……。
…オクタ。
……。
いつかやった服はどうした。
もう、どっかにやっちまったのか。
……。
何か着ろって、いつも言ってるだろ?
……。
ううん、じゃねーよ。
……。
(…こいつ、どうして何も着ないんだろう。着ようとしないんだろう。)
……。
オクタ、オクタヴィア。
…?
(…ああ、やっぱり慣れねー。)
……。
じーっと見てるな。
それからとりあえず、これ着ろ。
…。
ほら。
……。
ううん、じゃねー。
……。
言うこと、聞け。
じゃねーと。
…。
さ、触ってやらねーぞ。
……。
…これ、お前にやるから。
言っとくけどこのパーカー、あたしのお気に入りなんだぞ。
…。
…つーか、それしか持ってねーんだけどさ。
……。
だから、どっかにやったら許さねーからな。
絶対に、許さねーからな。
……。
…ほら、早く着ろよ。
……、……。
うん?
……。
…お前、まさか一人じゃ着らんないって言うんじゃないだろーな。
…。
マジか…だったら、早く言ってくれよ。
……。
とりあえず、羽織ればいいんだよ。
……。
いや、だから。
…ああ、しょうがねーな。
……。
こう、するんだ。
それで…腕、を。
……。
…あ。
……ぅ…。
(…やべぇ。)
……。
とにかく、ここに腕を通せ。
それから、じぃっと見るな。
……。
…オクタヴィア。
…ぅ、…。
……。
…、…、…。
(……ちくしょう。)
……。
…オクタ、ん。
……。
……今はだめだ、オクタ。
…、……。
…頼むから、言うことを聞いて。
……。
(…そんな顔、するな。)
……。
(…あいつと同じ顔、で。)
……。
(……さやか。)
……。
…さやか。
……。
(…分かってるよ、分かってるんだよ。)
……。
…なぁ、オクタ。
パーカー、気に入らないかもしれないけど、大事にしてくれよ。
…。
…お前も女の子なんだから、さ。
カラダ、大事にしろよ。
……。
…違わないよ、オクタヴィア。
……。
(……そうさ、違わないんだ。)
……。
(…冷たい肌。いくら抱き締めても、あったかくなってくれない。)
……。
…なぁ、オクタ。
……。
キス…して、欲しいか?
……。
て、オク……。
……。
…ん、……んぅ。
……。
(……くそ!)
……。
……。
…ん、……、………。
……。
…、………。
…オクタ、オクタヴィア。
……、……。
あたしの名前、呼んでみろ。
(あいつと同じ声で。)
……。
続きが、欲しいなら。
…、…、……。
分からないよ、オクタ。
…、…、…。
……。
…、…、…!
(…きょ、う、)
杏子の、ばーーか!
…ぅ。
……。
(…さやか。……さやか。)
……。
…お前のカラダはいつも、冷たいな。
……。
…どうしたら、あったかくなるんだろうな。
……。
…あたしが、炎になればいいのかな。
なれたら、よかったのかな…。
……。
…いいよ。
続き、してやるよ……。
……。
(……だからそんな顔で笑わないで、オクタヴィア。)
K y r i e
…♪
オクタ。
…?
林檎、食うかい?
…。
腹、へったろ?
……。
ほら。
…。
食い方、分からないか?
そのまま齧ればいいんだよ。
…。
あ。
…。
オクタヴィア!
…ッ!
……。
…、……?
…いいかい、オクタ。
…。
食い物を粗末にするな。
…。
今度また同じコトをしたら、赦さない。
……。
…。
……。
…ほら、オクタ。
……。
もう、するなよ。
……。
オクタ、あたしを見てて。
林檎はこうやって食うんだ。
……。
……。
…?
…ん、うまい。
この林檎、甘くて瑞々しくて本当にうまい。
……。
次はオクタの番だ。
口を開けて……こう、だ。
……。
そんな小さな口じゃ、齧れるもんも齧れないよ。
もっと大きく、だ。
……。
うん、そうだ。
……。
で、齧れ。
……。
…どうだい?
……。
な、うまいだろ?
……。
…オクタ?
……。
…味、分からないのか?
……。
……。
……。
…そう、か。
……。
…オクタヴィア。
……。
そんな顔、しなくていい…しなくて、いいんだ。
……。
…お前は粗末にしたわけじゃないんだ。
だから…。
……。
…ごめんな、オクタ。
ごめん…。
……。
…だから、泣かないでくれよ。
そんな顔、させたかったわけじゃないんだよ…。
……。
あたしは、ただ…
うーん、まぁまぁかな!
なんだよ、偉そうに。
おいしいって、こと!
じゃあ初めからそう言えよ、ばか。
……あたしは、ただ。
また、お前と…。
……。
…分かってる、お前はあいつじゃない。
そんなの、分かってるんだ……。
…。
…分かってるのに。
……。
…なぁ、オクタヴィア。
あたしは、生きているから。
…。
…生きてると、腹がへる。
生きてるヤツは食わないと、生きていけないんだ。
……。
…でもな。
一人じゃ、うまくないんだよ…。
……。
…味が、しないんだよ。
……。
…オクタヴィア。
…、…。
…お前も、生きてる。
ここで、あたしと、生きてる…。
…、…、…。
…あいつはもう、いないとしても。
あたし達は、生きてるんだよ…。
……。
…ばか。
泣いてなんかねーよ…。
……、………。
だから、泣いてねーって。
……。
……。
……♪
…。
…、…♪
…やっぱりきれいだな、お前の声は。
……♪
(…あいつも、きれいだった。)
……。
お前ほど、うまくはなかったけどな…。
……。
…なぁ、オクタヴィア。
…。
…愛して、いるよ。
……。
…お前を、愛してる。
……。
(……さやか、お前だけを。)
……、…ィ、…ゥ。
ん…?
……、
(…らぶ、)
…ィ、
(…みぃ、)
……ゥ。
……。
……、…ィ、……ゥ。
(…Love me Do。)
………。
(……私を、愛して。)
……。
…ばか。
だから、そう言ってるだろ…。
……。
…ずっと、愛してる。
愛してるよ…オクタヴィア。
杏子!
…。
ねぇ聞いてるの、杏子。
聞いてるよ、さやか。
じゃあ返事くらいしてよ、杏子。
と言うか、呼びすぎだろ。
杏子、杏子、杏子!
あーうるせぇ、うぜぇ。
何よ、杏子のばか。
お前がうるさいからだろ。
好きな人の名前、呼んじゃだめなの?
…あ?
ねぇ、杏子…?
オクタ。
…。
オクタ。
…。
オクタヴィア。
…!
…あたしの声、聞こえなかったのか?
…。
な、この耳はなんの為にあるんだ?
きれいな音楽を聴く為だけか?
……。
…あたしの声は、届かないか?
あたしの声なんか、聞きたくもないか?
それとも、初めから聞くつもりもないか?
…、……!
…。
…、…、…。
…冗談だよ、オクタ。
……。
なぁ、今日は外に行かないか?
いい天気なんだ。
…。
心配すんなよ。
抱っこしてやるから。
……。
あたしはお前の足だ。
だから、気にしないでいい。
…。
お前の足になら幾らでもなってやる。
だから、行こう。
……ッ!
……。
……。
…明るいところ、そんなにいやか?
……。
見たいんだよ、あたし。
明るい所で、オクタが笑ってる顔が。
…。
お前はさ、自分では分かってないかもしれないけど、太陽の下がとても似合うんだよ。
…。
太陽の下で、ころころと笑って。
ばかみたいに、間抜け面をして…。
…。
…ばかみたいに、あたしの名前を呼んで。
……。
……。
……。
…オクタ、お願いだ。
……。
…あたしの名前、呼んでくれよ。
…、…、…。
…分からないんだよ、オクタヴィア。
…。
なぁ、分かる言葉で呼んでよ…。
……。
…何度も、何度でもいいから。
あたしの名前を…。
……。
…。
…、……、………。
……。
……ゥ……。
…さやか。
さやか……。
……。
…どうすれば、いい。
どうすれば、お前を忘れられる…?
……。
どうすれば、お前はあたしの中から消えてくれるんだ…。
……。
…あたしには、オクタがいる。
あたしは、オクタがいればいいんだ…。
…。
だってお前はもう、いないんだ…幾ら想っていたって、いないんだ…。
……。
…どんなに愛していたって。
お前にはもう、触れないんだ……。
……。
……ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。
…、…、……。
……。
……。
…オクタヴィア。
…。
…笑って、オクタヴィア。
あたしだけに…。
……。
……ああ。
……。
…変な顔だなぁ。
……。
はは…悪い。
……。
でもさ…そんなお前があたしは愛しいんだよ、オクタヴィア。
Kyrie eleison...Christe eleison....Kyrie eleison...
…何歌ってんだ、さやか。
キリエって言うの。
知らない?
ああ。
知ってるの?
聞いたことぐらいは。
流石、宗教家の娘?
…。
…あ。
…。
えと、ごめん…?
…別にいいけど。
昔のことだ、もう。
…ごめんね、杏子。
いいって。
それより、さやか。
…なに。
あんた、そういうのも聞くのか?
…聞いちゃ、悪い?
悪いとは言ってねーだろ。
……。
さやか?
杏子のばか。
は、なんでだよ。
な、ん、で、も。
おい、さやか。
…♪
いつ聞いてもやっぱり、きれいな声だ。
…!
ただいま、オクタヴィア。
いい子にしてたかい?
…、…。
と、危ないぞ。
……。
…そんなに抱き締めて欲しかったのか?
……。
…あたしがいなくて、淋しかった?
……。
……しょうがないな、オクタは。
…、…、…、…。
…ああ、ただいま。
……。
…暫くはどこにも行かない。
だから、一緒にいよう。
……?
…ああ、本当だ。
…?
…これくらい、なんて事ないよ。
放っておけば、そのうち治るさ。
……。
…ん。
……。
…なんて事ないって、言ったろ?
……。
ん、オクタ…。
……。
…ありがとな。
…。
あ、こら、調子に乗るな。
くすぐったいだろ。
……。
…て、どこ舐めてんだ。
そこは怪我してないって…。
……。
…たく、しょうがないな。
いいよ、好きにしなよ…。
……。
……。
……。
なぁ、オクタ…腹、すかせてないか?
……?
あたしは、すいたなぁ。
…。
…笑うなよ、オクタ。
……。
ん……。
…。
…腹、すいてんだけどな。
……、…。
…そうだな、久しぶりだもんな。
……。
…ああ、欲しいよ。
……。
お前が、欲しい…。
…、……。
……オクタヴィア。
……。
……でも、腹へった。
……。
飯の後じゃ、駄目か…?
……。
…たくさん、してやるから。
…。
だから…オクタヴィア。
……。
…ああ、たくさんしよう。
離れてた分だけ、いや、それ以上に…。
…ぁ、…ぁあッ。
さやか…さやか…。
…や、だめ…みみ、だめぇ…。
……。
ひゃう…ッ。
……。
あ…っ、ああ…ッ、…あ、ぁッ。
……。
だ、め…だめぇ……ぁ。
……。
……ぇ。
……。
…きょう、こ?
な、んで…。
……て、言われたから。
…?
…だめって、言ったろ?
…!
…だから、やめた。
きょうこ…ッ!
…なんだい、さやか?
あんたのそういうト…ひゃッ!
…まだまだ余裕そうだな、さやかは。
ば、か…ッ。
…ああ、そうだよ。
……。
…だめ、なんでしょ?
……ない、で。
ん…?
……いじわる、しないで。
してない…あたしはさやかがイヤなことは、したくないだけだ。
…ずる、い。
……。
きょう、こ…。
…なんだい、さやか。
…じゃないから……して。
……よく、聞こえない。
……いやじゃ、ないから。
つづき、して…。
…。
…ねぇ、はやく。
ねぇ…ねぇ…。
……さやかは、かわいいな。
うっさい…ばか……。
…オクタ…オクタ……。
…ァ、…ア、ゥ…ァ、アッ。
……。
…ゥ…、…ゥ、ォ…。
……ああ。
……、…ィ、……ゥ。
…あいしてる、あいしてるよ…オクタヴィア。
……、…、……ィ。
…ああ、おまえだけをみてるよ。
もうおまえしか、みえないんだ…。
……。
…はなさない。
もう、ぜったいに…。
……ッ、……ァ…。
……。
……、…ッ!
……オクタはかわいいな。
…ハ、ァ……ァ、ア。
……オクタヴィア。
……ゥ……コ…。
ねぇ、杏子。
…うん?
……。
さやか。
…ねぇ、杏子。
なんだい、さやか。
……。
さやか?
……ねぇ、杏子。
…。
……。
…どうした、さやか。
んーん、どうもしない…。
…じゃあ、なんだい?
…。
ん…。
…なまえ。
名前?
…よんで、ほしかっただけ。
呼びたかった、じゃなくて?
…うん、じゃなくて。
さやか。
…ん。
さやか、さやか。
…ふふ。
……もっと呼んで欲しいか?
……。
さやか……。
…いつまで。
…?
あたしたち、こうしてられるかな…。
…なんだよ、とつぜん。
ふと、おもっただけ…。
……。
…ね、もっとよんで?
…。
ね……杏子…。
…ああ、さやか。
キョウコ。
なんだい、オクタヴィア。
キョウコ、キョウコ。
…。
キョウコ。
…なんだい、オクタヴィア。
……。
……。
…キョウコ。
オクタヴィア。
キョウコ。
オクタヴィア。
……。
…ああ、嬉しいよ。
すごく、嬉しい。
…、…。
…なぁ、オクタヴィア。
…?
お前が覚えるのは、あたしの名前だけでいいから。
…。
お前が奏でる音楽は、あたしだけでいい。
…。
佐倉杏子…いや、杏子だけでいい。
……。
…それだけで、いい。
他のものなんて、いらない。
……。
…何も、いらない。
お前以外、何も…。
……♪
……。
…♪
……ああ、きれいだな。
……♪…♪
……。
…キョウ、コ。
続けてくれよ…オクタヴィア。
……キョウコ。
…続けて、オクタヴィア。
……。
……いつまでも。
……。
…なぁ、さやか。
うん…?
……。
…きょーこ?
いつまでも。
…え?
あたしは、さやかのそばにいてやる。
……。
ずっと、こうしててやる。
……。
…だから、心配すんな。
…。
さやか。
…あたしが、どんなことになっても?
ああ、どんなことになっても。
…どんなすがたになっても。
どんなすがたになっても。
…あたしが
さやか。
…。
あたしは、さやかのそばにいる。
……。
ずっと、いる。
…ばーか。
あたしは本気だぞ。
…うん、しってる。
……。
なーんか、プロポーズみたい。
プロポーズ?
求婚?
……。
…ふふ。
答えは?
…こたえ?
プロポーズ、の。
……。
…。
…ほりゅう。
はぁ?
……ちょっと、かんがえる。
なんでだよ。
…なんでも。
さやか。
……。
…なんだよ。
きょうこ。
…。
ずっといっしょに、いてください。
…は?
プロポーズ?
…おい。
これが、あたしのこたえ。
…じゃ、だめ?
……。
…へへ。
たく。
さやかはしょうがねーな。
…そんなあたしに、ほれてるんでしょ?
どこに、惚れたんだかなぁ。
…なによぅ。
……。
ん、きょうこ…。
…ずっといっしょに、いてやるからな。
うん…。
…だから、はなれるなよ。
そのまえに、はなさないでよ…。
…ああ。
きょうこ……。
…さやか。
………だいすき。
……。
……。
……杏子。
……。
……。
…やっぱり、あんただったな。
……。
…魔力で分かったよ。
…然う。
……それで。
……。
あいつを、始末に来たのか。
…ええ、然うね。
じゃあ。
…。
あたしは、あんたを殺すよ。
ほむら。
……あれは、もう。
…。
美樹さやかでは、無いわ。
…そんなの、知ってるよ。
……。
なぁ、ほむら。
あいつがやっと、あたしの名前を呼べるようになったんだ。
…。
嬉しくてさ。
すごく、嬉しくてさ。
……。
多分、あいつはずっとあたしの名前を呼んでくれてたんだ。
でもあたしには、あいつの言葉を理解出来なかった。
当然よ。
…。
魔女の言葉など、私達には理解出来る筈が無い。
そして魔女は私達の言葉を理解しうる事は無い。
…でも、あいつはあたし達の言葉を覚えた。
あたしの名前を、呼んでくれた。
……。
最初はどこか痞えてるようで聞き取りにくかった。
でも、最近は。
…。
杏子、って。
はっきりと聞き取れるようになったんだ。
……。
…名前を呼ばれながら、背中に爪を立てられる。
どれほどの感情があたしの中に溢れるか、あんたには分からないだろう。
ええ、分からないわ。
分かろうとも思わない。
ああ、それでいいよ。
…杏子。
腹が、へるんだ。
…。
だから、喰うんだ。
それのどこが悪いんだ。
…食物連鎖。
ああ、その通りだ。
強い奴が弱い奴を食う、世の中それで回ってる。
…魔女は、絶望を撒き散らす。
ひたすら世界を祟り、呪い続ける。
それが、どうした。
……。
…それで差し引きゼロになるのなら。
構わないだろう?
……貴女。
魔女は世界にとって、絶望を撒き散らす存在だろう。
でもな、ほむら。
……。
あいつは、あたしのちっぽけな世界の希望なんだ。
あたしの、最後の希望なんだ。
希望をくれる存在なんだ。
……。
…だから。
あいつを始末する、しようとする存在は、みんな、あたしが殺す。
あたしの希望を壊す者は、みんな、あたしが潰す。
……そうして。
…。
数多の魔法少女を、殺してきたのね。
そうやって、あの子に喰わせてきたのね。
言ったろ。
…。
腹が、へるんだよ。
生きてると。
…ねぇ、杏子。
……。
今、貴女がどんな姿をしているか、分かってるの。
…どんな姿でも、構わないさ。
あいつの、オクタヴィアのそばにいられるのなら。
……。
ほむら。
あの魔女は貴女の名前を呼べるようになった。
…ああ。
それは、違うわ。
…。
貴女が、限りなく魔女に近い存在になっただけ。
近い未来、貴女は
それでも、いいさ。
…。
なんでも、いいのさ。
…あの魔女がそんなに愛しいの。
あれはもう、美樹さやかでは無いのに。
ああ、愛しいよ。
この世界の何よりも、あいつだけが愛しい。
あいつさえいてくれれば、他に何も要らない。
…。
鹿目まどか。
……。
あんたにとって、大事な存在。
そうだろう?
……。
あんたはまどかの為に、時間を何度も遡った。
そう、幾度も幾度も。
……だから。
あんたも、同じだ。
…。
たった一人の為だけに、時間を繰り返す。
…同じではないわ。
いや、同じだよ。
…。
なぁ、ほむら。
繰り返す時の中、何度、あたし達を殺してきた?
…ッ!
何人の、何十人…何百人のあたし達を、その手にかけてきた?
……。
まどかを、救う為。
守る為。
幸せにする為に。
ただ、その為だけに、あたし達は何度あんたに殺された?
……。
責めているんじゃないよ。
それが、あんたの正しさなんだ。
……。
…分かって貰うつもりなんて、無い。
分かって貰おうなどと、願ってもいない。
……。
己の正しさなんて、いつだって、誰かにとっては害になりえるものなんだ。
少なくとも、あんたの正しさは、今のあたしにとっての害だ。
あいつにとっての、害だ。
……。
それは魔女が撒き散らす絶望と、大して、変わらない。
……。
…愛、は。
世界を壊す。
……。
親父が言っていたよ、世界には愛が必要なんだって。
だけど。
…。
…だけど、親父はちっぽけな世界を壊した。
愛していた筈の世界を、その手でぶっ壊した。
あたしがそう、させた。
……。
…ほむら。
あんたにとっての愛は、なんだろうな…?
……。
……。
……愛、など。
さて、ほむら。
……。
始めようか。
……。
あいつを、今でも殺そうとしているのなら。
あたしは、あんたを、殺す。
……杏子。
……。
杏子。
…ごめんな、ほむら。
……。
あんたが誰を呼んでいるのか、あたしにはもう、理解出来ないみたいだ。
……。
…さぁ、盛大に遊ぼうか。
ほむら。
杏子。
…。
ほーら、おきろー。
…やだ。
だーめ。
…うー。
今日は服見るの、付き合ってくれる約束だったでしょ。
…まだ、はやいだろー。
もう、お昼近くなんだけど。
……。
ほらほら、杏子。
…こんどに
は?
……。
…ほーら、杏子。
う……。
…起きろー?
……さやか。
なぁに…?
……。
…え。
……悪い。
ちょ、杏子…?
…違う意味で、覚めた。
て、おい、こら…。
……。
…服、見てくれるって言ったじゃない。
うん…。
…もう、明るいんだけどー。
……。
ぅ…。
…うん、きれいだ。
……杏子。
きれいだ、さやか…。
…いくつめだと思ってるのよ、ばか。
いくつだって、いいじゃないか…。
…ん、…ん。
……お前はもう、あたしのもんなんだから。
また、へんなとこに……。
さやか……。
……もう、むだに器用なんだから。
へへ……。
…どう、して。
……。
どうして美樹さんが…どうして。
…これが魔法少女の行き着く先だからよ。
暁美さんは知っていたの…。
…。
どうして、教えてくれなかったの…。
話したところで、信じられないでしょう。
現に、誰も信じてくれなかったわ。
…だからって。
だからって、こんなこと…。
…。
…つまり私達は
いずれ、魔女へと孵る存在。
魔法少女が、魔女を産むと言うのね…。
ええ。
……。
美樹さやかは、魔女になった。
それはもう、変えようの無い事実。
……だったら。
……。
魔法少女が、魔女を産むと言うのなら…!
そうだ。
服、見に行くんだった。
…え。
…。
さやかと約束、してたんだった。
今度こそ守らないと、飯、作ってくれなくなっちまう。
…佐倉さん、何を、言っているの。
さやか、行こうぜ。
服、見に行くんだろ。
佐倉さん…。
なんだよ、怒ってるのかよ。
だから今から行こうって
佐倉さ
あたし達、結婚するんだ。
…え?
いや、したんだ。
報告、まだだったよな。
姉さん。
……。
さやかの事も、妹だと思ってくれるだろう?
あたし達は、家族だ。
……。
さやか、さやか。
いつまで隠れてるんだよ。
…ッ!
いつまで、不貞腐れてるんだよ。
なぁ、さやか。
…魔法少女が、魔女を産むのなら。
たく、さやかは面倒くさいなぁ。
産むのなら…ッ!!
………。
さやか、さやか、どこだー?
……。
なぁ、ほむら。
さやかはどこにいると思う?
…杏子。
ああ、やっぱり言わなくていいよ。
たく、さやかはしょうがねぇなぁ。
美樹さやかはもう、いないわ。
ああ、いないな。
だから、探してやらないと。
あいつ、不貞腐れてるんだ。
杏子。
美樹さやかは
なぁ、ほむら。
あたしさ、約束したんだ。
…。
どんなことになっても。
どんな姿になっても。
さやかと一緒にいるって、ずっと一緒にいるってさ。
……。
だから、さやかを独りぼっちにしちゃいけないんだ。
……。
離さないって、離さないでって。
約束、したから。
……。
ほむら。
悪いけど、姉さんを頼むよ。
……。
あたしはさやかを探し出して、服、見に行かないといけないから。
服なんて、よく分かんないんだけど、さやかのヤツがうるさいんだ。
…巴マミは、死んだわ。
たった、今。
うん?
貴女が殺したから。
あたしが?
そうだっけ?
……。
…ああ、そうかも。
杏子、貴女…。
…でも、仕方ないよなぁ。
人に殺気なんか、向けてきやがったから…つい、さぁ。
……杏子。
さやか、さやか、今見つけてやるからな。
……。
じゃあな、ほむら。
……。
さよなら。
…ッ!
きょ…
……、こ。
…。
…きょう、こ。
……。
きょうこ、きょうこ…。
…ああ、さやか。
……。
…ちょっと、遊びすぎてさ。
なんだか、疲れちまった…。
……。
…もう少し、寝かせて。
眠いんだ…。
…さやか、ちがう。
……。
あたし、さやか、ちがう…。
…オクタ。
ちがう、ちがう……。
…オクタヴィア。
きょうこ…。
…ごめんな。
……。
…はぁ。
……あたし、を、みて。
ああ、見てるよ…。
…あたし、だけを、あいして。
ああ、お前だけを愛してるよ…。
…さやか、じゃ、ない。
ああ、お前はさやかじゃない。
だって、お前は。
……。
…さやかから、産まれたんだから。
……。
…さやかは、お前の、母さんだ。
だから。
……。
…ああ、泣き顔はやっぱりさやかに良く似てるなぁ。
……。
…いつか見た、あの泣き顔に。
……。
……行こうか、オクタヴィア。
どこに、いくの…。
…二人だけの場所、さ。
ふたり、だけ…。
…そう、お前とあたしだけの場所。
……。
…行きたくないかい?
ううん、いきたい。
じゃあ、行こう。
一緒に。
…。
オクタヴィア。
…ずっと、いっしょ?
ああ、ずっと一緒だ。
ずっと、あいしてくれる?
ずっと、愛してるよ。
…。
躰が無くなったとしても。
……きょうこ。
守ってあげられなくて、ごめんな…。
…ううん。
……。
…あなたが、すき。
ん…。
あなたが、すき…ずっと、すき。
だから、あたしといっしょにいて、ずぅっと、いっしょにいて。
…うん。
……。
…独りぼっちは、淋しいもんな。
……。
あたしは、お前といよう。
どんな世界に生まれたとしても、あたしはお前を独りにはしない。
……。
共に生きて、死のう。
オク
きょーーこ!
…え?
ふっふっふ。
…なんだよ、さやか。
気色悪いな。
さやかちゃんは、決めました。
何をだよ。
あんたにずっと、ごはんを食べさせること、です。
…は?
ずぅっと、あたしが食べさせてあげる。
一生。
……。
勿論、経済的にじゃないわよ。
ごはんを作ってあげるって意味。
それって
頑張って、あたしを養うこと。
それが条件。
マジか。
さやかちゃんのごはんを一生食べられるの。
嬉しいでしょ?
…嬉しいけど。
じゃ、決まり。
…おい。
不服?
…いや、別に。
じゃあ、ね?
…まぁ、頑張るよ。
それから。
まだあるのかよ。
あたしを。
お前を?
…絶対に、独りぼっちにしないこと。
……。
これは、絶対。
…おう。
絶対なんだから。
任せろ、さやか。
どんな世界に生まれたとしても、お前を探して、探し出して、絶対に独りにはさせない。
……。
独りぼっちは
淋しいもんな。
おい、さやか。
へへ。
杏子。
なんだい、さやか。
大好き。
…おう、あたしもだ。
仮令、どんな姿に成り果てようとも。
…で。
……。
そんな話をあたしにして、何だって言うのよ。
まさか信じろとでも言うんじゃないでしょうね。
作り話にしては良く出来ていたでしょう?
どこが。
然う?
くっだらない。
聞いて損した。
その割には最後まで聞いていたようだけど。
うっさいわね。
あんたが人の横で勝手に喋ってただけでしょ。
ふふ。
…むかつく。
ねぇ、さやかさん。
人の名前、気安く呼ばないで。
だからわざわざ、さん付けにしてあげたのだけど。
あんたに下の名前で呼ばれたくないって言ってるの。
本当に嫌われているのね、私。
悲しいわ。
全っ然、思ってないくせに。
本当よ?
…気色悪い。
どうしてそんなに喧嘩腰なのかしら。
私は貴女と仲良くしたいと思っているのに。
あたしは思ってない。
あんたの顔を見るだけで、嫌な気持ちになるの。
何故?
私が貴女に何かしたの?
……。
ねぇ、さやかさん?
だから、止めろって言ってんでしょ。
……。
……。
ねぇ、美樹さん。
……。
貴女にとっての愛って、何かしら?
…は?
無償の愛なんて、言うけれど。
本当にそんなもの、あるのかしらね。
と言うか、なんであんたに言わないといけないの。
聞きたいと思ったから。
…。
うん?
…この悪魔め。
……。
あんたの口から愛なんて言葉、聞きたくない。
…然う。
じゃあ、あの子の口からなら良いのかしら。
……。
佐く
止めて。
……。
…杏子の名前、あんたが口にしないで。
穢れるから。
…私が悪魔だから?
そうよ。
貴女は私を悪魔と言うけれど。
何故、そう思うの。
…。
美樹さん?
…そう、思うからよ。
酷い話ね?
……。
ねぇ…美樹さん。
…ぅ。
いつか私、貴女に言ったでしょう…?
…ッ。
…あの子にまで、嫌われてしまうって。
暁美、ほむら…。
…そうしたら、貴女。
生きて、いけるのかしらね…?
あんた、は…ッ!
あんたら、仲いーのなぁ。
…!
どこがよ…!
佐倉さん。
ごきげんよう。
ああ、ごきげんよー。
杏子!
さやか。
遅い!
んな事、言われてもなぁ。
先、帰っててくれても良かったんだぞ。
一緒に帰るって、約束したでしょ!
ああ、はいはい。
遅くなって悪かったな。
早く帰ろ。
すぐ、帰ろ。
おい、引っ張るなよ。
早く!
分かった、分かったから。
たく、しょーがねーなー。
……。
じゃあな、ほむら。
ごきげん
そんなヤツに挨拶なんかしなくていいの!
さやか、何でそんなに怒ってるんだよ。
別に怒ってない!
…ふふ。
おい、ほむら。
あまりこいつで遊んでくれるなよ。
後で八つ当たりされるのはあたしなんだ。
あら、それはごめんなさいね。
楽しくて、つい。
ああ、むっかつく!
あ、さやか。
顔も見たくない!
さやか、待てよ。
あらあら、貴女も大変ね。
…おい、ほむら。
何かしら。
あいつは、あたしのだ。
あまりちょっかい出すようなら、
貴女の良い人はあの子では無いでしょう?
ねぇ、オフィーリア?
…。
…まさか、ね?
あたしは佐倉杏子だよ。
…然う?
暁美ほむら。
なぁに?
…幾らお前でも、あいつに手ぇ出したら。
潰すからな。
ああ、怖いわね。
おい、さやか。
待てって。
杏子のウスノロ!
なんだと!
ウスノロ、ボンクラ!
このやろ!
佐倉さん。
あ?
美樹さん。
うるさい!
ごきげんよう、二人とも。
また、明日。
……。
さやか。
……。
さやか。
……。
さやか。
……。
……。
……。
あいつの事考えるの、もう、止めて欲しいんだけど。
…あいつって誰よ。
言って欲しいのか。
……。
今はあたしといるんだ。
……。
さやか。
……。
待っててくれてありがとう。
嬉しかった。
…先に帰ってろって言ったくせに。
そりゃ、一応はね。
…何よ。
……。
……。
…腹、へったな。
何か食って帰るかい?
…食わない。
奢ってやるよ。
…。
だからあたしの事、考えてよ。
…あんたの事って。
好きなんだ。
…え。
さやかが。
…何、言ってるの。
あたしはあんたが好きだ。
…。
好きだったんだ。
あんたと出逢う前から、ずっと。
…意味分からない。
だよなぁ。
自分でもそう思うよ。
……。
…ごめんな。
なんでよ。
女のあたしから言われても、気持ち悪いだけだろうから。
…友達の好きなら。
友達のじゃないんだ。
…。
あたしは、さやかが好きなんだ。
…本気で?
うん、本気。
だからあたしといる時はあいつの事、考えて欲しくない。
もっと言えば、あたし以外の人間は誰も。
…別にもう、考えてない。
じゃあなんで何も喋ってくれないんだ?
いつもだったら
ねぇ、杏子。
…なんだい?
杏子は…あたしの事、嫌いになる?
…人の話、聞いてたか?
…。
あたしはさやかが好きなんだ。
嫌いになんか
そんなの、分からないじゃない。
…。
…人の心なんて。
さやか。
…。
好きだ。
…。
…友達としてじゃなく。
出来るなら一生、傍にいて欲しい。
…。
一生、傍にいてやるから。
…それ、プロポーズじゃない。
それなら、それでいいよ。
…。
…あたしは本気だから。
…。
腹、へったな。
…杏子。
うん?
…手。
……。
…手、繋いであげよっか。
……。
…いやなら、
さやか。
……。
さやかの飯が早く食いたい。
早く帰ろ。
…手はどうでもいいのかよ。
んなわけないだろ。
すげー、嬉しい。
…。
へへ。
……ばーか。
……。
…何、食べたい?
そうだなぁ…。
…。
…さやかが作ってくれるなら、なんでも。
それが一番、困るんだっつの。
じゃあ、オムライス。
オムライスぅ?
だめかい?
むぅぅ。
卵、ぐちゃぐちゃでもいいぞ?
だめ。
…。
だめ、なの。
…そうかい。
オムライス、オムライスね。
よし。
……。
……。
…なぁ、さやか。
なに。
キリエって、知ってるかい?
…キリエ?
覚えてないか。
…なんなの、それ。
歌だよ。
簡単に言えば、レクイエムさ。
…杏子は知ってるの?
いや、聞いた事があるくらいだ。
そう、遠い昔に。
…ふぅん。
さやか。
…なに。
愛って、信じるかい?
…。
世界を壊してしまうくらいの、さ。
…急に何。
聞いてみたくなったんだ。
ふと。
……。
……。
……。
…あたしが、もし。
あんたへの愛の為に、この世界が、この宇宙が壊れるのを見逃すとしたら。
或いは、壊してしまうとしたら。
…。
あんたは、あたしを赦してくれるかい…?
…。
それとも…。
…杏子。
ん…。
お腹、へりすぎて。
ばかになってんじゃないの。
…。
愛だなんて、らしくないっつの。
ばーーか。
……。
あ…。
…さやか。
きょ、杏子…。
……お前が、欲しい。
ば、ばか、こんな所で何言って…。
……ずっと、食わせてくれよ。
きょ、うこ……。
…ずっと、お前だけを。
……ん。
……。
……杏子。
愛してるよ、さやか。
……。
…共に生きて。
……きょうこ。
…共に死のう、さやか。
……う、ん。
…ずっと一緒だ、オクタヴィア。
Kyrie…「救憐唱」「憐れみの賛歌」とも。憐れみ深い神への賛歌、あるいは罪人が憐れみを乞う歌。唯一、ギリシア語による。
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