−おんなのこおんなのこ。





   美樹さやかに、手を出しなさい。


   …は?


   可及的速やかに。


   …いや、何言ってんだ、ほむら。


   いっそ、今夜にでも。


   だから、意味が分からねーんだけど。


   付き合っているのでしょう、貴女達。


   …だから、なんだよ。


   だったら、早く、手を出しなさい。


   お前、頭どうかしたのか。
   暑さでやられたのか?


   暑さでやられる私ではないわ。


   じゃ、イキナリ


   早く、手を出しなさい。


   …。


   本当に意味が分からないの?


   …いや、だから、


   さっさと、押し倒せ、と言ってるの。


   ぶ…ッ。


   今の美樹さやかなら、喜んで、受け入れるわ。


   ば、ばかなこと言ってんじゃねーー!!


   どうして?
   好きなんでしょう?美樹さやかの事が。


   だ、だからって、


   寧ろどうして手を出さないのよ、貴女。
   わけが分からないわ。


   つか、どっからそんな話が


   いっそ、というより手っ取り早く、貴女が押し倒されてしまえば良いのだけど。
   美樹さやかはあれでかなりの受身のようだから、


   ほ、ほむら!


   今夜にでも。
   良いわね、佐倉杏子。


   よくねーーーーーーーーーー!!!


   だから、どうして。
   今の美樹さやかだったら喜んで受け入れると言ってるでしょう?


   そ、そういう問題じゃないから!


   じゃあ、どういう問題なの。
   貴女がさっさと手を出さないから美樹さやかは、今日も、まどかに貴女の話をしているのよ。


   ま、まどかに?
   なにを








   …ねぇ、まどか。


   なに、さやかちゃん?


   …。


   さやかちゃん?
   もしかしてまた、杏子ちゃんと喧嘩でもしたの?


   …まどかぁ!


   わ…。


   ねぇ、あたしってそんなに魅力ないかな…?!


   え、えぇ…?


   そりゃ、あたしは…面倒だし、我侭だし、目玉焼きだって上手に焼けないわよ!
   でも、それでも…!


   と、とりあえず落ち着いて、さやかちゃん。


   ううう…ッ。


   ね…?


   ……うぅぅ。


   え、と。
   喧嘩、したわけじゃないんだよね…?


   …うん。


   え、ええと。
   杏子ちゃんと、何かあったの…?


   ……。


   さ、さやかちゃん?


   …なにも、ないのよ。


   なにも、ない?


   なにも、ないのよぉ…!


   ……え、と。
   どういう意味かな…?


   ……。


   ……。


   …キス、だって、ろくに、してくれない。


   う、うん…。


   手すら、ろくに、繋いでくれない…。


   そ、それは恥ずかしいだけなんじゃないかな?
   ほら、杏子ちゃんって結構照れ屋さんみたいだし…。


   ……。


   ……。


   ……あたし、やっぱり魅力、ないんだ。


   そ、そんなことないよ…!


   そんなこと、あるから!
   だから、杏子は手を出してこないんじゃない…!


   さやかちゃんは可愛いよ。
   杏子ちゃんだって、そう思ってるよ。


   …じゃあ、なんで。
   なんで、手を出してくれないの…。


   え、えと、手を出すとか…よく、分からないんだけど。
   わたしたち、まだ中学生だし、そんなに焦ることじゃ


   まどか…!


   は、はい…!


   ……。


   ……。


   ……かも、しれないんだよ。


   え…?


   ……明日、死んじゃうかもしれないのに。


   あ…。


   …生きていられる、なんて、どこにも保証、ないんだよ。


   さやかちゃん…。


   …なのに。
   なのに…!


   ……。


   杏子のばかやろー…!


   …さやかちゃんの、言うとおりだね。
   うん、言うとおりだよ。


   まどか…。


   私に出来ることがあったら、なんでも言って。
   応援、するから!


   ありがとう、まどか!


   私たち、親友だもん。
   当たり前だよ。


   まどか!


   さやかちゃん!








   と、言うわけよ。


   …つまり、どういうことだよ。


   つまり、貴女が手を出してこない事についての、愚痴よ。


   なんだそりゃあ!


   おかげで私のまどかは


   いや、お前のじゃねーだろ。
   まだ。


   兎も角、まどかの頭の中は美樹さやかの事でいっぱいになってるの。
   私が入り込むほんの僅かな余地すら無いくらいに。


   で、でもな?
   まどかはさやかの親友だし


   そういう問題じゃないわ…!


   じゃあ、どういう問題だよ…!


   貴女はさっさと、美樹さやかを押し倒せば良いのよ!
   そうよ、今夜よ、今夜しかないわ!


   勝手に決めんじゃねーーー…!!


   なんなの貴女!ヘタレなの?!


   ヘ、ヘタレだと…ッ!


   今日も私のまどかは美樹さやかの事で頭を痛めていたわ!


   だからまだ、お前のじゃねーだろ!?


   自分は美樹さやかと付き合ってるからって!


   そんなに言うなら、お前だって告白すればいいじゃねーか!


   簡単に出来るくらいなら、苦労しないわ!


   お前の方がよっぽど、ヘタレじゃねーかよ!


   私の想いはそんな簡単なものではないのよ!


   つまりは、ヘタレだから出来ねーだけだろが!


   美樹さやか一人、押し倒せない貴女に言われたくないわ!


   う、うっせバーカ!
   押し倒す押し倒す言うな!


   もっと直接的な表現が望みなら、言ってあげるわ!
   セ


   わ、わぁぁーーーー!!!


   ほら、ヘタレじゃないの!


   あ、あたし達はまだ、中学生だぞ?!
   そんな言葉、言うなぁ!


   ……。


   と、とにかく、あたしは


   杏子。


   な、なんだよ…。


   美樹さやかの事が好きなのでしょう?


   ……。


   どうなの。


   …好きだよ。


   誰よりも。


   ……。


   美樹さやかも、杏子、貴女の事が好き。
   だったら。


   ……。


   美樹さやかが貴女を求めてくる想い、もう少し考えてあげたらどうなの。


   …あたしは。


   明日、死んでしまうかも知れないのに。
   美樹さやかは、そう、まどかに言ったのよ。


   ……。


   好きなのでしょう?
   美樹さやかが。


   ………。








   きょーうこ。


   ……。


   ねぇ、杏子ってば。


   ……。


   おい、こら、しかとかよ。


   …うげ。


   しかと、すんなー。


   …聞こえてるよ、ちゃんと。


   だったら返事、しなさいよ。


   ……。


   きょう


   さやか。


   え…。


   あの、さ。


   う、うん…。


   ……。


   な、なに…。


   ……。


   きょ、杏子…。


   …さやか、あたしは。


   は、はい……。


   ……。


   ……。


   …腹、へった。


   ……は?


   え、と。
   なにか食うもの、ないか?


   …!
   夕ごはんなら、ちゃんと食べたじゃない…!


   食ったけど


   杏子のばか!
   あんたなんか、おおばかよ…!


   ……。


   あんたなんか、あんたなんか…ッ。


   …そうだよ、あたしはバカだよ。


   う……。


   ……。


   ……きょう、こ。


   …ごめんな。


   な、なによ、どうして謝るのよ…。


   ……。


   きょ、杏子、なんでそんな顔すんのよ…。


   ……。


   ねぇ、杏子…なんで、黙ってるのよ…。


   ……。


   ねぇ…なんか、言ってよ…。


   ……さやか、あたしは。


   あ……。


   ……。


   …ねぇ、杏子。
   あたしって、そんなに魅力ない…?


   …そんなこと、ない。


   あたし、我侭だし、すぐ怒るし、面倒だし……。


   …知ってるよ。


   ……ごはんだって、上手に、作れないし。


   焦がしたな…今日も。


   ……だか、ら。


   …。


   だから……ん。


   ……。


   ……きょう、こ。


   ……。


   きょうこ…ねぇ、きょうこ……ぁ。


   ……。


   あ、あぁ……。


   ……。


   …きょうこ。


   ……。


   …?
   どう、したの…?


   …。


   …やっぱり、あたし


   わ、分からないんだよ。


   …え?


   そ、その、やり方…が。


   ……。


   …魅力がない、とか。
   そんなんじゃ、ない。


   ……。


   …だから、さやか。


   杏子のばーーか!


   …うぐ。


   もっと早く言いなさいよ!


   い、言えるか、ばか!


   ばか、ばーーか!


   うっせ、ばかばか言うな!


   ばかじゃない!


   さ、さやかは分かってんのかよ…!


   分からないわよ、ばか!


   はぁ?!


   分からないけど、あんたとなら、なんとかなると思ったのよ!


   …!


   あんたとなら…あんただから、あたしは…。


   ……。


   …杏子の、ばか。
   あたしがどれだけ…


   …まどかに、愚痴ったんだってな。


   な、なぜそれを…。


   …ほむら。


   お、女の友情って…ッ!


   ……。


   …う、うぅぅ。


   さやか。


   ……。


   触っても、いいか…?


   …。


   …だめ、か。


   ……いい、に。


   …。


   決まってるじゃない、ばか杏子…。








   今日のさやかちゃん、なんだか、嬉しそうだった。


   そうみたいね。


   ほむらちゃん、杏子ちゃんに言ってくれたんだね。


   まどかの頼みなら、断れないもの。


   ありがとう。


   お、お礼を言われる事じゃないわ。


   そう?
   でも、ありがとう。


   …。


   さやかちゃん、しあわせかな。
   ううん、しあわせだね。


   …ええ。


   杏子ちゃんも。


   ええ…屹度。


   ふふ、よかった。


   まどかは…優しいね。


   そうかなぁ。


   自分の事のように、悩むんだもの。


   だって。


   だって?


   さやかちゃんも杏子ちゃんも、大事な友達だもの。


   …。


   二人がしあわせになるなら、やっぱり、嬉しいから。


   まどか…。


   ほむらちゃんもとても大切な友達だから。
   ね?


   …うん。








  −いっしょう。





   ……。


   …え、と。


   ……。


   さやか、今帰っ


   ああ?


   ……。


   ……。


   …ただいま、戻りました。


   見れば分かる。


   ……。


   ……。


   …ただいま、さやか。


   おかえり、杏子。
   で?


   …で?


   ご、は、ん、は?


   ……。


   ……。


   …ラ、ラーメンを。


   へぇ。


   これはアレだ、あまりにも腹が減りすぎてだな。


   で、餃子もセットとか?


   いや、餃子は


   じゃあ、麺大盛り?


   …う。


   と言うか、特盛り?


   ……。


   チャーシューも増量?


   ……さやか!


   何。


   ……ごめんなさい。


   別にぃ?


   ……う。


   アレよねぇ、食い物は粗末にしちゃあ、いけないのよねぇ。


   …お、おう。


   だから杏子はちゃーんと、残さず食べてくれるのよねぇ。
   あたしの作った晩ごはんを。


   …あ、明日


   あぁ?


   ……。


   出来立てであったかいのを食べて欲しいって言う気持ち、杏子なら分かってくれるわよねぇ?


   …はい。


   あーあ。
   携帯、持ってればねぇ。
   こんなすれ違いみたいなコトも、起きないのにねぇ。


   …あたしが悪かった、さやか。
   あまりの空腹に


   知ってるわよ。
   知ってるからこその、やり場のない怒りなのよ。
   分かるかしら、杏子さん。


   …いや、やり場ありまくりじゃね?


   ……。


   …その、さやか。
   次は我慢するから、だから。


   携帯を、持て。
   これは命令です。


   …えぇ。


   ふぅん。


   …げ。


   大人しく携帯を持つか。
   あたしと別れるか。
   どちらかを選べ。


   はぁ?!


   選べ。


   い、いやいやいやいや!
   なんだよ、その二者択一は!


   そう、そんなにあたしと別れたいの。
   そうよね、あたしの作ったごはんなんかよりも、特盛りラーメンの方が美味しいもんね。


   わ、別れたくないし、特盛りラーメンよりさやかの飯の方が


   じゃあ。
   携帯、持つのね?


   ……。


   良し。
   離婚しよう。


   ま、待った!


   待たない。
   離婚届、離婚届と…あ、三行半でもいっか。


   良くねーー!
   と言うか、なんで離婚届の用紙なんかあんだよ!


   保険?


   なんのだよ!
   と言うか結婚もしてねーだろ、あたし達!


   ええ、そうよ。
   誰かがヘタレのせいでね。


   …うぐ。


   ねぇ?杏子。


   …ごめん、ごめんなさい。
   だから、許して下さい。


   言うコト、何でも聞いてくれる?


   …携帯、持ちます。


   それも、だけど。


   …まだあんのかよー。


   今すぐ、プロポースして。


   ……は?


   求婚しろって言ってんのよ。


   ああ、あれか。
   花の


   殺されたい?


   ……。


   …ん?


   ……。


   良し。
   別れ


   だぁ!


   ……。


   ……さ、さやか。


   ……。


   け、け、け…。


   …あんた、あたしの事馬鹿にしてんの?


   し、してねー!


   ……。


   …あーーー。


   ……。


   さやか。


   …なに。


   家族に、なろう。


   …。


   ……。


   ……。


   …い、言ったぞ。


   ……。


   …?
   さやか?


   …杏子のばぁーーか!!


   は、はぁ?!


   ……。


   ちょ、おま…。


   …手、洗ってきて。
   ごはんにするから。


   お、おい、さやか。


   ……。


   へ、返事はねーのかよ…!


   携帯。


   …あ?


   明日、見に行くから。
   分かった?


   そ、それより、


   うるさい、ばか杏子…!


   な、なんだとぉ…!


   残さず、食べてもらうんだから!


   ああ、望むところだ!
   全部、残さず、食ってやるよ!


   その言葉、絶対だからね!


   ああ、二言はねーよ!


   これからずっと、一生なんだから!


   これからずっと、一生だ!!








  −ふたりであったまろ。





   さやか、一緒に風呂入ろーぜ。


   …は?


   風呂だよ、風呂。
   冷えたろ、躰。


   ばかじゃないの。
   なんであんたと一緒に入らないといけないのよ。


   なんだよ、やなのかよー。


   いやよ。


   本当にいやなのか?


   だから


   なぁなぁ、さやか。


   …う。


   入ろうぜ、なぁ。


   ……。


   さやか、さやか。


   …ッ!
   つめた…ッ!


   な、冷たいだろ?
   だから、入ろうぜ?


   あんたね…。


   へへ。


   …そんなに入りたいの。


   おう、入りたい。


   …あたしと?


   おう、さやかと入りたい。


   ……。


   さやか、さやか。


   あーもう、うるさい。
   分かったわよ。入るわよ、もう。


   おーー。


   ……嬉しそうな顔、しやがって。


   なぁなぁ、後からだっこしてもいいかい?


   それはだめ。


   その方が足、伸ばせるだろ?


   でも、だめ。


   さやかは伸ばせない方がいいのか?


   そんなことは言ってない。


   あたしは伸ばせた方がいいなぁ。


   じゃあ、一人で


   でも、さやかと入る方がいいな!


   …ああ、そう。


   よし、じゃあ行こう。


   引っ張らなくても、逃げないわよ。


   …。


   な、なに…。


   さやかの手も、冷たいな。


   ……。


   でも大丈夫だ。
   すぐにあたしがあっためてやる。


   …あんたがあっためてくれなくても、お風呂に入ればあったまるわよ。


   その後もだ。


   …は?


   風呂の後はあたしがあっためてやる。


   ……。


   だから、心配すんな。


   …してないわよ、ばか。








  −さやか。





   さやか、さやか。


   あんた、どこに行ってたのよ。
   勝手にちょろちょろするなって、いつも、言って


   あっちにさやかが売ってたぞ!


   …は?


   さやか!


   ちょっと待て。
   あんた、何言ってんの。


   なぁなぁ、買ってもいいか?


   いや、だから。


   な、いいだろ?
   じゃ、持ってくるな。


   おいこら。


   お、さやかも来るかい?


   あたしが売ってるって。
   そんなこと、


   あっちだ。


   て、引っ張るな。


   きっと、すごくうまいと思うんだ。


   ああ、もう。
   だから、引っ張るな。








   これだ。


   …これって。


   な、買ってもいいだろ?


   みかんじゃないの。


   おう、みかんだ。


   …確かにあたしの名前がついてるけどさぁ。


   な、うまそうだろ?


   …糖度、普通になってるけど。


   絶対、うまいって。


   買いません。


   えー、なんでだよー。


   なんでも。
   ほら、行くよ。


   なぁなぁ、さやかー。
   買おうぜー、さやかー。


   やめれ。


   絶対、甘いに決まってるって。


   あのね、杏子。


   だってさやか、すごく甘いじゃん。


   …は?


   さやかは、甘いんだ。
   どんな菓子よりも。


   ……。


   だからさ、このさやかも


   ばか。


   なんでだよー。


   何を言い出すかと思えば…


   さやかー、さやかー。


   うるさい。
   ほら、行くよ。


   買ってくれよー。
   さやか、食いたいんだよー。


   …それ、本当にやめて。


   な、いいだろ?
   他の菓子、我慢するから。


   ……。


   なぁ、さやか。


   …そんなに食べたいの。


   うん、食いたい!
   さやか、食いたい!


   だから言わんでいいから!





   …え、と。
   さやかちゃん、杏子ちゃん…。





   …え。


   お、まどか。
   それにほむらもか。


   …。


   二人で買い物か?


   う、うん。


   そうか!
   あたし達もだ!


   さやか、杏子。


   ……。


   なんだい?


   そういう会話を公衆の面前でするのはどうかと思うわ。


   ……。


   …?
   そういう…?


   さやかちゃんが、その、甘い…食べたい、とか。


   ああ。


   幾ら、蜜柑の話だとしても。


   でもなー、甘いと思うんだ


   …杏子!


   な、なんだい、さやか。


   本当、ばか!


   え、なんでだよ。


   うるさい!
   今日の夕ごはん抜きだから!


   え…えぇーー?!


   ああ、もう…ッ。


   さやか、どこ行くんだ?
   待ってくれよ。


   うるさい、ばか杏子…!








  −そうし、そうあい。(まどペン)





   あー終わった終わった!
   お楽しみのお弁当タイムだー!


   さやかちゃん、屋上に行く?


   もっちろん!
   まどかの今日のお弁当は何かな?


   うーんと、今日はね…。


   うんうん。


   今日は…





   おーーっす!
   来たぞー!





   あ、杏子ちゃん。


   おっす、まどか。


   いらっしゃい。


   いや、いらっしゃいじゃないから。
   あんた、また来たの?


   なんだよ、来ちゃいけねーのかよ。


   いけないって言うか、


   なぁなぁ、これからお昼だろ?
   一緒に食べようぜ。


   あんたねぇ。


   な、いいだろ?
   まどか。


   わたしはいいけど…。


   じゃあ、決まりな。


   おいこら、待て。


   なんだよ、さやか。


   まどかが許しても


   そうだ。
   今日のさやかの弁当、なんだ?
   から揚げか?卵焼きか?
   楽しみだなー!


   誰もあげるなんて言ってない!


   いいじゃん、あたしのもやるからさー。


   あんたのはお菓子でしょ!
   ごはんじゃない!


   いいじゃんかー。


   よーくーなーい!
   まどか!


   …うん?


   杏子はほっといて、早く行こ


   おう、行こうぜ!!
   さやか!!


   …て。
   人のお弁当、勝手に持ってくなーーー!!








   から揚げ、もーらい!


   やらない!
   返せ!


   やーだね。
   あー…ん。


   あー!あたしのから揚げーー!!


   …んー。


   杏子ぉぉ、あんたってヤツはぁぁぁ…。


   …なんか、いつもと味が違わねぇ?


   う。


   うーん…。


   …何よ、文句があるなら今すぐ返しなさいよ。


   別に文句はねーよ。
   ただ、いつもと味が違うってだけだ。


   ……。


   ま、これはこれでいいけどな。


   …それって。


   あん?


   おいしいってこと?
   それとも、まずいってこと?


   まずくはねーよ。


   じゃあ、おいしい?
   ねぇ、おいしい?


   あーなんだよ。


   勝手に食べたんだから、答えてよ。


   だから、まずくはねーって。


   だから、おいしいかって聞いてるの。


   な、なんだよ、さやか。
   顔、近いぞ。


   こ、た、え、て。


   あ、あー…。


   杏子。


   …どっちかと言えば、うまいよ。


   は?


   だーかーら!
   うまいよ!


   ほんと!?


   あー、ほんとほんと!
   だからもう一個


   杏子!


   …あ?


   はい、あーーん。


   ……え?


   もう一個、あげる。


   お、おう。


   だから、あーーん。


   …なんで?


   いいの。
   そうしたいの。


   意味が分からね


   いらないって言うなら、あーげない。
   食べちゃおーっと。


   おい、さやか!


   じゃあ…あーん、する?


   なんでだよ!
   普通にくれよ!


   普通じゃない、あーん。


   どこがだよ!


   食べたいなら、さっさと口開けて。
   ほら。


   さ、さやか。


   はい杏子、あーーーん。


   ……。


   …ふぅん。
   いらないんだー。


   あ、あーもう!!
   すぐだぞ!さっさと入れるんだぞ!?


   はいはい。


   …。


   はい、あーーん?


   …あーー、


   ふふ。


   ……ん。


   どう?
   おいしい?


   …まずくはねー。


   もう、杏子ちゃんったら素直じゃないなー。


   う、うっせ、ばか!


   うふふふふ。


   …気色悪いぞ、さやか。


   ねぇねぇ、杏子。


   な、なんだよ。


   卵焼き、いる?


   く、くれるのか?


   うん、あげる。
   今日は特別。


   お、おう、そうか。


   じゃあ、はい。


   …またかよーー。


   まただよー。


   ……あー。


   はい、そのままあーーん。


   …あーーー、


   ……。


   ……ん。


   ふふ、なんだか餌付けしてるみたい。


   ……。


   どう、おいしいおいしい?


   …うん、うまいです。


   やだなぁ、料理がうまいだなんてぇ。


   …は?


   ねぇ杏子、杏子は何が好き?
   もちろん、お菓子以外で。


   あたしは食えるもんなら


   あーもう、しょうがないなぁ。
   特別にこのさやかちゃんが作ってきてあげよう。


   …。


   で、何が食べたい?


   …じゃあ、オムライス。
   ケチャップの。


   オムライス?
   オッケ!


   なぁ、さやか。


   うん?


   その、明日…。


   うん、明日ね。


   ほ、ほんとか?


   うん、約束。


   ガッコ、来てもいいのか?


   どうせ、来るでしょ?
   だから明日、作ってきてあげる。


   !
   さやか!


   わ。


   …へへ、楽しみだー。


   もーしょうがないなー、杏子はー。








   やっぱり。
   さやかちゃんと杏子ちゃんって仲がいいなぁ。


   いいえ、まどか。
   あれはバカップルと言うのよ。


   あれ、ほむらちゃん?


   人目も憚らず、莫迦のようにいちゃつく。
   まさにバカップルね。


   あれ、マミさんまで?


   全く。
   学校で何を考えているのかしら。


   佐倉さん、今日も私の制服を勝手に着て。
   まぁ、着てないのだから良いのだけれど、許可ぐらい取って欲しいものだわ。


   …えと。
   お弁当、二人も一緒に食べる?


   勿論よ、まどか。


   ええ、是非。








   はい、あーん。


   あーーーん。


   ふふ。


   へへ。


   おいしい?


   おう、うまいぞ!








  −おちつけるばしょ。(まどペン)





   さやかちゃんち、久しぶりだね。


   そうだねぇ。
   最近はずっと、マミさんちだったもんねぇ。
   そういや、二人きりってのも久しぶりかも。


   なんだか嬉しいな。


   お、なになに?
   かわいいこと、言ってくれちゃって。
   そんなにさやかちゃんと二人きりなのが嬉しいのかな?


   うん。
   みんなといる時も楽しいけど、でも、さやかちゃんと二人でいるのも好きだから。


   む。


   えへへ。


   やっぱり、まどかはあたしの嫁だぁ!


   わ。


   誰にも渡さんぞーぅ!!


   もう、さやかちゃんったら。


   ふっふっふ、これはあれですな。
   これから二人はこの部屋でそれはもう濃密な時間を過ごすんですな!


   さやかちゃん、くすぐったいよぅ。


   おー、まどか!
   あたしのかわい


   そういえばね。


   …あ?


   この間、杏子ちゃんと二人でお話したの。


   …杏子?
   て、あの杏子?


   他にはいないよ、さやかちゃん。


   …で?


   もっと、話したいなって。


   …おいおい、まどかぁ。
   あたしと言うものがいながら、早速浮気ですかぁ。


   ……。


   …て、あれ。
   まどか?


   …ねぇ、さやかちゃん。


   な、なに。


   さやかちゃんは杏子ちゃんと仲、いいよね。


   どこが。


   いつも二人でいるし。


   いや、いないし。


   いつも二人で話しているし。


   いや、話してないし。


   いつも、二人で戦ってるし。


   いや、それはあたしたちがお互い近接攻撃だからであって。


   …いいなぁ、さやかちゃん。
   杏子ちゃんと仲良しで。


   いや、だから違うって。


   わたしももっと、杏子ちゃんと仲良くなりたいな…。


   だから、あたしと杏子は仲良くないって。


   …相思相愛なのに。


   え。


   ううん、なんでもない。


   とにかく。
   中、入ろ。中。


   うん。
   お邪魔しまー





   おー、さやかー。





   …。


   …あれ。


   邪魔してんぞー。


   …て。
   杏子ー!!


   なんだよ。
   帰ってきた早々、うるせーヤツだなぁ。


   まーた、人の部屋勝手に入って!
   鍵、かかってたでしょ!


   鍵なんか魔法少女にはあってないものだって、言っただろ。


   と言うか、ベッド!
   なに人のベッドで寛いじゃってくれてるのよ!


   いいよなぁ、さやかのベッド。
   ほんっと、心地よくてさぁ。
   ホテルのベッドと比べものになんねーよ。


   マンガも勝手に読んで!


   お前さぁ、こんなんばかり読んでるから夢見がちなんじゃねーの?
   世の中、こんな女みたいな男いねーよ?


   う、うるさいな!!
   いいから、ベッドの上から下りなさいよ!


   やだねー。


   なんですって!


   いいじゃねーか、減るもんじゃねーんだし。


   減るわよ!


   何が。


   何かが!


   …。


   て、こらぁ!
   無視すんな!


   うっせーなぁ。


   大体、なんでいつもうちに来るのよ!


   いいじゃねーか、別に。
   暇潰しだよ、暇潰し。


   ふざけんな。


   あんた達がガッコーに行ってる間、あたしは働いてるの。
   だから少しくらい、休んだっていいだろ。


   休むのはいいけど、なんであたしの部屋の、しかもベッドの上なのよ。


   いいじゃん。


   だから、よく





   ねぇ、ちょっといいかな…。





   ん?
   お、まどかじゃねーか。


   …さっきからいたんだけど。
   えと、こんにちは、杏子ちゃん。


   おう。


   ねぇ、杏子ちゃん。


   なんだ?


   杏子ちゃんはよく、さやかちゃんの部屋に遊びに来るの?


   遊びに来てるわけじゃない、暇潰しに来てるだけだ。


   だから、なんでうちなのよ!


   うっさいな、さやかは。


   誰のせいよ、誰の!


   ねぇ、杏子ちゃん。


   ん?


   魔法少女は私生活にまで関わるべきじゃない。


   あ?


   杏子ちゃん、わたしにはそう言ったよね?


   …。


   杏子、あんたそんなこと言ったの?


   ああ、言った。


   でも杏子ちゃんはさやかちゃんの部屋によく来るんだよね?


   どういうことよ、杏子!
   まどかが言ってることが本当なら、あんた、あたしの私生活に


   暇潰し。


   …暇潰し?


   そう、ただの暇潰し。
   あと、休憩。


   …。


   ふ、ざ、け、ん、な!
   いい加減、ベッドから下りろ!
   ばか杏子!


   ばかにばかって言われる筋合いはねぇ!
   このばかさやか!


   はぁ?!


   んだよ、やるってのか。


   いいわよ、やってやろうじゃないよ。
   表に出


   …やっぱ、やめた。


   は?


   眠い。
   寝る。


   はぁ?
   あんた、いきなり何言って


   まどか。


   …なに?


   あたしは別に、さやかの私生活に関わってるわけじゃない。


   いや、どう考えても、思い切り、ずかずか上がりこんでるでしょ。


   ……。


   て、寝るな!
   ばか


   さやかちゃん。


   て、何よぉ!


   寝かせてあげよう?
   きっと、疲れてるんだよ。


   でも


   …わたしたちが学校に行ってる間、一人でパトロールしてくれてるんだから。


   う。


   だから…ね?


   うー…あー、もう。





   ………。





   …。


   …。


   …もう、寝ちゃってる。


   人のベッドでぇ…。


   …きっと、寝心地がいいんだね。
   さやかちゃんのベッド。


   …まどか、やめて。


   いいじゃない。
   減るもんじゃないんだし。


   …まどかぁ。


   ……きっと、安心するんだよ。


   え…?


   ううん、なんでもない。


   …。


   …。


   …はぁ。
   たく、こいつは…。


   …やっぱり、仲良しさんだね。
   いいなぁ。


   だから、違います。








   ……。


   ……。


   ……。


   …まどか、帰っちゃったんだけど。


   ……。


   いい加減、返して欲しいんだけど。
   あたしのベッド。


   ……。


   …何が私生活には関わらない、よ。
   あたしのはどうでもいいってことなの。


   ……。


   …いつもいつも、ずかずか上がりこんできてさ。
   最初だってそう。勝手に上がりこんで。


   ……。


   …気付けば、当たり前のようにしててさ。
   あたしはマミさんとは違うのよ。


   ……。


   …ケーキもないし、お茶だって淹れてあげないし。
   寛げるとこじゃないのに、なんであんたは…。


   …静かだろ、ここ。


   ……。


   昼間は人、いない。


   …悪かったわね。
   どうせ、うちは誰もいないわよ。
   大体、昼間誰もいないって言うなら、マミさんちだってそうでしょ。


   ……。


   …いっそ、まどかんちに行けばいいじゃない。
   あの子なら


   あいつは駄目だ。


   …なんでよ。
   あたしんちはよくて、どうしてまどかんち駄目なの。
   意味が分からない。


   …家族が、いるだろ。


   ……あたしにもいるわよ。


   …。


   ……。


   ……さやか。


   …何よ。


   ……。


   …もう、いいでしょ。
   返して。


   …もう、来ない方がいいか。


   ……。


   その方がいいなら…


   …来るなって言っても。


   …。


   来るのが、あんたでしょ。


   …分かってるじゃんか。


   分かりたくて分かったわけじゃないんだけどー。


   ……。


   ……。


   …坊やのとこには行ってるのか?


   ……。


   …。


   …あんたには関係ない。


   ああ、そうだよ。
   全然、関係ない。


   …じゃあ聞くな、ばか。


   ……


   …最近は行ってない。
   魔女が復活したりして、それどころじゃなくなってきちゃったし…。


   あいつのせいか。


   …あいつって。


   あんたの同級生。


   …どこまで知ってるのよ。


   別に知らねーよ。


   じゃあなんで仁美の事…


   仁美って言うのか、あのお嬢は。


   ……。


   …たまたま、見かけただけだ。


   たまたま、ねぇ…。


   ……。


   …悪趣味。


   だから


   杏子。


   ……。


   …ばーか。


   うっせ、ばか。


   ……。


   …。


   …疲れ、取れた?


   元々、疲れてねーよ。
   ヒヨっことは違うんだ。


   …どうせ、ヒヨっこですよ。


   ……。


   あーあ…かわいくない。
   折角、貸してやったのにさ…。


   …さやか。


   ……もう、行って。
   もう、いいでしょ。


   ……。


   …また、後で。


   さやか。


   …なに。


   その…あ、ありがとな。


   は…?


   んじゃ、行くかな。


   ちょっと杏子。
   今、


   遅れるなよ、ボンクラ。


   …!
   ボンクラって言うな!


   じゃあ、ウスノロ。


   ウスノロでもない!


   じゃあ…相棒。


   相棒でもな……は?


   じゃ、じゃあな。


   ちょ、きょ、杏子…。


   また、暇潰しに来るからさ。
   菓子くらい、用意しておいてくれよな。


   …!
   だ、誰が用意するか…!








  −柔らかな君。





   ……。


   …ん。


   ……。


   …ねぇ、杏子。


   …。


   …さっきからお尻ばっかり、触って。


   ……。


   触るなら、他も…。


   なぁ、さやか。
   前から思ってたんだけどさ。


   …なぁに、きょうこ。


   さやかの尻ってさ。


   …うん。


   でかいよな。


   ………。


   …いッ。


   …。


   いってぇ…ッ!


   喧嘩売ってんのか、あんたはぁぁ…ッ!


   売ってねぇよ、なんでだよ…ッ!


   売ってるようにしか思えないわよ、ばか!!


   いて、いてぇ…!


   ばか!ばか!杏子のばかぁぁ!!


   さやか、落ち着…て、剣は止めろ!


   落ち着けるか、ばか…!


   ベッド、血だらけにするつもりか…!


   魔法でなんとかするわよ…!


   するな、ばか…ッ!


   うるさい!
   しばらく、触らせてやらないんだから!!


   ちょ、なんでだよ…?!


   どうせ、あたしのお尻は大きいわよ!
   あんたに比べたら、それはもう、大きいわよぉ!!


   さ


   あんたはいいわよねぇ、いくら食べたって太らないんだもんねぇ!
   でもね、あたしはだめなの、食べたらその分、お肉になっちゃうの!
   だから、だから…!


   さやか…ッ!


   どうせ……どうせ、あたしは。


   さやか、あたしはただ、


   ばか、杏子のばか。


   ……。


   …しばらく、触らないで。


   女らしいなって。


   ……。


   …思っただけなんだ。


   ……。


   さやかの躰は柔らかくて丸くて気持ちよくて…あたしと、全然違う。


   …。


   …あたしのは、硬くて。
   その、胸だってないし、尻だってさやかみたいに大きくない。


   …全然、嬉しくない。


   だ、だから。


   ……。


   ほ、褒めてんだよ。


   …どこがよ。


   ……。


   …お尻の大きさ、気にしてるの。
   だからあたしは、あんたが羨ましいの…。


   …。


   ……や。


   ……。


   やだ、触らないで。


   …やだ、触る。


   止めて。


   止めない。


   きょ


   ……。


   ……。


   …さやかは、丸くて柔らかいんだ。


   ……。


   …いいにおいもするし。
   女の子って、感じがするんだ…。


   ……。


   ……だから、あたしは。


   もう、言わないで。


   ……。


   …気にしてるの。
   だから、杏子には…杏子にだけは、言われたくないの。


   ……。


   ……勝手に思ってる分には、構わないから。
   ほんとは構うけど……いいから。


   分かった…もう、言わない。


   …ん、きょうこ。


   だからなぁ、触らせてくれよ…。


   …。


   …さやかに触れないのは、やだよ。


   もう、触ってるくせに……。


   ……。


   …ばぁか、杏子のあまえんぼ。