えと…むっつりって、なんだ…?
…え。
さやか?
……。
…ぁ。
こういうコト、したいのに。
したいって、言えない人のコト。
さ、さやか…。
…夢のように、する?
…ッ。
…でも、だめ。
熱、ぶり返したら大変だから。
……。
…ふふ、杏子ちゃんったらかわいい。
あまり、あそぶな…。
…まぁ、ゆっくりとね。
…?
これからはずっと、一緒なんだし…。
ゆっくり、って…?
…なんでもない。
BGM...
“Yellow Moon” Akeboshi
…ゆっくりとね、なんて、言ったけど。
今夜もあいつは通い来る。
あの日から、毎日、毎晩。今まで一度だって、約束は破らずに。
相変わらず、窓から。正面から来ればいいのにって一応言ったけど、曰く、なんだか気まずいらしい。
まぁ、気持ちは分からないでもないから、それ以上はあたしも言わない。
来るのは分かっているから鍵は…掛けろと言ってきかないから、一応、掛けてある。
あれで結構、心配性なんだ。
と言ったら、お前が楽観的すぎるんだって、不貞腐れた声で言われた。
その後に何かぶつぶつ言っていたけど、教えてくれなかった。解せぬ。
相変わらず、抉じ開けられるあたしの部屋の窓。
念話で呼びかけてくれれば、喜んで、開けてあげるのに。
いつだって、あいつはそっと入ってくる。物音一つ、立てずに。
…ああ、でも。
これはこれでいいなぁ、なんて。
…さやか。
たまに寝たふりなんかして。
耳元で、名前を呼ばれるのを感じて。
それでも寝たふりを続けてやって。
そうすると、耳元に熱い吐息をかけられて。
それから。
……さやか。
耳への甘噛み。あいつの、小さく尖った、八重歯の感触。
躰中が痺れてしまうような、甘い、痛み。
あの時はむっつりなんて言ったけど。
今でもやっぱり、変わりないんだけど、でも。
……。
舌を、入れられる。
性のそれと言うより、小さな子供が甘えてくるような。
でもあたしには、十分すぎるほどの刺激で。
もっともっとって、言いたくなる。
はやく、はやく、あたしを食べてって。
さやか…。
…あの時はゆっくりとね、なんて言ったけど。
お互い、明日はどうなるか分からない身。
こんなに想って、こんなに想われているのに、あなたの感触を知らないまま、なんて。
……。
頭よりも、躰が。
理性よりも、本能が。
生命の危機にあった時、懸命に子孫を残すようにプログラムされてるとか、なんとか。
そんな小難しいことはどうでもよくて。
あたしは、ただ、ただ、あいつを知りたかっただけで。欲しかっただけで。
どうせ、あいつとは子供を残せないわけだし。
魔法少女なんだからなんとかなってもいいんじゃないの、と、思わないわけでもないけどさ。
…ああ、でも。
たとえ、あいつの子供を産めたとしても、その子は親を、あたし達を知らない子になっちゃうかもしれないから。
それでも強く、生きて欲しいなんて思うのは、親の我侭だから。
…さやか。
…話を、元に戻そう。
あたしは、あいつが欲しかった。知りたかった。愛して、欲しかった。
だから、あの日から一週間も経たずに、あたしはあいつに…。
おい、さやか…。
あ、ぅ…。
……なに、かんがえてんだ。
なに…って?
……。
…もちろん、あなたのことだけど?
うそくさい…。
…ひどいわ、あなた。
だから、それがうそくらい…ていうか、きしょくわるい。
うわ、ひど…。
…で、なにかんがえてんだよ。
んー…。
…あたしいがいのことか。
それは、ない…。
…じゃあ、なんだよ。
……。
…さやか。
よばい、みたいだな、って。
……。
…むしろ、よばい?
おまえな…。
…きょうこ。
……。
あんなに、かわいかったのに…いまじゃ、けものみたい。
…かみつくぞ。
うん、いいよ…。
……。
…あ、ん。
……。
…ね、きょうこ。
……なんだい。
もっと、して…?
してる、んだけど…。
…もっと。
……。
…だって。
だって…なんだよ。
さわって、ほしいんだもん…もっと、もっと。
…だったら、さやか。
ん……。
…うわのそらは、やめて。
…。
ちゃんと、あたしだけを。
…あたりまえでしょ、ばか。
…ゆっくりね、って、言われたけど。
今夜もあいつの元へ、通い行く。
あの日から毎日、毎晩。一度だって、欠かすことなく。
約束、それはあたしを甘く縛る。縛られるのはキライだったのに、今じゃそれがとても心地よくてしょうがない。
あいつの部屋に入るのは、やっぱり、窓から。
玄関から来ればいいのにって言われたけど…親がいないことも知ってるけど、でも、それでも気まずい。
それは多分…うまく言えないけど、後ろめたさってヤツなのかもしれない。
なんとなく、気まずい。
それを伝えたら、今度は毎日の事だから鍵を開けておこうかなんて言い出しやがる始末。
そんなの、駄目に決まってる。
気持ちは嬉しい、嬉しいけど……そんな危ないこと、誰がさせられるか、ばか。
大体、あいつは女の子なんだ。誰がどこで狙ってるか、分からないんだ。
もう少し、自分を大切にして欲しいんだ。
…大切に、しようと思ったんだ。
…ぅ。
寝たふりなことは、分かってる。
耳元で名前を呼ぶと、甘い声が洩れるから。
それでも寝たふりを続けるから。
だから、耳元にそっと吐息をかけてやる。
それから。
……きょ、う。
耳朶への甘噛み。あたしの小さく尖った、あいつが気に入ってくれている八重歯で。
脳が溶けてしまいそうな、甘い、感触。
それは砂糖よりも、甘くて。
あいつの全てがどんな菓子よりも、甘ったるくて。
……。
舌を、耳の中に差し入れる。
あいつ曰く、性のそれと言うより、小さな子供が甘えてくるような。
だけど、あたしはそんなつもりじゃなくて。
今から、あんたを食べますという合図のつもり。
はやく、はやく、あんたを食べたいって。
きょうこ…。
…あの時はゆっくりとね、なんて言われたけど。
お互い、明日はどうなるか分からない身。
こんなに想って、こんなに想われているのに、あなたの感触を知らないまま、なんて。
……。
頭よりも、躰が。
理性よりも、本能が。
大切にしたいと言う気持ち、犯してしまいたいという気持ち、相反する気持ち。
あたしは、ただ、ただ、あいつが欲しかった。あたしだけのものしてしまいたかった。
どうすれば、あたしだけのものに出来るんだろう。
もしも、たとえば、あたしが男だったら叶う願いなんだろうか。
あいつを孕ませて、あたしの子供を産ます。
男でなくても、魔法少女なんだから或いは。
…ああ。
もしもそれが出来たとして、生まれてきた子供はどうなるんだ。
あたしの身勝手な、汚い欲望の為に、その子は不幸になるに違いない。
子供だけじゃない、あいつだって……それだけは、だめだ。
絶対に、だめなんだ。
…きょうこ。
…ああ、神さま。
あたしは、あいつが欲しかったのです。知りたかったのです。愛して、欲しかったのです。
それが貴方に対しての冒涜、大罪と為るならば…あたしは幾らでも、貴方の罰を受け入れます。
だけれど、どうか…。
きょうこ。
…。
きょーこ。
…。
ねぇ、きょうこってば…。
…っ。
……なに、かんがえてるの。
さやか…くすぐったい。
かまってくれない、きょうこがわるい…。
……。
…ねぇ、かまって?
げんきだな…あいかわらず。
…きょうこにはいわれたくなーい。
……。
ねぇ…ねぇ…。
…なぁ、さやか。
ねぇ、きょうこ…。
…なんだい、さやか。
あたしのこと、すき…?
…。
…ねぇ、すき?
さんざ、いった…いわされた。
…こういうのは、かいすうじゃ、ないの。
それになによ、いわされたって…まるで、いいたくなかったみたいじゃない。
……。
ねぇ…。
…すきだよ。
…もっと、あまく。
すきだよ…さやか。
……。
…すきだ、だいすきだ。
じゃあ…。
…。
…もっと、ほしがって?
さやか…こんやは、もう。
……。
…どうかんがえても、あたしよりげんきだよ。
もう、いらないの…?
…。
…あたしのこと、いらない?
そんなこと、いってないだろ…。
…だったら、もっとたべて。
もっと、さわって…。
……なぁ、さや
……。
……。
…ことば、よりも。
……。
ん……。
……。
きょうこ…。
…あたしのこと、すきか。
…?
あたしのこと、すき…?
……。
…あたしは、よくいうけど。
おまえは、いわない…いって、くれない。
…。
……。
…きょうこちゃん、かわいい。
おまえな…。
…あたし、いってなかった?
……。
…カラダでいっぱい、いってあげてるのに?
カラダでって…。
…。
おまえは…ずるい。
…そうだよ、あたしはずるいの。
だって。
……。
…だれにも、あげたくないんだもん。
あたしだけ、あいしててほしいんだもん…。
…。
…だから。
さやか。
あ、ん…ッ。
……。
やだ、いきなりつよく…。
…だって。
あ…ぁ…っ、…。
…さわってほしいっていったのは、さやかだ。
きょう…、こ…きょぅ…。
……。
あ、ひぁ…ぁ…あ…。
…ことばで、ほしいよ。
は…ぁ……あぁ…。
…ことばに、してよ。
さやか…じゃないと。
……。
…じゃない、と。
……。
…すきだ…すきだ…だいすき、なんだ……。
…。
…ねぇ、いって。
いってよ…さやかぁ…。
……もっ、と。
…。
もっと…たべて、くれたら。
……。
…あたしのこと、ほんとうに、てばなせなくなったら。
……しってる、くせに。
…。
……そんなの、とっくに。
とっくに、あたしは…。
……。
さやか…さやか…。
…ね、かさなろ?
……。
ねぇ…かなさって。
……。
……。
…さやか。
ん…。
……。
…なんだっけ。
え…?
…いつか、あんたにいわれたこと。
……。
なんだっけなー…。
…いつのはなしだ?
いつだっけ…。
…だいじょうぶか、さやか。
だいじょうぶじゃない、かも…。
…。
…だからせきにん、ね?
……ああ、わかってるよ。
よしよし…。
…。
んー……。
……。
…ああ、おもいだした。
なんだい…?
…きぼうとぜつぼうのバランスはさしひきゼロって、やつ。
……。
…ほんとうだなぁ、って。
さやか…。
……いつか、ぜつぼうにかわっちゃうのかなぁ。
…。
いやだな……。
……。
…いやだよぅ、きょうこ。
しんぱい、するな……さやか。
……。
…そんなこと、させないさ。
でも、あんたがいったんじゃない…。
ああ、そうだ。
…だったら。
ずっといっしょに、ん。
…。
…さやか?
…いわなくて、いいよ。
どうしてだよ…。
…どうしても。
ずっといっしょに、いきよう。
さやか。
…いいって、いったのに。
あたしはずっと、おまえをもとめる。
…。
もとめなくなるなんて、ないんだ。
だから。
…。
…だから、さやか。
あたしをひとりにしないで。
…きょうこ。
おねがい…さやか。
……。
……。
…きょうこは、ばかだなぁ。
……。
…ほんとう、さやかちゃんばか。
そうだよ…わるいか。
んーん、ぜんぜんわるくない…うれしい。
……。
…ねぇ、きょうこ。
なに…?
…すきだよ。
……。
だいすき…。
…さやかぁ。
おぅ…。
……ずっと、いて。
あたしと、ずっといて…。
…あたしを、もとめてくれる?
あたしだけ、あいしてくれる…?
あたしだけを、ずっと、みていてくれる…?
さやかだけだ…さやかさえいてくれれば、なにもいらない。
…ほんとうに?
やくそく、できる…?
する、するから…だから。
どこにも、いかないで…。
……。
さやか…さやか…。
……きょうこちゃんは。
……。
…あたしのむね、すきだなぁ。
……。
そんなに、いい…?
…ばか。
あぁ、ん……。
…さやかが、おしえてくれたんだ。
いつ…?
ゆめのなかで…?
…ほんとう、ばか。
ん…、ん……。
……たいせつ、なんだ。
……。
たいせつ、だったから…。
…うれしい、よ。
でもね…。
……。
…それだけじゃ、たりなかったの。
……。
あんたのものに、してほしかったの…。
はやく、なりたかったの…。
…さやか…、さやか…さやか……。
そう……。
あたしだけしか、あいせないように…。
…。
…ねぇ?
ん…?
…つぎ、いつあえる?
つぎって…。
…いいじゃない。
して、みたいのよ…。
…。
…したこと、なかったから。
……あぁ。
…ねぇ、いつ?
あした…。
…。
…また、あしたになれば。
……ほんとうに?
めが、さめて。
めを、あけて。
めを、みて。
…。
せを、むけあっていても。
…。
あたしは…かならず、そこにいる。
…いなくなってない?
そんなこと、あるわけない…。
ん…。
…さやかこそ、いなくなってないよね?
どこにも、いかないよね…?
…あたしのいるばしょ、は。
……。
あんたがいるとこ、だから…。
…さやか。
……だからだまって、どこにもいかないでね。
あたしをおいて、どこにも…。
うん…うん……。
……。
さやか…。
……ありふれたことば、でも。
…。
あなたへのおもいを、つたえよう…。
……さやか。
……そう、なんどだって。
……。
…あんたもだから、ね?
うん、わかった…さやか…。
……きょうこ。
あいしてる…さやか。
……。
…おまえだけ、を。
おまえだけ、なんだ…。
…うれしい。
……。
…あいしてる、きょうこ。
……。
…あなただけ、を。
あなただけを、あいしてるから…だから。
ぜったいに、はなさない。
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